説明

電子写真装置用導電性ローラ、帯電ローラ及び電子写真装置用導電性ローラの製造方法

【課題】導電性弾性体層が低硬度であり耐圧縮永久歪性に優れかつ導電性弾性体層からのブリードによる汚染や導電性変化が抑制された電子写真装置用導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】芯金外周上に導電性弾性層と導電性機能層を有する電子写真装置用導電性ローラにおいて、該導電性弾性層がエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)100質量部に対して、液状エチレン−プロピレン共重合体(B)20〜100質量部、硫黄0.1〜4質量部、カーボンブラック10〜100質量部を含有するゴム組成物を加硫してなることを特徴とする。
(A)エチレン含量=60〜73モル%、Mw/Mn<4、135℃デカリン中での極限粘度[η]=2.7〜5.0dl/g、ヨウ素価=10〜40
(B)ジエン成分を含まず、エチレン含量=50〜78モル%、135℃デカリン中での極限粘度[η]=0.2〜0.4dl/g

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンター、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される電子写真装置用導電性ローラに関し、特に電子写真装置の感光体に接触して用いられる帯電ローラに関するものである。また、該電子写真装置用導電性ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置(複写機・光プリンター等)の画像形成装置において、感光体等の像担持体面を帯電処理する方法としては、電圧を印加した帯電ローラを感光体面に接触させて感光体面を帯電処理する接触帯電方式が用いられている。接触帯電方式で用いられる帯電ローラとしては、感光体表面のピンホール・傷等により生じるリークを防止するため、適度な導電性及び感光体との十分な接触がなされるよう低硬度であることが要求される。
【0003】
このような接触帯電方式に用いられる帯電ローラは、停止時においても、例えば、バネ等の押圧力により感光体に当接した状態に設置され、作動時において、停止時の配置で感光体に従動回転する場合が多い。
【0004】
電子写真装置や電子写真装置の中心部分を収めたプロセスカートリッジ等の製品が製造されてからユーザーが初めて使用するまで、帯電ローラが感光体の一定の位置にバネ等の押圧力で当接された状態が数週間から数年など長期に亘り継続することがある。また、ユーザーが電子写真装置を長期に亘って使用しない場合は、当然、帯電ローラが感光体の一定の位置に当接された状態が長期に亘り継続することになる。このように電子写真装置が長期間駆動されない場合、感光体と帯電ローラとの当接部では帯電ローラが変形し、当初の形状に復元せず、均一な帯電がなされなくなり画像ムラが発生する。即ち、長期的な当接による永久変形が生じにくく、圧縮永久歪率が小さいことが要求される。
【0005】
帯電ローラの弾性体層には、低コストで耐オゾン性に優れることから導電性を調整したエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)が使用されることが多いが、EPDMを用いた弾性体は、圧縮永久歪率が大きくなりやすい。EPDMを用いた弾性体で圧縮永久歪率を小さくするためには、EPDMの分子量を出来るだけ大きくし、また、分子量分布を小さくすることが考えられる。しかし、このような高分子量体を用いた場合は、未加硫時の粘度が高く、また、未加硫ゴムがボソボソの状態でまとまらない等、混練加工性や押出し加工性が極めて低く、ローラの加工が困難となる。
【0006】
加工性の低下を改善する方法として、パラフィンオイル等のプロセスオイルを多量に添加し、未加硫ゴムの粘度を低下させる方法も知られているが、加工性の改善を十分になしえるものではない。また、プロセスオイルの多量添加は、加硫した後の弾性体からプロセスオイルが滲み出し、感光体を汚染する問題がある。感光体の汚染を防止する方法として、弾性層の外周上にプロセスオイルと親和性の小さな感光体汚染防止効果を有する導電性機能層を設けることが知られている。前記感光体汚染防止効果を有する導電性機能層の材料の選択により汚染防止効果は高いものとなる。しかし、プロセスオイルとの親和性を小さくすることが必要なことから材料が限定される。また、感光体汚染を防止できた場合にも弾性体(ゴム)から滲み出したプロセスオイルが前記汚染防止層へ移行して汚染防止層の導電性を低下させる場合がある。若しくは弾性体と前記感光体汚染防止層間の界面に存在するなどの理由により、経時による帯電ローラの導電性の低下が発生する場合がある。
【0007】
この解決方法として、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPDM)に水素添加して得られたヨウ素価15〜300の液状水素添加イソプレンゴムを添加したスポンジゴムを用いる。これにより、スポンジゴムからのプロセスオイルのブリード及び移行を防止する方法が知られている(例えば特許文献1)。また、天然固形ゴム及び合成固形ゴムの少なくとも一方と液状ジエン系ゴムを主成分として導電材を含有し、可塑剤を含まないゴム組成物によって形成された単層の導電性ローラを複写機用ローラとして用いる。これにより、ブリード等による汚染を防止する方法も知られている(例えば特許文献2)。さらには、基層及び表層を有した帯電ローラにおいてエチレン−プロピレンゴム、ブチルゴムの少なくとも一方と非移行性軟化剤として水素添加液状ポリイソプレンゴムを含有したゴム組成物をソリッドゴム又はスポンジゴムの基層に用いる。これにより汚染を防止した帯電ローラも知られている(例えば特許文献3)。
【0008】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3は、プロセスオイルを用いず架橋可能な液状ゴムを用いることにより、汚染防止に対して効果が得られる。しかし、低硬度であることと高分子量のEPDMを用いて加工性を確保するためには、多量の液状ゴムを添加する必要があり、これら液状ゴムの多量添加は圧縮永久歪性が低下し、永久変形による画像不具合が発生しやすい問題がある。
【0009】
ところで、このような導電性ローラは、以下のようにして製造されることが知られている。各種原料ゴムに、カーボンブラック等のフィラー類、加硫剤、加硫促進剤等の各種添加剤を混練りしたゴム組成物をチューブ形状に押出した後、熱風炉やマイクロ波加硫装置(UHF)で加硫する工程を経て、芯金を圧入することにより、導電性ローラが得られる。また、近年では工程を簡略化するため、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金上に前記ゴム組成物を配置し、芯金上で加硫と接着を同時に行う製造方法も知られている。
【0010】
前記芯金上で加硫と接着を同時に行う方法は、通常クロスヘッド押出し機等を用いて、連続的に接着剤塗布済み芯金の外周上にゴム組成物のゴム層を配置せしめた後、電気炉等の無加圧下で加硫工程を経て製造されるか、あるいは、金型等を用いて加圧下で加硫工程を経て製造される。クロスヘッド押出し機等を用いて、連続的に接着剤塗布済み芯金の外周上にゴム組成物を配置せしめる工程は、ゴム組成物と芯金とを同時に押出すため、押出し時のゴム収縮が大きいゴム組成物を用いると芯金との密着性が不十分なるか、又は芯金とゴム組成物が全く密着しない場合がある。軟化剤を未添加若しくは少量添加したゴム組成物を用いる場合、この問題が発生しやすい。
【0011】
また、スポンジゴム組成物としてエチレンープロピレン共重合ゴム及び液状のエチレンープロピレン共重合体を含有してなるスポンジゴム組成物が知られている(例えば特許文献4)。しかしながら、前記スポンジゴム組成物は、フリー発泡においても平均セル径を小さくするためのものであり、ベースゴム(EPDM)及び液状エチレン−プロピレン共重合体の詳細に関してなんら検討されておらず、平均セル径を小さくするためにジエン成分を有した液状EPDMの使用が好ましいとしている。
【特許文献1】特公平04−58825号公報
【特許文献2】特許第3111537号公報
【特許文献3】特開平09−325563号公報
【特許文献4】特開平10−221930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、導電性弾性体層が比較的低硬度であり、耐圧縮永久歪性に優れ、かつ導電性弾性体層からのブリードによる汚染や導電性変化が抑制された電子写真装置用導電性ローラを提供することを目的とする。特に帯電ローラ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の電子写真装置用導電性ローラは、芯金の外周上に少なくとも1層以上の導電性弾性層と、該導電性弾性層上に少なくとも1層以上の導電性機能層を有する電子写真装置用導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が、以下に示すエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)100質量部に対して、以下に示す液状エチレン−プロピレン共重合体(B)20質量部以上、100質量部以下、硫黄0.1質量部以上、4質量部以下、カーボンブラック10質量部以上、100質量部以下、を含有するゴム組成物を加硫してなることを特徴とする。
(A)エチレン含量が60モル%以上、73モル%以下、分子量分布(Mw/Mn)Q値が4未満、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.7dl/g以上、5.0dl/g以下、ヨウ素価が10以上、40以下。
(B)ジエン成分を含まず、エチレン含量が50モル%以上、78モル%以下、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.4dl/g。
【0014】
(2)前記導電性機能層が、導電性重合体組成物からなるシームレスチューブにより形成されていることを特徴とする。
【0015】
(3)本発明の帯電ローラは、前記電子写真装置の感光体に接触して使用される帯電ローラにおいて、該帯電ローラは(1)又は(2)に記載の電子写真装置用導電性ローラであることを特徴とする。
【0016】
(4)本発明の電子写真装置用導電性ローラの製造方法は、導電性弾性層が、押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を該押出し機のクロスヘッドダイに貫通させ、該芯金の外周上に該ゴム組成物を配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経て製造される電子写真装置用導電性ローラの製造方法において、前記導電性弾性層が、(1)又は(2)に記載の構成からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性弾性体層からのブリードによる感光体汚染や抵抗変化が抑制され、低硬度であり耐圧縮永久歪性に優れた電子写真装置用導電性ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の電子写真装置用導電性ローラは、芯金の外周上に少なくとも1層以上の導電性弾性層と、該導電性弾性層上に少なくとも1層以上の導電性機能層を有する電子写真装置用導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が、以下に示すエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)100質量部に対して、以下に示す液状エチレン−プロピレン共重合体(B)20質量部以上、100質量部以下、硫黄0.1質量部以上、4質量部以下、カーボンブラック10質量部以上、100質量部以下、を含有するゴム組成物を加硫してなることを特徴とする。
(A)エチレン含量が60モル%以上、73モル%以下、分子量分布(Mw/Mn)Q値が4未満、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.7dl/g以上、5.0dl/g以下、ヨウ素価が10以上、40以下。
(B)ジエン成分を含まず、エチレン含量が50モル%以上、78モル%以下、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.4dl/g。
【0019】
本発明に係る電子写真装置用導電性ローラの一例の断面図を図1に示す。本発明に係る電子写真装置用導電性ローラは、芯金2上に導電性弾性層3が形成されている。導電性弾性層3は、1層であっても、複数層であってもよい。また、導電性弾性層3上には、導電性機能層4が形成されている。導電性機能層4は、1層であっても、複数層であってもよく、図1のように導電性弾性層3上に中層4bが形成され、中層4b上に表層4aが形成された2層構造でもよい。
【0020】
本発明の導電性弾性体層に使用するゴム組成物には、特定のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムからなる高分子量成分(A)と、特定の液状エチレン−プロピレン共重合体からなる低分子量成分(B)とを含む。
【0021】
(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A))
本発明で用いられる高分子量成分であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、エチレン含量が60モル%以上、73モル%以下、分子量分布(Mw/Mn)Q値が4未満、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.7dl/g以上、5.0dl/g以下、ヨウ素価が10以上、40以下である。このようなエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを用いることにより、圧縮永久歪率が低く、押出し時の形状保持性に優れた電子写真装置用導電性ローラを得ることができる。
【0022】
エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、エチレン含量が60モル%以上、73モル%以下のとき圧縮永久歪率が小さい電子写真装置用導電性ローラを得ることができる。エチレン含量が60モル%未満又は73モル%を超えると、圧縮永久歪率が高くなるため好ましくない。好ましくは、65モル%以上、71モル%以下である。
【0023】
本発明で使用するエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、分子量分布(Mw/Mn)Q値が4未満である。分子量分布(Mw/Mn)Q値が1に近いほど分子量分布が狭いことを意味しており、分子量分布(Mw/Mn)Q値が1であることは、単一の分子量の高分子量体であることを意味する。分子量分布(Mw/Mn)Q値は、小さいほど(1に近いほど)圧縮永久歪率が小さくなる。しかしながら、ゴムのような高分子量体を単一分子量で合成することは困難であり、実際の生産における生産性を加味し、分子量分布(Mw/Mn)Q値は4未満とする。好ましくは、Q値は3未満である。
【0024】
本発明で使用するエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.7dl/g以上、5.0dl/g以下である。極限粘度[η]は、分子量を示す尺度であり、簡易的に分子量を比較することができ、本発明で使用するエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、比較的分子量が高いエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムであることを意味する。135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]がこの範疇にあるとき、圧縮永久歪率が小さい加硫ゴム弾性体を得ることができる。135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.7dl/g未満では、圧縮永久歪率が大きくなる傾向にある。一方、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が5.0dl/gを超えると、分子量が大きすぎるため、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムの生産性が極めて低下する。また、生産性を確保できたとしても、ゴム組成物の混練加工性が極めて低くゴム組成物の加工が困難である。好ましくは、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、3.5dl/g以上、4.5dl/g以下である。
【0025】
本発明で使用するエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、非共役ジエン含量の一指標であるヨウ素価が10以上、40以下である。ヨウ素価が10未満では、加硫剤に硫黄を用いた場合、十分な架橋密度を得ることができずに圧縮永久歪率が大きくなり、ヨウ素価が40を超えた場合には、コストアップとなる。好ましくは、ヨウ素価が15以上、25以下である。また、ジエン成分としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4−ヘキサジエン等の硫黄加硫可能なジエン成分が使用可能である。加硫速度が速いという生産性の観点からジエン成分に5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)又は5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)を含有するものが好ましい。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0026】
上記のようなエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)は、例えば特公昭59−14497号公報に記載されている方法により製造することができる。即ち、チーグラー触媒存在下に水素を分子量調整剤として用い、エチレンとプロピレンとジエンを共重合することにより得ることができる。
【0027】
(液状エチレン−プロピレン共重合体(B))
本発明で使用する液状エチレン−プロピレン共重合体(B)は、ジエン成分を含まず、エチレン含量が50モル%以上、78モル%以下、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.4dl/gである。
【0028】
本発明では、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)に低圧縮永久歪率と形状保持性の効果を担わせ、液状エチレン−プロピレン共重合体(B)に軟化と加工性の向上効果を担わせている。
【0029】
一般に、高分子量のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムは、低圧縮永久歪率と形状保持性が優れ、加工性に劣ることは知られている。逆に低分子量のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを含有するものは、加工性に優れるが圧縮永久歪率が大きく、形状保持性に劣ることも知られている。
【0030】
従って、単に高分子量のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムと低分子量のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを混合して用いても低圧縮永久歪率と加工性は、反対の関係にあるため両立することが難しい。
【0031】
本発明者らは、低分子量成分に関して鋭意検討を行った結果、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムから加硫ゴム弾性体を得る際に、加硫ゴム中の低分子量成分がポリマーとして架橋されていないことが上記課題を改善するために必要であることを見出した。そこで低分子量成分として、硫黄では架橋されない、ジエン成分を含まない液状エチレン−プロピレン共重合体を用いることとした。
【0032】
液状エチレン−プロピレン共重合体(B)の含有量としては、主ゴム成分であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)を100質量部としたときに、該液状エチレン−プロピレン共重合体(B)を20質量部以上、100質量部以下含有する。この範疇にあるときに低硬度で加工性に優れ、耐圧縮永久歪性の優れた電子写真装置用導電性ローラが得られる。即ち、該液状エチレン−プロピレン共重合体(B)が20質量部未満では、低硬度のゴムを得ることが難しく、混練や押出し等の加工性に劣る。また、該液状エチレン−プロピレン共重合体(B)が100質量部を超える場合には、未加硫ゴムの可塑化効果が大きくなりすぎ、べたつきが大きくなるため、混練や押出し等の加工性に劣り、耐圧縮永久歪性も低下する。好ましくは、該液状エチレン−プロピレン共重合体(B)の含有量は、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)を100質量部としたときに、30質量部以上、80質量部以下である。
【0033】
本発明で使用するエチレン−プロピレン共重合体(B)は、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)との親和性の観点から、エチレン含量は、50モル%以上、78モル%以下とする。好ましくは、65モル%以上、75モル%以下である。液状エチレン−プロピレン共重合体(B)以外の軟化剤は、本発明の目的から極力添加量を少なくすることが好ましく、全く添加しないことがより好ましい。生産上の計量調整や加工上の粘着付与が必要で他の軟化剤が必要な場合は、水素添加イソプレンゴム等の液状ゴムを5質量部以下程度加えてもよい。
【0034】
(硫黄)
本発明で使用するゴム組成物は、硫黄を0.1質量部以上、4質量部以下含有する。前記の如く、高分子量成分のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムは架橋し、低分子量成分である液状エチレン−プロピレン共重合体はポリマーとして架橋していないことが必要である。前述したように液状エチレン−プロピレン共重合体はジエン成分を含まないため、硫黄では架橋されない。硫黄としては、特に限定は無く、微紛硫黄150メッシュ、200メッシュ、300メッシュ、325メッシュや分散性改善を目的とした表面処理硫黄(商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学工業(株)社製)、未加硫ゴムからのブルーム抑制を目的とした不溶性硫黄、加工性や作業環境改善を目的とした硫黄含有マスターバッチ等が使用される。
【0035】
(カーボンブラック)
本発明の電子写真装置用導電性ローラに使用するゴム組成物の主ゴム成分としてエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)を用いるため、導電性を得るための導電材は必須成分となる。導電材には、導電性付与性が異なる各種グレードがあり、滲み出し抑制効果が大きいことからカーボンブラックを用いる。カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、必要な導電性や硬度、補強性等を考慮して、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンブラック、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック等が使用可能である。これらは1種又は2種以上を併用することができる。カーボンブラックの品種により、導電性付与性が異なるため、選択したカーボンブラックにより必要な導電性を付与するために必要な添加量を適宜決定すればよい。しかし、添加量が過剰であると加硫ゴムの硬度が高くなり、また、加工性が低下するため、添加量はエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)100質量部に対して10質量部以上、100質量部以下添加することとする。好ましくは、12質量部以上、80質量部以下である。
【0036】
なお、本発明に係る導電性弾性層の材料であるゴム組成物に使用される他の配合資材としては、必要に応じて一般にゴム配合に使用される酸化亜鉛、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の加硫助剤、チアゾール系、チウラム系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、キサントゲン酸塩系等の加硫促進剤、モルフォリンジスルフィド等の加硫剤、炭酸カルシウムやクレー等の充填剤等、ゴム用の配合資材を添加混合して使用される。
【0037】
(芯金)
本発明で用いる芯金の材料としては、鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の合金やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、さらにカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を示す公知の材料を使用することができる。また、ニッケル等のメッキを芯金表面に施したものでもよい。形状は、筒状であっても、また棒状であってもよい。
【0038】
(導電性弾性層)
本発明に係る導電性弾性層は、前記芯金の外周上に少なくとも1層以上形成され、前記エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)100質量部に対して、前記液状エチレン−プロピレン共重合体(B)を20質量部以上、100質量部以下、前記硫黄を0.1質量部以上、4質量部以下、前記カーボンブラックを10質量部以上、100質量部以下含有するゴム組成物を加硫して作製する。
【0039】
本発明に係る導電性弾性層は、ソリッドゴムであっても、アゾジカルボンアミド(ADCA)や4,4−オキシビス(ベンゼンスルフォンヒドラジン)(OBSH)等の発泡剤を用いて発泡加硫した発泡ゴムであってもよい。
【0040】
導電性弾性層の膜厚は、電子写真装置用導電性ローラの外径により一概には言えないが1mm以上であることが、低硬度であるという観点から好ましい。
【0041】
(導電性機能層)
本発明の電子写真装置用導電性ローラは、表面平滑性の向上や帯電性制御のための抵抗調整や保護を目的として、導電性弾性層の外周上に1層以上の導電性機能層を設ける。前記導電性機能層は、導電性を付与したゴムや樹脂又は熱可塑性エラストマー等を前記導電性弾性層上に塗布したり、シームレスチューブを被覆することによって形成される。
【0042】
導電性機能層として、導電性重合体組成物からなるシームレスチューブを導電性弾性層上に被覆して得られる導電性ゴムローラは、安価に製造することが可能である。また、導電性弾性層とシームレスチューブ層との間に界面が存在し易く、本発明の導電性弾性層からのブリードが抑制され、耐圧縮永久歪性に優れるため、好ましい。
【0043】
シームレスチューブ層の膜厚としては、20μm以上、800μm以下であることが、低硬度であり且つ抵抗調整と保護の観点から好ましい。
【0044】
前記シームレスチューブの材料としては、押出し成形可能な熱可塑性の導電性重合体組成物であればいずれのものでもよく、特に制限されないが、具体的には、カーボンブラック等の導電材を添加したエチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート、エチレンアクリル酸メチル、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びその他の共重合ナイロンなどのポリアミド、スチレンエチレンブチル、エチレンブチル、1,2−ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンの水添加物(SEBS)等の熱可塑性エラストマーを使用することができる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。また、上記の各樹脂や共重合体からなるエラストマー及び変性体等のエラストマーを含有する導電性重合体組成物に、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの飽和ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、アクリルニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ポリウレタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)及びアクリロニトリル−エチレン/プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES)、アクリロニトリル−アリクルゴム−スチレン樹脂(AAS)などのスチレン系樹脂及びアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、等の各樹脂及び共重合体からなる材料を組み合わせてもよい。さらに、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれた2種以上の重合体からなるポリマーアロイ又はポリマーブレンドも使用することができる。
【0045】
前記シームレスチューブは、前記導電性重合体組成物を、後述する押出し機を用いて、チューブ状に押出すことによって、作製することができる。導電性機能層を複数層とする場合には、一つのクロスヘッドで複数層となるように押出し時に合流させ、複数層のシームレスチューブを作製することができる。
【0046】
なお、導電性機能層の形成方法としては、従来より採用されている塗工手段によることも可能であることはいうまでもなく、具体的な手段は公知の文献で参照できる。
【0047】
(電子写真装置用導電性ローラの製造方法)
本発明に係る電子写真装置用導電性ローラの製造方法は、前記構成からなる導電性弾性層が、押出し機を用いて前記ゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を該押出し機のクロスヘッドダイを貫通させ、該芯金の外周上に該ゴム組成物を配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経て製造される。前記ゴム組成物は、押出し加工性に優れたものであり、工程が簡略化でき、製造コストが安価に抑えることができ、前記製造方法を採用することが可能である。
【0048】
本発明に係る電子写真装置用導電性ローラの製造方法について以下に具体的に説明するが、特にこの説明の方法に限定されるものではない。
【0049】
本発明の電子写真装置用導電性ローラの製造方法において、図2に示すようなベント式押出し機により前記ゴム組成物を押出すことができる。図2は押出し途中の押出し機を示す概念図で、黒く塗りつぶしてある部分はゴム組成物が充満している部分である。
【0050】
投入口11よりゴム組成物が投入され、スクリュー12によって可塑化され、クロスヘッド14より押出される。クロスヘッド14は中空の中子14aを備え、芯金2は中子14aを通りクロスヘッド14へ供給され、ゴム組成物が被覆される。シリンダー10の中間部にベント13が開いており、ここから真空ポンプ15によりシリンダー10内部を真空状態にする。ベント13付近は、スクリュー12の形状により、ゴム組成物が充満しないように調整されている。スクリュー12のベント13手前には溝の深さを極端に狭くしたダム部12aがあり、真空状態のシリンダー10内へフイルム状のゴム組成物を送り込むことで、より水分の除去効果を高めている。
【0051】
押出し機は温度調整の機能を備えるが、シリンダー10についてはなるべく多くの個所の温度制御が出来ることが好ましい。例えば、投入口11からベント13付近までの部分(10a及び10b)、ベント13付近より下流、シリンダー10先端までの部分(10c)の2つの部分に分けて温度制御することができる。また、投入口11からベント13までの部分(10a)、ベント13付近の部分(10b)、ベント13付近からシリンダー10先端までの部分(10c)の3つの部分に分けて温度制御することがより好ましい。更に細かい制御が可能でも差支えない。
【0052】
その後、芯金にゴム組成物を被覆した状態で、無加圧下で加熱により加硫を行う。無加圧下での加硫工程の加熱方法は、特に限定されるものではなく、電気ヒーターを用いた加熱、燃焼ガスによる加熱等が挙げられる。加硫温度や加硫時間も特に限定されるものではないが、100℃から250℃程度の温度で2分から120分程度加硫すればよい。
【0053】
前記導電性弾性層被覆ローラに、前述したシームレスチューブを、圧縮空気を吹き込みながら被覆することにより、電子写真装置用導電性ローラを得ることができる。
【0054】
(プロセスカートリッジ、画像形成装置)
本発明に係るプロセスカートリッジは、本発明の電子写真装置用導電性ローラを具備する。本発明の電子写真装置用導電性ローラを帯電ローラとして具備するプロセスカートリッジの実施形態の一例を図3に示す。図3に示すプロセスカートリッジ40は、本発明の電子写真装置用導電性ローラを帯電ローラ30として具備することを特徴とするものであり、電子写真感光体、露光手段、現像手段34、転写手段35及びクリーニング手段38等は、特に限定されるものではない。
【0055】
プロセスカートリッジ40において、電子写真感光体32は、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体32は回転過程において、一次帯電手段としての本発明の帯電ローラ30によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光33を受ける。こうして電子写真感光体32の周面に静電潜像が順次形成される。
【0056】
形成された静電潜像は、次に現像手段34によりトナー現像され、現像されたトナー像は電子写真感光体32と転写手段35との間に電子写真感光体32の回転と同期取りされて不図示の給紙部から給紙された転写材36に、転写手段35によって順次転写される。
【0057】
像転写を受けた転写材36は、電子写真感光体32面から分離されて像定着手段37へ導入されて像定着を受け、複写物(コピー)として装置外へ排出される。
【0058】
像転写後の電子写真感光体32の表面は、クリーニング手段38によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0059】
前記例示では、本発明の電子写真装置用導電性ローラを帯電ローラ30として用いた例を示した。しかし、本発明の電子写真装置用導電性ローラは、現像手段34内に設けた現像ローラ、転写手段35内に設けた転写ローラ、現像手段34内に現像ローラに当接して設けられた現像剤規制ローラ等にも使用することができる。この中でも本発明の電子写真装置用導電性ローラは、前記導電性弾性層被覆ローラにシームレスチューブを圧縮空気を吹き込みながら被覆することで導電性弾性層からのブリードを有効に抑制できるので、特に帯電ローラとして好適に用いることができる。言うまでもないが、感光体との当接関係は同じであるので、同じ理屈は現像ローラ、転写ローラにも当てはまるため、これらの電子写真装置導電性ローラに対しても有効である。
【0060】
本発明に係る画像形成装置は、本発明の電子写真装置用導電性ローラを具備する。前記画像形成装置に具備される電子写真装置用導電性ローラは、前記プロセスカートリッジ同様、帯電ローラに限らず、他のローラ部材にも使用できる。また、前記画像形成装置は、前記プロセスカートリッジを組み込むものでもよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0062】
なお、実施例及び比較例におけるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム特性、液状エチレン−プロピレン共重合体特性、未加硫ゴム特性、加硫ゴム特性、電子写真装置用導電性ローラ特性は下記に示す方法によって測定した。
【0063】
[エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム及び液状エチレン−プロピレン共重合体の試験方法]
〔極限粘度[η](135℃のデカリン中で測定)〕
ウベローデ粘度計を用いる多点法により、135℃のデカリン中で濃度調整4点の粘度を測定し、各測定点の関係を濃度ゼロに外挿して算出した。
極限粘度[η]=2.92×10-4Mw0.726
【0064】
〔分子量分布(Mw/Mn)Q値〕
分子量分布(Mw/Mn)Q値の測定は、武内著、丸善株式会社発行の「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」に準じて下記の通り行った。
【0065】
(1)分子量既知の標準ポリスチレン(東ソー(株)製単分散ポリスチレン)を使用して、分子量MとそのGPC(Gel Permeation Chromatography)カウントを測定した。分子量Mと溶離体積EV(Elution Volume)との相関図較正曲線を作成した。この時のポリスチレン濃度は、0.02質量%とした。
【0066】
(2)GPC測定法により試料のGPCパターンをとり、前記(1)により分子量Mを得た。その際のサンプル調製条件及びGPC測定条件は、以下の通りである。
【0067】
(サンプルの調製条件)
(イ)試料を、その濃度が0.04質量%になるように、o−ジクロルベンゼン溶媒とともに三角フラスコに分取した。
【0068】
(ロ)試料の入っている三角フラスコに老化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールをポリマー溶液に対して0.1質量%添加した。
【0069】
(ハ)三角フラスコを140℃に加温して約30分間攪拌し、試料を溶解させた。
【0070】
(ニ)その後三角フラスコを135〜140℃に保ちながら、径1μmのポアフィルターでろ過した。
【0071】
(ホ)そのろ液をGPC分析にかけた。
【0072】
(GPC測定条件)
(イ)装置 Waters社製200型
(ロ)カラム 東ソー(株)製S−タイプ(Mixタイプ)
(ハ)サンプル量 2ml
(ニ)温度 135℃
(ホ)流速 1ml/mm
(へ)カラムの総理論段数 2×104〜4×104(アセトンによる測定値)
〔ゴム組成物の混練性の評価〕
ニーダー排出時のコンパウンドのまとまり性を目視確認した。また、そのコンパウンドをロール機に投入してロールに巻きつけたときのロール巻きつき性を目視確認した。評価は以下の基準で行った。
○:ニーダー排出時のコンパウンドのまとまり性が良く、かつロール巻きつき性も良好
△:まとまり性は不十分であるがロール巻きつき性は劣るが補助により(手作業により)巻きつく
×:まとまり性、ロール巻きつき性が低く常に補助が必要。
【0073】
[導電性ゴム(導電性弾性体)の試験方法]
〔圧縮永久歪率(C−set)〕
JIS K6262に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験法に準じて、温度70℃、時間24時間、圧縮率25%で測定した。試験用加硫ゴムは、何れもゴム組成物を160℃、30分プレス加硫して得た。
【0074】
〔導電性ゴム硬度〕
JIS K6253に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に準じて、タイプAデュロメータを用いて、導電性ゴムの硬度を測定した。試験用加硫ゴムは、上記圧縮永久ひずみ試験に用いたものと同じものを使用した。
【0075】
[電子写真装置用導電性ローラの試験方法]
〔電流変化率〕
電流値は、電子写真装置用導電性ローラの軸体に総圧1kgの荷重が掛かるように外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着した状態で、軸体とアルミドラムとの間200Vの電圧を印加した際の電流値である。そして、電子写真装置用導電性ローラを成形後、温度23±3℃、湿度50±5%の環境に1日間保管し、保管環境から取り出してから30分後に電流値を測定した値を通常電流値とする。通常電流値を測定した該電子写真装置用導電性ローラを、温度40±3℃、湿度90±5%の環境に1ヶ月保管し、保管環境から取り出して温度23±3℃、湿度50±5%の環境に30分保管後に電流値を測定した値を苛酷保管電流値とする。電流変化率は、(通常電流値―苛酷保管電流値)/通常電流値×100で示し、この値が小さいほど電流値変化が小さく、つまり、苛酷環境による電流値変化が小さいことを意味する。一方、導電性弾性体層から軟化剤成分がブリードしたり、導電性弾性体層上の導電性機能層に軟化剤の移行が生じた場合は、電流値の変化が大きくなることから電流値変化率を求めた。
【0076】
〔ゴム組成物及びテストピースの作製〕
実施例及び比較例に用いた導電性弾性体層に使用するゴム組成物の配合比率を表1及び表2に示す。表1及び表2に示す各配合資材中加硫促進剤及び硫黄を除く資材を10Lニーダーで15分間混練りを行い、その後、その混練物にオープンロールで加硫促進剤及び硫黄を添加して混練を行い、実施例及び比較例の未加硫のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物のムーニー粘度測定し、さらにテストピースを作成して加硫ゴム特性を測定した。
【0077】
〔電子写真装置用導電性ローラの作製〕
実施例及び比較例で得られた未加硫のゴム組成物をφ40mmのクロスヘッド押出し機を用いて押出した。それと同時に、連続的にホットメルト接着剤(商品名:「スリーボンド3315E」、スリーボンド(株)製)を塗布したφ6mm、長さ250mmの芯金を押出し機のクロスヘッドダイに通過させた。これにより、芯金の外周上にゴム組成物を配置せしめてローラ形状にした後、200℃で30分間熱風炉に投入して加硫を行い、芯金の外周上にゴム層を形成した未研削のゴムローラを作製し、ゴム層の長さが240mmになるよう両端部分をカットした。この未研削のゴムローラを、研磨砥石「GC80」を取り付けた研削機にセットし、外径がφ10mmになるように研削し、導電性弾性体層を有するゴムローラを作製した。このゴムローラの導電性弾性体層上に、導電性機能層として、下記に示すシームレスチューブを圧縮空気を吹き込みながら被覆して、図2に示す横断面形状の電子写真装置用導電ローラを得た。
【0078】
〔被覆用シームレスチューブの作製〕
被覆用シームレスチューブとして、下記に示す2層のシームレスチューブを作成した。なお、表層とは、電子写真装置用導電性ローラの表面層であり、中層とは、導電性弾性体層と表層の間の層である。
【0079】
表層材料として、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合樹脂(商品名:「ダイナロン」、日本合成ゴム(株)製)100質量部に対して、ポリエチレン18質量部、導電性カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ケッチェンブラックインターナショナル製)15質量部、酸化マグネシウム10質量部、ステアリン酸カルシウム1質量部を、加圧式ニーダーを用いて220℃で10分間溶融混練した。その後、冷却を行い、粉砕機で粉砕し、単軸押し出し機でペレット化した。
【0080】
中層材料として、ポリウレタンエラストマー100質量部、導電性カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ケッチェンブラックインターナショナル製)17質量部、酸化マグネシウム10質量部、ステアリン酸カルシウム1質量部を、加圧式ニーダーを用いて220℃で10分間溶融混練した。その後、冷却を行い、粉砕機で粉砕し、単軸押し出し機でペレット化した。
【0081】
これらのペレットを、縦型押し出し機を用いて、一つのクロスヘッドで表層80μm、中層200μmとなるように2重層として合流させ、冷却水中に押し出した。このようにして、内径約9.8mmの被覆用シームレスチューブを作成した。
【0082】
[実施例1から6、比較例1から9]
表1及び表2に示す配合比率で前記方法によりゴム組成物を作製し、該ゴム組成物を用いて前記方法により電子写真装置用導電性ローラを作製した。また、未加硫ゴム試験、加硫ゴム(弾性体)試験、電子写真装置用導電性ローラ試験を行った。結果を表3及び表4に示す。なお、実施例及び比較例に用いた配合資材は下記の通りである。
【0083】
〔エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム〕
EPDM1:試作品、エチレン含量 70モル%、ジエン成分 5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヨウ素価 20、135℃デカリン中で測定した極限粘度 4.0dl/g、分子量分布(Mw/Mn)Q値 3.2
EPDM2:試作品、エチレン含量 70モル%、ジエン成分 5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヨウ素価 20、135℃デカリン中で測定した極限粘度 2.7dl/g、分子量分布(Mw/Mn)Q値 2.8
EPDM3:試作品、エチレン含量 70モル%、ジエン成分 5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヨウ素価 20、135℃デカリン中で測定した極限粘度 5.0dl/g、分子量分布(Mw/Mn)Q値 3.5
EPDM4:試作品、エチレン含量 71モル%、ジエン成分 5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヨウ素価 19、135℃デカリン中で測定した極限粘度 4.0dl/g、分子量分布(Mw/Mn)Q値 5.6
EPDM5:試作品、エチレン含量 75モル%、ジエン成分 5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヨウ素価 20、135℃デカリン中で測定した極限粘度 3.8dl/g、分子量分布(Mw/Mn)Q値 3.2
EPDM6:試作品、エチレン含量 58モル%、ジエン成分 5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヨウ素価 20、135℃デカリン中で測定した極限粘度 3.6dl/g、分子量分布(Mw/Mn)Q値 2.9。
【0084】
〔液状エチレン−プロピレン共重合体〕
液状EPM1:試作品、エチレン含量 75モル%、135℃デカリン中で測定した極限粘度 0.2dl/g、ヨウ素価 0
液状EPM2:試作品、エチレン含量 68モル%、135℃デカリン中で測定した極限粘度 0.4dl/g、ヨウ素価 0
液状EPM3:試作品、エチレン含量 60モル%、135℃デカリン中で測定した極限粘度 1.0dl/g、ヨウ素価 0
液状EPDM1:試作品、135℃デカリン中で測定した極限粘度 0.3dl/g、ジエン成分 ENB ヨウ素価 19.0。
【0085】
〔水添化液状イソプレンゴム〕
商品名:「LIR−290」(水添タイプ)、クラレ(株)社製 分子量 25000、ヨウ素価 40。
【0086】
〔パラフィン系プロセスオイル〕
商品名:「ダイアナプロセスオイルPW−380」、出光興産(株)製。
【0087】
〔カーボンブラック〕
商品名:「旭#70」、旭カーボン(株)製 HAF級。
【0088】
〔硫黄〕
商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学工業(株)社製。
【0089】
〔酸化亜鉛〕
商品名:「亜鉛華2種」、白水テック(株)製。
【0090】
〔ステアリン酸〕
商品名:「ルナックS−20」、花王(株)製。
【0091】
〔2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)〕
商品名:「ノクセラーM」、大内振興化学工業(株)製。
【0092】
〔ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)〕
商品名:「ノクセラーTRA」、大内振興化学工業(株)製。
【0093】
〔テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)〕
商品名:「ノクセラーTET」 大内振興化学工業(株)製。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
図4は、実施例及び比較例の硬度と圧縮永久歪率の関係を示したグラフである。
【0099】
実施例1から実施例6で得られた導電性弾性体は、硬度と圧縮永久歪率の関係において、図4に示すプロットが低硬度と圧縮永久歪率が小さいことが両立する望ましい方向(図4のグラフで左下方向)にあることが分かる。また、この導電性弾性体を使用した電子写真装置用導電性ローラは、電流値変化率が20%以下と比較的小さなものであった。
【0100】
一方、使用するエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムに、Q値が4よりも大きなものを用いた比較例1、エチレン含量が73モル%を超える比較例2、エチレン含量が60モル%より低いものを用いた比較例3は、図4においてプロットが右上方向(望ましくない方向)にあることが分かる。
【0101】
また、使用する液状エチレン−プロピレン共重合体に、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.4dl/gを超えるものを用いた比較例4、液状ゴムにジエン成分をもつ液状EPDMを用いた比較例5、水添化液状イソプレンゴムを用いた比較例6は図4においてプロットが右上方向にあることが分かる。また、比較例4は実施例と比較して混練加工性に劣るものであった。
【0102】
液状ゴムを用いずにパラフィン系オイルを軟化剤として用いた比較例7は、図4においてプロットが望ましい左下方向にあるが、電子写真装置用導電性ローラとして用いた場合、電流値変化が31%と大きく、耐久性に劣るものであった。
【0103】
使用する液状エチレン−プロピレン共重合体の添加量が20質量部未満である比較例8及び添加量が100質量部を超える比較例9は、図4においてプロットが右上方向にある上、混錬加工性に劣るものであった。
【0104】
なお、課題に挙げたブリードによる汚染については、製造方法の説明にあるように、導電性機能層として被覆チューブにて、評価を行った。このため、実施例・比較例において、差異はあまり見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明における帯電ローラの横断面図である。
【図2】本発明における導電性弾性層の作製に用いる押出し機の一例の概略構成図である。
【図3】本発明のプロセスカートリッジを装着した画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図4】実施例及び比較例における硬度と圧縮永久歪率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
1 電子写真装置用導電性ローラ
2 芯金
3 導電性弾性層
4 導電性機能層
4a 表層
4b 中層
10 シリンダー
10a 投入口からダム部付近より上流までの部分(シリンダー温調部分)
10b ダム部付近の部分(シリンダー温調部分)
10c ダム部付近より下流、シリンダー先端部までの部分(シリンダー温調部分)
11 投入口
12 スクリュー
12a ダム部
13 ベント
14 クロスヘッド
14a 中子
15 真空ポンプ
30 帯電ローラ
31 電源
32 電子写真感光体
33 画像露光
34 現像手段
35 転写手段
36 転写材
37 像定着手段
38 クリーニング手段
39 レール
40 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周上に少なくとも1層以上の導電性弾性層と、該導電性弾性層上に少なくとも1層以上の導電性機能層を有する電子写真装置用導電性ローラにおいて、
該導電性弾性層が、以下に示すエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(A)100質量部に対して、
以下に示す液状エチレン−プロピレン共重合体(B)20質量部以上、100質量部以下、
硫黄0.1質量部以上、4質量部以下、
カーボンブラック10質量部以上、100質量部以下、
を含有するゴム組成物を加硫してなることを特徴とする電子写真装置用導電性ローラ。
(A)エチレン含量が60モル%以上、73モル%以下、分子量分布(Mw/Mn)Q値が4未満、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.7dl/g以上、5.0dl/g以下、ヨウ素価が10以上、40以下。
(B)ジエン成分を含まず、エチレン含量が50モル%以上、78モル%以下、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.4dl/g。
【請求項2】
前記導電性機能層が、導電性重合体組成物からなるシームレスチューブにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置用導電性ローラ。
【請求項3】
前記電子写真装置の感光体に接触して使用される帯電ローラにおいて、該帯電ローラは請求項1又は2記載の電子写真装置用導電性ローラであることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項4】
導電性弾性層が、押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を該押出し機のクロスヘッドダイに貫通させ、該芯金の外周上に該ゴム組成物を配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経て製造される電子写真装置用導電性ローラの製造方法において、前記導電性弾性層が、請求項1又は2記載の構成からなることを特徴とする電子写真装置用導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−134256(P2010−134256A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311046(P2008−311046)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】