説明

電子回路ユニット

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、面実装タイプの電子回路ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、この種の面実装タイプの電子回路ユニットは、基板上に設けられた導電パターンの半田ランドに各種回路部品を半田付けし、これら回路部品をシールドカバーで覆うように概略構成されている。基板の側面には端面電極が設けられており、電子回路ユニットを母基板上に面実装する際、端面電極は母基板の半田ランドに半田付けされる。回路部品は同調回路や共振回路あるいは増幅回路等の必要とされる回路構成に応じて使用され、例えば増幅回路用の回路部品としてはトランジスタ、チップ抵抗、チップコンデンサおよびインダクタ等が用いられ、これらの回路部品は導電パターンを介して接続されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで近年、チップ部品やトランジスタ等の回路部品を小形化する技術は著しく進歩しており、例えば外形寸法が0.6×0.3mm程度の超小形のチップ抵抗やチップコンデンサも実用化されている。したがって、前述した従来の電子回路ユニットにおいても、このような小形のチップ部品やトランジスタ等を使用し、これらの回路部品を部品間ピッチを狭めた状態で基板上に実装すれば、電子回路ユニットをある程度までは小型化することが可能となる。しかしながら、チップ部品やトランジスタ等の回路部品の小形化には限界があり、しかも、多数の回路部品を基板上に実装する際に、各回路部品の半田付け部分が短絡しないようにしなければならないため、部品間ピッチを狭めるのにも限界があり、これらのことが電子回路ユニットの更なる小型化を妨げる要因となっていた。
【0004】また、この種の電子回路ユニットが例えば増幅回路を有し、この増幅回路用のトランジスタのエミッタをコンデンサを介して接地する場合、前述した従来技術においては、エミッタ電極に接続された導電パターンの半田ランドと接地用電極に接続された導電パターンの半田ランドとの間にチップコンデンサを半田付けしていたが、これら2つの導電パターンが有するインダクタンスが無視できなくなるため、十分な接地効果を得ることができず、しかも、導電パターンとチップコンデンサとが互いに共働して寄生振動を起こしすいという問題もあった。
【0005】本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化に好適で寄生振動をなくすことのできる電子回路ユニットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の電子回路ユニットでは、アルミナ基板上に薄膜形成された導電パターンと、この導電パターンと接続するように前記アルミナ基板上に薄膜形成された複数のコンデンサと抵抗およびインダクタンス素子を含む回路素子と、前記導電パターンにワイヤーボンディングされたトランジスタの半導体ベアチップとを備え、前記導電パターンには高周波的に接地すべき前記トランジスタの電極に接続された接続ランドを設けると共に、前記コンデンサは高周波的に接地する複数の接地用コンデンサを有し、これら複数の接地用コンデンサは、それぞれの一方の電極部が接地用の前記導電パターンに接続されると共に、それぞれの他方の電極部が互いに分離された前記導電パターンによって前記接続ランドに接続されているように構成した。
【0007】このような構成によれば、コンデンサと抵抗およびインダクタンス素子を含む回路素子が薄膜技術を用いて高精度に形成されると共に、トランジスタの半導体素子はベアチップをワイヤーボンディングしたものであるため、アルミナ基板上に必要とされる回路部品が高密度に実装され、小型化に好適な面実装タイプの電子回路ユニットを実現することができる。また、導電パターンにトランジスタの電極に接続された接続ランドを設けると共に、複数の接地用コンデンサのそれぞれの一方の電極部を接地用の導電パターンに接続し、それぞれの他方の電極部を互いに分離された導電パターンによって接続ランドに接続したため、各接地用コンデンサを接続する導電パターン全体のインダクタンスが減少して、接地用コンデンサによる接続ランドの接地効果が向上し、しかも、各接地用コンデンサと各導電パターンによる寄生発振周波数が高くなるため、この寄生発振周波数をトランジスタの動作点周波数以上に設定すれば、寄生振動をなくして所定の発振周波数以外の周波数で発振してしまうことを防止できる。
【0008】上記の構成において、アルミナ基板上の限られたスペースを有効利用するためには、各接地用コンデンサの大きさを異ならせることが好ましく、このようにすると導電パターンのレイアウトの自由度が大きくなり、電子回路ユニットの小型化により好適となる。
【0009】また、上記の構成において、各接地用コンデンサのそれぞれの一方の電極部を接地用の導電パターンで構成することが好ましく、このようにすると電子回路ユニットの小型化により好適となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態例について図面を参照して説明すると、図1は電子回路ユニットの斜視図、図2は回路構成レイアウトを示すアルミナ基板の平面図、図3はアルミナ基板の裏面図、図4は回路構成の説明図、図5は端面電極を示す斜視図、図6は端面電極の断面図、図7は半導体ベアチップと接続ランドの関係を示す説明図、図8は電子回路ユニットの製造工程を示す説明図である。
【0011】本実施形態例は周波数同調型ブースタアンプへの適用例であり、この周波数同調型ブースタアンプは携帯型テレビ機器の受信性能(特に、受信感度と耐妨害特性)向上のために図示せぬUHFチューナと組み合わせて使用され、希望周波数のTV信号を選択すると共に、選択したTV信号を増幅してUHFチューナに入力する機能を有する。
【0012】図1はかかる周波数同調型ブースタアンプ(電子回路ユニット)の外観を示し、同図に示すように、この周波数同調型ブースタアンプは、後述する回路構成素子を搭載したアルミナ基板1と、このアルミナ基板1に取付けられたシールドカバー2とで構成されており、図示せぬ母基板に半田付けされる面実装部品となっている。アルミナ基板1は方形平板状に形成されており、大版基板を短冊状の分割片に切断した後、この分割片をさらに細分割することによって得られる。シールドカバー2は金属板を箱形に折り曲げ加工したもので、アルミナ基板1上の回路構成素子はこのシールドカバー2によって覆われている。
【0013】図2に示すように、アルミナ基板1の表面には回路構成素子とそれらを接続する導電パターンが設けられており、また、図3に示すように、アルミナ基板1の裏面には背面電極としての導電パターンが設けられている。本実施形態例に係る周波数同調型ブースタアンプは、TV信号の選択と増幅のために同調回路と増幅回路とを有し、図4に示すような回路構成となっており、図2に示される各回路構成素子には図4の回路図に対応する符号を付してある。ただし、図4は回路構成の一例を示すものであり、本発明はこれ以外の回路構成を有する電子回路ユニットにも適用可能である。
【0014】図4に示すように、周波数同調型ブースタアンプは、同調回路および増幅回路の回路構成素子であるコンデンサC1〜C7、抵抗R1〜R3、インダクタンス素子L1〜L3、ダイオードD1、トランジスタTr1、導電路S1,S2等を有し、これらの回路構成素子とそれを接続する導電パターンはアルミナ基板1の表面に設けられている。この導電パターンは例えばCrやCu等をスパッタリング等の薄膜技術を用いて形成したもので、図2中には符号Pを付してハッチングによって表されている。
【0015】周波数同調型ブースタアンプの回路構成について簡単に説明すると、希望周波数のTV信号を選択と増幅するために、インダクタンス素子L2,L3とコンデンサC3,C4およびダイオードD1とからなる同調回路と、トランジスタTr1とその周辺回路素子(抵抗R1〜R3、コンデンサC6)および不平衡/平衡変換素子Tとからなる増幅回路から構成されている。複数の周波数のTV信号はコンデンサC1を介して同調回路に入力される。同調回路の同調周波数(共振周波数)はダイオードD1のカソードに加える電圧(Vctl)の制御により可変するので、希望するTV信号の周波数に一致させることによって、希望するTV信号だけが選択され、コンデンサC5を介して増幅回路のトランジスタTr1のベースに入力される。トランジスタTr1のベースにはベースバイアス用分圧抵抗R1,R2にバイアス電圧が与えられ、トランジスタTr1のコレクタ電流(≒エミッタ電流)はエミッタ抵抗R3の抵抗値によって設定される。トランジスタTr1によって増幅されたTV信号はコレクタから出力され、コレクタには不平衡/平衡変換素子Tが設けられている。この不平衡/平衡変換素子Tは互いに結合した一対の導電路S1,S2からなるインダクタンス素子によって構成され、導電路S2の両端から平衡TV信号が出力され、前述したUHFチューナに入力される。
【0016】図2に示すように、アルミナ基板1の端部には接地用電極(GND)と入力用電極(Vcc,Vctl,RFin)および出力用電極(RFout)が形成されており、これらは導電パターンPの一部によって構成されている。接地用電極と入力用電極および出力用電極は方形状のアルミナ基板1の相対向する2つの長辺側にのみ形成され、それ以外の相対向する2つの短辺側には形成されていない。すなわち、アルミナ基板1の一方の長辺側の両隅部(コーナ)にGND電極が形成され、これらGND電極の間にVcc電極とRFin電極およびVctl電極が形成されている。また、アルミナ基板1の他方の長辺側の両隅部とその近傍の3箇所にGND電極が形成され、これらGND電極の間に2つのRFout電極が形成されている。なお、後述するように、アルミナ基板1の2つの長辺は大版基板を短冊状の分割片に切断したときの分割線に対応し、アルミナ基板1の2つの短辺はこの分割片をさらに細分割したときの分割線に対応する。
【0017】一方、図3に示すように、アルミナ基板1の裏面に設けられた導電パターンP1(背面電極)はそれぞれの接地用電極(GND)と入力用電極(Vcc,Vctl,RFin)および出力用電極(RFout)に対向しており、図5と図6に示すように、両者は端面電極3を介して導通されている。この端面電極3はAg厚膜層の上にNi下地メッキ層とAuメッキ層を順次積層したもので、最下層のAg厚膜層は、ガラス成分を含まないAgペーストを厚膜形成した後、これを200°C程度で焼成した低温焼成材からなる。また、中間層のNi下地メッキ層はAuメッキ層の付着を容易にするもので、最上層のAuメッキ層は、端面電極3を図示せぬ母基板の半田ランドに半田付けした際に、最下層のAgが半田に析出するのを防止するためのものである。そして、シールドカバー2がアルミナ基板1に取付けられた電子回路ユニットの完成品において、シールドカバー2の側面に折り曲げ形成された脚片2aが接地用電極(GND)と導通する端面電極3に半田付けされており、シールドカバー2はアルミナ基板1の4隅で接地された状態となる。
【0018】前述した各回路構成素子のうち、コンデンサC1〜C7は下部電極の上にSiO2等の誘電体膜を介して上部電極を積層したもので、これらはスパッタリング等を用いて薄膜形成されている。上部電極の表面にはCu層が設けられており、このCu層によって共振回路のQが高められている。コンデンサC1〜C7の下部電極と上部電極は導電パターンPに接続されており、図2に示すように、コンデンサC7とVcc電極間の導電パターンP、コンデンサC7とRFout電極間の導電パターンP、コンデンサC2とVctl電極間の導電パターンPには、それぞれ放電用の近接部(エアーギャップ)Gが設けられている。この近接部Gは互いに対向して並設された導電パターンPのそれぞれに設けられた一対の突部によって構成されており、両突部の尖端同士は所定のギャップを存して対向している。この場合導電パターンPとGND電極の寸法精度はいずれも薄膜技術により高くなるため近接部Gのギャップ寸法を狭めることができ、低電圧での放電が可能となっている。また、各コンデンサC1〜C7のうち、コンデンサC1とC3〜C5は単純な方形状に形成されているが、コンデンサC2とC7については2つ以上の方形を組み合わせた異形状に形成されている。すなわち、コンデンサC2は1つの矩形の一辺から2つの矩形を突出させた凹形状であり、コンデンサC7は3つの矩形を長辺方向にずらして連続させた形状になっている。これらコンデンサC2とC7は比較的大きな容量値を必要とする接地用コンデンサであり、接地用コンデンサC2とC7をこのような異形状にすると、アルミナ基板1上の限られたスペースが有効利用され、所望の容量値のコンデンサを高密度実装することができる。
【0019】さらに、各コンデンサC1〜C7のうち、コンデンサC6は大きさを異にする2つの接地用コンデンサで構成されており、両者は互いに分離された一対の導電パターンPを介して並列接続されている。すなわち、図2に示すように、両接地用コンデンサC6の各一方の電極部はGND電極に繋がる接地用の導電パターンPに接続されているが、両接地用コンデンサC6の各他方の電極部は互いに分離された2つの導電パターンPを介してトランジスタTr1の接続ランドSLに接続されている。図4から明らかなように、コンデンサC6はトランジスタTr1のエミッタと接地間に設けられており、前記接続ランドSLはトランジスタTr1のエミッタ電極がワイヤーボンディングされる箇所であるため、コンデンサC6の容量値は互いに分離された導電パターンPを介して並列接続された2つの接地用コンデンサによって設定されることになる。したがって、トランジスタTr1のエミッタ電極からコンデンサC6を介して接地に至る導電パターンP全体のインダクタンスが減少して、接地用コンデンサC6による接続ランドSLの接地効果が向上することになり、また、各接地用コンデンサC6と各導電パターンPとによる寄生発振周波数が高くなるため、この周波数をトランジスタTr1の動作点周波数以上に設定することにより、寄生振動をなくすことができる。
【0020】抵抗R1〜R3は例えばTaSiO2等の抵抗膜をスパッタリング等の薄膜技術を用いて形成したもので、その表面には必要に応じてSiO2等の誘電体膜が設けられている。図2に示すように、3つの抵抗R1〜R3のうち、抵抗R1とR2はアルミナ基板1上の互いに近接した位置に並設して薄膜形成され、残りの抵抗R3は抵抗R1とR2から離れた位置に薄膜形成されている。このように抵抗R1とR2を近接した位置に薄膜形成してあるため、各抵抗R1,R2の抵抗値が所望値に対してバラツキを生じたとしても、抵抗R1,R2全体のバラツキの比率を同じにすることができる。図4から明らかなように、抵抗R1とR2はトランジスタTr1のベースバイアス用分圧抵抗であり、R1/(R1+R2)×Vccの電圧がトランジスタTr1のベースに印加される。ここで、ベースバイアス用分圧抵抗である抵抗R1,R2全体のバラツキの比率は前述したように常に同じであるため、これら抵抗R1,R2に対する抵抗値のトリミングは不要となる。一方、抵抗R3はトランジスタTr1のエミッタ抵抗であり、電流はVcc電極からトランジスタTr1のコレクタとエミッタに流れ、さらに抵抗R3を通って接地される。ここで、各抵抗R1〜R3のうち、エミッタ抵抗である抵抗R3によるトランジスタTr1の増幅度への寄与が最も大きいため、電流値が一定になるように抵抗R3のみをトリミングして出力調整するようにしてある。
【0021】なお、図9に示すように、トランジスタTr1に別のトランジスタTr2を直列接続した回路構成の場合は、両トランジスタTr1,Tr2のベースバイアス用分圧抵抗である抵抗R1,R2,R4をアルミナ基板1上の互いに近接した位置に薄膜形成すれば、これら抵抗R1,R2,R4に対する抵抗値のトリミングは不要となる。したがって、この場合においても、エミッタ抵抗である抵抗R3のみをトリミングすることにより、両トランジスタTr1,Tr2の電流値を設定することができる。
【0022】また、インダクタンス素子L1〜L3と導電路S1,S2は、CrやCu等をスパッタリング等の薄膜技術を用いて形成したもので、導電パターンPに接続されている。各インダクタンス素子L1〜L3の表面にはCu層が設けられており、このCu層によって共振回路のQが高められている。インダクタンス素子L1とL2はいずれも角形の渦巻き形状に形成されており、それぞれの一端はVctl電極や接地用の導電パターンPにワイヤーボンディングされている。インダクタンス素子L2は概略の共振周波数を設定する共振周波数設定用であり、インダクタンス素子L3はインダクタンス素子L2の他端に連続している。インダクタンス素子L3は共振周波数を調整するための調整用導電パターンであり、図2の破線で示すように、インダクタンス素子L3をトリミングして削ることにより、インダクタンス素子L2の巻数が増加して共振周波数を調整するようになっている。この場合、トリミング後のインダクタンス素子L3の導体幅が共振周波数設定用のインダクタンス素子L2の導体幅と同じになるようにすれば、インダクタンス素子L2とインダクタンス素子L3の特性インピーダンスが変わらなくなり、C/N比が良好な発振を得ることができる。
【0023】前述したように、不平衡/平衡変換素子Tは互いに結合した一対の導電路S1,S2からなるインダクタンス素子によって構成され、これら導電路S1,S2はアルミナ基板1上に薄膜形成されている。これら導電路S1,S2はアルミナ基板1上で所定のギャップを介して対向するように渦巻き状に形成されており、一方の導電路S1の両端はトランジスタTr1のコレクタ電極とコンデンサC7に接続された導電パターンPとに接続され、他方の導電路S2の両端は一対のRFout電極に接続されている。この場合、薄膜形成された導電路S1,S2の寸法精度が高いため、両導電路S1,S2間のギャップを狭くして所望の結合度を確保することができ、アルミナ基板1上の限られたスペース内に小形の不平衡/平衡変換素子Tを設けることができる。なお、図10に示すように、所定のギャップを介して対向する一対の導電路S1,S2をアルミナ基板1上にジグザグ状に形成しても良い。
【0024】また、ダイオードD1とトランジスタTr1は、アルミナ基板1上に薄膜形成された導電パターンPの接続ランドに半導体ベアチップを搭載し、該半導体ベアチップを導電パターンPにワイヤーボンディングしたものである。すなわち、図2に示すように、ダイオードD1の半導体ベアチップは角形形状をなし、その下面に設けられた一方の電極がクリーム半田や導電ペースト等の導電性接着剤を用いて接続ランドに固定され、半導体ベアチップの上面に設けられた他方の電極が導電パターンPの所定部位にワイヤーボンディングされている。また、トランジスタTr1の半導体ベアチップも角形形状をなし、その下面に設けられたコレクタ電極が導電性接着剤を用いて接続ランドに固定され、ベース電極とエミッタ電極が導電パターンPの所定部位にワイヤーボンディングされている。前述した端面電極3と同様に、これら接続ランド上にもNi下地メッキ層とAuメッキ層が順次積層されている。ここで、図7(a)または(b)に示すように、半導体ベアチップ4の下面積に対して接続ランド5の面積が小さく形成されており、このような構成を採用することにより、半導体ベアチップ4の下方に導電性接着剤の溜り部が確保されるため、導電性接着剤が半導体ベアチップ4の外形からはみ出して周囲の導電パターンPと短絡する事故を未然に防止することができる。また、接続ランド5の内部に開口5aが設けられており、これによって余剰の導電性接着剤が開口5a内に溜められるため、導電性接着剤のはみ出しをより確実に防止できるようになっている。
【0025】次に、上記の如く構成された電子回路ユニットの製造工程について主として図8を用いて説明する。
【0026】まず、図8(a)に示すように、アルミナ基板1の表面全体にTaSiO2等をスパッタリングした後、これを所望形状にエッチングして抵抗膜6を形成することにより、抵抗R1〜R3に相当する部分が構成される。次に、図8(b)に示すように、抵抗膜6の上からCrやCu等をスパッタリングし、これを所望形状にエッチングして下部電極7を形成した後、図8(c)に示すように、下部電極7の上からSiO2等をスパッタリングし、これを所望形状にエッチングして誘電体膜8を形成する。次に、図8(d)に示すように、誘電体膜8の上からCrやCu等をスパッタリングした後、これを所望形状にエッチングして上部電極9を形成する。その結果、下部電極7または上部電極9によって導電パターンPとインダクタンス素子L1〜L3および導電路S1,S2に相当する部分が構成され、下部電極7と誘電体膜8および上部電極9の積層体によってコンデンサC1〜C7に相当する部分が構成される。次に、インダクタンス素子L1〜L3と導電路S1,S2およびコンデンサC1〜C7に相当する部分の表面にCu層をメッキまたは薄膜技術で形成した後、図8(e)に示すように、導電パターンPを除く部分に保護膜10を形成する。次に、図8(f)に示すように、アルミナ基板1の裏面全体にCrやCu等をスパッタリングした後、これを所望形状にエッチングして背面電極11を形成することにより、裏面側の導電パターンP1に相当する部分が構成される。
【0027】なお、以上説明した図8(a)〜(f)の工程は、縦横に格子状に延びる分割溝が刻設されたアルミナ材からなる大版基板に対して行なわれ、以下に説明する図8(g)〜(j)の工程は、この大版基板を一方向の分割溝に沿って切断することで得られる短冊状の分割片に対して行なわれる。
【0028】すなわち、大版基板を短冊状の分割片に切断した後、図8(g)に示すように、この分割片の切断面であるアルミナ基板1の両端面にAg層12を厚膜形成し、アルミナ基板1の表裏両面に設けられた導電パターンP,P1の接地用電極(GND)と入力用電極(Vcc,Vctl,RFin)および出力用電極(RFout)同志をAg層12で導通する。このAg層12は前述した端面電極3のAg厚膜層に相当し、ガラス成分を含まないAgペーストからなる低温焼成材である。なお、かかるAg層12の厚膜形成工程を1つの短冊状分割片に対して行なうことも可能であるが、複数の分割片を若干の隙間を存して重ね合わせた状態にすれば、Ag層12を複数の分割片に対して同時に厚膜形成することができ、大量生産に好適となる。次に、Ag層12と半導体ベアチップが搭載される接続ランドの各表面にNi下地層とAu層を順次メッキした後、図8(h)に示すように、各接続ランド上にダイオードD1とトランジスタTr1の半導体ベアチップをクリーム半田や導電ペースト等の導電性接着剤を用いて固定する。この場合、前述したように、半導体ベアチップの下面積に対して接続ランドの面積が小さく形成されているため、導電性接着剤の半導体ベアチップからのはみ出しが防止され、導電性接着剤が半導体ベアチップの周囲の導電パターンPと不所望に短絡しないようになっている。次に、図8(i)に示すように、各半導体ベアチップを導電パターンPの所定部位にワイヤーボンディングした後、図8(j)に示すように、エミッタ抵抗である抵抗R3をトリミングして出力調整すると共に、調整用導電パターンであるインダクタンス素子L3をトリミングして共振周波数を調整する。この場合、共振周波数の調整は個々のアルミナ基板1に分割する前の短冊状分割片の状態で行なわれ、各アルミナ基板1の隅部に接地用電極(GND)が設けられているため、隣接するアルミナ基板1に設けられた入力用電極(Vcc,Vctl,RFin)および出力用電極(RFout)間に必ず接地用電極(GND)が位置することになり、共振周波数の調整が隣接するアルミナ基板1の回路へ悪影響を及ぼさないようになっている。
【0029】次いで、短冊状分割片の個々のアルミナ基板1にシールドカバー2を取付け、該シールドカバー2の脚片2aを接地用電極(GND)に導通する端面電極3に半田付けた後、分割片を他方の分割溝に沿って個々のアルミナ基板1に細分割することにより、図1に示すような電子回路ユニットが得られる。
【0030】このように構成された上記実施形態例に係る電子回路ユニットによれば、アルミナ基板1上にコンデンサC1〜C7、抵抗R1〜R3、インダクタンス素子L1〜L3、導電路S1,S2等の回路素子とこれら回路素子に接続される導電パターンPとを薄膜形成すると共に、このアルミナ基板1上にダイオードD1とトランジスタTr1の半導体ベアチップをワイヤーボンディングし、かつ、アルミナ基板1の側面に導電パターンの接地用電極と入出力用電極に接続される端面電極3を設けたため、必要とされる回路構成素子を薄膜技術と半導体素子のワイヤーボンディングとを用いてアルミナ基板1上に高密度に実装でき、小型化に好適な面実装タイプの電子回路ユニットを実現することができる。
【0031】また、アルミナ基板1上に薄膜形成されたコンデンサC1〜C7のうち、トランジスタTr1のエミッタ電極と接地電極間に介設されたコンデンサC6が2つの接地用コンデンサで構成され、これら接地用コンデンサの各一方の電極部が接地用の導電パターンPに接続されると共に、各他方の電極部がトランジスタTr1のエミッタ電極にワイヤーボンディングされた接続ランドSLに互いに分離された導電パターンPによって接続されているため、コンデンサC6を構成する2つの接地用コンデンサを接続すべき導電パターン全体のインダクタンスが減少して、接地用コンデンサによる接続ランドの接地効果を高めることができるまた各接地用コンデンサと各導電パターンによる寄生発振周波数が高くなり、この寄生発振周波数をトランジスタの動作点周波数以上に設定すれば、寄生振動をなくすことができ所定の発振周波数以外の周波数で発振してしまうことを防止できる。しかも、コンデンサC6を構成する各接地用コンデンサの大きさを異ならせているため、アルミナ基板1上の限られたスペースを有効利用して導電パターンPのレイアウトの自由度が大きくなり、この点からも電子回路ユニットの小型化を促進することができる。
【0032】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0033】アルミナ基板上にコンデンサと抵抗およびインダクタンス素子を含む回路素子が薄膜技術を用いて高精度に形成されると共に、トランジスタの半導体素子はベアチップをワイヤーボンディングしたものであるため、アルミナ基板上に必要とされる回路部品が高密度に実装され、小型化に好適な面実装タイプの電子回路ユニットを実現することができる。また、導電パターンにトランジスタの電極に接続された接続ランドを設けると共に、複数の接地用コンデンサのそれぞれの一方の電極部を接地用の導電パターンに接続し、それぞれの他方の電極部を互いに分離された導電パターンによって接続ランドに接続したため、各接地用コンデンサを接続する導電パターン全体のインダクタンスが減少して、接地用コンデンサによる接続ランドの接地効果が向上し、しかも、各接地用コンデンサと各導電パターンによる寄生発振周波数が高くなるため、この寄生発振周波数をトランジスタの動作点周波数以上に設定すれば、寄生振動をなくして所定の発振周波数以外の周波数で発振してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例に係る電子回路ユニットの斜視図である。
【図2】回路構成レイアウトを示すアルミナ基板の平面図である。
【図3】アルミナ基板の裏面図である。
【図4】回路構成の説明図である。
【図5】端面電極を示す斜視図である。
【図6】端面電極の断面図である。
【図7】半導体ベアチップと接続ランドの関係を示す説明図である。
【図8】電子回路ユニットの製造工程を示す説明図である。
【図9】他の回路構成の説明図である。
【図10】他の回路構成レイアウトを示すアルミナ基板の平面図である。
【符号の説明】
1 アルミナ基板
2 シールドカバー
3 端面電極
4 半導体ベアチップ
5 接続ランド
5a 開口
6 抵抗膜
7 下部電極
8 誘電体膜
9 上部電極
10 保護膜
11 背面電極
12 Ag層
C1〜C7 コンデンサ
R1〜R3 抵抗
L1〜L3 インダクタンス素子
Tr1,Tr2 トランジスタ
S1,S2 導電路
P,P1 導電パターン
SL 接続ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミナ基板上に薄膜形成された導電パターンと、この導電パターンと接続するように前記アルミナ基板上に薄膜形成された複数のコンデンサと抵抗およびインダクタンス素子を含む回路素子と、前記導電パターンにワイヤーボンディングされたトランジスタの半導体ベアチップとを備え、前記導電パターンには高周波的に接地すべき前記トランジスタの電極に接続された接続ランドを設けると共に、前記コンデンサは高周波的に接地する複数の接地用コンデンサを有し、これら複数の接地用コンデンサは、それぞれの一方の電極部が接地用の前記導電パターンに接続されると共に、それぞれの他方の電極部が互いに分離された前記導電パターンによって前記接続ランドに接続されていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】 請求項1の記載において、前記複数の接地用コンデンサの大きさを異ならせたことを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項3】 請求項1または2の記載において、前記複数の接地用コンデンサのそれぞれの前記一方の電極部が接地用の前記導電パターンで構成されていることを特徴とする電子回路ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】特許第3246908号(P3246908)
【登録日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【発行日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−160314(P2000−160314)
【出願日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【公開番号】特開2001−339007(P2001−339007A)
【公開日】平成13年12月7日(2001.12.7)
【審査請求日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【参考文献】
【文献】特開2000−114723(JP,A)
【文献】特開 昭51−23080(JP,A)