説明

電子写真画像形成方法およびプロセスカートリッジ

【課題】より効率的に光沢を発現させ、かつ、透明トナー画像を形成している部分と形成していない部分との光沢のコントラストを大きくして、より光沢が栄える電子写真画像形成方法及び、その画像形成方法を用いることのできるプロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】記録媒体上に1種以上の有彩色トナーからなる有彩色トナー画像を定着する有彩色トナー画像形成工程と、該有彩色トナー画像上に透明トナーからなる透明トナー画像を重ねて定着し、当該透明トナー画像により部分的もしくは全体的に光沢度を増加させる透明トナー画像形成工程と、を備え、前記透明トナー画像形成工程において透明トナー画像が重ねて定着される下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜350[μm]であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンターあるいはファクシミリ等の電子写真プロセスに用いる電子写真画像形成方法およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター、乾式静電複写機等の画像形成装置に用いられる電子写真法は、光導電性層などの像担持体表面を一様に帯電させ、次いでその像担持体表面を露光し、露光された部分の電荷を消散させることにより電気的な潜像を形成し、更に該潜像にトナーと呼ばれる電荷を持った微粉末等を付着することによって可視化させ、得られた可視像を転写紙等の記録媒体に転写した後、加熱、加圧などにより永久定着させるとともに、転写できずに像担持体表面に残った微粉末等を清掃する工程からなる。
【0003】
近年の電子写真画像形成では、要求される画像の種類も多様化してきている。写真画像のような画質の要求に対しては、記録用紙等の被記録媒体表面に光沢性を付与することによって、鮮明な高光沢画像を提供できることが知られている。これらは、例えば、有彩色トナーのない非画像部に透明トナーを配置することにより、被記録媒体上の有彩色トナーのある部分との光沢差を無くしたり、被記録媒体上の全面に透明トナーを配置したりする方法などが用いられている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。また、光沢、非光沢画像の選択ができる定着処理系をオンラインでコンパクトに配置した画像形成装置が提案されており、例えば、有彩色トナー像と透明トナー像が形成された被記録媒体を定着装置を用いて加熱溶融し、冷却剥離することで被記録媒体全面を高光沢の画像とすることが記載されている(特許文献4参照)。上記特許文献1〜特許文献4の方法によれば、光沢差をなくし、被記録媒体全面で均一な光沢を提供可能である。しかし、これらは被記録媒体全面の光沢を均一にする技術であるため、後述するスポット光沢の付与に不向きであったり、有彩色画像上に形成する光沢部分の形状に対する自由度が低かったりするという欠点を持つ。
【0004】
一方、印刷分野においては、記録媒体の光沢を制御する方法として、UVニス印刷、ニス引き、PP貼り加工などが一般に行われ、ある特定の部分を高光沢(スポット光沢)とする、いわゆるスポットニスが行われる。この場合、通常のカラー印刷の後に部分的に高光沢とするための版を作成し、UVニス等を用いてスポット印刷することが行われている。この方法によると、スポットニスを施した部分は写真のように高光沢を得ることができ、スポットニスを施さない部分は低い光沢で、画像上の光沢差が大きく通常の印刷と比べ差別化が図れる。
しかしながら、オフセット印刷でこれを行うためには専用の版を用意する必要があり、また可変データには対応できないため、一定以上の印刷ロット枚数が必要になる。それに対して、レーザープリンター、乾式静電複写機等の画像形成装置に用いられる電子写真法により上記と同様のスポット印刷機能が実現できれば、印刷用の版が不要となり、可変データにも対応することが可能となることから、市場からの要求も大きい。
【0005】
電子写真方式で同一被記録媒体上で異なる光沢を形成する方法としては、トナーに用いる樹脂の数平均分子量により光沢性を制御する方法(特許文献5参照)や、有色トナーを定着した後、透明トナー像を形成し、定着温度を下げて光沢を下げる方法(特許文献6参照)、更には、1回目には光沢範囲を印字、定着し、2回目に非光沢範囲を印字、定着する方法(特許文献7参照)などが開示されている。しかしながら、これらの方法によれば同一被記録媒体上で異なる光沢を得ることは可能であるが、前記スポットニスで行われているような写真光沢に近いスポット高光沢は未だ実現できていない。
【0006】
また、特許文献8では、画像部に透明トナー層を定着し、有彩色トナー層及び透明トナー層を定着した際の平均表面粗さRa及び最大表面粗さRmaxと、透明トナー層を設けずに有彩色トナー層のみを設けた際の表面粗さRa’及び最大表面粗さRmax’の関係を規定して、画像光沢や粒状度を改善する技術が開示されている。しかし、詳細は後述するが、本発明者らが検討を重ねた結果、電子写真画像表面の光沢に対して、平均表面粗さRaや最大表面粗さRmaxの寄与は低く、表面粗さの指標のうち、光沢と最も相関が高いのは凹凸の平均間隔であるSmであった。また、特許文献8では、非画像部に透明トナー層を定着させることが必須となっており、使用方法に制限があるため、画像部上に部分的に透明トナー層を形成して光沢にコントラスト差をつけるスポット光沢に対して自由度の高い技術ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術を鑑みてなされたものであり、1種以上の、有彩色トナー画像上に透明トナーを形成して部分的もしくは全体的に光沢度を付与させる画像形成方法において、より効率的に光沢を発現させ、かつ、透明トナー画像を形成している部分と形成していない部分との光沢のコントラストを大きくして、より光沢が栄える電子写真画像形成方法及び、その画像形成方法を用いることのできるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔10〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
(1):記録媒体上に1種以上の有彩色トナーからなる有彩色トナー画像を定着する有彩色トナー画像形成工程と、該有彩色トナー画像上に透明トナーからなる透明トナー画像を重ねて定着し、当該透明トナー画像により部分的もしくは全体的に光沢度を増加させる透明トナー画像形成工程と、を備え、前記透明トナー画像形成工程において透明トナー画像が重ねて定着される下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜350[μm]であることを特徴とする電子写真画像形成方法である。
【0010】
(2):前記下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜250[μm]であることを特徴とする上記(1)に記載の電子写真画像形成方法である。
【0011】
(3):前記透明トナーは、滑剤を含有し、且つ、粘弾性評価により得られ下記式(1)で算出される正接損失の最大ピーク値が80〜160[℃]の範囲にあり、該正接損失の最大ピーク値が3以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の電子写真画像形成方法である。
損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)
【0012】
(4):前記透明トナーは、120〜160[℃]の範囲における前記貯蔵弾性率(G’)が1[Pa]以上1×10[Pa]以下であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の電子写真画像形成方法である。
【0013】
(5):前記透明トナーは、結晶性のポリエステルを含有することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子写真画像形成方法である。
【0014】
(6):前記透明トナーは、70〜90[℃]の範囲における前記貯蔵弾性率(G’)が1×10[Pa]以上であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の電子写真画像形成方法である。
【0015】
(7):前記透明トナーは、前記滑剤を内部に含有してなり、
該滑剤は、脂肪酸アマイド系滑剤を含むことを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の電子写真画像形成方法である。
【0016】
(8):前記脂肪酸アマイド系滑剤は、N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドであることを特徴とする上記(7)に記載の電子写真画像形成方法である。
【0017】
(9):前記透明トナー画像は、前記透明トナー画像形成工程により定着された後の厚さが1〜15[μm]であることを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の電子写真画像形成方法である。
【0018】
(10):像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像をトナーもしくはトナーとキャリアからなる現像剤を用いて可視像とする現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられ、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の電子写真画像形成方法を用いることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より効率的に光沢を発現させ、かつ、透明トナー画像を形成している部分と形成していない部分との光沢のコントラストを大きくして、より光沢が栄える電子写真画像形成方法及び、その画像形成方法を用いることのできるプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】粘弾性(G’、G”)評価により得られる正接損失に最大ピークを有する好ましい例(80〜160℃に最大ピーク値を持つ)を説明するための図である。
【図2】紙の上に直にトナーを定着させた様子を示す模式図である。
【図3】有彩色トナー層の上に定着させた透明トナーの表面が滑らかにならず高光沢が得られていない様子を示す模式図である。
【図4】有彩色トナー層の上に正接損失(tanδ)の最大ピーク値が3以上の透明トナーを定着させた場合に表面が平滑となり高光沢が得られている様子を示す模式図である。
【図5】本発明で用いられる電子写真現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明で用いられる現像装置の一例を示す概略図である。
【図7】図6の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図9】本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る電子写真画像形成方法は、記録媒体上に1種以上の有彩色トナーからなる有彩色トナー画像を定着する有彩色トナー画像形成工程と、該有彩色トナー画像上に透明トナーからなる透明トナー画像を重ねて定着し、当該透明トナー画像により部分的もしくは全体的に光沢度を増加させる透明トナー画像形成工程と、を備え、前記透明トナー画像形成工程において透明トナー画像が重ねて定着される下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜350[μm]であることを特徴とする。
以下において本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
(透明トナー画像の下地となる有彩色トナー画像の表面のSm値)
透明トナーを有彩色トナー画像上におけるスポット光沢付与を目的として用いた場合、まず、透明トナー画像を定着させた部分が高光沢を発現することが第一条件として求められる。
透明トナーに限らず、トナー画像の光沢にはトナー画像表面の平滑度、逆にいえば表面粗さが重要なファクターとなっている。そのため、前述の特許文献8のように、トナー画像の光沢と表面粗さの関係を活用した技術は複数開示されており、特に表面平均粗さRaや最大表面粗さRmaxは、物質の表面粗さの代表的な指標であることから、光沢と表面粗さの関係を活用した技術に言及する上でよく用いられている。
本発明者らは、トナー画像表面の光沢と表面粗さの関係について考察するにあたり、光沢と相関のある粗さの指標に関しての鋭意検討を重ねた。具体的には、様々なノイズを与えて表面粗さを振ったサンプルを作成し、そのサンプルの光沢と表面粗さの各指標を比較し、光沢に対して寄与の大きい表面粗さの指標を探索した。その結果、従来多く用いられてきたRaやRmaxといったパラメータと光沢に相関があるのは、定着条件やサンプルトナーが同一であるような限られた系の場合だけであり、異なる系の画像も織り交ぜた場合、光沢に対してRaやRmaxは明確な相関は得られず、最も汎用的に相関が見られ、指標とすることができる表面粗さのパラメータは「凹凸の平均長さSm」であるということを見出した。
【0023】
トナーの光沢度を向上させるためには、トナーを定着させる下地の表面を滑らかにすればよいと考えがちである。
たしかに、従来多く用いられているカラートナー定着画像のように、紙の下地に対してトナー画像を形成する場合は、紙の表面粗さが滑らか(平均表面粗さRaが小さい)であるほどトナー画像の表面が滑らかになる傾向があり、カラートナー画像の光沢を向上させるにはRaの小さい紙を用いることが有用である。
しかし、スポット光沢等を目的として透明トナー画像を形成する場合、その多くは、トナーによる定着画像を下地として透明トナー画像を形成する。その場合、下地となるトナー画像の表面が滑らかであるほど透明トナーを定着させた部分の表面が滑らかになり光沢が増加するというわけではない。
【0024】
本発明者らが検討を重ねた結果、記録媒体上に形成された1種以上の有彩色トナーからなる有彩色トナー画像上に透明トナーからなる透明トナー画像を重ねて形成する場合(有彩色トナー画像形成工程の後に、透明トナー画像形成工程を有する場合)、最終的に得られる透明トナー画像部分の光沢に対しての寄与が大きいのは平均表面粗さRaではなく凹凸の平均長さSmであり、しかも、下層の有彩色トナー画像表面のSmが50μm以上の範囲では、下地となる有彩色トナー画像表面のSmが大きくなる(滑らかになる)につれて、むしろ、最終的に得られる透明トナー画像部分の光沢度は低くなる傾向がみられた。つまり、透明トナー画像部分の光沢を向上させるためには、下地となる有彩色トナー画像表面のSm値は、50μmまでであれば小さく(表面を粗く)していくほうが好ましいという結論に達した。
【0025】
これは、透明トナーによるスポット光沢付与のように、トナーによる定着画像上に更にトナーを定着させる場合に特有の現象と考えられる。
粒子であるトナーが定着によって平面状のトナー層になるのは、定着時の加熱と加圧による塑性変形のためである。しかし、このとき、損失弾性率(G”)に比べてトナー自身の貯蔵弾性率(G’)が高いと、定着工程の後でも粒子の形状が戻り、ある程度残ってしまう。粒子の形状が定着画像表面に現れると微小な凹凸となるため、表面が粗くなり、良好な光沢が得られにくくなる。
しかし、紙の上に直接定着画像を形成する場合は、紙のセルロース繊維の織り込みが可塑性を持っていたり、セルロース繊維の隙間が残った粒子形状を吸収したりするため、定着後に残ったトナー粒子の形状は定着画像表面に現れにくい(図2)。ところが、透明トナーによるスポット光沢付与のように、下地がカラー(有彩色)トナー画像のようなトナー層である場合、下地のトナー層は上層透明トナーの粒の形状を吸収しにくい(図3)。このとき、下地のトナー層表面が滑らかであるほど、透明トナーの粒の形状は最終的に得られる画像の表面に現れやすくなり、逆に、下地のトナー層表面がある程度の粗さを持っていると、粗さの溝が透明トナーの粒の形状を吸収するため、画像表面に透明トナーの粒の形状が現れにくくなり、最終的に得られる画像の光沢度を高くすることができる。
【0026】
なお、図2の模式図は、紙の上に直にトナーを定着させた様子を示す。図2において、符号1は紙、2はセルロース繊維、3はトナー層を示す。また、図3の模式図は、有彩色トナー層の上に定着させた透明トナーの表面が滑らかにならず高光沢が得られていない様子を示す。図3において、符号1は紙、2はセルロース繊維、4は有彩色トナー層、5は透明トナー層を示す。
【0027】
上記理由により、本発明において、透明トナー定着画像の下地となる有彩色トナー画像表面は、ある程度の粗さを持ち、その凹凸の平均長さSmは350μm以下である。Smが350μmよりも大きくなると、下地のトナー層の表面が滑らかすぎるため、透明トナーの粒の形状が現れやすくなり、良好な光沢が得られなくなる。
また、本発明における凹凸の平均長さSmは50μm以上である。50μmより小さいと、下地が極端に粗いため透明トナー画像の表面も粗くなり、最終的に適切な光沢を得ることができなくなる。
【0028】
本発明においてトナー表面の凹凸の平均長さSmや紙表面の平均粗さRaなどの表面粗さ測定は、東京精密社製SURFCOM590aを用いて行った。
【0029】
また、透明トナーによるスポット光沢がより見栄えよく効率的に機能するようにするためには、透明トナー画像を形成させていない部分との光沢差(光沢のコントラスト)が大きくなるようにすることが好ましい。そのためには、透明トナー画像の光沢を高くすることも重要であるが、光沢を付与しない下地画像の光沢を低く抑えておくことも有効である。本発明者らが鋭意検討を行った結果、下地となる、光沢を付与しない部分の有彩色トナー画像の表面粗さ(Sm値)を250μm以下にすることで、光沢を付与しない部分のトナー画像の光沢を適度に抑えることができるため、透明トナー画像との良好な光沢のコントラストを得ることができ、スポット光沢の見栄えが非常に良くなるということを見出した。
【0030】
透明トナー画像の下地となる有彩色トナー画像の表面を粗くする方法としてはいかなる方法をも取ることができるが、例えば、定着温度を低くしてわざと下地となる有彩色トナー画像のトナーの粒の形状を残す方法や、前述のように下地となる有彩色トナー画像を定着させる記録媒体(紙など)に表面が粗いもの(Raが大きいもの)を用いる方法、定着画像のトナー層の厚さを薄くして粒の形状が有彩色トナー画像表面に顕著に現れやすくする方法などがある。しかし、これらに限定されるものではない。
【0031】
(透明トナーの粘弾性)
光沢を付与するにあたり、透明トナーは、粘弾性測定において下記式(1)で表される正接損失が80〜160℃に最大ピークを有しており、正接損失の最大ピーク値が3以上であることが好ましい。
損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)
【0032】
透明トナーにおいて、低温で定着し、かつ、高い光沢性を確保するためには、比較的低い温度から急激に貯蔵弾性が低くなる特性をトナーに持たせる必要がある。定着時のトナーの貯蔵弾性率(G’)を低くすることができれば、表面平滑度の低い記録紙や有彩色トナーの微小凹凸に溶融したトナーが入り込みやすく、また、粘弾性の中で相対的に可塑成分が高くなり、加圧定着後にトナー粒の形状が復元しにくくなる。そのため、延展性に優れ、トナー層表面の平滑度が高くなり、高い光沢度を得ることが可能となる。
【0033】
その一方で、耐ホットオフセットの観点から、貯蔵弾性率(G’)はある粘度になってからは低下の傾きは緩やかになりその粘度を維持することが重要であり、さらに損失弾性率(G”)は貯蔵弾性率(G’)のような急激な低下を起こさない必要がある。
【0034】
このように貯蔵弾性率(G’)がある温度から急激に低下しつつ、ある温度域で低下の傾きは緩やかにならないと、図1に示すような、正接損失のピークは発現しない。
このような特性を持つトナーのみが正接損失の最大ピークを持つが、その最大ピークの温度はトナーの保管と低温定着の観点から、80〜160℃に発現することが好ましい。
正接損失の最大ピーク温度が80℃未満であると保管環境で貯蔵弾性率(G’)が低下しトナーとしての保存性が悪くなってしまい、保管環境でトナーが凝集してしまう。さらに高温での粘弾性が低くなりすぎ、耐ホットオフセット性が損なわれてしまう。160℃を超えると低温で定着する目的が損なわれてしまう。
【0035】
また、正接損失の最大値が小さいと、損失弾性率(G”)と比較して貯蔵弾性率(G’)が低下せず、好ましい低温定着性と耐ホットオフセット性、高光沢を同時に達成させることができなくなる。特に、透明トナーにて記録媒体上に光沢を付与する場合、正接損失は3以上であることが望ましい。
【0036】
前述のように、透明トナー画像の光沢を高めるためには透明トナー表面が滑らかであることが好ましく、そのためにも、定着後に透明トナーの粒の形状が残らないことが好ましい。
【0037】
損失弾性率(G”)に比べて貯蔵弾性率(G’)の割合が高いと、加圧定着を行なっても、透明トナー自身の持つ弾性による“戻り”のために透明トナーの粒の形状が残りやすく、透明トナー層表面に微小な凹凸やうねりが発生し、滑らかさが損なわれ、高光沢が得られにくくなる。
この現象に対し、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、定着温度範囲において透明トナーの正接損失(tanδ)の最大ピークが3以上であれば、耐ホットオフセット性を維持しつつ、透明トナーの弾性よりも延展性が勝るため透明トナー層の表面を滑らかにすることが可能となり、より効率的に高光沢を付与できるということを見出した。(図4)
正接損失の上限は特に規定しないが、高すぎると耐ホットオフセット性が不利になる傾向があり、また、製造時に製造装置内を汚染しやすくなる。そのため、正接損失は50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下である。
正接損失(tanδ)の最大ピーク温度や最大ピーク値は樹脂の粘弾性によってほぼ決定されるが、トナー製造工程中の樹脂への負荷、例えば溶融混練条件などでも最大ピーク温度や最大ピーク値を変更させることは可能である。
また、後述の結晶性のポリエステルを併用する場合などでも、併用する物質の軟化点、トナーへの配合量によりトナーの粘弾性が変化するため、正接損失(tanδ)の最大ピーク温度や最大ピーク値を変更させることが可能である。
【0038】
なお、図4の模式図は、有彩色トナー層の上に正接損失(tanδ)の最大ピーク値が3以上の透明トナーを定着させた場合に表面が平滑となり高光沢が得られている様子を示す。図4において、符号1は紙、2はセルロース繊維、4は有彩色トナー層、5は透明トナー層を示す。
【0039】
本発明における貯蔵弾性率(G’)は、120〜160℃において1Pa以上、1×10Pa以下である。より好ましくは、110〜160℃の範囲において、貯蔵弾性率(G’)が1Pa以上、1×10Pa以下であることが好ましい。正接損失が大きくても、120〜160℃の範囲においての貯蔵弾性率(G’)が1×10Paより高いと好ましい低温定着性が得られない。また、1Paより小さいと、耐ホットオフセット性に悪影響を及ぼす。110〜160℃の範囲においての貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以下であると、更により好ましい低温定着性を得ることができる。
ここで、70〜90℃の範囲における貯蔵弾性率(G’)は1×10Pa以上であることが好ましく、更に好ましくは、70〜90℃の範囲における貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上であることが好ましい。
【0040】
定着に関与する温度域以下の環境においては、貯蔵弾性率(G’)が低いと、トナーおよび該トナーを用いた現像剤の保存安定性に悪影響を及ぼす。特に、90℃以下の温度域における貯蔵弾性率(G’)は保存安定性(保管安定性)に著しい影響を及ぼし、90℃以下の貯蔵弾性率(G’)が1×10Paより小さいと保管時の凝集や固化を発生させやすくなる。貯蔵弾性率(G’)を1×10Pa以上にすべき温度域の下限温度は、そのトナーの保管環境として想定される温度の下限以下となるが、通常、熱可塑性樹脂をトナーの原材料として用いた場合、70〜90℃の範囲以下に温度を下げていくと貯蔵弾性率(G’)は上昇していく傾向があることから、70〜90℃の範囲での貯蔵弾性率(G’)にて貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上であれば、生活環境下での保管における保管安定性は維持することができる。
【0041】
90〜120℃の温度域における貯蔵弾性率(G’)については特に規定はしないが、前述のように70〜90℃の範囲で貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上、120〜160℃の範囲で1Pa以上、1×10Pa以下のトナーであれば、90〜120℃の温度域では貯蔵弾性率(G’)は1×10〜1×10Paの範囲を通過する温度域であり、その際の貯蔵弾性率(G’)は、温度に対して突発的なピークが存在せずになだらかに変化していくことが好ましい。
【0042】
前述のトナーの正接損失(tanδ)は粘弾性測定によって測定される。
本発明における粘弾性測定では、トナーを0.8g、φ20mmのダイスを用いて30MPaの圧力で成型し、TA社製のADVANCED RHEOMETRIC EXPANSION SYSTEMによりφ20mmのパラレルコーンを使用して、周波数1.0Hz、昇温速度2.0℃/分、歪み0.1%(自動歪み制御:許容最小応力1.0g/cm、許容最大応力500g/cm、最大付加歪み200%、歪み調整200%)で、損失弾性率(G”)、貯蔵弾性率(G’)、正接損失(tanδ)の測定を行った。このとき貯蔵弾性率(G’)が10以下になった場合の正接損失(tanδ)の値は除外した。
【0043】
(トナー材料)
本発明における透明トナーは、結晶性のポリエステル樹脂、滑剤を含有することが好ましく、その他、結着樹脂、帯電制御剤等の周知慣用の材料を含有することができ、さらにこれらからなるトナー母体の表面に外添剤を付着させても良い。
本発明における有彩色トナーは、ポリエステル樹脂、着色剤を含有することが好ましく、その他、結着樹脂、帯電制御剤等の周知慣用の材料を含有することができ、さらにこれらからなるトナー母体の表面に外添剤を付着させても良い。
【0044】
(結晶性のポリエステル)
本発明における透明トナーは、熱可塑性樹脂として結晶性のポリエステル樹脂を含有することが好ましい。結晶性のポリエステル樹脂を併用すると低温での定着が可能になると共に、低温でも画像の光沢性を上げることが可能になる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは結着樹脂(例えば、非結晶性ポリエステル樹脂等)100部に対して1〜25部、より好ましくは1〜15部である。結晶性ポリエステル樹脂の比率を高くしすぎると、感光体等像担持体表面にフィルミングを起こしやすくなると共に、保管安定性を悪化させてしまう懸念がある。さらに結晶性ポリエステル樹脂の比率が高すぎると樹脂の透明性が損なわれ、透明トナーとして要求される透明性を確保できなくなる恐れがある。
【0045】
本発明で用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、(1)直鎖状不飽和脂肪族二価カルボン酸またはその反応性誘導体(酸無水物、炭素数1〜4の低級アルキルエステル酸ハライド等)からなる多価カルボン酸単位と、(2)直鎖状脂肪族ジオールからなる多価アルコール単位とを、常法により重縮合反応させることによって製造することができる。この場合、多価カルボン酸単位には、必要に応じ、少量の他の多価カルボン酸単位が含有されていてもよい。なお、結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸単位として直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸単位を用いることにより、芳香族ジカルボン酸単位を用いた場合に比べて結晶構造を形成し易いという作用効果を示す。
【0046】
前記多価カルボン酸単位には、(a)分岐鎖を有する不飽和脂肪族二価カルボン酸単位、(b)飽和脂肪族二価カルボン酸や、飽和脂肪族三価カルボン酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸単位の他、(c)芳香族二価カルボン酸や芳香族三価カルボン酸等の芳香族多価カルボン酸単位等が包含される。これらの多価カルボン酸単位の含有量は、全カルボン酸に対して、通常、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
【0047】
必要に応じて添加することができる多価カルボン酸単位の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二価カルボン酸単位;無水トリメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単位等を挙げることができる。
【0048】
前記多価アルコール単位には、必要に応じ、少量の脂肪族系の分岐鎖二価アルコール単位や環状二価アルコール単位の他、三価以上の多価アルコール単位が、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加されてもよい。必要に応じて添加される多価アルコール単位を例示すると、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン単位、ポリエチレングリコール単位、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物単位、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物単位、グリセリン単位等が挙げられる。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂において、その分子量分布は、低温定着性の点から、シャープであるのが好ましく、また、その分子量は、比較的低分子量であるのが好ましい。ここで、結晶性ポリエステル樹脂の軟化温度(高架式フローテスターCFT-100D型(島津製作所製)により測定)は、限定されるものではないが、60〜120℃程度が好ましい。
【0050】
(滑剤)
本発明における透明トナーは、滑剤を含有することが好ましい。透明トナーは画像の最上部に位置するため高い耐ホットオフセット性が求められるが、前述のように正接損失(tanδ)を高くすると、貯蔵弾性率が比較的低くなるためにホットオフセット発生のリスクが高くなる。そこで、滑剤を併用することで定着部材との離型性を高め、ホットオフセット発生のリスクを低減させることが好ましい。
【0051】
使用できる滑剤としては流動パラフィン、マイクロリスタンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、及びこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などの脂肪族炭化水素系滑剤、牛脂、魚油などの動物油、やし油、大豆油、菜種油、米ぬかワックス、カルナウバワックスなどの植物油、モンタンワックスなど高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド、脂肪酸ビスアマイド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛などの金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、ポリフッ化ビニリデンなどが使用できるがこれらに限定されるものではない。
以上列記した滑剤の中でも、脂肪酸アマイド系滑剤が好ましく用いられる。
【0052】
滑剤は単独或いは複数組合せて用いることができるが、トナー内部に含有する場合は定着用樹脂(結着樹脂)100重量部に対して0.1〜15重量部、好ましくは1〜7重量部の範囲で含有する。トナー内部に滑剤を含有することにより定着時の耐ホットオフセット性能と定着強度を得ることができ、高い擦り試験強度を得る事ができる。これにより高速の画像形成装置で用いた場合、低温定着性が確保することができる。添加量が0.1重量部よりも少ないとオフセットが発生し易くなり、15重量部よりも多くなるとキャリアスペントは発生しやすくなり、さらに画質が劣化し易くなる。トナー表面層に滑剤を含有する場合は、定着用樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部の範囲で含有する事が好ましい。
【0053】
ここで、トナー(粒子)内部に含有するとは、トナー母体中に含まれるものであり外添されている状態を除くことを意味する。即ち、滑剤がトナー母体中に含まれていれば良く、例えば、滑剤がトナー母体表面に全く露出していないカプセル状に内包されている形態であっても良く、滑剤がトナー母体中において均一あるいは適度に分散され一部が当該トナー母体表面に露出している形態であっても良い。
また、トナー表面層に滑剤を含有するとは、トナー母体の表面に滑剤が付着された形態を意味する。
【0054】
トナー内部に脂肪酸アマイド系の滑剤を含有すると、滑剤としての効果に加え、結晶性ポリエステルの結晶化が促進され、保管安定性を改良することができるため好ましい。脂肪酸アマイド系の滑剤は単独で用いてもよいが、離型性の機能と結晶性ポリエステルの結晶化促進の機能を分離してコントロールするために、脂肪酸アマイド系以外の滑剤と併用してもよい。例えば、離型性に対して効果的であるカルナバワックスやパラフィン系ワックスと脂肪酸アマイド系ワックスを併用して用いてもよい。脂肪酸アマイド系ワックスの例としては、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、エチレン−ビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。特に効果的で好ましい例として、N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドが挙げられる。
【0055】
(結着樹脂)
本発明において、透明トナー及び有彩色トナーのいずれのトナー原材料としても用いられる結着樹脂(定着用樹脂)は、従来公知の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン、ポリ−α−スチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジェン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂などが挙げられる。また、これら樹脂の製造方法も特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合いずれも使用できる。
本発明においては結着樹脂(定着用樹脂)としてポリエステル樹脂を含有することが好ましく、特にポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ポリエステル樹脂は一般的に他の樹脂に比べ、耐熱保存性を維持したまま低温定着が可能であるため本発明には適した結着樹脂である。
【0056】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られる。使用されるアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1、4−ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン、およびビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
また、カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。ここで、ポリエステル樹脂のTgは50〜75℃が好ましい。
【0057】
本発明における透明トナーの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法、また、その他いかなる製法にて製造しても構わない。特に、粉砕法にて製造されたトナーに滑剤を用いた場合、割れ界面である透明トナー表面に滑剤が高確率で存在するようになるため、滑剤が直接的に像担持体と接触することから、像担持体表面に滑剤の薄い膜を形成しやすくなり、透明トナーを像担持体から容易に剥がしたり、再付着を防止したりする効果をより高めることができる。
【0058】
透明トナー画像は、トナー層の厚さを厚くすると高光沢を得られやすくなる。これは、前述の透明トナーの粒の形状がトナー層の幅の中に飲み込まれるため、表面に現れにくくなるからである。本発明者らが検討を行った結果、透明トナーの定着後のトナー層の厚み(透明トナー画像の厚み)は1〜15μmであることが好ましいということを見出した。透明トナー層の定着後の厚さが1μm未満であると高光沢化が難しい。また、15μmを超えると定着のための熱が不足して透明トナーの熱変形が不十分となり、粒の形状が非常に残りやすくなるために光沢度が非常に悪くなる傾向がある。また、定着強度が弱くなるとともに透過性が悪くなり、下地となっているトナーの色再現性が悪くなる。トナー層の厚みは、被記録媒体をミクロトームで切断することで測定が可能である。
【0059】
(着色剤)
本発明に用いられる有彩色トナーに含有される着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量は有彩色トナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0060】
本発明で用いる着色剤は結着樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練される結着樹脂としては、先にあげた結着樹脂と同様のものを用いることができる。
【0061】
(帯電制御剤)
本発明において、透明トナー及び有彩色トナーは、いずれも帯電制御剤を含有することができる。
帯電制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類がある。これらの単独或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの帯電制御剤をトナーに内部添加する場合、定着用樹脂に対して0.1〜10重量部添加することが好ましく、帯電制御剤により着色されている場合もあるため、透明トナーの場合はできるだけ白色又は透明色のものを選定する。
【0062】
(外部添加剤、外添剤)
本発明において、透明トナー、有彩色トナーは、いずれも外部添加剤を含有する事ができる。外部添加剤には例えば、シリカ、テフロン(登録商標)樹脂粉末、ポリ沸化ビニリデン粉末、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤、或いは例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末の如き流動性付与剤、凝集防止剤、樹脂粉末、或いは例えば、酸化亜鉛粉末、酸化アンチモン粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤、また、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として用いることもできる。これらは単独或いは複数組合せて使用することができ、空転等の現像ストレスに対して耐性を持たせるように選択される。
【0063】
本発明における透明トナーの重量平均粒径は3〜8μmであり、粒径分布において、4μm以下の粒子の割合が10〜70個数%、8μm以上の粒子の割合が1〜20体積%、10.08μm以上の粒子の割合が6体積%以下であることが好ましい。
重量平均粒径が8μmより大きいと、現像装置からのトナー飛散が多くなり、装置内を汚染したり、記録媒体(画像媒体)上に地汚れ等の異常画像を発生させたりする原因となる。重量平均粒径が3μmよりも小さいと、粒子一粒に対して供給される熱量が相対的に多くなるため、定着ローラ表面へのトナーの固着が顕著となり、最終画像の画質劣化の原因となる。また、本発明におけるトナーの製法には特に制限はなく、所謂、粉砕法で製造された粉砕トナーでも、重合法で製造された重合トナーでも適用されるが、粉砕法で製造する場合、重量平均粒径が3μmよりも小さいと、粉砕・分級工程が非常に難しくなり、工業的にトナーを生産する上での時間的効率の低下や、歩留り低下の原因となる。
【0064】
透明トナーは、その機能として光沢が最も求められる。高光沢を得るためには熱溶融性が良好であることが必要であるが、その副作用として耐熱保存性の悪化が懸念される。耐熱保存性が悪化する傾向にあるということは、つまりはトナーに凝集体が発生しやすくなる傾向にあることを意味している。
【0065】
本発明における透明トナーは、重量平均粒径を3〜8μmとし、4μm以下の粒子の割合を70個数%以下にすることで、透明トナー特有の懸念事項である凝集体の発生を抑制しつつ、高精細な透明トナー画像を形成することができる。4μm以下の粒子の割合が10個数%未満であると、精細な透明トナー画像の形成がしにくくなる。
【0066】
一方、8μm以上の粒子を1〜20体積%含有すると、透明トナーを記録媒体上に定着させたときにトナー一粒がカバーする面積が大きくなるため、平滑性が高くなり、最終的に得られる画像の光沢が高くなる。特に、正接損失の最大ピーク値が3以上であると、その機能は効率よく発揮される。8μm以上の粒子が1体積%未満であると、この効果は発揮されにくい。8μm以上の粒子の割合が20体積%を超えると、透明トナーの画像が粗くなり平滑性が損なわれるため、光沢度が低下する。
【0067】
また、10.08μm以上の粒子の割合が6体積%より多いと、上記トナーの一粒がカバーする面積が大きくなることに起因する平滑性向上効果よりも、画像が粗くなることによって平滑性が損ねられる効果の方が顕著になるため、結果として光沢性が低下する。また、高精細な透明トナー画像も得られにくくなる。
【0068】
トナー粒子の粒度分布(個数分布、体積分布)の測定にはコールターカウンター法を用いることができ、使用される装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII、III、IV(いずれもコールター社製)等が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
【0069】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子またはトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径や体積平均粒径を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0070】
(二成分現像剤)
本発明に係る電子写真画像形成方法では一成分現像方式と二成分現像方式とのどちらを用いることも可能である。
電子写真現像用トナーとキャリアとからなる二成分現像剤による二成分現像方式を用いる場合、磁性キャリアに用いる磁性体微粒子としてはマグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を使用できる。その形状は粒状、球状、針状のいずれであってもよい。特に高磁化を要する場合は鉄等の強磁性微粒子を用いる事が好ましい。また、化学的な安定性を考慮するとマグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトを用いる事が好ましい。
具体的には、MFL−35S、MFL−35HS(パウダーテック社製)、DFC−400M、DFC−410M、SM−350NV(同和鉄粉工業社製)等が好適な例として挙げられる。
【0071】
強磁性微粒子の種類及び含有量を選択する事により所望の磁化を有する樹脂キャリアを使用する事もできる。この時のキャリアの磁気特性は1,000エルステッドにおける磁化の強さは30〜150emu/gが好ましい。このような樹脂キャリアは磁性体微粒子と絶縁性バインダー樹脂との溶融混練物をスプレードライヤーで噴霧して製造したり、磁性体微粒子の存在下に水性媒体中でモノマーないしプレポリマーを反応、硬化させ縮合型バインダー中に磁性体微粒子が分散された樹脂キャリアを製造できる。
磁性キャリアの表面には正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を固着させたり、樹脂をコーティングしたりして帯電性を制御できる。
表面のコート材(樹脂)としてはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、さらに正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を含んでコーティングする事ができるが、シリコーン樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
【0072】
本発明において、現像装置内に収容される現像剤中のキャリアの重量比率は、85wt%以上98wt%未満であることが好ましい。85wt%未満であると現像装置からのトナーの飛散が発生しやすくなり、不良画像の原因となる。98wt%以上であると、トナーの帯電量が過度に上昇したり、トナーの供給量が不足したりするため、画像濃度が低下し、不良画像の原因となる。
【0073】
(トナーの製造方法)
前述したように、本発明における透明トナー、有彩色トナーを作製する方法には特に制限はなく、例えば、定着用樹脂、滑剤、必要に応じて着色剤、更に必要に応じて帯電制御剤、滑剤、添加剤を均一に分散した定着用樹脂を組合せてヘンシェルミキサー、スーパーミキサーの如き混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダ、エクストルーダーの如き熱溶融混練機を用いて溶融混練して素材類を十分に混合せしめた後、冷却固化後微粉砕及び分級を行ってトナーを得る。この時の粉砕方法としては高速気流中にトナーを包含させ、衝突板にトナーを衝突させそのエネルギーで粉砕するジェットミル方式やトナー粒子同士を気流中で衝突させる粒子間衝突方式、更には高速に回転したローターと狭いギャップ間にトナーを供給し粉砕する機械式粉砕法等が使用できる。
また、トナー材料を有機溶媒相に溶解または分散させた油相を、水系媒体相中に分散させ、樹脂の反応を行った後、脱溶剤し、濾過と洗浄、乾燥することにより、トナーの母体粒子を製造する溶解懸濁法でも可能である。また、ポリエステル伸長法によってトナーの母体を製造してもよい。
【0074】
(画像形成方法)
本発明に係る電子写真画像形成方法では、前述のとおり、記録媒体上に1種以上の有彩色トナーからなる有彩色トナー画像を定着する有彩色トナー画像形成工程と、該有彩色トナー画像上に透明トナーからなる透明トナー画像を重ねて定着し、当該透明トナー画像により部分的もしくは全体的に光沢度を増加させる透明トナー画像形成工程と、を備え、前記透明トナー画像形成工程において透明トナー画像が重ねて定着される下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜350[μm]であることを特徴とする。
ここで、有彩色トナー画像形成工程および透明トナー画像形成工程は、それぞれ電子写真画像形成方法における公知の形態とすることができ、像担持体を一様帯電せしめる帯電工程、帯電した像担持体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成工程、前記静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を記録媒体上に形成する現像工程、及び、記録媒体上の未定着のトナー像を定着させる定着工程を、有する。この他、クリーニング工程、除電工程等を設けても良い。
即ち、一旦有彩色トナー画像を形成するべく、帯電工程から始まる一連の画像形成プロセス(ここでは、有彩色トナー画像形成工程)を行い、有彩色トナー画像を形成した後、次いで、この定着画像である有彩色トナー画像上に透明トナー画像を形成するべく、一連の画像形成プロセス(ここでは、透明トナー画像形成工程)を行い、透明トナー画像を前記有彩色トナー画像上に積層する。
以下に、画像形成プロセスの詳細について図面を参照しながら説明する。
【0075】
本発明で用いられる電子写真現像装置の一例を示す概略構成を図5に示す。
図5において、符号101Aは駆動ローラ、101Bは従動ローラ、102は感光体ベルト、103は帯電器、104はレーザー書き込み系ユニット、105A〜105Dはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット、105Eは透明のトナーを収容する現像ユニット、106は給紙カセット、107は中間転写ベルト、107Aは中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ、107Bは中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ、108はクリーニング装置、109は定着ローラ、109Aは加圧ローラ、110は排紙トレイ、113は紙転写ローラ示している。
【0076】
図5に示すカラー画像形成装置では、前記転写ドラムに対して可撓性の中間転写ベルト107が使用されており、該中間転写体たる中間転写ベルト107は駆動軸ローラ107Aと一対の従動軸ローラ107Bに張架されて時計回り方向に循環搬送されていて、一対の従動軸ローラ107B間のベルト面を駆動ローラ101Aの外周の感光体ベルト102に対して水平方向から当接させた状態としている。
【0077】
通常のカラー画像出力時(有彩色トナー画像形成工程)は、感光体ベルト102上に形成される各色のトナー像は、形成の都度前記中間転写ベルト107に転写されて、カラーのトナー像を合成し、これを給紙カセット106から搬送される転写紙に対し紙転写ローラ113によって一括転写し、転写後の転写紙は定着装置の定着ローラ109と加圧ローラ109Aの間へと搬送され、定着ローラ109と加圧ローラ109Aによる定着後、排紙トレイ110に排紙される。
【0078】
105A〜105Eの現像ユニットがトナーを現像すると、現像ユニットに収容されている現像剤のトナー濃度が低下する。現像剤のトナー濃度の低下はトナー濃度センサ(図示せず)により検知される。トナー濃度の低下が検知されると、各現像ユニットにそれぞれ接続されているトナー補給装置(図示せず)が稼動し、トナーを補給してトナー濃度を上昇させる。このとき、補給されるトナーは、現像ユニットに現像剤排出機構が備わっていれば、キャリアとトナーが混合されている所謂トリクル現像方式用現像剤であってもよい。
【0079】
図5では中間転写ベルト上にトナー像を重ねて画像を形成しているが、中間転写ベルトを用いることなく転写ドラムから直接に記録媒体へ転写を行なうシステムにおいても、同様に本発明の電子写真画像形成方法を適用することができる。
【0080】
図6は、本発明で用いられる現像装置の一例を示す概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図6において、潜像担持体である感光体ドラム(20)に対向して配設された現像装置(40)は、現像剤担持体としての現像スリーブ(41)、現像剤収容部材(42)、規制部材としてのドクターブレード(43)、支持ケース(44)等から主に構成されている。なお、以下において感光体ドラム(20)は単に感光体(20)とも称することもある。
【0081】
感光体ドラム(20)側に開口を有する支持ケース(44)には、内部にトナー(21)を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー(45)が接合されている。トナーホッパー(45)に隣接した、トナー(21)と、キャリア(23)からなる二成分現像剤を収容する現像剤収容部(46)には、トナー(21)とキャリア(23)を撹拌し、トナー(21)に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤撹拌機構(47)が設けられている。
トナーホッパー(45)の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ(48)およびトナー補給機構(49)が配設されている。トナーアジテータ(48)およびトナー補給機構(49)は、トナーホッパー(45)内のトナー(21)を現像剤収容部(46)に向けて撹拌しながら送り出す。
【0082】
感光体(20)とトナーホッパー(45)との間の空間には、現像スリーブ(41)が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向(反時計回り方向)に回転駆動される現像スリーブ(41)は、キャリア(23)による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置(40)に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての磁石を有する。
【0083】
現像剤収容部材(42)の、支持ケース(44)に取り付けられた側と対向する側には、ドクターブレード(43)が一体的に取り付けられている。ドクターブレード(43)は、この例では、その先端と現像スリーブ(41)の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
【0084】
このような装置を非限定的に用い、本発明の画像形成方法は、次のように遂行される。即ち、上記構成により、トナーホッパー(45)の内部からトナーアジテータ(48)、トナー補給機構(49)によって送り出されたトナー(21)は、現像剤収容部(46)へ運ばれ、現像剤撹拌機構(47)で撹拌されることによって、所望の摩擦/剥離電荷が付与され、キャリア(23)と共に現像剤として、現像スリーブ(41)に担持されて感光体(20)の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー(21)のみが感光体(20)上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体(20)上にトナー像が形成される。
【0085】
図7は、図6の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図7において、ドラム状の感光体[感光体ドラム:像担持体](20)の周囲に、像担持体帯電部材[帯電部材:帯電手段](32)、像露光系[露光手段](33)、現像装置[現像手段](40)、転写機構[転写装置:転写手段](50)、クリーニング機構[クリーニング装置:クリーニング手段](60)、除電ランプ(除電手段]70)が配置されていて、この例の場合、帯電部材(32)の表面は、感光体ドラム(20)の表面とは約0.2mmの間隙を置いて非接触状態にあり、帯電部材(32)により感光体ドラム(20)に帯電を施す際、帯電部材(32)に図示してない電圧印加手段によって直流成分に交流成分を重畳した電界により、感光体ドラム(20)を帯電させることにより、帯電ムラを低減することが可能であり、効果的である。現像方法を含む画像形成方法は、以下の動作で行われる。
【0086】
画像形成の一連のプロセスは、ネガ−ポジプロセスで説明を行うことができる。有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される感光体(20)は、除電ランプ(70)で除電され[除電工程]、帯電チャージャ、帯電ローラ等の帯電部材(32)で均一にマイナスに帯電され[帯電工程]、レーザー光学系等の像露光系(33)から照射されるレーザー光で潜像形成(この例では、露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる[静電潜像形成工程(露光工程)]。
【0087】
レーザー光は、半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により、感光体(20)の表面を、感光体(20)の回転軸方向に走査する。このようにして形成された潜像が、現像装置(40)にある現像剤担持体である現像スリーブ(41)上に供給されたトナーおよびキャリアの混合物からなる現像剤により現像され、トナー像が形成される[現像工程]。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ(41)に、感光体(20)の露光部と非露光部の間に、ある適当な大きさの直流電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0088】
一方、転写媒体(例えば、紙)(80)が、給紙機構(図示せず)から給送され、上下一対のレジストローラ(図示せず)で画像先端と同期をとって、感光体(20)と転写装置(50)との間に給送され、トナー像が転写される[転写工程]。このとき、転写装置(50)には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、転写媒体(80)は、感光体ドラム(20)より分離され、転写像が得られる。
【0089】
また、感光体ドラム(20)上に残存するトナーは、クリーニング部材としてのクリーニングブレード(61)により、クリーニング装置(60)内のトナー回収室(62)に回収される[クリーニング工程]。
回収されたトナーは、トナーリサイクル手段(図示せず)により現像剤収容部(図6の符号46)及び/またはトナーホッパー(45)に搬送され、再使用されてもよい。符号47は現像剤撹拌機構を示す。
【0090】
画像形成装置は、上述の現像装置を複数配置し、転写媒体上へトナー像を順次転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する[定着工程]装置であってもよく、一旦中間転写媒体上へ複数のトナー像を転写し、これを一括して転写媒体に転写後同様の定着[定着工程]を行う装置であってもよい。
【0091】
図8の概略構成図に、本発明の画像形成方法で用いられる画像形成装置の他の例を示す。図8において、感光体(20)は、導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられており、駆動ローラ(24a)、(24b)により駆動され、帯電部材(32)による帯電、像露光系(33)による像露光、現像装置(40)による現像、転写装置[転写機構](50)を用いる転写、クリーニング前露光光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段(64)およびクリーニングブレード(61)によるクリーニング、除電ランプ(70)による除電が繰り返し行われる。図8においては、感光体(20)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光が行われる。
【0092】
(プロセスカートリッジ)
本発明に係るプロセスカートリッジは、像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像をトナーもしくはトナーとキャリアからなる現像剤を用いて可視像とする現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられ、上述の電子写真画像形成方法を用いることを特徴とする。
図9の概略構成図に、本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す。
図9に示すプロセスカートリッジでは、上述の現像剤を使用し、感光体(20)と、近接型のブラシ状接触帯電手段(32)、上述の現像剤を収納する現像手段(40)、クリーニング手段としてのクリーニングブレード(61)を少なくとも有するクリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。本発明においては、上述の電子写真画像形成装置の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0094】
[ポリエステル樹脂A〜Kの作成]
芳香族ジオール成分及びエチレングリコール、グリセリン、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イタコン酸より選ばれた単量体を表1の組成に従って、蒸留塔を有する5リットルのオートクレーブに全量が4000gとなるように仕込み、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い樹脂を得た。なお、架橋反応は撹拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
【0095】
【表1】

【0096】
* BPA−PO:ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
* BPA−EO:ポリオキシエチレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
【0097】
[ポリエステル樹脂A〜Kの物性評価作成]
また、得られたポリエステル樹脂A〜Kについて、ガラス転移温度(ガラス転移点)、正接損失ピーク温度、酸価、分子量(数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw)を、以下の測定方法に従い測定した。
【0098】
<ポリエステル樹脂の軟化点の測定>
フローテスター(島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出し、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0099】
<ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、DSC210)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミニウムパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0100】
<ポリエステル樹脂の酸価の測定>
JIS K0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
<ポリエステル樹脂の正接損失ピーク温度(℃)の測定>
試料0.8g、φ20mmのダイスを用い30MPaの圧力で成型し、TA社製ADVANCED RHEOMETRIC EXPANSION SYSTEMでφ20mmのパラレルコーンを使用して周波数1.0Hz、昇温速度2.0℃/分、歪み0.1%(自動歪み制御:許容最小応力1.0g/cm、許容最大応力500g/cm、最大付加歪み200%、歪み調整200%)、GAPはサンプルセット後FORCEが0〜100gmになる範囲で、損失弾性率(G”)、貯蔵弾性率(G’)、正接損失(tanδ)の測定し、正接損失ピーク温度(℃)を求めた。なお、このとき、貯蔵弾性率(G’)が10以下になった場合の正接損失(tanδ)の値は除外した。
【0101】
<ポリエステル樹脂の分子量の測定>
ポリエステル樹脂の数平均分子量、重量平均分子量は、THF溶解分の分子量分布をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置GPC−150C(ウォーターズ社製)によって測定した。
測定は、カラム(KF801〜807:ショウデックス社製)を使用し、以下の方法で行う。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流した。試料0.05gをTHF5gに十分に溶かした後、前処理用フィルター(例えば、孔径0.45μm クロマトディスク(クラボウ製))で濾過し、最終的に試料濃度として0.05〜0.6重量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料のTHF溶解分の重量平均分子量Mw、個数平均分子量Mnの測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0102】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えばPressureChemical Co.、あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×106、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0103】
[結晶性ポリエステル樹脂Aの作成]
結晶性ポリエステル樹脂Aは、下記表2に示した組成物4000gとハイドロキノン4gを、温度計、攪拌器、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた容量5リットルの4つ口丸底フラスコ内に入れ、このフラスコをマントルヒーターにセットし、窒素ガス導入管より窒素ガスを導入してフラスコ内を不活性雰囲気下に保った状態で昇温し、160℃に保って5時間、続いて200℃で1時間反応させたのち、8.3kPaにて1時間反応させ、結晶性ポリエステルAを得た。結晶性ポリエステルAの軟化点は70[℃]であった。
【0104】
【表2】

【0105】
[トナーの作製]
(透明トナー1の製造例)
ポリエステル樹脂A 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0106】
上記のトナー原材料を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物は室温まで冷却後、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で重量平均粒径が5.6±0.2μmとなるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)1.0重量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、透明トナー1を製造した。
【0107】
(透明トナー2の製造例)
ポリエステル樹脂B 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0108】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー2を製造した。
【0109】
(透明トナー3の製造例)
ポリエステル樹脂C 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 5重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0110】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー3を製造した。
【0111】
(透明トナー4の製造例)
ポリエステル樹脂C 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 15重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0112】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー4を製造した。
【0113】
(透明トナー5の製造例)
ポリエステル樹脂D 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 5重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0114】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー5を製造した。
【0115】
(透明トナー6の製造例)
ポリエステル樹脂D 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0116】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー6を製造した。
【0117】
(透明トナー7の製造例)
ポリエステル樹脂E 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 2重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0118】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー7を製造した。
【0119】
(透明トナー8の製造例)
ポリエステル樹脂E 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 5重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0120】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー8を製造した。
【0121】
(透明トナー9の製造例)
ポリエステル樹脂F 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 20重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0122】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー9を製造した。
【0123】
(透明トナー10の製造例)
ポリエステル樹脂F 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 15重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0124】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー10を製造した。
【0125】
(透明トナー11の製造例)
ポリエステル樹脂G 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 15重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 7重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0126】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー11を製造した。
【0127】
(透明トナー12の製造例)
ポリエステル樹脂G 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 7重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0128】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー12を製造した。
【0129】
(透明トナー13の製造例)
ポリエステル樹脂H 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0130】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー13を製造した。
【0131】
(透明トナー14の製造例)
ポリエステル樹脂H 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
ステアリン酸アマイド(花王/脂肪酸アマイドS) 2重量部
【0132】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー14を製造した。
【0133】
(透明トナー15の製造例)
ポリエステル樹脂H 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 10重量部
【0134】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー15を製造した。
【0135】
(透明トナー16の製造例)
ポリエステル樹脂H 100重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
【0136】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー16を製造した。
【0137】
(透明トナー17の製造例)
水100部、ビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水分散液(三洋化成工業株式会社製、固形分20%)10部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノール MON−7、三洋化成工業株式会社製)20部、高分子保護コロイドであるカルボキシメチルセルロース(セロゲンBSH、三洋化成工業株式会社製)の1%水溶液を40部、および酢酸エチル15部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを水相とする。
【0138】
撹拌棒および温度計をセットした容器に、ポリエステル樹脂Iを230部、結晶性ポリエステル樹脂A40部、カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1)40部、および酢酸エチル200部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問かけて30℃にまで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス株式会社製)を用いて、送液速度:1.2Kg/hr、ディスク周速度:10m/秒、0.5mmジルコニアビーズ充填量:80体積%、パス数:5回の条件で、ワックスの分散を行い、ワックス分散液を得た。
【0139】
前記水相1250部、前記ワックス分散液1130部、イソブチルアルコール1部、イソホロンジアミン7部、乳化安定剤UCAT660M(三洋化成工業株式会社製)5部を容器に入れ、28℃環境下において、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて9,000rpmで30分間混合し、水系媒体分散液を得た。
その後、前記水系媒体分散液を58℃まで昇温し、TKホモミキサーを用いて回転数1,500rpmで1時間更に分散混合し乳化スラリーを得た。
【0140】
撹拌機および温度計をセットした容器に、前記乳化スラリーを投入し、35℃で10時間脱溶剤した後、45℃で12時間熟成を行い、有機溶媒が留去された分散液を得た。前記分散液100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで15分間撹拌した後、減圧濾過した。その後、濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで15分間撹拌した後、減圧濾過した。その後、濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーTKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで15分間撹拌した後、減圧濾過した。その後、濾過ケーキにイオン交換水500部を加え、TKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで30分間撹拌した後、減圧濾過し、濾過ケーキを得た。
【0141】
上記の濾過ケーキを循風乾燥機にて40℃で24時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た。
【0142】
次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)1.0重量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、透明トナー17を製造した。
【0143】
(透明トナー18の製造例)
ポリエステル樹脂J 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 15重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0144】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー18を製造した。
【0145】
(透明トナー19の製造例)
ポリエステル樹脂K 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 15重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1) 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(花王/EB−P) 2重量部
【0146】
上記のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー19を製造した。
【0147】
以上の透明トナー製造例によって得られた透明トナー1〜19を表3に示す。
【0148】
【表3】

【0149】
(カラートナーの製造例)
[マスターバッチの製造例]
カーボンブラック(キャボット社製、リーガル400R)50部、ポリエステル樹脂(三洋化成工業製、RS801)50部を、更には水30部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて160℃で50分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して、ブラックマスターバッチ1を得た。また、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Yellow 155をそれぞれカーボンブラックの代わりに使用すること以外は同様にして、マゼンタマスターバッチ1、シアンマスターバッチ1、イエローマスターバッチ1を作成した。
【0150】
[カラートナーの製造例]
ポリエステル樹脂I 92重量部
結晶性ポリエステル樹脂A 15重量部
カルナウバワックス(セラリカNODA/カルナウバワックスNo.1)4重量部
ステアリン酸アマイド(花王/脂肪酸アマイドS) 2重量部
ブラックマスターバッチ1 16重量部
【0151】
上記のトナー原材料を使う以外は透明トナー1と同様にして、ブラックトナー1を製造した。
また、マゼンタマスターバッチ1、シアンマスターバッチ1、イエローマスターバッチ1をそれぞれブラックマスターバッチ1の代わりに使用すること以外は同様にして、それぞれマゼンタトナー1、シアントナー1、イエロートナー1を製造した。
【0152】
(実施例1)
透明トナー製造例1で作製した透明トナー1及びカラートナー製造例で作成した各カラートナー各5質量%と、コーティングフェライトキャリア95質量%を、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し帯電させ、透明トナー現像剤1、ブラック現像剤1、マゼンタ現像剤1、シアン現像剤1、イエロー現像剤1を作製した。
透明トナー現像剤1を図5の現像ユニット105E内に収容し、現像ユニット105A〜Dにはそれぞれイエロー現像剤1、マゼンタ現像剤1、シアン現像剤1、ブラック現像剤1を収容した。
【0153】
<光沢度>
図5の画像形成装置を用いて透明トナー及び有彩色トナーの出力を行なった。平均表面粗さRaが0.7μmの紙上に、付着量0.4mg/cm2のカラートナーのベタ画像を作成すべく露光、現像、転写を行い、線速160mm/秒、温度130℃、NIP幅11mmで定着し、凹凸の平均長さSmを測定した後に、カラートナー画像上の一部に、厚さが7μmとなるように付着量を調整した透明トナーのベタ画像を重ねて形成し、線速160mm/秒、温度160℃、NIP幅11mmで定着し、透明トナー画像部分の凹凸の平均長さSmと光沢度、カラートナー画像部分の光沢度を測定した。
透明トナー画像部分の光沢度の許容範囲は40%以上、光沢度コントラスト(カラートナー画像部分と透明トナー画像部分の光沢度の差)の許容範囲は15point以上である。
【0154】
<定着性>
図5の画像形成装置を用いて光沢度の評価の場合と同様に画像を形成し、透明トナー定着時の定着温度を変化させ、コールドオフセット温度(定着下限温度)とホットオフセット温度(耐ホットオフセット温度)を求めた。各特性評価の基準は以下の通りである。
【0155】
[低温定着性]
◎:130℃未満
○:130以上145℃未満
△:145以上160℃未満
×:160℃以上
[耐ホットオフセット性]
◎:200℃以上
○:185℃以上200℃未満
△:170℃以上185℃未満
×:170℃未満
【0156】
<保存性>
それぞれのトナー10gを30mlのスクリューバイアル瓶に入れタッピングマシンで100回タッピングした後、45℃24時間恒温槽で保管し、室温に戻した後、針入度試験機で針入度を測定し、耐熱保存評価とした。針入度が10mm以下のものは×、10〜15mmは△、15〜20mmは○、20mm以上は◎とした。
【0157】
(比較例1)
カラートナーの定着温度を130℃、付着量を0.8mg/cm2、用紙の平均表面粗さRaを0.2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0158】
(実施例2)
カラートナーの定着温度を150℃、付着量を0.8mg/cm2、用紙の平均表面粗さRaを0.2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0159】
(実施例3)
カラートナーの定着温度を150℃、付着量を0.6mg/cm2、用紙の平均表面粗さRaを0.7μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0160】
(実施例4)
カラートナーの定着温度を140℃、付着量を0.6mg/cm2、用紙の平均表面粗さRaを0.7μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0161】
(実施例5)
カラートナーの定着温度を130℃、付着量を0.4mg/cm2、用紙の平均表面粗さRaを1.7μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0162】
(比較例2)
カラートナーの定着温度を120℃、付着量を0.4mg/cm2、用紙の平均表面粗さRaを1.7μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0163】
(実施例6〜23)
透明トナーとして透明トナー2〜19を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0164】
(実施例24)
透明トナー層の厚さを0.8μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0165】
(実施例25)
透明トナー層の厚さを1.2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0166】
(実施例26)
透明トナー層の厚さを14μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0167】
(実施例27)
透明トナー層の厚さを16μmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0168】
上記実施例1〜27、比較例1、2の組み合わせ及び評価結果を表4に示す。
【0169】
【表4】

【0170】
表4から明らかなように、実施例1〜27においてはいずれも、効率的に光沢を発現させ、かつ、透明トナー画像を形成している部分と形成していない部分との光沢のコントラストを大きくして、より光沢が栄えることがわかった。
一方、比較例1及び2においては、いずれかの光沢度の評価において「※」で記す許容範囲外の評価判定が含まれており、本発明の目的とする課題が達成できず実使用に耐えないレベルである。
すなわち、本発明により、効率的に光沢を発現させ、かつ、透明トナー画像を形成している部分と形成していない部分との光沢のコントラストを大きくして、より光沢が栄える電子写真画像形成方法及び、その画像形成方法を用いることのできるプロセスカートリッジを提供することが可能となることがわかった。
【符号の説明】
【0171】
(図2、図3、図4の符号)
1 紙
2 セルロースの繊維
3 トナー層
4 有彩色トナー層
5 透明トナー層
(図5の符号)
101A 駆動ローラ
101B 従動ローラ
102 感光体ベルト
103 帯電器
104 レーザー書き込み系ユニット
105A〜105D それぞれイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット
105E 透明のトナーを収容する現像ユニット
106 給紙カセット
107 中間転写ベルト
107A 中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ
107B 中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ
108 クリーニング装置
109 定着ローラ
109A 加圧ローラ
110 排紙トレイ
113 紙転写ローラ
(図6の符号)
20 感光体ドラム
21 トナー
23 キャリア
40 現像装置
41 現像スリーブ
42 現像剤収容部材
43 ドクターブレード(現像剤供給規制部材)
44 支持ケース
45 トナーホッパー
46 現像剤収容部
47 現像剤撹拌機構
48 トナーアジテータ
49 トナー補給機構
(図7の符号)
20 感光体ドラム
32 像担持体帯電部材[帯電部材]
33 像露光系
40 現像装置
41 現像スリーブ
45 トナーホッパー
47 現像剤撹拌機構
50 転写機構[転写装置]
60 クリーニング機構[クリーニング装置]
61 クリーニングブレード
62 トナー回収室
70 除電ランプ
80 転写媒体
(図8の符号)
20 感光体
24a 駆動ローラ
24b 駆動ローラ
26 クリーニング前露光光源
32 帯電部材
33 像露光系
40 現像装置
50 転写装置[転写機構]
61 クリーニングブレード
64 ブラシ状クリーニング手段
70 除電ランプ
(図9の符号)
20 感光体
32 ブラシ状接触帯電手段[帯電手段]
40 現像手段[現像装置]
61 クリーニングブレード[クリーニングブレード手段]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0172】
【特許文献1】特開平4−278967号公報
【特許文献2】特開平4−362960号公報(特許第3146367号公報)
【特許文献3】特開平9−200551号公報
【特許文献4】特開平5−158364号公報
【特許文献5】特開平8−220821号公報(特許第2750105号公報)
【特許文献6】特開2009−109926号公報
【特許文献7】特開平4−338984号公報(特許第3030576号公報)
【特許文献8】特許第3473588号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に1種以上の有彩色トナーからなる有彩色トナー画像を定着する有彩色トナー画像形成工程と、
該有彩色トナー画像上に透明トナーからなる透明トナー画像を重ねて定着し、当該透明トナー画像により部分的もしくは全体的に光沢度を増加させる透明トナー画像形成工程と、を備え、
前記透明トナー画像形成工程において透明トナー画像が重ねて定着される下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜350[μm]であることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【請求項2】
前記下地となる有彩色トナー画像は、表面のSm値が50〜250[μm]であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項3】
前記透明トナーは、滑剤を含有し、且つ、粘弾性評価により得られ下記式(1)で算出される正接損失の最大ピーク値が80〜160[℃]の範囲にあり、該正接損失の最大ピーク値が3以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真画像形成方法。
損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)
【請求項4】
前記透明トナーは、120〜160[℃]の範囲における前記貯蔵弾性率(G’)が1[Pa]以上1×10[Pa]以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真画像形成方法。
【請求項5】
前記透明トナーは、結晶性のポリエステルを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真画像形成方法。
【請求項6】
前記透明トナーは、70〜90[℃]の範囲における前記貯蔵弾性率(G’)が1×10[Pa]以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真画像形成方法。
【請求項7】
前記透明トナーは、前記滑剤を内部に含有してなり、
該滑剤は、脂肪酸アマイド系滑剤を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真画像形成方法。
【請求項8】
前記脂肪酸アマイド系滑剤は、N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドであることを特徴とする請求項7に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項9】
前記透明トナー画像は、前記透明トナー画像形成工程により定着された後の厚さが1〜15[μm]であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真画像形成方法。
【請求項10】
像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像をトナーもしくはトナーとキャリアからなる現像剤を用いて可視像とする現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられ、
請求項1乃至9のいずれかに記載の電子写真画像形成方法を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−208217(P2012−208217A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72348(P2011−72348)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】