電子制御装置
【課題】高密度化された基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制し得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】遮断配線30は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線30を介した接続を遮断するように構成されている。そして、基板面を被覆するソルダレジスト28には、遮断配線30の一部を外方に露出させるための矩形状の開口28aが形成されている。この開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるように形成されている。
【解決手段】遮断配線30は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線30を介した接続を遮断するように構成されている。そして、基板面を被覆するソルダレジスト28には、遮断配線30の一部を外方に露出させるための矩形状の開口28aが形成されている。この開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型部品により高密度化される電子制御装置では、小型化された部品内での短絡故障時に生じる短絡電流が大電流に至らないために、電子制御装置に関する故障に対応して設けられるヒューズでの遮断までに長時間を要することとなり、特にヒューズ設置数を削減してコスト低減を目的とした複数の電子制御装置を保護する大型ヒューズでは遮断に更に長時間を要することとなる。このため、遮断時に部品の高温度化や電源配線等での長時間の電圧低下などの問題が生じる。一方、電子制御の高度化や多機能化に伴い搭載される多くの回路や部品に共用されて作動に必要な電源を供給する電源配線(例えばバッテリ経路とアース経路)等の共用配線には、通常装置作動時でも比較的大きな電流が流れることとなる。このため、共用配線経路に設けられる大型ヒューズの遮断電流は更に大きくなる傾向から、個々の回路や部品の短絡故障で十分な遮断性能が確保出来ないことが懸念される。例えば、車両用の電子制御装置の様に、環境温度が高いだけでなく搭載装置が多い装置では、上述した問題が顕著となる。
【0003】
このため、下記特許文献1に開示されるプリント基板制御装置の様に、各基板上での電源配線経路に遮断配線を設けて、過電流が流れた時に遮断配線を溶断することで、短絡故障時には基板毎または装置毎に電源配線経路を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高密度化された基板面では、電子部品が実装されて接続されるランドなどの部品搭載配線とこの電子部品を含めた複数の電子部品により共用される共用配線とが近接するように配置される。そして、通常、接続部を除く配線上にはソルダレジストなどの保護膜が形成されており、共用配線と部品搭載配線とを接続する配線間に設けられる遮断配線上にも保護膜が形成される。
【0006】
上記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶けて生成された溶融導体が膨張・破裂等して溶断することで、遮断機能を発揮する。しかしながら、このような遮断配線では、溶断状況によっては、溶融導体の一部が好適に拡散せずに滞留することがあり、溶断位置や溶断時間がばらついて遮断性能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高密度化された基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制し得る電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電子制御装置では、基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、前記保護層には、前記遮断配線の一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記開口は、前記遮断配線のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電子制御装置において、前記開口は、前記遮断配線の一部に加えて前記共用配線の一部を露出させるように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記開口は、これら遮断配線の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記保護層には、前記遮断配線に近接する領域を露出させる第2開口が前記開口に連通するように形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の電子制御装置において、前記第2開口は、前記開口よりも深く形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の電子制御装置において、前記第2開口と前記開口とが連通する領域での底面が、第2開口側ほど徐々に深くなるように形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記第2開口内には、前記遮断配線が溶断することで生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置において、遮断配線は、前記共用配線および前記部品搭載配線の少なくともいずれか一方の接続対象に対して接続配線を介して接続されており、前記接続配線は、前記遮断配線との接続部位での断面積が前記接続対象との接続部位での断面積よりも小さくなるように形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項10に記載の電子制御装置において、前記接続配線は、前記接続対象との接続部位の断面積が当該接続配線の中央側の断面積に対して絞られるように小さく形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線の近傍には、当該遮断配線にて過電流により発生した熱を拡散させる熱拡散用配線が形成されることを特徴とする。
【0021】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする。
【0022】
請求項15の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする。
【0023】
請求項16の発明は、請求項15に記載の電子制御装置において、前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明では、遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断するように構成され、基板面を被覆する保護層には、遮断配線の一部を露出させる開口が形成される。
【0025】
このため、過電流による発熱に応じて遮断配線が溶断すると、この溶断により生成された溶融導体が開口から流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が滞留しにくくなるので、遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0026】
請求項2の発明では、開口は、遮断配線のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されるため、開口が遮断配線のうち溶断しやすい部位に対応して設けられることとなり、溶融導体の滞留を確実に抑制して、遮断配線による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。
【0027】
請求項3の発明では、開口は、遮断配線の一部に加えて共用配線の一部を露出させるように形成されるため、遮断配線の溶断により生成された溶融導体が開口内にて露出する共用配線の一部に付着しやすくなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が開口から流れ出て他の電子部品に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0028】
請求項4の発明では、遮断配線は、複数の電子部品に応じて複数設けられ、開口は、これら遮断配線の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられる。このため、複数の遮断配線を設ける場合であっても、これら各遮断配線での溶融導体が滞留しにくくなるので、高密度化された基板面に設けられる各遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0029】
請求項5の発明では、保護層には、遮断配線に近接する領域を露出させる第2開口が開口に連通するように形成されるため、遮断配線の溶断により生成された溶融導体が第2開口に流れ込むこととなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が流れ出て他の電子部品に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0030】
請求項6の発明では、第2開口は、開口よりも深く形成されるため、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口に流れ込んだ溶融導体の流出を抑制することができる。
【0031】
請求項7の発明では、第2開口と開口とが連通する領域での底面が、第2開口側ほど徐々に深くなるように形成されるため、溶融導体の滞留を抑制するとともに、開口からの溶融導体を第2開口内に好適に流れ込ませることができる。
【0032】
請求項8の発明では、第2開口内には、遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられるため、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口に流れ込んだ溶融導体の流出を確実に抑制することができる。
【0033】
請求項9の発明では、遮断配線の溶断時に高温の溶融導体が生成されると、この溶融導体は、基板の表面を流動する際に、当該遮断配線に近接して設けられた付着手段に付着する。これにより、溶融導体は、付着手段に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線による遮断性能の低下を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。
【0034】
請求項10の発明では、遮断配線は、共用配線および部品搭載配線の少なくともいずれか一方の接続対象に対して接続配線を介して接続されており、この接続配線は、遮断配線との接続部位での断面積が接続対象との接続部位での断面積よりも小さくなるように形成される。
【0035】
このため、過電流により遮断配線に生じた熱が接続配線を介して接続対象(共用配線・部品搭載配線)に伝わる場合には、直接接続対象に伝わる場合と比較して、当該接続対象への熱の拡散が抑制される。これにより、遮断配線における温度上昇のばらつきが抑制されるので、高密度化された基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。また、遮断配線および部品搭載配線間に上記接続配線が設けられる場合には、過電流により遮断配線に生じた熱は、接続配線内では拡散して部品搭載配線に伝わるため、部品搭載配線における局所的な温度上昇が緩和される。これにより、部品搭載配線に比較的融点の低いはんだを用いる場合であっても、遮断配線からの熱によるはんだの溶融を抑制することができる。
【0036】
請求項11の発明では、接続配線は、接続対象との接続部位(以下、絞り部ともいう)の断面積が当該接続配線の中央側の断面積に対して絞られるように小さく形成される。このため、遮断配線を介して接続配線に伝わる熱は、絞り部から接続対象に伝わりにくくなり、接続配線のうち絞り部を除く部位(以下、熱保持部ともいう)に蓄熱されることとなる。このように熱保持部にて遮断配線からの熱が蓄熱されるため、遮断時における熱保持部の温度が比較的高温に維持されているので、遮断配線における温度上昇のばらつきが抑制されて、遮断配線による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。特に、接続配線および遮断配線を所定の形状・材質等に設定することで、ばらつきが抑制されるように遮断条件が一義的に決まるので、遮断配線および接続配線を1つの組み合わせとして汎用的に適用することができる。また、熱保持部の体積を変更することで接続配線の蓄熱量を制御できるので、遮断配線の溶断タイミングを容易に調整することができる。
【0037】
請求項12の発明では、共用配線には、遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成される。このため、過電流により遮断配線にて発生した熱が共用配線に伝わると、この熱は、近接する放熱部に伝わり放熱されて、当該共用配線に接続される他の電子部品に伝わりにくくなる。これにより、高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0038】
請求項13の発明では、過電流により発生した熱が、基板などを介して周囲に伝達される際、熱源である遮断配線に近接して設けられた熱拡散用配線により拡散されることによって、熱から保護すべき他の電子部品への熱の伝達が抑制される。これにより、遮断配線による遮断性能の低下を抑制するとともに、上記他の電子部品の正常な動作を維持することができる。
【0039】
請求項14の発明では、遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、この所定の角度は、第1配線部および第2配線部のうち一方が共用配線に接続され他方が部品搭載配線に接続されるように設定される。このため、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する共用配線と部品搭載配線とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線の配線長を確保しやすくなるので、遮断配線による遮断性能の低下を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0040】
請求項15の発明では、共用配線は、電源配線であるため、大電流が流れるために比較的配線幅が広く形成される電源配線と部品搭載配線との間に上記遮断配線が設けられる場合であっても、この遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0041】
請求項16の発明では、電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および他の装置を保護するための共通のヒューズが、電源からの電源経路上に設けられる。これにより、遮断配線を設けた電子制御装置が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線が溶断することで、他の装置への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態に係るトラクションコントロール装置を備える車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図3】図2の3−3線相当の切断面による断面図である。
【図4】図2の遮断配線近傍を拡大して示す拡大図である。
【図5】検証用遮断配線および検証用開口の詳細形状を説明するための説明図である。
【図6】検証用開口の有無について遮断電流値および溶断時間の関係を示すグラフである。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図9】第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図10】第1実施形態の第4変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図11】第2実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図12】図12(A)は、第3実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図であり、図12(B)は、図12(A)の12B−12B線相当の切断面による断面図である。
【図13】図13(A)は、第3実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図であり、図13(B)は、図13(A)の13B−13B線相当の切断面による断面図である。
【図14】第3実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図15】図15(A)は、第3実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図であり、図15(B)は、図15(A)の15B−15B線相当の切断面による断面図である。
【図16】第4実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図17】第5実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図18】第6実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図19】第6実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図20】第7実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図21】第8実施形態に係る電子制御装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20を備える車両制御システム11の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御システム11は、自動車10に車載される各種機器を制御するエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12を備えて構成されている。
【0044】
また、車両制御システム11には、上記複数の電子制御装置12に加えて、本第1実施形態に係る電子制御装置が適用されたトラクションコントロール装置20が設けられている。このトラクションコントロール装置20は、駆動輪の加速スリップを防止する加速スリップ防止機能を有する装置で、走行制御等の主要な車両制御に関して他の電子制御装置よりも比較的重要性が低い装置である。
【0045】
トラクションコントロール装置20を含めた複数の電子制御装置12は、過電流保護用として採用されるヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介して直流電源(以下、バッテリ13という)に電気的に接続されている。ヒューズ14aおよびヒューズ14bとしては、多くの電子制御装置等に対して作動に必要な電力を供給する経路に設けられるために、例えば15A用や20A用の大型のヒューズが採用されている。これにより、例えば、ヒューズ14aに接続される各種電子制御装置12のうちのいずれかに不具合が生じ所定の電流値を超える過電流が発生すると、この過電流によりヒューズ14aが溶断し、当該ヒューズ14aを介した電力供給が遮断されて、他の電子制御装置12への悪影響が防止される。なお、本実施形態では、各電子制御装置12は、2つの大型ヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されているが、これに限らず、単一の大型ヒューズを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよいし、3つ以上のヒューズのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよい。
【0046】
次に、本第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の構成について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、図1のトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図3は、図2の3−3線相当の切断面による断面図である。図4は、図2の遮断配線30近傍を拡大して示す拡大図である。なお、図2および図4では、便宜上、開口28aを除き基板面を保護するソルダレジスト28の図示を省略しており、図3では、遮断配線30等の厚さを誇張して図示している。
【0047】
トラクションコントロール装置20は、上述した加速スリップ防止機能を実現するための複数の電子部品22を高密度化して実装した回路基板21が図略のケースに収容されて構成されている。この回路基板21は、図略のコネクタ等を介して外部の機器や他の電子制御装置12と電気的に接続されており、外部から入力される所定の信号に応じて駆動輪の加速スリップを防止するための制御を実行する。
【0048】
図2に示すように、回路基板21には、バッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、各電子部品22に対してそれぞれ電気的に接続されている。このため、電源配線23は、各電子部品22により共用される共用配線として機能する。
【0049】
図2および図3に示すように、回路基板21には、複数の電子部品22の1つとして、セラミックコンデンサ24が実装されている。このセラミックコンデンサ24は、温度特性や周波数特性を向上させ小型で大容量を実現するため、例えば、チタン酸バリウム系の高誘電率セラミック誘電体24bと内部電極24cとを層状に積み重ねて一体化して構成されている。
【0050】
セラミックコンデンサ24の外部電極24aがはんだ25を介して接続されるランド26と電源配線23との間には、遮断配線30が配置されている。この遮断配線30は、過電流による発熱に応じて溶断することで過電流保護機能を発揮して当該遮断配線30を介した電気的接続を遮断する配線である。これにより、その基板に応じた過電流保護を実現することができる。
【0051】
ここで、遮断配線30は、その配線幅(基板面上で電流の方向に直交する配線の幅)が電源配線23の配線幅に対して十分に小さくなるように設定されている。具体的には、例えば、遮断配線30の配線幅が0.2〜0.3mm程度に設定され、電源配線23の配線幅が2mm程度に設定されている。なお、ランド26は、特許請求の範囲に記載の「部品搭載配線」の一例に相当し得る。
【0052】
図3に示すように、遮断配線30の内層側には、当該遮断配線30の厚さ(基板面に直交する方向の長さ)を電源配線23やランド26の厚さよりも短くし、当該遮断配線30から内層側への伝熱を抑制するための伝熱抑制部材27が設けられている。伝熱抑制部材27は、例えば、基板表面を保護するレジスト材を用いて構成されており、遮断配線30の成形時に伝熱抑制部材27を遮断配線30の内層側に位置するように配置するだけで、遮断配線30の厚さを容易に薄くすることができる。
【0053】
図3および図4に示すように、基板面を保護するための保護層であるソルダレジスト28には、遮断配線30の一部を外方に露出させるための矩形状の開口28aが形成されている。具体的には、開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるように形成されている。
【0054】
ここで、開口28aを形成する理由について、図5および図6を用いて説明する。図5は、検証用遮断配線101および検証用開口102の詳細形状を説明するための説明図である。図6は、検証用開口102の有無について遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を示すグラフである。
【0055】
図5に示す寸法の検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101に対して所定の電流を流し、この検証用遮断配線101が溶断するときの遮断電流値Iと当該検証用遮断配線101が溶断するまでの溶断時間tとを測定する。また、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101に対して所定の電流を流したときの遮断電流値Iおよび溶断時間tを測定する。ここで、検証用遮断配線101は、その全体長さL1が2.85mmに設定され、その幅W1が0.25mmに設定される。また、検証用開口102は、L1に平行な開口長L2が0.6mmに設定され、その開口幅W2が0.25mmに設定される。なお、図5では、説明の便宜上、開口幅W2が幅W1よりも長くなるように図示されている。
【0056】
上述のように測定された遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を図6のグラフに示す。ここで、図6に示す太実線S1は、検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、太実線S1を中心に太破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。また、図6に示す細実線S2は、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、細実線S2を中心に細破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。
【0057】
図6からわかるように、同じ遮断電流値では、検証用開口102を形成することで、溶断時間tが短くなっている。さらに、同じ遮断電流値では、溶断時間tのばらつきが小さくなっている。一方、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101では、検証用開口102が形成される場合と比較して、各過大電流域で溶断時間tが長くなり、かつ、溶断時間tのばらつきが生じている。これは、検証用遮断配線101が溶断することで生成された溶融導体が、検証用開口102から流れ出て、溶断前の検証用遮断配線101の位置に滞留しにくくなるからである。
【0058】
このようなことから、開口28aにより遮断配線30の一部を露出させることで、溶断時間tが短くなり保護作用が早期に得られ、保護対象となる部品の温度上昇を抑制することができる。さらに、遮断配線30の遮断時における電源配線23への電圧低下の影響時間を大きく短縮することができる。また、溶断時間tのばらつきが小さくなることで、各装置や回路で遮断配線30の溶断時間を考慮した安定化コンデンサなど(電源安定化手段)について容量のより小さなものを採用することができ、低コスト化や小型化を図ることができる。さらに電流の定格領域でも溶断時間tを小さくできるので、回路設計における自由度を向上させることができる。
【0059】
このように構成されるトラクションコントロール装置20では、例えば、セラミックコンデンサ24が損傷等して短絡し過電流が遮断配線30を流れると、この遮断配線30がその過電流に応じて発熱する。そして、この発熱が所定の温度以上になると、遮断配線30が溶断し、当該遮断配線30を介した電気的接続が遮断される。これにより、電源配線23に接続される他の電子部品22が上記過電流から保護される。また、上記遮断時の電流はヒューズ14aを遮断するほど大きくならないので、当該ヒューズ14aを介して電力供給される他の電子制御装置12に対して、トラクションコントロール装置20の損傷が影響することもない。さらに、過電流の発生から遮断配線30の溶断までの時間は、数mS(ミリ秒)程度であり、上述した大型ヒューズ14a,14b等の溶断時間は通常0.02S(秒)程度であることから、処理速度の向上が図られる電子制御装置や電子部品であっても好適に過電流保護を実施することができる。
【0060】
特に、本実施形態では、遮断配線30が溶断することで生成された溶融導体が開口28aから流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が溶断前の遮断配線30の位置に滞留しにくくなるので、溶融導体の滞留に起因する溶断位置や溶断時間のばらつきが抑制されて、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0061】
さらに、開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されるため、開口28aが遮断配線30のうち溶断しやすい部位に対応して設けられることとなり、溶融導体の滞留を確実に抑制して、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。
【0062】
また、電源配線23は、トラクションコントロール装置20と異なる他の電子制御装置12にも電力を供給するバッテリ13から電線を介して各々のコネクタに接続されており、当該トラクションコントロール装置20および他の電子制御装置12を過電流保護するための共通のヒューズ14aが、バッテリ13からの電源経路上に設けられている。これにより、遮断配線30を設けたトラクションコントロール装置20が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線30が溶断することで、他の電子制御装置12への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【0063】
図7は、第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図8は、第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図9は、第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図10は、第1実施形態の第4変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。
図7に示すように、第1実施形態の第1変形例として、ソルダレジスト28に設けられる開口28aは、遮断配線30の一部に加えて電源配線23の一部を露出させるように形成されてもよい。これにより、遮断配線30の溶断により生成された溶融導体が開口28a内にて露出する電源配線23の一部に付着しやすくなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が開口28aから流れ出て他の電子部品22に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0064】
また、図8に示すように、第1実施形態の第2変形例として、遮断配線30の近傍には、当該遮断配線30の溶断に伴い生成された溶融導体を付着(吸着)させる付着手段(吸着手段)として例えば電源配線23等と同じ配線材料にて形成される付着用配線29が、例えば一対設けられてもよい。これにより、遮断配線30の溶断時に高温の溶融導体が生成されて開口28aから流れ出ると、この溶融導体は、回路基板21の表面を流動する際に、当該遮断配線30に近接して設けられた付着用配線29に付着する。
【0065】
これにより、溶融導体は、付着用配線29に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。
【0066】
また、第1実施形態の第3変形例として、遮断配線30は、複数の電子部品22に応じて複数設けられ、開口28aは、これら遮断配線30の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられてもよい。具体的には、図9に例示するように、一方の遮断配線30が、電子部品22a用のランド26aと電源配線23とに接続され、他方の遮断配線30が、電子部品22b用のランド26bと電源配線23とに接続されている。そして、開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるようにそれぞれ形成されている。
【0067】
また、図10に示すように、第1実施形態の第4変形例として、開口28aは、複数の外部電極を有するアレイ状のセラミックコンデンサ24dと電源配線23との各接続間に設けられる遮断配線30の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられてもよい。このセラミックコンデンサ24dは、4つの積層セラミックコンデンサをコンデンサアレイとしてパッケージ化したものである。本変形例では、遮断配線30は、セラミックコンデンサ24dの各外部電極が接続されるランド26a〜26dと、電源配線23との間にそれぞれ設けられている。
【0068】
このように、回路基板21に設けられる複数の遮断配線30に対してそれぞれ開口28aを形成する場合であっても、これら各遮断配線30での溶融導体が滞留しにくくなるので、高密度化された基板面に設けられる各遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るトラクションコントロール装置について図11を用いて説明する。図11は、第2実施形態に係るトラクションコントロール装置20aの要部を示す説明図である。
【0070】
本第2実施形態では、トラクションコントロール装置20aにおいて、遮断配線30に代えて遮断配線30aを採用する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図11に示すように、遮断配線30aは、限られた実装領域にて必要な遮断配線の配線長を確保するために、蛇行状に形成されている。そして、ソルダレジスト28に設けられる開口28aは、遮断配線30aのうちその全長の中央近傍部位を露出させるように形成されている。
【0072】
これにより、高密度化された基板面であっても遮断配線30aを細長く形成できるので、必要な遮断配線30aの配線長を確保しやすくなる。特に、開口28aが最も発熱しやすい中央近傍部位に設けられるので、蛇行状に形成された遮断配線30aであっても溶融導体の滞留を確実に抑制して、遮断配線30aによる遮断性能の低下を確実に抑制することができる。なお、上述した遮断配線30aの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0073】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るトラクションコントロール装置について図12を用いて説明する。図12(A)は、第3実施形態に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図であり、図12(B)は、図12(A)の12B−12B線相当の切断面による断面図である。
【0074】
本第3実施形態では、トラクションコントロール装置20bにおいて、ソルダレジスト28に第2開口28bを新たに形成する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
図12(A),(B)に示すように、ソルダレジスト28には、遮断配線30に近接する領域を露出させる第2開口28bが、開口28aに連通するように形成されている。具体的には、第2開口28bは、遮断配線30の短手方向(図12(A)の上下方向)にて配線部が設けられていない部分のソルダレジスト28を除去することで開口28aに連通するように形成される。なお、図12において、ソルダレジスト28の高さ、すなわち、第2開口28bの深さは、例えば、68μmであり、遮断配線30の厚さは、例えば、43μmである。
【0076】
このため、遮断配線30の溶断により生成された溶融導体が第2開口28bに流れ込むこととなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が流れ出て他の電子部品22に影響を及ぼすことを抑制することができる。なお、上述した第2開口28bの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0077】
図13(A)は、第3実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図であり、図13(B)は、図13(A)の13B−13B線相当の切断面による断面図である。図14(A)〜(C)は、第3実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図である。図15(A)は、第3実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図であり、図15(B)は、図15(A)の15B−15B線相当の切断面による断面図である。
【0078】
図13(A),(B)に示すように、第3実施形態の第1変形例として、開口28aに連通する第2開口28bは、開口28aよりも深く形成されてもよい。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口28bに流れ込んだ溶融導体の流出を抑制することができる。
【0079】
また、図14(A)に示すように、第3実施形態の第2変形例として、第2開口28bと開口28aとが連通する領域での底面が、第2開口28b側ほど徐々に深くなるようにテーパ状に形成されてもよい。また、図14(B)に示すように、第3実施形態の第2変形例として、第2開口28bと開口28aとが連通する領域での底面が、第2開口28b側ほど徐々に深くなるように断面略円弧状(R状)に形成されてもよい。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、開口28aからの溶融導体を第2開口28b内に好適に流れ込ませることができる。また、図14(C)に示すように、遮断配線30の成形時にこの遮断配線30を浅い位置に設けるためのコア材28cを当該遮断配線30の内層側に配置することで、開口28aの深さを浅くして、第2開口28bを開口28aよりも相対的に深く形成してもよい。
【0080】
また、図15(A),(B)に示すように、第3実施形態の第3変形例として、第2開口28b内に、遮断配線30の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段として、電源配線23の一部とランド26の一部とを露出させるように配置してもよい。このため、開口28aから第2開口28bに流れ込んだ溶融導体は、第2開口28b内にて露出する電源配線23の一部やランド26の一部に接触して熱を奪われることで付着する。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口28bに流れ込んだ溶融導体の流出を確実に抑制することができる。なお、電源配線23の一部とランド26の一部との双方を第2開口28b内に露出することに限らず、どちらか一方を第2開口28b内に露出させてもよいし、他の配線部材など溶融導体の熱を奪って付着させ得る付着手段を第2開口28b内に設けてもよい。
【0081】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るトラクションコントロール装置について図16を用いて説明する。図16は、第4実施形態に係るトラクションコントロール装置20cの要部を示す説明図である。
【0082】
本第4実施形態では、遮断配線30が接続配線40,50を介して電源配線23およびランド26に接続される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
図16に示すように、遮断配線30は、その一端にて一側接続配線40を介して電源配線23に電気的に接続されており、その他端にて他側接続配線50を介してランド26に電気的に接続されている。一側接続配線40および他側接続配線50は、遮断配線30や電源配線23と同じ銅などの導電性材料により、遮断配線30よりも導体体積が大きくなるように形成されている。
【0084】
具体的には、図16に示すように、一側接続配線40は、その配線幅が電源配線23側ほど広くなるように略円弧状(R状)に形成されることで、遮断配線30との接続部位での断面積S1aが接続対象である電源配線23との接続部位での断面積S1bよりも小さくなるように構成されている。また、他側接続配線50は、その配線幅がランド26側ほど広くなるように略円弧状(R状)に形成されることで、遮断配線30との接続部位での断面積S2aが接続対象であるランド26との接続部位での断面積S2bよりも小さくなるように構成されている。
【0085】
このため、過電流により遮断配線30に生じた熱が一側接続配線40および他側接続配線50を介して電源配線23やランド26に伝わる場合には、直接電源配線23やランド26に伝わる場合と比較して、当該電源配線23やランド26への遮断配線が溶断するために必要な熱が過渡に吸い出されてしまうことを抑制する。これにより、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されるので、高密度化された基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。特に、過電流により遮断配線30に生じた熱は、他側接続配線50内では徐々に拡散してランド26に広く伝わるため、当該ランド26における局所的な温度上昇も緩和される。これにより、ランド26に比較的融点の低いはんだを用いる場合であっても、遮断配線30からの熱によるはんだの溶融を抑制することができる。また、一側接続配線40および他側接続配線50は、遮断配線30よりも導体体積が大きいため、遮断配線30からの熱をそれぞれ好適に蓄熱することができる。
【0086】
特に、一側接続配線40は、その側縁が遮断配線30の側縁となだらかに連続しており電源配線23に向かうにつれて徐々に広がるように、形成されている。このように、遮断配線30および一側接続配線40の側縁がなだらかに連続するため、これら各配線30,40をエッチング液を用いて形成する場合には、遮断配線30の側縁と一側接続配線40の側縁との接続部位でエッチング液が均一に流れやすくなる。これにより、上記接続部位でのエッチング液の滞留が抑制されて遮断配線30の配線幅のばらつきが抑えられるので、基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。なお、上述した遮断配線30に対する一側接続配線40および他側接続配線50の構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0087】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るトラクションコントロール装置について図17を用いて説明する。図17は、第5実施形態に係るトラクションコントロール装置20dの要部を示す説明図である。
【0088】
本第5実施形態では、トラクションコントロール装置20dにおいて、一側接続配線40および他側接続配線50に代えて一側接続配線40aおよび他側接続配線50aを採用する点が主に上記第4実施形態と異なる。このため、第4実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
図17に示すように、一側接続配線40aは、遮断配線30近傍の部位である熱保持部41と、電源配線23近傍の部位である絞り部42とから構成されている。絞り部42は、一側接続配線40aにおける電源配線23との接続部位の総断面積S3aが、当該一側接続配線40aの中央側の断面積、すなわち、熱保持部41の断面積S3bに対して絞られるように小さく形成されている。
【0090】
また、他側接続配線50aも、一側接続配線40aと同様に、遮断配線30近傍の部位である熱保持部51と、ランド26近傍の部位である絞り部52とから構成されている。絞り部52は、他側接続配線50aにおけるランド26との接続部位の総断面積S4aが、当該他側接続配線50aの中央側の断面積、すなわち、熱保持部51の断面積S4bに対して絞られるように小さく形成されている。
【0091】
このため、遮断配線30を介して一側接続配線40aに伝わる熱は、絞り部42から電源配線23に伝わりにくくなり、熱保持部41に蓄熱されることとなる。このように熱保持部41にて遮断配線30からの熱が蓄熱されるため、遮断時における熱保持部41の温度が比較的高温に維持されているので、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されて、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。一側接続配線40aと同様に構成される他側接続配線50aについても、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。
【0092】
特に、遮断配線30と一側接続配線40aおよび他側接続配線50aとを所定の形状・材質等に設定することで、ばらつきが抑制されるように遮断条件が一義的に決まるので、遮断配線30と一側接続配線40aおよび他側接続配線50aとを1つの組み合わせとして汎用的に適用することができる。また、熱保持部41,51の体積を変更することで一側接続配線40aおよび他側接続配線50aの蓄熱量を制御できるので、遮断配線30の溶断タイミングを容易に調整することができる。
【0093】
また、一側接続配線40aは、電源配線23との接続部位が2個所絞られて絞り部42として形成されるため、遮断配線30からの熱が両絞り部42を介して電源配線23に伝わる場合であっても、両絞り部42にて分散されて電源配線23に伝わることとなる。このため、電源配線23における局所的な温度上昇を緩和することができる。一側接続配線40aと同様に構成される他側接続配線50aについても、ランド26における局所的な温度上昇を緩和することができる。
【0094】
なお、一側接続配線40aおよび他側接続配線50aに設けられる絞り部42,52は、2つ形成されることに限らず、3つ以上形成されてもよい。また、遮断条件によっては、1つの絞り部42,52を設けるようにしてもよい。なお、上述した遮断配線30に対する一側接続配線40aおよび他側接続配線50aの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0095】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係るトラクションコントロール装置について図18を用いて説明する。図18は、第6実施形態に係るトラクションコントロール装置20eの要部を示す説明図である。
【0096】
本第6実施形態では、トラクションコントロール装置20eにおいて、電源配線23に対して放熱部29aが新たに設けられる点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
図18に示すように、放熱部29aは、電源配線23と同一材料からなる配線であって、遮断配線30に接続される電子部品22(本実施形態ではセラミックコンデンサ24)を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置にて電源配線23に接続するように配置されている。
【0098】
このため、過電流により遮断配線30にて発生した熱が電源配線23に伝わると、この熱は、近接する放熱部29aに伝わり放熱されることとなる。これにより、遮断配線30にて発生した熱を、電源配線23に接続される他の電子部品22に伝わりにくくすることができる。なお、放熱部29aは、配線状に形成されることに限らず、例えば、基板に設けられる層間接続部の内部に形成される導電部から構成されてもよい。なお、上述した放熱部29aの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0099】
図19は、第6実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20eの要部を示す説明図である。
図19に示すように、第6実施形態の第1変形例として、遮断配線30の近傍には、放熱部29aに代えて、当該遮断配線30にて過電流により発生した熱を拡散させる熱拡散部材として、例えば電源配線23等と同じ配線材料にて形成される熱拡散用配線29bが形成されてもよい。これにより、過電流により発生した熱が、周囲に伝達される際、熱源である遮断配線30に近接して設けられた熱拡散用配線29bにより拡散されることによって、熱から保護すべき他の電子部品22への熱の伝達が抑制される。これにより、遮断配線30による遮断性能の低下(溶断時間および遮断電流のばらつきや増大)を抑制するとともに、上記他の電子部品22の正常な動作を維持することができる。
【0100】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係るトラクションコントロール装置について図20を用いて説明する。図20は、第7実施形態に係るトラクションコントロール装置20fの要部を示す説明図である。
本第7実施形態では、遮断配線30に代えて遮断配線30bを採用し、高密度化を図るため、セラミックコンデンサ24の両外部電極24aがそれぞれ接続されるランド26間に電源配線23が配置される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0101】
図20に示すように、遮断配線30bは、第1配線部31とこの第1配線部31よりも配線長が短い第2配線部32とが所定の角度で接続されて形成されている。この所定の角度は、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されるように、例えば90°に設定される。開口28aは、遮断配線30bのうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるように形成されている。
【0102】
このように遮断配線30bを曲げて形成することで、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する電源配線23とランド26とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線30bの配線長を確保しやすくなるので、遮断配線30bによる遮断性能の低下を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されているが、これに限らず、第1配線部31がランド26に接続され、第2配線部32が電源配線23に接続されてもよい。また、上記所定の角度は、近接する電源配線23とランド26との位置に応じて設定されてもよい。また、遮断配線30bは、上述した一側接続配線40を介して電源配線23に接続されてもよいし、上述した他側接続配線50を介してランド26に接続されてもよい。また、上述した遮断配線30bの構成は、他の実施形態および変形例に採用されてもよい。
【0104】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係る電子制御装置について図21を用いて説明する。図21は、第8実施形態に係る電子制御装置110の要部を示す説明図である。
本第8実施形態に係る電子制御装置110では、同一の基板120上に、上記第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の機能を回路ブロック化した回路ブロック130と、さらに他の機能を回路ブロック化した回路ブロック140,150とを配置して構成されている。なお、他の機能としては、回路ブロック130の機能よりも重要性が高い機能であって、例えば、エンジンECUに対応する機能やブレーキECUに対応する機能であり、回路ブロック140は、エンジンECUに対応する機能を回路ブロック化して構成され、回路ブロック150は、ブレーキECUに対応する機能を回路ブロック化して構成されている。
【0105】
図21に示すように、各回路ブロック130,140,150には、コネクタ121を介してバッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、それぞれ分岐配線131,141,151を介して電気的に接続されている。そして、上述した遮断配線30が回路ブロック130の分岐配線131上に当該回路ブロック130に対して過電流保護として機能するように配置されている。そして、電源配線23上に、当該基板120に対して過電流保護として機能する遮断配線122が設けられている。すなわち、基板120上には、全ての回路ブロック130〜150を含めた基板120を保護する遮断配線122と、回路ブロック130を保護する遮断配線30との2つの遮断配線が設けられている。
【0106】
これにより、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じることから当該遮断配線30が溶断する場合でも、他の回路ブロック140,150では、分岐配線141,151を介した電源配線23との接続が維持されるので、溶断した遮断配線30を有する回路ブロック130のみ機能を停止して、他の回路ブロック140,150での機能を継続することができる。特に、回路ブロック130の機能は、他の回路ブロック140,150よりも重要性が低いので、重要性が低い回路ブロック130の機能停止が、重要性が高い回路ブロック140,150の機能に影響を及ぼすことを抑制することができる。また、遮断配線30が設けられない回路ブロック140,150において短絡故障等により過電流が生じる場合でも、その過電流が電源配線23を流れることで遮断配線122が溶断して各回路ブロック130,140,150での機能が停止するので、発生した過電流が他の回路ブロックへ流れることを抑制することができる。
【0107】
特に、遮断配線30を、遮断配線122に対して遮断時の電流値が小さくなるようにその配線幅を小さく形成することで、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じる場合には、遮断配線30が遮断配線122よりも確実に早く溶断する。これにより、他の回路ブロック140,150への影響を確実に抑制することができる。
なお、本実施形態における1つの基板上に2つの遮断配線を設ける構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0108】
なお、本発明は上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上述した開口28aが形成される遮断配線30や他の遮断配線は、電源配線23に代えて、過電流保護の対象である各電子部品22にて共用される共用配線に電気的に接続されてもよい。
【0109】
(2)上述した開口28aが形成される遮断配線30や他の遮断配線は、ランド26に電気的に接続されることに限らず、例えば、ソルダレジスト等の保護膜により保護されて露出しない内層側の配線など、電子部品を搭載するための部品搭載配線に電気的に接続されてもよい。
【0110】
(3)上述した開口28aが形成される遮断配線30や他の遮断配線は、上述したエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12の過電流保護用として基板ごとに採用されてもよい。
【0111】
(4)遮断配線30は、その一部または全部が電源配線23やランド26よりも熱伝導率の低い材料、例えばアルミニウム等により形成してもよい。これにより、過電流により遮断配線30に生じた熱が電源配線23やランド26に伝わりにくくなるので、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されて、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。他の遮断配線30a,30bについても同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0112】
10…自動車
11…車両制御システム
12…電子制御装置
13…バッテリ
14a,14b…ヒューズ
20,20a〜20f…トラクションコントロール装置(電子制御装置)
21…回路基板
22…電子部品
23…電源配線
24…セラミックコンデンサ(電子部品)
26…ランド(部品搭載配線)
28…ソルダレジスト(保護層)
28a…開口
28b…第2開口
29…付着用配線
29a…放熱部
29b…熱拡散用配線
30,30a,30b…遮断配線
40,40a…一側接続配線
50,50a…他側接続配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型部品により高密度化される電子制御装置では、小型化された部品内での短絡故障時に生じる短絡電流が大電流に至らないために、電子制御装置に関する故障に対応して設けられるヒューズでの遮断までに長時間を要することとなり、特にヒューズ設置数を削減してコスト低減を目的とした複数の電子制御装置を保護する大型ヒューズでは遮断に更に長時間を要することとなる。このため、遮断時に部品の高温度化や電源配線等での長時間の電圧低下などの問題が生じる。一方、電子制御の高度化や多機能化に伴い搭載される多くの回路や部品に共用されて作動に必要な電源を供給する電源配線(例えばバッテリ経路とアース経路)等の共用配線には、通常装置作動時でも比較的大きな電流が流れることとなる。このため、共用配線経路に設けられる大型ヒューズの遮断電流は更に大きくなる傾向から、個々の回路や部品の短絡故障で十分な遮断性能が確保出来ないことが懸念される。例えば、車両用の電子制御装置の様に、環境温度が高いだけでなく搭載装置が多い装置では、上述した問題が顕著となる。
【0003】
このため、下記特許文献1に開示されるプリント基板制御装置の様に、各基板上での電源配線経路に遮断配線を設けて、過電流が流れた時に遮断配線を溶断することで、短絡故障時には基板毎または装置毎に電源配線経路を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高密度化された基板面では、電子部品が実装されて接続されるランドなどの部品搭載配線とこの電子部品を含めた複数の電子部品により共用される共用配線とが近接するように配置される。そして、通常、接続部を除く配線上にはソルダレジストなどの保護膜が形成されており、共用配線と部品搭載配線とを接続する配線間に設けられる遮断配線上にも保護膜が形成される。
【0006】
上記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶けて生成された溶融導体が膨張・破裂等して溶断することで、遮断機能を発揮する。しかしながら、このような遮断配線では、溶断状況によっては、溶融導体の一部が好適に拡散せずに滞留することがあり、溶断位置や溶断時間がばらついて遮断性能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高密度化された基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制し得る電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電子制御装置では、基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、前記保護層には、前記遮断配線の一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記開口は、前記遮断配線のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電子制御装置において、前記開口は、前記遮断配線の一部に加えて前記共用配線の一部を露出させるように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記開口は、これら遮断配線の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記保護層には、前記遮断配線に近接する領域を露出させる第2開口が前記開口に連通するように形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の電子制御装置において、前記第2開口は、前記開口よりも深く形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の電子制御装置において、前記第2開口と前記開口とが連通する領域での底面が、第2開口側ほど徐々に深くなるように形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記第2開口内には、前記遮断配線が溶断することで生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置において、遮断配線は、前記共用配線および前記部品搭載配線の少なくともいずれか一方の接続対象に対して接続配線を介して接続されており、前記接続配線は、前記遮断配線との接続部位での断面積が前記接続対象との接続部位での断面積よりも小さくなるように形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項10に記載の電子制御装置において、前記接続配線は、前記接続対象との接続部位の断面積が当該接続配線の中央側の断面積に対して絞られるように小さく形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線の近傍には、当該遮断配線にて過電流により発生した熱を拡散させる熱拡散用配線が形成されることを特徴とする。
【0021】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする。
【0022】
請求項15の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする。
【0023】
請求項16の発明は、請求項15に記載の電子制御装置において、前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明では、遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断するように構成され、基板面を被覆する保護層には、遮断配線の一部を露出させる開口が形成される。
【0025】
このため、過電流による発熱に応じて遮断配線が溶断すると、この溶断により生成された溶融導体が開口から流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が滞留しにくくなるので、遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0026】
請求項2の発明では、開口は、遮断配線のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されるため、開口が遮断配線のうち溶断しやすい部位に対応して設けられることとなり、溶融導体の滞留を確実に抑制して、遮断配線による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。
【0027】
請求項3の発明では、開口は、遮断配線の一部に加えて共用配線の一部を露出させるように形成されるため、遮断配線の溶断により生成された溶融導体が開口内にて露出する共用配線の一部に付着しやすくなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が開口から流れ出て他の電子部品に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0028】
請求項4の発明では、遮断配線は、複数の電子部品に応じて複数設けられ、開口は、これら遮断配線の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられる。このため、複数の遮断配線を設ける場合であっても、これら各遮断配線での溶融導体が滞留しにくくなるので、高密度化された基板面に設けられる各遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0029】
請求項5の発明では、保護層には、遮断配線に近接する領域を露出させる第2開口が開口に連通するように形成されるため、遮断配線の溶断により生成された溶融導体が第2開口に流れ込むこととなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が流れ出て他の電子部品に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0030】
請求項6の発明では、第2開口は、開口よりも深く形成されるため、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口に流れ込んだ溶融導体の流出を抑制することができる。
【0031】
請求項7の発明では、第2開口と開口とが連通する領域での底面が、第2開口側ほど徐々に深くなるように形成されるため、溶融導体の滞留を抑制するとともに、開口からの溶融導体を第2開口内に好適に流れ込ませることができる。
【0032】
請求項8の発明では、第2開口内には、遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられるため、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口に流れ込んだ溶融導体の流出を確実に抑制することができる。
【0033】
請求項9の発明では、遮断配線の溶断時に高温の溶融導体が生成されると、この溶融導体は、基板の表面を流動する際に、当該遮断配線に近接して設けられた付着手段に付着する。これにより、溶融導体は、付着手段に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線による遮断性能の低下を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。
【0034】
請求項10の発明では、遮断配線は、共用配線および部品搭載配線の少なくともいずれか一方の接続対象に対して接続配線を介して接続されており、この接続配線は、遮断配線との接続部位での断面積が接続対象との接続部位での断面積よりも小さくなるように形成される。
【0035】
このため、過電流により遮断配線に生じた熱が接続配線を介して接続対象(共用配線・部品搭載配線)に伝わる場合には、直接接続対象に伝わる場合と比較して、当該接続対象への熱の拡散が抑制される。これにより、遮断配線における温度上昇のばらつきが抑制されるので、高密度化された基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。また、遮断配線および部品搭載配線間に上記接続配線が設けられる場合には、過電流により遮断配線に生じた熱は、接続配線内では拡散して部品搭載配線に伝わるため、部品搭載配線における局所的な温度上昇が緩和される。これにより、部品搭載配線に比較的融点の低いはんだを用いる場合であっても、遮断配線からの熱によるはんだの溶融を抑制することができる。
【0036】
請求項11の発明では、接続配線は、接続対象との接続部位(以下、絞り部ともいう)の断面積が当該接続配線の中央側の断面積に対して絞られるように小さく形成される。このため、遮断配線を介して接続配線に伝わる熱は、絞り部から接続対象に伝わりにくくなり、接続配線のうち絞り部を除く部位(以下、熱保持部ともいう)に蓄熱されることとなる。このように熱保持部にて遮断配線からの熱が蓄熱されるため、遮断時における熱保持部の温度が比較的高温に維持されているので、遮断配線における温度上昇のばらつきが抑制されて、遮断配線による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。特に、接続配線および遮断配線を所定の形状・材質等に設定することで、ばらつきが抑制されるように遮断条件が一義的に決まるので、遮断配線および接続配線を1つの組み合わせとして汎用的に適用することができる。また、熱保持部の体積を変更することで接続配線の蓄熱量を制御できるので、遮断配線の溶断タイミングを容易に調整することができる。
【0037】
請求項12の発明では、共用配線には、遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成される。このため、過電流により遮断配線にて発生した熱が共用配線に伝わると、この熱は、近接する放熱部に伝わり放熱されて、当該共用配線に接続される他の電子部品に伝わりにくくなる。これにより、高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0038】
請求項13の発明では、過電流により発生した熱が、基板などを介して周囲に伝達される際、熱源である遮断配線に近接して設けられた熱拡散用配線により拡散されることによって、熱から保護すべき他の電子部品への熱の伝達が抑制される。これにより、遮断配線による遮断性能の低下を抑制するとともに、上記他の電子部品の正常な動作を維持することができる。
【0039】
請求項14の発明では、遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、この所定の角度は、第1配線部および第2配線部のうち一方が共用配線に接続され他方が部品搭載配線に接続されるように設定される。このため、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する共用配線と部品搭載配線とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線の配線長を確保しやすくなるので、遮断配線による遮断性能の低下を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0040】
請求項15の発明では、共用配線は、電源配線であるため、大電流が流れるために比較的配線幅が広く形成される電源配線と部品搭載配線との間に上記遮断配線が設けられる場合であっても、この遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0041】
請求項16の発明では、電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および他の装置を保護するための共通のヒューズが、電源からの電源経路上に設けられる。これにより、遮断配線を設けた電子制御装置が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線が溶断することで、他の装置への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態に係るトラクションコントロール装置を備える車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図3】図2の3−3線相当の切断面による断面図である。
【図4】図2の遮断配線近傍を拡大して示す拡大図である。
【図5】検証用遮断配線および検証用開口の詳細形状を説明するための説明図である。
【図6】検証用開口の有無について遮断電流値および溶断時間の関係を示すグラフである。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図9】第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図10】第1実施形態の第4変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図11】第2実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図12】図12(A)は、第3実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図であり、図12(B)は、図12(A)の12B−12B線相当の切断面による断面図である。
【図13】図13(A)は、第3実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図であり、図13(B)は、図13(A)の13B−13B線相当の切断面による断面図である。
【図14】第3実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図15】図15(A)は、第3実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図であり、図15(B)は、図15(A)の15B−15B線相当の切断面による断面図である。
【図16】第4実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図17】第5実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図18】第6実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図19】第6実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図20】第7実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図21】第8実施形態に係る電子制御装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20を備える車両制御システム11の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御システム11は、自動車10に車載される各種機器を制御するエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12を備えて構成されている。
【0044】
また、車両制御システム11には、上記複数の電子制御装置12に加えて、本第1実施形態に係る電子制御装置が適用されたトラクションコントロール装置20が設けられている。このトラクションコントロール装置20は、駆動輪の加速スリップを防止する加速スリップ防止機能を有する装置で、走行制御等の主要な車両制御に関して他の電子制御装置よりも比較的重要性が低い装置である。
【0045】
トラクションコントロール装置20を含めた複数の電子制御装置12は、過電流保護用として採用されるヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介して直流電源(以下、バッテリ13という)に電気的に接続されている。ヒューズ14aおよびヒューズ14bとしては、多くの電子制御装置等に対して作動に必要な電力を供給する経路に設けられるために、例えば15A用や20A用の大型のヒューズが採用されている。これにより、例えば、ヒューズ14aに接続される各種電子制御装置12のうちのいずれかに不具合が生じ所定の電流値を超える過電流が発生すると、この過電流によりヒューズ14aが溶断し、当該ヒューズ14aを介した電力供給が遮断されて、他の電子制御装置12への悪影響が防止される。なお、本実施形態では、各電子制御装置12は、2つの大型ヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されているが、これに限らず、単一の大型ヒューズを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよいし、3つ以上のヒューズのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよい。
【0046】
次に、本第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の構成について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、図1のトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図3は、図2の3−3線相当の切断面による断面図である。図4は、図2の遮断配線30近傍を拡大して示す拡大図である。なお、図2および図4では、便宜上、開口28aを除き基板面を保護するソルダレジスト28の図示を省略しており、図3では、遮断配線30等の厚さを誇張して図示している。
【0047】
トラクションコントロール装置20は、上述した加速スリップ防止機能を実現するための複数の電子部品22を高密度化して実装した回路基板21が図略のケースに収容されて構成されている。この回路基板21は、図略のコネクタ等を介して外部の機器や他の電子制御装置12と電気的に接続されており、外部から入力される所定の信号に応じて駆動輪の加速スリップを防止するための制御を実行する。
【0048】
図2に示すように、回路基板21には、バッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、各電子部品22に対してそれぞれ電気的に接続されている。このため、電源配線23は、各電子部品22により共用される共用配線として機能する。
【0049】
図2および図3に示すように、回路基板21には、複数の電子部品22の1つとして、セラミックコンデンサ24が実装されている。このセラミックコンデンサ24は、温度特性や周波数特性を向上させ小型で大容量を実現するため、例えば、チタン酸バリウム系の高誘電率セラミック誘電体24bと内部電極24cとを層状に積み重ねて一体化して構成されている。
【0050】
セラミックコンデンサ24の外部電極24aがはんだ25を介して接続されるランド26と電源配線23との間には、遮断配線30が配置されている。この遮断配線30は、過電流による発熱に応じて溶断することで過電流保護機能を発揮して当該遮断配線30を介した電気的接続を遮断する配線である。これにより、その基板に応じた過電流保護を実現することができる。
【0051】
ここで、遮断配線30は、その配線幅(基板面上で電流の方向に直交する配線の幅)が電源配線23の配線幅に対して十分に小さくなるように設定されている。具体的には、例えば、遮断配線30の配線幅が0.2〜0.3mm程度に設定され、電源配線23の配線幅が2mm程度に設定されている。なお、ランド26は、特許請求の範囲に記載の「部品搭載配線」の一例に相当し得る。
【0052】
図3に示すように、遮断配線30の内層側には、当該遮断配線30の厚さ(基板面に直交する方向の長さ)を電源配線23やランド26の厚さよりも短くし、当該遮断配線30から内層側への伝熱を抑制するための伝熱抑制部材27が設けられている。伝熱抑制部材27は、例えば、基板表面を保護するレジスト材を用いて構成されており、遮断配線30の成形時に伝熱抑制部材27を遮断配線30の内層側に位置するように配置するだけで、遮断配線30の厚さを容易に薄くすることができる。
【0053】
図3および図4に示すように、基板面を保護するための保護層であるソルダレジスト28には、遮断配線30の一部を外方に露出させるための矩形状の開口28aが形成されている。具体的には、開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるように形成されている。
【0054】
ここで、開口28aを形成する理由について、図5および図6を用いて説明する。図5は、検証用遮断配線101および検証用開口102の詳細形状を説明するための説明図である。図6は、検証用開口102の有無について遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を示すグラフである。
【0055】
図5に示す寸法の検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101に対して所定の電流を流し、この検証用遮断配線101が溶断するときの遮断電流値Iと当該検証用遮断配線101が溶断するまでの溶断時間tとを測定する。また、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101に対して所定の電流を流したときの遮断電流値Iおよび溶断時間tを測定する。ここで、検証用遮断配線101は、その全体長さL1が2.85mmに設定され、その幅W1が0.25mmに設定される。また、検証用開口102は、L1に平行な開口長L2が0.6mmに設定され、その開口幅W2が0.25mmに設定される。なお、図5では、説明の便宜上、開口幅W2が幅W1よりも長くなるように図示されている。
【0056】
上述のように測定された遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を図6のグラフに示す。ここで、図6に示す太実線S1は、検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、太実線S1を中心に太破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。また、図6に示す細実線S2は、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、細実線S2を中心に細破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。
【0057】
図6からわかるように、同じ遮断電流値では、検証用開口102を形成することで、溶断時間tが短くなっている。さらに、同じ遮断電流値では、溶断時間tのばらつきが小さくなっている。一方、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101では、検証用開口102が形成される場合と比較して、各過大電流域で溶断時間tが長くなり、かつ、溶断時間tのばらつきが生じている。これは、検証用遮断配線101が溶断することで生成された溶融導体が、検証用開口102から流れ出て、溶断前の検証用遮断配線101の位置に滞留しにくくなるからである。
【0058】
このようなことから、開口28aにより遮断配線30の一部を露出させることで、溶断時間tが短くなり保護作用が早期に得られ、保護対象となる部品の温度上昇を抑制することができる。さらに、遮断配線30の遮断時における電源配線23への電圧低下の影響時間を大きく短縮することができる。また、溶断時間tのばらつきが小さくなることで、各装置や回路で遮断配線30の溶断時間を考慮した安定化コンデンサなど(電源安定化手段)について容量のより小さなものを採用することができ、低コスト化や小型化を図ることができる。さらに電流の定格領域でも溶断時間tを小さくできるので、回路設計における自由度を向上させることができる。
【0059】
このように構成されるトラクションコントロール装置20では、例えば、セラミックコンデンサ24が損傷等して短絡し過電流が遮断配線30を流れると、この遮断配線30がその過電流に応じて発熱する。そして、この発熱が所定の温度以上になると、遮断配線30が溶断し、当該遮断配線30を介した電気的接続が遮断される。これにより、電源配線23に接続される他の電子部品22が上記過電流から保護される。また、上記遮断時の電流はヒューズ14aを遮断するほど大きくならないので、当該ヒューズ14aを介して電力供給される他の電子制御装置12に対して、トラクションコントロール装置20の損傷が影響することもない。さらに、過電流の発生から遮断配線30の溶断までの時間は、数mS(ミリ秒)程度であり、上述した大型ヒューズ14a,14b等の溶断時間は通常0.02S(秒)程度であることから、処理速度の向上が図られる電子制御装置や電子部品であっても好適に過電流保護を実施することができる。
【0060】
特に、本実施形態では、遮断配線30が溶断することで生成された溶融導体が開口28aから流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が溶断前の遮断配線30の位置に滞留しにくくなるので、溶融導体の滞留に起因する溶断位置や溶断時間のばらつきが抑制されて、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0061】
さらに、開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されるため、開口28aが遮断配線30のうち溶断しやすい部位に対応して設けられることとなり、溶融導体の滞留を確実に抑制して、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。
【0062】
また、電源配線23は、トラクションコントロール装置20と異なる他の電子制御装置12にも電力を供給するバッテリ13から電線を介して各々のコネクタに接続されており、当該トラクションコントロール装置20および他の電子制御装置12を過電流保護するための共通のヒューズ14aが、バッテリ13からの電源経路上に設けられている。これにより、遮断配線30を設けたトラクションコントロール装置20が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線30が溶断することで、他の電子制御装置12への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【0063】
図7は、第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図8は、第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図9は、第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図10は、第1実施形態の第4変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。
図7に示すように、第1実施形態の第1変形例として、ソルダレジスト28に設けられる開口28aは、遮断配線30の一部に加えて電源配線23の一部を露出させるように形成されてもよい。これにより、遮断配線30の溶断により生成された溶融導体が開口28a内にて露出する電源配線23の一部に付着しやすくなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が開口28aから流れ出て他の電子部品22に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0064】
また、図8に示すように、第1実施形態の第2変形例として、遮断配線30の近傍には、当該遮断配線30の溶断に伴い生成された溶融導体を付着(吸着)させる付着手段(吸着手段)として例えば電源配線23等と同じ配線材料にて形成される付着用配線29が、例えば一対設けられてもよい。これにより、遮断配線30の溶断時に高温の溶融導体が生成されて開口28aから流れ出ると、この溶融導体は、回路基板21の表面を流動する際に、当該遮断配線30に近接して設けられた付着用配線29に付着する。
【0065】
これにより、溶融導体は、付着用配線29に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。
【0066】
また、第1実施形態の第3変形例として、遮断配線30は、複数の電子部品22に応じて複数設けられ、開口28aは、これら遮断配線30の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられてもよい。具体的には、図9に例示するように、一方の遮断配線30が、電子部品22a用のランド26aと電源配線23とに接続され、他方の遮断配線30が、電子部品22b用のランド26bと電源配線23とに接続されている。そして、開口28aは、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるようにそれぞれ形成されている。
【0067】
また、図10に示すように、第1実施形態の第4変形例として、開口28aは、複数の外部電極を有するアレイ状のセラミックコンデンサ24dと電源配線23との各接続間に設けられる遮断配線30の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられてもよい。このセラミックコンデンサ24dは、4つの積層セラミックコンデンサをコンデンサアレイとしてパッケージ化したものである。本変形例では、遮断配線30は、セラミックコンデンサ24dの各外部電極が接続されるランド26a〜26dと、電源配線23との間にそれぞれ設けられている。
【0068】
このように、回路基板21に設けられる複数の遮断配線30に対してそれぞれ開口28aを形成する場合であっても、これら各遮断配線30での溶融導体が滞留しにくくなるので、高密度化された基板面に設けられる各遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るトラクションコントロール装置について図11を用いて説明する。図11は、第2実施形態に係るトラクションコントロール装置20aの要部を示す説明図である。
【0070】
本第2実施形態では、トラクションコントロール装置20aにおいて、遮断配線30に代えて遮断配線30aを採用する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図11に示すように、遮断配線30aは、限られた実装領域にて必要な遮断配線の配線長を確保するために、蛇行状に形成されている。そして、ソルダレジスト28に設けられる開口28aは、遮断配線30aのうちその全長の中央近傍部位を露出させるように形成されている。
【0072】
これにより、高密度化された基板面であっても遮断配線30aを細長く形成できるので、必要な遮断配線30aの配線長を確保しやすくなる。特に、開口28aが最も発熱しやすい中央近傍部位に設けられるので、蛇行状に形成された遮断配線30aであっても溶融導体の滞留を確実に抑制して、遮断配線30aによる遮断性能の低下を確実に抑制することができる。なお、上述した遮断配線30aの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0073】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るトラクションコントロール装置について図12を用いて説明する。図12(A)は、第3実施形態に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図であり、図12(B)は、図12(A)の12B−12B線相当の切断面による断面図である。
【0074】
本第3実施形態では、トラクションコントロール装置20bにおいて、ソルダレジスト28に第2開口28bを新たに形成する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
図12(A),(B)に示すように、ソルダレジスト28には、遮断配線30に近接する領域を露出させる第2開口28bが、開口28aに連通するように形成されている。具体的には、第2開口28bは、遮断配線30の短手方向(図12(A)の上下方向)にて配線部が設けられていない部分のソルダレジスト28を除去することで開口28aに連通するように形成される。なお、図12において、ソルダレジスト28の高さ、すなわち、第2開口28bの深さは、例えば、68μmであり、遮断配線30の厚さは、例えば、43μmである。
【0076】
このため、遮断配線30の溶断により生成された溶融導体が第2開口28bに流れ込むこととなる。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、高温の溶融導体が流れ出て他の電子部品22に影響を及ぼすことを抑制することができる。なお、上述した第2開口28bの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0077】
図13(A)は、第3実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図であり、図13(B)は、図13(A)の13B−13B線相当の切断面による断面図である。図14(A)〜(C)は、第3実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図である。図15(A)は、第3実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図であり、図15(B)は、図15(A)の15B−15B線相当の切断面による断面図である。
【0078】
図13(A),(B)に示すように、第3実施形態の第1変形例として、開口28aに連通する第2開口28bは、開口28aよりも深く形成されてもよい。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口28bに流れ込んだ溶融導体の流出を抑制することができる。
【0079】
また、図14(A)に示すように、第3実施形態の第2変形例として、第2開口28bと開口28aとが連通する領域での底面が、第2開口28b側ほど徐々に深くなるようにテーパ状に形成されてもよい。また、図14(B)に示すように、第3実施形態の第2変形例として、第2開口28bと開口28aとが連通する領域での底面が、第2開口28b側ほど徐々に深くなるように断面略円弧状(R状)に形成されてもよい。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、開口28aからの溶融導体を第2開口28b内に好適に流れ込ませることができる。また、図14(C)に示すように、遮断配線30の成形時にこの遮断配線30を浅い位置に設けるためのコア材28cを当該遮断配線30の内層側に配置することで、開口28aの深さを浅くして、第2開口28bを開口28aよりも相対的に深く形成してもよい。
【0080】
また、図15(A),(B)に示すように、第3実施形態の第3変形例として、第2開口28b内に、遮断配線30の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段として、電源配線23の一部とランド26の一部とを露出させるように配置してもよい。このため、開口28aから第2開口28bに流れ込んだ溶融導体は、第2開口28b内にて露出する電源配線23の一部やランド26の一部に接触して熱を奪われることで付着する。これにより、溶融導体の滞留を抑制するとともに、第2開口28bに流れ込んだ溶融導体の流出を確実に抑制することができる。なお、電源配線23の一部とランド26の一部との双方を第2開口28b内に露出することに限らず、どちらか一方を第2開口28b内に露出させてもよいし、他の配線部材など溶融導体の熱を奪って付着させ得る付着手段を第2開口28b内に設けてもよい。
【0081】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るトラクションコントロール装置について図16を用いて説明する。図16は、第4実施形態に係るトラクションコントロール装置20cの要部を示す説明図である。
【0082】
本第4実施形態では、遮断配線30が接続配線40,50を介して電源配線23およびランド26に接続される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
図16に示すように、遮断配線30は、その一端にて一側接続配線40を介して電源配線23に電気的に接続されており、その他端にて他側接続配線50を介してランド26に電気的に接続されている。一側接続配線40および他側接続配線50は、遮断配線30や電源配線23と同じ銅などの導電性材料により、遮断配線30よりも導体体積が大きくなるように形成されている。
【0084】
具体的には、図16に示すように、一側接続配線40は、その配線幅が電源配線23側ほど広くなるように略円弧状(R状)に形成されることで、遮断配線30との接続部位での断面積S1aが接続対象である電源配線23との接続部位での断面積S1bよりも小さくなるように構成されている。また、他側接続配線50は、その配線幅がランド26側ほど広くなるように略円弧状(R状)に形成されることで、遮断配線30との接続部位での断面積S2aが接続対象であるランド26との接続部位での断面積S2bよりも小さくなるように構成されている。
【0085】
このため、過電流により遮断配線30に生じた熱が一側接続配線40および他側接続配線50を介して電源配線23やランド26に伝わる場合には、直接電源配線23やランド26に伝わる場合と比較して、当該電源配線23やランド26への遮断配線が溶断するために必要な熱が過渡に吸い出されてしまうことを抑制する。これにより、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されるので、高密度化された基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。特に、過電流により遮断配線30に生じた熱は、他側接続配線50内では徐々に拡散してランド26に広く伝わるため、当該ランド26における局所的な温度上昇も緩和される。これにより、ランド26に比較的融点の低いはんだを用いる場合であっても、遮断配線30からの熱によるはんだの溶融を抑制することができる。また、一側接続配線40および他側接続配線50は、遮断配線30よりも導体体積が大きいため、遮断配線30からの熱をそれぞれ好適に蓄熱することができる。
【0086】
特に、一側接続配線40は、その側縁が遮断配線30の側縁となだらかに連続しており電源配線23に向かうにつれて徐々に広がるように、形成されている。このように、遮断配線30および一側接続配線40の側縁がなだらかに連続するため、これら各配線30,40をエッチング液を用いて形成する場合には、遮断配線30の側縁と一側接続配線40の側縁との接続部位でエッチング液が均一に流れやすくなる。これにより、上記接続部位でのエッチング液の滞留が抑制されて遮断配線30の配線幅のばらつきが抑えられるので、基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。なお、上述した遮断配線30に対する一側接続配線40および他側接続配線50の構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0087】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るトラクションコントロール装置について図17を用いて説明する。図17は、第5実施形態に係るトラクションコントロール装置20dの要部を示す説明図である。
【0088】
本第5実施形態では、トラクションコントロール装置20dにおいて、一側接続配線40および他側接続配線50に代えて一側接続配線40aおよび他側接続配線50aを採用する点が主に上記第4実施形態と異なる。このため、第4実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
図17に示すように、一側接続配線40aは、遮断配線30近傍の部位である熱保持部41と、電源配線23近傍の部位である絞り部42とから構成されている。絞り部42は、一側接続配線40aにおける電源配線23との接続部位の総断面積S3aが、当該一側接続配線40aの中央側の断面積、すなわち、熱保持部41の断面積S3bに対して絞られるように小さく形成されている。
【0090】
また、他側接続配線50aも、一側接続配線40aと同様に、遮断配線30近傍の部位である熱保持部51と、ランド26近傍の部位である絞り部52とから構成されている。絞り部52は、他側接続配線50aにおけるランド26との接続部位の総断面積S4aが、当該他側接続配線50aの中央側の断面積、すなわち、熱保持部51の断面積S4bに対して絞られるように小さく形成されている。
【0091】
このため、遮断配線30を介して一側接続配線40aに伝わる熱は、絞り部42から電源配線23に伝わりにくくなり、熱保持部41に蓄熱されることとなる。このように熱保持部41にて遮断配線30からの熱が蓄熱されるため、遮断時における熱保持部41の温度が比較的高温に維持されているので、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されて、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。一側接続配線40aと同様に構成される他側接続配線50aについても、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。
【0092】
特に、遮断配線30と一側接続配線40aおよび他側接続配線50aとを所定の形状・材質等に設定することで、ばらつきが抑制されるように遮断条件が一義的に決まるので、遮断配線30と一側接続配線40aおよび他側接続配線50aとを1つの組み合わせとして汎用的に適用することができる。また、熱保持部41,51の体積を変更することで一側接続配線40aおよび他側接続配線50aの蓄熱量を制御できるので、遮断配線30の溶断タイミングを容易に調整することができる。
【0093】
また、一側接続配線40aは、電源配線23との接続部位が2個所絞られて絞り部42として形成されるため、遮断配線30からの熱が両絞り部42を介して電源配線23に伝わる場合であっても、両絞り部42にて分散されて電源配線23に伝わることとなる。このため、電源配線23における局所的な温度上昇を緩和することができる。一側接続配線40aと同様に構成される他側接続配線50aについても、ランド26における局所的な温度上昇を緩和することができる。
【0094】
なお、一側接続配線40aおよび他側接続配線50aに設けられる絞り部42,52は、2つ形成されることに限らず、3つ以上形成されてもよい。また、遮断条件によっては、1つの絞り部42,52を設けるようにしてもよい。なお、上述した遮断配線30に対する一側接続配線40aおよび他側接続配線50aの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0095】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係るトラクションコントロール装置について図18を用いて説明する。図18は、第6実施形態に係るトラクションコントロール装置20eの要部を示す説明図である。
【0096】
本第6実施形態では、トラクションコントロール装置20eにおいて、電源配線23に対して放熱部29aが新たに設けられる点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
図18に示すように、放熱部29aは、電源配線23と同一材料からなる配線であって、遮断配線30に接続される電子部品22(本実施形態ではセラミックコンデンサ24)を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置にて電源配線23に接続するように配置されている。
【0098】
このため、過電流により遮断配線30にて発生した熱が電源配線23に伝わると、この熱は、近接する放熱部29aに伝わり放熱されることとなる。これにより、遮断配線30にて発生した熱を、電源配線23に接続される他の電子部品22に伝わりにくくすることができる。なお、放熱部29aは、配線状に形成されることに限らず、例えば、基板に設けられる層間接続部の内部に形成される導電部から構成されてもよい。なお、上述した放熱部29aの構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0099】
図19は、第6実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20eの要部を示す説明図である。
図19に示すように、第6実施形態の第1変形例として、遮断配線30の近傍には、放熱部29aに代えて、当該遮断配線30にて過電流により発生した熱を拡散させる熱拡散部材として、例えば電源配線23等と同じ配線材料にて形成される熱拡散用配線29bが形成されてもよい。これにより、過電流により発生した熱が、周囲に伝達される際、熱源である遮断配線30に近接して設けられた熱拡散用配線29bにより拡散されることによって、熱から保護すべき他の電子部品22への熱の伝達が抑制される。これにより、遮断配線30による遮断性能の低下(溶断時間および遮断電流のばらつきや増大)を抑制するとともに、上記他の電子部品22の正常な動作を維持することができる。
【0100】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係るトラクションコントロール装置について図20を用いて説明する。図20は、第7実施形態に係るトラクションコントロール装置20fの要部を示す説明図である。
本第7実施形態では、遮断配線30に代えて遮断配線30bを採用し、高密度化を図るため、セラミックコンデンサ24の両外部電極24aがそれぞれ接続されるランド26間に電源配線23が配置される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0101】
図20に示すように、遮断配線30bは、第1配線部31とこの第1配線部31よりも配線長が短い第2配線部32とが所定の角度で接続されて形成されている。この所定の角度は、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されるように、例えば90°に設定される。開口28aは、遮断配線30bのうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるように形成されている。
【0102】
このように遮断配線30bを曲げて形成することで、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する電源配線23とランド26とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線30bの配線長を確保しやすくなるので、遮断配線30bによる遮断性能の低下を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されているが、これに限らず、第1配線部31がランド26に接続され、第2配線部32が電源配線23に接続されてもよい。また、上記所定の角度は、近接する電源配線23とランド26との位置に応じて設定されてもよい。また、遮断配線30bは、上述した一側接続配線40を介して電源配線23に接続されてもよいし、上述した他側接続配線50を介してランド26に接続されてもよい。また、上述した遮断配線30bの構成は、他の実施形態および変形例に採用されてもよい。
【0104】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係る電子制御装置について図21を用いて説明する。図21は、第8実施形態に係る電子制御装置110の要部を示す説明図である。
本第8実施形態に係る電子制御装置110では、同一の基板120上に、上記第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の機能を回路ブロック化した回路ブロック130と、さらに他の機能を回路ブロック化した回路ブロック140,150とを配置して構成されている。なお、他の機能としては、回路ブロック130の機能よりも重要性が高い機能であって、例えば、エンジンECUに対応する機能やブレーキECUに対応する機能であり、回路ブロック140は、エンジンECUに対応する機能を回路ブロック化して構成され、回路ブロック150は、ブレーキECUに対応する機能を回路ブロック化して構成されている。
【0105】
図21に示すように、各回路ブロック130,140,150には、コネクタ121を介してバッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、それぞれ分岐配線131,141,151を介して電気的に接続されている。そして、上述した遮断配線30が回路ブロック130の分岐配線131上に当該回路ブロック130に対して過電流保護として機能するように配置されている。そして、電源配線23上に、当該基板120に対して過電流保護として機能する遮断配線122が設けられている。すなわち、基板120上には、全ての回路ブロック130〜150を含めた基板120を保護する遮断配線122と、回路ブロック130を保護する遮断配線30との2つの遮断配線が設けられている。
【0106】
これにより、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じることから当該遮断配線30が溶断する場合でも、他の回路ブロック140,150では、分岐配線141,151を介した電源配線23との接続が維持されるので、溶断した遮断配線30を有する回路ブロック130のみ機能を停止して、他の回路ブロック140,150での機能を継続することができる。特に、回路ブロック130の機能は、他の回路ブロック140,150よりも重要性が低いので、重要性が低い回路ブロック130の機能停止が、重要性が高い回路ブロック140,150の機能に影響を及ぼすことを抑制することができる。また、遮断配線30が設けられない回路ブロック140,150において短絡故障等により過電流が生じる場合でも、その過電流が電源配線23を流れることで遮断配線122が溶断して各回路ブロック130,140,150での機能が停止するので、発生した過電流が他の回路ブロックへ流れることを抑制することができる。
【0107】
特に、遮断配線30を、遮断配線122に対して遮断時の電流値が小さくなるようにその配線幅を小さく形成することで、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じる場合には、遮断配線30が遮断配線122よりも確実に早く溶断する。これにより、他の回路ブロック140,150への影響を確実に抑制することができる。
なお、本実施形態における1つの基板上に2つの遮断配線を設ける構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0108】
なお、本発明は上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上述した開口28aが形成される遮断配線30や他の遮断配線は、電源配線23に代えて、過電流保護の対象である各電子部品22にて共用される共用配線に電気的に接続されてもよい。
【0109】
(2)上述した開口28aが形成される遮断配線30や他の遮断配線は、ランド26に電気的に接続されることに限らず、例えば、ソルダレジスト等の保護膜により保護されて露出しない内層側の配線など、電子部品を搭載するための部品搭載配線に電気的に接続されてもよい。
【0110】
(3)上述した開口28aが形成される遮断配線30や他の遮断配線は、上述したエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12の過電流保護用として基板ごとに採用されてもよい。
【0111】
(4)遮断配線30は、その一部または全部が電源配線23やランド26よりも熱伝導率の低い材料、例えばアルミニウム等により形成してもよい。これにより、過電流により遮断配線30に生じた熱が電源配線23やランド26に伝わりにくくなるので、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されて、遮断配線30による遮断性能の低下を確実に抑制することができる。他の遮断配線30a,30bについても同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0112】
10…自動車
11…車両制御システム
12…電子制御装置
13…バッテリ
14a,14b…ヒューズ
20,20a〜20f…トラクションコントロール装置(電子制御装置)
21…回路基板
22…電子部品
23…電源配線
24…セラミックコンデンサ(電子部品)
26…ランド(部品搭載配線)
28…ソルダレジスト(保護層)
28a…開口
28b…第2開口
29…付着用配線
29a…放熱部
29b…熱拡散用配線
30,30a,30b…遮断配線
40,40a…一側接続配線
50,50a…他側接続配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、
前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、
前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、
前記保護層には、前記遮断配線の一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記開口は、前記遮断配線のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記開口は、前記遮断配線の一部に加えて前記共用配線の一部を露出させるように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、
前記開口は、これら遮断配線の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記保護層には、前記遮断配線に近接する領域を露出させる第2開口が前記開口に連通するように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記第2開口は、前記開口よりも深く形成されることを特徴とする請求項5に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記第2開口と前記開口とが連通する領域での底面が、第2開口側ほど徐々に深くなるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記第2開口内には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
遮断配線は、前記共用配線および前記部品搭載配線の少なくともいずれか一方の接続対象に対して接続配線を介して接続されており、
前記接続配線は、前記遮断配線との接続部位での断面積が前記接続対象との接続部位での断面積よりも小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記接続配線は、前記接続対象との接続部位の断面積が当該接続配線の中央側の断面積に対して絞られるように小さく形成されることを特徴とする請求項10に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記遮断配線の近傍には、当該遮断配線にて過電流により発生した熱を拡散させる熱拡散用配線が形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項14】
前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、
前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項15】
前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項16】
前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、
当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする請求項15に記載の電子制御装置。
【請求項1】
基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、
前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、
前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、
前記保護層には、前記遮断配線の一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記開口は、前記遮断配線のうち最も発熱する部位を露出させるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記開口は、前記遮断配線の一部に加えて前記共用配線の一部を露出させるように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、
前記開口は、これら遮断配線の一部をそれぞれ露出させるように複数設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記保護層には、前記遮断配線に近接する領域を露出させる第2開口が前記開口に連通するように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記第2開口は、前記開口よりも深く形成されることを特徴とする請求項5に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記第2開口と前記開口とが連通する領域での底面が、第2開口側ほど徐々に深くなるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記第2開口内には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
遮断配線は、前記共用配線および前記部品搭載配線の少なくともいずれか一方の接続対象に対して接続配線を介して接続されており、
前記接続配線は、前記遮断配線との接続部位での断面積が前記接続対象との接続部位での断面積よりも小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記接続配線は、前記接続対象との接続部位の断面積が当該接続配線の中央側の断面積に対して絞られるように小さく形成されることを特徴とする請求項10に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記遮断配線の近傍には、当該遮断配線にて過電流により発生した熱を拡散させる熱拡散用配線が形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項14】
前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、
前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項15】
前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項16】
前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、
当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする請求項15に記載の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−69707(P2013−69707A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1731(P2013−1731)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2011−22927(P2011−22927)の分割
【原出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2011−22927(P2011−22927)の分割
【原出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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