説明

電子写真装置用ベルト及び電子写真装置

【課題】高画質、高速化、コンパクトな電子写真装置に対応する、電気抵抗率制御(半導電性領域の表面抵抗率、表面抵抗率の面内均一性、電気抵抗率の経年変化の抑制)、ベルトの外観精度向上(表面均一性、厚さの均一性、周長の均一性)、環境安定性に優れた電子写真装置用ベルトを提供する。
【解決手段】電子写真装置用ベルト11は酸化処理カーボンブラックが均一分散されたポリアミドイミド樹脂から構成され、金型を加熱及び回転させながら、ポリアミドイミド溶液を金型内で遠心成形する樹脂製シームレスベルトの遠心成形装置にて電子写真装置用ベルト11に成形される。成形されたシームレスベルト表面の波長450nmにおける分光反射率は0.5%以上、かつ1.5%以下であり、表面抵抗率が1×10乃至1×1014Ω/□のシームレスベルト。当該電子写真装置用ベルト11を電子写真装置の中間転写ベルト、転写材搬送ベルトに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式の複写機やプリンタ等の電子写真装置に使用されるトナー転写用ベルト、転写材搬送ベルト及び電子写真装置に関する。
【0002】
電子写真プロセスは、典型的には、光導電性物質を利用した電子写真用感光体表面を一様に帯電させた後、露光により潜像を形成、形成された潜像を、トナーを用いて現像してトナー画像を形成、感光体表面に形成されたトナー画像を、中間転写体を介して若しくは介さずに、用紙等の転写材表面に転写し、このトナー転写画像を加熱、加圧或いは溶剤蒸気等により転写材に定着する、という複数の工程を経て、転写材上に画像が形成される。一方、感光体表面に残ったトナーは、必要に応じてクリーニング手段によりクリーニングされ、再び上記の複数の工程に供される、というものである。
【0003】
そして、上記のような電子写真プロセスにあって、感光体表面に形成されたトナー画像を、中間転写体を介して用紙等の転写材表面に転写する場合において、トナー画像を感光体表面から受取り、転写材表面へと転写する、トナー画像の中間坦持体としての役割を担うのが、トナー転写用ベルトであり、中間転写ベルトと一般に称されるものである。
【0004】
また、トナー転写用ベルトに要求される電気抵抗特性や外観精度は、用紙等の転写材を搬送するベルトにも適しており、同様の構成と機能を有するベルトは転写材搬送ベルトとしても用いられる。
【0005】
近年、カラー複写機、カラープリンターの急速な普及により、これらに要求される機能は、より高画質、より高速化、よりコンパクトになっており、それに伴い、使用される中間転写ベルト等への要求特性も、高画質化のため電気抵抗率制御(半導電性領域の表面抵抗率、表面抵抗率の面内均一性、電気抵抗率の経年変化の抑制)、ベルトの外観精度向上(表面均一性、厚さの均一性、周長の均一性)、環境安定性の向上、そして高速化・小型化のため、ベルトの高弾性率、高強度、柔軟性の向上、が要求される。
【0006】
ベルト部材の技術側面から集約すれば、導電性付与材の均一分散性に優れ、精密成形が可能で、強靱な樹脂材料、の開発が待たれている。
【背景技術】
【0007】
従来から電子写真装置用ベルトとして、種々の絶縁性合成樹脂に、カーボンブラック等の導電性フィラーを分散させて導電性を付与した樹脂コンパウンドを用い、これを筒形押出成形により円筒状に成形したものが、中間転写ベルトや転写材搬送ベルトとして提案され、使用されている。
【0008】
また、電子写真装置用ベルトは、合成樹脂製の一種のシームレスベルトであるが、成形方法の面でも、外観精度がより優れたシームレルベルトを製造する方法として、合成樹脂を溶液としておき、遠心成形して溶媒を取り除き、表面が均一で、厚みも均一なシームレスベルトを得る、合成樹脂製シームレスベルト製造装置が提案されている。 (例えば、特許文献1参照)
【0009】
中間転写ベルトとして、ベルト駆動時の制御の容易さから、導電性熱可塑性エラストマー等の弾性材料と熱可塑性樹脂よりなる誘電体層との、2層構造とした無端環状のベルトが提案されている。 (例えば、特許文献2参照)
【0010】
しかし、熱可塑性エラストマー素材で構成されたベルトは、素材のもつ性質から変形が生じ易く、特に支持ロールに移動可能に張架された状態で、長時間停止していると支持ロールの曲率にならって変形が生じやすく、ベルトが波を打つとトナー画像の正確な転写ができないという不具合があった。
【0011】
転写材搬送ベルトではさらに、所定の通紙耐久性も要求される。この通紙耐久性は、ベルトの厚みを厚くすることでも改善されるが、高い引張強度と所定の通紙耐久性を得るために、ベルトの厚みを大きくすると、転写材剥離のために必要な電界も大きくなり、ベルトに電圧を印加する電源の負担が大きくなってしまうという問題点がある。
【0012】
また、転写材搬送ベルトは、静電的な吸着力を介して転写材を保持しているため、転写材がベルトと分離する際に放電が生じることがある、特に低温低湿の環境下で生じやすい。また、転写材搬送ベルトに、電気抵抗率が高いベルトを用いた場合には、転写材搬送ベルトが必要以上に電荷を帯びやすく放電が生じやすくなるが、この放電現象が発生すると転写材上のトナーの一部が逆極性となり、電気的に弾かれてしまい、転写不良が発生し、転写材上では一部白抜けという画像欠陥が発生し、良好な画質が得られ難いという問題がある。
【0013】
そこで、転写材搬送ベルトの、表面抗率を10Ω/□以下とするため、クロロプレンゴムなど弾性体の表面にナイロンコートやウレタンコートを施したベルトが提案されている。 (例えば、特許文献3参照)
【0014】
しかし、クロロプレンゴムに表面層としてナイロン系樹脂をコートした場合には、表面のコート層が硬いために、支持ロールの曲率部での転写材搬送ベルトの変形に追随することができず、コート層にクラックが発生するという問題が発生する。ウレタンコートの場合には、コート層としての柔軟性を有しており、前記したコート層表面にクラックを発生する問題はないが、ウレタン樹脂はトナーが付着し易く汚れやすい問題が発生する。
【0015】
さらに、電気抵抗率が10Ω・cm未満の搬送ベルトを用いた場合、このような転写材搬送ベルトは、電荷が流れ易くなってしまい、静電的な吸着力を介して転写材を保持することができなくなるという問題がある。
【0016】
トナー転写用ベルトとして、カーボンブラックなどを分散したクロロプレンゴムなど弾性体を用いる場合は、表面抵抗率10Ω/□前後の半導電性の抵抗領域は、抵抗制御の難しい領域であるうえ、高粘度のゴム材料に通常の導電性カーボンブラックを添加しても均一分散が難しく、所望の半導電抵抗率を安定して得ることは非常に困難である。そのため、このような弾性ベルトの表面抵抗率の面内バラツキを1桁(logΩ/□)以内に安定して製造することが難しく、抵抗の面内バラツキが1桁以上に大きい場合には、トナー転写電圧が均一に印加できないため、トナー転写画質が安定しないという問題が発生する。
【0017】
またトナー転写用ベルトには、トナー画像を保持し、かつ、トナー画像を転写材に転写するために1kVから5kVの転写電圧を印加するが、この印加電圧によって、ベルト材料の電気抵抗率が経時変化してしまう問題もある。
【0018】
トナー転写用ベルトのベルト材料の電気抵抗率の経時変動対策として、クロロプレンゴムとEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)とからなるゴム材料が提案されたが(例えば、特許文献4参照)、ベルト材料の電気抵抗率の経時変動、ベルト表面抵抗率の面内バラツキの改善としては、十分なものではなかった。
また、転写ベルトのベルト材料の電気抵抗率の経時変動対策とベルト表面抵抗率の面内バラツキの対策を兼ね、エピクロルヒドリンゴムなどの極性の強い、イオン伝導タイプのゴム材料を用いる提案がされている。(例えば、特許文献5参照)
【0019】
しかし、イオン伝導タイプは、材料の吸湿による導電性への影響を受けやすく、例えば夏場の高温多湿環境と冬場の低温低湿環境で電気抵抗率が1.5桁(logΩ)以上変化するという問題がある。
【0020】
弾性率と強度に優れた熱硬化型樹脂材料を用いる例として、外層と内層からなる2層構成ポリイミドベルトが提案されている。(例えば、特許文献6参照) 外層は、導電性物質を含有してなり、表面抵抗率が10〜1015Ω/□であり、内層が1011Ω/□以上、かつ外層より高い抵抗構成とすることで、機械特性、抵抗バラツキが良好になると提案している。
【0021】
しかし、ポリイミド樹脂を用いることで高弾性率は得られるが、カーボンブラック等の導電性微粉末をポリイミド前駆体である高粘度のポリアミド酸に均一分散するのは困難であり、また熱硬化性樹脂であるポリイミド樹脂を加熱硬化させる際にカーボンブラックの2次凝集が発生すると考えられ、ベルト樹脂中に導電性の連鎖ができてしまい、電気抵抗率のバラツキを大きくする原因となる問題がある。
【0022】
カーボンブラック等の分散不良は、ベルトの表面抵抗率の面内バラツキや局所的な導電性の連鎖の原因となり、カーボンブラック等の分散不良を内在する中間転写ベルトや転写材搬送ベルトは、転写部において印加した電圧の集中が起こり易く、これにより電気抵抗率が更に低下する悪循環を生じ、早期に寿命が尽きることになる。
【0023】
以上のような熱可塑性エラストマー、ゴム弾性体、イオン導電性ゴム、熱硬化性樹脂等、種々の材料や方法を用いたベルトが提案されている、しかし、近年の、より高画質、より高速化、よりコンパクトな電子写真装置に好適に用いることができる、要求される特性を高い次元でバランス良く満足する中間転写ベルト及び転写材搬送ベルトは未だ達成されていない。
【特許文献1】特開2001−38750号公報
【特許文献2】特開昭62−156682号公報
【特許文献3】特開平8−185068号公報
【特許文献4】特開平9−179414号公報
【特許文献5】特開平7−271204号公報
【特許文献6】特開2001−22189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、前記従来の電子写真装置用ベルトにおける諸問題を解決し、近年の電子写真装置の高性能化に対応する、電気抵抗率特性(半導電性領域の表面抵抗率、表面抵抗率の面内均一化、電気抵抗率の経年変化の抑制)が好適に制御され、ベルト外観精度(表面均一性、厚さの均一性、周長の均一性)の良い、環境安定性が向上された、高弾性率、高強度、柔軟性の向上した、多様な要求課題を、高次元で満足する電子写真装置ベルトを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、導電性付与材が分散添加されたポリアミドイミド樹脂から構成されるベルトであって、該ベルト表面の波長450nmにおける分光反射率(正反射光除去)が、表面全体にわたり0.5%以上、かつ1.5%以下である電子写真装置用ベルトを特徴としている。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記導電性付与材は酸化処理カーボンブラックであり、前記ポリアミドイミド樹脂100質量部に対し、前記酸化処理カーボンブラックが10乃至30質量部となるように分散添加され、表面抵抗率が1×10Ω/□乃至1×1014Ω/□の範囲内にある電子写真装置用ベルトを特徴としている。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記電子写真装置用ベルトは、ポリアミドイミド樹脂の極性溶媒溶液に、導電性付与材を分散してなる溶液から、遠心成形されたシームレスベルトであることを特徴としている。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載のベルトを使用した電子写真装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の発明によれば、ベルトの基材樹脂はポリアミドイミド樹脂を用いているので、高弾性率、高強度、高柔軟性を有し、ベルト駆動時の応力で伸びることがなく、歪みのないトナー画像を転写できる。ポリアミドイミド樹脂のアミド結合は吸湿してイオン導電作用を示すので、分散添加された導電性付与材との相乗効果でベルト表面抵抗率の面内均一性が向上し、転写部における印加電圧の集中が起こらず、電気抵抗値の経年低下を引き起こしにくい。 導電性付与材が分散添加されているので、表面抵抗率が半導電性領域で制御され、かつ導電性の連鎖がないから、印加電圧の集中による電気抵抗値の経年低下を引き起こしにくい、そしてベルト表面の分光反射率(正反射光除去)が表面全体にわたり0.5%以上、かつ1.5%以下なので、ベルト表面は一定範囲の表面粗さを全面に亘って有するから、トナー粒子を物理的に坦持して搬送することが可能であり、かつ、一定範囲の粗さであるから余分なトナー付着等による汚れを防止することができる、高画質なトナー画像を転写できる電子写真用ベルトが提供できるものである。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、導電性付与材が酸化処理カーボンブラックであるから樹脂に対する分散性に優れ、導電性の連鎖がなく印加電圧の集中が発生しない。表面抵抗率が1×10Ω/□乃至1×1014Ω/□の範囲内にあるので、余分な電荷の帯電を防止しつつ、トナーの搬送や転写材の搬送に必要な静電気力を維持できる。さらに、不必要な帯電がないから、転写部において転写電圧を低く設定することができ、放電現象が発生せず、高電圧の繰り返し印荷による導電性付与材の酸化による電気抵抗率の変化が起きにくく、ベルトの表面抵抗率が長期的に安定し、また、ベルトに電圧を印加する電源の負担も小さくできる電子写真用ベルトが提供できるものである。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、ポリアミドイミド樹脂の溶液に、導電性付与材を分散してなる溶液から、遠心成形しているので、導電性付与材の均一分散性に優れ、半導電性領域の表面抵抗率、表面抵抗率の面内均一化、電気抵抗率の経年変化の抑制がされた電子写真装置用ベルトが得られる。更に、溶液からの遠心成形によれば、表面均一性、厚み均一性、周長均一性等の外観精度に優れた、継ぎ目のない、シームレスベルトが得られ、高画質なトナー画像を転写できる電子写真用ベルトが提供できるものである。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3に記載のベルトが使用された電子写真装置であるので、高画質化、高速化を達成しつつ、よりコンパクトな、電子写真装置とすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の電子写真装置用ベルトと電子写真装置の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の電子写真装置用ベルト11の一部を破断した外観形状を示す斜視図である。図2は電子写真装置用ベルト11の使用時の一態様を示す一部を破断した斜視図である。
【0035】
本願発明の電子写真装置用ベルト11は無端環状のいわゆるシームレスベルトであり、駆動ローラ41と従動ローラ42等からなる、少なくとも2本の支持ローラ間に、所定の張力で巻架されて使用される。
【0036】
図3は電子写真装置20の例示的一態様の概略構成を示す要部断面図である。図3の装置は、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーが並列に配置された4連タンデムOPC方式と呼ばれる電子写真装置であり、特に、感光体(図3では感光ベルト13)に形成したトナー像を、中間転写ベルト14に一次転写し、さらに中間転写ベルト14のトナー像を転写材(用紙)31に2次転写する中間転写方式といわれる電子写真装置である。
【0037】
本発明の電子写真装置用ベルト11は、図3における、トナー転写ベルト14、感光ベルト13として、或いは、図3においては搬送ローラ24として図示されているローラをベルト構成とした、転写材搬送ベルトに好適に用いることができるシームレスベルトである。
【0038】
本発明の電子写真装置用ベルト11の基材樹脂としては、ポリイミド樹脂等の熱硬化樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂などの熱可塑性樹脂等が使用できるが、ベルトの変形による転写不良等の問題が発生が少なく、カーボンブラックの均一分散性に優れ、熱硬化時のカーボンブラックの2次凝集の問題がなく、さらにポリアミドイミドのワニス状に重合された樹脂の極性溶媒溶液を遠心成形金型に直接投入し、シームレスベルト形状に遠心成形できる等の利点から、ポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0039】
ポリアミドイミド樹脂は高ヤング率材料であるので、駆動ローラ41からの駆動応力や、クリーニングブレード等からの応力による変形が少なく、色ズレ等の画像欠陥が生じにくい中間転写ベルト14や転写材搬送ベルトが得られる。
【0040】
ポリアミドイミド樹脂は、通常、トリカルボン酸無水物或いはその誘導体と、ジイソシアネート、あるいはジアミンを略等モルで非プロトン性極性溶媒中に溶解し、加熱して反応させ、ポリアミドイミド・ワニス溶液として得られる。 この際、モノマー濃度(溶媒中におけるジアミン成分と酸無水物成分の濃度)は種々の条件により設定されるが、5〜30質量%が好ましい。また、反応温度は200℃以下に設定することが好ましく、特に好ましくは100〜180℃であり、反応時間は2〜10時間である。
【0041】
トリカルボン酸無水物として具体的には、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3、4−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,6,7−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,5,8−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,2’−(3,4−ジカルボキシフェニル)(3−カルボキシフェニル)プロパン無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)(3−カルボキシフェニル)スルホン酸無水物、ペリレン−3,9,10−トリカルボン酸無水物、(3−カルボキシフェニル)(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル無水物、エチレントリカルボン酸無水物等が挙げられる。芳香族トリカルボン酸無水物を用いるのが、重合されたポリアミドイミド樹脂の機械特性や耐熱性を高める上でより好ましく、トリメリット酸無水物及びその誘導体が特に好ましく用いられる、また2種以上を混合しても用いてもよい。
【0042】
ジイソシアネートとして具体的には、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。これらは単品でも、また混合して用いても良く、芳香族ジイソシアネートが好ましく用いられるが、その一部を脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートとして、これらを併用してもよい。
【0043】
ジアミンとして具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(DDE)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン(PDA)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エ−テル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、等が挙げられる。これらは単品でも、また混合して用いても良く、芳香族ジアミンが好ましく用いられるが、その一部を脂肪族ジアミン又は脂環式ジアミンとして、これらを併用してもよい。
【0044】
以上、本願発明のポリアミドイミド樹脂ベルトに使用できるトリカルボン酸無水物、ジイソシアネート化合物、ジアミン化合物を挙げた、これらの中でも、トリメリット酸無水物と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの組合せが好ましい、または該ジイソシアネート化合物に替え、そのジアミンである4,4’−ジアミノジフェニルメタンやp−フェニレンジアミンを組合せて重合反応させたポリアミドイミド樹脂が、耐熱性や機械的強度の面から本願発明のベルトに好ましく用いられる。
【0045】
重合反応を行う際の溶媒としては、溶解性などの点より極性溶媒が好適に挙げられ、また反応を阻害しないので非プロトン性極性溶媒が好ましく用いられる。非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。その他、用いることができる非プロトン性極性溶媒として、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単独又は複数併用して用いることができる。
【0046】
溶媒は、蒸発、置換、又は拡散により、ポリアミドイミド成形品から容易に除去することができる。
【0047】
導電性付与材としては、導電性を有する粒子径が0.01〜10μmの針状、球状、板状、又は不定形の粉末であれば使用できるが、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類、天然黒鉛等の黒鉛粉末類、亜鉛華、セラミック粉末などが好ましく、9〜14(logΩ/□)の半導電性領域の導電性を均一に安定的に付与するには、pH5以下に酸化処理されたカーボンブラックが特に好ましく使用される。
【0048】
酸化処理カーボンブラックの添加量は、粒子自体の導電性や粒子径の程度にもよるが、ベルト樹脂基材100質量部に対し、10〜30質量部、好ましくは15〜20質量部の含有量となるよう分散添加すると、ベルト樹脂に半導電性領域の導電性を付与することができる。
【0049】
カーボンブラックをより均一に分散するには、極性有機溶媒中にカーボンブラックと分散剤とを混合し、予めカーボンブラック分散液を調製する。カーボンブラックを均一に分散させる方法は特に制限されないが、例えば、カーボンブラックと分散剤とをボールミル又は超音波等で溶媒に分散させる方法がよい。
【0050】
前記分散剤としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリドン)等が挙げられる。
【0051】
上記のようにして得られた、ポリアミドイミド・ワニス溶液とカーボンブラックと分散剤の混合溶液とを適宜混合して、カーボンブラックが分散添加されたポリアミドイミド溶液からなる、流動性の材料を準備する。
【0052】
ポリアミドイミド樹脂溶液に酸化処理カーボンブラックを分散させた溶液から、電子写真装置用ベルト11を作製する場合、前記流動性の材料を、図4に示す円筒状金型中を有する遠心成形装置で遠心成形し、溶媒を蒸発、拡散させ取り除き、シームレスベルト形状に成形するのがよい。
【0053】
なお、ポリアミドイミド樹脂は熱可塑性の樹脂であるから、前記流動性の材料から溶媒をある程度除去した後、樹脂を通常の押出成形機にフィードし、真空ベントから残留溶媒を脱気しつつ、円筒状に押出成形することも勿論可能であるが、成形表面の均一性の制御と、カーボンブラックの2次凝集防止の制御に困難を伴う。
【0054】
ポリアミドイミド樹脂ベルトには、酸化処理カーボンブラックの他に、物性を損なわない程度に、シリコーン系又はフッ素系の有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、その他の添加剤を含有してもよい。また、ポリアミドイミド樹脂は、その物性を損なわない程度に、他のポリマー成分が共重合されたり、ブレンドされたりしたものであってもよい。
【0055】
本発明の電子写真装置用ベルト11は、単層又は複層のポリアミドイミド樹脂層からなり、該樹脂層の少なくとも1層として、酸化処理カーボンブラックを含有する導電性のポリアミドイミド樹脂を用いる構成とすることもできる。
【0056】
また、ベルト上に表面コート層を設けた構成をとってもよい。また、本発明の電子写真装置用ベルト11において、樹脂層の少なくとも1層として、酸化処理カーボンブラックを含有するポリアミドイミド樹脂を用いる以外の構成、例えば、多層構成、表面コートの種類等は、従来公知の構成をとることができる。
【0057】
本発明の電子写真装置用ベルト11は、表面抵抗率が、1×10〜1×1015(Ω/□)であることが好ましく、1×10〜1×1014(Ω/□)であることがより好ましい。この表面抵抗率が1×1015(Ω/□)より高い場合には、電荷の保持力が大きいために、転写電界で搬送ベルトが帯電してしまい、除電機構が必要となることがある。一方、表面抵抗率が1×10(Ω/□)未満の場合には、中間転写ベルト14から転写材に転写された未定着トナー像の電荷を保持するための静電的な力が働きにくくなり、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。なお、この表面抵抗率は、転写面における表面抵抗率を示す。
【0058】
本発明の電子写真装置用ベルト11の表面抵抗率は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブ等)を用い、JIS K 6991に従い測定した。円形電極は、円柱状電極部と該円柱状電極部を一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部とを備える。円柱状電極部とリング状電極部との間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により、ベルトの表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部の外径を示す。D(mm)はリング状電極部の内径を示す。
式(1) ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
【0059】
電子写真装置用ベルト11は、転写初期と、連続して30000回転写した後との、表面抵抗率の変動値が、常用対数値において1.0(logΩ/□)以内であるのが好ましい。なお、この表面抵抗率の変動幅は、22℃−55%RHの低温低湿環境下での用紙走行部において測定したものである。使用におけるベルトの用紙走行部の表面抵抗率が、経時的に低下することが抑えられていることから、転写効率の低下や搬送ベルトの寿命の短命化を防ぐことができる。
【0060】
前記ポリアミドイミド溶液を、例えば、筒状芯体で表面粗さRz=0.2μm〜0.8μmに仕上げられた金型の内周面に、浸漬方式、塗布方式にてコートする方式等で筒状に展開して、遠心成形して溶媒を取り除いたポリアミドイミド樹脂製の電子写真装置用ベルト11は、厚みのコントロールが容易であるとともに、表面の平滑性を示す指標である分光反射率(波長450nm、正反射光除去)が0.5%以上かつ1.5%以下のものが得られ、転写ベルト14や転写材搬送ベルトに好適である。
【0061】
正反射光を除去し拡散反射光のみを測るには、例えば積分球などを使った拡散照明方式により正反射光が当たる位置に光トラップを設けて測定する。
正反射光を除去して拡散光のみ測定する方法をSCE(正反射光除去)方式という。
【0062】
分光反射率(正反射光除去)は、商品名「分光測色計CM2002」(ミノルタ(株)製)を使用し、測定光源D65、測定系SCE、観察視野2°で測定した。
【0063】
本発明の電子写真装置用ベルト11は、ヤング率が2000MPa以上であることが好ましく、3000MPa以上であることがより好ましい。このヤング率が2000MPa未満の場合には、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの変形量が大きくなり、駆動時の応力に対するベルト変形が大きいと、良好な画質を安定して得られない。ヤング率はベルトの厚さを適宜調整することで所望の値を得る。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0065】
「実施例1」
トリメリット酸無水物1mol、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、室温から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応をさせ、固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これにN−メチル−2−ピロリドンを更に加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調整した。
【0066】
前記ポリアミドイミド溶液中に、pH5.0のカーボンブラックである#3400(商品名、三菱化学株式会社製)を、ポリアミドイミド樹脂固形分100質量部に対し16質量部となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。
【0067】
このカーボンブラック入りポリアミドイミド溶液を、図4に示す1000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさとし、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されていて、表面粗さRz=0.2μm。そして金型両端の開口部にはリング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して材料漏れを防止することとした。こうして金型に材料を注入したら、1000rpmの速度でレベリングして遠心成形し、熱風乾燥機で雰囲気温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持して金型を停止させるとともに、金型ごと180℃のオーブンに投入し、45分間後に金型を取り出した。
【0068】
金型を取り出したら、金型を放置して室温で冷却し、金型とベルトの熱膨張差を利用してベルトを脱型した。そして、ベルトの両端部をそれぞれカットして240mmの幅とし、厚さ約100μmの電子写真装置用ベルト11を作製した。 このベルト外周面の分光反射率は0.5%であった。
【0069】
「実施例2」
次いで、金型内面の鏡面研磨状態が異なる、表面粗さRz=0.4μmの金型を用いて、実施例1と同様の方法で電子写真装置用ベルト11を作成した。
このベルト外周面の分光反射率は1.0%であった。
【0070】
「実施例3」
次いで、金型内面の鏡面研磨状態が異なる、表面粗さRz=0.8μmの金型を用いて、実施例1と同様の方法で電子写真装置用ベルト11を作成した。
このベルト外周面の分光反射率は1.5%であった。
【0071】
「実施例4」
次いで、金型内面の鏡面研磨状態が、表面粗さRz=0.4μmの金型を用いて、実施例1におけるポリアミドイミドに対するカーボンブラック量を20質量部に変更し実施例1と同様にして電子写真装置用ベルト11を作成した。
このベルト外周面の分光反射率は1.0%であった。
【0072】
「実施例5」
次いで、金型内面の鏡面研磨状態が、表面粗さRz=0.4μmの金型を用いて、実施例1におけるポリアミドイミドに対するカーボンブラック量を12質量部に変更し実施例1と同様にして電子写真装置用ベルト11を作成した。
このベルト外周面の分光反射率は1.0%であった。
【0073】
「比較例1」
次いで、比較例として、金型内面の鏡面研磨状態が異なる、表面粗さRz=0.1μmの金型を用いて、実施例1と同様の方法で電子写真装置用ベルト11を作成した。このベルト外周面の分光反射率は0.4%であった。
【0074】
「比較例2」
次いで、比較例として、金型内面の鏡面研磨状態が異なる、表面粗さRz=1.2μmの金型を用いて、実施例1と同様の方法で電子写真装置用ベルト11を作成した。このベルト外周面の分光反射率は1.6%であった。
【0075】
(評価)
実施例1〜5および比較例1、2で得られた電子写真装置用ベルト11の、波長450nmにおける分光反射率(正反射光除去)、表面抵抗率、表面抵抗率の面内バラツキを測定、その後、当該電子写真装置用ベルト11を図3に示すような4連タンデムOPC式電子写真装置の中間転写ベルト14に巻架し、転写初期と連続30000回転写後での表面抵抗率の変動、及び運転中の中間転写ベルト14表面に残留したトナーを掻き落とすトナー回収ブレード(図3中には図示せず)とのビビリ振動の発生によるトナーすり抜けについて評価した。各測定を表1に示す。
【0076】
−分光反射率−
本実施例おける分光反射率の測定は、商品名「分光測色計CM2002」(ミノルタ(株)製)を使用し、測定光源D65、測定系SCE、観察視野2°で測定した。結果を表1に示す。
【0077】
−表面抵抗率−
本実施例おける表面抵抗率の測定は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブ:円柱状電極部Cの外径16mmφ、リング状電極部Dの内径30mmφ、外径40mmφ)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加し、10秒後の電流値を求め、上述の式(1)で算出した。結果を表1に示す。
【0078】
−表面抵抗率の面内バラツキ−
本実施例おける表面抵抗率の面内バラツキ(ΔR)は、搬送ベルトを周方向に8分割、幅方向に3分割し、ベルト面内24点について表面抵抗率を計測し、表面抵抗率の対数値をとり、その最大値と最小値の差として算出した。
結果を表1に示す。
【0079】
−転写初期と連続30000回転写後での、表面抵抗率の変動値−
本実施例おける転写初期と連続30000回転写後での、表面抵抗率の変動値は、初期の表面抵抗率と、30000枚連続コピー後の用紙走行部における表面抵抗率との、対数値の差として算出した。結果を表1に示す。
【0080】
−転写画像の判定−
図3に示す本発明の中間転写ベルトが取り付けられた4連タンデムOPC型電子写真装置で、転写画質を目視により判定、またトナー回収ブレードのビビリ振動の発生によるトナーすり抜けを判定した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から、実施例1〜3の電子写真装置用ベルト11は、分光反射率が0.5%から1.5%の範囲内にあり、表面抵抗率は9〜14(logΩ/□)の範囲内で、表面抵抗率の面内バラツキ、及び表面抵抗率の変動値はいずれも1桁(logΩ/□)以内にある。電子写真装置に備えて実際に画像を出力(転写)した時にも、ざらつき感の無い非常に良好な画像が得られ、実使用に適したものであった。(総合判定:◎)
【0083】
実施例4、5のシームレスベルト11は、分光反射率が0.5%から1.5%の範囲内にあるが、表面抵抗率が9〜14(logΩ/□)の範囲から少々外れるものである。しかし、表面抵抗率の面内バラツキ、及び表面抵抗率の変動値はいずれも1桁(logΩ/□)以内にあり、電子写真装置に備えて実際に画像を出力(転写)した時にも、おおむね良好な画像が得られたので、実使用には耐えるものと判定した。(総合判定:○又は△)
【0084】
一方、比較例1のシームレスベルト11は、分光反射率が0.5%から1.5%の範囲から外れている。表面抵抗率は9〜14(logΩ/□)の範囲内にあり、表面抵抗率の面内バラツキ、及び表面抵抗率の変動値も、1桁(logΩ/□)以内にあるが、電子写真装置に備えて実際に画像を出力した時には、トナー回収ブレードのビビリ振動の発生によるトナーすり抜け現象のため中間転写ベルト14にはトナーの拭き残しが生じ、良好な画像が得られず、実使用に耐えるものではなかった。(総合:×)
【0085】
比較例2のシームレスベルト11は、分光反射率が0.5%から1.5%の範囲から外れている。表面抵抗率が9〜14(logΩ/□)の範囲内にあるものの、表面抵抗率の面内バラツキ、及び表面抵抗率の変動値は、1桁(logΩ/□)を越えている。電子写真装置に備えて実際に画像を出力した時には、用紙走行部分が白く抜ける問題が発生し、実使用に耐えるものではなかった。(総合:×)
【0086】
以上説明したように、実施例1〜3の電子写真装置用ベルト11のように、ポリアミドイミド樹脂にカーボンブラックが均一分散され、分光反射率が0.5%から1.5%になるように成形された、表面抵抗率が9から15(logΩ/□)である構成を有するシームレスベルト11は、ベルトの面内バラツキ(抵抗値の最大値と最小値の差)が少なく、経時的な電気抵抗率の変動が少ないので、長期に亘り良好な転写画像を保持し、トナー回収ブレードのビビリ振動も発生しないという顕著な効果を奏するので、このようなポリアミドイミド製シームレスベルトは電子写真装置用の中間転写ベルト14或いは転写材搬送ベルトとして、長期間に亘り、高品質の転写画像を安定して得られるものである。
【0087】
また、実施例4,5の電子写真装置用ベルトのように、ポリアミドイミド樹脂にカーボンブラックが均一分散され、分光反射率が0.5%から1.5%になるように成形された構成を有するベルトであれば、表面抵抗率が9から14(logΩ/□)の範囲から少々外れた場合であっても、中間転写ベルト又は転写材搬送ベルトとして実用上使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の電子写真装置用ベルトの一部を破断した斜視図である。
【図2】本発明の電子写真装置用ベルトの使用時の一態様を示す一部を破断した斜視図である。
【図3】本発明の電子写真装置の例示的一態様を示す概略構成図である。
【図4】この発明に使用される遠心成形装置を示す一部を破断した斜視図である。
【符号の説明】
【0089】
11 電子写真装置用ベルト
13 感光ベルト(静電潜像担持体)
14 トナー転写ベルト(中間転写ベルト)
20 4連タンデムOPC−中間転写方式電子写真装置
21 露光ユニット
22 4連タンデムトナー現像ユニット
23 定着ローラ
24 転写材搬送ローラ
31 転写材(用紙)
41 駆動ローラ(支持ローラ)
42 従動ローラ(支持ローラ)
51 金型ローラ
52 金型
53 材料供給装置
54 材料定量吐出装置
55 リング状プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性付与材が分散添加されたポリアミドイミド樹脂から構成されるベルトであって、該ベルト表面の波長450nmにおける分光反射率(正反射光除去)が、表面全体にわたり0.5%以上、かつ1.5%以下であることを特徴とする電子写真装置用ベルト。
【請求項2】
前記導電性付与材は酸化処理カーボンブラックであり、前記ポリアミドイミド樹脂100質量部に対し、前記酸化処理カーボンブラックが10乃至30質量部となるように分散添加され、表面抵抗率が1×10Ω/□乃至1×1014Ω/□の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置用ベルト。
【請求項3】
前記電子写真装置用ベルトは、ポリアミドイミド樹脂の極性溶媒溶液に、導電性付与材を分散してなる溶液から、遠心成形されたシームレスベルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真装置用ベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の電子写真装置用ベルトを使用したことを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−79364(P2007−79364A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269700(P2005−269700)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】