説明

電子制御装置

【課題】電子制御装置において、部品点数の増加を抑えつつ小電流が流れる配線パターンにノイズが入り込むことを抑制する。
【解決手段】プリント配線板の厚み方向から見て、大電流用内層パターンが形成される大電流領域R1と、電流用内層パターンが形成される小電流領域R2とが重ならずに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子制御装置は、配線パターンが多層配置されたプリント配線板を有している。このようなプリント配線板では、例えば特許文献1に示すように、クロックライン等に隣合う信号線に高周波ノイズが乗らないよう、クロックラインを挟むようにスルーホールを設ける対策が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−261237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、従来よりも大きな電流(例えば40A)をプリント配線板に対して流す場合がある。例えば、EV(Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)では、モータ等を駆動するための大電流をプリント配線板に通している。このような大電流が流れるプリント配線板では、集積回路等に接続される信号線(相対的に小さな電流が流れる配線パターン)に対して高周波ノイズが乗りやすい。このため、特許文献1に示す対策では不十分であり、部品を追加して、ノイズ源を抑えるかノイズが乗った信号からノイズを逃がす対策が行われている。
しかしながら、このような場合には、プリント配線板に実装される部品点数が増大し、プリント配線板が大型化してしまう。
【0005】
また、大電流を流すプリント配線板では、配線パターンにおける発熱量が極めて大きくなる。これは、配線パターンの抵抗値が同じであれば、電流の二乗に比例して発熱量が増大するためである。このため、大電流を流すプリント配線板では、上述のノイズ対策と同時に熱対策を施す必要もある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電子制御装置において、部品点数の増加を抑えつつ相対的に小さな電流が流れる配線パターンにノイズが入り込むことを抑制することを目的とする。
さらに、本発明は、上記目的に加え、電子制御装置において放熱効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、電子部品が実装されたプリント配線板を備える電子制御装置であって、上記プリント配線板が、相対的に大きな電流が流されると共に上記プリント配線板の内部に形成される大電流用内層パターンと、相対的に小さな電流が流されると共に上記プリント配線板の内部に形成される電流用内層パターンとを有し、上記プリント配線板の厚み方向から見て、上記大電流用内層パターンが形成される大電流領域と、上記電流用内層パターンが形成される小電流領域とが重ならずに配置されているという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記プリント配線板の厚み方向から見て、上記大電流領域と上記小電流領域との間に一定のクリアランスが設けられているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記大電流用内層パターンが上記プリント配線板の外縁部まで延設されると共に上記大電流用内層パターンが上記プリント配線板の側端にて露出されているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記プリント配線板を収容すると共に当該プリント配線板の上記外縁部と当接する金属製の筐体を備えるという構成を採用する。
第5の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記プリント配線板に実装されると共に、上記大電流用内層パターンと電気的に接続される第1接続口と上記電流用内層パターンと電気的に接続される第2接続口とを有するコネクタを備え、上記プリント配線板の厚み方向から見て、上記1接続口と上記第2接続口との境界線を境として上記大電流領域と上記小電流領域とが分けられているという構成を採用する。
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記大電流用内層パターン及び上記電流用内層パターンが、上記プリント配線板の厚み方向に複数層設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、プリント配線板が、内部に形成される配線パターンである内層パターンとして、相対的に大きな電流が流される大電流用内層パターンと、相対的に小さな電流が流される電流用内層パターンとを有している。そして、本発明においては、大電流用内層パターンが形成される大電流領域と、電流用内層パターンが形成される小電流領域とが、プリント配線板の厚み方向から見て重ならずに配置されている。
つまり、本発明においては、プリント配線板の厚み方向から見て、大電流用内層パターンと電流用内層パターンとが交差することがないように、これらの内層パターンが形成されている。
このため、大電流用内層パターンと電流用内層パターンとが近接することがなく、相対的に小さな電流が流れる電流用内層パターンにノイズが入り込むことを防止することができる。
【0009】
また、上述の大電流用内層パターンが上記プリント配線板の側端にて露出されている構成を採用する場合には、大電流用内層パターンからの放熱を促進させることができる。したがって、本発明によれば、電子制御装置において放熱効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における電子制御装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における電子制御装置が備えるプリント配線板を模式的に示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における電子制御装置が備えるプリント配線板の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態における電子制御装置が備えるプリント配線板の外縁部における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る電子制御装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
図1は、本実施形態の電子制御装置1の分解斜視図である。電子制御装置1は、例えば、車両に搭載され、車両扉の自動開閉制御、またはHEVやEVの駆動モータの制御を行うECU(Electronic Control Unit)として利用されるものである。図1に示すように、電子制御装置1は、電子回路基板2と、該電子回路基板2を収容するケース3(筐体)とを備えている。
【0013】
電子回路基板2は、プリント配線板2aと、コネクタ2b等の電子部品を備えている。なお、図1においては、コネクタ2b以外の電子部品の図示は省略している。
プリント配線板2aは、配線パターンが形成された矩形状の多層基板である。図2は、プリント配線板2aを模式的に示す縦断面図である。この図に示すように、プリント配線板2aは、本実施形態において、配線パターンとして、厚みが35μmの表層パターン2c(表面パターン2c1及び裏面パターン2c2)と、厚みが70μmでありプリント配線板2aの内部に形成される内層パターン2d(第1内層パターン2d1及び第2内層パターン2d2)と、異なる層に形成された配線パターン同士を接続するスルーホール2eと、ガラスエポキシ樹脂等から形成された絶縁層2fとを備えている。
【0014】
本実施形態においては、内層パターン2dを、2種類に分類することができる。1つは、駆動モータ等に供給される大電流(相対的に大きな電流)を流す大電流用内層パターン20である。もう1つは、集積回路等の電子部品に対して供給される電流(相対的に小さな電流)を流す電流用内層パターン30である。
図3は、電子回路基板2の平面図(プリント配線板2aの厚み方向から見た図)である。この図に示すように、本実施形態の電子制御装置1では、平面視(プリント配線板2aの厚み方向から見た場合)において、上述の大電流用内層パターン20が形成される大電流領域R1と、電流用内層パターン30が形成される小電流領域R2とが左右に分離して設けられている。つまり、大電流領域R1と小電流領域R2とが平面視において重ならずに配置されている。このようなプリント配線板2aでは、大電流用内層パターン20は、大電流領域R1にて2層(すなわちプリント配線板2aの厚み方向に複数層)設けられている。また、電流用内層パターン30は、小電流領域R2にて2層(すなわちプリント配線板2aの厚み方向に複数層)設けられている。
また、大電流領域R1と小電流領域R2とは、隙間R3を空け、離間されている。つまり、大電流領域R1と小電流領域R2との間には、図3に示すように、一定のクリアランスが設けられている。なお、図3においては、表層パターン2cとコネクタ2b以外の電子部品との図示を省略している。
【0015】
図4は、電子回路基板2の外縁部近傍を模式的に示す縦断面図であり、(a)が大電流領域R1での外縁部近傍を示し、(b)が小電流領域R2での外縁部近傍を示す。なお、図4(a)は図3におけるA−A線断面図であり、図4(b)は図3におけるB−B線断面図である。図4(a)に示すように、大電流領域R1において大電流用内層パターン20は、プリント配線板2aの外縁部2a1まで延設されており、プリント配線板2aの側端2a2にて露出されている。一方、図4(b)に示すように、小電流領域R2において電流用内層パターン30は、プリント配線板2aの側端2a2にて露出されていない。
【0016】
また、図1及び図3に示すように、プリント配線板2aの4隅には、ケース3にプリント配線板2aを固定するためのネジ孔2a3が設けられ、プリント配線板2aの中央部には、ネジ孔2a4が設けられている。
【0017】
コネクタ2bは、例えばPBTやPPS等の高熱伝導性樹脂から形成されており、プリント配線板2aの裏面側から表面側へ向けて貫通する2本のコネクタ固定用ネジ4によってプリント配線板2aにネジ止め固定されている。このコネクタ2bは、大電流用内層パターン20と電気的に接続される第1接続口2b1と電流用内層パターン30と電気的に接続される第2接続口2b2とを有する。
図3に示すように、平面視において、第1接続口2b1と第2接続口2b2との境界線を境として、大電流領域R1と小電流領域R2とが分けられている。そして、第1接続口2b1が大電流領域R1に配置され、第2接続口2b2が小電流領域R2に配置されている。
【0018】
図1に戻り、ケース3は、電子回路基板2を内部に収容して保護する鉄或いはアルミニウム等の金属製ケースであり、下側ケース31と上側ケース32との2つのパーツに分割可能な構成となっている。下側ケース31の4隅には、プリント配線板2aを固定するためのネジ孔31aが設けられている。また、下側ケース31の中央部にはネジ孔31bが設けられている。また、上側ケース32の4隅にも、プリント配線板2aを固定するためのネジ孔32aが設けられている。
このケース3は、プリント配線板2aの外縁部2a1と当接している。つまり、本実施形態の電子制御装置1は、プリント配線板2aを収容すると共にプリント配線板2aの外縁部2a1と当接する金属製のケース3(筐体)を備えている。
【0019】
なお、プリント配線板2aは、部品実装面を上側にした状態で、プリント配線板2aのネジ孔2a4を上側から下側へ向けて貫通して下側ケース31のネジ孔31bに螺合する基板固定用ネジ5によって下側ケース31にネジ止め固定される。上側ケース32は、下側ケース31にプリント配線板2aが固定された状態で、上側ケース32及びプリント配線板2aのネジ孔32a、2a3を上側から下側へ向けて貫通して下側ケース31のネジ孔31aに螺合するケース固定用ネジ6によって下側ケース31にネジ止め固定される。
このように、プリント配線板2aは、下側ケース31と上側ケース32との間に挟まれた状態で両ケース31、32に狭持されている。
【0020】
以上のような本実施形態の電子制御装置1によれば、プリント配線板2aが、内層パターン2dとして、相対的に大きな電流が流される大電流用内層パターン20と、相対的に小さな電流が流される電流用内層パターン30とを有している。そして、本実施形態の電子制御装置1においては、大電流用内層パターン20が形成される大電流領域R1と、電流用内層パターン30が形成される小電流領域R2とが、プリント配線板2aの厚み方向から見て重ならずに配置されている。
つまり、本実施形態の電子制御装置1においては、プリント配線板2aの厚み方向から見て、大電流用内層パターン20と電流用内層パターン30とが交差することがないように、これらの内層パターン2dが形成されている。
このため、大電流用内層パターン20と電流用内層パターン30とが近接することがなく、電流用内層パターン30にノイズが入り込むことを防止することができる。
【0021】
また、本実施形態においては、平面視において、大電流領域R1と小電流領域R2との間に一定のクリアランスが設けられている。このため、電流用内層パターン30から大電流用内層パターン20をより遠ざけることができ、電流用内層パターン30にノイズが入り込むことをより確実に防止することができる。
【0022】
また、本実施形態においては、大電流用内層パターン20がプリント配線板2aの外縁部2a1まで延設されると共に大電流用内層パターン20がプリント配線板2aの側端2a2にて露出されている。このため、大電流用内層パターン20からの放熱を促進させることができる。したがって、本実施形態の電子制御装置1によれば、放熱効率を向上させることが可能となる。
【0023】
また、電流用内層パターン30は、集積回路等に供給される信号が流れることから、出来る限りノイズが入り込むことを防止したい。これに対して、本実施形態においては、電流用内層パターン30がプリント配線板2aの側端2a2にて露出されていない。このため、ケース3が静電気で帯電等した場合であっても、露出された部位から電流用内層パターン30にノイズが入り込むことを防止することができる。
【0024】
また、本実施形態においては、金属製のケース3がプリント配線板2aの外縁部2a1と当接している。このため、側端2a2で露出された大電流用内層パターン20から放熱された熱がケース3に伝わり易くなる。この結果、ケース3の内部に熱が篭ることを防止することができ、放熱効率をさらに向上させることが可能となる。
【0025】
また、本実施形態においては、平面視において、コネクタ2bの第1接続口2b1と第2接続口2b2との境界線を境として、大電流領域R1と小電流領域R2とが分けられている。このため、第1接続口2b1を大電流領域R1に配置し、第2接続口2b2を小電流領域R2に配置することができ、第1接続口2b1から大電流用内層パターン20まで、及び、第2接続口2b2から電流用内層パターン30までを最短距離で接続することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態においては、大電流用内層パターン20及び電流用内層パターン30は、2層(すなわちプリント配線板2aの厚み方向に複数層)設けられている。このような内層パターンを複数層備える電子制御装置1であっても、上述のように、大電流領域R1と小電流領域R2とをプリント配線板2aの厚み方向から見て重ならずに配置することによって、電流用内層パターン30にノイズが入り込むことを防止することができる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態によれば、大電流領域R1と小電流領域R2とが分かれて配置されていることから、大電流領域R1側での発熱量が多くなり、小電流領域R2側の発熱量が少なくなる。このため、大電流領域R1側のみで熱対策を集中的に施すことによって、電子制御装置1の熱による悪影響を低減させることができる。例えば、ケース3の大電流領域R1側のみに放熱フィンを設ける等の熱対策を施すことで熱変形を防止することができる。したがって、本実施形態においては、大電流領域R1側のみに放熱フィンを設ける等の熱対策を施すという構成を採用しても良い。
【0029】
また、ECU以外のプリント配線板を備える電子制御装置に対して、本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1……電子制御装置、2……電子回路基板、2a……プリント配線板、2a1……外縁部、2a3……側端、2b……コネクタ、2b1……第1接続口、2b2……第2接続口、2d……内層パターン、20……大電流用内層パターン、30……電流用内層パターン、R1……大電流領域、R2……小電流領域、R3……隙間(クリアランス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装されたプリント配線板を備える電子制御装置であって、
前記プリント配線板は、相対的に大きな電流が流されると共に前記プリント配線板の内部に形成される大電流用内層パターンと、相対的に小さな電流が流されると共に前記プリント配線板の内部に形成される電流用内層パターンとを有し、
前記プリント配線板の厚み方向から見て、前記大電流用内層パターンが形成される大電流領域と、前記電流用内層パターンが形成される小電流領域とが重ならずに配置されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記プリント配線板の厚み方向から見て、前記大電流領域と前記小電流領域との間に一定のクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記大電流用内層パターンが前記プリント配線板の外縁部まで延設されると共に前記大電流用内層パターンが前記プリント配線板の側端にて露出されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記プリント配線板を収容すると共に当該プリント配線板の前記外縁部と当接する金属製の筐体を備えることを特徴とする請求項3記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記プリント配線板に実装されると共に、前記大電流用内層パターンと電気的に接続される第1接続口と前記電流用内層パターンと電気的に接続される第2接続口とを有するコネクタを備え、
前記プリント配線板の厚み方向から見て、前記1接続口と前記第2接続口との境界線を境として前記大電流領域と前記小電流領域とが分けられている
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記大電流用内層パターン及び前記電流用内層パターンが、前記プリント配線板の厚み方向に複数層設けられていることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−110354(P2013−110354A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256172(P2011−256172)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】