説明

電子写真転写用紙

【課題】
本発明は、複写機等で加熱されてもヒートカールの発生を抑制できる電子写真転写用紙を提供することを目的とする。
【解決手段】
木材パルプを主体とした電子写真転写用紙であって、JISP8220に準拠して該電子写真転写用紙を離解し、離解したパルプをワイヤーメッシュ上で吸引ろ過した後のパルプシート水分が86.0%以下であることを特徴とする電子写真転写用紙。さらに、離解したパルプの数平均繊維長が0.37mm以上0.43mm以下であり、密度が0.70g/cm以下、透気抵抗度が25秒以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真転写用紙に関する。電子写真とは、光電導性材料の表面を均一に帯電させ、露光して生じた静電潜像を着色微粒子などで物理的に現像し、支持体上に可視像を作る写真のことであり、電子写真転写用紙とは、可視像が形成される支持体として使用される用紙のことである。
本発明は、かかる電子写真の支持体に適した電子写真転写用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は事務用複写機等に広く応用されており、かかる事務用複写機等による可視像の転写の際には、着色微粒子に該当するトナーを転写用紙の紙面に付着させた後、圧力ロールと加熱ロールの間で熱圧力定着を行うことにより転写用紙にトナーが固定される。熱圧力定着の際転写用紙が加熱されるため、転写後の転写用紙にヒートカールや波打ちの現象が生じるのであるが、ヒートカールや波打ちの程度が大きくなると外観が悪くなるとともに事務用複写機等の内部において紙の走行トラブルが発生し易くなる。
【0003】
かかるヒートカールや波打ちを防止するために、従来はチップの樹種、パルプの繊維長(叩解度)、繊維配向性、紙水分等の調整が行われていた。しかし、近年では転写用紙にも古紙が使用されており、古紙配合率の高い紙になると、樹種や叩解度を所望の状態に調整することが難しく、ヒートカールや波打ちを抑制することが困難となっている。
【0004】
近年、ヒートカールを防止する技術として、以下のような技術が開発されている(例えば、特許文献1,2)。
特許文献1の技術は、表面サイズプレスの方式としてゲートロールコーター方式(GRC方式)を採用し、アルデヒド基を生成官能基とする酸化澱粉を糊液とする表面サイズプレス液を紙の表面に塗布することによってヒートカールを防ぐ技術であり、表面サイズプレス液を上記のごときものとすること、表面サイズプレス液の濃度を10〜14重量%に調整したこと、および、メタリングロール回転比を60〜80%の範囲で調節することに特徴を有するものである。
特許文献2の技術は、紙を表層と裏層との2層に均等又はほぼ均等に分割したときに、各層間の離解濾水度差が30ml以下となるように調整したこと、に特徴を有する技術である。
【0005】
特許文献1の技術は塗工する澱粉液の紙層内部への浸透を促進することにより厚さ方向の紙層を均一化すること、特許文献2の技術は濾水度の表裏差を少なくすること、すなわち表裏の紙質を均一化することに主眼をおいてヒートカールを防止しようとするものである。
【0006】
また、離解したパルプの特性に着目して、電子写真機器等でのカールやシワの発生を防止するという提案がなされている。特許文献3、特許文献4では、離解したパルプの保水度を特定範囲にすることが提案されている。しかし、十分にヒートカールや波打ちを防止することはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−348798号公報
【特許文献2】特許3370737号公報
【特許文献3】特開平9−119091号公報
【特許文献4】特開2005−186573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、複写機で加熱されてもヒートカールや波打ちの発生を抑制できる電子写真転写用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明は、木材パルプを主体とした電子写真転写用紙であって、JISP8220に準拠して該電子写真転写用紙を離解し、離解したパルプをワイヤーメッシュ上で吸引ろ過した後のパルプシート水分が86.0%以下であることを特徴とする電子写真転写用紙である。
第2発明は、第1発明において、離解したパルプの数平均繊維長が0.37mm以上0.43mm以下であることを特徴とする電子写真転写用紙である。
第3発明は、第1発明または第2発明において、密度が0.70g/cm以下、透気抵抗度が25秒以下であることを特徴とする電子写真転写用紙である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真転写用紙は、抄紙機のドライヤーで除去される水分が少なく、ドライヤーでの紙の収縮が小さくなる。すると、紙の歪み・くせを小さくすることができるから、複写機で加熱されたときのヒートカールや波打ちの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、電子写真転写用紙について、複写機で加熱されたときのヒートカールや波打ちの発生を防止する方法について、鋭意研究した結果、本発明を完成させた。
電子写真転写用紙におけるヒートカールは、放湿により紙が収縮し、紙の表裏に収縮差がある場合に顕著となる。そこで、ヒートカールの発生を防止する対策としては、紙の収縮を小さくする方法と、表裏差を極力小さくする方法があるが、本発明者らは、製造時の抄紙機のドライヤーで除去される水分量がヒートカールや波打ちの発生に影響していると推定し、パルプ懸濁液を特定の方法によりろ過して測定したパルプシート水分に着目した。しかし、原料のパルプで測定したパルプシート水分は紙の製造工程で変化することがあるためか、本発明が解決しようとする課題に関連する紙の特性との関係が明確にならなかった。そこで、製造した紙を離解したパルプを前記方法により、パルプシート水分を測定したところ、本発明が解決しようとするヒートカールや波打ちとの関係が明らかとなり、本発明を完成することができた。
【0012】
本発明の電子写真転写用紙は、木材パルプを主体とした電子写真転写用紙であって、JISP8220に準拠して該電子写真転写用紙を離解し、離解したパルプをワイヤーメッシュ上で吸引ろ過した後のパルプシート水分が86.0%以下であることを特徴とする。86.0%より高いと紙の伸縮が大きくなり、ヒートカールが大きくなり、特に波打ちが急激に大きくなる。
【0013】
本発明で用いる、パルプシート水分の測定手順を次に挙げる。なお、この測定方法は抄紙機のワイヤーでの脱水を想定したものである。
(1)JISP8220:1998 パルプ−離解方法 に準じ、電子写真転写用紙を離解する。離解条件は、採取試料の固形分絶乾30g、離解前の浸漬時間4時間、離解時の液量2000ml、軸の回転数30000回とする。
(2)パルプ濃度1.0±0.1%に調製した試料500mlを作製し、試料の温度を20.0±0.5℃にする。
(3)ワイヤーメッシュをセットしたブフナ漏斗(直径150mm)へ試料を移し、ただちに真空ポンプによる吸引を開始する。(ワイヤーメッシュ:日本フィルコン株式会社製、2.5重織、品名LL40E、真空ポンプの吸引圧力:リークバルブにより試料を吸引しない状態で −0.012MPaに設定しておく)
(4)ワイヤーメッシュ上の水が引き、パルプシートが白くなった後、5秒間吸引を続け、吸引を止める。
(5)ワイヤーメッシュからパルプシートをはがして、JISP8127:1998 紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法 に準じ、次式によりパルプシート水分を求める。
X=(m1−m2)/m1×100
ここに、X:パルプシート水分(%)、m1:乾燥前のパルプシートの質量、
m2:乾燥後のパルプシートの質量
【0014】
前記測定方法について、さらに詳しく説明する。
(試料の離解)
本発明の電子写真転写用紙におけるパルプシート水分は、JISP8220に準拠した離解方法により離解したパルプ懸濁液を用いて測定する。
パルプ懸濁液を作製する際、離解に要する時間は、電子写真転写用紙を構成する成分によって異なることから、測定しようとする電子写真転写用紙によって、適宜、調整する。電子写真転写用紙を離解する際には、電子写真転写用紙を、4時間水に浸漬した後離解し、離解されているかどうかは、目視により繊維のフロック状態から判断して、離解が不十分であれば、離解されるまで離解時間(離解機の回転数)を追加する。ただし、試験結果に影響を与えるので、離解時間は過剰にならないようにする。
【0015】
(試料の測定濃度)
試料の測定濃度は、一般的に抄紙機のワイヤーに供給される濃度に近い1.0±0.1%としている。
(試料の濃度調製)
試料の濃度調製は、離解したパルプの濃度が既知であるので、それから、1.0±0.1%まで希釈すればよい。希釈には工業用水を用いる。
(試料の温度)
試料の温度は測定結果に影響を与えるので一定にする。
(吸引圧力)
吸引圧力は、測定を開始する前に予めリークバルブにより、一定値に設定しておく。吸引圧力は、抄紙機のワイヤーパートのサクションボックスの吸引圧力を参考に設定するのが好ましい。なお、吸引圧力は−0.08MPa〜−0.20MPaの範囲ではシート水分にほとんど影響を与えないことを確認している。
(測定回数)
測定回数は3回以上とし、結果はその平均値とする。
【0016】
以下、本発明の電子写真転写用紙について、詳細に説明する。
(パルプ繊維)
本発明の電子写真転写用紙は、リグノセルロース物質を化学的に処理して製造されたクラフトパルプを使用することができる。具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ等のほか、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して製造されたパルプも使用できる。
これらのパルプの漂白方法としては、有機塩素化合物の発生可能性を低くできるので、元素状の塩素を使用しない漂白方法(Elementally
Chlorine Free;ECF)や塩素系薬品を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine
Free;TCF)で処理されたものであることが好ましい。
【0017】
また、木材やチップを機械的にパルプ化した機械パルプを使用することができる。具体的にはグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。
【0018】
本発明の電子写真転写用紙は、これらのバージンパルプのみを使用してもよいが、古紙パルプを使用するのが好ましい。古紙パルプはバージンパルプよりもパルプシート水分を低くできるし、資源の有効利用という点からも、高い配合率とするのが好ましく、その配合率は50%以上、さらには80%以上とするのが好ましい。古紙パルプの原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合することができる。これらは離解のみ、あるいは、必要に応じて脱墨処理して使用される。
【0019】
上述したパルプはいずれもまたどのような組み合わせでも構わないが、好ましくは、濾水度が200ml以上500ml以下に調整されて用いられる。
また、使用するバージンパルプとしては、繊維長が短く、壁厚の厚い広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が望ましい。針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を混合することも可能であるが、NBKPの配合率が高過ぎると地合いが悪くなり波打ちが発生するので、全パルプ量の10重量%以下にすることがよい。
ここで、本発明の電子写真転写用紙は、離解したパルプの数平均繊維長が0.37mm以上0.43mm以下であることが望ましい。パルプの平均繊維長としては、重量平均繊維長がよく使用されるが、パルプシート水分は微細繊維によって強く影響されるので、微細繊維の量を敏感に測定できる数平均繊維長で評価した。数平均繊維長が0.37mmより小さいとヒートカールが発生し、抄紙機のワイヤーパートで脱水不良を起こすことがある。0.43mmより大きいとパルプシート水分が高くなり、波打ちを起こす。数平均繊維長は、使用するパルプの種類やパルプの叩解度によって大きく変わってくるが、抄紙機のワイヤーパートの脱水条件によっても影響される。すなわち、ワイヤーパートで比較的強く脱水すると微細繊維がワイヤーから抜けるので、数平均繊維長は大きくなるが、緩やかな脱水を行えば、微細繊維は抜けにくいので数平均繊維長は小さくなる。また、抄紙白水は微細繊維の割合が多く、抄紙白水の一部を系外へ除去すると数平均繊維長は大きくなる。
【0020】
(パルプシート水分の制御について)
本発明において、電子写真転写用紙のパルプシート水分は、使用するパルプの叩解度によって影響を受ける。針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプの場合、未叩解よりも、ある程度叩解を進めたほうが、パルプシート水分を低くすることができるが、過度の叩解はパルプシート水分を高くする。使用するパルプの叩解度は、パルプシート水分を加味するとともに、電子写真転写用紙の強度や平滑性が所望の値となるように最適値に設定する。
また、電子写真転写用紙のパルプシート水分は、パルプの種類によって影響を受ける。古紙パルプのほうが、バージンパルプよりも、パルプシート水分を低くすることができる。
【0021】
パルプシート水分を低下させるために、湿潤状態にあるパルプ繊維を乾燥することもできる。そのため、スラッシュパルプよりもドライパルプを使用するのが好ましい。ドライパルプとはスラッシュパルプ(パルプ製造工程から直接得られる湿潤状態のパルプ)を乾燥させ、水分を25〜3%程度までにしたものを指す。
また、パルプ繊維に対し、湿潤状態、乾燥状態、湿潤状態、乾燥状態のサイクルを複数回、繰り返すことにより、更にパルプシート水分を低下させることができる。
その他、電子写真転写用紙のパルプシート水分は、抄紙条件によっても影響を受け、特にワイヤーパートでの歩留りによっても変化するため、歩留り向上剤の添加条件にも影響される。
【0022】
本発明の電子写真転写用紙では、不透明度、白色度及び表面性を調整するため、填料を20質量%程度まで添加することができる。添加率が20質量%を超えると、紙粉の発生が顕著となり、電子写真方式の記録装置で紙づまりが発生したりする。填料は添加しなくてもかまわないが、裏移り防止や、白色度の確保のため添加したほうが好ましい。カール発生防止の観点からも、繊維間の伸縮挙動を低減する目的から、好ましくは3質量%から20質量%の添加率である。填料を添加することによってパルプシート水分を低くすることができる。
【0023】
使用できる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を利用することができる。
【0024】
ところで、本発明では抄紙後の紙を離解したパルプのパルプシート水分を特定しているが、抄紙する前のパルプで同様にパルプシート水分を測定することも考えられる。しかし、これら2者の数値は異なる。その理由は、抄紙機に供給された原料は、ワイヤーパートの脱水やプレスパートでの搾水時にパルプ繊維や填料などが抜けるため、供給されるパルプ原料と、紙となった原料では、物性や組成に違いが生じているためである。本発明は、紙を離解したパルプのパルプシート水分を特定することによって初めて本発明の課題であるヒートカールや波打ちの発生防止につながることを見出したものである。
【0025】
(内添サイズ剤)
本発明の電子写真転写用紙には、内添サイズ剤を使用することが好ましい。内添サイズ剤としては、ロジンサイズ剤などの酸性抄紙に使われるもの、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などの中性抄紙に用いられるサイズ剤が使用できるがこれらに限定されるものではない。
【0026】
(電子写真転写用紙の物性)
本発明の電子写真転写用紙の坪量は、好ましくは、60g/m2以上128g/m2以下である。より好ましくは、60g/m2以上100g/m2以下であり、更に好ましくは、60g/m2以上90g/m2以下である。坪量が高い程、カール、及び波打ちには有利であるが、坪量が128g/m2を超えると用紙の腰が強く、複写機での用紙走行性が低下することがある。60g/m2より低いと、ヒートカールや波打ちの発生を小さく抑えることが難しく、裏移りの点からも好ましくない。
本発明の電子写真転写用紙の密度は0.70g/cm以下とされていることが好ましい。これは従来の一般的な電子写真転写用紙よりも低い値であり、前述したパルプシート水分を特定することに加えて、このようにすることで、パルプ繊維同士の接点が少なくなり、パルプ繊維の伸縮が紙全体に伝播することが抑えられるのでヒートカールを抑えることが出来る。また、本発明の電子写真転写用紙のJISP8117に基づく透気抵抗度は25秒以下であることが好ましい。これも従来の一般的は電子写真転写用紙よりも低い値であり、前述したパルプシート水分を特定することに加えて、このようにすることで、電子写真転写用紙の放熱性が良くなり、コピー時に放湿される水分が少なくなるのでヒートカールの発生を抑えることが出来る。
【0027】
(表面塗布液を用いた表面処理)
本発明の電子写真転写用紙の表面には、表面の繊維のピッキング防止や、サイズ性向上などを目的として、表面サイズ剤を含む表面塗布液を付与する表面処理を行うことが好ましい。
表面サイズ剤としては、酸化でんぷん、リン酸エステル化でんぷん、自家製変性でんぷん、カチオン化でんぷん又は各種変性でんぷん、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ハイドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、又はそれらの誘導体等を単独或いは混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
サイズ度は、前述した内添サイズ剤、表面サイズ剤の添加量によって調整する。本発明の電子写真転写用紙のステキヒトサイズ度としては2秒以上60秒以下が好ましい。
【0028】
更に、表面塗布液には、用紙表面の導電性を付与する目的で、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル酸、アルキル硫酸エステル酸、スルホン酸ナトリウム塩、第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を、単独で又は混合して使用することができる。これらの導電剤の配合量を調整することで、電子写真転写用紙の表面電気抵抗率を制御することができる。
より具体的には、これらの導電剤の配合により、特に、電子写真方式を使用した複写機、プリンターに供した際の静電気による重送トラブルを防止することができる。このための表面電気抵抗率としては、1×108〜1×1012Ωの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1×109〜1×1011Ωである。なお、この表面電気抵抗率は、JISP8111に準拠した標準条件で調湿されたシート(電子写真転写用紙)を、JISP8111に規定された測定環境において、JISK6911に準拠した方法により測定することができる。
【0029】
この他に、表面塗布液には、紙力増強剤、保水剤、染料、pH調整剤等、通常の塗被紙塗料に配合される各種助剤などを適宜使用することが可能である。
【0030】
上記のような成分を含む表面塗布液は、サイズプレス、シムサイズ、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗布手段によって、電子写真転写用紙の表面に塗布することができる。その後、乾燥工程を経て、カレンダーで平滑化処理が施され、電子写真転写用紙を得ることができる。
【0031】
本発明の電子写真転写用紙を製造するには、上記のように、原料パルプのろ水度を好ましい範囲に調整し、かつ、原料パルプを選択して叩解処理し、パルプシート水分を特定することにより得られる。そして、表面塗布液を表面に塗布して乾燥し、カレンダー処理を行う。最後に、断裁、包装して電子写真転写用紙として仕上げられる。
【0032】
(実施例)
以下実施例により、本発明の実施形態を具体的に表わす。
(実施例1)
パルプ原料として、新聞古紙脱墨パルプ(250mlCSF)40重量%、上質古紙脱墨パルプ(400mlCSF)60重量%を用いて、長網オントップ型抄紙機を用いて電子写真転写用紙を抄紙した。抄紙薬品添加条件は次のとおりである。
(抄紙薬品添加条件)
以下の薬品をパルプ当たりの絶乾表示で添加した。なお、重量%は固形分または有効成分で表示している。
軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業株式会社製、商品名:タマパール121−6S)5重量%、硫酸バンド(丸住エンジニアリング株式会社製)3重量%、カチオン化澱粉(松谷化学工業株式会社製、商品名:アミロファックスT2200)0.5重量%、内添サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、商品名:SPN−811M)0.30重量%
(表面塗布液)
澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、商品名:王子エースA)に対し表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、商品名:ポリマロンM20)を5.0重量%加えた表面塗布液を、表裏合計で1.2g/mとなるようにゲートロールコーターで塗布した。
上記原紙をカレンダー処理し、坪量64.0g/m、リール水分5.0%の電子写真転写用紙を製造した。
【0033】
抄紙した電子写真転写用紙を離解し、パルプシート水分、数平均繊維長を測定した。また、電子写真転写用紙の密度、透気抵抗度、および、複写機でのヒートカール、波打ちの評価を行った。結果を表1に示す。各評価方法は下記のとおりである
(フリーネス)JISP8121:1995 パルプのろ水度試験方法 に基づくカナダ標準ろ水度
(パルプシート水分)パルプシート水分は以下手順により測定した。測定は同一サンプルで3回行い平均値をとった。
(1)JISP8220:1998 パルプ−離解方法 に準じ、電子写真転写用紙を工業用水で離解する。離解条件は、採取試料の固形分絶乾30g、離解前の浸漬時間4時間、離解時の液量2000ml、軸の回転数30000回とする。
(2)さらに工業用水で希釈して、パルプ濃度1.0±0.1%に調製した試料500mlを作製し、恒温槽を用いて試料の温度を20.0±0.5℃にする。
(3)ワイヤーメッシュをセットしたブフナ漏斗(直径150mm)へ試料を移し、ただちに真空ポンプによる吸引を開始する。(ワイヤーメッシュ:日本フィルコン株式会社製、2.5重織、品名LL40E、真空ポンプ:佐藤真空機械工業株式会社製 油回転真空ポンプ、SW100型、真空度0.1Pa、排気速度100リットル/分、吸引圧力はリークバルブにより、試料を吸引しない状態で −0.012MPaに設定しておく)
(4)ワイヤーメッシュ上の水が引き、パルプシートが白くなった後、5秒間吸引を続け、吸引を止める。
(5)ワイヤーメッシュからパルプシートをはがして、JISP8127:1998 紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法 に準じ、次式によりパルプシート水分を求める。測定は3回行い、結果はその平均値とした。
X=(m1−m2)/m1×100
ここに、X:パルプシート水分(%)、m1:乾燥前のパルプシートの質量、
m2:乾燥後のパルプシートの質量
(数平均繊維長)
パルプシート水分を測定した際と同様に、電子写真転写用紙を離解し、カヤニ繊維長測定装置(カヤニ社製 商品名:FS−200)により測定した。
(密度)
JISP8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に基づく密度
(透気抵抗度)
JISP8117:2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に基づく透気抵抗度
(カール、波打ち評価)
電子写真転写用紙100枚をコピーし、コピー後のカール、波打ちの状態を目視判定した。
カール評価
◎:カールしない
○:少しカールするが、実用上問題ない
×:かなりカールし場合によっては円筒状になる。
波打ち評価
◎:波打ちが発生していない
○:少し波打ちがあるが、実用上問題ない
×:かなり波打ちが見られる。
【0034】
(実施例2〜6、比較例1〜4)
表1に示した以外は、実施例1と同様に電子写真転写用紙を製造した。実施例1と同様に評価を行った結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示した結果において、離解パルプのパルプシート水分が86.0%以下である実施例1〜6の電子写真転写用紙は、カール評価と波打ち評価ともに良好であることがわかる。また、数平均繊維長が0.37mm以上0.43mm以下であり、密度が0.70g/cm以下、透気抵抗度が25秒以下の条件を満たしている。
【0037】
一方、比較例1は実施例2と比較すると、LBKPはドライパルプではなくスラッシュパルプを使用した例であり、パルプシート水分が86.1%と実施例2の85.5%より高くなっており、波打ち評価が悪くなっている。
比較例2は実施例4と比較すると、パルプ配合は同じであるが、LBKPのフリーネスが高いため、パルプシート水分が86.1%と実施例4の85.7%より高くなっており、波打ち評価が悪くなっている。
比較例3は上質古紙脱墨パルプのフリーネスが低いため、パルプシート水分が86.3%と高く、しかも数平均繊維長が小さいので、カール評価、波打ち評価ともに悪くなっている。
比較例4は、LBKPの配合率が40重量%と高く、フリーネスが470mlCSFと高いので、パルプシート水分が86.4%と高く、カール評価は良いが波打ち評価が悪くなっている。
【0038】
以上のように、本発明の電子写真転写用紙によれば、複写機等で加熱されてもヒートカールや波打ちの発生を抑制できる電子写真転写用紙を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプを主体とした電子写真転写用紙であって、JISP8220に準拠して該電子写真転写用紙を離解し、離解したパルプをワイヤーメッシュ上で吸引ろ過した後のパルプシート水分が86.0%以下であることを特徴とする電子写真転写用紙。
【請求項2】
離解したパルプの数平均繊維長が0.37mm以上0.43mm以下である請求項1記載の電子写真転写用紙。
【請求項3】
密度が0.70g/cm以下、透気抵抗度が25秒以下である請求項1または2記載の電子写真転写用紙。

【公開番号】特開2010−249888(P2010−249888A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96544(P2009−96544)
【出願日】平成21年4月11日(2009.4.11)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】