説明

電子回路、及び、電子回路の製造方法

【課題】高周波信号の信号処理を行う集積回路基板と配線基板とが簡易的かつ高精度に所定距離離間するようにしつつ、集積回路基板の基板表面に形成されたバンプと、集積回路基板の電極端子とを接合することが可能な電子回路を提供する。
【解決手段】波長がミリメートル単位以下である高周波信号の信号処理を行う信号処理回路を有し、基板表面21aに設けられた第1の電極端子22上にバンプ23が形成された集積回路基板21と、集積回路基板21に形成されたバンプ23と接合される第2の電極端子12が形成された配線基板11とを備え、配線基板11には、集積回路基板21と所定距離離間させる絶縁性の樹脂スペーサ13aが、集積回路基板21の信号処理回路の回路パターンに重畳しない位置であって、配線基板11の基板表面11aの同一直線上とならない3つ以上の位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板上に集積回路基板が実装された電子回路、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線基板上に集積回路基板を実装する手法には、電子機器等の小型化・薄型化・高密度化の必要性に伴い、集積回路基板の回路面に「バンプ」という突起状の電極を形成し、形成した電極を、配線基板に直接電気接続するフリップチップ実装がある。
【0003】
このようなフリップチップ実装において、配線基板と集積回路基板とを一定の距離離間させる具体的な手法として、例えば下記の特許文献1に開示されている手法がある。ここで、特許文献1に開示されている手法は、配線基板の実装部の中心部に、バンプを一定量つぶした状態と同じ高さの半抜き状態の突出部を設け、バンプが形成されている半導体素子のパターン面が前記突出部の上端面に当接するまでバンプが接続端子と接触した状態で一定量だけつぶれるように、半導体素子を配線基板側へ押し下げることにより実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-310566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された手法を実現するためには、まず、配線基板に穴を明けること、突出部を穴に合わせてはめ込む等の突出部を形成する工程が複雑である。また、配線基板表面からの突出部の突出量を精度良くコントロールすることが困難である。さらに、ICチップの中央部に突出部が接触するため、波長がミリメートルオーダーである、いわゆるミリ波などの比較的高周波信号で動作するICは、回路周辺の状態による影響を受け易く、回路特性が変動してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、波長がミリメートル単位以下である高周波信号の信号処理を行う集積回路基板を配線基板に実装する際に、集積回路基板と配線基板とが簡易的かつ高精度に所定距離離間するようにしつつ、集積回路基板の基板表面に形成されたバンプと、集積回路基板の電極端子とを接合することが可能な電子回路、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための手段として、本発明に係る電子回路は、波長がミリメートル単位以下である高周波信号の信号処理を行う信号処理回路を有し、基板表面に設けられた第1の電極端子上にバンプが形成された集積回路基板と、集積回路基板に形成されたバンプと接合される第2の電極端子が形成された配線基板とを備え、配線基板には、集積回路基板と所定距離離間させる絶縁性の樹脂スペーサが、集積回路基板の信号処理回路の回路パターンに重畳しない位置であって、配線基板の基板表面の同一直線上とならない3つ以上の位置に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電子回路の製造方法は、波長がミリメートル単位以下である高周波信号の信号処理を行う信号処理回路を有し基板表面に設けられた第1の電極端子上にバンプが形成された集積回路基板を、配線基板上に実装する電子回路の製造方法において、配線基板の第2の電極端子が形成された基板表面に、バンプより低い所定の高さの絶縁性の樹脂スペーサを形成する形成工程と、配線基板に形成された第2の電極端子と、集積回路基板のバンプとを、樹脂スペーサによって配線基板と集積回路基板とが所定距離離間するように接合する接合工程とを有し、形成工程では、接合工程で接合される集積回路基板内部の信号処理回路の回路パターンに重畳しない位置であって、配線基板の基板表面の同一直線上とならない3つ以上の位置に樹脂スペーサを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、配線基板上に樹脂からなるスペーサを形成し、集積回路基板の基板表面に形成されたバンプと、配線基板の電極端子とを接合する際に、樹脂スペーサで規定する高さでバンプの変形が止まり、配線基板と集積回路基板との間の離間距離が樹脂スペーサの高さに保たれるようにする。このようにして、本発明は、配線基板と集積回路基板とが簡易的かつ高精度に所定距離離間するようにしつつ、配線基板の第2の電極端子と、集積回路基板のバンプとを接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】配線基板の断面構造について説明するための図である。
【図2】配線基板に対して樹脂を塗布する塗布工程について説明するための図である。
【図3】配線基板上に塗布形成された樹脂を樹脂スペーサに加工する加工工程について説明するための図である。
【図4】配線基板と集積回路基板とを接合する接合工程について説明するための図である。
【図5】配線基板と集積回路基板とを接合する接合工程について説明するための図である。
【図6】本発明が適用された電子回路の製造工程について説明するための図である。
【図7】本発明が適用された電子回路の適用例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明が適用された電子回路は、配線基板上に集積回路基板が実装されたものであって、電子機器等の小型化、薄型化、高密度化を実現する観点から、次のような実装手法によって製造されるものである。
【0012】
図1は、基板表面11aに電極端子12が露出した状態で形成された配線基板11の断面図である。
【0013】
まず、図2に示すような塗布工程では、図1に示すような配線基板11に対して、基板表面11aに形成された電極端子12を覆うようにして、絶縁性の樹脂層13を積層する。ここで、樹脂層13としては、配線基板11と後述する集積回路基板21との電極間以外での絶縁性を確保するために、絶縁性材料を用いればよいが、特に以下に示す樹脂スペーサ13aをより簡易的に形成するため、感光性樹脂を用いることが好ましい。この感光性樹脂としては、例えば感光性ポリイミドや感光性ポリベンゾオキサゾールなどを用いることができる。また、塗布工程では、例えばスピンコート処理によって、樹脂層13を配線基板11の基板表面11a上に塗布することによって、均一な厚みで基板表面11a上に積層させることができる。
【0014】
続いて、図3に示すような加工工程では、塗布工程で配線基板11の基板表面11a上に積層された樹脂層13を加工して、樹脂スペーサ13aを形成する。具体的に、加工工程では、後述する接合工程で配線基板11と集積回路基板21とが接合されたときに、集積回路基板21内部の信号処理回路の回路パターンと重畳しない位置であって、かつ、基板表面11a上の電極端子12が形成された位置を除いた同一直線上とならない3つ以上の位置に、樹脂スペーサ13aを形成する。特に、加工工程では、図3に示すように、基板表面11a上の各電極端子12間にそれぞれ樹脂スペーサ13aを形成することが、隣接する電極間でのショートを防止する観点から好ましい。
【0015】
続いて、接合工程では、図4に示すように、集積回路基板21の基板表面21aの電極端子22から突出形成されたバンプ23と、配線基板11の電極端子12とが互いに重畳した位置に配置する。そして、図5に示すように、接合工程では、集積回路基板21に形成されたバンプ23と、配線基板11の電極端子12とを電気的に接合する。ここで、集積回路基板21の電極端子部22から突出形成されたバンプ23は、Auやはんだ等などの比較的柔らかい導電材料で構成される。このようにして、当該接合処理では、集積回路基板21に形成されたバンプ23が、配線基板11の電極端子12と接合する際に変形するが、バンプ23より低く所定の高さに調整された樹脂スペーサ13aと集積回路基板21の基板表面21aとが当接することによって、配線基板11と集積回路基板21とを所望の間隔で保持された状態で接合する。このようして、電子回路1を製造することができる。
【0016】
すなわち、塗布工程及び加工工程によって、図6(A)に示すように、配線基板11の電極端子12の間に樹脂スペーサ13aが形成され、続いて、接合工程によって、図6(B)に示すように、配線基板11の電極端子12と集積回路基板21のバンプ23とが接合されることとなる。
【0017】
このようにして製造される電子回路1は、集積回路基板21の基板表面21aに対して突起したバンプ23と、配線基板11の電極端子12とを接合する際に、樹脂スペーサ13aの高さで、突起したバンプ23の変形が止まり、配線基板11と集積回路基板21との間の離間距離が樹脂スペーサ13aの高さに保たれる。
【0018】
例えば、図6(B)に示すように、集積回路基板21が中央部21bに信号処理回路24を有し、この信号処理回路24に接続されたバンプ23を基板表面21aの周囲、具体的には、図6(B)の周辺部21cに複数配列した場合には、配線基板11側の基板表面11a上の各電極端子12間にそれぞれ樹脂スペーサ13aを形成することによって、上記接合工程によって各バンプ23が変形しても、隣接するバンプ23との間でショートすることを防止することができる。なお、樹脂スペーサ13aは、上記のように電極端子12間に配置する場合に限定されず、図6(B)に示すような集積回路基板21の信号処理回路24の回路パターンと重畳しない位置であって、互いの樹脂スペーサ13aが同一直線状とならない位置に配置してもよい。
【0019】
以上のようにして製造される電子回路1は、配線基板11と集積回路基板21とが簡易的かつ高精度に所定距離離間するようにしつつ、集積回路基板21の基板表面21aに対して突起したバンプ23と、配線基板11の電極端子12とを接合することができる。
【0020】
また、電子回路1は、配線基板11に集積回路基板21を実装する際に、集積回路基板21が傾いていても、配線基板11側が樹脂スペーサ13aにより一定の高さの位置で止まるため、集積回路基板21の傾きを補正して水平に実装することが可能である。
【0021】
さらに、電子回路1は、配線基板11に集積回路基板21を実装した際、図6(B)に示したように、樹脂スペーサ13aが集積回路基板21の周辺部21cに当接して、集積回路基板21内部の信号処理回路24の回路パターンと重畳しないので、この信号処理回路24と配線基板11間の実効的な誘電率を低く抑えることができる。この結果として、電子回路1は、集積回路基板21内部の信号処理回路24の回路の動作に影響を与えないようにすることができる。
【0022】
上記のように、電子回路1は、配線基板11と集積回路基板21とが簡易的かつ高精度に所定距離離間することが可能なので、例えば図7に示すような、波長がミリメートルオーダーであるミリ波で通信を行う送受信デバイス100に適用することが特に好ましい。
【0023】
ここで、送受信デバイス100は、使用周波数が60GHzで基板面の寸法が4mm×4mmである送受信処理IC101と、基板面の寸法が6mm×7mmの配線基板102とを有し、さらに、送受信処理IC101に信号を入力又は出力する受動素子として次のようなものが配線基板102に実装されたものである。
【0024】
すなわち、送受信デバイス100は、配線基板102に、フィルタ103と、バラン104と、受信アンテナ105と、送信アンテナ106と、バランとカプラとから構成される電力合成器106とが実装されている。
【0025】
ここで、フィルタ103は、配線基板102の線路長に応じた帯域制限機能を有するバンドバスフィルタである。バラン104は、受信アンテナ105からの非平衡の受信信号を平衡な受信信号に変換して送受信処理IC101に入力する。また、受信アンテナ105は、外部から60GHzの通信信号を受信する。電力合成器106は、バランとカプラとから構成され、送受信処理IC101からの出力信号をバランにより非平衡状態にして複数のカプラにより合成して、送信アンテナ107に出力する。送信アンテナ107は、電力合成器106により合成された信号を外部に送信する。
【0026】
このような構成からなる送受信デバイス100では、受動素子が、配線基板102に実装されているので、例えば受動素子を送受信ICのチップ内に組み込んだ場合に比べて、伝送路のサイズを十分な大きさに確保することができ、伝送損失を抑制することができる。具体的に、60GHz程度の信号をマイクロストリップライン上で伝送する用途において、送受信処理ICのチップ内に組み込んだ場合には、チップ内の線幅、信号線−グランド間の厚さが薄いため、信号の周波数が高いほど損失が大きい。これに対して、送受信デバイス100では、これらの受動素子が、配線基板102に実装されているので、信号線−グランド間の厚さを十分な厚さとなるように確保し、また線幅を広くとることができるので、伝送損失をできるだけ抑制することができる点で特に好ましい。
【0027】
なお、本発明が適用された電子回路は、上記のような60GHz程度の信号に限定されず、ミリメートル単位以下の高周波信号処理系に適用してもよく、伝送損失をできるだけ抑制することができる。
【0028】
なお、本発明は、以上の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 電子回路、11 配線基板、11a 基板表面、12 電極端子、13 樹脂層、13a 樹脂スペーサ、21 集積回路基板、21a 基板表面、21b 中央部、21c 周辺部、22 電極端子、23 バンプ、24 信号処理回路、100 送受信デバイス、101 送受信処理IC、102 配線基板、103 フィルタ、104 バラン、105 受信アンテナ、106 電力合成器、107 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長がミリメートル単位以下である高周波信号の信号処理を行う信号処理回路を有し、基板表面に設けられた第1の電極端子上にバンプが形成された集積回路基板と、
上記集積回路基板に形成されたバンプと接合される第2の電極端子が形成された配線基板とを備え、
上記配線基板には、上記集積回路基板と所定距離離間させる絶縁性の樹脂スペーサが、該集積回路基板の信号処理回路の回路パターンに重畳しない位置であって、該配線基板の基板表面の同一直線上とならない3つ以上の位置に形成されていることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
上記集積回路基板には、その基板表面の周囲に上記バンプが複数形成され、
上記配線基板には、上記集積回路基板に形成されたバンプと接合される第2の電極端子が複数形成されるとともに、互いに隣接する該第2の電極端子の間に上記樹脂スペーサが形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子回路。
【請求項3】
上記配線基板には、上記第2の電極端子と接続され、上記集積回路基板に対して信号の入力又は出力を行う受動素子が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電子回路。
【請求項4】
波長がミリメートル単位以下である高周波信号の信号処理を行う信号処理回路を有し、基板表面に設けられた第1の電極端子上にバンプが形成された集積回路基板を、配線基板上に実装する電子回路の製造方法において、
上記配線基板の第2の電極端子が形成された基板表面に、上記バンプより低い所定の高さの絶縁性の樹脂スペーサを形成する形成工程と、
上記配線基板に形成された第2の電極端子と、上記集積回路基板のバンプとを、上記樹脂スペーサによって該配線基板と該集積回路基板とが所定距離離間するように接合する接合工程とを有し、
上記形成工程では、上記接合工程で接合される集積回路基板内部の信号処理回路の回路パターンに重畳しない位置であって、上記配線基板の基板表面の同一直線上とならない3つ以上の位置に上記樹脂スペーサを形成することを特徴とする電子回路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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