電子制御装置
【課題】パワーモジュール16の板状基部18の反りによるスイッチング素子24の放熱性の低下を抑制する。
【解決手段】電子制御装置のケース内に収容されるパワーモジュール16は、バスバーをインサートした合成樹脂成形品からなり、板状基部18の部品実装面18aに、スイッチング素子24等の多数の部品が実装されている。パワーモジュール16は、外周部の外側取付孔32a〜32dにおいて取付ねじによりケースに固定される。さらに、6つのスイッチング素子24の周囲に配置した内側取付孔33a〜33dにおいて取付ねじによりケースのヒートシンクとなるブロック状突出部に向けて押圧固定される。従って、板状基部18の反りが矯正され、発熱部品であるスイッチング素子24とブロック状突出部の頂面との接触性ひいては放熱性が向上する。
【解決手段】電子制御装置のケース内に収容されるパワーモジュール16は、バスバーをインサートした合成樹脂成形品からなり、板状基部18の部品実装面18aに、スイッチング素子24等の多数の部品が実装されている。パワーモジュール16は、外周部の外側取付孔32a〜32dにおいて取付ねじによりケースに固定される。さらに、6つのスイッチング素子24の周囲に配置した内側取付孔33a〜33dにおいて取付ねじによりケースのヒートシンクとなるブロック状突出部に向けて押圧固定される。従って、板状基部18の反りが矯正され、発熱部品であるスイッチング素子24とブロック状突出部の頂面との接触性ひいては放熱性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱部品が搭載された回路基板をケース内に収容してなる電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子制御装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の電子制御装置は、熱伝導性の良好な金属からなる装置ケース内に、複数のバスバ−をインサート成形してなる合成樹脂製のバスバー基板を収容した構成であり、バスバー基板の上に、プリント回路基板が重ねて取り付けられている。上記バスバー基板には、別の小型の基板を介して発熱部品となるMOSFETが取り付けられており、このMOSFETを装置ケースの内壁面に接触させた状態とすることで、その放熱を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−224708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子制御装置にあっては、ケース内に収容される回路基板に反り(湾曲変形)が生じることがある。特に、バスバーをインサートした状態に合成樹脂材料を型成形した構成の回路基板では、成形した樹脂材料の冷却に伴って反りが生じやすい。このように回路基板が湾曲変形すると、回路基板の表面に実装した発熱部品とケース内壁面との接触が不十分となり、発熱部品からの熱に対しケースを介した放熱性が悪化する。
【0005】
なお、上記特許文献1では、回路基板の反りによる影響を回避するために、発熱部品となるMOSFETが別の小型の基板を介して支持されており、従って、構成が複雑化してしまう。
【0006】
本発明は、回路基板の反りによる発熱部品の放熱性の悪化を抑制した電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電子制御装置は、
発熱部品が搭載された回路基板と、
上記回路基板を収容し、かつ上記発熱部品と接する受熱部を有するケースと、
上記回路基板の外周に沿って該回路基板を上記ケースに固定する少なくとも2つの第1固定要素と、
上記固定要素による固定点よりも上記発熱部品に近い位置で上記回路基板を上記ケースに向けて押圧固定する少なくとも1つの第2固定要素と、
を備えて構成されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記回路基板はその外周に沿った第1固定要素によってケースに固定されるほか、発熱部品に近い位置で第2固定要素によりケースに向けて押圧固定されるので、回路基板に反りが生じていた場合でも、発熱部品とケース受熱部との間の接触が良好となり、発熱部品からの放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例であるモータ制御装置を備えたアクチュエータユニットを示す分解斜視図。
【図2】図1に示すアクチュエータユニットを別の角度から見た分解斜視図。
【図3】図2に示すモータ制御装置の分解斜視図。
【図4】図2に示すモータ制御装置のA−A線に沿った断面図。
【図5】図4に示すモータ制御装置からカバーを取り除いた状態を示す平面図。
【図6】図3に示すケース単体の斜視図。
【図7】図3に示すパワーモジュール単体の斜視図であって、そのパワーモジュールを部品実装面側から見た図。
【図8】図7に示すパワーモジュールを制御モジュール対向面側から見た斜視図。
【図9】図8に示すスナップフィット部が制御モジュールに係合した状態を示す拡大斜視図。
【図10】図3に示すケースにパワーモジュールを取り付けた状態を示す平面図。
【図11】(a)パワーモジュール取付ねじ締結前の板状基部と(b)パワーモジュール取付ねじ締結後の板状基部とを対比して示す図。
【図12】(a)パワーモジュール取付ねじ締結前のパワーモジュールと(b)パワーモジュール取付ねじ締結後のパワーモジュールとを実装した部品とともに示す図。
【図13】(a)パワーモジュール取付ねじ締結前のパワーモジュールと(b)パワーモジュール取付ねじ締結後のパワーモジュールとを制御モジュールとともに示す図。
【図14】第1実施例の内側取付孔の配置を示すパワーモジュールの平面図。
【図15】内側取付孔の配置が異なる第2実施例のパワーモジュールの平面図。
【図16】内側取付孔の配置が異なる第3実施例のパワーモジュールの平面図。
【図17】内側取付孔の配置が異なる第4実施例のパワーモジュールの平面図。
【図18】内側取付孔の配置が異なる第5実施例のパワーモジュールの平面図。
【図19】内側取付孔の配置が異なる第6実施例のパワーモジュールの平面図。
【図20】内側取付孔の配置が異なる第7実施例のパワーモジュールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜10に基づいて本発明の第1実施例を説明する。図1は本発明にかかる電子制御装置であるモータ制御装置3を備えたアクチュエータユニット1を示す分解斜視図、図2は図1に示すアクチュエータユニット1を別の角度から見た分解斜視図である。また、図3はモータ制御装置3の分解斜視図、図4は図2に示すモータ制御装置3のA−A線に沿った断面図、図5はカバーを取り除いた状態のモータ制御装置3を示す平面図である。
【0011】
図1,2に示すアクチュエータユニット1は、自動車に搭載される電動式のブレーキ倍力装置に用いられるものであって、三相交流電力によって駆動され、ブレーキ液の液圧を制御する電動アクチュエータである電動モータ2と、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態に基づいて電動モータ2を駆動制御するモータ制御装置3と、を備えている。なお、図示は省略しているが、電動モータ2は、いわゆるボールねじ機構により、ブレーキ液の液圧を制御する図示しないピストンを進退移動させる。
【0012】
電動モータ2のモータハウジング4の円筒形の外面には、当該電動モータ2の軸方向に延びる一対の台座部5が電動モータ2の軸直角方向で互いに所定の間隔を隔てて形成されている。両台座部5のうち長手方向の両端部にはねじ孔6aが穿設された円形の着座面6がそれぞれ突出形成されている一方、モータ制御装置3の筐体7のうち後述するケース12にはモータハウジング4側の各着座面6にそれぞれ着座する4つの脚部8が形成されている。そして、筐体7側の各脚部8を挿通しつつモータハウジング4側の各ねじ孔6aに螺合する4つの制御装置取付ねじ9により、モータ制御装置3が電動モータ2に固定される。
【0013】
他方、モータハウジング4のうち両台座部5同士の間の位置には略矩形の筒状壁10が突出形成され、モータ制御装置3の筐体7をモータハウジング4に固定したときに、モータ制御装置3側のステータ接続部20およびセンサ接続部23が、筒状壁10の内周側に開口する開口部11を通じてモータハウジング4内に臨むようになっている。上記ステータ接続部20は、後述するように、モータハウジング4内のステータ(図示せず)に接続される端子を具備している。センサ接続部23は、回転位置センサ用コネクタ23aと温度センサ用コネクタ23b(いずれも図7参照)とを一体化した構成であって、回転位置センサ用コネクタ23aに、モータハウジング4内の回転位置センサからのハーネス(図示せず)が接続され、温度センサ用コネクタ23bに、モータハウジング4内の温度センサからのハーネス(図示せず)が接続される。なお、上記回転位置センサとは、周知のように、モータハウジング4内に設けられたロータ(図示せず)の回転位置を検出するものであって、当該回転位置センサの出力信号はモータ制御装置3による電動モータ2の駆動制御に供される。また、上記温度センサは、電動モータ2の作動温度、詳しくは電動モータ2の図示しないコイルの温度を検出するものである。上記開口部11を囲む筒状壁10の先端には、無端状に連続した溝部10aが形成されており、この溝部10aに配置されるシール部材(図示せず)がケース12の底壁13に圧接することにより、モータハウジング4の内外をシールするようになっている。
【0014】
図1,2および図3に示すように、モータ制御装置3の筐体7は、ケース12とカバー15と、からなる。ケース12は、底壁13と周壁14とを有し、上面が上方に向けて開口する平面視で略矩形状をなす。カバー15は、ケース12の上面開口を閉蓋する平面視で略矩形状をなす。筐体7の内部には、「回路基板」に相当するパワーモジュール16と、「第2の回路基板」に相当する制御モジュール17と、が収容されている。詳しくは、ケース12の底壁13寄りにパワーモジュール16が位置し、その上方に、所定の間隔を隔てて制御モジュール17が積層配置されている。そして、筐体7は、ケース12の底壁13をモータハウジング4側に向けた姿勢でモータハウジング4に固定されるようになっている。
【0015】
図3および図4に示すように、カバー15は、金属板を略皿状にプレス成形することで形成されているものであって、制御モジュール17を収容すべくケース12とは反対側に向けて膨出した膨出部43と、その膨出部43の外周縁に形成されたフランジ部44と、そのフランジ部44の外周縁を下向き(ケース12側)に曲折してなる突縁部45と、を備えている。
【0016】
図4〜6に示すように、ケース12は熱伝導が比較的良好なアルミニウム合金を用いていわゆるアルミダイカスト法をもって型成形されたものである。当該ケース12のうち矩形の周壁14の一辺に相当する第1壁部14aには、パワーモジュール16側の外部接続コネクタ19が挿通する開口部36が当該第1壁部14aの大部分を上方側から切り欠くようにして形成されている。開口部36は外部接続コネクタ19の根元部に形成されたフランジ部19aに合致する形状を呈しており、当該開口部36の開口縁には、接着性を有するシール材(図示せず)を介してフランジ部19aが接着固定されている。なお、図4〜6における符号12aは、ケース12の外面に形成された冷却用のフィンを示している。
【0017】
また、ケース12のうち周壁14の先端縁および外部接続コネクタ19のうちフランジ部19aの上端縁には、無端状に連続するようにシール溝46が形成されている。そして、そのシール溝46にカバー15側の突縁部45を挿入した状態で、複数のカバー取付ねじ34(図3参照)によってカバー15とケース12とが締結固定されている。なお、図示は省略しているが、カバー15とケース12との間は、シール溝46内に塗布されたシール性を有する接着剤によってシールされている。
【0018】
ケース12の底壁13には、当該底壁13の四隅近傍の位置からカバー15側に向けてそれぞれ突出する略円柱状のパワーモジュール支持部37が4箇所に形成されている。各パワーモジュール支持部37の頂部には、後述するパワーモジュール取付ねじ61が螺合するねじ孔37aがそれぞれ形成されている。さらに、底壁13のうちパワーモジュール16側の後述するスイッチング素子実装領域A(図7参照)に対応する位置において、受熱部として、該底壁13からカバー15側に向けて略矩形のブロック状に突出したブロック状突出部38が形成されている。このブロック状突出部38は、熱容量の大きなヒートシンクとして機能する。
【0019】
ブロック状突出部38は、ケース12の略中央部に位置し、矩形の周壁14のうち互いに対向する第1壁部14aおよび第2壁部14bに対しては、それぞれ所定の間隔を介して離れており、冷却用フィン12aを有する第3壁部14cに対向する第4壁部14dに対しては、やはり所定の間隔を介して離れている。そして、ブロック状突出部38は、冷却用フィン12aを有する第3壁部14cに一体に連続して形成されている。このブロック状突出部38の頂面の四隅近傍には、後述するパワーモジュール取付ねじ62が螺合する計4個のねじ孔38aが形成されている。
【0020】
なお、図6の符号40は、ブロック状突出部38のうち第3壁部14c側の端部に貫通形成された断面略矩形状のコネクタ挿通孔40であって、図6の符号39は、ブロック状突出部38のうち第4壁部14d側の端面とケース12の底壁13とのなすコーナー部に貫通形成された電力供給端子挿通孔である。また、図6の符号41は、第3壁部14cのうちブロック状突出部38よりも第2壁部14b側の位置に貫通形成され、空気は通すが水は通さない呼吸フィルタ42(図1,2参照)が取り付けられた呼吸孔である。
【0021】
パワーモジュール16は、合成樹脂材料を用いて型成形したものであって、図4のほか図7に示すように、略平板状に形成されるとともに金属製のバスバー63(図8参照)が表面ないし内部に多数インサートされた板状基部18と、この板状基部18の一端縁に一体に形成された外部接続コネクタ19と、板状基部18から該板状基部18の平面と直交する方向に突出した前述のステータ接続部20およびセンサ接続部23と、を備えている。上記外部接続コネクタ19は、「電源供給用コネクタ」に相当し、ケース12側の開口部36を通じて外部に臨んでいて、外部の電子機器との間で信号および電力を授受する。また上記板状基部18のケース12底壁13側の面となる部品実装面18aには、種々の電子部品が実装されている。上記ステータ接続部20は、上記部品実装面18aの略中央部に突設されている。また上記センサ接続部23は、部品実装面18aの一方の端縁に突設されている。これらのステータ接続部20およびセンサ接続部23は、それぞれ矩形の板状をなし、互いに平行に延びている。
【0022】
ステータ接続部20は、外部接続コネクタ19の軸方向(図14のX方向)に沿って整列配置された3つの電力供給端子21と、板状基部18の部品実装面18aから突出形成されて各電力供給端子21の根元部を被覆する板状基部18と一体の樹脂材料からなる被覆部22と、を備えている。上記電力供給端子21は、電動モータ2に三相の駆動電流を供給する「駆動用端子」である。一方、センサ接続部23は、外部接続コネクタ19の軸方向に沿って回転位置センサ用コネクタ23aと温度センサ用コネクタ23bとが並んだ偏平な矩形状の断面を有しており、その内側に複数の端子(図示せず)が配置されている。
【0023】
なお、本実施例では、上記ステータ接続部20が「電気接続要素」に相当するが、センサ接続部を「電気接続要素」として板状基部18の略中央部に配置することも可能である。
【0024】
次いで、図7に基づいて、板状基部18の部品実装面18aに実装された種々の電子部品について具体的に説明する。部品実装面18aのうちステータ接続部20とセンサ接続部23との間には平面視略矩形状の突条部18bによって囲われたスイッチング素子実装領域Aが設定されており、このスイッチング素子実装領域A内に、6つのスイッチング素子24が実装されている。これら6つのスイッチング素子24により、外部接続コネクタ19を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換する周知のインバータ回路が構成されている。このインバータ回路の出力である三相交流電力は、ステータ接続部20を介して電動モータ2に供給され、当該電動モータ2を回転駆動する。なお、本実施例では、スイッチング素子24としていわゆるMOSFET(電界効果トランジスタ)が用いられているが、他のスイッチング素子であってもよい。
【0025】
各スイッチング素子24は、部品実装面18aに沿って配置される平坦な矩形のパッケージの一側部から端子35が延びており、この端子35をL字形に折り曲げることで板状基部18のバスバー63に接続されているが、それぞれの端子35が延びる方向に沿って互いに隣接した2個のスイッチング素子24が1組のスイッチング素子24を構成し、かつ、この2個1組のスイッチング素子24が、3組、互いに隣接して配置されている。換言すれば、6個のスイッチング素子24は、「2×3」の配列となっている。図7では、理解を容易にするために、第1の組のスイッチング素子24を符号24aで示し、第2の組のスイッチング素子24を符号24bで示し、第3の組のスイッチング素子24を符号24cで示す。図7で明らかなように、3つの組24a,24b,24cは、外部接続コネクタ19の軸方向に沿って並んでいる。また各組を構成する2つのスイッチング素子24は、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向(図14のY方向)に沿って並んでいる。これらの3つの組のスイッチング素子24a,24b,24cによって、電動モータ2の三相(U相,V相.W相)の電力がそれぞれ制御される。従って、各スイッチング素子24は、発熱部品として比較的大きな熱を発生する。
【0026】
ケース12のヒートシンクとなるブロック状突出部38の頂面の大きさは、上記のように「2×3」に配列されるスイッチング素子24を含むスイッチング素子実装領域Aに実質的に対応している。図4に示すように、パワーモジュール16がケース12に取り付けられた状態では、各スイッチング素子24がブロック状突出部38の頂面に接触し、スイッチング素子24で発生した熱がブロック状突出部38に伝達される。なお、図示はしていないが、スイッチング素子24とブロック状突出部38との間に、熱伝達性の高いジェルやシート部材からなる熱伝達部材を介装するようにしてもよい。この種の熱伝達部材は、スイッチング素子24ないしブロック状突出部38の頂面の凹凸に追従し、両者間の微小隙間を吸収して実質的な接触面積を増大させるので、熱伝達性が向上する。
【0027】
そのほか、板状基部18の部品実装面18aには、当該部品実装面18aの面直角方向に突出する略円柱状に形成された一対の第1電解コンデンサ25、同じく部品実装面18aの面直角方向に突出した略円柱状を呈していて両第1電解コンデンサ25よりも軸方向の長さが短い一対の第2電解コンデンサ26、複数のセラミックコンデンサ27、電流を検出するための複数のシャント抵抗28、回路保護のための一対のリレー29、ノーマルモードコイル30、コモンモードコイル31、がそれぞれ実装されている。第1,第2電解コンデンサ25,26、ノーマルモードコイル30、コモンモードコイル31は、ノイズ除去のためのノイズフィルタ部品として機能する。両第1電解コンデンサ25およびノーマルモードコイル30は、部品実装面18aのうち外部接続コネクタ19とは反対側の端部にそれぞれ配置されている。両第2電解コンデンサ26とコモンモードコイル31および両リレー29は、部品実装面18aのうちステータ接続部20を挟んでセンサ接続部23とは反対側の位置にそれぞれ配置されている。
【0028】
前述したスイッチング素子実装領域Aは、ノイズフィルタ部品の一つであるノーマルモードコイル30や第1電解コンデンサ25と外部接続コネクタ19との間に設けられている。換言すれば、6つのスイッチング素子24の両側(上記X方向に沿った両側)に、ノイズフィルタ部品の少なくとも一つ(本実施例ではノーマルモードコイル30および第1電解コンデンサ25)と外部接続コネクタ19とがそれぞれ配置されている。同様に、ステータ接続部20もノーマルモードコイル30および第1電解コンデンサ25と外部接続コネクタ19との間に位置している。
【0029】
一方、図7,8および図14に示すように、板状基部18の外周縁部の4箇所には、「第1固定要素」としてケース12側のパワーモジュール支持部37にそれぞれ対応する外側取付孔32a〜32dが貫通形成されている。板状基部18は四辺が完全な直線の矩形ではなく、僅かに異形となっているが、これらの外側取付孔32a〜32dは、実質的には、板状基部18の四隅に位置しており、外部接続コネクタ19の軸方向(図14のX方向)については、第1外側取付孔32aおよび第3外側取付孔32cは、外部接続コネクタ19寄りの端部に位置し、第2外側取付孔32bおよび第4外側取付孔32dは、外部接続コネクタ19とは反対側となる端部に位置する。
【0030】
さらに、板状基部18のスイッチング素子実装領域Aの周囲の4箇所には、「第2固定要素」として、前述したブロック状突出部38の頂面のねじ孔38aにそれぞれ対応する内側取付孔33a〜33dが貫通形成されている。これらの内側取付孔33a〜33dは、「第1固定要素」となる外側取付孔32a〜32dよりもスイッチング素子24に近い位置にあり、外部接続コネクタ19の軸方向については、外部接続コネクタ19寄りの第1,第3外側取付孔32a,32cと反対側の第2,第4外側取付孔32b,32dとの間に、4つの内側取付孔33a〜33dが位置している。
【0031】
また、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向(図14のY方向)については、一方の側の第1,第2外側取付孔32a,32bと他方の側の第3,第4外側取付孔32c,32dとの間に、第1,第2内側取付孔33a,33bが位置しており、第3,第4内側取付孔33c,33dは、板状基部18の一方の端縁に近い位置にある。つまり、スイッチング素子実装領域Aの両側(上記Y方向に沿った両側)に、第1,第2内側取付孔33a,33bと第3,第4内側取付孔33c,33dとがそれぞれ配置されている。第1内側取付孔33aと第3内側取付孔33cとは、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に並んで配置されており、同様に、第2内側取付孔33bと第4内側取付孔33dとは、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に並んで配置されている。
【0032】
より詳しくは、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向について、第1,第2内側取付孔33a,33bは、6つのスイッチング素子24とステータ接続部20との間に位置している。これら2つの内側取付孔33a,33bは、外部接続コネクタ19の軸方向に並んで配置されている。同様に、残りの2つの内側取付孔33c,33dも、外部接続コネクタ19の軸方向に並んで配置されている。
【0033】
また「2×3」に配列されたスイッチング素子24のレイアウトとの関係では、3組のスイッチング素子24(24a,24b,24c)が並んだ方向(図示例では、外部接続コネクタ19の軸方向と同じ方向つまり図14のX方向)に、2つの内側取付孔33a,33bが並んでおり、残りの2つの内側取付孔33c,33dも同方向に並んでいる。そして、同じ組となる2つのスイッチング素子24が並んだ方向(図14のY方向)に、第1内側取付孔33aと第3内側取付孔33cとが並んで配置されており、同様に、第2内側取付孔33bと第4内側取付孔33dとがY方向に並んで配置されている。なお、本発明において、「2つの取付孔がある方向例えばX方向に配置されている」とは、完全な直線上の配置に限定される趣旨ではなく、X方向に適宜な間隔を有して2つの取付孔が概ねX方向に沿った線上に位置していることを意味している。
【0034】
そして、図3および図10に示すように、パワーモジュール16は、外側取付孔32a〜32dを貫通する4本のパワーモジュール取付ねじ61によってケース12のパワーモジュール支持部37に固定されており、さらに、内側取付孔33a〜33dを貫通する4本のパワーモジュール取付ねじ62によって、板状基部18のスイッチング素子実装領域A周囲がブロック状突出部38に締付固定されている。パワーモジュール取付ねじ61は、パワーモジュール支持部37のねじ孔37aにそれぞれ螺合し、パワーモジュール取付ねじ62は、ブロック状突出部38頂面のねじ孔38aにそれぞれ螺合する。外側取付孔32a〜32dとパワーモジュール取付ねじ61によって「第1固定要素」が構成され、内側取付孔33a〜33dとパワーモジュール取付ねじ62によって「第2固定要素」が構成される。
【0035】
また、図3,8に示すように、板状基部18のうち部品取付面18aとは反対側の制御モジュール対向面18cには、当該制御モジュール対向面18aの外周縁部から面直角方向に突出して制御モジュール17をいわゆるスナップフィット方式で係合保持するスナップフィット部47が複数形成されているとともに、パワーモジュール16と制御モジュール17とを電気的に接続するための接続端子52が複数突設されている。
【0036】
図9は、制御モジュール17を係合保持している状態のスナップフィット部47を拡大して示す斜視図である。なお、図9では各スナップフィット部47のうちの一つのみを図示しているが、他のスナップフィット部47も同様に構成されている。
【0037】
図9に示すように、スナップフィット部47は、板状基部18の一部として合成樹脂材料で一体に成形されているものであって、制御モジュール17におけるパワーモジュール16側のパワーモジュール対向面17aが着座する略円柱状の制御モジュール支持部48と、その制御モジュール支持部48の近傍に設けられた保持片49と、を備えている。保持片49は、板状基部18の制御モジュール対向面18cから突出する断面略偏平状の柱状基部50の先端に、その柱状基部50の肉厚方向で制御モジュール17側へ突出する爪部51を形成してなるものであって、制御モジュール17におけるパワーモジュール対向面17aとは反対側のカバー対向面17bに、爪部51が引っ掛かりの関係をもって係合するようになっている。より詳細には、爪部51の下面は制御モジュール17に対する係合面51aとして下向きに傾斜して形成されているのに対して、爪部51の上面は滑らかに湾曲しつつ上向きに傾斜した傾斜面であるガイド面51bとして形成されている。
【0038】
そして、組立状態においては、制御モジュール支持部48に制御モジュール17が着座しているとともに、その制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部51の係合面51aが係合している。これにより、制御モジュール17は、図9のほか図4に示すように、板状基部18に対して面直角方向で所定の間隔を隔てた位置、具体的にはケース12の開口端よりもカバー15内に入り込んだ位置で、各スナップフィット部47によって位置決め保持されている。すなわち、制御モジュール17は、カバー15の膨出部43内に収容されている。
【0039】
図3,9に示すように、制御モジュール17は、ガラスエポキシ樹脂に代表されるような非導電性樹脂材料からなる基板の表裏両面にそれぞれ導体パターン(図示せず)を形成し、その上に多数の電子部品(図示せず)を実装することで構成されたものであって、当該制御モジュール17の外周縁のうち各保持片49に対応する位置には、それらの各保持片49の柱状基部50の断面形状に合致する形状の切欠部17cがそれぞれ形成されている。すなわち、制御モジュール17は、各保持片49の柱状基部50を各切欠部17cにそれぞれ受容することにより、板状基部18に平行な状態で位置決めされるようになっている。
【0040】
また、図3,5に示すように、制御モジュール17のうちパワーモジュール16側の各接続端子52に対応する位置には、スルーホール53がそれぞれ貫通形成されている。各スルーホール53は、それぞれ対応する接続端子52を受容し、その接続端子52に対して半田によって電気的に接続されている。そして、制御モジュール17は、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態にかかる情報を外部接続コネクタ19および各接続端子52を介して入力し、その情報に基づいて生成した駆動指令信号を各接続端子52を介して各スイッチング素子24へ出力することで、各スイッチング素子24をスイッチング動作させて電動モータ2を駆動することになる。
【0041】
次に、以上のように構成したモータ制御装置3の組立手順について説明する。先ず、パワーモジュール16のステータ接続部20をケース12側の電力供給端子挿通孔39に、パワーモジュール16のセンサ接続部23をケース12側のコネクタ挿通孔40にそれぞれ挿通させつつ、各パワーモジュール支持部37上に板状基部18を載置し、図10に示すように、各パワーモジュール取付ねじ61,62によってパワーモジュール16をケース12に締結固定する。具体的には、外側取付孔32a〜32dをそれぞれ貫通するパワーモジュール取付ねじ61を各パワーモジュール支持部37に形成されたねじ孔37aに螺合させるとともに、内側取付孔33a〜33dをそれぞれ貫通するパワーモジュール取付ねじ62をブロック状突出部38に形成されたねじ孔38aに螺合させる。
【0042】
ここで、パワーモジュール16は、前述したように、金型内に金属製のバスバー63を複数位置決め支持した状態で、その金型内へ樹脂材料を充填することにより、各バスバー63をインサートしつつ型成形されたものである。なお、本実施例では、図8に示すように、バスバー63の多くが、板状基部18表面に露出した状態でインサートされており、これにより、板状基部18の厚さの低減ひいてはパワーモジュール16の小型化を図っている。バスバー63を板状基部18の内部に完全に埋設してもよい。
【0043】
このようにいわゆるインサート成形により形成されるパワーモジュール16においては、金属材料と樹脂材料とで熱膨張係数が相違するため、図11の(a)に模式的に示すように、金型内へ充填した樹脂材料の冷却時に、板状基部18に反りが発生する。つまり、板状基部18においては、制御モジュール対向面18cに沿って多くのバスバー63が配設されているので、金型内へ充填した樹脂材料の冷却時に、板状基部18の制御モジュール対向面18cよりも部品実装面18aの方が大きく収縮することになるため、一般に、板状基部18には、制御モジュール対向面18c側に向かって凸となる方向の反りが生じやすい。なお、図11の(a)では、上述した理由から、制御モジュール対向面18c側に向かって凸となる方向に反った板状基部18を示しているが、パワーモジュール16の成形条件によっては、逆に、制御モジュール対向面18c側に向かって凹となる方向に板状基部が反ることも有り得る。
【0044】
そして、以上のように反りが生じた板状基部18を各パワーモジュール支持部37に単に載置した状態では、当該板状基部18とブロック状突出部38との間に隙間Gが生じることになる。しかし、図11の(b)に示すように、板状基部18は、内側取付孔33a〜33dを貫通したパワーモジュール取付ねじ62により、スイッチング素子実装領域A周囲の4箇所においてブロック状突出部38へ向けて押圧固定される。これにより、板状基部18は所期の平坦形状に矯正され、図4に示すように、板状基部18に実装された各スイッチング素子24がブロック状突出部38の頂面に当接(直接あるいは前述した熱伝達部材を介して)し、各スイッチング素子24の発生した熱が受熱部ないしヒートシンクとなるブロック状突出部38へ効率的に伝達されるようになる。
【0045】
特に、上記構成では、「第2固定要素」となるパワーモジュール取付ねじ62がブロック状突出部38のねじ孔38aに直接に螺合し、スイッチング素子実装領域Aがブロック状突出部38に直接に固定されるので、スイッチング素子24と受熱部であるブロック状突出部38頂面との接触性がより確実に得られる。また、比較的大きなブロック状突出部38の頂面によって、板状基部18の反りが確実に矯正される。
【0046】
図12(a),(b)は、図11(a),(b)と同様に、ケース12へ取り付ける前の板状基部18が反っている状態およびケース12への取付後の平坦となった状態を示している。この図12は、図11の模式図に比較して、種々の電子部品を備えたパワーモジュール16をより詳細に描いている。
【0047】
なお、板状基部18は、外周部の外側取付孔32a〜32dにおいてパワーモジュール取付ねじ61によりケース12に固定されるから、仮に、板状基部18が制御モジュール対向面18c側に向かって凹となる方向に反っていたとしても、板状基部18を所期の平坦形状に矯正することが可能である。
【0048】
次いで、図5に示すように、パワーモジュール16に対して制御モジュール17を組み付ける。具体的には、制御モジュール17の各スルーホール53にパワーモジュール16側の各接続端子52を挿通させつつ、制御モジュール17のうち各切欠部17cの周縁を図9に示す各保持片49のうち爪部51のガイド面51bにそれぞれ当接させた状態で、その制御モジュール17をパワーモジュール16側に向かって押圧する。これにより、各保持片49は、ガイド面51bと制御モジュール16との傾斜面接触をもって弾性的に撓み変形し、爪部51と制御モジュール支持部43との間の位置に制御モジュール17を受容した上で、上記撓み変形に基づく復元力によって制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部51の係合面51aを係合させることになる。その結果、制御モジュール17が各スナップフィット部47によって位置決め支持される。
【0049】
このようにして制御モジュール17をパワーモジュール16に組み付けたならば、パワーモジュール16側の各接続端子52と制御モジュール17側の各スルーホール53とを半田によって電気的に接続した上で、ケース12の開口をカバー15によって閉蓋することにより、モータ制御装置3の組み立てが完了する。
【0050】
したがって、本実施例によれば、制御モジュール17をパワーモジュール16側へ押圧するという極めて容易な操作をもって制御モジュール17をパワーモジュール16に組み付けることができるから、モータ制御装置3の組立作業性が飛躍的に向上する。
【0051】
ところで、上述したようにパワーモジュール16の成形時に板状基部18に反りが生じると、図13(a)に示すように、当該板状基部18の制御モジュール対向面18cに突設された各スナップフィット部47および各接続端子52(図8参照)が相手側となる制御モジュール17に対して傾斜し、各スナップフィット部47および各接続端子52の相対位置関係が正規の相対位置関係からずれてしまう。したがって、仮に、板状基部18に生じた反りを矯正することなく制御モジュール17を組み付けようとした場合、各スナップフィット部47および各接続端子52が相手側となる各切欠部17cおよび各スルーホール53に対して位置ずれすることになり、それらの各スナップフィット部47および各接続端子52の傾きを適宜調整しながら制御モジュール17を組み付けなければならならず、その組付作業が非常に煩雑となる虞がある。
【0052】
これに対し、本実施例では、外側取付孔32a〜32dを貫通するパワーモジュール取付ねじ61によって板状基部18の外周部をケース12に固定するとともに、内側取付孔33a〜33dを貫通するパワーモジュール取付ねじ62によって板状基部18の中央部をブロック状突出部38に向けて押圧固定することにより、図13(b)に示すように、板状基部18が所期の平坦形状に矯正されることから、各スナップフィット部47および各接続端子52の上述したような位置ずれを矯正することができ、パワーモジュール16に対して制御モジュール17をさらに容易に組み付けられるようになる。その結果、モータ制御装置3の組立作業性がより一層向上する。
【0053】
さらに、車両の走行中には常にモータ制御装置3の筐体7に振動が加わることになるが、仮に、重ねて配置された2つの回路基板をそれぞれ筐体に対してねじ止めした場合には、筐体に入力された振動がそれぞれ異なる経路を介して両基板に伝達されることになり、両基板の振動に位相のずれが生じてしまう。そして、このように両基板の振動に位相のずれが生じると、両基板同士が相対的に変位することになるから、両基板同士を電気的に接続するリードフレームに応力が発生し、当該リードフレームの耐久性または信頼性が低下してしまう虞がある。
【0054】
これに対し、本実施例の構成では、制御モジュール17をパワーモジュール16に対して保持固定していることから、筐体7に入力された振動はパワーモジュール16を介して制御モジュール17に伝達されることになる。これにより、制御モジュール17の振動とパワーモジュール16の振動との間に生じる位相差、ひいては各接続端子52に発生する応力が少なくとも軽減され、各接続端子52の耐久性または信頼性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施例では、第1固定要素および第2固定要素として、板状基部18の取付孔に挿通される取付ねじ61,62を用いているので、その固定支持が強固であり、外部からの振動入力に対してパワーモジュール16等が共振したりすることがない。
【0056】
さらに、スナップフィット部47をもって制御モジュール17をパワーモジュール16に固定するようにしたことで、パワーモジュール16や制御モジュール17において熱収縮や熱膨張が発生し、かつ当該熱収縮や熱膨張においてその収縮量ないし膨張量に差が生じたとしても、スナップフィット部47が変形、具体的には保持片49が弾性変形することによって、上記各量の差を吸収することが可能となる。この結果、上記パワーモジュール16や制御モジュール17に応力が作用してしまう不具合を抑制することができる。なお、特に、かかる応力は、パワーモジュール16や制御モジュール17の半田付け部分に作用しやすいことから、上記の作用により、当該半田付け部分の耐久性の低下やクラック等の発生による劣化を抑制できる。
【0057】
また、制御モジュール17は、当該制御モジュール17の外周縁に各保持片49が係合することによって位置決め保持されるようになっているため、制御モジュール17に固定用の取付孔を貫通形成する必要がなく、当該制御モジュール17を小型化できるようになるほか、当該制御モジュール17の設計自由度が向上するメリットもある。
【0058】
なお、図11(a),図12(a)および図13(a)は、いずれも、板状基部18に生じる反りを若干誇張して描いている。
【0059】
上記のように、上記実施例の構成では、スイッチング素子24周囲の内側取付孔33a〜33dをパワーモジュール取付ねじ62によってブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定することでスイッチング素子24とブロック状突出部38の頂面との接触性が向上し、スイッチング素子24に対する冷却性が向上する。特に、上記実施例では、ステータ接続部20とスイッチング素子24との間に第1,第2内側取付孔33a,33bが配置されており、これらの箇所でブロック状突出部38に対し固定されるので、板状基部18から突出したステータ接続部20の剛性が高くなる。従って、電動モータ2のステータとの接続時に発生する応力によってステータ接続部20が破損したり変形したりするという不具合を抑制できる。
【0060】
さらに、ステータ接続部20は、ヒートシンクとなるブロック状突出部38に隣接して配置されているので、電気的な接続部で発生する熱や電動モータ2から伝わる熱をブロック状突出部38に伝達して放熱させることができる。従って、筐体7の内部の温度やパワーモジュール16ないし制御モジュール17の温度の上昇を抑制することができる。しかもブロック状突出部38が支持部材となってステータ接続部20を支えることができるので、電動モータ2などアクチュエータユニット1の外部からの振動によってステータ接続部20が振動することを抑制できる。
【0061】
また、上記実施例では、外部接続コネクタ19の軸方向(図14のX方向)に、「第2固定要素」となる2つの内側取付孔33a,33bが並んでおり、かつ他の2つの内側取付孔33c,33dも同方向に並んでいる。従って、この外部接続コネクタ19の軸方向に沿った断面における板状基部18の反りを確実に矯正することができる。
【0062】
さらに、上記実施例では、第1,第3内側取付孔33a,33cが外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向(図14のY方向)に並んで配置されており、同様に、第2,第4内側取付孔33b,33dが外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に並んで配置されているので、この外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に沿った断面における板状基部18の反りを確実に矯正することができる。
【0063】
特に、上記実施例では、「2×3」に配列されたスイッチング素子24の両側に内側取付孔33a〜33dが配置されているため、スイッチング素子実装領域Aにおける板状基部18の反りが確実に矯正され、ブロック状突出部38の頂面と各スイッチング素子24との接触性のばらつきが少なくなる。
【0064】
さらに、上記実施例では、スイッチング素子24およびステータ接続部20が、ノイズフィルタ部品の一つであるノーマルモードコイル30や第1電解コンデンサ25と外部接続コネクタ19との間に配置されているため、ステータ接続部20がケース12のほぼ中央に位置することとなり、電動モータ2との接続距離を短くすることができ、かつ組付性が向上する。またスイッチング素子24とステータ接続部20とが接近していることから、ノイズ低減を図ることができる。そして、ケース12のほぼ中央で電動モータ2と接続されることから、電動モータ2にケース12を結合した状態での装置全体の小型化が図れる。しかも、このケース12のほぼ中央が「第2固定要素」であるパワーモジュール取付ねじ62によって固定されるため、反りが大きな領域がケース12に対し固定されることとなり、板状基部18の全体的な反りを抑制することができる。
【0065】
次に、「第2固定要素」となる内側取付孔33の配置を変更した変形例を図15〜図20に基づいて説明する。
【0066】
図15は、前述した第1実施例における第2内側取付孔33bを省略した第2実施例を示しており、第1内側取付孔33a、第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dの3箇所でスイッチング素子24の周囲をブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定する構成となっている。なお、さらに第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dを省略するようにしてもよい。
【0067】
図16は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aを省略した第3実施例を示しており、第2内側取付孔33b、第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dの3箇所でスイッチング素子24の周囲をブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定する構成となっている。なお、さらに第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dを省略するようにしてもよい。
【0068】
図17は、前述した第1実施例における第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dを省略した第4実施例を示しており、板状基部18のほぼ中央に位置する第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bの2箇所で板状基部18をブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定している。
【0069】
図18は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bに代えて、1つの内側取付孔33eを設けた第5実施例を示している。上記内側取付孔33eは、「2×3」に配列された6個のスイッチング素子24の中央に位置している。
【0070】
図19は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bに代えて、「2×3」に配列された6個のスイッチング素子24の中央部に2つの内側取付孔33f,33gを設けた第6実施例を示している。これらの内側取付孔33f,33gは、第2の組のスイッチング素子24bと第3の組のスイッチング素子24cとの間、および第1の組のスイッチング素子24aと第2の組のスイッチング素子24bとの間、にそれぞれ配置されている。
【0071】
図20は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bに代えて、「2×3」に配列された6個のスイッチング素子24の中央部に3つの内側取付孔33h,33i,33jを設けた第7実施例を示している。これらの内側取付孔33h,33i,33jは、それぞれ、1組を構成する2つのスイッチング素子24の間に配置されている。
【0072】
ここで、上記実施例から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に列挙する。
【0073】
(イ)上記電気接続要素は、上記ブロック状突出部の側壁に沿った位置に配置されている、請求項3に記載の電子制御装置。
【0074】
(ロ)上記電気接続要素は、上記ケースが取り付けられる電動アクチェータに駆動電流を供給する駆動用端子である、請求項3に記載の電子制御装置。
【0075】
(ハ)複数の第2固定要素を備え、上記発熱部品が搭載された位置の両側に上記第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0076】
(ニ)上記回路基板は、電源供給用コネクタを備え、
この電源供給用コネクタの軸方向に、複数の第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0077】
(ホ)上記発熱部品は、2つの発熱部品を1組として3組の発熱部品が互いに隣接して配置されており、
これら3組の発熱部品が並んだ方向に、少なくとも2つの第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0078】
(ヘ)上記回路基板は、電源供給用コネクタを備え、
この電源供給用コネクタの軸方向と直交する方向に、複数の第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0079】
(ト)上記発熱部品は、2つの発熱部品を1組として3組の発熱部品が互いに隣接して配置されており、
1組の発熱部品に含まれる2つの発熱部品が並んだ方向に、少なくとも2つの第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0080】
(チ)上記回路基板は、電源供給用コネクタと、ノイズフィルタ部品と、上記ケースの底面から突出して電動アクチェータに駆動電流を供給する駆動用端子と、を備え、
上記発熱部品および上記駆動用端子が、電源供給用コネクタと少なくとも1つのノイズフィルタ部品との間に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0081】
(リ)上記回路基板は、電源供給用コネクタと、ノイズフィルタ部品と、を備え、
上記第2固要素の少なくとも1つは、上記電源供給用コネクタと少なくとも1つのノイズフィルタ部品との間に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0082】
(ヌ)上記第1固定要素は、上記回路基板に貫通形成された取付孔と、該取付孔に挿入されて上記回路基板を上記ケースに締結するねじと、からなる、請求項1に記載の電子制御装置。
【0083】
(ル)上記第2固定要素は、上記回路基板に貫通形成された取付孔と、該取付孔に挿入されて上記回路基板を上記ケースに締結するねじと、からなる、請求項1に記載の電子制御装置。
【0084】
(ヲ)上記回路基板の上に重ねて配置される第2の回路基板と、
上記回路基板に複数形成され弾性変形可能な保持片と、
上記保持片にそれぞれ形成された爪部と、
上記回路基板と対向する上記第2の回路基板の第1の面に当接して上記第2の回路基板を支持する支持部と、を備え、
上記第2の回路基板は、上記爪部が該第2の回路基板の第2の面に係合することで保持されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【符号の説明】
【0085】
3…モータ制御装置
12…ケース
16…パワーモジュール
17…制御モジュール
24…スイッチング素子
32a〜32d…外側取付孔
33a〜33d…内側取付孔
38…ブロック状突出部
49…保持片
51…爪部
51a…係合面
51b…ガイド面
61,62…パワーモジュール取付ねじ
A…スイッチング素子実装領域
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱部品が搭載された回路基板をケース内に収容してなる電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子制御装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の電子制御装置は、熱伝導性の良好な金属からなる装置ケース内に、複数のバスバ−をインサート成形してなる合成樹脂製のバスバー基板を収容した構成であり、バスバー基板の上に、プリント回路基板が重ねて取り付けられている。上記バスバー基板には、別の小型の基板を介して発熱部品となるMOSFETが取り付けられており、このMOSFETを装置ケースの内壁面に接触させた状態とすることで、その放熱を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−224708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子制御装置にあっては、ケース内に収容される回路基板に反り(湾曲変形)が生じることがある。特に、バスバーをインサートした状態に合成樹脂材料を型成形した構成の回路基板では、成形した樹脂材料の冷却に伴って反りが生じやすい。このように回路基板が湾曲変形すると、回路基板の表面に実装した発熱部品とケース内壁面との接触が不十分となり、発熱部品からの熱に対しケースを介した放熱性が悪化する。
【0005】
なお、上記特許文献1では、回路基板の反りによる影響を回避するために、発熱部品となるMOSFETが別の小型の基板を介して支持されており、従って、構成が複雑化してしまう。
【0006】
本発明は、回路基板の反りによる発熱部品の放熱性の悪化を抑制した電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電子制御装置は、
発熱部品が搭載された回路基板と、
上記回路基板を収容し、かつ上記発熱部品と接する受熱部を有するケースと、
上記回路基板の外周に沿って該回路基板を上記ケースに固定する少なくとも2つの第1固定要素と、
上記固定要素による固定点よりも上記発熱部品に近い位置で上記回路基板を上記ケースに向けて押圧固定する少なくとも1つの第2固定要素と、
を備えて構成されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記回路基板はその外周に沿った第1固定要素によってケースに固定されるほか、発熱部品に近い位置で第2固定要素によりケースに向けて押圧固定されるので、回路基板に反りが生じていた場合でも、発熱部品とケース受熱部との間の接触が良好となり、発熱部品からの放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例であるモータ制御装置を備えたアクチュエータユニットを示す分解斜視図。
【図2】図1に示すアクチュエータユニットを別の角度から見た分解斜視図。
【図3】図2に示すモータ制御装置の分解斜視図。
【図4】図2に示すモータ制御装置のA−A線に沿った断面図。
【図5】図4に示すモータ制御装置からカバーを取り除いた状態を示す平面図。
【図6】図3に示すケース単体の斜視図。
【図7】図3に示すパワーモジュール単体の斜視図であって、そのパワーモジュールを部品実装面側から見た図。
【図8】図7に示すパワーモジュールを制御モジュール対向面側から見た斜視図。
【図9】図8に示すスナップフィット部が制御モジュールに係合した状態を示す拡大斜視図。
【図10】図3に示すケースにパワーモジュールを取り付けた状態を示す平面図。
【図11】(a)パワーモジュール取付ねじ締結前の板状基部と(b)パワーモジュール取付ねじ締結後の板状基部とを対比して示す図。
【図12】(a)パワーモジュール取付ねじ締結前のパワーモジュールと(b)パワーモジュール取付ねじ締結後のパワーモジュールとを実装した部品とともに示す図。
【図13】(a)パワーモジュール取付ねじ締結前のパワーモジュールと(b)パワーモジュール取付ねじ締結後のパワーモジュールとを制御モジュールとともに示す図。
【図14】第1実施例の内側取付孔の配置を示すパワーモジュールの平面図。
【図15】内側取付孔の配置が異なる第2実施例のパワーモジュールの平面図。
【図16】内側取付孔の配置が異なる第3実施例のパワーモジュールの平面図。
【図17】内側取付孔の配置が異なる第4実施例のパワーモジュールの平面図。
【図18】内側取付孔の配置が異なる第5実施例のパワーモジュールの平面図。
【図19】内側取付孔の配置が異なる第6実施例のパワーモジュールの平面図。
【図20】内側取付孔の配置が異なる第7実施例のパワーモジュールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜10に基づいて本発明の第1実施例を説明する。図1は本発明にかかる電子制御装置であるモータ制御装置3を備えたアクチュエータユニット1を示す分解斜視図、図2は図1に示すアクチュエータユニット1を別の角度から見た分解斜視図である。また、図3はモータ制御装置3の分解斜視図、図4は図2に示すモータ制御装置3のA−A線に沿った断面図、図5はカバーを取り除いた状態のモータ制御装置3を示す平面図である。
【0011】
図1,2に示すアクチュエータユニット1は、自動車に搭載される電動式のブレーキ倍力装置に用いられるものであって、三相交流電力によって駆動され、ブレーキ液の液圧を制御する電動アクチュエータである電動モータ2と、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態に基づいて電動モータ2を駆動制御するモータ制御装置3と、を備えている。なお、図示は省略しているが、電動モータ2は、いわゆるボールねじ機構により、ブレーキ液の液圧を制御する図示しないピストンを進退移動させる。
【0012】
電動モータ2のモータハウジング4の円筒形の外面には、当該電動モータ2の軸方向に延びる一対の台座部5が電動モータ2の軸直角方向で互いに所定の間隔を隔てて形成されている。両台座部5のうち長手方向の両端部にはねじ孔6aが穿設された円形の着座面6がそれぞれ突出形成されている一方、モータ制御装置3の筐体7のうち後述するケース12にはモータハウジング4側の各着座面6にそれぞれ着座する4つの脚部8が形成されている。そして、筐体7側の各脚部8を挿通しつつモータハウジング4側の各ねじ孔6aに螺合する4つの制御装置取付ねじ9により、モータ制御装置3が電動モータ2に固定される。
【0013】
他方、モータハウジング4のうち両台座部5同士の間の位置には略矩形の筒状壁10が突出形成され、モータ制御装置3の筐体7をモータハウジング4に固定したときに、モータ制御装置3側のステータ接続部20およびセンサ接続部23が、筒状壁10の内周側に開口する開口部11を通じてモータハウジング4内に臨むようになっている。上記ステータ接続部20は、後述するように、モータハウジング4内のステータ(図示せず)に接続される端子を具備している。センサ接続部23は、回転位置センサ用コネクタ23aと温度センサ用コネクタ23b(いずれも図7参照)とを一体化した構成であって、回転位置センサ用コネクタ23aに、モータハウジング4内の回転位置センサからのハーネス(図示せず)が接続され、温度センサ用コネクタ23bに、モータハウジング4内の温度センサからのハーネス(図示せず)が接続される。なお、上記回転位置センサとは、周知のように、モータハウジング4内に設けられたロータ(図示せず)の回転位置を検出するものであって、当該回転位置センサの出力信号はモータ制御装置3による電動モータ2の駆動制御に供される。また、上記温度センサは、電動モータ2の作動温度、詳しくは電動モータ2の図示しないコイルの温度を検出するものである。上記開口部11を囲む筒状壁10の先端には、無端状に連続した溝部10aが形成されており、この溝部10aに配置されるシール部材(図示せず)がケース12の底壁13に圧接することにより、モータハウジング4の内外をシールするようになっている。
【0014】
図1,2および図3に示すように、モータ制御装置3の筐体7は、ケース12とカバー15と、からなる。ケース12は、底壁13と周壁14とを有し、上面が上方に向けて開口する平面視で略矩形状をなす。カバー15は、ケース12の上面開口を閉蓋する平面視で略矩形状をなす。筐体7の内部には、「回路基板」に相当するパワーモジュール16と、「第2の回路基板」に相当する制御モジュール17と、が収容されている。詳しくは、ケース12の底壁13寄りにパワーモジュール16が位置し、その上方に、所定の間隔を隔てて制御モジュール17が積層配置されている。そして、筐体7は、ケース12の底壁13をモータハウジング4側に向けた姿勢でモータハウジング4に固定されるようになっている。
【0015】
図3および図4に示すように、カバー15は、金属板を略皿状にプレス成形することで形成されているものであって、制御モジュール17を収容すべくケース12とは反対側に向けて膨出した膨出部43と、その膨出部43の外周縁に形成されたフランジ部44と、そのフランジ部44の外周縁を下向き(ケース12側)に曲折してなる突縁部45と、を備えている。
【0016】
図4〜6に示すように、ケース12は熱伝導が比較的良好なアルミニウム合金を用いていわゆるアルミダイカスト法をもって型成形されたものである。当該ケース12のうち矩形の周壁14の一辺に相当する第1壁部14aには、パワーモジュール16側の外部接続コネクタ19が挿通する開口部36が当該第1壁部14aの大部分を上方側から切り欠くようにして形成されている。開口部36は外部接続コネクタ19の根元部に形成されたフランジ部19aに合致する形状を呈しており、当該開口部36の開口縁には、接着性を有するシール材(図示せず)を介してフランジ部19aが接着固定されている。なお、図4〜6における符号12aは、ケース12の外面に形成された冷却用のフィンを示している。
【0017】
また、ケース12のうち周壁14の先端縁および外部接続コネクタ19のうちフランジ部19aの上端縁には、無端状に連続するようにシール溝46が形成されている。そして、そのシール溝46にカバー15側の突縁部45を挿入した状態で、複数のカバー取付ねじ34(図3参照)によってカバー15とケース12とが締結固定されている。なお、図示は省略しているが、カバー15とケース12との間は、シール溝46内に塗布されたシール性を有する接着剤によってシールされている。
【0018】
ケース12の底壁13には、当該底壁13の四隅近傍の位置からカバー15側に向けてそれぞれ突出する略円柱状のパワーモジュール支持部37が4箇所に形成されている。各パワーモジュール支持部37の頂部には、後述するパワーモジュール取付ねじ61が螺合するねじ孔37aがそれぞれ形成されている。さらに、底壁13のうちパワーモジュール16側の後述するスイッチング素子実装領域A(図7参照)に対応する位置において、受熱部として、該底壁13からカバー15側に向けて略矩形のブロック状に突出したブロック状突出部38が形成されている。このブロック状突出部38は、熱容量の大きなヒートシンクとして機能する。
【0019】
ブロック状突出部38は、ケース12の略中央部に位置し、矩形の周壁14のうち互いに対向する第1壁部14aおよび第2壁部14bに対しては、それぞれ所定の間隔を介して離れており、冷却用フィン12aを有する第3壁部14cに対向する第4壁部14dに対しては、やはり所定の間隔を介して離れている。そして、ブロック状突出部38は、冷却用フィン12aを有する第3壁部14cに一体に連続して形成されている。このブロック状突出部38の頂面の四隅近傍には、後述するパワーモジュール取付ねじ62が螺合する計4個のねじ孔38aが形成されている。
【0020】
なお、図6の符号40は、ブロック状突出部38のうち第3壁部14c側の端部に貫通形成された断面略矩形状のコネクタ挿通孔40であって、図6の符号39は、ブロック状突出部38のうち第4壁部14d側の端面とケース12の底壁13とのなすコーナー部に貫通形成された電力供給端子挿通孔である。また、図6の符号41は、第3壁部14cのうちブロック状突出部38よりも第2壁部14b側の位置に貫通形成され、空気は通すが水は通さない呼吸フィルタ42(図1,2参照)が取り付けられた呼吸孔である。
【0021】
パワーモジュール16は、合成樹脂材料を用いて型成形したものであって、図4のほか図7に示すように、略平板状に形成されるとともに金属製のバスバー63(図8参照)が表面ないし内部に多数インサートされた板状基部18と、この板状基部18の一端縁に一体に形成された外部接続コネクタ19と、板状基部18から該板状基部18の平面と直交する方向に突出した前述のステータ接続部20およびセンサ接続部23と、を備えている。上記外部接続コネクタ19は、「電源供給用コネクタ」に相当し、ケース12側の開口部36を通じて外部に臨んでいて、外部の電子機器との間で信号および電力を授受する。また上記板状基部18のケース12底壁13側の面となる部品実装面18aには、種々の電子部品が実装されている。上記ステータ接続部20は、上記部品実装面18aの略中央部に突設されている。また上記センサ接続部23は、部品実装面18aの一方の端縁に突設されている。これらのステータ接続部20およびセンサ接続部23は、それぞれ矩形の板状をなし、互いに平行に延びている。
【0022】
ステータ接続部20は、外部接続コネクタ19の軸方向(図14のX方向)に沿って整列配置された3つの電力供給端子21と、板状基部18の部品実装面18aから突出形成されて各電力供給端子21の根元部を被覆する板状基部18と一体の樹脂材料からなる被覆部22と、を備えている。上記電力供給端子21は、電動モータ2に三相の駆動電流を供給する「駆動用端子」である。一方、センサ接続部23は、外部接続コネクタ19の軸方向に沿って回転位置センサ用コネクタ23aと温度センサ用コネクタ23bとが並んだ偏平な矩形状の断面を有しており、その内側に複数の端子(図示せず)が配置されている。
【0023】
なお、本実施例では、上記ステータ接続部20が「電気接続要素」に相当するが、センサ接続部を「電気接続要素」として板状基部18の略中央部に配置することも可能である。
【0024】
次いで、図7に基づいて、板状基部18の部品実装面18aに実装された種々の電子部品について具体的に説明する。部品実装面18aのうちステータ接続部20とセンサ接続部23との間には平面視略矩形状の突条部18bによって囲われたスイッチング素子実装領域Aが設定されており、このスイッチング素子実装領域A内に、6つのスイッチング素子24が実装されている。これら6つのスイッチング素子24により、外部接続コネクタ19を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換する周知のインバータ回路が構成されている。このインバータ回路の出力である三相交流電力は、ステータ接続部20を介して電動モータ2に供給され、当該電動モータ2を回転駆動する。なお、本実施例では、スイッチング素子24としていわゆるMOSFET(電界効果トランジスタ)が用いられているが、他のスイッチング素子であってもよい。
【0025】
各スイッチング素子24は、部品実装面18aに沿って配置される平坦な矩形のパッケージの一側部から端子35が延びており、この端子35をL字形に折り曲げることで板状基部18のバスバー63に接続されているが、それぞれの端子35が延びる方向に沿って互いに隣接した2個のスイッチング素子24が1組のスイッチング素子24を構成し、かつ、この2個1組のスイッチング素子24が、3組、互いに隣接して配置されている。換言すれば、6個のスイッチング素子24は、「2×3」の配列となっている。図7では、理解を容易にするために、第1の組のスイッチング素子24を符号24aで示し、第2の組のスイッチング素子24を符号24bで示し、第3の組のスイッチング素子24を符号24cで示す。図7で明らかなように、3つの組24a,24b,24cは、外部接続コネクタ19の軸方向に沿って並んでいる。また各組を構成する2つのスイッチング素子24は、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向(図14のY方向)に沿って並んでいる。これらの3つの組のスイッチング素子24a,24b,24cによって、電動モータ2の三相(U相,V相.W相)の電力がそれぞれ制御される。従って、各スイッチング素子24は、発熱部品として比較的大きな熱を発生する。
【0026】
ケース12のヒートシンクとなるブロック状突出部38の頂面の大きさは、上記のように「2×3」に配列されるスイッチング素子24を含むスイッチング素子実装領域Aに実質的に対応している。図4に示すように、パワーモジュール16がケース12に取り付けられた状態では、各スイッチング素子24がブロック状突出部38の頂面に接触し、スイッチング素子24で発生した熱がブロック状突出部38に伝達される。なお、図示はしていないが、スイッチング素子24とブロック状突出部38との間に、熱伝達性の高いジェルやシート部材からなる熱伝達部材を介装するようにしてもよい。この種の熱伝達部材は、スイッチング素子24ないしブロック状突出部38の頂面の凹凸に追従し、両者間の微小隙間を吸収して実質的な接触面積を増大させるので、熱伝達性が向上する。
【0027】
そのほか、板状基部18の部品実装面18aには、当該部品実装面18aの面直角方向に突出する略円柱状に形成された一対の第1電解コンデンサ25、同じく部品実装面18aの面直角方向に突出した略円柱状を呈していて両第1電解コンデンサ25よりも軸方向の長さが短い一対の第2電解コンデンサ26、複数のセラミックコンデンサ27、電流を検出するための複数のシャント抵抗28、回路保護のための一対のリレー29、ノーマルモードコイル30、コモンモードコイル31、がそれぞれ実装されている。第1,第2電解コンデンサ25,26、ノーマルモードコイル30、コモンモードコイル31は、ノイズ除去のためのノイズフィルタ部品として機能する。両第1電解コンデンサ25およびノーマルモードコイル30は、部品実装面18aのうち外部接続コネクタ19とは反対側の端部にそれぞれ配置されている。両第2電解コンデンサ26とコモンモードコイル31および両リレー29は、部品実装面18aのうちステータ接続部20を挟んでセンサ接続部23とは反対側の位置にそれぞれ配置されている。
【0028】
前述したスイッチング素子実装領域Aは、ノイズフィルタ部品の一つであるノーマルモードコイル30や第1電解コンデンサ25と外部接続コネクタ19との間に設けられている。換言すれば、6つのスイッチング素子24の両側(上記X方向に沿った両側)に、ノイズフィルタ部品の少なくとも一つ(本実施例ではノーマルモードコイル30および第1電解コンデンサ25)と外部接続コネクタ19とがそれぞれ配置されている。同様に、ステータ接続部20もノーマルモードコイル30および第1電解コンデンサ25と外部接続コネクタ19との間に位置している。
【0029】
一方、図7,8および図14に示すように、板状基部18の外周縁部の4箇所には、「第1固定要素」としてケース12側のパワーモジュール支持部37にそれぞれ対応する外側取付孔32a〜32dが貫通形成されている。板状基部18は四辺が完全な直線の矩形ではなく、僅かに異形となっているが、これらの外側取付孔32a〜32dは、実質的には、板状基部18の四隅に位置しており、外部接続コネクタ19の軸方向(図14のX方向)については、第1外側取付孔32aおよび第3外側取付孔32cは、外部接続コネクタ19寄りの端部に位置し、第2外側取付孔32bおよび第4外側取付孔32dは、外部接続コネクタ19とは反対側となる端部に位置する。
【0030】
さらに、板状基部18のスイッチング素子実装領域Aの周囲の4箇所には、「第2固定要素」として、前述したブロック状突出部38の頂面のねじ孔38aにそれぞれ対応する内側取付孔33a〜33dが貫通形成されている。これらの内側取付孔33a〜33dは、「第1固定要素」となる外側取付孔32a〜32dよりもスイッチング素子24に近い位置にあり、外部接続コネクタ19の軸方向については、外部接続コネクタ19寄りの第1,第3外側取付孔32a,32cと反対側の第2,第4外側取付孔32b,32dとの間に、4つの内側取付孔33a〜33dが位置している。
【0031】
また、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向(図14のY方向)については、一方の側の第1,第2外側取付孔32a,32bと他方の側の第3,第4外側取付孔32c,32dとの間に、第1,第2内側取付孔33a,33bが位置しており、第3,第4内側取付孔33c,33dは、板状基部18の一方の端縁に近い位置にある。つまり、スイッチング素子実装領域Aの両側(上記Y方向に沿った両側)に、第1,第2内側取付孔33a,33bと第3,第4内側取付孔33c,33dとがそれぞれ配置されている。第1内側取付孔33aと第3内側取付孔33cとは、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に並んで配置されており、同様に、第2内側取付孔33bと第4内側取付孔33dとは、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に並んで配置されている。
【0032】
より詳しくは、外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向について、第1,第2内側取付孔33a,33bは、6つのスイッチング素子24とステータ接続部20との間に位置している。これら2つの内側取付孔33a,33bは、外部接続コネクタ19の軸方向に並んで配置されている。同様に、残りの2つの内側取付孔33c,33dも、外部接続コネクタ19の軸方向に並んで配置されている。
【0033】
また「2×3」に配列されたスイッチング素子24のレイアウトとの関係では、3組のスイッチング素子24(24a,24b,24c)が並んだ方向(図示例では、外部接続コネクタ19の軸方向と同じ方向つまり図14のX方向)に、2つの内側取付孔33a,33bが並んでおり、残りの2つの内側取付孔33c,33dも同方向に並んでいる。そして、同じ組となる2つのスイッチング素子24が並んだ方向(図14のY方向)に、第1内側取付孔33aと第3内側取付孔33cとが並んで配置されており、同様に、第2内側取付孔33bと第4内側取付孔33dとがY方向に並んで配置されている。なお、本発明において、「2つの取付孔がある方向例えばX方向に配置されている」とは、完全な直線上の配置に限定される趣旨ではなく、X方向に適宜な間隔を有して2つの取付孔が概ねX方向に沿った線上に位置していることを意味している。
【0034】
そして、図3および図10に示すように、パワーモジュール16は、外側取付孔32a〜32dを貫通する4本のパワーモジュール取付ねじ61によってケース12のパワーモジュール支持部37に固定されており、さらに、内側取付孔33a〜33dを貫通する4本のパワーモジュール取付ねじ62によって、板状基部18のスイッチング素子実装領域A周囲がブロック状突出部38に締付固定されている。パワーモジュール取付ねじ61は、パワーモジュール支持部37のねじ孔37aにそれぞれ螺合し、パワーモジュール取付ねじ62は、ブロック状突出部38頂面のねじ孔38aにそれぞれ螺合する。外側取付孔32a〜32dとパワーモジュール取付ねじ61によって「第1固定要素」が構成され、内側取付孔33a〜33dとパワーモジュール取付ねじ62によって「第2固定要素」が構成される。
【0035】
また、図3,8に示すように、板状基部18のうち部品取付面18aとは反対側の制御モジュール対向面18cには、当該制御モジュール対向面18aの外周縁部から面直角方向に突出して制御モジュール17をいわゆるスナップフィット方式で係合保持するスナップフィット部47が複数形成されているとともに、パワーモジュール16と制御モジュール17とを電気的に接続するための接続端子52が複数突設されている。
【0036】
図9は、制御モジュール17を係合保持している状態のスナップフィット部47を拡大して示す斜視図である。なお、図9では各スナップフィット部47のうちの一つのみを図示しているが、他のスナップフィット部47も同様に構成されている。
【0037】
図9に示すように、スナップフィット部47は、板状基部18の一部として合成樹脂材料で一体に成形されているものであって、制御モジュール17におけるパワーモジュール16側のパワーモジュール対向面17aが着座する略円柱状の制御モジュール支持部48と、その制御モジュール支持部48の近傍に設けられた保持片49と、を備えている。保持片49は、板状基部18の制御モジュール対向面18cから突出する断面略偏平状の柱状基部50の先端に、その柱状基部50の肉厚方向で制御モジュール17側へ突出する爪部51を形成してなるものであって、制御モジュール17におけるパワーモジュール対向面17aとは反対側のカバー対向面17bに、爪部51が引っ掛かりの関係をもって係合するようになっている。より詳細には、爪部51の下面は制御モジュール17に対する係合面51aとして下向きに傾斜して形成されているのに対して、爪部51の上面は滑らかに湾曲しつつ上向きに傾斜した傾斜面であるガイド面51bとして形成されている。
【0038】
そして、組立状態においては、制御モジュール支持部48に制御モジュール17が着座しているとともに、その制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部51の係合面51aが係合している。これにより、制御モジュール17は、図9のほか図4に示すように、板状基部18に対して面直角方向で所定の間隔を隔てた位置、具体的にはケース12の開口端よりもカバー15内に入り込んだ位置で、各スナップフィット部47によって位置決め保持されている。すなわち、制御モジュール17は、カバー15の膨出部43内に収容されている。
【0039】
図3,9に示すように、制御モジュール17は、ガラスエポキシ樹脂に代表されるような非導電性樹脂材料からなる基板の表裏両面にそれぞれ導体パターン(図示せず)を形成し、その上に多数の電子部品(図示せず)を実装することで構成されたものであって、当該制御モジュール17の外周縁のうち各保持片49に対応する位置には、それらの各保持片49の柱状基部50の断面形状に合致する形状の切欠部17cがそれぞれ形成されている。すなわち、制御モジュール17は、各保持片49の柱状基部50を各切欠部17cにそれぞれ受容することにより、板状基部18に平行な状態で位置決めされるようになっている。
【0040】
また、図3,5に示すように、制御モジュール17のうちパワーモジュール16側の各接続端子52に対応する位置には、スルーホール53がそれぞれ貫通形成されている。各スルーホール53は、それぞれ対応する接続端子52を受容し、その接続端子52に対して半田によって電気的に接続されている。そして、制御モジュール17は、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態にかかる情報を外部接続コネクタ19および各接続端子52を介して入力し、その情報に基づいて生成した駆動指令信号を各接続端子52を介して各スイッチング素子24へ出力することで、各スイッチング素子24をスイッチング動作させて電動モータ2を駆動することになる。
【0041】
次に、以上のように構成したモータ制御装置3の組立手順について説明する。先ず、パワーモジュール16のステータ接続部20をケース12側の電力供給端子挿通孔39に、パワーモジュール16のセンサ接続部23をケース12側のコネクタ挿通孔40にそれぞれ挿通させつつ、各パワーモジュール支持部37上に板状基部18を載置し、図10に示すように、各パワーモジュール取付ねじ61,62によってパワーモジュール16をケース12に締結固定する。具体的には、外側取付孔32a〜32dをそれぞれ貫通するパワーモジュール取付ねじ61を各パワーモジュール支持部37に形成されたねじ孔37aに螺合させるとともに、内側取付孔33a〜33dをそれぞれ貫通するパワーモジュール取付ねじ62をブロック状突出部38に形成されたねじ孔38aに螺合させる。
【0042】
ここで、パワーモジュール16は、前述したように、金型内に金属製のバスバー63を複数位置決め支持した状態で、その金型内へ樹脂材料を充填することにより、各バスバー63をインサートしつつ型成形されたものである。なお、本実施例では、図8に示すように、バスバー63の多くが、板状基部18表面に露出した状態でインサートされており、これにより、板状基部18の厚さの低減ひいてはパワーモジュール16の小型化を図っている。バスバー63を板状基部18の内部に完全に埋設してもよい。
【0043】
このようにいわゆるインサート成形により形成されるパワーモジュール16においては、金属材料と樹脂材料とで熱膨張係数が相違するため、図11の(a)に模式的に示すように、金型内へ充填した樹脂材料の冷却時に、板状基部18に反りが発生する。つまり、板状基部18においては、制御モジュール対向面18cに沿って多くのバスバー63が配設されているので、金型内へ充填した樹脂材料の冷却時に、板状基部18の制御モジュール対向面18cよりも部品実装面18aの方が大きく収縮することになるため、一般に、板状基部18には、制御モジュール対向面18c側に向かって凸となる方向の反りが生じやすい。なお、図11の(a)では、上述した理由から、制御モジュール対向面18c側に向かって凸となる方向に反った板状基部18を示しているが、パワーモジュール16の成形条件によっては、逆に、制御モジュール対向面18c側に向かって凹となる方向に板状基部が反ることも有り得る。
【0044】
そして、以上のように反りが生じた板状基部18を各パワーモジュール支持部37に単に載置した状態では、当該板状基部18とブロック状突出部38との間に隙間Gが生じることになる。しかし、図11の(b)に示すように、板状基部18は、内側取付孔33a〜33dを貫通したパワーモジュール取付ねじ62により、スイッチング素子実装領域A周囲の4箇所においてブロック状突出部38へ向けて押圧固定される。これにより、板状基部18は所期の平坦形状に矯正され、図4に示すように、板状基部18に実装された各スイッチング素子24がブロック状突出部38の頂面に当接(直接あるいは前述した熱伝達部材を介して)し、各スイッチング素子24の発生した熱が受熱部ないしヒートシンクとなるブロック状突出部38へ効率的に伝達されるようになる。
【0045】
特に、上記構成では、「第2固定要素」となるパワーモジュール取付ねじ62がブロック状突出部38のねじ孔38aに直接に螺合し、スイッチング素子実装領域Aがブロック状突出部38に直接に固定されるので、スイッチング素子24と受熱部であるブロック状突出部38頂面との接触性がより確実に得られる。また、比較的大きなブロック状突出部38の頂面によって、板状基部18の反りが確実に矯正される。
【0046】
図12(a),(b)は、図11(a),(b)と同様に、ケース12へ取り付ける前の板状基部18が反っている状態およびケース12への取付後の平坦となった状態を示している。この図12は、図11の模式図に比較して、種々の電子部品を備えたパワーモジュール16をより詳細に描いている。
【0047】
なお、板状基部18は、外周部の外側取付孔32a〜32dにおいてパワーモジュール取付ねじ61によりケース12に固定されるから、仮に、板状基部18が制御モジュール対向面18c側に向かって凹となる方向に反っていたとしても、板状基部18を所期の平坦形状に矯正することが可能である。
【0048】
次いで、図5に示すように、パワーモジュール16に対して制御モジュール17を組み付ける。具体的には、制御モジュール17の各スルーホール53にパワーモジュール16側の各接続端子52を挿通させつつ、制御モジュール17のうち各切欠部17cの周縁を図9に示す各保持片49のうち爪部51のガイド面51bにそれぞれ当接させた状態で、その制御モジュール17をパワーモジュール16側に向かって押圧する。これにより、各保持片49は、ガイド面51bと制御モジュール16との傾斜面接触をもって弾性的に撓み変形し、爪部51と制御モジュール支持部43との間の位置に制御モジュール17を受容した上で、上記撓み変形に基づく復元力によって制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部51の係合面51aを係合させることになる。その結果、制御モジュール17が各スナップフィット部47によって位置決め支持される。
【0049】
このようにして制御モジュール17をパワーモジュール16に組み付けたならば、パワーモジュール16側の各接続端子52と制御モジュール17側の各スルーホール53とを半田によって電気的に接続した上で、ケース12の開口をカバー15によって閉蓋することにより、モータ制御装置3の組み立てが完了する。
【0050】
したがって、本実施例によれば、制御モジュール17をパワーモジュール16側へ押圧するという極めて容易な操作をもって制御モジュール17をパワーモジュール16に組み付けることができるから、モータ制御装置3の組立作業性が飛躍的に向上する。
【0051】
ところで、上述したようにパワーモジュール16の成形時に板状基部18に反りが生じると、図13(a)に示すように、当該板状基部18の制御モジュール対向面18cに突設された各スナップフィット部47および各接続端子52(図8参照)が相手側となる制御モジュール17に対して傾斜し、各スナップフィット部47および各接続端子52の相対位置関係が正規の相対位置関係からずれてしまう。したがって、仮に、板状基部18に生じた反りを矯正することなく制御モジュール17を組み付けようとした場合、各スナップフィット部47および各接続端子52が相手側となる各切欠部17cおよび各スルーホール53に対して位置ずれすることになり、それらの各スナップフィット部47および各接続端子52の傾きを適宜調整しながら制御モジュール17を組み付けなければならならず、その組付作業が非常に煩雑となる虞がある。
【0052】
これに対し、本実施例では、外側取付孔32a〜32dを貫通するパワーモジュール取付ねじ61によって板状基部18の外周部をケース12に固定するとともに、内側取付孔33a〜33dを貫通するパワーモジュール取付ねじ62によって板状基部18の中央部をブロック状突出部38に向けて押圧固定することにより、図13(b)に示すように、板状基部18が所期の平坦形状に矯正されることから、各スナップフィット部47および各接続端子52の上述したような位置ずれを矯正することができ、パワーモジュール16に対して制御モジュール17をさらに容易に組み付けられるようになる。その結果、モータ制御装置3の組立作業性がより一層向上する。
【0053】
さらに、車両の走行中には常にモータ制御装置3の筐体7に振動が加わることになるが、仮に、重ねて配置された2つの回路基板をそれぞれ筐体に対してねじ止めした場合には、筐体に入力された振動がそれぞれ異なる経路を介して両基板に伝達されることになり、両基板の振動に位相のずれが生じてしまう。そして、このように両基板の振動に位相のずれが生じると、両基板同士が相対的に変位することになるから、両基板同士を電気的に接続するリードフレームに応力が発生し、当該リードフレームの耐久性または信頼性が低下してしまう虞がある。
【0054】
これに対し、本実施例の構成では、制御モジュール17をパワーモジュール16に対して保持固定していることから、筐体7に入力された振動はパワーモジュール16を介して制御モジュール17に伝達されることになる。これにより、制御モジュール17の振動とパワーモジュール16の振動との間に生じる位相差、ひいては各接続端子52に発生する応力が少なくとも軽減され、各接続端子52の耐久性または信頼性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施例では、第1固定要素および第2固定要素として、板状基部18の取付孔に挿通される取付ねじ61,62を用いているので、その固定支持が強固であり、外部からの振動入力に対してパワーモジュール16等が共振したりすることがない。
【0056】
さらに、スナップフィット部47をもって制御モジュール17をパワーモジュール16に固定するようにしたことで、パワーモジュール16や制御モジュール17において熱収縮や熱膨張が発生し、かつ当該熱収縮や熱膨張においてその収縮量ないし膨張量に差が生じたとしても、スナップフィット部47が変形、具体的には保持片49が弾性変形することによって、上記各量の差を吸収することが可能となる。この結果、上記パワーモジュール16や制御モジュール17に応力が作用してしまう不具合を抑制することができる。なお、特に、かかる応力は、パワーモジュール16や制御モジュール17の半田付け部分に作用しやすいことから、上記の作用により、当該半田付け部分の耐久性の低下やクラック等の発生による劣化を抑制できる。
【0057】
また、制御モジュール17は、当該制御モジュール17の外周縁に各保持片49が係合することによって位置決め保持されるようになっているため、制御モジュール17に固定用の取付孔を貫通形成する必要がなく、当該制御モジュール17を小型化できるようになるほか、当該制御モジュール17の設計自由度が向上するメリットもある。
【0058】
なお、図11(a),図12(a)および図13(a)は、いずれも、板状基部18に生じる反りを若干誇張して描いている。
【0059】
上記のように、上記実施例の構成では、スイッチング素子24周囲の内側取付孔33a〜33dをパワーモジュール取付ねじ62によってブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定することでスイッチング素子24とブロック状突出部38の頂面との接触性が向上し、スイッチング素子24に対する冷却性が向上する。特に、上記実施例では、ステータ接続部20とスイッチング素子24との間に第1,第2内側取付孔33a,33bが配置されており、これらの箇所でブロック状突出部38に対し固定されるので、板状基部18から突出したステータ接続部20の剛性が高くなる。従って、電動モータ2のステータとの接続時に発生する応力によってステータ接続部20が破損したり変形したりするという不具合を抑制できる。
【0060】
さらに、ステータ接続部20は、ヒートシンクとなるブロック状突出部38に隣接して配置されているので、電気的な接続部で発生する熱や電動モータ2から伝わる熱をブロック状突出部38に伝達して放熱させることができる。従って、筐体7の内部の温度やパワーモジュール16ないし制御モジュール17の温度の上昇を抑制することができる。しかもブロック状突出部38が支持部材となってステータ接続部20を支えることができるので、電動モータ2などアクチュエータユニット1の外部からの振動によってステータ接続部20が振動することを抑制できる。
【0061】
また、上記実施例では、外部接続コネクタ19の軸方向(図14のX方向)に、「第2固定要素」となる2つの内側取付孔33a,33bが並んでおり、かつ他の2つの内側取付孔33c,33dも同方向に並んでいる。従って、この外部接続コネクタ19の軸方向に沿った断面における板状基部18の反りを確実に矯正することができる。
【0062】
さらに、上記実施例では、第1,第3内側取付孔33a,33cが外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向(図14のY方向)に並んで配置されており、同様に、第2,第4内側取付孔33b,33dが外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に並んで配置されているので、この外部接続コネクタ19の軸方向と直交する方向に沿った断面における板状基部18の反りを確実に矯正することができる。
【0063】
特に、上記実施例では、「2×3」に配列されたスイッチング素子24の両側に内側取付孔33a〜33dが配置されているため、スイッチング素子実装領域Aにおける板状基部18の反りが確実に矯正され、ブロック状突出部38の頂面と各スイッチング素子24との接触性のばらつきが少なくなる。
【0064】
さらに、上記実施例では、スイッチング素子24およびステータ接続部20が、ノイズフィルタ部品の一つであるノーマルモードコイル30や第1電解コンデンサ25と外部接続コネクタ19との間に配置されているため、ステータ接続部20がケース12のほぼ中央に位置することとなり、電動モータ2との接続距離を短くすることができ、かつ組付性が向上する。またスイッチング素子24とステータ接続部20とが接近していることから、ノイズ低減を図ることができる。そして、ケース12のほぼ中央で電動モータ2と接続されることから、電動モータ2にケース12を結合した状態での装置全体の小型化が図れる。しかも、このケース12のほぼ中央が「第2固定要素」であるパワーモジュール取付ねじ62によって固定されるため、反りが大きな領域がケース12に対し固定されることとなり、板状基部18の全体的な反りを抑制することができる。
【0065】
次に、「第2固定要素」となる内側取付孔33の配置を変更した変形例を図15〜図20に基づいて説明する。
【0066】
図15は、前述した第1実施例における第2内側取付孔33bを省略した第2実施例を示しており、第1内側取付孔33a、第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dの3箇所でスイッチング素子24の周囲をブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定する構成となっている。なお、さらに第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dを省略するようにしてもよい。
【0067】
図16は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aを省略した第3実施例を示しており、第2内側取付孔33b、第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dの3箇所でスイッチング素子24の周囲をブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定する構成となっている。なお、さらに第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dを省略するようにしてもよい。
【0068】
図17は、前述した第1実施例における第3内側取付孔33cおよび第4内側取付孔33dを省略した第4実施例を示しており、板状基部18のほぼ中央に位置する第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bの2箇所で板状基部18をブロック状突出部38の頂面へ向けて押圧固定している。
【0069】
図18は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bに代えて、1つの内側取付孔33eを設けた第5実施例を示している。上記内側取付孔33eは、「2×3」に配列された6個のスイッチング素子24の中央に位置している。
【0070】
図19は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bに代えて、「2×3」に配列された6個のスイッチング素子24の中央部に2つの内側取付孔33f,33gを設けた第6実施例を示している。これらの内側取付孔33f,33gは、第2の組のスイッチング素子24bと第3の組のスイッチング素子24cとの間、および第1の組のスイッチング素子24aと第2の組のスイッチング素子24bとの間、にそれぞれ配置されている。
【0071】
図20は、前述した第1実施例における第1内側取付孔33aおよび第2内側取付孔33bに代えて、「2×3」に配列された6個のスイッチング素子24の中央部に3つの内側取付孔33h,33i,33jを設けた第7実施例を示している。これらの内側取付孔33h,33i,33jは、それぞれ、1組を構成する2つのスイッチング素子24の間に配置されている。
【0072】
ここで、上記実施例から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に列挙する。
【0073】
(イ)上記電気接続要素は、上記ブロック状突出部の側壁に沿った位置に配置されている、請求項3に記載の電子制御装置。
【0074】
(ロ)上記電気接続要素は、上記ケースが取り付けられる電動アクチェータに駆動電流を供給する駆動用端子である、請求項3に記載の電子制御装置。
【0075】
(ハ)複数の第2固定要素を備え、上記発熱部品が搭載された位置の両側に上記第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0076】
(ニ)上記回路基板は、電源供給用コネクタを備え、
この電源供給用コネクタの軸方向に、複数の第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0077】
(ホ)上記発熱部品は、2つの発熱部品を1組として3組の発熱部品が互いに隣接して配置されており、
これら3組の発熱部品が並んだ方向に、少なくとも2つの第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0078】
(ヘ)上記回路基板は、電源供給用コネクタを備え、
この電源供給用コネクタの軸方向と直交する方向に、複数の第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0079】
(ト)上記発熱部品は、2つの発熱部品を1組として3組の発熱部品が互いに隣接して配置されており、
1組の発熱部品に含まれる2つの発熱部品が並んだ方向に、少なくとも2つの第2固定要素が配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0080】
(チ)上記回路基板は、電源供給用コネクタと、ノイズフィルタ部品と、上記ケースの底面から突出して電動アクチェータに駆動電流を供給する駆動用端子と、を備え、
上記発熱部品および上記駆動用端子が、電源供給用コネクタと少なくとも1つのノイズフィルタ部品との間に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0081】
(リ)上記回路基板は、電源供給用コネクタと、ノイズフィルタ部品と、を備え、
上記第2固要素の少なくとも1つは、上記電源供給用コネクタと少なくとも1つのノイズフィルタ部品との間に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【0082】
(ヌ)上記第1固定要素は、上記回路基板に貫通形成された取付孔と、該取付孔に挿入されて上記回路基板を上記ケースに締結するねじと、からなる、請求項1に記載の電子制御装置。
【0083】
(ル)上記第2固定要素は、上記回路基板に貫通形成された取付孔と、該取付孔に挿入されて上記回路基板を上記ケースに締結するねじと、からなる、請求項1に記載の電子制御装置。
【0084】
(ヲ)上記回路基板の上に重ねて配置される第2の回路基板と、
上記回路基板に複数形成され弾性変形可能な保持片と、
上記保持片にそれぞれ形成された爪部と、
上記回路基板と対向する上記第2の回路基板の第1の面に当接して上記第2の回路基板を支持する支持部と、を備え、
上記第2の回路基板は、上記爪部が該第2の回路基板の第2の面に係合することで保持されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【符号の説明】
【0085】
3…モータ制御装置
12…ケース
16…パワーモジュール
17…制御モジュール
24…スイッチング素子
32a〜32d…外側取付孔
33a〜33d…内側取付孔
38…ブロック状突出部
49…保持片
51…爪部
51a…係合面
51b…ガイド面
61,62…パワーモジュール取付ねじ
A…スイッチング素子実装領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品が搭載された回路基板と、
上記回路基板を収容し、かつ上記発熱部品と接する受熱部を有するケースと、
上記回路基板の外周に沿って該回路基板を上記ケースに固定する少なくとも2つの第1固定要素と、
上記固定要素による固定点よりも上記発熱部品に近い位置で上記回路基板を上記ケースに向けて押圧固定する少なくとも1つの第2固定要素と、
を備える電子制御装置。
【請求項2】
上記受熱部は、上記発熱部品と対向するように上記ケースの底面から突出したブロック状突出部からなり、
上記第2固定要素の少なくとも1つは、上記ブロック状突出部上に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
上記回路基板は、上記ケースの底面に向かって突出した電気接続要素を備え、
上記第2固定要素の少なくとも1つは、上記電気接続要素と上記発熱部品との間に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項1】
発熱部品が搭載された回路基板と、
上記回路基板を収容し、かつ上記発熱部品と接する受熱部を有するケースと、
上記回路基板の外周に沿って該回路基板を上記ケースに固定する少なくとも2つの第1固定要素と、
上記固定要素による固定点よりも上記発熱部品に近い位置で上記回路基板を上記ケースに向けて押圧固定する少なくとも1つの第2固定要素と、
を備える電子制御装置。
【請求項2】
上記受熱部は、上記発熱部品と対向するように上記ケースの底面から突出したブロック状突出部からなり、
上記第2固定要素の少なくとも1つは、上記ブロック状突出部上に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
上記回路基板は、上記ケースの底面に向かって突出した電気接続要素を備え、
上記第2固定要素の少なくとも1つは、上記電気接続要素と上記発熱部品との間に配置されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−70028(P2013−70028A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156599(P2012−156599)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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