説明

電子写真画像形成装置

【課題】温湿度に関係なく現像ローラ表面へのトナー融着によって発生する濃度ムラ並びに高温高湿環境でのトナー量規制部材の削れおよびトナー量規制部材へのトナー融着によって発生する画像不良を抑制する。
【解決手段】電子写真感光体1表面にトナーを供給してトナー像とする現像ローラ3と、該現像ローラ上のトナー量を一定とするトナー規制部材10とを備えた電子写真画像形成装置において、該現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層の表面に設けられた表面層を備えており、該表面層は特定のシロキサンデンドリマーを側鎖に有する重合体ユニットと、スチレン系もしくはアクリル酸エステル系重合体ユニットとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成方法に用いられている現像方法として、非磁性一成分のトナーを用いた現像方法が知られている。具体的には、回転可能な電子写真感光体を帯電ローラ等の帯電手段により一様に帯電し、一様に帯電した電子写真感光体表面にレーザー光を露光して静電潜像を形成する。次に、現像装置において、トナー容器内のトナーがトナー供給ローラ及びトナー量規制部材によって現像ローラ上に均一に塗布され、電子写真感光体と現像ローラとの接触部でトナーによる現像が行われる。その後、電子写真感光体上のトナー像は転写部において記録材上に転写され、定着部において熱と圧力により定着され、画像形成が完了した記録材が電子写真画像形成装置外へ排出される。
【0003】
近年、電子写真画像形成装置の高耐久化の進展に伴って、現像ローラに対する要求も、より高度化してきている。具体的には、長期間の使用によっても現像ローラの表面にトナーが融着しにくいことが要求されてきている。表面にトナーが融着した現像ローラは、電子写真画像に濃度ムラを生じさせることがある。ここで、現像ローラの表面へのトナー融着によって発生する濃度ムラは、現像ローラの表面にトナーの構成物が付着し、トナーが充分に帯電できず地カブリが発生する現象である。
【0004】
また、当該現像ローラに当接しているトナー量規制部材にトナーの融着を生じさせ、あるいはトナー量規制部材を削れさせ、これにより、電子写真画像に縦スジ状の画像不良を生じさせることがある。
【0005】
トナー量規制部材の削れおよびトナー量規制部材へのトナー融着によって発生する縦スジ状の画像不良は、トナー量規制部材がトナーとの摺擦で削れたり、トナーが潰れて付着することでトナーの通過がせき止められて発生する現象である。
【0006】
上記の課題を解決すべく、特許文献1には、該現像ローラの表面層に直鎖ジメチルシロキサンを主成分とする側鎖を持つアクリルポリマーを含有する現像ローラが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−305024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らによる、上記特許文献1に係る現像ローラの検討の結果、高温高湿環境下においては、さらなる性能の改善が必要であるとの知見を得た。
【0009】
ところで、従来から使用されている現像ローラは一般的に摩擦力が高い。そのため、現像ローラは低温低湿環境下ではローラ硬度が相対的に高いため、摺擦によるトナーの劣化が促進する傾向にある。一方、高温高湿環境下では、現像ローラ自体の吸湿性により、外径が大きくなるためトナー量規制部材との当接幅が大きくなり、摺擦の影響が大きくなる傾向にある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高温高湿環境下であっても、トナーのすべり性に優れ、トナーが融着しにくい表面を備えた現像ローラを備え、長時間の使用によっても高品位な電子写真画像を安定して形成し得る電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電子写真感光体の表面にトナーを供給してトナー像とする現像ローラと、該現像ローラ上のトナー量を一定とするトナー量規制部材とを備えた電子写真画像形成装置において、該現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層の表面に設けられた表面層を備えており、該表面層は、下記の式(1)および式(2)で示されるユニットを有する化合物を含有することを特徴とする電子写真画像形成装置である。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
式(1)および式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは、下記式(3)で示される構造である。Jは、フェニル基、または下記式(6)で示される基である。
【0015】
【化3】

【0016】
式(6)中、R8は炭素原子数1以上6以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0017】
【化4】

【0018】
式(3)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(7)〜式(9)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。aは0または1である。E1、E2およびE3は、それぞれ独立に下記式(4)で示される基である。
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
式(7)〜式(9)中、R9、R10およびR12は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(9)中、R11は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。eは0以上4以下の整数である。fは0または1である。
【0023】
【化8】

【0024】
式(4)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上5以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。
【0025】
R3、R4、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R5は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、または下記式(10)で示される基である。
【0026】
X1は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および下記式(5)で表される基からなる群から選ばれる基である。
【0027】
【化9】

【0028】
式(5)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上5以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。R13、R14、R16およびR17は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R15は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、または下記式(10)で表される基である。
【0029】
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および式(5)で表される基からなる群から選ばれる基である。
【0030】
式(4)においてX1が式(5)で表わされる基である場合、式(5)で表わされる基の繰り返しの数は1または2であり、かつ、最末端を構成している式(5)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0031】
【化10】

【0032】
式(10)中、R18、R19およびR20は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、温度、湿度によらず、現像ローラへのトナー融着により発生する濃度ムラ、並びにトナー量規制部材の削れおよびトナー量規制部材へのトナー融着により発生するスジ状の画像不良が抑制された良好な画像形成を行う電子写真画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る電子写真画像形成装置の一実施形態の概略断面図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例を示す概略側面図である。
【図3】本発明の現像ローラの浸漬塗工の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る電子写真画像形成装置は、電子写真感光体の表面にトナーを供給してトナー像とする現像ローラと、該現像ローラ上のトナー量を一定とするトナー量規制部材とを備えている。また該現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層の表面に設けられた表面層を備えており、該表面層は、式(1)および式(2)で示されるユニットを有する化合物を含有することを特徴とする。
【0036】
特に、式(1)で示されるユニットを有する化合物は、側鎖に、シロキサンデンドリマー構造(ポリシロキサン構造を核とし、シロキサン結合とシルアルキレン結合が交互に配列した高分岐構造)を有し、バルキーな構造である。この特異な構造により、現像ローラ表面におけるトナーのすべり性を向上できる。更に、バルキーな構造により、高温高湿環境でも分子運動を抑制できるため、トナーのすべり性を保持できる。これにより、現像ローラ表面へのトナー融着並びにトナー量規制部材の削れ、およびトナー量規制部材へのトナー融着を抑制することが可能になる。また、側鎖に水素原子または1価の有機基を持つ式(2)で示されるユニットは、表面層との親和性に寄与すると考えている。
【0037】
<電子写真画像形成装置>
本発明の現像ローラを備える電子写真画像形成装置の一例の概略構成を図1に示す。この電子写真画像形成装置は、電子写真感光体、電子写真感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。
【0038】
電子写真感光体1は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。電子写真感光体は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、電子写真感光体に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ2を有する。帯電ローラは、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源13から所定の直流電圧を印加することにより、電子写真感光体を所定の電位に帯電する。
【0039】
電子写真感光体に静電潜像を形成する潜像形成装置8は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された電子写真感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置は、電子写真感光体に近接又は接触して配設される現像ローラ3を有する。電子写真感光体の帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0040】
転写装置は、接触式の転写ローラ5を有する。電子写真感光体からトナー像を普通紙などの転写材4に転写する。転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材7、回収容器を有し、転写した後、電子写真感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。定着装置6は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材4に定着し、機外に排出する。
【0041】
<現像ローラ>
図2は、本発明に係る電子写真画像形成装置に使用される現像ローラの一例である。現像ローラ3は、導電性軸芯体15と、この導電性軸体の外周に設けられた弾性層16と、この弾性層の表面に設けられた表面層17から構成される。
【0042】
[導電性軸芯体]
導電性軸芯体は、現像ローラの電極及び支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。
【0043】
[弾性層]
弾性層は、電子写真感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって電子写真感光体に押圧されるような硬度や弾性を、現像ローラに付与するものである。本発明において、1層または複数層設けることができる弾性層としては、従来から導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。エチレン―プロピレン―ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル―ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム等。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、シリコーンゴムは柔軟性に富み、且つ、圧縮永久歪が小さい為、好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサンや、これらのポリシロキサンの共重合体を挙げることができる。弾性層の厚みは限定されないが、例えば2.0〜6.0mm程度である。
【0044】
弾性層には、その他、上記組成の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤の如き各種添加剤を含有させることができる。非導電性充填剤としては、シリカ、石英粉末、及び炭酸カルシウムを挙げることができる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びジクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0045】
[表面層]
本発明の現像ローラを構成する表面層は、式(1)および式(2)で示されるユニットを有する化合物(以下、適宜「本発明の化合物」という)を含有していることを特徴とする。
【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
式(1)および式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは、下記式(3)で示される構造である。Jは、フェニル基、または下記式(6)で示される基である。
【0049】
式(1)で示されるユニットを有する化合物は、ビニル基、またはビニル化合物の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造を有する。式(1)および式(2)におけるR1およびR2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が例示される。
【0050】
【化13】

【0051】
式(6)中、R8は炭素原子数1以上6以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に望ましい。
【0052】
【化14】

【0053】
式(3)におけるAは、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(7)〜式(9)で表される2価の基からなる群から選ばれる基である。この中でも、下記式(7)〜式(9)で示される構造のうちの少なくとも1つであることが更に好ましい。aは0または1である。E1、E2およびE3は、それぞれ独立に下記式(4)で示される基である。
【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
式(7)〜式(9)中、R9、R10およびR12は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(9)中、R11は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。eは0以上4以下の整数である。fは0または1である。これらの構造にすることにより、バインダー樹脂との安定性を更に高めることが可能になる。
【0058】
R9、R10およびR12としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基などが例示され、この中でも、メチレン基またはエチレン基がより好ましい。R11としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示され、これらの中でもメチル基がより好ましい。
【0059】
【化18】

【0060】
式(4)中、kは0または1であるが、1であることが望ましい。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上5以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。この中でも、炭素原子数2以上4以下のアルキレン基がより好ましい。
【0061】
R3、R4、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に好ましい。R5は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、または下記式(10)で示される基である。これらの中でも下記式(10)で示される基が更に好ましい。
【0062】
X1は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および下記式(5)で表される基からなる群から選ばれる基である。
【0063】
【化19】

【0064】
式(5)中、rは0または1であるが、0であることが好ましい。sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上5以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。この中でも炭素原子数2以上4以下のアルキレン基がより好ましい。
【0065】
R13、R14、R16およびR17は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に好ましい。R15は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、または下記式(10)で表される基である。これらの中でも式(10)で示される基が更に好ましい。
【0066】
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および式(5)で表される基からなる群から選ばれる基である。
【0067】
式(4)においてX1が式(5)で表わされる基である場合、式(5)で表わされる基の繰り返しの数は1または2であり、かつ、最末端を構成している式(5)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0068】
【化20】

【0069】
式(10)中、R18、R19およびR20は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に好ましい。
【0070】
ここで、式(4)において、k=0であって、X1が式(5)で表わされる基であり、かつ、式(5)で表わされる基の繰り返しの数が1であるときの式(3)の構造一例を下記の式(11)に示す。また、当該繰り返しの数が2であるときの構造の一例を下記の式(12)に示す。
【0071】
【化21】

【0072】
【化22】

【0073】
本発明の化合物の重量平均分子量は、2000〜2000000が好ましい。より好ましくは、5000〜1000000、更に好ましくは、10000〜700000である。これにより、分子運動抑制効果をより発現しやすくなる。
【0074】
また、化合物中における式(1)で示されるユニットの含有量(モル%)は、2.0%以上であることが好ましく、3.0〜80%であることがより好ましい。これにより、分子運動抑制効果をより発現しやすくなる。
【0075】
[本発明の化合物の製造方法]
本発明の化合物は、式(13)で示される化合物と下記のビニル基を有する化合物を重合反応させることにより得ることができる。
【0076】
【化23】

【0077】
式(13)中、R1、A、a、E1、E2及びE3は、前記式(1)および式(3)において示したものと同じである。式(13)で示される構造の一例を、式(14)及び式(15)に示す。
【0078】
【化24】

【0079】
【化25】

【0080】
ビニル基を有する化合物としては、ラジカル重合性のビニル基を有するものであればよい。具体例を以下に挙げる。
【0081】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、トリクロロプロピル(メタ)アクリレート、パーフロロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素置換アルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類等。
【0082】
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能の化合物も用い得る。
【0083】
更に、ラジカル重合性不飽和基とケイ素原子結合加水分解性基を有するシリコーン化合物を使用できる。ラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基含有有機基、(メタ)アクリルアミド基含有有機基、スチリル基含有有機基または炭素原子数2〜10のアルケニル基、ビニロキシ基やアリロキシ基などが挙げられる。ケイ素原子結合加水分解性基としては、ハロゲン基、アルコキシル基、アセトキシ基などが例示される。具体的には以下のものが挙げられる。メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルブチルジブトキシシラン等のオルガノシラン化合物。
【0084】
また、式(13)で示される化合物と、上記ビニル基を有する化合物との混合比率を調整することにより、本発明の化合物中における式(1)で示されるユニットの含有量を調整することができる。
【0085】
本発明の化合物を得るための重合法としては、ラジカル重合法やイオン重合法が使用される。この中でも、ラジカル重合法がより好ましく、ラジカル重合法の中でも、溶液重合法が更に好ましい。溶液重合は、溶媒中で、式(13)で示される化合物とビニル基を有する化合物とをラジカル重合開始剤の存在下、50〜150℃の温度条件下で反応させることにより行われる。このとき用いられる溶媒としては、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を用い得る。
【0086】
ラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合法に使用される従来公知の化合物が用いられ、具体的には以下のものが挙げられる。2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾビス系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等。
【0087】
このラジカル重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体の合計を100質量部とした時、0.1から5質量部の範囲であることが好ましい。
【0088】
また、重合に際しては連鎖移動剤を添加することができる。この連鎖移動剤として具体的には以下のものが挙げられる。2−メルカプトエタノール、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピル基を有するポリジメチルシロキサン等のメルカプト化合物、塩化メチレン、クロロホルム、臭化ブチル、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化物等。好ましくは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。このような連鎖移動剤の配合量は、単量体の合計を100質量部とした時、好ましくは、0.001から15質量部、さらに好ましくは、0.01から10質量部である。なお、本発明の化合物を製造する場合、重合後、加熱下、減圧処理して、残存する未反応のビニル系化合物を除去することが好ましい。
【0089】
[バインダー樹脂]
表面層に用いられるバインダー樹脂としては、以下のものが挙げられる。エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、珪素樹脂、ポリエステル樹脂、スチロール系樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、水系樹脂。また、これらを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。この中でも、特に含窒素化合物であるウレタン樹脂が好ましく、中でも、トナーとの摩擦力によってトナーに負極性の電荷を付与しやすいポリエーテルポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0090】
ポリエーテルポリウレタン樹脂は公知のポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物との反応により得ることができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。また、これらのポリオール成分は必要に応じて予め2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のようなイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては特に限定されず、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環族ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の如き芳香族ポリイソシアネート、及びこれらの変性物や共重合物、そのブロック体。
【0091】
表面層は、バインダー樹脂100質量部に対して、前記化合物を0.1質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。この範囲であれば、トナーのすべり性を向上させることができる。
【0092】
[その他の成分]
現像ローラとして表面粗度が必要な場合は、ポリウレタン樹脂等のバインダー樹脂の分散液中に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。また、上記表面層はニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料などの荷電制御剤を含有していてもよい。
【0093】
表面層は導電剤を含有することが好ましい。導電剤としては、トナーに対する摩擦帯電性と表面の付着性を最適なバランスに制御することができるという理由により、カーボンブラックが好ましい。表面層には、その他、機能を阻害しない範囲で、架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、レベリング剤を含有させることができる。
【0094】
<現像ローラの製造方法>
導電性軸芯体上に弾性層を形成する方法としては、型成形法、押出成形法、射出成形法、塗工成形法を挙げることができる。弾性層の表面は、表面層との密着性向上の為、表面研磨や、コロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理の表面改質方法によって改質することもできる。
【0095】
表面層は、ポリウレタン樹脂等のバインダー樹脂を含有する分散液を塗工して形成される。塗工方法としては、浸漬塗工、リング塗工、スプレー塗工又はロールコートを採用することができる。浸漬塗工で塗膜形成を行う場合、一例として、図3のような塗布装置を用いることができる。図3の塗布装置には、現像ローラの外径よりわずかに大きな内径を有し、ローラを軸方向に浸漬可能な深さを有する円筒形の浸漬槽18が備えられている。浸漬槽の上縁外周には環状の液受け部22が設けられており、攪拌タンク20と接続されている。また浸漬槽の底部は撹拌タンクと接続されている。
【0096】
撹拌タンク中の塗料は、液送ポンプ19によって浸漬槽の底部に送り込まれる。浸漬槽の上端部からは、塗料がオーバーフローし、浸漬槽の上縁外周の液受け部を介して撹拌タンクに戻る。弾性層を設けた導電性軸体は昇降装置21に垂直に固定され、浸漬槽中に浸漬し、引き上げることでその表面上に塗膜が形成される。塗膜の形成後、ローラを昇降装置から取り外し、塗膜を乾燥後、加熱硬化して、表面層を形成する。加熱硬化は、温度120〜180℃の環境下、60〜300分間程度行うことが好ましい。
【0097】
<トナー>
本発明に係る電子写真画像形成装置において使用されるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤からなるトナー粒子と、該トナー粒子の表面に外添剤を有するトナーである。この外添剤は、レーザー回折型粒度分布計による体積粒度分布において、少なくとも、[1]0.04以上、1.0μm以下の範囲と、[2]1.0μm超、50μm以下の範囲と、[3]50μm超、2000μm以下の範囲の、3つの範囲にそれぞれピークを持つシリカ微粒子を含むことが好ましい。これは、特に50〜2000μmの範囲の粒度分布にピークを有するシリカ微粒子を使用することでトナー中にオイル等の低粘度液体の疎水化剤を微小な分布で含有させることができるためである。その結果、トナーからトナー量規制部材へオイルを供給することにより、このオイルの離型作用によって、トナー量規制部材へのトナーの融着のきっかけを作り難くするものと考えられる。
【0098】
尚、シリカ微粒子のレーザー回折型粒度分布計による体積粒度分布の測定法は以下の方法によって行なわれる。
・測定装置:コールターLS−230型粒度分布計(コールター社製)、
・粒度測定範囲:0.04μm〜2000μm、
・測定溶媒:エタノール、
・装置係数:
(1)エタノールの屈折率;1.36、
(2)光学モデル;1.08(実数部)−0.00i(虚数部)、
・測定温度:20℃〜25℃、
・測定方法:(記載無き事項は装置取り扱い方法に準ずる)
(1)測定溶剤にてバックグラウンドファンクションを実行する。
(2)別途調整した測定試料液を測定装置にPIDSが45〜55%になるよう用意する。
【0099】
測定試料液の調製方法としては、エタノール100mlの入ったビーカーに、測定対象の微粉末(試料)0.4gを入れて1分間撹拌し、測定溶媒に試料をなじませた後、超音波分散処理を3分間行なう。処理終了後直ちに測定装置の測定部に測定試料液を上記PIDS濃度になるよう加える。このようにして調製した測定試料液を用いて1分以内に測定を行なう。
【0100】
<トナーの製造方法>
トナー粒子を製造するには、溶融粉砕法、重合法等の公知の方法が用いられる。溶融粉砕法の例として以下の方法が挙げられる。先ず、結着樹脂、ワックス、着色剤としての顔料、染料、荷電制御材、必要に応じその他の添加剤等を十分混合する。次いで、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を溶解した中に金属化合物、顔料、染料を分散又は溶解し、冷却固化し、粉砕、球形化処理、分級を行なってトナーを得る。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0101】
また、重合法の例としては、先ず、重合性単量体、架橋剤、重合開始剤、ワックス、着色剤としての顔料、染料、又は磁性体、その他の添加剤等を混合分散し、懸濁分散安定剤の存在下、水系中で懸濁重合することにより重合性着色樹脂粒子を合成する。次いで固液分離、乾燥の後、分級を行なってトナーを得ることが出来る。懸濁分散安定剤は、リン酸三カルシウムやリン酸マグネシウム等の公知のものが使用できる。
【0102】
また、トナー粒子の原材料は特に限定するものではなく、電子写真用のトナーとして公知の材料が使用できる。また、トナー粒子に使用可能な着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。
【0103】
トナー粒子に用いられる結着樹脂は、トナーを製造する際に用いられるものであれば特に限定されるものではない。結着樹脂の具体例としては、以下の重合性単量体の重合体、又は、重合性単量体単独の重合体の混合物、あるいは、2種類以上の重合性単量体の共重合生成物が挙げられる。更に具体的には、スチレン−アクリル酸共重合体あるいはスチレン−メタクリル酸系共重合体が好ましい。また、定着性を改善する目的で公知の架橋性重合性単量体や連鎖移動剤を使用することもできる。
【0104】
さらに、トナーは、定着時の離型性向上のために公知のワックス成分を含有することが好ましい。ワックス成分としては、定着時の離型性及び現像性として十分な性能を維持するものであれば特に限定されない。
【0105】
ワックス成分の具体例としては以下の化合物が挙げられる。シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、低分子量ポリエチレン又は低分子量ポリプロピレンの如き脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなど。中でも好ましく用いられるワックスは、低分子量ポリプロピレン及びこの副生成物、低分子量ポリエステルおよびエステル系ワックス、脂肪族の誘導体である。これらのワックスから、種々の方法によりワックスを分子量により分別したワックスも好ましく用いられる。また、分別後に酸化やブロック共重合、グラフト変性を行っても良い。
【実施例】
【0106】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
<製造例>
製造例1〜15は化合物1〜15の製造例、製造例16〜18はトナー1〜3の製造例、また製造例19は弾性ローラ1の製造例である。
【0107】
<製造例1>[化合物1の作製]
攪拌機、冷却器および温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、溶媒として、イソプロピルアルコール300質量部を投入した。攪拌下、窒素ガスを通しながら、温度80℃で、平均分子式が下記の式(A)で示される化合物95質量部、ブチルアクリレート78.2質量部、メチルメタクリレート132質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部の混合物を1時間かけて滴下した。さらに、80℃で6時間重合反応を行った。このイソプロピルアルコール溶液の一部を多量のメタノール中に投入して、攪拌、静置して沈殿物を得た。沈殿物を減圧乾燥し、化合物1を作製した。
【0108】
得られた化合物1を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、各単量体の炭素炭素間の二重結合が開裂した構造である、下記式(A−1)で示されるαユニット、βユニット及びγユニットを有していた。また、化合物1中における各ユニットの含有量(モル%)は、αユニット3.5%、βユニット66%、γユニット30.5%であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約30000であった。
【0109】
【化26】

【0110】
【化27】

【0111】
<製造例2〜15>[化合物2〜15の作製]
フラスコ中に投入する溶媒の種類および量、フラスコ中に滴下する混合物(単量体とラジカル重合開始剤の種類および量)、並びに、滴下終了後の重合反応時間を表1に示す条件とした。また、製造例6および製造例14においては、重合反応終了後に、フラスコ内容物を、メタノール中に投入することなく、150℃、10mmHgで減圧乾燥して化合物を得た。これら以外の条件は製造例1と同様にして、化合物2〜15を得て評価した。各単量体の炭素炭素間の二重結合が開裂した構造であるαユニット、βユニットおよびγユニットの含有量、並びにポリスチレン換算重量平均分子量を表1に示す。
【0112】
【化28】

【0113】
【化29】

【0114】
【化30】

【0115】
【化31】

【0116】
【化32】

【0117】
【化33】

【0118】
【化34】

【0119】
【化35】

【0120】
【化36】

【0121】
【化37】

【0122】
【化38】

【0123】
【表1】

【0124】
<製造例16>[トナー1の合成]
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを具備した2リットル用四つ口フラスコ中に、Na3PO4水溶液を添加し回転数を9000rpmに調整し、63℃に加温せしめた。ここにCaCl2水溶液を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO42を含む水系分散媒体1を調製した。一方、下記の表2に示した7種の材料をボールミルで十分に分散させた後、ボールミルより内容物を単離した。
【0125】
【表2】

【0126】
この内容物に重合開始剤を添加したものを、前記水系分散媒体1中に投入し回転数9000rpmを維持しつつ造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ65℃で4時間反応させた後、80℃で5時間重合させた。5時間後に減圧蒸留することにより残留する低分子量分を除去した。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて難水溶性分散剤Ca3(PO42を溶解し、濾過、水洗、乾燥した後に風力分級によって所望の粒度に分級し、トナー粒子を得た。
【0127】
このようにして得られたトナー粒子100質量部に対して、体積平均粒子径が0.5μmであるシリカ微粒子1.5質量部を混合して、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)に仕込んだ。ヘンシェルミキサーは撹拌翼の周方向に対してバッフル板が90度、回転数は1800回転になるよう設定したものを使用した。この装置を用い20分間混合することによって、トナー1を合成した。
【0128】
<製造例17>[トナー2の合成]
添加するシリカ微粒子を、少なくとも[1]0.04以上、1.0μm以下の範囲と、[2]1.0μm超、50μm以下の範囲と、[3]50μm超、2000μm以下の範囲にそれぞれピークを持つシリカ微粒子に変更した以外は製造例16と同様にしてトナー2を合成した。
【0129】
<製造例18>[トナー3の合成]
シリカ微粒子を添加せず、それ以外は製造例16と同様にしてトナー3を合成した。
【0130】
<製造例19>[弾性ローラの作製]
外径16mm、長さ280mmのSUS304製の導電性軸芯体にプライマ−(商品名:DY35−051、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布し、内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。弾性層の原料として液状シリコーンゴム材料(商品名:KE−1950−35、信越化学工業株式会社製)100.0質量部に対し、カーボンブラック(商品名:トーカブラック#7360SB、東海カーボン株式会社製)を35.0質量部、耐熱性付与剤としてシリカ粉体を0.2質量部、及び白金触媒0.1質量部を混合した。この混合原料(付加型シリコーンゴム組成物)を金型内に注入し、温度130℃で20分間、加熱成型した。金型を温度50℃まで冷却し、導電性軸芯体と一体となった弾性層を金型から取り出し、温度200℃で2時間加熱して硬化反応を完結させ、厚み4mmの弾性層を有する弾性ローラ1を製造した。
【0131】
<実施例1>
[1.表面層用塗布液の調製]
表面層の材料として、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PolyTHF、BASF製)100質量部に、イソシアネート(商品名:ミリオネートMT(MDI)、日本ポリウレタン工業株式会社製)14.0質量部をメチルエチルケトン(MEK)溶媒中で段階的に混合した。この溶液を窒素雰囲気下温度80℃にて3時間反応させて、ポリウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0132】
このポリウレタンポリオールプレポリマー100質量部にイソシアネート(商品名:コロネート4191、日本ポリウレタン株式会社製)41.8質量部を加えて、[NCO]/[OH]の値が1.1となるようにした。さらに、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学株式会社製)を適量添加して電気抵抗値を調整し、ウレタン原料混合液1を得た。一方、製造例1で得られた化合物1をシクロペンタシロキサンに溶解させて濃度30質量%の溶液(化合物溶液1)を用意した。
【0133】
上記ウレタン原料混合液1にMEK溶媒を加え固形分25質量%に調整したものにポリウレタン樹脂粒子(商品名:アートパールC400(φ14μm)、根上工業株式会社製)20質量部および化合物溶液1の16.7質量部を添加した。ボールミルで攪拌分散して、表面層用塗布液1を得た。このとき、ウレタン原料混合液の固形分100質量部に対して、製造例1で得られた化合物1は、5質量部に相当する量である。
【0134】
[2.現像ローラの作製]
製造例19で作製した弾性ローラ1を用い、浸漬塗工することにより膜厚13μmとなるように塗布した。温度80℃のオーブンで15分乾燥後、温度140℃のオーブンで2時間硬化し、現像ローラ1を得た。
【0135】
[3.現像ローラ表面へのトナー融着評価]
現像ローラ1と製造例16で合成したトナー1をキヤノン株式会社製カラーレーザービームプリンタLBP5400用ブラックカートリッジに装填し、温度5℃、湿度10%RHの低温低湿環境において2日間放置した。低温低湿環境での放置の終了後、LBP5400本体に装填し、温度5℃、湿度10%RHの低温低湿下の環境で印字率が0.5%の画像を公称寿命よりも多い70000枚出力した。70000枚出力した直後に、ハーフトーン画像を出力した。以下の基準により画像の目視評価を行った。
A:トナー融着に起因する濃度ムラは見られない。
B:端部に濃度ムラが認められるのみであり、現像ローラのピッチでは確認できない。
C:一部に軽微な濃度ムラが現像ローラのピッチで確認できる。
D:濃度ムラが目立ち、画質の低下が見られる。
【0136】
[4.トナー量規制部材の削れ量測定]
現像ローラ1と製造例16で合成したトナー1をキヤノン株式会社製カラーレーザービームプリンタLBP5400用ブラックカートリッジに装填し、温度35℃、湿度90%RHの高温高湿の環境において2日間放置した。高温高湿環境での放置の終了後、LBP5400本体に装填し、温度35℃、湿度90%RHの高温高湿環境で印字率が0.5%の画像を公称寿命よりも多い70000枚出力した。画像出力後、電子写真画像形成装置からトナー量規制部材を取り外し表面を観察した。トナー量規制部材の削れ量は、キーエンス株式会社製レーザー顕微鏡VK―8700を用いて倍率1000倍により測定し、断面の凹凸の高低差により算出した。
【0137】
[5.トナー量規制部材へのトナー融着評価]
トナー量規制部材の削れ量の測定の場合と同様にブラックカートリッジで70000枚出力した後、温度35℃、湿度90%RHの高温高湿環境で25%ハーフトーン画像を出力した。以下の基準により画像の評価を行った。
A:縦スジ状の画像は認められない
B:軽微な縦スジ状の画像は認められる。
C:一部に縦スジ状の画像が認められる。
D:縦スジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる。
【0138】
[6.放置カブリ評価]
トナー量規制部材の削れ量の測定の場合と同様に、ブラックカートリッジで70000枚出力した後に、温度35℃、湿度90%RHの高温高湿の環境において2日間放置した。放置後にベタ白画像を出力し、以下の方法でカブリ値を測定した。カブリ値は、反射濃度計TC−6DS/A(商品名、東京電色技術センター社製)を用いて、画像形成前の転写紙の反射濃度と、ベタ白画像形成後の転写紙の反射濃度を測定し、反射濃度の増加分を放置カブリ値とした。
【0139】
<実施例2>
化合物溶液として、化合物1をイソドデカンに溶解させた濃度40%の溶液を用意した。それ以外の条件は実施例1と同様にして表面層用塗布液2を調製し、現像ローラ2を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。
【0140】
<実施例3〜6>
化合物1の添加量を表3に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして表面層用塗布液3〜6を調製し、現像ローラ3〜6を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0141】
<実施例7>
カートリッジに装填するトナーを製造例17で作製したトナーに変更した以外は実施例3と同様にして現像ローラ7を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0142】
<実施例8>
カートリッジに装填するトナーを製造例17で作製したトナーに変更した以外は実施例4と同様にして現像ローラ8を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0143】
<実施例9>
カートリッジに装填するトナーを製造例17で作製したトナーに変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ9を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0144】
<実施例10>
カートリッジに装填するトナーを製造例18で作製したトナーに変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ10を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0145】
<実施例11〜13>
装填するトナーを製造例17で得たトナーに変更し、化合物1を添加する際に、表3に示す荷電制御剤(アジン系化合物、4級アンモニウム塩、または、スチレンアクリル系ポリマー)3.0質量部を同時に添加した。これら以外の条件は実施例1と同様にして表面層用塗布液を調製し、現像ローラ11〜13を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0146】
<実施例14〜26>
化合物の種類を表3に示すものに変更した以外は、実施例5と同様にして表面層用塗布液を調製し、現像ローラ14〜26を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0147】
<比較例1>
化合物1を添加しない以外は、実施例1と同様にして表面層用塗布液を調製し、現像ローラ27を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0148】
<比較例2>
化合物の種類を表3に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして表面層用塗布液を調製し、現像ローラ28作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0149】
【表3】

【0150】
実施例5、6及び14〜26の結果から、電子写真画像形成装置の現像ローラの表面層中にビニル重合体の側鎖にシロキサンデンドリマー構造を有する化合物を含有させることで濃度ムラおよびスジ状の画像不良を効果的に抑制できることが分かる。さらに、実施例1〜6の結果から、トナー量規制部材の削れを効果的に抑制できることが分かる。
また、実施例1、3、4及び7〜10の結果から、現像ローラの表面におけるトナー融着、並びにトナー量規制部材の削れおよびトナー量規制部材へのトナー融着を効果的に抑制できることが分かる。さらに、実施例8及び11〜13の結果から、トナー量規制部材の削れおよび放置カブリを効果的に抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0151】
1 電子写真感光体
2 帯電ローラ
3 現像ローラ
4 印刷メディア
5 転写ローラ
6 定着部
7 クリーニングブレード
8 露光
9 帯電前露光装置
10 トナー量規制部材
11 トナー供給ローラ
12、13、14 電源
15 導電性軸芯体
16 弾性層
17 表面層
18 浸漬槽
19 液送ポンプ
20 攪拌タンク
21 昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体の表面にトナーを供給してトナー像とする現像ローラと、該現像ローラ上のトナー量を一定とするトナー量規制部材とを備えた電子写真画像形成装置において、該現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層の表面に設けられた表面層を備えており、該表面層は、下記の式(1)および式(2)で示されるユニットを有する化合物を含有することを特徴とする電子写真画像形成装置:
【化1】

【化2】

(式(1)および式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは、下記式(3)で示される構造である。Jは、フェニル基、または下記式(6)で示される基である;
【化3】

式(6)中、R8は炭素原子数1以上6以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【化4】

式(3)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(7)〜式(9)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。aは0または1である。E1、E2およびE3は、それぞれ独立に下記式(4)で示される構造である;
【化5】

【化6】

【化7】

式(7)〜式(9)中、R9、R10およびR12は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(9)中、R11は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。eは0以上4以下の整数である。fは0または1である。
【化8】

式(4)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上5以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。
R3、R4、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R5は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、または下記式(10)で示される基である。
X1は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および下記式(5)で表される基からなる群から選ばれる基である;
【化9】

式(5)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上5以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。R13、R14、R16およびR17は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R15は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、または下記式(10)で表される基である。
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および式(5)で表される基からなる群から選ばれる基である。式(4)においてX1が式(5)で表わされる基である場合、式(5)で表わされる基の繰り返しの数は1または2であり、かつ、最末端を構成している式(5)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【化10】

式(10)中、R18、R19およびR20は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。)。
【請求項2】
前記表面層が、該表面層中のバインダー樹脂100質量部に対して、前記化合物を0.1質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーは少なくとも結着樹脂と着色剤からなるトナー粒子と、該トナー粒子の表面に外添剤を有するトナーであって、該外添剤は、レーザー回折型粒度分布計による体積粒度分布において、
[1]0.04以上、1.0μm以下の範囲と、
[2]1.0μm超、50μm以下の範囲と、
[3]50μm超、2000μm以下の範囲に、それぞれピークを持つシリカ微粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真画像形成装置。
【請求項4】
前記表面層が、荷電制御剤を含有すること特徴とする請求項1〜3のいずれかの一項に記載の電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−103348(P2012−103348A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249997(P2010−249997)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】