説明

電子写真記録用紙および記録物

【課題】カラー記録に適していて、記録品質、定着性、耐水性、耐久性に優れていて、連続印刷適性も有する電子写真記録用紙を提供すること。
【解決手段】耐水性を有する支持体の少なくとも片面に脂溶性のポリマー帯電防止剤を含有するトナー受容層を設けた電子写真記録用紙であって、前記トナー受容層の温度25℃、相対湿度20%における表面固有抵抗値が1×107〜9×1012Ωである電子写真記録用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の電子写真記録用紙は、複写機、レーザプリンタ等の電子写真記録方式によるカラー記録に好適に使用でき、濃度、色調、階調等の記録品質に優れ、かつ定着性、耐水性、耐久性に優れた電子写真記録用紙であって、特に連続印刷しても帯電による張り付きがない電子写真記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
最近における複写機、プリンタの進歩は目覚ましく、価格面のみならず、記録品質、記録速度等の性能面でも飛躍的に向上しつつある。そのため、従来は印刷機械によって作成していたポスター、カタログ、パンフレット等の印刷物も、現在は複写機、プリンタを使用して、従来の記録品質を維持しつつ、より簡便に迅速に作成できるようになった。このような複写機、プリンタによる記録は、多品種、少部数の印刷物を迅速に作成する場合に特に好適に用いうる。
【0003】
各種複写機、プリンタの中でも、電子写真方式を採用した複写機、プリンタ、特に半導体レーザを使用する複写機、レーザプリンタは、高解像度、高速記録が可能である点で優れている。電子写真方式のカラー化に対しては、現像装置を複数必要とするために装置が大型化する、トナー色材に顔料を使用するために色調が若干劣る、という問題点はあるが、これらの問題点も装置の小型化、トナーや記録用紙等の材料面の改良により解消されつつある。
記録用紙の改良に関しては、耐水性を有する紙材からなる基材層の少なくとも片面に、塗工層を有する合成樹脂フィルムを積層した電子写真記録用紙(特許文献1)において、従来のパルプ紙からなる電子写真用記録用紙よりも記録品質、定着性、耐水性、耐久性の優れる電子写真記録用紙が考案され、実用化されている。
【0004】
しかしながら、従来の、耐水性を有する紙材からなる基材層の少なくとも片面に、塗工層を有する合成樹脂フィルムを積層した電子写真記録用紙は、記録品質、定着性、耐水性や耐久性には優れているものの、連続で印刷をした場合に印刷機器内で記録用紙へ与えられた帯電が除去しきれず、印刷後にこれを重ねたまま放置しておくと記録用紙同士が張り付いてしまい用紙(の端面位置)を揃えることが困難であった。そのためこれを印刷後、断裁や抜き等の加工を行う際に、サイズや絵柄位置がずれてしまう欠点があった。印刷後の帯電を防止して紙同士の張り付きを防止する記録用紙としては、帯電防止剤を塗工したものや(特許文献2〜4参照)、トナー受容性のある塗工層に帯電防止剤を添加したもの(特許文献5〜7参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら特許文献2〜7に見られるこれまでの提案は、水溶性の帯電防止剤を単体で塗工したものや、水系塗料に水溶性の帯電防止剤を添加したものを塗工したものであって、支持体自体に耐水性があっても、塗工した層の耐水性は低く、屋外使用などの実用には耐えられないものであった。これらの塗工層は親水性が高すぎるため、例えばこれらの印刷物を水中に24時間浸漬し、その後印刷面を強く擦ると、塗工層とともにトナーが容易に剥れてしまう不完全なものであった。
また、電子写真記録用紙に吸湿型の(周囲の湿度依存型の)帯電防止剤を使用したものでは、電子写真記録装置のトナー定着器により過熱される際の用紙表面近傍の相対湿度低下のため、印刷後の帯電防止性能が安定して発現しにくい欠点や、冬場など湿度の低い環境で連続印刷すると紙同士の張り付きが発生しやすい欠点があった。
【特許文献1】特開2002−091049号公報
【特許文献2】特開平8−297375号公報
【特許文献3】特開2000−131870号公報
【特許文献4】特開2004−083689号公報
【特許文献5】特開平8−011263号公報
【特許文献6】特開2004−083689号公報
【特許文献7】特開2005−271396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来の電子写真記録用紙に見られる過剰の帯電傾向、トナー受容性のある塗工層の耐水性不足、トナー受容性のある塗工層の湿度依存性といった不具合を改善することが必要とされている。そこで本発明は、電子写真複写機、レーザプリンタ等によるカラー記録に適し、濃度、色調、階調等の記録品質と、同記録の定着性、耐水性、耐久性に優れ、且つ連続印刷しても帯電による張り付きがない連続印刷適性にも優れた電子写真記録用紙を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこれらの課題を解決するために、鋭意検討を進めた結果、脂溶性のポリマー帯電防止剤を用いてトナー受容層の表面固有抵抗値を調整することによって、所期の特性を有する電子写真記録用紙を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、耐水性を有する支持体の少なくとも片面に脂溶性のポリマー帯電防止剤を含有するトナー受容層を設けた電子写真記録用紙であって、前記トナー受容層の温度25℃、相対湿度20%における表面固有抵抗値が1×107〜9×1012Ωである電子写真記録用紙に関するものである。
【0008】
本発明に用いるポリマー帯電防止剤は、脂溶性であって、環境湿度へ依存せず優れた帯電防止性能を発現するために、分子内にアルキレンオキシド基および/または水酸基と、アルカリ金属イオンを含有するものであることが好ましい。より具体的に、ポリマー帯電防止剤は、下記構造式(1)に記載の(メタ)アクリル重合体骨格を有することが好ましい。
【0009】
【化1】

式中、R1、R2は各々独立に水素原子またはメチル基を表し、R3は水素原子、塩素原子またはメチル基を表し、R4は炭素数1〜30のアルキル基を表し、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
Mはアルカリ金属を表し、mは0〜300の整数を表し、nは1〜300の整数を表し、pは1〜100の整数を表す。
【0010】
特にR4、Aにて表されるアルキル基やアルキレン基等、またはアルキレンオキシド基の炭素数が十分に大きければ、該ポリマー帯電防止剤は脂溶性の特徴を具備し、バインダー樹脂とともに有機溶媒に溶解した溶液塗料とすることができ、これを支持体に塗工し、これを乾燥して皮膜化してトナー受容層を形成したものは、バインダー樹脂の寄与もあり、従来にない優れた耐水性や耐久性を発揮できる。この優れた耐水性は、例えば印刷した記録用紙を、水で充填したバットの水中に浮かない様に入れ、24時間水に浸漬した後に、同記録画像をコイン等で強く擦っても、記録画像に変化は見られないほど強固である。さらに該ポリマー帯電防止剤はアルコキシ末端に、Mで表されるアルカリ金属イオンを有するアニオン系の帯電防止剤である。該ポリマー帯電防止剤はアルカリ金属イオンを有することでイオン導電性の特性を具備して環境湿度へ依存せず優れた帯電防止性能を発現することができる。
【0011】
トナー受容層は、アルカリ金属イオン0.01〜1重量%を含有することが好ましく、アルカリ金属イオンは、リチウムイオンであることが好ましい。また、トナー受容層は、ポリマー帯電防止剤1〜50重量%、バインダー樹脂10〜99重量%を含有することが好ましく、さらに顔料粒子70重量%以下を含有することができる。顔料粒子は含有しなくてもよい。
該バインダー樹脂は、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリアクリルウレタン、アクリリル酸エステル共重合体の何れかおよび/またはこれらの混合体からなることが好ましい。
トナー受容層のみならず、電子写真記録用紙全体の耐水性を向上させるために、支持体もまた耐水性を有するものであることが好ましく、具体的に支持体は耐水性を有する紙材の少なくとも片面に合成樹脂フィルムを積層してなることが好ましい。
【0012】
さらに電子写真記録用紙の屋外使用時に、紫外線照射による支持体の黄変を防止する目的から、支持体は、耐水性を有する紙材と合成樹脂フィルムとの間に紫外線遮断層を積層してなることが好ましい。
耐水性を有する紙材とは、JIS−P−8140:1998に基づくコッブ法による吸水度が0〜50g/m2の範囲の吸水性の少ない紙材であることが好ましく、具体的にはジアゾ感光紙原紙、写真印画紙原紙、樹脂含浸紙、樹脂塗工紙、硫酸紙、擬硫酸紙、耐水紙、耐油紙、防水紙からなる群より選択される加工紙か、もしくは無機および/または有機微細粉末を含有するポリオレフィン系フィルムであることが好ましい。
また合成樹脂フィルムは、融点が180〜300℃の熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルムであることが好ましく、具体的にはポリエステル樹脂またはポリ(4−メチルペンタ−1−エン)を含有する樹脂フィルムであることが好ましい。ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
紫外線遮断層は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系及びトリアジン系からなる郡より選択される少なくとも1種類以上の紫外線吸収剤を含有するものが好ましく、同層組成中の紫外線吸収剤の含有量は、1〜50重量%であることが好ましい。
【0013】
本発明の電子写真記録用紙は、帯電を速やかに放出することができる反面、濃度、色調、階調といった記録品質を良好なものとするためには、その静電容量を10〜300pF/cm2の範囲の調整することが好ましい。
本発明の電子写真記録用紙は、最外層の一方の面に粘着剤層を積層して有する粘着ラベル形状の電子写真記録用紙としてもよく、さらにはバーコード等の情報を含む記録画像を記録、印刷、印字した記録物としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子写真記録用紙に、電子写真記録方式によるカラー記録を行えば、濃度、色調、階調等の記録品質に優れた画像が得られる。また、本発明の電子写真記録用紙は、良好な定着性、耐水性、耐久性を示し、また連続印刷しても帯電による張り付きがないため、実用性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、本発明の電子写真記録用紙および記録物について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
《電子写真記録用紙》
[特徴と層構成]
本発明の電子写真記録用紙は耐水性を有する支持体の少なくとも片面にポリマー帯電防止剤を含有するトナー受容層を設けたシートであり、トナー受容層の温度25℃、相対湿度20%における表面固有抵抗値が1×107〜9×1012Ωとなるように調整されたものである。図1および図2は、このような特徴を有する本発明の電子写真記録用紙の好適な実施形態例を示したものである。図1に示す本発明の電子写真記録用紙1は、耐水性を有する支持体3の両面にトナー受容層2を設けたものである。図2に示す本発明の電子写真記録用紙1は、耐水性を有する支持体3の片面だけにトナー受容層2を設けたものである。図1および図2に示すように、支持体3は紙材4の両面に接着剤層6を介して合成樹脂フィルム5を積層した構造とすることができる。
本発明の電子写真記録用紙の肉厚は、通常70〜400μm、好ましくは85〜350μm、さらに好ましくは100〜300μmである。また、その坪量は、通常70〜400g/m2、好ましくは85〜350g/m2、さらに好ましくは100〜300g/m2である。
以下において、本発明の電子写真記録用紙を構成する各層と支持体について説明し、電子写真記録用紙の物性について言及する。
【0017】
[トナー受容層]
(特徴と機能)
本発明の電子写真記録用紙に用いるトナー受容層は、温度25℃、相対湿度20%における表面固有抵抗値が1×107〜9×1012Ωの範囲となる様にポリマー帯電防止剤を含有するものである。
本発明の電子写真記録用紙に用いるトナー受容層は、電子写真記録用紙の最外層にあって、電子写真記録(複写やレーザプリント)時のトナーを受理し定着させる層であって、特に耐水性や耐久性に優れ、且つ印刷後の帯電を防止して用紙同士の張り付きがない電子写真記録用紙を実現するものである。
【0018】
(従来の帯電防止剤)
従来、帯電防止剤としてはステアリン酸モノグリセリド、アルキルジエタノールアミン、ソルビタンモノラウレート、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩などに代表されるモノマー系の帯電防止剤が一般によく使用されているが、これらは水溶性が高く、また、それ自体の凝集力が弱いために帯電防止性能を発揮できる程度の量を用いると著しく耐水性が低下してしまうという問題がある。
ITO(インジウムドープド酸化錫)、ATO(アンチモンドープド酸化錫)、グラファイトウィスカなどに代表される導電性無機充填剤もまた、少量の添加では充填剤同士が接触しないため帯電防止効果は得られない。また、充填剤同士が接触しあう程度の量を添加するとバインダー量が著しく低くなるため、耐水性が低下してしまい耐水性と帯電防止効果を両立することが難しいという問題がある。
【0019】
一方、ポリマー帯電防止剤にはそれ自体に凝集力があるため、耐水性の優れた塗工層の形成が可能となる。
ポリマー帯電防止剤の中には、ポリチオフェン、ポリピーロイル、ポリアニリンなどの分子鎖内のπ電子により導電性を発揮するいわゆる電子導電性ポリマーがあるが、これら電子導電性ポリマーは共役系に由来する着色により一般的には黒色、緑色、或いは青灰色の着色が有り、これを用いれば優れた帯電防止効果は得られるものの、くすんだ色の電子写真記録用紙となってしまい、画像の鮮明性が劣るものとなってしまう。さらにこれらの電子導電性ポリマーは導電性が高いことが特徴であり、電荷を拡散する性能も高すぎるために、トナーの電荷も逃がしてしまう特性がある。電子写真記録用紙として過不足の無い静電容量との両立が困難となるため、画像の濃度が安定しないトラブルが発生しやすい。
【0020】
(本発明に用いるポリマー帯電防止剤)
本発明に用いるポリマー帯電防止剤は、帯電防止性能と耐水性能とを両立して有する必要があり、電子写真方式のトナー定着器による加熱工程を経ても帯電防止効果への影響が小さいものであることが必要である。すなわち本発明に用いるポリマー帯電防止剤は、温度25℃、相対湿度20%におけるトナー受容層の表面固有抵抗値を1×107〜9×1012Ωの範囲にすることができる脂溶性のポリマー帯電防止剤である。脂溶性であれば、より耐水性を有するバインダー樹脂と併用することができる。本発明において脂溶性とは、後述する有機溶媒に、常温常圧下において固形分濃度で5重量%以上溶解し、且つ沈殿物が発生しないものであることを意味する。本発明に用いるポリマー帯電防止剤は、帯電防止性能を発揮するモノマーと、疎水性の(親油性の)モノマーとの共重合体であることが好ましい。疎水性モノマーを共重合させることによって、各種有機溶媒への溶解性を高めることができる。そのような疎水性モノマーとしては、アクリル酸ないしメタクリル酸と各種アルコールとのエステルが挙げられる。
【0021】
本発明に用いるポリマー帯電防止剤は、分子中にアルキレンオキシド基および/または水酸基を有していて、それらのヒドロキシル基の対イオンとしてリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのイオン径の比較的小さいアルカリ金属イオンを有するイオン導電性の帯電防止剤であることがより好ましい。例えば、以下の一般式(1)で表される共重合体構造を有する帯電防止剤は、帯電防止性能を発揮するアルキレンオキシド基を有するユニットと、耐水性能に寄与する(親油性を向上する)親油基を有するユニットからなる構造を有していることから、耐水性の優れた帯電防止剤を得ることが可能であり、好ましい形態である。個々のユニットの比重や重合度は得るべき帯電防止性能と耐水性能から決定できる。
【0022】
【化2】

【0023】
一般式(1)において、R1、R2は各々独立に水素原子またはメチル基を表す。mが2以上であるとき、m個のR1は同一であっても異なっていてもよい。また、nが2以上であるとき、n個のR2は同一であっても異なっていてもよい。したがって、例えば、R1、R2をすべてメチル基にすることができる。
一般式(1)において、R4は炭素数1〜30のアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、例えば1〜25、さらには2〜23、さらには3〜20、さらには4〜18の範囲内から選択してもよい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基などを挙げることができる。これらは直鎖状であっても分枝状であってもよい。mが2以上であるとき、m個のR4は同一であっても異なっていてもよい。例えば、炭素数10未満のアルキル基と炭素数10以上のアルキル基が混在していてもよいし、さらには炭素数1〜6のアルキル基と炭素数15〜20のアルキル基が混在していてもよい。
【0024】
一般式(1)において、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表す。
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
<1群>の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられ、これらは直鎖状であっても分枝状であってもよいが好ましいのは直鎖状である。置換基としては、ヒドロキシル基、アリール基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基などが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシル基、アルキル基などが挙げられる。アルキル基が置換したアリーレン基としては、トリレン基、キリリレン基などが挙げられる。また、<2群>から選択される連結基としては、ウレタン基やエステル基を好ましく選択することができる。<1群>から選択される1種以上の連結基と<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基としては、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基や、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)−(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基などが挙げられる。後者の場合は、2種類の(1群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、2種類の(2群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
一般式(1)において、R3は水素原子、塩素原子またはメチル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。pが2以上であるとき、p個のR3は同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのは同一である場合である。pは1〜100の整数を表すが、2〜50が好ましく、3〜50がより好ましい。例えば、R3が水素原子の場合、pを10〜35、さらには15〜30、さらには20〜25の範囲内から選択したり、R3がメチル基の場合、pを1〜20、さらには3〜16、さらには5〜14の範囲内から選択したりしてもよい。
【0026】
一般式(1)において、nが2以上であるとき、n個の繰り返し単位に結合しているn個の側鎖のAやR3やpはすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、R3はすべてが水素原子またはメチル基であってもよいし、水素原子とメチル基が混在していてもよい。水素原子とメチル基が混在している場合は、1つの側鎖を構成するp個のR3はすべてが水素原子またはメチル基のいずれかであることが好ましい。
【0027】
一般式(1)において、Mはアルカリ金属であり、Li、Na、Kなどを挙げることができ、イオン半径の小さいLiを用いることが導電性の観点で好ましい。nが2以上のとき、n個のMは同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは同一である場合である。
一般式(1)において、mは0〜300の整数、nは1〜300の整数、pは1〜100の整数を表す。好ましくは、mは0〜200の整数、nは10〜200の整数、pは3〜50の整数を表す。
m個の繰り返し単位と、n個の繰り返し単位は、それぞれブロック共重合体となるように結合していていもよいし、ランダム共重合体となるように結合していてもよい。
【0028】
一般式(1)で表される構造を有する帯電防止剤の製造方法は特に制限されず、公知の合成法を組み合わせて適宜合成することができる。通常は、R1とR4を有する(メタ)アクリレートモノマーと、R2とアルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリレートモノマーとを共重合させることにより製造することができる。具体的には、これらのモノマーを不活性有機溶媒に溶解し、重合開始剤を添加した後に、攪拌しながら通常65〜150℃に加熱すること等により行うことができる。重合時間は通常1〜24時間に設定する。
【0029】
1とR4を有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0030】
2とアルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、アルキレンオキシドモノマーにアルカリ金属を導入することにより製造することができる。本発明において好適に用いうるアルキレンオキシドモノマーの例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)クロロエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレンオキシド(メタ)アクリレートが挙げられる。また、これらの具体例において、さらに一般式(1)のAに相当する箇所に単結合以外の連結基を有するアルキレンオキシドモノマーも挙げられる。例えば、Aにウレタン結合を有する化合物として、特開平09−113704号公報に記載される化合物を使用することができる。Mに相当するアルカリ金属を導入する方法は特に制限されないが、通常はアルキレンオキシドモノマーにアルカリ金属塩を反応させて水酸基末端をイオン化することによりアルカリ金属イオンによるイオン導電性を持たせることができる。本発明において好適に用いうるアルカリ金属塩の例としてはリチウム、ナトリウムまたはカリウムの過塩素酸塩、またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン化物等の無機塩が挙げられる。
【0031】
共重合に用いる重合開始剤は、脂溶性であることが好ましく、好適な重合開始剤として有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。有機過酸化物には、アルキルパーオキシド(ジアルキルパーオキシド)、アリールパーオキシド(ジアリールパーオキシド)、アシルパーオキシド(ジアシルパーオキシド)、アロイルパーオキシド(ジアロイルパーオキシド)、ケトンパーオキシド、パーオキシカーボネート(パーオキシジカーボネート)、パーオキシカルボキシレート、ヒドロパーオキシド、パーオキシケタール、パーオキシエステル等が含まれる。アルキルパーオキシドとしてはジイソプロピルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、ターシャリーブチルヒドロパーオキシド等を挙げることができる。アリールパーオキシドとしてはジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド等を挙げることができる。アシルパーオキシドとしてはジラウロイルパーオキシド等を挙げることができる。アロイルパーオキシドとしてはジベンゾイルパーオキシド等を挙げることができる。ケトンパーオキシドとしてはメチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等を挙げることができる。アゾニトリルとしてはアゾビスイソブチルニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等を挙げることができる。
【0032】
本発明に用いるポリマー帯電防止剤の分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1万〜100万の範囲内であることが好ましい。分子量が1万以上であれば、形成したトナー受容層から帯電防止剤が染み出し難くなるため十分な耐水性が得られやすくなる傾向がある。分子量が100万以下であれば、バインダー成分と混和しやいため塗工欠陥が生じにくくなり均一な帯電防止効果が得られやすくなる傾向がある。
【0033】
本発明のトナー受容層には、アルカリ金属イオン濃度として好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.7重量%、さらに好ましく0.01〜0.5重量%となる様にポリマー帯電防止剤を添加することが望ましい。アルカリ金属イオン濃度が0.01重量%以上であれば、帯電防止効果が得られやすくなり電子写真方式印刷機で連続印刷した場合に排出した紙同士の張り付きを防ぎやすくなる傾向がある。また、1重量%以下であれば、金属イオンの増加による過度な親水性増加がないためトナーの耐水密着性を維持しやすくなる傾向がある。これらのアルカリ金属イオン濃度は調合時に設定すべき値として表記しているが、乾式灰化処理をした後にICP発光分光分析といった手法を用いて分析により求めることもできる。
【0034】
トナー受容層へのポリマー帯電防止剤の添加量は、含有しているアルカリ金属イオンの量により適宜決定するが、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜45重量%、さらに好ましくは3〜40重量%の範囲である。1重量%以上であれば、トナー受容層中へ均一に分散しやすくなり十分なポリマー帯電防止効果が得られやすくなる傾向がある。また、50重量%以下であればバインダー樹脂や顔料粒子の添加量とのバランスがよいためトナーの定着不良が生じにくくなる傾向がある。
【0035】
(バインダー樹脂)
本発明のトナー受容層は、トナーの定着性とより強固な耐水性を付与するためにバインダー樹脂を含有していることが望ましい。
本発明に用いるバインダー樹脂は非水溶性バインダーであることが望ましい。非水溶性バインダーを用いることにより耐水性が優れたトナー受容層を得ることができる。非水溶性バインダーとしては、例えばウレタン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、アクリル酸エステル共重合体樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂などを挙げることができる。これらのバインダー樹脂は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタンなどのウレタン樹脂若しくはアクリル酸エステル共重合体樹脂が、前述のアルキレンオキシド化合物からなる帯電防止剤との相性(相溶性)がよく、混溶して塗料とした際に安定しており塗工しやすく、さらに、得られるトナー受容層のトナーとの密着性がよいことから好ましい。トナー受容層中のバインダー樹脂含有量は、好ましくは10〜99重量%、より好ましくは15〜98重量%、さらに好ましく20〜97重量%の範囲である。10重量%以上であればトナー受容層に十分な凝集力を持たせることができるため、電子写真方式により形成した画像に剥離が生じにくくなる傾向がある。99重量%以下であれば帯電防止効果が得られやすくなる傾向がある。
【0036】
(有機溶媒)
本発明に使用できる有機溶媒としては一般的な有機溶剤が挙げられ、特に限定は無い。好ましくは溶解性パラメーター(以下SP値と略記)が6〜12、より好ましくは7〜11の範囲のものである。なお、ここで、溶解性パラメーター(SP値)とは、溶解度係数(Solubility Parameter)と同義であり、液体間の混合性の尺度となる液体の特性値である。このSP値をδ、液体の分子凝集エネルギーをE、分子容をVとしたとき、SP値δは、δ=(E/V)1/2で表される。
SP値が6〜12である溶剤の具体例としては、n−ヘキサン(SP値:7.3)、n−ブタノール(SP値:11.4)、2−プロパノール(SP値:11.5)、トルエン(SP値:8.9)、キシレン(SP値: 8.8)、メチルエチルケトン(SP値:9.3)、アセトン(SP値:10)、メチルイソブチルケトン(SP値:8.4)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、酢酸エチル(SP値:9.1)、酢酸イソプロピル(SP値:8.4)、酢酸ブチル(SP値:8.5)、テトラヒドロフラン(SP値:9.5)、エチルセロソルブ(SP値:9.9)、ブチルセロソルブ(SP値:8.9)等が挙げられる。SP値が12以下であればバインダー樹脂の溶解性がよくなったり、架橋剤を使用した場合に架橋反応が溶液中で始まるのを防いで塗料の安定性を高めやすくなったりする傾向がある。SP値が6以上であれば、揮発性が過度に高くないため取り扱いやすくなる傾向がある。
【0037】
(顔料粒子)
本発明のトナー受容層は、必要に応じて顔料粒子を含んでいてもよい。トナー受容層には0〜70重量%の範囲で顔料粒子を含むことが可能である。即ち70重量%以下の顔料粒子を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
顔料粒子はその吸油性によるトナーの定着性向上、体質顔料として表面の風合いや光沢感向上、白色顔料として白色度向上、表面凹凸付与によるブロッキング防止性能向上、紫外線反射材として耐光性や耐候性向上、等の性能付与を目的として適宜選択して使用できる。顔料粒子として有機、無機の微細粉末が使用され、具体的な例としては、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子等が挙げられる。顔料粒子の粒子径は好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。顔料粒子の粒子径が20μm以下であれば、形成した塗工層から顔料粒子が脱落しにくいため粉吹き現象が発生しにくくなる傾向がある。トナー受容層中の顔料粒子含有量は、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0〜45重量%の範囲である。顔料粒子の含有量が70重量%以下であればトナー受容層に十分な凝集力を持たせて、電子写真方式により形成した画像の剥離を抑えやすくできる傾向がある。
【0038】
(塗工)
本発明のトナー受容層は、公知の塗工装置により支持体上に塗膜を形成し乾燥することにより形成することができる。塗工装置の具体的な例としては、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。
トナー受容層の塗工量としては、乾燥後の固形分量で0.1〜20g/m2であることが好ましく、0.5〜8g/m2であることがより好ましい。塗工量が0.1g/m2以上であれば均一な帯電防止性能が得られやすくなる傾向がある。20g/m2以下であれば、塗工条件や塗工環境によってポリマー帯電防止剤が厚み方向に分布を持ちにくいため、安定な帯電防止性能と耐水性が得られやすくなる傾向がある。
【0039】
[支持体]
(特徴と層構成)
本発明の電子写真記録用紙は、耐水性を有する支持体の少なくとも片面に前述のトナー受容層が形成されていることを特徴とする。支持体は電子写真記録用紙に曲げ弾性や引張弾性などの物理的強度や、記録用紙としての白色性、不透明性を付与するものであり、更には耐水性、耐久性を付与するものである。
掛かる支持体としては、耐水性を有する紙材の少なくとも片面に、耐水性を有する合成樹脂フィルムを積層したものが望ましい。積層はドライラミネート法や溶融ラミネート法など公知の手法により実施できる。より好ましい積層方法としては支持体と合成樹脂フィルムとの間に接着剤層を設けて貼り合わせるドライラミネート方法である。
また本発明の電子写真記録用紙の好ましい実施形態の一として、掛かる支持体が、耐水性を有する紙材と合成樹脂フィルムとの間に紫外線遮断層を積層したものが挙げられる。該紫外線遮断層は接着剤層を兼ねるものであってもよいし、個別に設けたものであってもよい。
【0040】
(紙材)
本発明の電子写真記録用紙に用いることができる紙材としては、JIS−P−8140:1998に基づくコッブ法による吸水度が0〜50g/m2の範囲の、耐水性のある紙材が好ましい。該吸水度は、0〜40g/m2であることがより好ましく、0〜30g/m2であることが特に好ましい。
具体的にはパルプ原紙に耐水性を付与する塗工剤を塗工または含浸させたもの、或いはパルプ原紙に耐水性を有する合成樹脂を塗工または融着させたものであり、ジアゾ感光紙原紙、写真印画紙原紙、樹脂含浸紙、樹脂塗工紙、硫酸紙、擬硫酸紙、耐水紙、耐油紙、防水紙などの加工紙が使用可能である。或いは無機及び/または有機微細粉末を含有するオレフィン系樹脂フィルムや合成紙を例示できる。
紙材のJIS−P−8118:1998に基づく肉厚は20〜300μmであることが好ましく、50〜250μmであることがより好ましい。
【0041】
オレフィン系樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂とともに無機及び/または有機微細粉末を含有する。オレフィン系樹脂フィルムの組成としては、オレフィン系樹脂を35〜99重量%、および無機及び/または有機微細粉末を1〜65重量%含有することが好ましい。より好ましくはオレフィン系樹脂を50〜95重量%、無機及び/または有機微細粉末を5〜50重量%含有するものである。
オレフィン系樹脂フィルムが含有するオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、或いはプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)、エチレン−環状オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂を適用することができる。さらに、これら樹脂を2種以上混合したものを適用してもよい。これらの中でも、コスト、耐水性、耐薬品性の面から、高密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂を適用するのが好ましい。
【0042】
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティック、シンジオタクティック及び種々の立体規則性を示すポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
オレフィン系樹脂フィルムが含有する無機微細粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等であって、その平均粒径が0.01〜15μmのものを適用することができる。有機微細粉末としては、オレフィン系樹脂フィルムのマトリクスとなる主要成分樹脂の融点より高い融点乃至はガラス転移温度を有するもので、オレフィン系樹脂に非相溶のものを適用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で、融点が120℃〜300℃、乃至はガラス転移温度が120℃〜280℃を有するものが挙げられる。
【0043】
オレフィン系樹脂フィルムの構造としては、単層構造、ベース層と表面層の2層構造、ベース層の両面に表面層を積層する3層構造、またはベース層と表面層間に他の樹脂フィルム層を介在させる多層構造のいずれでもよく、これらの多層構造は、共押出法、溶融ラミネート法、ドライラミネート法等、公知の方法で製造できる。
オレフィン系樹脂フィルムがベース層及び表面層を有する多層構造である場合、ベース層はオレフィン系樹脂を45〜98重量%含有し、無機及び/または有機微細粉末を2〜55重量%含有することが好ましい。表面層はオレフィン系樹脂25〜100重量%含有し、無機及び/または有機微細粉末を75重量%以下含有するか、もしくは含有しないことが好ましい。より好ましい形態はベース層がオレフィン系樹脂を50〜95重量%含有し、無機及び/または有機微細粉末を5〜50重量%含有するものであり、表面層がオレフィン系樹脂を30〜99重量%含有し、無機及び/または有機微細粉末を1〜70重量%含有するものである。
【0044】
オレフィン系樹脂フィルムは、さらに必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤として、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%、光安定剤として、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の安定剤を0.001〜1重量%、無機微細粉末の分散剤として、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸等を0.01〜4重量%配合してもよい。
【0045】
本発明の基材層に用いうるオレフィン系樹脂フィルムは、その成形過程において、少なくとも一軸方向に延伸して成形される延伸フィルムであることが好ましい。延伸により内部に微細な空孔を有するものは記録用紙の不透明度を向上し、また静電容量を向上することができる。
樹脂フィルムの延伸方法としては、従来公知の方法を適用でき、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸、多数のロールを利用した圧延(縦延伸)、テンターを利用した横延伸、前記縦延伸と前記横延伸を組み合わせた逐次二軸延伸、テンターとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸、チューブラー法による同時二軸延伸、パンタグラフ型延伸機を利用した同時二軸延伸等を挙げることができる。延伸時の温度は、使用するオレフィン系樹脂の種類及び延伸プロセスに合わせて適宜選択される。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合には110〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)の場合には80〜120℃と、融点より2〜60℃低い温度に設定することが好ましい。延伸速度は、20〜350m/分とすることが好ましい。
【0046】
延伸倍率は特に限定されず、目的と使用するオレフィン系樹脂の特性によって適宜選択される。例えば、プロピレン単独重合体またはプロピレン系共重合体を使用し、一軸延伸する場合には、好ましくは1.2〜12倍、より好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸する場合には、面積倍率で好ましくは1.5〜60倍、より好ましくは10〜50倍である。他のオレフィン系樹脂を使用し、一軸延伸する場合には、好ましくは1.2〜10倍、より好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸する場合には、面積倍率で好ましくは1.5〜20倍、より好ましくは4〜12倍である。延伸後は必要に応じて熱処理(アニーリング処理)が施される。
【0047】
無機及び/または有機微細粉末を含有するオレフィン系樹脂フィルムは、上記条件下で延伸するこ とにより、フィルム内部に微細なボイド(空孔)が形成されて、不透明度(JIS P−8138)が85%以上、好ましくは90%以上、次式(1)で規定される空孔率が10〜60%、好ましくは15〜45%の、電子写真記録用紙の紙材として好適なものにすることができる。
【0048】
【数1】

(ρ0は樹脂フィルムの真密度を示し、ρは樹脂フィルムの密度を示す)
延伸フィルムの空孔率が10%以上であれば、電子写真記録用紙の白色化、不透明化、軽量化の調整が容易になる傾向があり、逆に空孔率が60%以下であれば、電子写真記録用紙の強度(引張強度、曲げ強度)が得られやすくなる傾向がある。
【0049】
無機及び/または有機微細粉末を含有するオレフィン系樹脂フィルムの肉厚は、上記同様、20〜300μmの範囲であることが好ましく、50〜250μmであることがより好ましい。フィルムの肉厚が20μm以上であれば、ボイドを有する延伸フィルムを製造しやすくなる傾向があり、300μm以下であれば最終的に電子写真記録用紙とした際に巻きロール形態として市場供給しやすくなる傾向がある。
オレフィン系樹脂フィルムは、静電容量が4〜1000pF/cm2であるものを用いるのが好ましい。
【0050】
(合成樹脂フィルム)
本発明の電子写真記録用紙に用いることができる合成樹脂フィルムとしては、電子写真記録方式による情報記録を好適に行えるように、電子写真記録用紙に耐熱性、耐久性、および好適な静電容量等を特徴づけるものである。
これは上記の紙材と併せて、耐水性を有する合成樹脂フィルムが好ましい。
【0051】
合成樹脂フィルムとしては、肉厚が通常5〜100μm、好ましくは12〜50μmの、耐水性、絶縁性を有する合成樹脂フィルムを適用する。耐水性、絶縁性を付与する合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の結晶性エチレン系樹脂、結晶性プロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)、エチレン−環状オレフィン共重合体等の結晶性オレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートや同モノマーに他の成分を共重合した共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0052】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、電子写真記録方式に好適な耐熱性を付与する観点から、JIS−K−7121:1987に基づく融点が180℃〜300℃の範囲の樹脂を主成分として用いることが好ましい。従って本発明の合成樹脂フィルムを形成しうる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂(約180〜270℃)、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)(約230℃)、アイソタクティックポリスチレン(約240℃)、ポリカーボネート(約250℃)、ポリエステル系樹脂(約260℃)、シンジオタクティックポリスチレン(約270℃)、ポリフェニレンサルファイド(約280℃)等が好ましい。融点が180℃以上の樹脂を合成樹脂フィルムの主成分として使用すれば、該合成樹脂フィルムがトナーの定着工程における熱により変形または融解しにくいため、電子写真記録用紙自体が大きく変形したり、トナー定着装置(熱融着ロール等)に張り付いてしまったり、記録装置に損傷を与えたりすることを防ぎやすくなる傾向がある。融点が300℃以下の樹脂を用いれば、厚みが均一なフィルムを製造しやすいため、均質な情報記録が容易になる傾向がある。また、本発明の主成分とは合成樹脂フィルム全体の50重量%〜100重量%を占めるものである。50重量%以上であれば本発明の合成樹脂フィルムの所期の性能を発揮しやすい傾向がある。副成分としては他の熱可塑性樹脂やフィラーなどが挙げられる。
【0053】
これら熱可塑性樹脂の中でも、特にポリエステル系樹脂を主成分とするのが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス−α,β(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4'−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の2官能カルボン酸の少なくとも1種と、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等のグリコールの少なくとも1種とを重縮合して得られるポリエステルを挙げることができる。さらには上記の2官能カルボン酸、グリコールに、重縮合可能なヒドロキシカルボン酸を加えて重縮合して得られるポリエステルを挙げることができる。
これらのポリエステル系樹脂の中でも、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合から得られるポリエチレンテレフタレートが、厚みの均一なフィルムが容易に得られ、加工も容易であり、過不足のない適度な静電容量を付与できる点で特に好ましい。
【0054】
本発明では、前述の耐水性を有する紙材と耐水性を有する合成樹脂フィルムとからなる支持体を用いることで、電子写真記録用紙の耐水性に関して大幅に向上させることができ、より好ましい実施形態とすることができる。
【0055】
(接着剤層)
本発明の電子写真記録用紙に用いる支持体を、上記の紙材および合成樹脂フィルムから形成する際、これらを貼合するために接着剤層を用い、これを介して積層することが好ましい。貼合は、紙材または合成樹脂フィルム上に溶剤系接着剤あるいはホットメルト型接着剤等の接着剤を、塗工、散布、溶融押出ラミ等の手法により接着剤層として設け、これを介してドライラミネート、または熱融着性フィルムや溶融押出フィルムを用いた溶融ラミネート等の通常の手法により行うことができる。
溶剤系接着剤としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エーテル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ABS系樹脂等からなる樹脂成分を、従来公知の溶剤を用いてその相の中に溶解、分散、乳濁分散、希釈して、流動性があり塗工の可能な、溶液型やエマルジョン型の様態の液状の接着剤が代表的である。
【0056】
これら接着剤の塗工は、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、スライドホッパー等により行われる。その後必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、接着剤層が形成される。
これらの接着剤は、一般的には秤量が0.5〜25g/m2となるように塗工されて接着剤層は設けられる。
【0057】
接着剤を使用する場合は、基材層である紙材の表面に該接着剤を塗工し、次いで、合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムを重ね、圧着ロールで加圧接着するか、あるいは合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムの裏面に該接着剤を塗工し、次いで、基材層である紙材を重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
ホットメルト型接着剤としては、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(いわゆるサーリン)、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂などを例示できる。
ホットメルト型接着剤を使用する場合は、基材層である紙材の表面上にビート塗工、カーテン塗工、スロット塗工等の方法で塗工するか、基材層である紙材の表面上にダイより溶融フィルム状に押し出してラミネートし、次いで、合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムを重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
【0058】
また、これら接着剤には詳細後述するとおり、280〜400nmのいずれか一部の波長を吸収する紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤を含有することにより、紫外線遮断層を兼ねた接着剤層を形成することが可能である。
【0059】
(紫外線遮断層)
本発明の電子写真記録用紙に紫外線遮断層を設けることができる。紫外線遮断層は、上記の紙材と合成樹脂フィルムとの間に設けることが好ましい。紫外線遮断層は、紫外線吸収剤を含む層であるか、または紫外線吸収剤と紫外線反射剤とを含む層である。本発明の電子写真記録用紙に紫外線遮断層を設けることにより、内部の紙材の変色(黄変)を効果的に抑えて、屋外での長期間の使用を可能にすることができる。
【0060】
紫外線遮断層を支持体の外側に設けると(例えばトナー受容層上に設ける、またはトナー受容層/合成樹脂フィルム間に設けると)耐水性、耐溶剤性、インク密着性の低下が発生して好ましくない。また、合成樹脂フィルムそのものを紫外線遮断層とすると(例えば、合成樹脂フィルム中に紫外線吸収剤等を練り込み混合すると)合成樹脂フィルムの成型性が低下し膜厚の均一性が損なわれ、本発明の所期の目的を達成できない。ゆえに紫外線遮断層を設ける場合は個別の層として、好ましくは紙材と合成樹脂フィルムの間に設けることにより所期の効果が達成できる。
【0061】
紫外線遮断層に使用できる紫外線吸収剤とは280〜400nmのいずれか一部の波長の光を吸収するものである。たとえばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系及びトリアジン系のいずれかもしくはこれらの混合物であり、低分子量型のものでも高分子量型のものでも使用できる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体的な例としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、 2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3'−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5'−1,1,3,3テトラメチルブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−オクチロキシカルボニル)エチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体的な例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、 2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン,2,2'−ジヒドロキシ−4,4'ジメトキシベンゾフェノン,2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。サリシレート系紫外線吸収剤の具体的な例としては、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、 2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤の具体的な例としては、エチル(β,β−ジフェニル)シアノアクリレート、2−エチルヘキシル(β,β −ジフェニル)シアノアクリレートなどが挙げられる。ニッケル系紫外線吸収剤の具体的な例としては、[2,2−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−n−オクチルアミンニッケル塩、[2,2−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル塩、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどが挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤の具体的な例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどが挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましく、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5’−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(CAS No.73936−91−1)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(2−オクチロキシカルボニル)エチルフェニル)ベンゾトリアゾール(CAS No.127519−17−9)が好ましい。
【0062】
紫外線遮断層に使用できる紫外線反射剤とは280〜400nmのいずれか一部の波長の光を反射及び/または散乱するものである。たとえば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウムのいずれかもしくはこれらの混合物である。
紫外線吸収剤と紫外線反射剤は単体で使用してもよいし、それぞれを組み合わせて使用してもよい。
紫外線遮断層は、少なくとも一種類以上の紫外線吸収剤を含んでいることが望ましい。紫外線遮断層を、紫外線吸収剤を含まず紫外線反射剤から形成した場合、本発明の電子写真記録用紙の印刷物を屋外で使用した際に、電子写真記録用紙自体の変色は軽減するが、記録用紙上のトナーや塗工層に照射される紫外線の量が増大し、トナーの変色や劣化が発生しやすくなり、記録した画像の鮮明性の低下や画像の密着性の低下が発生しやすくなる。
【0063】
紫外線遮断層中の紫外線吸収剤の含有量は好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲である。紫外線吸収剤の量が1重量%以上であれば、電子写真用紙自体の変色抑制効果により、鮮明な記録画像が得られやすくなる傾向にある。50重量%以下であれば紫外線遮断層の耐水性や耐溶剤性が得られやすくなる傾向にある。
紫外線遮断層は単層であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。また、紙材と合成樹脂フィルムを貼着する接着剤層に紫外線吸収剤を加えて紫外線吸収層として使用してもよい。
接着剤層に紫外線吸収剤を加えて紫外線吸収層を兼ねるものとするのであれば、上述の接着剤層成分に、上述の紫外線防止剤の上記で規定する量を配合して用いればよい。
【0064】
紫外線遮断層を接着剤層とは別に形成する方法としては、紙材および/または合成樹脂フィルムとの共押出や、紙材および/または合成樹脂フィルムへの溶融ラミネート、紙材および/または合成樹脂フィルムへの塗工などが挙げられる。これらの中でも、公知のバインダー成分に前記紫外線吸収剤および/または紫外線反射剤を混合した塗料を作成してこれを紙材または合成樹脂フィルムへ塗工し、塗膜として設ける方法が好ましい。公知のバインダー成分の具体的な例としては、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、ポリビニルヒドリン、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール、ポリアクリル酸、エステルウレタン樹脂、エーテルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリアクリル酸、エステルウレタン樹脂、エーテルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂が好ましい。
【0065】
紫外線遮断層の肉厚は好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.3〜25μm、更に好ましくは0.5〜20μmの範囲である。肉厚が0.1μm以上であれば電子写真用紙自体の変色を防ぎ、記録した画像鮮明性の低下を防ぎやすくなる傾向がある。30μm以下であれば、厚みが均一な電子写真記録用紙を製造しやすいため、均一な記録画像が得られやすくなる傾向がある。
従って、紫外線遮断層も含めた支持体の層構成としては、合成樹脂フィルム/紫外線遮断層(接着剤層を兼ねる)/紙材、合成樹脂フィルム/紫外線遮断層/接着剤層/紙材、合成樹脂フィルム/接着剤層/紫外線遮断層/紙材、合成樹脂フィルム/接着剤層/紫外線遮断層/接着剤層/紙材、を含む様態を取りうる。
本発明の電子写真記録用紙に用いうる紫外線遮断層は、用途上、無色透明、または白色であることが好ましい。
【0066】
[保護層]
本発明の電子写真記録用紙の一態様として、紙材の片面(表面)に合成樹脂フィルムを積層し、さらにこの合成樹脂フィルム上にトナー受容層を設け、紙材のもう一方の面(裏面)には合成樹脂フィルムからなる保護層を設けることも可能である。
保護層に用いられる合成樹脂フィルムとしては、肉厚が通常5〜100μm、好ましくは12〜50μmの耐水性、絶縁性を有する合成樹脂フィルムを適用する。保護層に使用する合成樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)等の炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のα−オレフィン2〜5種の共重合体等のオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートや同モノマーに他の成分を共重合した共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;アタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等のポリスチレン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド等、合成樹脂フィルムの合成樹脂フィルムと略同等のものを使用することができる。さらに、それら2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
電子写真記録用紙を構成するには、前記接着剤を使用する場合は、紙材である紙材の両面に接着剤を塗工し、次いで、表面に合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムを、裏面に保護層である合成樹脂フィルムを重ね合わせ、圧着ロールで加圧接着するか、あるいは保護層である合成樹脂フィルムの裏面に接着剤を塗工し、次いで、紙材である紙材を重ね合わせ、圧着ロールで加圧接着すればよい。前記ホットメルト接着剤を使用する場合は、紙材である紙材の表面および裏面にダイより溶融フィルム状に押し出してラミネートし、表面に合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムを、裏面に保護層である合成樹脂フィルムを重ね合わせ、圧着ロールで加圧接着すればよい。
【0068】
[粘着剤層]
本発明の電子写真記録用紙は、その最外層の一方の面に粘着剤層を形成したものでもよい。粘着剤層の種類、厚み(塗工量)は、被着体の種類や使用される環境、接着の強度等により種々選択が可能である。粘着剤層は、一般に用いられる溶剤系または水系の粘着剤を塗工、乾燥して形成することができる。粘着剤としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系等の合成高分子粘着剤を使用することができ、有機溶剤に溶解した溶液や、水系溶媒に分散したディスパージョン、エマルジョン等の形態で使用することができる。また、電子写真記録用紙の不透明度向上のため、粘着剤にはチタンホワイト等の顔料を含有させてもよい。粘着剤層は、溶液状態で剥離紙や工程紙のシリコーン処理面上に塗工して形成し、これを電子写真記録用紙上に転写して設けることができ、あるいは電子写真記録用紙に直接に塗工して形成することもできる。粘着剤の塗工は、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、リップコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等により行われる。さらに必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、粘着剤層が形成される。粘着剤層の厚みは、ラベルの使用目的に応じて種々選択することができるが、通常2〜30μmであり、好ましくは5〜20μmである。
【0069】
[剥離紙]
本発明の電子写真記録用紙は、粘着剤層の表面にさらに剥離紙を有してもよい。電子写真記録時には剥離紙を有し、被着体への貼着時には剥離紙を除去して使用すれば不具合は無い。剥離紙としては、通常一般的なものを使用することができる。例えば、上質紙やクラフト紙をそのまままたはカレンダー処理、樹脂塗工若しくはフィルムラミネートしたもの、グラシン紙、コート紙、プラスチックフィルム等にシリコーン処理を施したものが使用できる。剥離紙は、電子写真記録用紙に貼付使用するに際して、粘着剤層との剥離性を良好にするため、粘着剤層に接触する面にシリコーン処理を施したものを用いるのが一般的である。
【0070】
[電子写真記録用紙の物性]
(表面固有抵抗値)
本発明の電子写真記録用紙の表面固有抵抗値は、以下の方法により測定した値である。すなわち、本発明の電子写真記録用紙を10cm角の大きさに切り抜き、これを温度25℃、相対湿度20%の雰囲気下で2時間以上状態調整して測定サンプルとする。その後、同環境下で測定サンプルのトナー受容層面を、JIS−K−6911に記載の電極を用いて、絶縁計(東亜電波工業(株)社製、型番:DSM−8103)にて、表面固有抵抗値(Ω)の測定を行う。
本発明の電子写真記録用紙のトナー受容層側で測定される表面固有抵抗値は、湿度25℃、相対湿度20%の環境下において、1×107〜9×1012Ωの範囲であり、1×108〜9×1012Ωの範囲であることが好ましい。表面固有抵抗値が1×107未満であると、電子写真記録装置内部で記録用紙がアース等に触れた場合に、トナーの異常転写が発生したり、一度転写したトナーが流れる現象が発生したりして、鮮明な画像が得られない場合がある。9×1012Ωを超えると帯電防止効果が不十分となり、印刷後に排出された記録用紙同士の張り付きが発生してしまう。また、本発明では電子写真記録装置での排出直後の帯電防止性能を把握するために、表面固有抵抗値の測定を極めて低湿度下の厳しい環境にて実施しているが、通常、表面固有抵抗値の測定に用いられる温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した場合でもこの範囲内であることが望ましい。
【0071】
(静電容量)
本発明の電子写真記録用紙は、単位電極面積当たりの静電容量が10〜300pF/cm2であることが好ましく、12〜250pF/cm2であることがより好ましく、15〜200pF/cm2であることがさらに好ましい。電子写真記録用紙の静電容量が10pF/cm2以上であれば、トナーの転写率を高めて、実用的な印字濃度が得られやすくなる傾向にある。電子写真記録用紙の静電容量が300pF/cm2以下であれば、鮮明で階調がある記録画像が得られやすくなる傾向がある。すなわち、静電容量が300pF/cm2以上であれば、トナーの電荷が安定せずにヒートロールで熱定着される前にトナーが飛散してしまって鮮明な画像が得られなくなる問題や、更には飛散トナーの再付着により用紙が汚れるか、過剰なトナーが転写してしまって諧調の無い画像となる問題が生じにくくなる傾向がある。
電子写真記録用紙の静電容量が好ましい範囲であれば、記録用紙が十分に帯電して静電荷を保持することができ、露光後に感光体ドラムに付着しているトナーを効率的に転移、付着させることができ、印刷物の濃度、色調、階調等の良好な記録品質や、トナーの定着性が得られやすい。
【0072】
静電容量には、並列等価容量或いは直列等価容量がある。一般的に等価容量の測定は、測定周波数範囲により測定法が選定される。測定周波数が10Hz以下の場合には超低周波ブリッジを用い、10Hz〜3MHzの場合には変成器ブリッジを用い、1MHzを越える場合には、並列T型ブリッジ、高周波シェリングブリッジ、Qメーター、共振法、定在波法、空洞共振法を用いる。また、測定周波数の交流信号に対して、回路部品に対する電圧・電流ベクトルを測定し、この値から静電容量を算出するLCRメーター等でも測定できる。
【0073】
記録用紙の静電容量を測定する測定装置としては、平行に配設した平板状印可電極と平板状ガード電極との間に試料を一定圧力で挟み込み、5V程度の電圧が印加でき、測定周波数が任意に選定できる測定装置が好ましい。このような測定機によれば、周波数を変更することにより、試料の周波数依存性が把握でき、適性使用範囲の指標にできる。試料は、できるだけ厚みが均一で表面が平滑なものが好ましい。表面状態が悪いと、試料と電極との間に空隙(空気層)が形成され、測定値に大きな誤差を与える。この場合、試料と電極との電気的接触を完全にするために、銀導電性塗料を塗工するか、真空蒸着することが好ましい。測定装置の具体例としては、Agilent Technologies社の「4192A LF IMPEDANCE ANALYZER」、横河電機(株)社の「LCRメーター4274A」、日置電機(株)社の「HIOKI 3522 LCRハイテスター」などが挙げられる。
本発明の電子写真記録用紙の静電容量の測定には、Agilent Technologies社の「4192A LF IMPEDANCE ANALYZER」を使用し、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で、直径38mmの主電極と直径56mmの対電極との間に電極直径より大きい試料を挟み込み、5Vの電圧を印加し、10Hz〜1MHzの範囲の周波数で測定し、周波数300Hzの測定値を代表値とした。
【0074】
《電子写真記録用紙への記録》
[記録装置]
本発明の電子写真記録用紙は、複写機、レーザプリンタ等の電子写真記録装置によって良好なカラー記録が可能である。電子写真カラー記録方式には、(1)1色ずつ中間転写し、複数色を中間転写体に転写後、用紙に転写現像する中間転写方式、(2)2つ以上の感光体を使用し、1色ずつ複数色を用紙に転写現像するタンデム方式、(3)2つ以上の感光体を使用し、1色ずつ複数色を中間転写体に転写後、用紙に転写現像するタンデム+転写方式の3種類がある。本発明では特に(2)、(3)を総称してタンデム方式と呼ぶ。本発明の電子写真記録用紙は、(1)の中間転写方式にも使用できるが、(2)、(3)のタンデム方式への使用が好適である。(1)の方式にあっては、小型の電子写真複写機等の場合に、電子写真記録用紙が装置内で搬送中にしごかれて使用が困難なことがある。(2)、(3)のタンデム方式は高速化に対応したものであり、装置の構造上、電子写真記録用紙が搬送中にしごかれることが少なく好ましい。
【0075】
本発明の電子写真記録用紙には、上記記録装置を用いて記録する前に、通常の印刷、例えば油性オフセット印刷、UVオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等を施すこともできる。必要により、管理用のバーコードをこれらの印刷や、熱転写方式、電子写真方式により印字してもよい。本発明の電子写真記録用紙には、販売促進、視認性を高めるために、合成樹脂フィルムの裏面(トナー受容層と反対面)に、基材層と積層する前に、全面印刷または部分印刷を施してもよい。同様に、紙材の合成樹脂フィルムを積層する面に、合成樹脂フィルムを積層する前に、全面印刷または部分印刷を施してもよい。これらの印刷は合成樹脂フィルムを介して見たときに正規の情報となるように施すことが好ましい。
【0076】
[記録物]
本発明の電子写真記録用紙を使用した記録物としては、POPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、カード(プライスカード、ポイントカード、メンバーズカード、各種会員証、学生証、免許証、社員証、出入許可証、組合証、身分証明証、学生受講カード、図書カード、診察券、管理カード、駐車許可証、スキー回数券、CD、MDタイトルカード、CD、MDインデックスカード、フォトカード等)、パネル、プレート(金属板の代替え)、ブロマイド、保存書類(ワープロ文書、各種名簿、鑑定書、認定書、重要書類、賞状等)、図鑑、図面(建築図面、土木現場画面等)、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、定期券、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内、お菓子・食品等)、園芸用POP(吊下げラベル、差しラベル等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、回覧板、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、はがき、グリーティングカード、チラシ、絵本・紙芝居、携帯用時刻表、アルバム絵日記、紙工作(ペーパークラフト)、コピー原稿、うちわ、メガホン、マウスパッド、しおり、ペット用トイレ、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター、植木鉢、ラミネート不要の印刷物、ラベルライターの代替え印刷物、粘着ラベル、タグ(航空タグ、ICタグ、トリアージタグ)等を例示することができ、何れも利用可能である。特に屋外使用を前提とした用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下に、調製例、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0078】
[バインダー樹脂の調製例1]
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)15重量部、メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)50重量部、エチルアクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)35重量部およびトルエン100重量部を、攪拌機、環流冷却管および温度計を装着した三つ口フラスコに仕込み、窒素置換後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)0.6重量部を開始剤として加え、80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂の50重量%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100重量部に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(新第一塩ビ(株)製、商品名:ZEST C150ML)の20重量%メチルエチルケトン溶液を40重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートHL)75重量%酢酸エチル溶液を20重量部加え、さらにこの混合物にトルエンとメチルエチルケトンを1:1で混合した溶媒を添加して固形分を20重量%に調整し、バインダー樹脂溶液を得た。
【0079】
[バインダー樹脂の調製例2]
ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)]((株)クラレ製、商品名:クラレポリオールP−2010)100重量部、イソホロンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部を、攪拌機、環流冷却管および温度計を装着した三つ口フラスコに仕込み、窒素置換後、100℃で8時間重合させた。メチルエチルケトン210重量部を攪拌しながら少しずつ加え40℃に冷却しウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶媒を得た。次いで3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(和光純薬工業(株)製、試薬)8重量部、メチルエチルケトン100重量部、2−プロパノール50重量部の混合液を加え、40℃で4時間反応した後、メチルエチルケトンを添加して固形分を20重量%に調整し、バインダー樹脂溶液を得た。
【0080】
[ポリマー帯電防止剤の調製例1]
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE−350)100重量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部およびメチルエチルケトン400重量部を、攪拌機、コンデンサー、窒素導入管、温度計を装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、n−ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、メチルエチルケトンを添加して固形分を20重量%に調整し、重量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.8重量%のポリマー帯電防止剤溶液を得た。
【0081】
[ポリマー帯電防止剤の調製例2]
重量平均分子量1000のポリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製、試薬)60重量部、重量平均分子量600のポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製、試薬)40重量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)15重量部およびメチルエチルケトン400重量部を、攪拌機、コンデンサー、窒素導入管、温度計を装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、80℃で10時間反応させた。これにイソホロンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、試薬)30重量部および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ(株)製、商品名:DBU)0.5重量部を加え、80℃で4時間ウレタン化反応を行い、これにさらにメタクリル酸(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)0.2重量部を加えて60℃で4時間エステル反応を行った。これにさらにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)10重量部、n−ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)2重量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、メチルエチルケトンを添加して固形分を20重量%に調整し、重量平均分子量約10万、固形分中のリチウム濃度0.6重量%のポリマー帯電防止剤溶液を得た。
【0082】
[支持体の製造例1]
肉厚25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラー、融点:260℃)を合成樹脂フィルムとし、これにポリエーテルウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製 、商品名:TM−317)60重量部、ポリイソシアネート系硬化剤(東洋モートン(株)製、商品名:CAT−11B)40重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:Tinuvin−384−2)5重量部からなる接着剤塗料を乾燥固形分が4g/m2となるように塗工し、60℃で1分間乾燥させ、紫外線遮断層を兼ねた接着剤層を設けた。これを、耐水性を有する紙材として用いる肉厚170μmの印画紙用OTP原紙(王子製紙(株)製、コッブ法吸水度:24.8g/m2、坪量:175g/m2)の表面および裏面に重ねあわせ、圧着し、肉厚220μmの5層構造(PETフィルム/接着剤層/印画紙用OTP原紙/接着剤層/PETフィルム)からなる耐水性を有する支持体を得た。
【0083】
[支持体の製造例2]
肉厚25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラー、融点:260℃)にポリエーテルウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製 、商品名:TM−317)60重量部、ポリイソシアネート系硬化剤(東洋モートン(株)製、商品名:CAT−11B)40重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:Tinuvin−384−2)5重量部からなる接着剤塗料を乾燥固形分が4g/m2となるように塗工し、60℃で1分間乾燥させ、肉厚80μmの合成紙((株)ユポ・コーポレーション製、商品名:KPK−80、コッブ法吸水度:1g/m2、坪量:82g/m2)の表面および裏面に重ねあわせ、圧着し、肉厚135μmの5層構造(PETフィルム/接着剤層/合成紙/接着剤層/PETフィルム)からなる耐水性を有する支持体を得た。
【0084】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
実施例1〜4と比較例1〜2の各電子写真記録用紙を、上記の調製例、製造例、および表1の材料を、表2の配合にて用いて、次の手順にて作成した。
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに攪拌しながら、計量した各顔料粒子を少しずつ加え、固形分濃度が20重量%になるように調整した後、カウレスミキサーの回転数を上げて30分間攪拌し顔料分散液を作成した。次いで、カウレスミキサーの回転数を落とし、この分散液にバインダー樹脂溶液、ポリマー帯電防止剤溶液、硬化剤(酢酸エチルにて固形分20重量%に希釈したもの)の順に添加し、そのまま20分間攪拌した後、100メッシュのフィルターを通し粗粒径物の除去を行い、トナー受容層用の塗工液を調製した。
同塗工液を支持体の片面にバーコーターを用いて所定の塗工量(乾燥固形分量)となるように塗工し、70℃に設定した乾燥機にて1分間乾燥して、各実施例および比較例の電子写真記録用紙を得た。
なお、実施例3以外は表裏とも同じ手順で塗工し、両面に同じトナー定着層を持った電子写真記録用紙とした。
【0085】
[試験例]
実施例1〜4と比較例1〜2の各電子写真記録用紙について、以下の試験を行った。結果は、表2に示すとおりであった。なお、いずれの電子写真記録用紙も、記録直後の、トナー受容層におけるトナーの定着性は良好であった。
【0086】
(記録品質の評価)
カラーレーザプリンタ(カシオ(株)製、商品名:N4−612II)を使用し、上記実施例、比較例で得た電子写真記録用紙のトナー受容層にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色カラートナーによるテスト画像記録を実施し、濃度、色調、階調等の記録品質を、以下の評価基準によって目視判定した。
○ :濃度、色調、階調いずれも良好である。
△ :記録濃度がやや低い。
× :濃度、色調、階調のいずれかが劣り、使用に耐えない。
【0087】
(張り付きの評価)
カラーレーザプリンタ(カシオ(株)製、商品名:N4−612II)を使用し、上記実施例、比較例で得た電子写真記録用紙のトナー受容層に連続21枚のテスト画像印刷を行い、水平に重ねた状態で印刷1分後に上から11枚目のシートが手で引き出せるかを以下の評価基準で判定した。
○ :手で引き出すことが可能
× :用紙同士の張り付きがひどく手では引き出せない
【0088】
(耐水性の評価)
上記の記録品質の評価にて記録された記録用紙を、バットに充満させた水(イオン交換水)の中に浮かない様に浸漬し、24時間水に浸漬後に記録画像をコインで強く擦り以下の評価基準によって目視判定した。
○ :記録画像に変化なし。
× :記録画像に剥れが生じる。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
表2に示す通り、本発明の電子写真記録用紙は、濃度、色調、諧調性などの記録品質がよく、連続印刷した時に帯電による用紙同士の張り付きの発生がなく、さらに耐水性にも優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の電子写真記録用紙の一態様の一部拡大断面図である。
【図2】本発明の電子写真記録用紙の他の態様の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 電子写真記録用紙
2 トナー受容層
3 支持体
4 紙材
5 合成樹脂フィルム
6 接着剤層
7 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性を有する支持体の少なくとも片面に脂溶性のポリマー帯電防止剤を含有するトナー受容層を設けた電子写真記録用紙であって、前記トナー受容層の温度25℃、相対湿度20%における表面固有抵抗値が1×107〜9×1012Ωである電子写真記録用紙。
【請求項2】
前記ポリマー帯電防止剤が、アルキレンオキシド基および/または水酸基と、アルカリ金属イオンとを含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真記録用紙。
【請求項3】
前記ポリマー帯電防止剤が下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真記録用紙。
【化1】

(式中、R1、R2は各々独立に水素原子またはメチル基を表し、R3は水素原子、塩素原子またはメチル基を表し、R4は炭素数1〜30のアルキル基を表し、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
Mはアルカリ金属を表し、mは0〜300の整数を表し、nは1〜300の整数を表し、pは1〜100の整数を表す。)
【請求項4】
前記トナー受容層がアルカリ金属イオンを0.01〜1重量%含有することを特徴とする請求項2または3に記載の電子写真記録用紙。
【請求項5】
前記アルカリ金属イオンがリチウムイオンであることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項6】
前記トナー受容層がポリマー帯電防止剤を1〜50重量%、バインダー樹脂を10〜99重量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項7】
前記バインダー樹脂が、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリアクリルウレタン、アクリリル酸エステル共重合体、またはこれらの混合物からなることを特徴とする請求項6に記載の電子写真記録用紙。
【請求項8】
前記トナー受容層が、前記ポリマー帯電防止剤と前記バインダー樹脂を含有する有機溶媒溶液塗料を前記支持体の表面に塗工し、これを乾燥して皮膜化することにより形成されることを特徴とする請求項6または7に記載の電子写真記録用紙。
【請求項9】
前記支持体が、耐水性を有する紙材の少なくとも片面に合成樹脂フィルムを積層してなることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項10】
前記支持体が、耐水性を有する紙材の少なくとも片面に、紫外線遮断層と合成樹脂フィルムをこの順に積層してなることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項11】
前記耐水性を有する紙材が、JIS−P−8140:1998に基づくコッブ法による吸水度が0〜50g/m2の紙材であることを特徴とする請求項9または10に記載の電子写真記録用紙。
【請求項12】
前記耐水性を有する紙材が、ジアゾ感光紙原紙、写真印画紙原紙、樹脂含浸紙、樹脂塗工紙、硫酸紙、擬硫酸紙、耐水紙、耐油紙、および防水紙からなる群より選択される加工紙であることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項13】
前記耐水性を有する紙材が、無機および/または有機微細粉末を含有するポリオレフィン系フィルムであることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項14】
前記合成樹脂フィルムが、融点が180〜300℃の熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項9〜13の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項15】
前記合成樹脂フィルムに用いる熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂またはポリ(4−メチルペンタ−1−エン)であることを特徴とする請求項14に記載の電子写真記録用紙。
【請求項16】
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項15に記載の電子写真記録用紙。
【請求項17】
前記紫外線遮断層が、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系、およびトリアジン系からなる郡より選択される少なくとも1種類以上の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項18】
前記紫外線遮断層に用いる紫外線吸収剤の含有量が、該層組成中の1〜50重量%であることを特徴とする請求項17に記載の電子写真記録用紙。
【請求項19】
電子写真記録用紙の静電容量が10〜300pF/cm2であることを特徴とする請求項1〜18の何れか一項に記載の電子写真記録用紙。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか一項に記載の電子写真記録用紙の最外層の一方の面に粘着剤層を有する電子写真記録用紙。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか一項に記載の電子写真記録用紙を使用した記録物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−299017(P2008−299017A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144097(P2007−144097)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】