説明

電子制御装置

【課題】簡易な装置構成によって、車両の水没時に乗員の安全を確保するための各種車両制御を確実に行うことが可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置(統括ECU)11では、駆動制御部23と水没センサ24とが同一の回路基板20に実装されており、これら各部23,24は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板20が車両に設置された状態で、水没センサ24が駆動制御部23より下方に位置するように、回路基板20上に配置されている。このうち駆動制御部23が、水没センサ24から水没検知信号を入力すると、ドアECUを動作可能な状態にして、スタータを作動させない状態に固定する制御(安全確保制御)を行う。このため、駆動制御部23が被水するまで確実に安全確保制御を実行することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水没を検知する水没センサを用いて、車両の水没時に乗員の安全を確保するための各種車両制御を行う電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、互いに対向するように離れて並設される一対の対向電極からなる水没センサと、車両の水没時に乗員の安全を確保するための各種車両制御を行う制御ICとを備えて、車両の内部に設置される電子制御装置(以下、水没用電子制御装置という)が知られている。
【0003】
この水没用電子制御装置では、車両が河川水,雨水,海水などに水没した場合に、水没センサの対向電極(以下、センサ電極という)間が水に濡れてセンサ電極間にリーク電流が流れることによって車両の水没を検出すると、制御ICが、例えばエンジンを始動させるためのスタータが異常動作しないように、バッテリからスタータへの電源供給をカットする制御などを行う。
【0004】
また、この水没用電子制御装置の一例として、車両の内部において水平度が確保された設置面(以下、車両水平面という)に対して平行に配置される同一の回路基板上に、水没センサや制御IC等が実装されたものが知られている。
【0005】
このように構成された水没用電子制御装置としては、水没センサによって車両の水没を検出する前に、制御ICが誤作動してしまうことを防ぐために、回路基板のうちセンサ電極以外の部分が水に濡れないように極力保護するための筐体が、水没センサや制御IC等を囲うように取り付けられたユニット構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−317298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように構成された水没用電子制御装置では、回路基板が車両水平面に対して平行に配置されることに伴って、車両がどの方向に傾きながら水没しても対応できるように複数の水没センサが設けられているため、部品点数が増加してしまうという問題があった。
【0007】
また、この水没用電子制御装置では、水没センサや制御IC等が同一の回路基板上に配置されているため、回路基板のうち配線されていない余白部分を極力減らして基板面積を小さくし、なお且つ、センサ電極を露出させようとすると、複雑な形状を有する筐体を設置することが必要となり、ひいては装置構造を複雑化させてしまうという問題があった。
【0008】
つまり、この水没用電子制御装置では、部品点数の増加や装置構造の複雑化によって生産コストが増大してしまう可能性があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、簡易な装置構成によって、車両の水没時に乗員の安全を確保するための各種車両制御を確実に行うことが可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の電子制御装置は、車両の水没を検知すると電気的信号を出力する水没検知部と、水没検知部から電気的信号を入力した場合に、車両の水没時にその車両の乗員の安全を確保するための安全確保制御を行う統括制御部とを備え、これらの各部が同一の回路基板に実装される。
【0010】
ここで、水没検知部と統括制御部とは、その実装面(即ち、回路基板における基板面)が車両の高さ方向に沿うように回路基板が車両に設置された状態で、水没検知部が統括制御部より下方に位置するように、回路基板上に配置されている。
【0011】
したがって、本発明の電子制御装置によれば、車両が河川水,雨水,海水などに水没すると、統括制御部が被水する前に水没検知部が被水するため、簡易な装置構成によって安全確保制御を確実に行うことができる。
【0012】
また、請求項2に記載のように、回路基板には、この回路基板に設けられた各部(水没検知部,統括制御部)への電源供給を行う電源供給部がさらに実装され、この電源供給部は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板が車両に設置された状態で、統括制御部より上方に位置するように回路基板上に配置されていることが望ましい。なお、電源供給部は、車両電源からの入力電圧を回路基板の各部が入力可能な内部電圧に変換することにより電源供給を行うものとする。
【0013】
このように構成された電子制御装置によれば、統括制御部が被水する前に電源供給が途絶えることがないため、統括制御部は、自身が被水するまで確実に安全確保制御を実行することができる。
【0014】
ここで、請求項3に記載のように、回路基板に実装された各部は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板が車両に設置された状態で、車両の前方側から、水没検知部、統括制御部、電源供給部の順となるように斜め(即ち、回路基板の概ね対角線上)に配置されていることが望ましい。
【0015】
このように構成された電子制御装置では、車両が前方に傾いた状態で、回路基板に実装された各部が、鉛直方向(水位方向)に沿って下方側から水没検知部,統括制御部,電源供給部の順の位置となる。このため、特に車両が前のめりに水没したときに、安全確保制御を確実に行うことができる。
【0016】
さらに、請求項4に記載のように、統括制御部は、車両電源から予め規定された車載装置(以下、規定車載装置という)への電源供給経路に設けられた切替手段を、車両の乗員による操作(以下、外部操作という)に応じてオン状態またはオフ状態にする切替制御を行うメイン制御部と、安全確保制御として、外部操作に拘らずにオン状態またはオフ状態に固定する制御(以下、スイッチング固定制御という)を行う駆動制御部とを備えてもよい。但し、切替手段のオン状態では、規定車載装置が車両電源から電源供給される状態(即ち、通電状態)となり、切替手段のオフ状態では、規定車載装置が車両電源から電源供給されない状態(即ち、非通電状態)となることとする。
【0017】
ここで、メイン制御部と駆動制御部は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板が車両に設置された状態で、メイン制御部が駆動制御部より下方に位置するように回路基板上に配置されていることが望ましい。
【0018】
この場合、簡易な装置構成によってスイッチング固定制御を確実に行うことができる。
そして、駆動制御部が実行する安全確保制御の具体例としては、請求項5に記載のように、車両のドアに設けられたウインドウガラス(パワーウインドウ)の開閉制御を行う車載装置への電源供給経路を通電状態(即ち、切替手段をオン状態)に固定することや、請求項6に記載のように、車両のエンジンを始動させる車載装置(スタータ)への電源供給経路を非通電状態(即ち、切替手段をオフ状態)に固定することがある。
【0019】
前者の場合、車両の水没時にパワーウインドウを確実に動作可能な状態にすることで、乗員の車両からの脱出を直接的に支援することができ、後者の場合、スタータの作動に伴う大量の電力の消耗、及びバッテリ電圧の低下を防止することで、車両の水没時に必要な車両電源を保全することができる。
【0020】
ところで、請求項7に記載のように、メイン制御部は、車両に搭載された他の電子制御装置と通信線を介して相互に接続されていることが望ましい。
具体的に言うと、メイン制御部は、請求項8に記載のように、切替制御に加えて、車両の走行制御を行う電子制御装置(走行制御装置)に動作指令を送信して、その動作指令に従い走行制御装置を作動させる走行統括制御を行うとよい。
【0021】
或いは、メイン制御部は、請求項9に記載のように、走行統括制御に加えて、車両が水没状態にあることを表す水没情報を予め設定された送信先(例えば、監視センタ)に無線送信する指令を、車両の外部と無線通信を行う電子制御装置(通信制御装置)に送信する処理(以下、通信制御処理という)を、安全確保制御として行うとよい。
【0022】
このように構成された電子制御装置によれば、通常時には走行統括制御を行うと共に、車両の水没時には水没情報を監視センタに無線送信する水没送信処理によって、乗員の車両からの脱出を間接的に支援することができ、ひいては制御の無駄を排除することができる。
【0023】
なお、メイン制御部は、請求項10に記載のように、第一制御部が、切替制御に加えて、通信制御処理を安全確保制御として行い、第二制御部が、走行統括制御を行うとよい。但し、第一制御部と第二制御部は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板が車両に設置された状態で、第一制御部が第二制御部より上方に位置するように回路基板上に配置されていることが望ましい。
【0024】
このように構成された電子制御装置によれば、第一制御部が水没送信処理を行うための時間的余裕を確保することができる。
また、第一制御部は、請求項11に記載のように、安全確保制御として、さらに第二制御部を初期化する処理を行うことが望ましい。
【0025】
この場合、被水した第二制御部が誤作動することにより、例えば走行制御装置に対して不要な動作指令を送信してしまうことを防止し、ひいては、車両電源の不要な消耗、及びバッテリ電圧の低下をさらに防ぐことができる。
【0026】
ここで、請求項12に記載のように、統括制御部の各部は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板が車両に設置された状態で、車両の前方側から、メイン制御部、駆動制御部の順となるように斜めに配置されていることが望ましい。
【0027】
このように構成された電子制御装置では、車両が前方に傾いた状態で、統括制御部の各部が、水位方向に沿って下方側からメイン制御部,駆動制御部の順の位置となる。このため、特に車両が前のめりに水没したときに、スイッチング固定制御を確実に行うことができる。
【0028】
ところで、電源供給部は、請求項13に記載のように、監視手段によって、メイン制御部が正常に動作していない場合に、メイン制御部を初期化する監視処理を実行することが望ましい。
【0029】
この場合、被水したメイン制御部が誤作動することにより、例えばスタータを作動させてしまうことを防止し、ひいては、車両電源の不要な消耗を未然に防ぐことができる。
また、監視手段は、請求項14に記載のように、メイン制御部が備える複数の制御部に対して個別に監視処理を実行することが望ましい。
【0030】
この場合、メイン制御部のうち、より重要度の高い車両制御を行う制御部を、回路基板の基板面でより上方に配置することによって、メイン制御部による車両制御(例えば、安全確保制御)を最大限に実行することができる。
【0031】
また、請求項15に記載のように、回路基板は、複数の層からなる多層基板であり、水没検知部と統括制御部とを接続する導線が、回路基板の内層に設けられていることが望ましい。
【0032】
このように構成された電子制御装置によれば、センサ電極間が水に濡れた場合に、このセンサ電極間に流れるリーク電流(即ち、車両が水没したことを表す検出信号)を、統括制御部に適切に出力する確実性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、本発明が適用された電子制御装置(但し、本実施形態では「統括ECU」という)が構成する車両制御システムの概要を示すブロック図である。
【0034】
図1に示すように、車両制御システム1は、車両において、走行制御を行う電子制御装置(ECU)が接続される車載ローカルネットワーク(LAN)である走行系の車載LAN(以下、走行系LANという)2と、ボデー制御を行うECUが接続されるボデー系の車載LAN(以下、ボデー系LANという)3と、音響,画像,通信に関する制御を行うECUが接続される情報系の車載LAN(以下、情報系LANという)4と、これらの車載LAN2〜4を相互に接続して、車載LAN2〜4に接続される各ECUに各種の制御指令(コマンド)を送信する統括ECU11と、車両のユーザが所持する携帯機からの送信電波に基づいてドアのロック/アンロックを指示するスマートECU15とを備えている。
【0035】
また、車載LAN2〜4に接続される各ECU及び統括ECU11,スマートECU15は、いずれもCPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータ(マイコン)を中心に構成され、バッテリ5から電力供給を受けるための電源回路や、車載LAN2〜4を介して通信を行う通信回路、自身に割り当てられた機能を果たすために必要な各種信号を入出力するためのI/O回路などの周知の構成要素を備えている。
【0036】
このうち、統括ECU11及びスマートECU15は、自身が動作するための電力が常時供給されるように、電源回路がバッテリ5に直接接続され、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという)6の状態(即ち、車両のマスターキーによって回動されたキーシリンダ位置)に関係なく動作可能となるように構成されている。
【0037】
一方、車載LAN2〜4に接続される各ECUは、電源回路がイグニッションリレー(以下、IGリレーという)7を介してバッテリ5に接続されており、このIGリレー7がオン状態にされている場合に、バッテリ5から電力供給がなされて動作可能となるように構成されている。但し、IGリレー7は、走行系LAN2側および情報系LAN4側のECUの電源回路とバッテリ5との間に設けられるIGメインリレー7aと、ボデー系LAN3側のECUの電源回路とバッテリ5との間に設けられるIGボデーリレー7bとからなる。
【0038】
なお、スタータ9は、スタータリレー(以下、STリレーという)10を介してバッテリ5に接続されており、STリレー10がオン状態にされている場合に、バッテリ5から電力供給がなされてエンジン8を始動させる。また、照明装置や空調装置などのアクセサリ機器16は、アクセサリリレー(以下、ACCリレーという)17を介してバッテリ5に接続されており、ACCリレー17がオン状態にされている場合に、バッテリ5から電力供給がなされて動作可能となるように構成されている。
【0039】
ところで、走行系LAN2には、エンジン8の燃料噴射量や点火時期の制御を行うエンジンECU12が少なくとも接続され、ボデー系LAN3には、ドアのロック/アンロックや、このドアに設けられたウインドウガラスの上昇/下降(パワーウインドウによる開閉)を制御するドアECU13が少なくとも接続されている。また、情報系LAN4には、車両の経路案内や車両外部との無線通信を制御するナビゲーションECU(以下、ナビECUという)14が少なくとも接続されている。
【0040】
そして、エンジンECU12のCPUは、車載LAN2を介してエンジン8の駆動を指示するコマンドを受信すると、エンジン8の燃料噴射量や点火時期を調節する制御を少なくとも実行し、ドアECU13のCPUは、車載LAN3を介してドアのロック/アンロックを指示するコマンドを受信すると、ドアロックモータ(図示せず)を駆動してドアをロック/アンロックする制御を少なくとも実行するように構成されている。
【0041】
また、ナビECU14のROM(例えばEEPROM)には、予め設定された送信先としての監視センタの連絡先情報(電話番号など)や、利用者を特定するための利用者情報として、例えば車両固有の識別番号や装置のシリアルナンバーあるいは電話番号などが記憶されている。そして、ナビECU14のCPUは、車載LAN4を介して後述する水没情報の無線送信を指示するコマンドを受信すると、利用者情報の他に、GPS受信機(図示せず)などにより取得した車両の現在位置を表す位置情報などを監視センタに無線送信する制御を少なくとも実行するように構成されている。
【0042】
なお、スマートECU15のCPUは、車載アンテナ(図示せず)を介して受信した電波の認証コードに基づき、認証コードの送信元(即ち、車両のユーザが所持する携帯機)が予め登録された正規のものであることを確認すると、その確認したことを示す認証信号を統括ECU11に出力する。
【0043】
<統括ECUの構成>
図2は、統括ECUの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、統括ECU11は、バッテリ5から他の車載装置への電力供給を統括制御する電源制御部21と、電源制御部21から起動信号を入力すると、走行系LAN2に接続される各ECU(エンジンECU12等)の統括制御を行う走行制御部22と、車両が水没状態にあることを検知するとその検知したことを表す水没検知信号を出力する水没センサ24と、電源制御部21又は水没センサ24からの入力に応じて各種リレー7,10,17を駆動させる駆動制御部23と、バッテリ5からの入力電圧を内部電圧に変換し、各部21〜24への電源供給を行う電源供給部25と、各部21〜23が自身に割り当てられた機能を果たすために必要な各種信号を入出力するためのコネクタ部26とを備えている。
【0044】
また、これら各部21〜26は、複数の層からなる矩形の回路基板20に実装されており、その実装面(即ち、回路基板20の基板面)が車両の高さ方向に沿うように車両内部(例えば、ダッシュボード下)に設置される(図3参照)。そして、回路基板20に実装された各部21〜25は、上記の設置状態で、車両の前方かつ下方側から、水没センサ24,走行制御部22,電源制御部21,駆動制御部23,電源供給部25の順となるように斜め(即ち、回路基板20面の概ね対角線上)に配置されている。なお、回路基板20のうち上記の設置状態で車両の高さ方向に沿う縁部には、コネクタ部26が、回路基板20上の各部21〜23の位置に対応して配設されている。
【0045】
このうち、水没センサ24は、図4に示すように、電源制御部21及び駆動制御部23に水没検知信号を出力するための水没検知用導線27と接続する第一センサ電極28aと、グランドに接地する二つの第二センサ電極28bとからなる三つのセンサ電極28を備え、これらのセンサ電極28が互いに非接触の状態で(二つの第二センサ電極28bが第一センサ電極28aを挟むように)並設されている。なお、水没検知用導線27は、被水を極力防止するために回路基板20の内層に設けられている。
【0046】
このように構成された水没センサ24では、第一センサ電極28aと第二センサ電極28bとの間が水に濡れて導通(即ち、電極間にリーク電流が流れる)状態となることを利用し、電源制御部21及び駆動制御部23に水没検知信号を出力する。
【0047】
具体的には、水没検知用導線27と抵抗を介してプルアップし、その水没検知用導線27の電圧レベルを水没検知信号として検出する。つまり、電極間にリーク電流が流れた時には、水没検知用導線27の電圧レベルが低下するため、予め設定された閾値以下に低下したか否かを監視することで水没を検知する。
【0048】
図2に戻り、電源供給部25には、電源制御部21及び走行制御部22の異常動作を防止するためのウオッチドッグタイマ回路(以下、WDT回路という)25aが設けられている。
【0049】
WDT回路25aは、電源制御部21及び走行制御部22がプログラムの実行に伴い一定時間以内毎に個別に出力する動作パルス信号(所謂、ウォッチドックパルス)をそれぞれ入力し、その動作パルス信号が上記一定時間よりも長く設定された規定時間内に入力されない場合に、その入力がなかった制御部(電源制御部21又は走行制御部22)に対して、リセット信号を出力して初期化させる周知のものである。
【0050】
走行制御部22は、シフトレバーの位置とアクセルの踏込み量とに基づき必要な駆動力を算出して、エンジン8の駆動を指示するコマンドを、車載LAN2を介してエンジンECU12に送信する走行制御(例えば、ハイブリッド制御)を行う。
【0051】
電源制御部21は、IGスイッチ6からACCオンを示す状態信号が入力される(車両のマスターキーによってACC位置に回動される)と、駆動制御部23を介してACCリレー17をオン状態にして、アクセサリ機器16を動作可能な状態にする。また、IGスイッチ6からIGオンを示す状態信号が入力される(車両のマスターキーによってON位置に回動される)と、駆動制御部23を介してIGリレー7(IGメインリレー7a及びIGボデーリレー7b)をオン状態にして、車載LAN2〜4に接続される各ECUを動作可能な状態にする。さらに、IGスイッチ6からSTARTオンを示す状態信号が入力される(車両のマスターキーによってSTART位置に回動される)と、駆動制御部23を介してSTリレー10をオン状態にして、スタータ9を作動させる。
【0052】
また、電源制御部21は、IGスイッチ6がLOCK位置にある状態で、スマートECU15から認証信号を入力すると、駆動制御部23を介してIGボデーリレー7bをオン状態にして、車載LAN3に接続される各ECUを動作可能な状態にすると共に、車載LAN3を介して、ドアのロック/アンロックを指示するコマンドを、ドアECU13に送信する。
【0053】
さらに、電源制御部21は、図5に示すように、水没センサから水没検知信号が入力(S110;YES)されると、車両が水没状態にあることを表す水没情報の無線送信を指示するコマンドを、車載LAN4を介してナビECU14に送信(S120)すると共に、走行制御部22に対してリセット信号を出力して初期化(S130)させる。なお、電源制御部21は、これらの制御をハードウェア(論理回路など)によって実行するように構成されている。
【0054】
ちなみに、ナビECU14のCPUは、水没情報の無線送信を指示するコマンドを電源制御部21から受信すると、利用者情報や位置情報などを水没情報として監視センタに無線送信する。また、走行制御部22が初期化すると、エンジンECU12は、エンジン8の燃料噴射量や点火時期を調節する制御を停止することになる。
【0055】
<駆動制御部の構成>
図6は、駆動制御部の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、駆動制御部23は、電源制御部21又は水没センサ24からの入力に応じて、IGボデーリレー7b,STリレー10をオン/オフ状態にするための切替信号を出力する制御を行う制御回路31と、制御回路31から入力される状態信号に基づいて、IGボデーリレー7b,STリレー10を駆動させると共に、電源制御部21からの入力に応じて、IGメインリレー7aを駆動させる駆動回路32とを備えている。
【0056】
このうち、制御回路31は、NOT回路29を介して水没センサ24と接続されており、水没センサ24が水没検知信号を出力する(即ち、水没検知用導線27の電圧レベルが低下する)とHレベルを入力する。
【0057】
また、制御回路31は、電源制御部21からのボデーON信号(Hレベル)の入力、又は、水没センサからの水没検知信号(Hレベル)の入力がなされると、駆動回路32に対して、IGボデーリレー7bをON状態にするためのボデー状態ON信号(Hレベル)を出力するOR回路31aと、電源制御部21からのスタータOFF信号(Hレベル)の入力、又は、水没センサからの水没検知信号(Hレベル)の入力がなされると、駆動回路32に対して、STリレー10をOFF状態にするためのスタータ状態OFF信号(Lレベル)を出力するNOR回路31bとを備えている。
【0058】
なお、OR回路31aは、電源制御部21からボデーOFF信号(Lレベル)を入力すると、IGボデーリレー7bをOFF状態にするためのボデー状態OFF信号(Lレベル)を出力し、NOR回路31bは、電源制御部21からスタータON信号(Lレベル)を入力すると、STリレー10をON状態にするためのスタータ状態ON信号(Hレベル)を出力する。
【0059】
つまり、制御回路31は、水没センサからHレベルを入力すると、電源制御部21からLレベルを入力した場合であっても、ボデーON状態信号(Hレベル)及びスタータOFF状態信号(Lレベル)を出力するように構成されている。
【0060】
ちなみに、OR回路31a,NOR回路31bは、スイッチ31cを介して電源制御部21に接続されている。このスイッチ31cは、水没センサから水没検知信号(Hレベル)の入力がなされるとオフ状態となり、電源制御部21からのLレベルの入力を遮断して、水没時に制御回路31が行う制御の精度を保証するために設けられている。
【0061】
なお、上記実施形態において、電源制御部21が第一制御部、走行制御部22が第二制御部、水没センサ24が水没検知部、WDT回路25aが監視手段、IGボデーリレー7b及びSTリレー10が切替手段に相当する。
【0062】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の統括ECU11では、駆動制御部23と水没センサ24とが同一の回路基板20に実装されており、これら各部23,24は、基板面が車両の高さ方向に沿うように回路基板20が車両に設置された状態で、水没センサ24が駆動制御部23より下方に位置するように、回路基板20上に配置されている。このうち駆動制御部23が、水没センサ24から水没検知信号を入力すると、ドアECU13を動作可能な状態にして、スタータ9を作動させない状態に固定するように構成されている。
【0063】
このように構成された統括ECU11では、車両の水没時であっても、車両のドアに設けられたウインドウガラスの上昇/下降(パワーウインドウによる開閉)や、ドアのロック/アンロックを、車両の乗員による所望のタイミングで行うことができる状態が維持されることになる。
【0064】
したがって、本実施形態の統括ECU11によれば、簡易な装置構成によって、車両の水没時に乗員の安全を確保するための車両制御(安全確保制御)を確実に行うことができる。
【0065】
なお、統括ECU11は、バッテリ5に直接接続されている電源供給部25を介して、自身が動作するための電力が常時供給されるため、IGスイッチ6やIGリレー7がオフ状態であっても、確実に安全確保制御を行うことができる。
【0066】
また、統括ECU11は、コネクタ部26が、回路基板20のうち車両の高さ方向に沿う縁部に、回路基板20上の各部21〜23の位置に対応して配設されるため、安全確保制御のうちより重要度の高い制御を行う確実性を高め、ひいては安全確保制御を最大限に実行することができる。
【0067】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、水没センサ24が、水没検知用導線27と接続する第一センサ電極28aと、グランドに接地する二つの第二センサ電極28bとからなるセンサ電極28で構成されているが、このような構成に限定されるものではなく、少なくとも被水を検知すると電気的信号(水没検知信号)を出力するものであればよい。
【0069】
ちなみに、センサ電極28の数は三つに限るものではなく、第一センサ電極28aと第二センサ電極28bとを少なくとも一つずつ有していればよい。なお、第一センサ電極28aと第二センサ電極28bとの電極間にスリット等を設けて、結露程度の被水では導通しないような対策を施してもよい。
【0070】
また、水没検知用導線27は、被水を極力防止するために、必ずしも回路基板20の内層に設けられている必要はなく、その他の導線との間でショートしない程度のパターンギャップを確保しておけば、回路基板20の基板面に配設されてもよい(図7(a)参照)。この場合、水没検知用導線27は、回路基板20の端部に配設されることがより望ましい(図7(b)参照)。
【0071】
ところで、上記実施形態では、統括ECU11が電源制御部21と走行制御部22とを備えているが、これらの構成要素は必ずしも回路基板20上に設ける必要はなく、他のECUがこれらを備えるように車載LANを構築してもよい。或いは、電源制御部21が、自身の制御に加えて、走行制御部22による走行制御を行うようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、水没センサから水没検知信号を入力した場合に統括ECU11が行う制御(安全確保制御)のうち、ドアECU13を動作可能な状態に固定する制御などを駆動制御部23が行い、ナビECU14に水没情報の無線送信を指示する制御などを電源制御部21が行なっているが、これらに限定されるものではない。例えば、これらの安全確保制御を一つの制御部によって実行するように構成すると、統括ECU11の構成要素の数を減らすことができる。
【0073】
なお、上記実施形態では、これらの安全確保制御を、ハードウェア(論理回路など)によって実行するように構成されているが、これに限らず、駆動制御部23及び電源制御部21の少なくとも一方が、ソフトウェアによって実行するように構成されてもよい。
【0074】
また、電源制御部21が実行する安全確保制御では、ナビECU14に水没情報の無線送信を指示するコマンドを送信しているが、これに限らず、例えば、ドアECU13にドアのアンロックを指示するコマンドを送信してもよいし、ボデー系LAN3に接続される他のECUにサンルーフの開放を指示するコマンドを送信してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明が適用された電子制御装置(統括ECU)が構成する車両制御システムの概要を示すブロック図。
【図2】統括ECUの構成を示すブロック図。
【図3】車両における回路基板の設置状態を示す模式図。
【図4】水没センサの構成を示す模式図。
【図5】電源制御部が実行する水没制御処理の詳細を示すフローチャート。
【図6】駆動制御部の構成を示すブロック図。
【図7】回路基板上における水没検知用導線の配設状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0076】
1…車両制御システム、2…走行系LAN、3…ボデー系LAN、4…情報系LAN、5…バッテリ、6…IGスイッチ、7…IGリレー、7a…IGメインリレー、7b…IGボデーリレー、8…エンジン、9…スタータ、10…STリレー、11…統括ECU、12…エンジンECU、13…ドアECU、14…ナビECU、15…スマートECU、20…回路基板、21…電源制御部、22…走行制御部、23…駆動制御部、24…水没センサ、25…電源供給部、25a…WDT回路、26…コネクタ部、27…水没検知用導線、28…センサ電極、28a…第一センサ電極、28b…第二センサ電極、31…制御回路、32…駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電子制御装置であって、
該車両の水没を検知すると電気的信号を出力する水没検知部と、前記水没検知部から前記電気的信号を入力した場合、該車両の水没時に該車両の乗員の安全を確保するための安全確保制御を実行する統括制御部とが実装されると共に、その実装面が前記車両の高さ方向に沿うように前記車両に設置される回路基板を備え、
前記水没検知部と前記統括制御部とは、前記回路基板が前記車両に設置された状態で、前記水没検知部が前記統括制御部より下方に位置するように、前記回路基板上に配置されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記回路基板には、車両電源からの入力電圧を前記回路基板の各部が入力可能な内部電圧に変換し、前記回路基板の各部への電源供給を行う電源供給部がさらに実装され、
前記電源供給部は、前記回路基板が前記車両に設置された状態で、前記統括制御部より上方に位置するように、前記回路基板上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記回路基板に実装された各部は、前記回路基板が前記車両に設置された状態で、前記車両の前方側から、前記水没検知部、前記統括制御部、前記電源供給部の順となるように斜めに配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記統括制御部は、前記車両の乗員による操作を外部操作として該外部操作に応じて、前記車両電源から予め規定された車載装置への電源供給経路に設けられた切替手段を、前記車載装置が通電状態となるオン状態、又は、前記車載装置が非通電状態となるオフ状態にする切替制御を行うメイン制御部と、前記一対のセンサ電極間の導通を検出した場合、前記安全確保制御として、前記切替制御に拘らずに前記切替手段をオン状態またはオフ状態に固定する駆動制御部とを備え、
前記メイン制御部と前記駆動制御部は、前記回路基板が前記車両に設置された状態で、前記メイン制御部が前記駆動制御部より下方に位置するように、前記回路基板上に配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記車載装置は、前記車両のドアに設けられたウインドウガラスの開閉制御を行う装置であり、
前記駆動制御部が実行する前記安全確保制御では、前記切替手段をオン状態に固定することを特徴とする請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記車載装置は、前記車両のエンジンを始動させる装置であり、
前記駆動制御部が実行する前記安全確保制御では、前記切替手段をオフ状態に固定することを特徴とする請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記メイン制御部は、前記車両に搭載された他の電子制御装置と通信線を介して接続されていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記メイン制御部は、前記切替制御に加えて、前記他の電子制御装置のうち前記車両の走行制御を行う走行制御装置に対する動作指令を送信して該動作指令に従い前記走行制御装置を作動させる走行統括制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記メイン制御部は、前記走行統括制御に加えて、前記車両が水没状態にあることを表す水没情報を予め設定された送信先に無線送信する指令を、前記他の電子制御装置のうち前記車両の外部と無線通信を行う通信制御装置に送信する通信制御処理を、前記安全確保制御として行うことを特徴とする請求項8に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記メイン制御部は、前記切替制御に加えて前記通信制御処理を前記安全確保制御として行う第一制御部と、前記走行統括制御を行う第二制御部とからなり、
前記第一制御部と前記第二制御部は、前記回路基板が前記車両に設置された状態で、前記第一制御部が前記第二制御部より上方に位置するように、前記回路基板上に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記第一制御部は、前記安全確保制御として、さらに前記第二制御部を初期化する処理を行うことを特徴とする請求項10に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記統括制御部の各部は、前記回路基板が前記車両に設置された状態で、前記車両の前方側から、前記メイン制御部、前記駆動制御部の順となるように斜めに配置されていることを特徴とする請求項4ないし請求項11のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記電源供給部は、前記メイン制御部が正常に動作していない場合に、前記メイン制御部を初期化する監視処理を実行する監視手段を備えることを特徴とする請求項4ないし請求項12のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項14】
前記メイン制御部は、複数の制御部を備え、
前記監視手段は、前記複数の制御部に対して個別に前記監視処理を実行することを特徴とする請求項13に記載の電子制御装置。
【請求項15】
前記回路基板は複数の層からなる多層基板であり、
前記水没検知部と前記統括制御部とを接続する導線が、前記回路基板の内層に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−173116(P2009−173116A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12691(P2008−12691)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】