説明

電子口腔清掃器

【課題】より簡単な構造で、各々の歯による状態の違いや個人差による歯の状態の違いに左右されず、歯牙へのフッ素イオン導入効果が極めて高い電子口腔清掃器を提供する。
【解決手段】柄の先端に植設された導電性ブラシを第1電極3とし、該柄の近傍に設置された導電性部材を第2電極4とし、第1電極3および第2電極4間に電圧を印加する電子口腔清掃器であって、測定部により第1電極3および第2電極4間の電流を測定し、制御部12において、測定部11による測定電流値が所定電流値となるよう第1電極3および第2電極4間に印加する電圧を制御するものとし、目標とする電流を制御命令とし、測定部12による測定電流値をフィードバック量としたフィードバック制御系を構成することにより、印加電圧の制御量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子口腔清掃器に係り、特に、歯牙へのフッ素イオン導入を効率的に行い得る電子口腔清掃器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙のう蝕予防のためにフッ素イオンを歯牙に導入することを家庭内で行うものとして、例えば電子歯ブラシと称されているものが多用されている。この電子歯ブラシは歯ブラシのブラシ部をマイナス極(またはプラス極)に、また歯ブラシの柄に設置された電極をプラス極(またはマイナス極)に帯電させることで、例えば歯磨き剤に添加されたフッ化物によるフッ素イオンの歯牙への導入を促すようにしたものである。
【0003】
しかしながら、このような電子口腔清掃器(電子歯ブラシ)では、帯電の度合いが一定であり、各々の歯による状態の違いや個人差による歯の状態の違いに対応できないという事情があり、改良が求められていた。
【0004】
そこで、例えば特開平10−80324号公報に開示の電子歯ブラシでは、口腔内に所定電位を印加する作用電極と、該作用電極に対する対電極と、口腔内の電位を設定する際に基準となる参照電極と、これら各電極を接続した電位印加装置とを備えて、参照電極の電位を基準として、作用電極の電位、即ち口腔内の電位を常に設定電位に保持し、使用者の体調や個人差等の要因による口腔内の電位とは関係無しに、プラークに含まれる細菌の電気化学的な殺菌に必要な一定電位の印加を可能とした技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−80324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術により、例え口腔内の電位が常に設定電位に保持されたとしても、体内の抵抗が想定する抵抗値から変化した場合には、体内に流れる電流が大きくなったり小さくなったりすることが考えられ、各々の歯による状態の違いや個人差による歯の状態の違いへの対応が十分なされない可能性がある。
【0006】
また、口腔内の電位を設定する際に基準となる参照電極(第3の電極)を必要とする構造であるため、配線を含めて構造が複雑となり、また、参照電極を設置するブラシ部近傍の構造に制約を与えてしまうという事情があった。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、より簡単な構造で、各々の歯による状態の違いや個人差による歯の状態の違いに左右されず、歯牙へのフッ素イオン導入効果が極めて高い電子口腔清掃器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子口腔清掃器は、柄の近傍に設置された導電性部材を第1電極とし、使用者保持部分の近傍に設置された導電性部材を第2電極とし、第1電極および第2電極間に電圧を印加する電子口腔清掃器であって、第1電極および第2電極間の電流を測定する測定部と、該測定部による測定電流値が所定電流値となるよう第1電極および第2電極間に印加する電圧を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電子口腔清掃器は、制御部に、測定部による測定電流値に基づき第1電極および第2電極間のインピーダンスを計算する計算部を備えることを第2の特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電子口腔清掃器は、計算部に、合成インピーダンスが第1電極および第2電極間のインピーダンスと等価であり、第1抵抗器とコンデンサの並列接続回路に第2抵抗器を直列接続した回路モデルを想定し、該回路モデルの各電気要素値を推定する推定部を備えることを第3の特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電子口腔清掃器は、制御部において、推定部における第1抵抗器、第2抵抗器およびコンデンサの電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとするとき、第1電極および第2電極間に印加する電圧の主成分を(R+r)×idとすることを第4の特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る電子口腔清掃器は、制御部において、推定部における第1抵抗器、第2抵抗器およびコンデンサの電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとし、第1電極および第2電極間に電圧を印加する第1期間、並びに電圧印加を休止する第2期間を交互に行うものとし、該第1期間および第2期間の繰り返し回数を(n−1)とし、第1期間、第2期間および電圧の印加開始からの時間を、それぞれT1、T2およびtとするとき、第1電極および第2電極間に印加する電圧の主成分を
【数2】

【0013】
とすることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る第1の特徴の電子口腔清掃器では、制御部において、測定部による測定電流値が所定電流値となるよう第1電極および第2電極間に印加する電圧を制御するので、例えば、目標とする電流を制御命令とし、測定部による測定電流値をフィードバック量としたフィードバック制御系を構成することにより、印加電圧の制御量が決定されることとなり、結果として、第1電極および第2電極間の電流を目標とする電流に近づけることができ、第3の電極を必要としないより簡単な構造で、各々の歯による状態の違いや個人差等に対応して、効率よく歯牙へのフッ素イオン導入を行うことができる。また特に、フッ素イオン導入においてはイオン導入の機序である電荷の移動、即ち電流のコントロールが重要であると考えられ、口腔内の電位が常に設定電位に保持しようとする従来例に比べて、本発明では体内の状態変化に捕らわれずに電流を目標とする値に近づけることが可能になるので、各々の歯による状態の違いや個人差による歯の状態の違いに対して十分な対応を採ることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る第2の特徴の電子口腔清掃器では、制御部に、測定部による測定電流値に基づき第1電極および第2電極間のインピーダンスを計算する計算部を備えて、例えば、目標とする電流を制御命令とし、計算部により計算したインピーダンスを外乱とするフィードフォワード制御系を構成して、印加電圧の制御量を決定することにより、フィードバック制御単体では起こる可能性のある突発的な検出電流ノイズに起因する第1電極および第2電極間の電流についての発振現象を心配することが無く、目標とする電流に近づけることができ、各々の歯による状態の違いや個人差等に対応して、当該電子口腔清掃器の使用環境に実質的に適応して、効率的に歯牙へのフッ素イオン導入を行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る第3の特徴の電子口腔清掃器では、計算部に推定部を備えて、第1抵抗器とコンデンサの並列接続回路と、該並列接続回路に直列接続される第2抵抗器とにより歯と人体をモデル化した回路モデルを想定し、該回路モデルの合成インピーダンスが第1電極および第2電極間のインピーダンスと等価となるように各電気要素値を推定するので、例えば、歯に相当している第1抵抗器とコンデンサの並列接続回路のインピーダンスを分離して計算し、該インピーダンスを外乱とするフィードフォワード制御系を構成して、印加電圧の制御量を決定すれば、歯の部分に限定した制御量を求めることができ、より効果的に、各々の歯による状態の違いや個人差等に対応して、当該電子口腔清掃器の使用環境に実質的に適応した効率的な歯牙へのフッ素イオン導入を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る第4の特徴の電子口腔清掃器では、制御部において、推定部における第1抵抗器、第2抵抗器およびコンデンサの電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとするとき、第1電極および第2電極間に印加する電圧の主成分を(R+r)×idとするので、フッ素イオンの導入を行いたい歯の主成分に相当する並列接続回路の第1抵抗器に対して一定電流を供給する印加電圧となり、フッ素イオン導入を行いたい歯の主成分に特化して、より一層効率的に歯牙へのフッ素イオン導入を行うことが可能となる。
【0018】
さらに、本発明に係る第5の特徴の電子口腔清掃器では、制御部において、推定部における第1抵抗器、第2抵抗器およびコンデンサの電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとし、第1電極および第2電極間に電圧を印加する第1期間、並びに電圧印加を休止する第2期間を交互に行うものとし、該第1期間および第2期間の繰り返し回数を(n−1)とし、第1期間、第2期間および電圧の印加開始からの時間を、それぞれT1、T2およびtとするとき、第1電極および第2電極間に印加する電圧の主成分を
【数3】

【0019】
とするので、一定電圧等の印加時に過渡的に発生する容量成分による高電流を発生させること無く、第1電極および第2電極間に対して一定電流を供給することが可能な印加電圧となり、人体に対する電流の知覚や障害の安全率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の電子口腔清掃器の実施例について、〔実施例1〕、〔実施例2〕、〔実施例3〕、〔実施例4〕の順に図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
〔実施例1〕
図1は本発明の実施例に係る電子口腔清掃器の構成図である。
【0022】
同図において、本実施例の電子口腔清掃器は、使用者把持部の本体1と、尖端部にブラシを備えた柄2を有して構成されている。なお、使用者把持部の本体1と柄2とは一体型としても、或いは柄2が取り外し可能な交換型としても何れであっても良い。
【0023】
柄2のブラシ毛は第1電極3として使用されている。ブラシ毛を導電性部材とするには、例えば、カーボン繊維をブラシ毛とする方法や、樹脂等のブラシ毛に良導体材料をメッキ、スパッタ、蒸着等の手段によってコーティングする方法や、通常使用される樹脂等の原材料に良導体を殖設する方法など、種々のものがある。
【0024】
なお、本発明は効率的に歯牙へのフッ素イオン導入を行うことを目的としている点からも、第1電極3として歯牙に直接当たるブラシ毛を用いる構造とするのがより望ましいが、柄2の尖端部近傍に導電性部材を設置して、これを第1電極3とする構造としても良い。
【0025】
使用者把持部の本体1は絶縁材料で形成されているが、使用者が当該電子口腔清掃器を把持する部位に導電性部材の第2電極4が設置されている。本実施例の電子口腔清掃器は、第1電極3および第2電極4間に電圧を印加して、ブラシ部の第1電極3をマイナス極(またはプラス極)に、また使用者把持部に設置された第2電極4をプラス極(またはマイナス極)に帯電させることで、歯磨き剤に添加されたフッ化物によるフッ素イオンの歯牙への導入を促すようにしたものである。
【0026】
また、使用者把持部の内部には、第1電極3および第2電極4と電気的に接続されて該第1電極3および第2電極4間の電流を測定する測定部11と、第1電極3および第2電極4と電気的に接続されて、測定部11による測定電流値が所定電流値となるよう第1電極3および第2電極4間に印加する電圧を制御する制御部12と、制御部12に直流電圧を供給する電源部10と、を備えている。
【0027】
制御部12では、目標とする電流を制御命令とし、測定部11による測定電流値をフィードバック量としたフィードバック制御系が構成されており、電流のフィードバック制御により印加電圧の制御量が決定される。
【0028】
なお、制御部12は、例えば、MPUやDSP等のプログラム制御可能な手段と、制御プログラムにより決定された印加電圧の制御量に応じて電源部10から供給される電圧を分圧出力する出力回路と、を備えた構成で具現される。
【0029】
図2に、本実施例の電子口腔清掃器において目標とする電流と、制御部12のフィードバック制御により測定部11で測定される電流の時間的推移を概念的に示す。ここで、通常使用されている一定電圧印加時の電流の時間的推移も併せて示している。なお、目標とする電流を、通電時間が約1ms、休止時間が約0.07msの矩形波パルス電流としているのは、歯牙における脱分極制御を行って、歯牙におけるフッ素イオン導入を阻害する分極の問題を除去するためであり、これにより、極めて高いフッ素イオン導入効果を得ることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施例の電子口腔清掃器では、制御部12において、測定部11による測定電流値が所定電流値となるよう第1電極3および第2電極4間に印加する電圧を制御するものとし、目標とする電流を制御命令とし、測定部12による測定電流値をフィードバック量としたフィードバック制御系を構成することにより、印加電圧の制御量を決定する。
【0031】
これにより、第1電極3および第2電極4間の電流を目標とする電流に近づけることができ、従来のように第3の電極を必要としないより簡単な構造で、各々の歯による状態の違いや個人差等に対応して、効率よく歯牙へのフッ素イオン導入を行うことができる。
【0032】
また特に、フッ素イオン導入においてはイオン導入の機序である電荷の移動、即ち電流のコントロールが重要であると考えられ、口腔内の電位が常に設定電位に保持しようとする従来例に比べて、本実施例では(体内の抵抗が想定する抵抗値から変化するなどの)体内の状態変化に捕らわれずに電流を目標とする値に近づけることが可能になるので、各々の歯による状態の違いや個人差による歯の状態の違いに対して十分な対応を採ることが可能となる。
【0033】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2に係る電子口腔清掃器について説明する。本実施例の全体的な構成は実施例1と同等であり、制御部12を制御部12bに置き換えた構成となる。
【0034】
図3は本実施例の電子口腔清掃器の制御部12bを中心とした部分構成図である。同図に示すように、本実施例の電子口腔清掃器は、制御部12bに、測定部11による測定電流値に基づき第1電極3および第2電極4間のインピーダンスを計算する計算部13bを備えた構成とすることが特徴である。
【0035】
制御部12bでは、目標とする電流を制御命令とし、測定部11による測定電流値をフィードバック量としたフィードバック制御系と、計算部13bにより計算したインピーダンスを外乱とするフィードフォワード制御系とが構成されており、電流のフィードバック制御およびフィードフォワード制御により印加電圧の制御量が決定される。
【0036】
図4に、本実施例の電子口腔清掃器において目標とする電流と、制御部12bのフィードバック制御およびフィードフォワード制御により測定部11で測定される電流の時間的推移を概念的に示す。なお、通常使用されている一定電圧印加時の電流の時間的推移も併せて示している。
【0037】
図4の測定電流について、実施例1(図2)と比較すると明らかなように、電流の立ち上がり時のオーバーシュートおよび電流の立ち下がり時のアンダーシュートがより抑制された電流変化となっている。
【0038】
以上説明したように、本実施例の電子口腔清掃器では、制御部12bに、測定部11による測定電流値に基づき第1電極3および第2電極4間のインピーダンスを計算する計算部13bを備えて、目標とする電流を制御命令とし、計算部13bにより計算したインピーダンスを外乱とするフィードフォワード制御系を構成して、印加電圧の制御量を決定する。
【0039】
これにより、フィードバック制御単体では起こる可能性のある突発的な検出電流ノイズに起因する第1電極および第2電極間の電流についての発振現象を心配することが無く、目標とする電流に近づけることができ、各々の歯による状態の違いや個人差等に対応して、当該電子口腔清掃器の使用環境に実質的に適応して、効率的に歯牙へのフッ素イオン導入を行うことが可能となる。
【0040】
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3に係る電子口腔清掃器について説明する。本実施例の全体的な構成は実施例1と同等であり、制御部12を制御部12cに置き換えた構成となる。
【0041】
図5は本実施例の電子口腔清掃器の制御部12cを中心とした部分構成図であり、図6は本実施例の推定部14cで想定する歯および人体の回路モデルを示す等価回路図である。
【0042】
図5に示すように、本実施例の電子口腔清掃器は、制御部12cに、測定部11による測定電流値に基づき第1電極3および第2電極4間のインピーダンスを計算する計算部13cを備え、さらに、計算部13cに、合成インピーダンスが第1電極3および第2電極4間のインピーダンスと等価であり、第1抵抗器21とコンデンサ22の並列接続回路に第2抵抗器23を直列接続した回路モデルを想定し、該回路モデルの各電気要素値を推定する推定部14cを備えた構成とすることが特徴である。
【0043】
なお、回路モデルでは、図6に示すように、第1抵抗器21とコンデンサ22の並列接続回路が歯の部分に対応し、並列接続回路と直列接続される第2抵抗器23が人体の部分に対応する。
【0044】
制御部12cでは、実施例2と同様に、目標とする電流を制御命令とし、測定部11による測定電流値をフィードバック量としたフィードバック制御系と、計算部13cにより計算したインピーダンスを外乱とするフィードフォワード制御系とが構成されており、電流のフィードバック制御およびフィードフォワード制御により印加電圧の制御量が決定される。
【0045】
より具体的には、計算部13cは、測定部11による測定電流値に基づき第1電極3および第2電極4間のインピーダンスを計算して推定部14に渡し、推定部14cは、該計算されたインピーダンスと回路モデルの合成インピーダンスとが等価となるように回路モデルの各電気要素値(第1抵抗器21(のr)、第2抵抗器23(のR)およびコンデンサ22(のC))を推定して制御部12cに渡す。
【0046】
制御部12cでは、推定部14vにより推定された第1抵抗器および第2抵抗器の電気要素値(rおよびR)に基づいて、目標とする所定電流値をidとするときの「(R+r)×id」を、第1電極3および第2電極4間に印加する電圧として決定する。
【0047】
図7に、本実施例の電子口腔清掃器において目標とする電流と、第1電極3および第2電極4間に印加する電圧を(R+r)×idとしたときの電流についてのシミュレーション結果を示す。なお、通常使用されているパルス電圧印加時の電流の時間的推移も併せて示している。
【0048】
図7の本実施例の電流について、実施例1および実施例2(図2および図4)と比較すると明らかなように、目標とする電流に対して、電流の立ち上がり時にわずかに下回っているだけでほぼ一致した電流変化となっている。
【0049】
以上説明したように、本実施例の電子口腔清掃器では、計算部13cに推定部14cを備えて、第1抵抗器21とコンデンサ22の並列接続回路と、該並列接続回路に直列接続される第2抵抗器23とにより歯と人体をモデル化した回路モデルを想定し、該回路モデルの合成インピーダンスが第1電極3および第2電極4間のインピーダンスと等価となるように各電気要素値を推定する。
【0050】
これにより、歯に相当している第1抵抗器21とコンデンサ22の並列接続回路のインピーダンスを分離して計算することができ、該インピーダンスを外乱とするフィードフォワード制御系を構成し、印加電圧の制御量を決定することとすれば、歯の部分に限定した制御量を求めることができ、結果として、より効果的に、各々の歯による状態の違いや個人差等に対応して、当該電子口腔清掃器の使用環境に実質的に適応した効率的な歯牙へのフッ素イオン導入を行うことが可能となる。
【0051】
また、一般的に歯のう蝕の進行度と相関があるといわれる歯の抵抗値に相当する第1抵抗器21とコンデンサ22の並列接続回路において、抵抗値(r)を分離して推定できるので、歯の健康度合い等を使用者に対して定量的に掲示することも可能である。
【0052】
さらに、本実施例の電子口腔清掃器では、制御部12cにおいて、推定部14cにおける第1抵抗器21、第2抵抗器22およびコンデンサ23の電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目的とする所定電流値をidとするとき、第1電極3および第2電極4間に印加する電圧の主成分を(R+r)×idとする。
【0053】
これにより、フッ素イオンの導入を行いたい歯の主成分に相当する並列接続回路の第1抵抗器21に対して一定電流を供給する印加電圧となり、フッ素イオン導入を行いたい歯の主成分に特化して、より一層効率的に歯牙へのフッ素イオン導入を行うことが可能となる。
【0054】
〔実施例4〕
次に、本発明の実施例4に係る電子口腔清掃器について説明する。本実施例の全体的な構成は実施例1と同等であって、制御部12を制御部12cに置き換えた実施例3と同一の構成(部分構成図;図5参照)である。
【0055】
実施例3と異なるのは、制御部12cにおいて、推定部14cにおける第1抵抗器21、第2抵抗器23およびコンデンサ22の電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとし、第1電極3および第2電極4間に電圧を印加する第1期間、並びに電圧印加を休止する第2期間を交互に行うものとし、該第1期間および第2期間の繰り返し回数を(n−1)とし、第1期間、第2期間および電圧の印加開始からの時間を、それぞれT1、T2およびtとするとき、第1電極および第2電極間に印加する電圧の主成分を
【数4】

【0056】
とする点である。
【0057】
図8(a)には、本実施例の電子口腔清掃器において第1電極3および第2電極4間に印加する電圧のシミュレーション結果を、通常使用されているパルス電圧と対比して示し、図8(b)には、本実施例において目標とする電流と、第1電極3および第2電極4間に印加する電圧を上式としたときの電流についてのシミュレーション結果を示す。なお、図8(b)には通常使用されているパルス電圧印加時の電流の時間的推移も併せて示している。
【0058】
図8(b)の本実施例の電流について、実施例1、実施例2および実施例3(図2、図4および図7)と比較すると、縦軸のスケールが異なるので多少わかりにくいが、目標とする電流に対しほぼ一致した電流変化となっている。
【0059】
このように、本実施例の電子口腔清掃器では、一定電圧等の印加時に過渡的に発生する容量成分による高電流を発生させること無く、第1電極3および第2電極4間に対して一定電流を供給することが可能な印加電圧となり、人体に対する電流の知覚や障害の安全率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例に係る電子口腔清掃器の構成図である。
【図2】実施例1において目標とする電流と、測定電流の時間的推移を概念的に示す説明図である。
【図3】実施例2の電子口腔清掃器の制御部12bを中心とした部分構成図である。
【図4】実施例2において目標とする電流と、測定電流の時間的推移を概念的に示す説明図である。
【図5】実施例3の電子口腔清掃器の制御部12cを中心とした部分構成図である。
【図6】実施例3の推定部14cで想定する歯および人体の回路モデルを示す等価回路図である。
【図7】実施例3において目標とする電流と、測定され得る電流についてのシミュレーション結果を示す説明図である。
【図8】図8(a)は実施例4において第1電極3および第2電極4間に印加する電圧のシミュレーション結果を、図8(b)は目標とする電流と、測定され得る電流についてのシミュレーション結果をそれぞれ示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 使用者把持部の本体
2 柄
3 第1電極
4 第2電極
10 電源部
11 測定部
12,12b,12c 制御部
13b,13c 計算部
14c 推定部
21 第1抵抗器
22 コンデンサ
23 第2抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄の近傍に設置された導電性部材を第1電極とし、使用者保持部分の近傍に設置された導電性部材を第2電極とし、前記第1電極および前記第2電極間に電圧を印加する電子口腔清掃器であって、
前記第1電極および前記第2電極間の電流を測定する測定部と、
前記測定部による測定電流値が所定電流値となるよう前記第1電極および前記第2電極間に印加する電圧を制御する制御部と、
を有することを特徴とする電子口腔清掃器。
【請求項2】
前記制御部は、前記測定部による測定電流値に基づき前記第1電極および前記第2電極間のインピーダンスを計算する計算部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子口腔清掃器。
【請求項3】
前記計算部は、合成インピーダンスが前記第1電極および前記第2電極間のインピーダンスと等価であり、第1抵抗器とコンデンサの並列接続回路に第2抵抗器を直列接続した回路モデルを想定し、該回路モデルの各電気要素値を推定する推定部を有することを特徴とする請求項2に記載の電子口腔清掃器。
【請求項4】
前記制御部は、前記推定部における前記第1抵抗器、前記第2抵抗器および前記コンデンサの電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとするとき、前記第1電極および前記第2電極間に印加する電圧の主成分を(R+r)×idとすることを特徴とする請求項3に記載の電子口腔清掃器。
【請求項5】
前記制御部は、前記推定部における前記第1抵抗器、前記第2抵抗器および前記コンデンサの電気要素値を、それぞれr、RおよびCとし、目標とする所定電流値をidとし、前記第1電極および前記第2電極間に電圧を印加する第1期間、並びに電圧印加を休止する第2期間を交互に行うものとし、該第1期間および第2期間の繰り返し回数を(n−1)とし、前記第1期間、前記第2期間および電圧の印加開始からの時間を、それぞれT1、T2およびtとするとき、前記第1電極および前記第2電極間に印加する電圧の主成分を
【数1】

とすることを特徴とする請求項3に記載の電子口腔清掃器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−154757(P2008−154757A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346297(P2006−346297)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】