説明

電子回路堆積方法

この発明の方法は、(a)第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散によって構成される電気絶縁性または半導電性の基板を備える段階と、(b)前記基板上に阻害物質の層を塗布し、光学的、熱学的、化学的、または電気化学的誘起により、該阻害物質の層を部分的に除去または非活性化し、それにより第一の金属またはその合金の少なくとも一部を露出させ、電子回路のパターンを得る段階(b)と、(c)無電解処理により、段階(b)で得られた前記基板に存在する、第一の金属またはその合金が露出した部分に、第二の金属またはその合金の層を堆積させる段階であって、これによって段階(b)を経た後でも該基板上に存在する阻害物質が、第一の金属またはその合金上に堆積される第二の金属またはその合金を部分的に阻害することで、第二の金属またはその合金が、段階(b)で得られた、第一の金属またはその合金の露出した部分に、選択的に堆積されることを確実にする段階を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路用の導電パターンを有する基板を製造するための方法、前記導電パターンを有する前記基板、及び前記導電パターンを有する前記基板を備える装置を目的とする。
【背景技術】
【0002】
導電パターンを表面に備える基板は、電子回路の用途の幅広い分野で利用されている。ガラス基板は、液晶画面、視覚的表示装置のためのタッチスクリーン、太陽電池、一般消費者向けの電子表示装置に用いられ、所望の機能を備えるためには、該基板上に導電トラックを形成する必要がある。また、導電パターンを備えるフレキシブルプラスチック基板は、電子回路や電極として高い可能性を持っている。特に、表面に導電マイクロパターンを備えるプラスチック基板は、電子回路用途、例えば、フレキシブルディスプレイ、巻き取り型ディスプレイ、太陽電池パネル、スマートブリスター(smart blisters)、無線周波数識別(RFID)タグ、スマートラベル(smart labels)、生物学的感知用電極アレイ、及び拡散型トランジスタ圧力センサを備えた、その他のセンサーアプリケーションなどに利用できる。
【0003】
電子回路のパターンを製造する方法は周知である。そうしたパターンは、例えば、誘電体に金属層を施し、化学エッチングにより該金属層の一部を除去することにより、特定の金属回路パターンを得て形成される。しかし、電気絶縁性または半導電性の表面上に電子回路(導電トラック)を形成するのは依然として困難な課題である。こうした回路は、例えば、50μm以下といった、非常に小さな形状(トラックの最大幅や、トラック間の最小距離等)である。
【0004】
非常に小さい形状の金属製電子回路を形成するための既存の技術では、一般的に、フォトリソグラフィが関与している。フォトリソグラフィでは、要求される回路パターンが、フォトレジストを選択的に除去することによって、基板上に塗布されたフォトトレジスト膜に転写される。通常、基板は金属膜でコーティングされており、回路はフォトレジストが除去された部位の金属をエッチングすることによって形成される。あるいは、フォトレジストが除去された基板上に金属が堆積される。残念ながら、フォトリソグラフィは低コストのロールツーロール工程には適さないため、これら既存の製造方法は、比較的高価である。さらに、フォトリソグラフィーは、部品の射出成形にも適さない。部品の射出成形は、電子部品の大量生産に利用することができるので、この点は特に不利である。
【0005】
例えば、特許文献1には以下の方法が記載されている。ビア回路機能を備える半導体基板に、初めに気相堆積法により、連続的な金属シード層が設けられ、次に、該シード層の選択された領域は、例えば、該シード層を化学浴に曝すことによって、部分的に該シード層を腐食させることで、メッキに対して無効であるように加工される。これにより、シード層の選択領域を化学的に電気メッキ阻害剤に変質させる。その後、導電性物質が、電気メッキや無電解メッキ技術を用いて堆積される。
【0006】
同様に、非特許文献1には、パラジウム膜上の阻害剤として、アルカンチオールのパターン化ミクロ接触プリンティングによって、20μm未満のサイズのパターン化電子回路を形成することが記載されている。
【0007】
しかし両事例においては、ビアの外側の導電を防止するために、電気メッキ後の平坦化やエッチングによって、シード層を除去する必要がある。また、非特許文献1では、ニッケルの無電解堆積用のエイコサンチオールによるパラジウム膜上のパターン阻害は、阻害性エイコサンチオール層では欠陥が生じるのは不可避であるとして、実現不可能だと結論付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6605534号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】カルバリョ、他(ラングミュア2002、18、2406-2412)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電気絶縁性または半導電性の基板上に電子回路を形成するため方法の改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、よって、電気絶縁性または半導電性の基板上に、少ない処理工程で電子回路を形成するための信頼性の高い方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、電気絶縁性または半導電性の基板上に、電子回路を形成するための方法であって、ロールツーロール工程、または部品射出成形に適した方法を提供することである。
【0013】
驚くべきことに、パターン阻害はナノ粒子の分散が、無電解堆積のシードとして使用される場合に、有利に実現されることがわかった。これは公開前の欧州特許出願第07110281.8において提示されているが、該文献に記載されている技術は、阻害物質が機械的に除去されるため、外形が200μm以上の回路に限定されている。さらに、前記文献に記載されている技術は、三次元成形相互接続デバイスによる射出成形部品に焦点を置いている。公開前の欧州特許出願第08156833.9は金属箔への同様な適用が記載されているが、焦点は金属箔のパターニングに置かれており、阻害剤の塗布には置かれていない。
【0014】
第一の態様において、本発明は電子回路のための導電パターンを有する電気絶縁性または半導電性の基板を製造するための方法であって、該方法は
(a)第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散によって構成される電気絶縁性または半導電性の基板を備える段階と、
(b)- 該基板上に阻害物質の層を塗布し、
- 光学的、熱学的、化学的、または電気化学的励起により、該阻害物質の層を部分的に除去し、それにより第一の金属またはその合金の少なくとも一部を露出させ、
電子回路のパターンを得る段階(b)と、
(c)無電解処理により、段階(b)で得られた該基板に存在する、第一の金属またはその合金が露出した部分に、第二の金属またはその合金の層を堆積させる段階であって、これによって、段階(b)を経た後でも該基板上に存在する阻害物質が、第一の金属またはその合金上に堆積される第二の金属またはその合金を部分的に阻害することで、第二の金属またはその合金が、段階(b)で得られた、第一の金属またはその合金の露出した部分に、選択的に堆積されることを確実にする段階を備えている。
【0015】
本出願で用いられる「第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散」という表現は、前記基板上の層を意味しており、該層はナノ粒子のアイランドを含む。前記層は通常不完全な被覆率を有する。不完全な被覆率とは、該層が一様に完全な薄膜を構成するものではないことを意味する。
【0016】
第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散は、非連続的な層の形状をとることができる(例えば、ナノ粒子の分散はナノ粒子の単分子層よりも小さい)。この利点は、例えば特許文献1の発明よりも、処理工程が少ないことにある。レジスト層を塗布する必要も、レジストやシード物質を除去する必要もなくなる。発明者は驚くべきことに、(特許文献1で使用されているような)シード物質の連続的な層を、部分的に非活性化させることが不可能である一方で、以下に記載した比較例に示すように、シード物質の非連続的な層においては部分的な非活性化が可能であることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従って使用される基板は、好適には、熱可塑性物質、熱硬化性物質、および/またはセラミック物質等の、電気絶縁性または半導電性の物質から構成することができる。
【0018】
熱可塑性物質の好適な例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)(例えば、ポリアミド6、ポリアミド6 / 6、ポリアミド4/ 6と、またはポリアミド12)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル - ブタジエン - スチレン(ABS)、ポリカーボネート/アクリロニトリル - ブタジエン - スチレン(PC/ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテスルホン(PES)、及びポリアクリレートが含まれる。
【0019】
熱硬化性物質の好適な例には、エポキシ化合物、メラミン、ベークライト、ポリエステル化合物が含まれる。好ましくは、基板には、PET、PEN、PI、LCP、PA、PEI、ABS、PMMAやPC/ABSから選ばれる一以上で構成される。好適なセラミック物質には、アルミナ、ジルコニア、シリカ、シリコン、サファイア、酸化亜鉛、酸化スズ、黄銅鉱やガラスが含まれる。基板は、自立型であることも可能であり、ガラス、シリコン、金属、厚いポリマー等の、剛性のキャリアによって支持されることも可能である。
【0020】
一実施形態において、基板は、プラスチック製の箔などの箔である。これは、最終的な電子回路が柔軟であることを求められるような特定の用途において非常に有利である。前記箔は、例えば、最大で1mmの厚さ、好ましくは最大500μmの厚さ、より好ましくは250μmの厚さを有することが可能である。力学的な支持力を備えるためには、前記箔は少なくとも5μmの厚さであることが好ましく、少なくとも25μmの厚さであることがより好ましい。
【0021】
本発明の方法において使用される第一の金属またはその合金は、好適には、コバルト、ニッケル、鉄、錫、銅、ロジウム、パラジウム、プラチナ、銀、金、ルテニウム、イリジウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される一以上から構成される。好ましくは、第一の金属はパラジウムで構成される。
【0022】
第一の金属またはその合金のナノ粒子は通常、透過型電子顕微鏡の測定によるもので1〜20nmの範囲内、特に2〜10nmの範囲内の平均粒径である。
【0023】
第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散は、ナノ粒子の溶液(例えば、浸漬型塗膜や噴霧など)からの吸着や、一般的には二価の錫の還元剤の溶液またはパラジウムイオンの溶液中での連続的浸漬型塗膜により形成される。別の方法として、第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散は、従来型の金属成膜技術(蒸発、スパッタリング、(化学的または物理的)蒸着、プラズマ蒸着などを含む)によって堆積させることができる。好ましくは、第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散は浸漬型塗膜によって形成され、この方法によると、より緻密で均一な分散が得られる。
【0024】
更には、基板の第一の金属またはその合金のナノ粒子の接着をより良くするために、基板と第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散の間で、接着促進剤の塗布または接着促進処理を施すことができる。このような接着促進剤は当技術分野でよく知られており、例えばプラズマ処理、UV/オゾン処理、自己組織化単分子膜(-OH、-NH2、-COOHなど、第三の物質の接着を促進することが可能である一以上の反応性官能基を持つ、アルキルまたはアリールクロロシラン、アルコキシシラン、ラングミュア-ブロジェット膜など)、ポリマーコーティング、基板よりも高い表面エネルギーを有する任意の有機または無機コーティングなどが含まれ、これにより第一の金属またはその合金のナノ粒子の接着を促進させる。
【0025】
本発明の方法に従って使用される阻害物質には、好適には、無電解堆積工程を阻害または安定化することが知られている任意の物質により構成される。このような物質の例には、重金属イオン、有機と無機の硫黄含有、セレン含有、またはテルル含有化合物、酸素含有化合物、脂肪族有機化合物、および芳香族有機化合物が含まれる。好ましくは、前記阻害物質は、チオ尿素、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、ジピリジル、酢酸鉛、マレイン酸、2-メルカプトベンゾイミダゾール、および2-メルカプトベンゾチアゾールから選択される一以上により構成される。最も好ましくは、阻害物質は、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールドデカンチオール、ヘキサデカンチオールとオクタデカンチオールから選択される一以上のチオール化合物により構成される。
【0026】
阻害物質は、好適には、無電解浴の物理化学的条件において、難溶性の構造をしているものが選択される。前記阻害物質は、好ましくは、無電解浴のpHで、非イオン性でありそのため水難溶性の構造をしているものが選択される。チオール化合物の電離の程度は、pKa値によって特徴付けられるチオール基の酸性度によって決定される。前記pKa値を超えるpHで、チオール基はマイナスに帯電し、無電解溶液中で高い溶解性を持つようになり、そのため阻害の程度が低くなる。その結果、pKa値が12以上のヘキサデカンチオールは、好ましくはpH9〜12の無電解銅浴、または酸性、すなわちpH4〜5の無電解ニッケル浴に使用されるが、pKa値7の2-メルカプトベンゾチアゾールは、好ましくは酸性、すなわちpH4〜5の無電解ニッケル浴で唯一使用される。
【0027】
阻害物質は、トルエン、ベンゼン、アセトン、またはアルコールなどの好適な溶媒中の阻害物質の溶液を利用することができる。好ましくは、前記溶媒は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ペンタノール、オクタノール、デカノール、又はそれらの混合物などのアルコールで構成される。最も好ましくは、前記溶媒は、エタノール、ヘキサノール、オクタノールから選ばれる一以上で構成される。
【0028】
阻害物質は、0.1〜100mMの濃度、好ましくは1〜10mMの濃度、より好ましくは1〜5mMの濃度の溶媒中で溶解する。
【0029】
阻害物質の層は、好適には、不完全な吸着表面被覆率を有しており、吸着した単層または多層とすることができる。したがって、阻害物質の層を均一な層とすることができるだけでなく、複数の、個別のまたは接続された部分から成る、不完全な被覆率の層とすることも可能である。
【0030】
阻害物質は(プリント方式や浸漬法により、またはスムーススタンプを用いることによって)均一な層として塗布され、その後、光学的、熱学的、化学的及び/または電気化学的誘起により、部分的に除去されるかまたは非活性化される。前記阻害層の局所的な光学的非活性化または局所的な熱学的非活性化は、例えば、マスクを介したレーザー照射または露光によって行われる。光誘起による除去または非活性化には、紫外線光源を使用されることが好ましく、一方熱学的除去または非活性化には赤外線光源が好ましい。
【0031】
また、化学反応により、第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散を、無電解処理の際、金属化を許可しない阻害化合物に、部分的に変質させることも可能である。以上により、電子回路の所望のパターンを得ることができる。
【0032】
阻害剤の層の部分的に除去することは、阻害物質を部分的に塗布することと比較して有利である。阻害物質が液体の形で塗布されるために、塗布されたパターンの分解が進んでしまう。塗布を行う間、阻害物質は流動性が高く、阻害されてはならない箇所にまで拡散し、その結果、パターンが明確でない回路パターンとなってしまう。これに対し、部分的除去の前に、阻害物質は低い流動性で表面に定着することができ、これにより明瞭な回路パターンが得られる。また、多くの用途で、表面被覆率が低い(10%以下)電子回路が望まれている。例えば、電気電導性が光伝送と組み合わせる必要がある。このため、表面の大部分は、阻害物質によって覆われる必要がある。これは、局所的に高速で広い面積に阻害物質を塗布する必要があるパターニング技術にとって、非常に困難な課題である。部分的除去は、広い面積への均一的な阻害剤の塗布と、阻害剤の高速部分的除去を組み合わせることにより、この困難な課題を軽減するものである。
【0033】
阻害物質が塗布されると、適切には、続いて等方性エッチング工程(乾式又は湿式)が行われ、余分な阻害物質が除去される。その結果、第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散が保護されていない箇所ができる。望ましくない箇所から余分な阻害物質を除去するために粘着タイプの物質も使用できる。
【0034】
本発明の方法で使用される第二の金属またはその合金は、適切には、銅、ニッケル、ニッケルリン、ニッケルホウ素、コバルト、スズ、銀、金、パラジウム、白金、およびこれらの混合物からなる群から選択される一以上から構成される。好ましくは、第二の金属は銅、ニッケルリンまたはニッケルホウ素で構成される。
【0035】
第二の金属またはその合金の層は、適切には0.05〜30μmの範囲、より好ましくは、0.1〜10μmの範囲の厚さまで可能である。第二の金属またはその合金の層の厚さは、調整することができ、例えば堆積時間によって調整される。通常、堆積速度は2〜20μm/hである。
【0036】
第二の金属またはその合金は、無電解処理によって塗布される。当該処理の間、基板上にまだ存在している阻害物質は、第一の金属またはその合金の上に堆積する第二の金属またはその合金を部分的に阻害する。これにより確実に、第二の金属またはその合金は、第一の金属またはその合金の露出した部分に選択的に堆積される。
【0037】
適切な無電解処理には、無電解メッキが含まれる。例えば、無電解の銅、ニッケル、ニッケルリンまたはニッケルホウ素、銀、スズ、コバルト、パラジウム、プラチナや金によるメッキである。無電解メッキ処理において、溶液中のイオンの形で利用可能な金属が適切な触媒表面上で還元剤によって金属の形に還元されるという原理を利用している。さらに、金属それ自体は、前記処理を自己触媒的なものとするために、還元反応に対し触媒である必要がある。無電解メッキ処理に関する一般的な説明については、例えば、『無電解メッキの基礎と応用』グレンO.マロリー、ファンB.アイドゥー編集、ニューヨーク(1990)参照。
【0038】
無電解処理は、好ましくは第一の金属またはその合金の分散上に堆積される第二の金属またはその合金(またはその前駆体)を含む溶液を使用する。適切な金属含有溶液には、銅塩(例えば銅硫酸塩)と還元剤としてのホルムアルデヒドの水性溶液、ニッケル塩(例えばの硫酸ニッケル)と還元剤としての次亜リン酸塩、ジメチルアミンボランおよび/または水酸化ホウ素ナトリウムとの水性溶液を含む。
【0039】
更に、本発明の方法では、続いて阻害物質が前記基板の非金属化領域から除去される工程が行われる。
【0040】
基板が箔である場合は、ロールツーロール製造工程において、本発明の方法を実施することは特に有利である。箔は巻き戻し、処理、及び再巻き取り中のロールでの処理を可能にする。硬質基板が使用される従来の方法は、ロールツーロール製造には適していない。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法によって作成されたパターンを備える電子回路を目的とする。そのような電子回路は、適切にはサブミクロン構造を持つことができる。
【0042】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による電子装置を目的とする。そのような装置の適切な例としては、太陽電池、ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)などの柔軟な装置に限定されるものではなく、自動車、コンピュータ、デジタルカメラや携帯電話で使用される相互接続部品やセンサも含まれる。
【実施例】
【0043】
[比較例1]
インプリントされた寸法特性が幅1〜20μm 、長さ0.5〜1mm、奥行き350nmである、PDMS(ポリジメチルシロキサン)レプリカで作られた高分子基板を、物理蒸着(PVD)により15nmの連続的なPt/Pd膜によって被覆した。前記基板の隆起部に対して、2-MBT(2-メルカプトベンゾチアゾール)を搭載したPDMSスタンプを押すことにより、前記基板はパターンに沿って阻害物質で被覆された。その後、無電解ニッケルホウ素浴中に、前記基板上にはニッケル層が堆積した。金属の堆積は、Pt/Pd膜により覆われた基板全体の2-MBTを搭載したPDMSスタンプと接触していた該隆起部と、2-MBTを搭載した基板と接触していなかった凹部の両方で起こった。
【0044】
同様の結果が、5、10および20nmの連続的なPt/Pd膜を用いて得られた。
【0045】
[比較例2]
PDMS(ポリジメチルシロキサン)よりなるポリマー基板を、物理蒸着(PVD)により15nmの連続的なPt/Pd膜で被覆した。2-MBT(2-メルカプトベンゾチアゾール)を搭載したPDMSスタンプを基板に押すことにより、該基板を阻害物質で被覆した。その後、無電解ニッケルホウ素浴中に、前記基板上にニッケル層が堆積した。金属の堆積は、Pt/Pdで被覆された基板上の全体に発生した。同様の結果は、5、10および20nmの連続的なPt/Pd膜を用いても得られた。
【0046】
[比較例3]
PET箔と、50Ω/sqの導電率をもつインジウムスズ酸化物(ITO)(サウスウォールテクノロジーズ社製)膜とからなるポリマー基板は、イソプロパノール中で超音波によって5分間脱脂され、純水(脱塩水)で1分間洗浄された。
【0047】
初めに、イオン触媒処理を用いてインジウムスズ酸化物上に、パラジウム触媒の分散が形成された。分散を形成させるために、前記基板は10g/lのSnCl2と、40ml/lのHClの溶液中で1分間浸漬させた。浸漬後、サンプルを純水(脱塩水)で1分間洗浄した。洗浄後、得られた基板を、0.25g/1のPdCl2と2.5ml/1のHClの溶液に室温で1分間浸漬させた。その後、前記基板を純水(脱塩水)で1分間洗浄した。その後、前記基板はHDT(ヘキサデカンチオール)が搭載されたパターン化PDMSスタンプ(10μm単位で10μmの線)を1分間該基板に押すことにより、パターンに沿って阻害剤で被覆された。このPDMSスタンプには、ヘキサノール中の濃度が2.7mMのHDTの溶液に1分間曝されることでHDTが搭載され、続いてN2気体流中で乾燥させた。
【0048】
その後、前記基板は純水(脱塩水)で洗浄され、pH値6.1、24 g/1のNiCl2-6H2O、30g/1のC3H6O3(乳酸)、15g/1のCH3COONa(酢酸ナトリウム)、および2.5g/1のジメチルアンモニアボランを含む無電解ニッケル浴により、60°Cで5分間、ニッケル層が該基板上に堆積した。金属の堆積はPDMSスタンプと接触がなかった領域に起こったが、PDMSスタンプと接触のなかった領域にも起こり、そのため境界の不明瞭なパターンになった。
【実施例1】
【0049】
PET箔よりなるポリマー基板は、以下の処理工程の手順により、ニッケルで選択的にメッキされた。
【0050】
初めに、イオン触媒処理を用いた箔上に、パラジウム触媒の分散が形成された。分散を形成させるために、前記基板を10g/lのSnCl2と、40ml/lのHClの溶液中で2分間浸漬させた。浸漬後、サンプルを純水(脱塩水)で1分間洗浄した。洗浄後、得られた基板を0.25g/1のPdCl2と2.5ml/1のHClの溶液に室温で1分間浸漬させた。その後、前記基板は純水(脱塩水)で1分間洗浄した。その後、前記基板はエタノール中の濃度が0.01MのMBI(2-メルカプトベンゾイミダゾール)の溶液中で1分間浸漬させることで、阻害層で完全に被覆させ、続いて、エタノール中で洗浄し、N2気体流中で乾燥させた。
【0051】
その後、前記基板を部分的に5分間紫外線光源(250nm)に露光させた。露光後、pH値6.1、24g/1のNiCl2-6H2O、 30g/1のC3H6O3(乳酸)、15g/1のCH3COONa(酢酸ナトリウム)、および2.5g/1のジメチルアンモニアボランを含む無電解ニッケル浴により、60°Cで5分間、ニッケル層が該基板上に堆積した。金属の堆積は紫外光源によって照らされていた領域のみで起こった。
【実施例2】
【0052】
PET箔よりなるポリマー基板は、以下の処理工程の手順により、ニッケルで選択的にメッキされた。
【0053】
初めに、イオン触媒処理を用いた箔上に、パラジウム触媒の分散が形成された。分散を形成させるために、前記基板を10g/lのSnCl2と、40ml/lのHClの溶液中で2分間浸漬させた。浸漬後、サンプルを純水(脱塩水)で1分間洗浄した。洗浄後、得られた基板を0.25g/1のPdCl2と2.5ml/1のHClの溶液に室温で1分間浸漬させた。その後、前記基板は純水(脱塩水)で1分間洗浄した。その後、前記基板はエタノール中の濃度が0.005MのMBI(2 -メルカプトベンゾイミダゾール)の溶液中で1分間浸漬させることで、阻害層で完全に被覆させ、続いて、エタノール中で洗浄し、N2気体流中で乾燥させた。
【0054】
その後、前記基板を部分的に5分間紫外線光源(250nm)に露光させた。露光後、pH値6.1、24g/1のNiCl2-6H2O、30g/1のC3H6O3(乳酸)、15g/1のCH3COONa(酢酸ナトリウム)、および2.5g/1のジメチルアンモニアボランを含む無電解ニッケル浴により、60°Cで5分間、ニッケル層が該基板上に堆積された。金属の堆積は紫外光源に照らされていた領域のみで起こった。
【実施例3】
【0055】
PET箔と、50Ω/sqの導電率をもつインジウムスズ酸化物(ITO)(サウスウォールテクノロジーズ社製)膜とからなるポリマー基板は、以下の処理工程の手順により、ニッケルで選択的にメッキされた。
【0056】
初めに、前記基板はイソプロパノール中で5分間超音波によって脱脂され、純水(脱塩水)で1分間洗浄し、硝酸中で3分間超音波によってエッチングされ、純水(脱塩水)で1分間洗浄された。その後、前記基板はエタノール中の濃度が0.01MのMBI(2-メルカプトベンゾイミダゾール)の溶液中で1分間浸漬させることで、阻害層で完全に被覆させ、続いて、エタノール中で洗浄し、N2気体流中で乾燥させた。
【0057】
その後、前記基板は波長1064nm、200Wのパルスレーザービームにより部分的に照射された。露光後、pH値6.1、24g/1のNiCl2-6H2O、30g/1のC3H6O3(乳酸)、15g/1のCH3COONa(酢酸ナトリウム)、および2.5g/1のジメチルアンモニアボランを含む無電解ニッケル浴により、60°Cで、ニッケル層が該基板上に堆積された。金属の堆積はレーザーによって照射されていた領域のみで起こった。
【実施例4】
【0058】
PET箔と、50Ω/sqの導電率をもつインジウムスズ酸化物(ITO)(サウスウォールテクノロジーズ社製)膜とからなるポリマー基板は、以下の処理工程の手順により、ニッケルで選択的にメッキされた。
【0059】
まず、前記基板はイソプロパノール中で5分間超音波によって脱脂され、純水(脱塩水)で1分間洗浄し、硝酸中で3分間超音波によってエッチングされ、純水(脱塩水)で1分間洗浄された。その後、前記基板はエタノール中の濃度が0.01MのMBI(2-メルカプトベンゾイミダゾール)の溶液中で1分間浸漬させることで、阻害層で完全に被覆させ、続いて、エタノール中で洗浄し、N2気体流中で乾燥させた。
【0060】
その後、前記基板は波長1064nm、500Wのパルスレーザービームにより部分的に照射された。露光後、pH値6.1、24g/1のNiCl2-6H2O、30g/1のC3H6O3(乳酸)、15g/1のCH3COONa(酢酸ナトリウム)、および2.5g/1のジメチルアンモニアボランを含む無電解ニッケル浴により、60°Cで、ニッケル層が該基板上に堆積した。金属の堆積はレーザーによって照射されていた領域のみで起こった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路のための導電パターンを有する電気絶縁性または半導電性の基板を製造するための方法であって、
(a)第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散によって構成される電気絶縁性または半導電性の基板を備える段階と、
(b)- 前記基板上に阻害物質の層を塗布し、
- 光学的、熱学的、化学的、または電気化学的誘起により、前記阻害物質の層を部分的に除去または非活性化し、それにより第一の金属またはその合金の少なくとも一部を露出させ、
電子回路のパターンを得る段階(b)と、
(c)無電解処理により、段階(b)で得られた前記基板に存在する、第一の金属またはその合金が露出した部分に、第二の金属またはその合金の層を堆積させる段階であって、該段階によって段階(b)を経た後でも該基板上に存在する阻害物質が、第一の金属またはその合金上に堆積される第二の金属またはその合金を部分的に阻害することで、第二の金属またはその合金が、段階(b)で得られた、第一の金属またはその合金の露出した部分に、選択的に堆積されることを確実にする段階を備える方法。
【請求項2】
前記第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散が、ナノ粒子または溶液中のイオンの吸着によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、および/またはセラミック材料によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、エポキシ化合物、メラミン、ベークライト、ポリエステル化合物、アルミナ、ジルコニア、シリカ、シリコン、サファイア、酸化亜鉛、酸化スズ、黄銅鉱、およびガラスからなる群から選択される一以上の物質から構成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板は、5〜500μm、好ましくは25〜250μmの範囲の厚さであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
前記基板と第一の金属またはその合金のナノ粒子の分散との間で、接着促進剤の塗布または接着促進処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の金属またはその合金は、コバルト、ニッケル、鉄、錫、銅、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、銀、金、およびこれらの混合物からなる群から選択される一以上で構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項8】
前記阻害物質は、重金属イオン、有機と無機の硫黄含有、セレン含有、またはテルル含有化合物、酸素含有化合物、脂肪族有機化合物および芳香族有機化合物からなる群から選択される一以上で構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の方法。
【請求項9】
前記阻害物質は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノールからなる群から選択される一以上の溶媒から構成される溶液から、前記基板に塗布されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害物質は、プリント方式や浸漬方式、またはスタンプ方式によって塗布されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの項に記載の方法。
【請求項11】
前記阻害物質の塗布に続いて、等方性エッチング工程が行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の金属またはその合金が、銅、ニッケル、ニッケルリン、ニッケルホウ素、スズ、銀、金、コバルト、パラジウム、白金、およびこれらの混合物からなる群から選択される一以上から構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項に記載の方法。
【請求項13】
前記無電解処理の後、阻害物質が基板の非金属化領域から除去される工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、ロールツーロール製造方法で行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって得られる電子回路のための導電性パターンを備える電気絶縁性または半導電性の基板。
【請求項16】
請求項15に記載の電子回路のための導電性パターンを備える電気絶縁性または半導電性の基板を備える電子機器。

【公表番号】特表2012−511828(P2012−511828A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540622(P2011−540622)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050755
【国際公開番号】WO2010/068104
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511095850)ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト−ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー (16)
【Fターム(参考)】