説明

電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる画像形成装置

【課題】 ゴム弾性を維持し、電気抵抗のバラツキが少なく、かつ湿度や温度等の環境変動や経時に対する安定性、及び耐オゾン性を悪化させることなく、電気抵抗の調整が容易で難燃性が付与された電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 クロロプレンゴムと、エピクロロヒドリンゴムと、難燃性ポリマーとからなるゴム混合物と、を含有する電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物であって、前記クロロプレンゴムと前記難燃性ポリマーとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、かつ、前記クロロプレンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、前記難燃性ポリマーの含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置において使用される導電性弾性ベルト部材やロール部材或いは発泡部材の材料である弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置にあっては、転写ベルト、中間転写ベルト、定着ベルト、現像ベルト等のベルト部材や、転写ロール、定着ロール等のロール部材が使用されている。前記転写ベルトあるいは転写ロールは、感光体上に形成されたトナー像を被印刷体上に転写させると共に、静電力によって印刷紙を搬送する部材であり、前記定着ベルトあるいは定着ロールは、前記被印刷体上に転写されたトナー像を前記被印刷体上に定着させる部材である。
従って、前記ベルト部材やロール部材は静電気によってトナーの離脱が阻害されないようにするために、導電性が付与されている。これら部材の体積固有抵抗率の常用対数値は装置のタイプによって、6〜8[logΩcm]又は11〜13[logΩcm]の範囲に設定されるのが一般的である。
【0003】
また、体積固有抵抗率が前記値を下回ると係る転写ベルトにおいてはリーク・紙汚れ・画質上の乱れなどの問題が発生する場合がある。更に、前記値を上回ると転写・帯電効率が悪く、繰り返し使用時の適応が困難になる場合がある。
一方、難燃性のバインダーとして通常活用されている添加物では塩素化ポリエチレンやエチレンー酢酸ビニル共重合体、及びスルホン化ポリエチレンにおいては熱可塑性ポリマーに分類され、ベルトやロ―ラ成形時の永久歪や変形に耐えられない。さらに無機フィラーの水酸化AlやZnO,Sn02,Zn・Sn(OH)6などの酸化物併用による難燃性向上は得られるが多量使用によるゴム物性は大幅に低下し、強度面で十分な補強性が得られていない。
【0004】
前記ベルト部材及びロール部材の中でも転写ベルト及びロールに用いられる材料としては、例えばクロロプレンゴム(CR)やニトリルブチルゴム(NBR)などが使用されている。この中でCRは、体積固有抵抗率の常用対数値が10〜12[logΩcm]であるから、これを6〜8[logΩcm]に調節する場合、カーボン粉末、イオン導電材、及びイオン性ポリマーのような導電性添加材を混合する手段が用いられている。
更に、シリカ等の充填材や有機物の加硫成分や加硫促進材、老化防止材等の添加による影響でCR単独では十分な難燃性や耐オゾン性がえられていない。一方、NBR自体はこれに水素添加したH−NBR等が混合されているが、高コストでまたジエン類として耐オゾン性の優れるエチレンープロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)とのブレンドによるオゾン劣化耐性は得られるが、ハロゲン量の低下に伴って難燃性が低下する傾向になり、両立した配合系への選択ができていない(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、特許文献1の提案では、CR自体の結晶化による海島構造の相変化により電気抵抗値の成形体のバラツキや経時変化が大きくなり、逆に難燃性はハロゲン含有率が下がり低下傾向になるといった不具合点が上げられる。耐オゾン性を改善した水素化NBRは使用されているが高コスト化による使用制限があり、抵抗調整能も2成分系では導電材の偏りやフィラー分散性が変化しやすいといった問題点がある。
【0006】
また、前記導電性添加材の中でもカーボン粉末は、上述のゴムには非常に混りにくく、多量のカーボン粉末をゴムに均一に混合することは困難である。更に、その成形バラツキがベルトやロール成形後の面内電位変動に現れ、画像上での濃度ムラや転写ムラの原因になりやすくなる。
一方、前記イオン導電材はゴムと均一に混練し易いが、吸湿性があり、多量に添加すると導電性が温度、湿度等の環境要因に影響され易くなる。更にイオン導電材は均一に混合してもその後の転写による電圧印加により除々にマイグレーションし易いと云う問題点がある。
【特許文献1】特開平9−222809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決することを目的とする。即ち、本発明は、ゴム弾性を維持し、電気抵抗のバラツキが少なく、かつ湿度や温度等の環境変動や経時に対する安定性、及び耐オゾン性を悪化させることなく、電気抵抗の調整が容易で難燃性が付与された電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の本発明により達成される。
即ち、本発明は、
<1> クロロプレンゴムと、エピクロロヒドリンゴムと、難燃性ポリマーと、からなるゴム混合物を含有する電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物であって、前記クロロプレンゴムと前記難燃性ポリマーとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、かつ、前記クロロプレンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、前記難燃性ポリマーの含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0009】
<2> 前記難燃性ポリマーが、塩素化ポリエチレン、スルホン化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、及びこれらの共重合体、から選択される少なくとも1種であることを特徴とする<1>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<3> 更に、無機難燃材を含有することを特徴とする<1>又は<2>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0010】
<4> 更に、導電材を含有することを特徴とする<1>〜<3>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<5> 前記導電材が、カーボン粉末及び/又はイオン導電材であることを特徴とする<4>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0011】
<6> 前記ゴム混合物100質量部に対する前記カーボン粉末の含有量が、1〜80質量部の範囲内であることを特徴とする<5>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<7> 前記カーボン粉末が、平均粒径70nm以下、DBP吸油量が180ml/100g以下のカーボン粉末であることを特徴とする<5>又は<6>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0012】
<8> 前記ゴム混合物100質量部に対する前記イオン導電材の含有量が、0.1〜5質量部の範囲内であることを特徴とする<5>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<9> 前記イオン導電材が、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする<5>又は<8>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物。
【0013】
<10> 前記第4級アンモニウム塩が、1分子中に少なくとも1個のフェニル基を含んでいることを特徴とする<9>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<11> 前記エラストマー組成物100質量部に、更に1〜200質量部の無機充填材が配合されていることを特徴とする<1>〜<10>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0014】
<12> 前記無機充填材の表面が、シランカップリング剤によって処理されていることを特徴とする<11>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<13> 体積固有抵抗率の常用対数値が、500V印加時5〜13[logΩcm]である<1>〜<12>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0015】
<14> <1>〜<13>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されるベルト形状の導電性部材である。
<15> <1>〜<13>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されるロール形状の導電性部材である。
<16> <14>又は<15>に記載の導電性部材を備えてなる画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ゴム弾性を維持し、電気抵抗のバラツキが少なく、かつ湿度や温度等の環境変動や経時に対する安定性、及び耐オゾン性を悪化させることなく、電気抵抗の調整が容易で難燃性が付与された電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物(以下、「本発明のエラストマー組成物」という。)は、クロロプレンゴム(CR)と、エピクロロヒドリンゴム(ECO)と、難燃性ポリマーとからなるゴム混合物を含有し、前記クロロプレンゴムと前記難燃性ポリマーとの含有比率(CR:ECO、質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、かつ、前記クロロプレンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、前記難燃性ポリマーの含有量との含有比率(CRとECOとの合計含有量:難燃性ポリマーの含有量、質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする。
【0018】
前記CRは、難燃性を有し、可撓性に優れ、体積固有抵抗率が高く(500V印加時の常用対数値で概ね10〜12[logΩcm]である。)、前記ECOは、体積固有抵抗率が低い(500V印加時の常用対数値で概ね5.5〜6[logΩcm]である。)。
本発明のエラストマー組成物においては、高い体積固有抵抗率を有するCRと、低い体積固有抵抗率を有するECOとを95:5〜5:95の比率で含有することにより、前記CRと前記ECOの間の体積固有抵抗率(500V印加時の常用対数値で、5.5〜6[logΩcm]から11〜12[logΩcm])を任意に得ることができる。また、前記CRと前記ECOとは相分離をおこすことなく、均一に混合することができるので、電気抵抗のバラツキを小さくすることができ、劣化や電気抵抗値の安定な領域の制御が可能となる。
【0019】
尚、本発明において、体積固有抵抗率は、アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計により三菱油化HRブローブを用いて、測定環境:23℃55%、印加電圧500v,10秒値で電気抵抗値を測定することにより求めた。
【0020】
また、本発明のエラストマー組成物は、CRとECOとを95:5〜5:95の比率で含有させることにより、後述するカーボン粉末或いはイオン導電材等の導電材を含有させない、或いは少ない含有量であっても、後述する電子写真装置のベルト部材或いはロール部材として好ましい体積固有抵抗率(500V印加時の常用対数値で5〜13[logΩcm])が得られる。この結果、カーボン粉末を大量に含有することによる分散不均一が防げる。また、イオン導電材を大量に含有することによる環境要因に対する不安定さや、マイグレーションが防げる。したがって、カーボン粉末を含有する場合においても、該カーボン粉末が均一に分散され、環境要因に影響されず、マイグレーションを起さないエラストマー組成物が得られる。
【0021】
本発明のエラストマー組成物においては、前記CRと前記ECOとの含有比率(質量比)は、90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましい。
【0022】
本発明のエラストマー組成物は、前記CR及びECOの合計含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50となる量の難燃性ポリマーを含有する。
また、前記CR及びECOの合計含有量と、前記難燃性ポリマーとの含有比率(質量比)は、100:15〜100:40であることが好ましく、100:20〜100:30であることがより好ましい。
【0023】
前記CR及びECOの合計含有量との含有比率が、100:10〜100:50となる量の難燃性ポリマーを含有することにより、後述する無機難燃材を含有しない、或いは無機難燃材の含有量が少ない場合であっても、難燃性UL規格におけるV−0〜V−2レベルの所望の難燃性が得られる。この結果、無機難燃材を大量に含有することによる、ゴム物性の低下や、水酸基による吸湿性の増大により、電気抵抗への悪影響を及ぼすことを防くことができる。
尚、前記難燃性UL規格とは、米国のUNDERWRITERS LABORATORIES INC.社が制定、認可している電気機器に関する安全性の規格であり、UL燃焼試験法による垂直燃焼試験により規定された規格である。難燃性の程度によりV−0、V−1、V−2がありV−0に近づくほど高難燃性材料であることを示している。燃焼時間が10秒以下から30秒以下で燃焼しながら落ちる溶融物がない場合でV−0〜V−1レベルであり、燃焼しながら落下する溶融物のある場合はV−2である。
【0024】
本発明に用いられるCRは、結晶性が遅いものが好ましく、メルカプタン変性、キサントゲン変性、硫黄変性等の変性CRでも構わない。
【0025】
本発明に用いられるECOは、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アクリルグリシジルエーテル三元共重合体が挙げられる。
【0026】
本発明において、難燃性ポリマーとは、前記UL94規格でV−2以上であるポリマーをいい、塩素化ポリエチレンや塩素化ブチルゴムの他、エチレン酢酸ビニルゴムやスルホン化ポリエチレン等を1種または複数使用して共加硫させるか添加させブレンドゴム等が挙げられ、これらの中でも塩素化ポリエチレン、スルホン化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、又はこれらの共重合体から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0027】
また、難燃性ポリマーとして、イオン導電的性質が付与されたスルホン化ポリエチレンや酢酸ビニル部位を持つ共重合体を用い、その量を制御することによっても、イオン成分(酸・塩基的な挙動)が取り込まれることにより、後述するイオン導電材を添加しなくても電気抵抗の調整が可能になる。
【0028】
本発明のエラストマー組成物は、難燃性をより精度よく制御する為に、無機難燃材を含有させてもよい。該無機難燃材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水和金属化合物、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどの水和物等からなるもの例示される。これらの中でも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化カルシウムからなるものが好ましい。
前記無機難燃材の含有量は、前記ゴム混合物100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、15〜40質量部であることがより好ましい。
【0029】
本発明のエラストマー組成物は、体積固有抵抗率をより精度よく制御する為に、導電材を添加してもよい。本発明においては、前記導電材としてカーボン粉末及び/又はイオン導電材を用いることが好ましい。
【0030】
前記カーボン粉末としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられ、平均粒径は70nm以下が好ましく、平均粒径60nm以下がより好ましく、平均粒径50nm以下が更に好ましい。また、DBP吸油量は180ml/100g以下であることが好ましく、150ml/100g以下であることがより好ましく、100ml/100g以下であることがより更に好ましい。尚、DBP(ジブチルフタレート)吸油量とは、ASTM D2414−6TTに定義されており、カーボンブラック100gに吸収されるDBP量(ml)が多いか少ないかを表すものである。このDBP吸油量の多いカーボンブラックほど、長い連鎖結合を形成するものとされている。
また、本発明のエラストマー組成物にカーボン粉末を添加する場合には、前記ゴム混合物100質量部に対する前記カーボン粉末の含有量が、1〜80質量部の範囲内であることが好ましく、5〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜30質量部の範囲内であることが更に好ましい。前記カーボン粉末の含有量が、1〜80質量部の範囲内であると、カーボンによるゴム補強性が寄与して硬度調整が充填材等で行い易い。
【0031】
前記イオン導電材としては、例えば、含過塩素酸リチウムのエステル系可塑剤のような金属塩含有可塑剤;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体、またはそれらの塩;オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられ、この中でも第4級アンモニウム塩が好ましく、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドのような1分子中に少なくとも1個のフェニル基を含んでいる第4級アンモニウム塩がより好ましい。このような第4級アンモニウム塩は、フェニル基による立体障害のため、エラストマー組成物中でマイグレーションを起しにくい。
【0032】
また、本発明のエラストマー組成物が、前記イオン導電材を含有する場合、前記ゴム混合物100質量部に対する前記イオン導電材の含有量が、0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0033】
また、本発明のエラストマー組成物は、カーボン粉末とイオン導電材とを併用する場合には、カーボン粉末:イオン導電材の質量比率が1:50〜1000:1の範囲内であることが好ましく、10:1〜50:1の範囲内であることがより好ましい。
本発明のエラストマー組成物の電気抵抗値の調整は、主としてカーボン粉末の添加量で行い、イオン導電材は微調整のために添加することが好ましい。
【0034】
本発明のエラストマー組成物は、難燃性、耐熱性、機械的強度等を組成物に付与するために、無機充填材を更に配合することが好ましい。該無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材が好ましい。尚、前記無機充填材が難燃性を組成物に付与するものである場合、無機難燃材としても作用する。
【0035】
また、前記無機充填材の表面がシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。前記無機充填材の表面をシランカップリング剤で処理しておけば、無機充填材はゴムとの親和性が向上し、より均一に混合し易くなる。
【0036】
更に、本発明のエラストマー組成物に、前記無機充填材を更に配合する場合、前記エラストマー組成物100質量部に対する。前記無機充填材の配合量が、1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、1〜100質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0037】
また、前記無機充填材が金属水酸化物の場合には、更に難燃性が付与される。
本発明のエラストマー組成物は、難燃度がはV−2以上であることが好ましい。
【0038】
本発明のエラストマー組成物は、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸系可塑剤;トリメリット酸トリ−2エチルヘキシル(TOTM)等のトリメリット酸系可塑剤;ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソノニルジオクチルアジペート(DINA)等の二塩基酸系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリフェニルフォスフェート(TPP)等のリン酸系可塑剤;エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等の可塑剤、柔軟剤、その他老化防止剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0039】
本発明のエラストマー組成物の体積固有抵抗率は、500V印加時の常用体数値で5〜13[logΩcm]であることが好ましく、6〜13[logΩcm]であることがより好ましく、そして該組成物の体積固有抵抗率は、常用体数値で100V印加時と1000V印加時とではその差が3以下であることが好ましい。
本発明のエラストマー組成物は、更に熱可塑性樹脂を添加する場合には、前記ゴム混合物100質量部に対して該熱可塑性樹脂を1〜100質量部添加される。
【0040】
本発明のエラストマー組成物は、後述するベルト形状又はロール形状の導電性部材の材料として用いる場合、更に加硫剤を添加することが好ましい。該加硫剤としては硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイド、ハイドロタルサイドと酸化亜鉛及び/又は酸化マグネシウムとの二成分又は三成分系、酸化亜鉛及び/又は酸化マグネシウムと硫黄との二成分又は三成分系が挙げられ、これらと共に、所望によりテトラメチルチウラムモノスルフィド、ジ−O−トリグアニジン、チオウレア等を加硫促進剤として併用してもよい。
前記加硫剤の添加量としては、該加硫剤がハイドロタルサイド、酸化亜鉛、酸化マグネシウムの場合は、前記エラストマー組成物100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、3〜7質量部であることがより好ましい。一方、前記加硫剤が硫黄の場合は、前記エラストマー組成物100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましい。
また、前記加硫促進剤の添加量としては、前記エラストマー組成物100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0041】
本発明のエラストマー組成物は、所望の量のCR、ECO、難燃性ポリマー、その他の添加物を混合することにより得られる。混合する方法は、特に限定されるものではないが、2本または3本ロール、加圧ニーダー、及び大スケール用ではバンバリミキサーを用いたゴム混練する方法があり、各種充填材やフィラーなどをゴムと合わせてニーダーやバンバリミキサーで予備混練しておき、成形使用時に添加材・加硫剤等の配合薬品をロールにより混合する方法が好ましく挙げられる。
【0042】
本発明の導電性部材は、既述の本発明の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されるベルト形状又はロール形状の導電性部材である。
本発明の導電性部材の製造方法としては、特に限定されず、例えば、射出成形、鋳型成形等によってベルト形状又はロール形状に成形する方法が挙げられる。この場合成形温度は120〜180℃に設定され、成形と同時に加硫が行われることが好ましい。
また、本発明の導電性部材は、上述のようにベルト形状又はロール形状に成形されたエラストマー組成物をそのまま導電性部材として用いてもよいし、更にベルト形状又はロール形状に成形されたエラストマー組成物を弾性層として、該弾性層上に、トナーに対する離型性の向上、オゾン劣化防止、摩擦係数の低下を目的として、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の表面層を1層又は2層以上設けてもよい。
更に、本発明の導電性部材がロール形状の場合は、SUS等の金属芯金にチューブ状に押し出し被覆成形する場合や予め型内にゴムシートを仕込んでおき、加圧熱プレスによりローラ状に成形し,表面研摩することによりローラ形状に成形する場合等からなる基材上に、本発明のエラストマー組成物を形成してもよい。
【0043】
また、本発明の導電性部材は、ベルト形状又はロール形状に成形後(加硫後)のアスカC硬度(荷高分子計器社製アスカーC硬度計を用い荷重:1Kg、測定温度:23℃、にて測定した。)が60度〜80度の範囲内に、マイクロ硬度(高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1型を用いて23℃の条件下において測定した。)が50〜90度の範囲内にあることが好ましい。
本発明の導電性部材がベルト形状の場合には、厚みが0.2〜2.0mm、周長60〜600mm、幅200〜600mmであることが好ましく。本発明の導電性部材がロール形状の場合には、本発明のエラストマー組成物による弾性層が基材の周りに形成され、外径が6〜20mm、弾性層厚みが1〜5mmであることが好ましい。
【0044】
本発明の画像形成装置は、上述の導電性部材を備えてなる画像形成装置である。本発明の画像形成装置は、本発明の導電性部材がベルト形状の場合には転写ベルトとして、本発明の導電性部材がロール形状の場合には転写ロールとして用いることが好ましい。
以下に、ベルト形状の本発明の導電性部材を備えてなる画像形成装置の1実施形態を図1を用いて説明する。図1は本発明の画像形成装置の1実施形態を説明するための概略構成図である。
図1において、符号10は感光ドラム(像担持体)であり、矢印A方向に回転するようになっている。そして、この感光ドラム10の周囲には、そのドラム表面(感光層)を一様に帯電する帯電器11、帯電された感光ドラム10に所定の画像情報に応じた光学像を露光して静電潜像を形成する像露光装置12、感光ドラム10の表面に現像剤を供給して静電潜像を現像してトナー像とする現像装置13、トナー像Tを記録用紙(最終記録媒体)Pに転写させるベルト方式の転写装置18、転写後の感光ドラム10に残留付着するトナー等を除去するクリーニング装置14等が配設されている。
【0045】
また、符号15は記録用紙Pを積層して収容する給紙トレイ、15aは給紙トレイ15から記録用紙Pを1枚ずつ送り出すフィードロール、16は給紙トレイ15から送り出された記録用紙Pを感光ドラム10と転写装置18の間に所定のタイミングで送り出すレジストロール、17は転写されたトナー像を記録用紙Pに定着させるロール方式の定着装置を示している。
【0046】
本実施形態において、転写装置18は、ベルト形状の本発明の導電性部材からなる転写ベルト(無端ベルト、最終転写媒体搬送ベルト)20と、この転写ベルト20を張架した状態で感光ドラム10と同期して矢印B方向に回転走行するように支持する支持ロール21,22と、転写ベルト20に転写トナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写バイアスを供給するバイアス電源(転写手段)23と、このバイアス電源23から出力される転写バイアスを転写ベルト20に印加する給電ロール(転写手段)24と、転写ベルト20に付着するトナー等を除去するクリーニングブレード25とでその主要部が構成されている。
【0047】
転写ベルト20は、2本の支持ロール21,22により張架された状態で感光ドラム10に当接して転写ニップ部(転写部分)Nを形成するように配設されている。少なくとも転写ニップ部Nの上流側の支持ロール21は接地された状態で配設されており、また2本の支持ロールのうちいずれか一方の支持ロールは転写ベルト20の駆動ロールになっている。(本実例では支持ロール21)は転写ベルト20の駆動ロールになっている。
【0048】
また、給電ロール24は、感光体ドラム1と当接する面を支持する二本の支持ロール20,21間に、転写ベルト20の裏面側に当接するように配設されている。バイアス電源23は、矩形パルスから構成されるバイアス波形からなる転写バイアスを出力するようになっている。
【0049】
更に、感光体ドラム1を駆動する駆動元となるモータ30および転写ベルト20の支持ロールで且つ転写ベルト20の回転を行うドライブロールを駆動する駆動元となるモータ(ベルト駆動手段)31が装備されている。モータ30、モータ31は内部にエンコーダ等の回転状態を出力できる構造を備え、その出力は随時駆動コントローラ70に送られる。駆動コントローラ(回転駆動制御手段)70は、モータ30、モータ31から送られてくる回転状態をモニターし更に、二つのモータの回転速度を比較する比較回路を備え、その比較した値をもとにモータ30、モータ31の回転を制御している。
【0050】
一方、給電ロール24にバイアスを印加するバイアス電源23は、バイアス電源の制御部であるコントローラ(電界判断手段)19によって制御されている。給電ローラ24にはコントローラ19による制御によって、適確なタイミングで適正なバイアス値が印加される。給電ロール24に印加された電圧値はコントローラ19でモニターされ、その情報(転写電界)は前述の駆動コントローラ70に送られることとなる。
【0051】
次に本発明の画像形成装置の1実施形態における画像形成プロセスについて説明する。
先ず、回転する感光ドラム10の感光層を帯電器11により一様に帯電し、その帯電面に像露光装置12により原稿からの反射光を収束した光学像もしくは画像変調されたレーザビームからなる光学像が照射されて静電潜像が形成される。続いて、現像装置13からトナーが供給されて感光ドラム10の静電潜像のみに付着することによりトナー像Tが形成される。この例では、感光ドラム10は負極性に一様帯電されて反転現像用の静電潜像が形成された後、負極性に帯電したトナーにより現像されるため、負極性に帯電したトナー像Tが形成されるようになっている。
【0052】
続いて、このトナー像Tの形成タイミングにあわせて、給紙トレイ15からは所定のサイズや種類の記録用紙Pが1枚ずつフィードロール15aにて送り出され、レジストロール16によりタイミング調整された後に転写ニップ部Nにむけて送り出される。この転写ニップNを記録用紙Pの先端が通過する直前にコントローラ19からの指示に基づいて、バイアス電源23から所定の電圧(V0)または所定の電流(I0)が印加される。
【0053】
これにより、記録用紙Pは、感光ドラム10と対向する転写ニップ部Nに送り込まれた後、転写ベルト20表面に静電吸着され感光ドラム10に対し適正な速度でこの転写ニップ部Nにおいて感光ドラム10からトナー像Tが静電的に転写される。トナー像Tが転写された記録用紙Pは、支持ロール22により支持される転写ベルト20の部分でそのベルトから分離して剥離された後、定着装置17に送り込まれてトナー像Tの定着処理が施され、最後に装置外部に排出される。以上により画像が形成される。
【0054】
本発明の画像形成装置は、転写ベルト20として本発明の導電性部材を用いているので、使用時の用紙、感光ドラム間での放電によるオゾン劣化、ゴム劣化等によるベルト抵抗変化や永久伸びによるベルトスピード変動が抑えられ,長時間でも安定した用紙吸着性と用紙搬送性が得られ,転写特性上も安定する。
【実施例】
【0055】
<実施例1〜7、比較例1〜4>
下記表1に記載の配合の試料を、ニーダー混練(55Lスケール,加圧ニーダー使用、100℃,20分混練)し、プレス加圧成形(真空、50tプレス,160℃,15分成形)したことにより、厚み2mm、縦150mm、横200mmのテストピースを成形し、実施例1〜7及び比較例1〜4のサンプルとした。
尚、表中の数字は質量部を表す。また、イオン導電材であるトリエチルベンジルクロライドは、1質量部を水5mlに溶解させて用いた。
【0056】
【表1】

【0057】
得られた実施例1〜7及び比較例1〜4のサンプルについて下記の評価を行なった。その結果を表2に示す。
(体積固有抵抗率の常用対数値)
アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計を用いて三菱油化製HRプローブ(JIS-K6911)により、測定環境23℃55%RH,、印加電圧500v,10秒後の値を測定することにより体積固有抵抗率を求めた。その値を基により体積固有抵抗率の常用対数値を算出した。
【0058】
(体積固有抵抗率の常用対数値のバラツキ)
上記体積固有抵抗率の測定を縦、横各3点行ない、測定した体積固有抵抗率の常用対数値の最大値と最小値の差より、体積固有抵抗率の常用対数値のバラツキを算出した。
【0059】
(環境変動)
低温低湿環境下(LL:15℃30%RH)及び高温高湿環境(HH:28℃85%RH)における体積固有抵抗率の差を環境変動幅とした。
【0060】
(難燃性)
UL94で定められた垂直難燃試験方法に準じたシート片を用いて、UL94に準じて2回の接炎後のそれぞれの有炎燃焼時間及び無炎燃焼時間、並びに燃焼滴下物の有無により評価した。燃焼時間が10秒以下から30秒以下で燃焼しながら落ちる溶融物(燃焼滴下物)がない場合でV−0〜V−1レベル、及び燃焼しながら落下する溶融物(燃焼滴下物)のある場合はV−2である。
【0061】
【表2】

【0062】
表2より、CR、ECO及び難燃性ポリマーを含有する実施例1〜7のサンプルは、体積固有抵抗の常用対数値のバラツキが小さく、更に環境変動が低減され、難燃性も有していることがわかる。
一方、ECOを含有しない比較例3及び4のサンプルは、体積固有抵抗の常用対数値のバラツキが大きくなり、環境変動も悪化していることがわかる。また、難燃性ポリマーを含有しない比較例2は、難燃性が悪化していることがわかる。更に、難燃性ポリマーの代わりに無機難燃材を含有する比較例1は、難燃性は良好なものの、環境変動が悪化していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の画像形成装置の1実施形態を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
10 感光ドラム、
11 帯電器、
12 像露光装置、
13 現像装置、
14 クリーニング装置、
15 給紙トレイ、
15a フィードロール、
16 レジストロール、
17 ロール方式の定着装置、
18 転写装置、
19 コントローラ、
20 転写ベルト、
21,22 支持ロール、
23 バイアス電源、
24 給電ロール、
25 クリーニングブレード、
30,31 モータ、
70 駆動コントローラ、
T トナー像、
P 記録用紙、
N 転写ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴムと、エピクロロヒドリンゴムと、難燃性ポリマーと、からなるゴム混合物を含有する電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物であって、
前記クロロプレンゴムと前記難燃性ポリマーとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、
かつ、前記クロロプレンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、前記難燃性ポリマーの含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されるベルト形状の導電性部材。
【請求項3】
請求項1に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されるロール形状の導電性部材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電性部材を備えてなる画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−77132(P2006−77132A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262921(P2004−262921)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】