説明

電子写真画像形成装置用ユニット

【課題】従来よりも厳しい高温環境下で、且つ、長期期間の物流・保管・使用されるケースが増加しており、前記のような放置での寸法変化が起こりにくい枠体で構成されたユニットを提供することである。
【解決手段】ゴム変性スチレン系樹脂を含む樹脂を成形した枠体の少なくとも一部が、無機充填剤を含有するものであることを特徴とする電子写真画像形成装置用ユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタや複写機等の電子写真プロセスを採用する電子写真画像形成装置本体に着脱自在な電子写真画像形成装置用ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置の例としては、例えば電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、レーザープリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置及びワ−ドプロセッサ等が含まれる。
【0003】
また、電子写真画像形成装置用ユニットとは、画像形成装置本体に対して着脱可能であり、トナー収容部と現像手段、クリーニング手段と帯電手段と電子写真感光体が一体的にユニット化された部材である。トナー容器や、トナー収容部と現像手段のみが一体的にされたものやクリーニング手段と帯電手段と電子写真感光体のみが一体的になったものも含まれる。この種のユニット方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずにユーザー自身で行うことができるので、格段に操作性を向上させることができる。そのため、ユニット方式は電子写真画像形成装置において広く用いられている。
【0004】
一般的に電子写真画像形成装置用ユニットは、枠体部分を熱可塑性樹脂で構成されている。その一方で、電子写真画像形成装置に用いられるユニットの枠体はその寸法精度は高いものが要求される。そのため、ユニットの枠体に用いられる熱可塑性樹脂材料としては、成形後はもちろんのこと、長期に放置された場合でも、変形が抑制され、当初の高い寸法精度が維持されるものでなければならない。特許文献1には、かかるユニットの枠体の形成に用いる材料について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-31652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、画像形成装置や電子写真画像形成装置用ユニットは、従来よりも厳しい高温環境下で、且つ、長期期間の物流・保管・使用されるケースが増加している。高温環境下では、熱可塑性樹脂の変形は起こりやすい。そのため、従来以上に放置での変形が起こりにくい枠体で構成されたユニットが求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、厳しい高温環境下で、且つ、長期期間の放置でも枠体の変形の度合いが小さく、高い寸法精度が維持される電子写真画像形成装置用ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱自在に構成されてなる電子写真画像形成装置用ユニットであって、少なくとも一部がゴム変性スチレン系樹脂を含む樹脂を成形した枠体を有し、該ゴム変性スチレン系樹脂を含む樹脂は、無機充填剤を含有する電子写真画像形成装置用ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無機充填剤を含有するゴム変性スチレン系樹脂で成形された枠体からなることにより、本発明の電子写真画像形成装置用ユニットは優れた高温環境における変形抑制効果を備えている。また、ユニットとして求められるその他の機械特性も実用に耐える優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における電子写真画像形成装置用ユニットの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における電子写真画像形成装置用ユニットの主断面概略図である。
【図3】本発明の実施の形態における電子写真画像形成装置本体の主断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる電子写真画像形成装置用ユニット(以下、単に「ユニット」ともいう)、およびそれを含む電子写真画像形成装置(以下、「画像形成装置」という)の例を図1〜図3に従って説明する。なお、本発明の電子写真画像形成装置用ユニットが以下に説明されるユニットに限定されるわけではない。
【0012】
また、本発明に係るユニットは、電子写真画像形成装置の本体に対して着脱自在に構成されてなり、トナー収容部と現像手段、クリーニング手段と帯電手段と電子写真感光体が一体的にユニット化された部材である。トナー容器や、トナー収容部と現像手段のみが一体的にされたものやクリーニング手段と帯電手段と電子写真感光体のみが一体的になったものも含まれる。
【0013】
図1〜図3を用いて、像担持体、および像担持体に作用するプロセス手段を備えたユニット、ならびにそれを含む画像形成装置を説明する。図1にユニットの斜視図、図2にユニットの主断面図、図3にユニットを含む画像形成装置の主断面図を示す。
【0014】
図1〜図3に示される電子写真画像形成装置用ユニットは、像担持体と、像担持体に作用するプロセス手段を備える。ここでプロセス手段としては、例えば像担持体の表面を帯電させる帯電手段、像担持体にトナー像を形成する現像装置、像担持体表面に残留したトナーを除去するためのクリーニング手段等が含まれる。
【0015】
図2に示されるように、ユニットは、像担持体である有機感光体ドラム7、帯電手段である帯電ローラ8、クリーニング手段であるクリーニングブレード10aを配したクリーニング枠体13;現像ローラ9cと現像ブレード9dを一体的に支持している現像枠体12;トナーを収納したトナー枠体11(トナー上方枠体11aとトナー下方枠体11bより構成される)によって構成され得る。
【0016】
さらに、ユニットを構成する枠体としては、図1に示されたように、現像枠体12とトナー枠体11、もしくはそのいずれかの枠体の側面に、ドラム軸受け38や、駆動ギア列(不図示)等を覆っているサイドカバー枠体90,91なども含み得る。
【0017】
図1および2に示されるユニットは、図3に示される電子写真画像形成装置Aに装着されて電子写真画像の形成に用いられる。
【0018】
電子写真画像形成装置の下部に装着された給紙カセット3aから記録媒体2をピックアップローラ3bで送り出し、ついで搬送ローラ3cによって記録媒体2を搬送し、レジストローラ3eで記録媒体2を待機させる。
【0019】
この記録媒体2と同期して、有機感光体ドラム7に露光装置1から選択的に露光して潜像を形成する。その後、トナー枠体11に収納したトナーを現像ブレード9dにより現像ローラ9c表面に薄層担持し、現像ローラ9cに現像バイアスを印加することによって、潜像に応じて有機感光体ドラム7にトナーを供給してトナー像を形成する。
【0020】
前記有機感光体ドラム7上のトナー像の形成とタイミングを合せてレジストローラ3eから転写ローラ4と感光体ドラム7の対向部へ記録媒体2を搬送する。搬送される記録媒体2上に転写ローラ4へのバイアス電圧印加によって、トナー像を転写する。転写後、クリーニング手段10によって有機感光体ドラム7上の残留トナーを除去する。詳細には、クリーニングブレード10aによって有機感光体ドラム7に残留したトナーを掻き落とすと共に、スクイシート(不図示)によってすくい取り、掻き落とされたトナーを廃トナー溜め10bへ集めることによってクリーニングが行われる。
【0021】
またトナー像が転写された記録媒体2は、定着装置5へ搬送されて画像定着され、排紙ローラ3g、3h、3iによって装置上部の排出トレイ6に排出される。
【0022】
本発明の電子写真画像形成装置用ユニットの枠体は、少なくとも一部が、ゴム変性スチレン系樹脂を含む樹脂で成形されてなるものである。
【0023】
ゴム変性スチレン系樹脂とは、ビニル芳香重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいう。一般的にはゴム状重合体をビニル芳香族単量体(および不活性溶媒を加えた液)に溶解し、撹拌か塊状重合、塊状懸濁重合、または溶液重合を行い、ゴム状重合体を析出し、粒子化することにより得られる。もっとも、重合法に限定されるものではない。
【0024】
上記のビニル芳香族単量体としては、スチレンのほか、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等を挙げることができる。これらはその2種以上を併用しても良い。上記の材料の中でも、スチレンが特に好適に用いられる。
【0025】
また、前記ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン・イソプレン共重合体、天然ゴム、エチレン・プロピレン共重合体を挙げることができる。中でも、ポリブタジエンおよびスチレン・ブタジエン共重合体が好ましい。本発明の樹脂組成物を構成するゴム変性スチレン系樹脂のマトリックス部分の重量平均分子量は、100000〜400000であり、Mw/Mnが1.5〜5.0の範囲のものであることが好ましい。
【0026】
上記ゴム変性スチレン系樹脂のゴム状重合体含量について特に制約はないが、一般的には3〜15重量%である。更に上記ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム粒子の平均粒子径は、0.5〜6.0ミクロンの範囲に制御される。また、前記ゴム変性スチレン系樹脂のゲル含量(トルエン不溶分)は、常法の10〜40重量%に調整される。
【0027】
本発明では、ゴム変性スチレン系樹脂に無機充填剤が含有されている。無機充填剤の添加により、耐ゴム変性スチレン系樹脂のミクロな分子運動や流動が抑制され、高温条件下での長期放置でも寸法の変化が抑制される。
【0028】
本発明では、無機充填剤には、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(板状充填剤、粉粒状充填剤など)が含まれる。
【0029】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、などが例示できる。
非繊維状充填剤のうち、板状充填剤には、例えば、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。
【0030】
粉粒状充填剤には、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイト等)、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)、金属の炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)、ハイドロタルサイト、金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、金属粉末(例えば、炭化ケイ素など)などが含まれる。上記の充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせても使用できる。
【0031】
また、電子写真画像形成装置用ユニットでは、高圧のバイアスが印加される。タルク、クレー、炭酸カルシウムが添加された本発明のユニットでは、高圧バイアスのリークによる枠体上でのトラッキングが抑制される点でも好ましい。
【0032】
無機充填剤は、表面処理剤により、表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、種々のカップリング剤を使用することができる。カップリング剤としては通常はシラン系、クロム系、チタン系等のカップリング剤が挙げられる。中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、ビニルトリクロロシラン化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン化合物等のシラン系カップリング剤を含むものが好ましい。この際、非イオン・陽イオン・陰イオン型等各種の界面活性剤や脂肪酸、金属石鹸、各種樹脂等の分散剤による処理を合わせて行うこともゴム変性スチレン系樹脂への無機充填剤の分散性の向上の点で好ましい。
【0033】
無機充填剤の配合方法は、本発明の効果を損なわない方法であれば、特に規定はされず、例えば、ゴム変性スチレン系樹脂、無機充填剤を同時に配合しても、順次配合しても良い。
【0034】
また、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で他の難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、補強剤等を添加できる。
【0035】
ゴム変性スチレン系樹脂との配合方法として、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造することができる。ゴム変性スチレン系樹脂と配合する場合、その中でも押出機による混練りが、生産性の面で好ましい。混練り温度は、ベース樹脂の好ましい加工温度に従えばよい。ユニット枠体の成形方法としては、従来知られている方法を用いることが出来る。その中でも、射出成型方法が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下において、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明をする。
【0037】
ゴム変性スチレン系樹脂と無機充填剤を、表1に示した配合に従い計量し混合したのちに、2軸押し出し機を用いて、180℃〜240℃で溶融混練をして、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを180℃〜240℃の温度でユニットの枠体や物性測定の試験片に射出成型法で成形した。
【0038】
実施例および比較例で製造した材料の評価は以下のようにして評価をした。
・高温環境における変形評価
表1にある材料配合で成形した枠体を用いたトナー収容部と現像手段、クリーニング手段と帯電手段と電子写真感光体が一体的にされた一体型ユニットを50℃の環境で30日間放置をして、寸法の変化量を測定した。
・曲げ弾性率評価:JIS K7171により測定をした。
・シャルピー衝撃性評価:JIS K7111により測定をした。
・荷重たわみ温度評価:JIS K7191により測定をした。
【0039】
【表1】

【0040】
表1にあるように、本発明のユニットの枠体は、高温での長期間放置でも寸法変形量が小さい。また、その他ユニットの枠体求められる機械特性も優れている。
【0041】
実施例1〜4の一体型ユニットを、温度:50℃、相対湿度:60%環境で30日放置し、その後にそのユニットを通常環境で、プリンタに装着して、画出しを行った。
画像は正常なもので問題は無かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真画像形成装置の本体に着脱自在に構成されてなる電子写真画像形成装置用ユニットであって、少なくとも一部がゴム変性スチレン系樹脂を含む樹脂を成形した枠体を有し、
該ゴム変性スチレン系樹脂を含む樹脂は、無機充填剤を含有することを特徴とする電子写真画像形成装置用ユニット。
【請求項2】
前記無機充填剤が、タルク、クレーおよび炭酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の電子写真画像形成装置用ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−108368(P2012−108368A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257973(P2010−257973)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】