説明

電子制御ユニットの製造方法

【課題】防水防振材となるポッティング材で大気圧センサ全体が覆われてしまうのを防止しつつ、基板全体の防水防振機能を得ることができる、電子制御ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】センサ保護ケース7の天井壁9にあけた大気連通孔12を取り外し可能な閉塞体13で閉塞し、センサ保護ケース7の外側で基板ケース5内にポッティング材14を注入し、センサ保護ケース7内の空気圧で、センサ保護ケース7の周壁8と基板1との隙間からのポッティング材14の流入を抑制することにより、センサ保護ケース7内のポッティング材14の表面高さをセンサ保護ケース7外のポッティング材14の表面高さよりも低くなるようにして、大気圧センサ2全体をポッティング材14で覆うことなく、基板1全体をポッティング材14で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットの製造方法に関し、詳しくは、防水防振材となるポッティング材で大気圧センサ全体が覆われてしまうのを防止しつつ、基板全体の防水防振機能を得ることができる、電子制御ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子制御ユニットとして、基板に大気圧センサを含む電子部品を実装し、この基板を基板ケースに収容したものがある(例えば、特許文献1参照)。
この種の電子制御ユニットによれば、大気圧センサで検出された大気圧に基づいて燃料噴射量等の制御量の補正を行うことができる利点がある。
しかし、この従来技術では、大気圧センサに防湿材が進入しないようにすべく、基板の大気圧センサ側にはコーティング処理がなされていないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−148364号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 防水防振機能が得られない基板部分がある。
大気圧センサに防湿材が進入しないようにすべく、基板の大気圧センサ側にはコーティング処理がなされていないため、防水防振機能が得られない基板部分がある。
【0005】
本発明の課題は、防水防振材となるポッティング材で大気圧センサ全体が覆われてしまうのを防止しつつ、基板全体の防水防振機能を得ることができる電子制御ユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)(B)に例示するように、基板(1)に大気圧センサ(2)を含む電子部品(2)(3)(4)を実装し、この基板(1)を基板ケース(5)に収容した電子制御ユニット(6)を製造する電子制御ユニットの製造方法であって、
図2(A)(B)に例示するように、大気圧センサ(2)にセンサ保護ケース(7)を被せ、図3に例示するように、センサ保護ケース(7)の周壁(8)と天井壁(9)とで大気圧センサ(2)を周囲と上方から覆い、センサ保護ケース(7)を係止部(10)(11)で基板(1)に係止し、センサ保護ケース(7)の天井壁(9)にあけた大気連通孔(12)を取り外し可能な閉塞体(13)で閉塞し、センサ保護ケース(7)の外側で基板ケース(5)内にポッティング材(14)を注入し、係止部(10)(11)で基板(1)からのセンサ保護ケース(7)の浮上を止めながら、センサ保護ケース(7)内の空気圧で、センサ保護ケース(7)の周壁(8)と基板(1)との隙間からのポッティング材(14)の流入を抑制することにより、センサ保護ケース(7)内のポッティング材(14)の表面高さをセンサ保護ケース(7)外のポッティング材(14)の表面高さよりも低くなるようにして、大気圧センサ(2)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、基板(1)全体をポッティング材(14)で覆い、図4に例示するように、ポッティング材(14)を硬化させた後、閉塞体(13)を取り外して大気連通孔(12)を開通させる、ことを特徴とする電子制御ユニットの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 防水防振材となるポッティング材で大気圧センサ全体が覆われてしまうのを防止しつつ、基板全体の防水防振機能が得られる。
図3に例示するように、センサ保護ケース(7)内のポッティング材(14)の表面高さをセンサ保護ケース(7)外のポッティング材(14)の表面高さよりも低くなるようにして、大気圧センサ(2)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、基板(1)全体をポッティング材(14)で覆うので、防水防振材となるポッティング材(14)で大気圧センサ(2)全体が覆われてしまうのを防止しつつ、基板(1)全体の防水防振機能が得られる。
【0008】
《効果》 ポッティング材で大気圧センサ全体が覆われてしまうのを簡単な方法によって防止することができる。
図3に例示するように、センサ保護ケース(7)の天井壁(9)にあけた大気連通孔(12)を取り外し可能な閉塞体(13)で閉塞し、センサ保護ケース(7)内のポッティング材(14)の表面高さをセンサ保護ケース(7)外のポッティング材(14)の表面高さよりも低くなるようにして、大気圧センサ(2)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、基板(1)全体をポッティング材(14)で覆うので、ポッティング材(14)で大気圧センサ(2)全体が覆われてしまうのを簡単な方法によって防止することができる。
【0009】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 大気連通孔の閉塞と開通を簡単に行うことができる。
図3に例示するように、閉塞体(13)がセンサ保護ケース(7)の天井壁(9)に貼り付けた粘着テープ(20)であるため、閉塞体(13)となる燃料テープ(20)の貼着と引き剥がしにより、閉塞体(13)となる燃料テープ(20)の取り付けと取り外しを行い、大気連通孔(12)の閉塞と開通を簡単に行うことができる。
【0010】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 大気圧センサへの塵埃の進入を避けることができる。
図4に例示するように、閉塞体(13)を取り外して大気連通孔(12)を開通させた後、大気連通孔(12)に防塵フィルタ(21)を取り付けるので、防塵フィルタ(21)で大気連通孔(12)からセンサ保護ケース(7)内への塵埃の進入を防止し、大気圧センサ(2)への塵埃の進入を避けることができる。
【0011】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ポッティング材でセンサ保護ケース全体が覆われてしまうのを防止しつつ、コネクタ導出ピン全体と、大気圧センサを除く基板の電子部品全体の防水防振を図ることができる。
図1(A)に例示するように、基板(1)を間に挟んで、コネクタ(15)側の基板ケース周壁(18)とは反対側の反コネクタ側の基板ケース周壁(19)寄りで、基板(1)に大気圧センサ(2)を実装し、図3に例示するように、基板ケース(5)を大気圧センサ(2)側に上り傾斜させて、基板ケース(1)内にポッティング材(14)を注入し、センサ保護ケース(7)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、図1(B)に例示するように、コネクタ導出ピン(17)全体と、大気圧センサ(2)を除く基板(1)の電子部品(3)(4)全体をポッティング材(14)で覆うので、ポッティング材(14)でセンサ保護ケース(7)全体が覆われてしまうのを防止しつつ、コネクタ導出ピン(17)全体と、大気圧センサ(2)を除く基板(1)の電子部品(3)(4)全体の防水防振を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電子制御ユニットの製造方法で得られる電子制御ユニットを説明する図で、図1(A)はポッティング材の図示を省略した平面図、図1(B)は図1(A)のB−B線断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子制御ユニットの製造方法を説明する図で、図2(A)はセンサ保護ケースの取り付け工程を示す平面図、図2(B)は図2(A)のB−B線断面図である。
【図3】ポッティング材の注入工程を示す要部断面図である。
【図4】防塵フィルタの取り付け工程を示す要部断面図である。
【図5】センサ保護センサを説明する図で、図5(A)はコネクタ側から見た斜視図、図5(B)は反コネクタ側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図5は本発明の実施形態に係る電子制御ユニットの製造方法を説明する図であり、この実施形態では、産業用ディーゼルエンジンの電子制御ユニットの製造方法について説明する。
【0014】
図1(A)(B)に示すように、基板(1)に大気圧センサ(2)を含む電子部品(2)(3)(4)を実装し、この基板(1)を基板ケース(5)に収容した電子制御ユニット(6)を製造する電子制御ユニットの製造方法である。
大気圧センサ(2)は、上面に大気圧検出孔(22)を備えている。基板(1)に実装されている電子部品(2)(3)(4)としては、大気圧センサ(2)の他、中央演算処理装置(3)やメモリ(4)等がある。
基板ケース(5)はプラスチック製の矩形の皿である。
【0015】
センサ保護ケースの取り付け工程では、図2(A)(B)に示すように、大気圧センサ(2)にセンサ保護ケース(7)を被せ、図3に示すように、センサ保護ケース(7)の周壁(8)と天井壁(9)とで大気圧センサ(2)を周囲と上方から覆い、センサ保護ケース(7)を係止部(10)(11)で基板(1)に係止する。
図3に示すように、センサ保護ケース(7)の天井壁(9)にあけた大気連通孔(12)を取り外し可能な閉塞体(13)で閉塞しておく。
図3に示すように、ポッティング材の注入工程では、センサ保護ケース(7)の外側で基板ケース(5)内にポッティング材(14)を注入し、係止部(10)(11)で基板(1)からのセンサ保護ケース(7)の浮上を止めながら、センサ保護ケース(7)内の空気圧で、センサ保護ケース(7)の周壁(8)と基板(1)との隙間からのポッティング材(14)の流入を抑制する。
【0016】
これにより、センサ保護ケース(7)内のポッティング材(14)の表面高さをセンサ保護ケース(7)外のポッティング材(14)の表面高さよりも低くなるようにして、大気圧センサ(2)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、基板(1)全体をポッティング材(14)で覆う。
図4に示すように、ポッティング材(14)を硬化させた後、閉塞体(13)を取り外して大気連通孔(12)を開通させる。
【0017】
図5(A)(B)に示すように、センサ保護ケース(7)は、プラスチック製で下面が開口された矩形の箱体である。コネクタ(15)側の周壁(8)には、下部に係止部(10)となる左右一対の爪が形成されている。反コネクタ側の周壁(8)には一対の上下方向に長い左右一対の突条(24)(24)を備え、この左右一対の突条(24)(24)との間で、下部に基板挿通孔(23)をあけ、その下側に係止部(11)となる架設部が形成されている。
【0018】
図2(A)に示すように、基板(1)のセンサ保護ケース(7)の取り付け個所には、左右一側に基板(1)の側縁(25)に沿う直線状の切欠き部(26)を備え、左右他側に切欠き部(26)と平行なスリット(27)を備え、反コネクタ側に左右に長い突起(28)を備えている。
【0019】
この切欠き部(26)とスリット(27)の奥端側で、基板(1)にコネクタ側の係止部(10)を係止させ、突起(28)を基板挿通孔(23)に嵌入させている。
そして、図3に示すように、左右一対の突条(24)(24)を基板ケース(5)の反コネクタ側の基板ケース周壁(19)に接当させることにより、係止部(10)と基板挿通孔(23)が反コネクタ側に抜けないようして、コネクタ側の係止部(10)でセンサ保護ケース(7)のコネクタ側が浮上しないように係止するとともに、反コネクタ側の係止部(11)でセンサ保護ケース(7)の反コネクタ側が浮上しないようにしている。
ポッティング材(14)にはウレタン樹脂を用いている。
【0020】
図3に示すように、閉塞体(13)はセンサ保護ケース(7)の天井壁(9)に貼り付けた粘着テープ(20)である。
図4に示すように、防塵フィルタ(21)の取り付け工程では、閉塞体(13)を取り外して大気連通孔(12)を開通させた後、大気連通孔(12)に防塵フィルタ(21)を取り付け。
【0021】
図1(A)(B)に示すように、基板ケース周壁(18)にコネクタ(15)を配置し、このコネクタ(15)の接続端子(16)から基板(1)までコネクタ導出ピン(17)を導出し、基板(1)に実装された電子部品(2)(3)(4)よりも高い位置でコネクタ(15)から基板ケース(5)内に突出しているコネクタ導出ピン(17)と、大気圧センサ(2)を除く基板(1)の電子部品(3)(4)をポッティング材(14)で覆うに当たり、次のようにする。
【0022】
図1(A)に示すように、基板(1)を間に挟んで、コネクタ(15)側の基板ケース周壁(18)とは反対側の反コネクタ側の基板ケース周壁(19)寄りで、基板(1)に大気圧センサ(2)を実装し、図3に示すように、基板ケース(5)を大気圧センサ(2)側に上り傾斜させて、基板ケース(1)内にポッティング材(14)を注入し、センサ保護ケース(7)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、図1(B)に示すように、コネクタ導出ピン(17)全体と、大気圧センサ(2)を除く基板(1)の電子部品(3)(4)全体をポッティング材(14)で覆う。この実施形態では、大気圧センサ(2)を除く基板に実装された全ての電子部品全体をポッティング材(14)で覆っている。
【符号の説明】
【0023】
(1) 基板
(2) 大気圧センサ(電子部品)
(3) CPU(電子部品)
(4) メモリ(電子部品)
(5) 基板ケース
(6) 電子制御ユニット
(7) センサ保護ケース
(8) 周壁
(9) 天井壁
(10) 係止部
(11) 係止部
(12) 大気連通孔
(13) 閉塞体
(14) ポッティング材
(15) コネクタ
(16) 接続端子
(17) コネクタ導出ピン
(18) 基板ケース周壁
(19) 基板ケース周壁
(20) 粘着テープ
(21) 防塵フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)に大気圧センサ(2)を含む電子部品(2)(3)(4)を実装し、この基板(1)を基板ケース(5)に収容した電子制御ユニット(6)を製造する電子制御ユニットの製造方法であって、
大気圧センサ(2)にセンサ保護ケース(7)を被せ、センサ保護ケース(7)の周壁(8)と天井壁(9)とで大気圧センサ(2)を周囲と上方から覆い、センサ保護ケース(7)を係止部(10)(11)で基板(1)に係止し、センサ保護ケース(7)の天井壁(9)にあけた大気連通孔(12)を取り外し可能な閉塞体(13)で閉塞し、センサ保護ケース(7)の外側で基板ケース(5)内にポッティング材(14)を注入し、係止部(10)(11)で基板(1)からのセンサ保護ケース(7)の浮上を止めながら、センサ保護ケース(7)内の空気圧で、センサ保護ケース(7)の周壁(8)と基板(1)との隙間からのポッティング材(14)の流入を抑制することにより、センサ保護ケース(7)内のポッティング材(14)の表面高さをセンサ保護ケース(7)外のポッティング材(14)の表面高さよりも低くなるようにして、大気圧センサ(2)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、基板(1)全体をポッティング材(14)で覆い、ポッティング材(14)を硬化させた後、閉塞体(13)を取り外して大気連通孔(12)を開通させる、ことを特徴とする電子制御ユニットの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載した電子制御ユニットの製造方法において、
閉塞体(13)がセンサ保護ケース(7)の天井壁(9)に貼り付けた粘着テープ(20)である、ことを特徴とする電子制御ユニットの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した電子制御ユニットの製造方法において、
閉塞体(13)を取り外して大気連通孔(12)を開通させた後、大気連通孔(12)に防塵フィルタ(21)を取り付ける、ことを特徴とする電子制御ユニットの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載した電子制御ユニットの製造方法において、
基板ケース周壁(18)にコネクタ(15)を配置し、このコネクタ(15)の接続端子(16)から基板(1)までコネクタ導出ピン(17)を導出し、基板(1)に実装された電子部品(2)(3)(4)よりも高い位置でコネクタ(15)から基板ケース(5)内に突出しているコネクタ導出ピン(17)と、大気圧センサ(2)を除く基板(1)の電子部品(3)(4)をポッティング材(14)で覆うに当たり、
基板(1)を間に挟んで、コネクタ(15)側の基板ケース周壁(18)とは反対側の反コネクタ側の基板ケース周壁(19)寄りで、基板(1)に大気圧センサ(2)を実装し、基板ケース(5)を大気圧センサ(2)側に上り傾斜させて、基板ケース(1)内にポッティング材(14)を注入し、センサ保護ケース(7)全体をポッティング材(14)で覆うことなく、コネクタ導出ピン(17)全体と、大気圧センサ(2)を除く基板(1)の電子部品(3)(4)全体をポッティング材(14)で覆う、ことを特徴とする電子制御ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69780(P2013−69780A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206257(P2011−206257)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】