説明

電子写真装置用導電性ローラー及びこれを用いた帯電ローラー

【課題】導電性ゴム組成物の成形工程や加硫工程における条件の変動に伴う導電性ゴム組成物中のカーボンブラックの分散状態の変動を抑制し、ローラー内における抵抗のばらつきが小さく、電気特性の環境依存性が小さい電子写真装置用導電性ローラーを提供する。特にこれらの特性を有する帯電ローラーを提供する。
【解決手段】カーボンブラックにより導電性を付与したゴム加硫物を含む導電性ゴム層を有する電子写真装置用導電性ローラーである。導電性ゴム層は末端に官能基を有する末端変性ポリマーをゴム成分に対して50質量%以上100質量%以下の範囲で含有し、カーボンブラックをゴム成分100質量部に対して30質量部以上80質量部以下の範囲で含有する導電性ゴム組成物を成形加硫して得る。該カーボンブラックは窒素吸着比表面積が40m2/g以上150m2/g以下、DBP吸着量が60ml/100g以上170ml/100g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる導電性ローラーに関し、より詳しくは、これを用いた帯電ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置には、静電潜像担持体としての感光体に接触してこれを一様に帯電する帯電ローラー、一様に帯電された感光体表面を露光して形成された静電潜像に現像剤を供給する現像ローラー等が使用されている。更に、これを中間ベルト等の中間体や、紙等の転写材に転写する転写ローラー等が備えられている。これらのローラーには、感光体等に当接してニップを形成し得る弾性と、各種ローラーに要求される適切な導電性を有する導電性ローラーが用いられている。
【0003】
この種の導電性ローラーの製造方法としては、それ自体が導電性を有するアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)や、エピクロルヒドリンゴム等の極性ゴムを用いる方法がある。これらの極性ゴムを用いると、均一で安定した導電性を有するローラーが得られる。しかしながら、極性ゴムは温湿度による抵抗変化が大きく、これを用いたローラーにおいて使用環境によっては必要とする抵抗値が得られず、画像不良を生じる場合がある。また、高速化・高画質化電子写真装置には、体積固有抵抗1×107Ω・cm以下の導電性ローラーが求められ、NBRやエピクロルヒドリンゴムの導電性では不十分であり、4級アンモニウム塩等のイオン導電剤を添加する場合がある。このような導電性ローラーの場合、イオン導電剤がブリードし、感光体を汚染する場合がある。
【0004】
また、他の製造方法として、ゴム成分にカーボンブラック等の導電性充填剤を添加した電子導電性ゴムを用いる方法がある。電子導電性ゴムを使用すると、カーボンブラック等の導電性充填剤の種類、量により容易に抵抗値を調整することが可能であり、基材ゴムの選択幅が広い。例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)やイソプレンゴム(IR)等を使用することも可能である。しかしながら、このような電子導電性ゴムを用いた導電性ローラーにおいては、ゴム材料中の導電性充填剤の分散状態により抵抗値が変動するため、材料ロットにより、又、導電性ローラー内においても微妙な分散状態の違いにより局所的に抵抗のばらつきが生じる。更に、ゴム成分とカーボンブラックとが均一に混練された組成物を用いても、押出工程における押出圧力や加硫工程における温度の微妙な変動によってカーボンブラックの分散状態が変動し、均一で安定した抵抗値の導電性ローラーを得ることが難しい。これに対し、低ストラクチャー、大粒径のカーボンブラックを比較的多量に充填し、また必要に応じてフタル酸エステル化合物を添加した半導電性樹脂組成物及びそれを使用した半導電性ローラー(特許文献1)が報告されている。この半導電性樹脂組成物は、表面にフタル酸エステル化合物を吸着させて分散性を向上させたカーボンブラックを用いているため、抵抗値の制御が容易であり、カーボンブラックの配合量に対して抵抗値の変化が緩慢であることから、導電性が安定している。しかしながら、混練工程で導電性組成物中に均一に分散したカーボンブラックが、成形工程や加硫工程における圧力や温度条件等により移動し、分散状態が変化し抵抗値がばらつく場合がある。
【0005】
その他、末端変性ポリマーとカーボンブラックからなるゴム組成物として、転がり抵抗性や電機抵抗の低い空気入りタイヤ用のもの(特許文献2、3)が知られている。しかしながら、これらの文献には、混練によりカーボンブラックを均一に分散したゴム組成物であっても、成形工程や加硫工程におけるカーボンブラックの分散状態を維持することができるゴム組成物についての示唆はない。
【0006】
上記のように成形工程や加硫工程における条件の変動に伴うカーボンブラックの分散状態の変動を抑制し、ローラー内における抵抗のばらつきが小さく、安定した電気特性を有し、電気特性の環境依存性が小さい電子写真装置用導電性ローラーの要請がある。特に、成形工程、加硫工程において生じる導電性のばらつきや、環境に依存する電気特性の変動が小さい帯電ローラーの要請が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3785819号公報
【特許文献2】特開2002−97309
【特許文献3】特許第4283570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、導電性ゴム組成物の成形工程や加硫工程における条件の変動に伴う導電性ゴム組成物中のカーボンブラックの分散状態の変動を抑制し、ローラー内における抵抗のばらつきが小さい電子写真装置用導電性ローラーを提供することにある。特に、製造工程の条件変動に伴う電気特性の変動が少なく、安定した電気特性を有し、電気特性の環境依存性が小さい帯電ローラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、未加硫のゴム成分にカーボンブラックを分散させた導電性ゴム組成物を成形、加硫して導電性ゴム層を調製する際、成形工程や加硫工程における導電性ゴム組成物のカーボンブラックの分散状態が変動することに着目し、研究を行った。その結果、ゴム成分として末端に官能基を有する末端変性ポリマーと、特定のカーボンブラックとを所定量含有する導電性ゴム組成物を用いると、成形工程、加硫工程の条件の変動に対しカーボングラックの分散状態の変動を抑制できることの知見を得た。かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、カーボンブラックにより導電性を付与したゴム加硫物を含む導電性ゴム層を有する電子写真装置用導電性ローラーであって、
導電性ゴム層が、末端に官能基を有する末端変性ポリマーをゴム成分に対して50質量%以上、100質量%以下の範囲で含有し、カーボンブラックをゴム成分100質量部に対して30質量部以上、80質量部以下の範囲で含有し、
該カーボンブラックは窒素吸着比表面積が40m2/g以上、150m2/g以下、DBP吸着量が60ml/100g以上、170ml/100g以下であることを特徴とする電子写真装置用導電性ローラーに関する。
【0011】
また、本発明は、電子写真装置に設けられる感光体を帯電する帯電ローラーにおいて、上記電子写真装置用導電性ローラーを用いたことを特徴とする帯電ローラーに関する。
【0012】
本発明の電子写真装置用導電性ローラーが、安定した抵抗値を有する理由として、以下の理由が考えられる。一般に、ゴム成分とカーボンブラックを混練すると、カーボンブラックがポリマー鎖に固定されたバウンドラバー、所謂カーボンゲルが形成されることが知られている。このカーボンゲルはカーボンブラックの安定した分散状態の形成に寄与するものであるが、必ずしも安定して生成されるものではなく、その生成は、混練機の種類、スケール、ローターの回転数、混練時間等の条件に影響される。本発明における導電性ゴム層の形成に用いる導電性ゴム組成物は、未加硫ゴム成分としてカーボンブラックを安定して固定することができる末端変性ポリマーを含有する。しかも、カーボンブラックが特定のDBP吸着量と窒素吸着比表面積を有するため、末端変性ポリマーによってカーボンブラックが安定して固定された、安定したカーボンゲルが生成される。安定したカーボンゲルが生成された導電性ゴム組成物を用いることにより、成形工程、加硫工程において、カーボンブラックの分散状態が変化を受けにくく、抵抗のばらつきが小さく、安定した導電性を有する導電性ゴム層が得られると考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子写真装置用導電性ローラー、特に帯電ローラーは、導電性ゴム組成物の成形工程や加硫工程における条件の変動に伴うカーボンブラックの分散状態の変動を抑制し、ローラー内において均一の電気特性を有し、電気特性の環境依存性が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電子写真装置用導電性ローラーの製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電子写真装置用導電性ローラーは、カーボンブラックにより導電性を付与したゴム加硫物を有する導電性ゴム層を有する。導電性ゴム層は、末端に官能基を有する末端変性ポリマーと、カーボンブラックとを含有する導電性ゴム組成物を成形、加硫されて形成される。
【0016】
導電性ゴム層の形成に用いる導電性ゴム組成物にはゴム成分とカーボンブラックとが含まれる。ゴム成分には、末端に官能基を有する末端変性ポリマーが含まれる。末端変性ポリマーは、加硫の制御が容易であり、各種加硫工程が選択可能であり、低コストの硫黄系加硫が可能な末端変性ポリマーであることが好ましい。末端に官能基を導入するポリマーとして、具体的には、以下のものを挙げることができる。スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンイソプレン共重合体ゴム、ブタジエンイソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の主鎖に2重結合を含むジエン系ゴム。エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンオキサイド−エピクロロヒドリンーアリルグリシジルエーテル共重合体等の非共役ジエンモノマーを第3成分として共重合したポリマー。これらは一種を用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムが好ましく、より好ましくはスチレンブタジエンゴムである。
【0017】
上記末端変性ポリマーが末端に有する官能基としては、アミノ基、アルコキシシリル基、酸無水物基及びカルボキシル基から選ばれる一種以上であることが好ましい。その他、スズ含有基、アミノベンゾフェノン基、イソシアネート基、グリシジルアミノ基、環状イミノ基、ハロゲン化アルコキシシラン基、グリシドキシプロピルメトキシシラノ基、ネオジム含有基を挙げることができる。これらの官能基は、末端変性ポリマーの主鎖や、あるいは側鎖の末端に結合されるものであり、主鎖の末端に結合されることが好ましい。官能基はカーボンゲルを形成する充分な量が導入されれば、ポリマーの少なくとも一端に結合されればよい。
【0018】
上記末端変性ポリマーは上記末端に官能基を導入するポリマーと、上記官能基を有する化合物とを適宜分散媒中で温度調整をする等の方法によって反応させて、得ることができる。官能基を有する化合物としては、以下のものを具体的に挙げることができる。アミノ化合物、ハロゲン化アルコキシシラン化合物、酸無水物、カルボン酸、スズ化合物、アミノベンゾフェノン化合物、イソシアネート化合物、ジグリシジルアミン化合物、環状イミン化合物、グリシドキシプロピルメトキシシラン化合物、ネオジウム化合物等。
【0019】
導電性ゴム組成物に用いるゴム成分には、上記末端変性ポリマー以外のゴム成分を含有していてもよい。かかるゴム成分としては、硫黄系加硫が可能なポリマーであることが好ましく、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記末端変性ポリマーとの組み合わせとしては、末端変性スチレンブタジエンゴムに対して、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴム、末端変性ブタジエンゴムに対してアクリロニトリルブタジエンゴム等を挙げることができる。
【0020】
導電性ゴム組成物に含まれるゴム成分中、末端変性ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量%に対し、50質量%以上、100質量%以下である。末端変性ポリマーの含有量が50質量%以上であれば、カーボンブラックを充分に固定することができ、成形工程、加硫工程におけるカーボンブラックの分散状態の変化を抑制することができ、末端変性ポリマーが100質量%であっても、不都合は生じない。
【0021】
導電性ゴム組成物に含まれるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積が40m2/g以上、150m2/g以下であり、好ましくは、70m2/g以上、130m2/g以下である。窒素吸着比表面積は、カーボンブラック表面の微細孔も含めた全表面積を示すものである。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が40m2/g以上であれば、上記末端変性ポリマーに固定されやすく、成形工程や加硫工程においても形成されたカーボンゲルが維持されやすい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が150m2/g以下であれば、導電性ゴム組成物中に容易に分散させ、カーボンゲルを生成させることができる。
【0022】
ここで窒素吸着比表面積は、脱気したカーボンブラックを液体窒素温度下で、気体窒素を吸着させ、平衡時におけるカーボンブラック表面に吸着した窒素量を測定し、この値から比表面積を算出する。
【0023】
上記カーボンブラックは、DBP吸着量が60ml/100g以上、170ml/100g以下であり、好ましくは、70ml/100g以上、130ml/100g以下である。DBP(ジブチルフタレート)の吸着量は、DBPがカーボンブラックの一次粒子間の空隙率と相関があることから、一次粒子のストラクチャーを間接的に定量することができる。カーボンブラックのDBP吸着量が60ml/100g以上であれば、上記末端変性ポリマーに固定されやすく、形成されたカーボンゲルが成形工程や加硫工程においても維持され、安定したカーボンゲルを形成することができる。カーボンブラックのDBP吸着量が170ml/100g以下であれば、導電性ゴム組成物中に容易に分散させ、カーボンゲルを生成させることができる。
【0024】
ここで、DBP吸着量は、一定質量のカーボンブラックにDBP(ジブチルフタレート)を吸収させていき、粘土状となる過程で所定トルクに達するまでに要したDBP量により算出する。
【0025】
このようなカーボンブラックとしては、比較的小径の高ストラクチャーのカーボンブラックを用いることが好ましい。具体的には、FEF(Fast Extruding Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)等を挙げることができる。
【0026】
上記カーボンブラックは、導電性ゴム組成物に、ゴム成分100質量部に対し、30質量部以上、80質量部以下の範囲で含有される。カーボンブラックの含有量が30質量部以上であれば、導電性ゴム層に、求められる抵抗値を付与することができ、80質量部以下であれば、導電性ゴム組成物中で末端変性ポリマーとカーボンゲルを形成し、成形工程、加硫工程においてその状態を維持できる。カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、40質量部以上、70質量部以下であることが好ましい。
【0027】
上記導電性ゴム組成物中には、上記カーボンブラック以外のカーボンブラックを含有していてもよく、比較的大粒径かつ低ストラクチャーのカーボンブラックや、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の高導電性のカーボンブラック等を挙げることができる。比較的大粒径かつ低ストラクチャーのカーボンブラックとして、例えば、MT(Medium Thermal)、FT(Fine Thermal)、SRF(Semi Reinforcing Furnace)等を挙げることができる。低ストラクチャーのカーボンブラックを用いる場合、導電性ゴム組成物が高粘度になり加工性が低下する傾向にあるため、導電性ゴム組成物が高粘度にならない範囲で用いることが好ましい。また、高導電性のカーボンブラックを用いる場合、少量の添加で導電性ゴム層の抵抗値が大きく変動するため、導電性ゴム層の抵抗値に大きな影響を及ぼさない範囲の使用が好ましい。
【0028】
上記導電性ゴム組成物の抵抗値としては、これを用いて形成される導電性ゴム層の抵抗値が、103Ω以上109Ω以下となる範囲であり、より好ましくは105Ω以上108Ω以下である。導電性ローラーの抵抗値が103Ω以上であれば、異常放電等による画像不良の発生を抑制することができ、109Ω以下であれば、帯電不良等による画像不良の発生を抑制することができる。
【0029】
上記導電性ゴム組成物には、上記ゴム成分やカーボンブラックの機能を阻害しない範囲において、充填剤、配合剤等を必要に応じて配合することができる。例えば、硫黄、含硫黄化合物等の加硫剤・加硫促進剤、炭酸カルシウム等の充填剤、滑剤、サブ等の加工助剤、OBSH、ADCA、DPT等の発泡剤、尿素等の発泡助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤等を挙げることができる。
【0030】
上記導電性ゴム組成物は、上記末端変性ポリマーと上記カーボンブラックと、必要に応じて、他のポリマー、導電性剤、充填剤等を加えて、混合することによって調製することができる。混合は、例えば、バンバリーミキサーやインターミックスや加圧式ニーダー等の密閉型混練機や、オープンロールのような開放型の混練機を用いて行うことができる。混合条件としては、例えば、80〜180℃、3分〜30分等、末端変性ポリマーの官能基とカーボンブラックとが充分に反応し、安定したカーボンゲルを形成させることができる条件を選択すればよい。
【0031】
安定なカーボンゲルを含有する導電性ゴム組成物を成形、加硫する方法としては、特に限定されるものではなく、条件が変動しても、カーボンブラックの分散状態の変動が抑制され、安定した導電性を有する導電性ゴム層が形成される。成形方法としては、押出成形、射出成形等を挙げることができる。射出成形は、導電性ゴム組成物に射出圧を加えて金型に押し込み、金型を充填して金型の形に成形する方法である。成形金型として、平板状の金型を用い、平板状に成形した未加硫ゴム混合物を、接着剤を塗布した芯材に巻き付け導電性ゴム層を形成しても、円筒金型を用いることもできる。円筒金型を用いて、導電性ゴム組成物をチューブ状に成形し、その後芯材をチューブに挿入してもよいが、円筒金型に同心状に配置した芯材の周囲に導電性ゴム組成物を注入し、芯材と一体的に成形してもよい。
【0032】
押出成形は、導電性ゴム組成物をスクリューで混練し、先端の押出金型(ダイ)を通過させ連続成形する方法である。押出成形の場合も、押出金型に、円筒状ダイを用いて、導電性ゴム組成物をチューブ状に押出成形し、後工程においてチューブに芯材を挿入してもよい。押出金型にクロスヘッドを用いて、導電性ゴム組成物と芯材をクロスヘッドに同時に供給して、芯材の周囲に導電性ゴム組成物を直接押出し、芯材と一体的に成形してもよい。
【0033】
上記押出成形を行う押出機の一例を図1の模式図に示す。図1に示す押出成形機は、芯材53を図において垂直方向に搬送する複数対の送りローラー52と、導電性ゴム組成物を加熱混練し、水平方向に押し出す押出スクリュー54が、クロスヘッド51にそれぞれ連結されて設けられる。送りローラー52によって芯材53が間隙を置かず順次、垂直方向にクロスヘッドに搬送されると、押出スクリュー54から導電性ゴム組成物が水平向から順次押し出され、芯材の周囲に導電性ゴム組成物が成形されたローラーが連続して押し出される。成形された導電性ゴム組成物が切断機55によって各芯材の長さに切断され、更に端部が切断除去され、円筒状の未加硫ゴムローラー56を得る。
【0034】
成形後の未加硫ゴム混合物の加硫方法としては、加熱、冷却等の温度制御により加硫を行う方法であれば、特に条件は問わないが、例えば、加熱オーブン、加硫缶、極超短波電磁波)照射(UHF)、電子線照射、熱溶融塩槽(LCM)等を使用することができる。具体的には、例えば、熱風を利用した加硫炉に連続して未加硫ゴムローラーを導入し、無加圧下で140〜220℃で、5〜50分加熱して行うことができる。
【0035】
加硫後、導電性ゴム層の端部を切断して、適宜、研磨して、所望の形状、表面粗さに形成することができる。導電性ゴム層の形状は、導電性ローラーが電子写真装置の感光体に従動回転して用いられる場合、感光体に均一の押圧力で当接するように、中央部の最大径から、両端部の最小径へ徐々に細くなる形状、いわゆるクラウン形状とすることができる。研磨は、導電性ゴム層の厚さ、硬さ、研磨機により異なるが、例えば、研磨砥石GC60〜120、砥石回転速度1500〜2000rpm、送り速度300〜700mm/分とすることができる。
【0036】
このような成形工程、加硫工程において、導電性ゴム組成物に含有されるカーボンブラックは圧力、温度の変動に対し、その分散状態の変動が抑制され、ローラー全体に亘って均一な導電性を有する導電性ゴム層が形成される。
【0037】
本発明の電子写真装置用導電性ローラーは、上記導電性ゴム層の他、高強度な表面層等、必要に応じて他の層を有するものであってもよい。この導電性ローラーは、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の電子写真装置に適用することができ、例えば、電子写真感光体や静電記録誘電体等の像担持体の周囲に配置される帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等に適用することができる。これらのうち、特に、帯電ローラーに好適である。
【実施例】
【0038】
本発明の電子写真装置用導電性ローラーを具体的に説明する。
【0039】
使用した材料は以下のとおりである。
(1)原料ゴム
変性SBR(変性スチレンブタジエンゴム):SL552(結合スチレン24%、ビニル結合量39%)(JSR株式会社製)
未変性SBR(未変性スチレンブタジエンゴム):SL552未変性品(結合スチレン24%、ビニル結合量39%)(JSR株式会社製)
エピクロルヒドリンゴム:エピオン301(ダイソー株式会社製)
(2)カーボンブラック
ISAFカーボン:旭#80(窒素吸着比表面積115m2/g、DBP吸収量113mg/100g)(旭カーボン株式会社製)
HAFカーボン:旭#70(窒素吸着比表面積77m2/g、DBP吸収量101mg/100g)(旭カーボン株式会社製)
FEFカーボン:旭#60(窒素吸着比表面積40m2/g、DBP吸収量114mg/100g)(旭カーボン株式会社製)
SRFカーボン:旭#35(窒素吸着比表面積24m2/g、DBP吸収量50mg/100g)(旭カーボン株式会社製)
(3)硫黄/硫黄供与剤、加硫促進剤
加硫剤
硫黄:サルファックスPMC(鶴見化学工業株式会社製)
加硫促進剤
DM(ジベンゾチアジルジスルフィド):ノクセラーDM(大内新興化学工業株式会社製)
TET(テトラエチルチウラムジスルフィド):ノクセラーTET(大内新興化学工業株式会社製)
(4)その他
加硫促進助剤
酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製)
ステアリン酸:ルナックS20(花王株式会社製)
イオン導電剤
第4級アンモニウム塩:KS−555(株式会社ADEKA製)。
【0040】
[実施例1〜5]
硫黄、硫黄供与剤、加硫促進剤以外の原材料について表1に示す割合で、3L加圧型ニーダー(D3−10:株式会社モリヤマ製)を用い混練した。まずローター回転数30rpmで、原料ゴムのみを1分間素練りし、次いでカーボンブラック、その他の材料を投入して10分間混練りした。ニーダー容量に対する材料の充填量は75vol%で行った。得られたゴム組成物を室温(25℃)で1時間冷ました後、更に、オープンロール機(12inchテスト用ロール機:関西ロール(株)製)を用い、硫黄、硫黄供与剤、加硫促進剤を混練した。フロントロール15rpm、バックロール18rpmで、適宜切返しながら15分間混練することにより導電性ゴム組成物を得た。次に、リボン成形分出し機によりリボン状に成形した導電性ゴム組成物を作製し、φ40mmのクロスヘッド押出機を用いて導電性ゴム組成物を押出した。これと同時に、ホットメルト接着剤(スリーボンド3315E:スリーボンド(株)製)を塗布した外径6mm、長さ250mmの導電性芯材を押出し機のクロスヘッドダイを連続的に供給し、導電性芯材の外周に導電性ゴム組成物を設けた未加硫ゴム成形体を得た。その後、200℃の熱風炉に投入して無加圧下で30分間加硫を行い、芯材の外周に導電性ゴム層を形成し、両端部分をカットして、長さ240mmのローラーとした。このローラーを、研磨砥石GC80(商品名 株式会社テイケン製)を取り付けた研削機にセットし、研削条件として回転速度2000rpm、送り速度500m/分でゴム層の外径がφ10mmになるように研削し、導電性ローラーを得た。
【0041】
[抵抗値]
得られた導電性ローラーを23℃/60%RH(N/N)環境に24時間以上放置した後、抵抗値、抵抗ムラの測定を行った。導電性ローラーの導電性芯材の両端に各4.9Nの荷重をかけて外径30mmのSUS製ドラムに圧着し、SUS製ドラムを回転させ、導電性ローラーを0.5rpmで従動させた。この状態で導電性芯材とSUS製ドラムの間に直流電圧−200Vを印加して、SUS製ドラムに直列接続した1kΩの抵抗体にかかる電圧を測定した。電圧の測定値の平均値Vave(V)から、R=200×103/Vaveを算出し、絶対値logRNNとして導電性ローラーの抵抗値(R)を求めた。
【0042】
抵抗むらは、導電性ローラーの測定電圧の最大値Vmax(V)と最小値Vmin(V)の比Vmax/Vmin(電圧比)から算出し、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
○:電圧比が1.3以下を抵抗むらが小さいとした。
△:電圧比が1.3超過1.5未満を抵抗むらが中程度とした。
×:抵抗ムラ1.5以上を抵抗ムラが大きいとした。
【0043】
[抵抗の環境依存性]
得られた導電性ローラーをそれぞれ15℃/15%RH(L/L)環境と、35℃/85%RH(H/H)環境に24時間以上放置した後、上記と同様に測定し、抵抗値RLL、RHHを算出し、log(RLL/RHH)の絶対値として環境変動桁を求めた。この値から以下の基準により抵抗の環境依存性を評価した。結果を表1に示す。
○:環境変動桁0.5以下を環境依存性が小さいとした。
△:環境変動桁0.5超過1.0未満を環境依存性が中程度とした。
×:環境変動桁1.0以上を環境依存性が大きいとした。
【0044】
[感光体の汚染性]
得られた導電性ローラーを、レーザービームプリンターLBP5500(キヤノン株式会社製)の黒のオールインワンカートリッジに帯電ローラーとして組み込んだ。カートリッジを温度40℃湿度95%の恒温恒湿槽に7日間放置後、NN環境(温度23℃、湿度60%)に4時間放置後、レーザービームプリンターにセットし、ハーフトーン画像を出力した。その後、カートリッジから感光体を取り出し、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で感光体表面を観察した。感光体汚染を以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
○:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の不良画像がなく、感光体表面にもブリードによる付着物や割れが観察されない。
×:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の画像不良が見られ、感光体表面に付着物又は割れが発生している。
【0045】
[画像均一性]
得られた導電性ローラーを上記カートリッジに帯電ローラーとして組み込んだ。カートリッジをLL環境(温度15℃、湿度10%)に4時間放置後、レーザービームプリンターにセットし、ハーフトーン画像と写真画像を出力した。得られた画像を目視により観察し、カーボンブラックの分散の不均質さ、抵抗むら、当接むら等が原因で生じる白・黒ポチ、白・黒スジ、黒帯びむら等の画像不良の有無により、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:画像不良が全くない。
△:実用画像には画像不良はないが、ハーフトーン画像に観察される。
×:実用画像、ハーフトーン画像の両方に画像不良が観察される。
【0046】
[比較例1〜6]
原材料を表2に示す割合に変更した他は、実施例と同様にして導電性ローラーを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表中の数字の単位は、質量部である。
【0049】
【表2】

【0050】
表中の数字の単位は、質量部である。
【0051】
実施例1、比較例1より、本発明の電子写真装置用導電性ローラーはローラー内における抵抗のばらつきが小さく、安定した電気特性を得られ、また電気特性の環境依存性が小さく、電子写真装置の導電性ローラーに適していることがわかる。比較例1のゴム成分にエピクロルヒドリンゴムを用いたイオン導電性ローラーは、環境依存性が大きく、また、導電剤のブリードによる感光体汚染を生じる。
【0052】
実施例1〜3、比較例2より、末端変性ポリマーのゴム成分中の割合が50質量%以上であれば、50質量%未満の比較例2と比較して、カーボンブラックの固定化により抵抗ばらつきが小さく、導電性ローラー内の抵抗むらが抑制され、画像均一性が良好である。
【0053】
実施例5、比較例5より、カーボンブラックの窒素吸着比表面積、DBP吸収量は本発明範囲内が適していることがわかる。すなわち、比較例5は、低抵抗化の為に要するカーボンブラック配合量が多すぎるため、末端変性ポリマーに固定化されないカーボンブラックが多くなり、得られる導電性ローラはローラ内の抵抗ムラが大きく、画像均一性に劣る。
【0054】
また、実施例1、3、比較例3、4より、カーボンブラックの含有量が30〜80質量部であれば、これに満たない比較例3と比較して、抵抗値が高く、画像均一性が良好である。また、カーボンブラックの含有量が多量の比較例4は、末端変性ポリマーに固定化されないカーボンブラックが多くなり、ローラー内の抵抗むらが大きく、画像均一性に劣ることが分かる。
【0055】
実施例4、5より、カーボンブラックは、窒素吸着比表面積70〜130m2/g、かつDBP吸収量70〜130ml/100gのものがより好ましいことがわかる。上記範囲外の実施例5では、低抵抗化によりカーボンブラック配合量が多すぎるため、末端変性ポリマーによるカーボンブラックの固定化が十分ではなく、導電性ローラ内の抵抗ムラがおおきくなる傾向にある。実用画像としては画像不良はないが、ハーフトーン画像に観察される。
【符号の説明】
【0056】
56 未加硫ゴムローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックにより導電性を付与したゴム加硫物を含む導電性ゴム層を有する電子写真装置用導電性ローラーであって、導電性ゴム層が、末端に官能基を有する末端変性ポリマーをゴム成分に対して50質量%以上、100質量%以下の範囲で含有し、カーボンブラックをゴム成分100質量部に対して30質量部以上、80質量部以下の範囲で含有し、該カーボンブラックは窒素吸着比表面積が40m2/g以上、150m2/g以下、DBP吸着量が60ml/100g以上、170ml/100g以下であることを特徴とする電子写真装置用導電性ローラー。
【請求項2】
末端変性ポリマーが末端に有する官能基が、アミノ基、アルコキシシリル基、酸無水物基及びカルボキシル基から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1記載の電子写真装置用導電性ローラー。
【請求項3】
カーボンブラックが、窒素吸着比表面積が40m2/g以上、150m2/g以下であり、DBP吸着量が60ml/100g以上、170ml/100g以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真装置用導電性ローラー。
【請求項4】
末端変性ポリマーが、末端に官能基を有するスチレンブタジエンゴム又はブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子写真装置用導電性ローラー。
【請求項5】
電子写真装置に設けられる感光体を帯電する帯電ローラー
5方法において、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真装置用導電性ローラーを用いたことを特徴とする帯電ローラー。

【図1】
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【公開番号】特開2011−138004(P2011−138004A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297983(P2009−297983)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】