説明

電子回路形成品の製造方法

【課題】防湿、防塵のため、基板の大きさに拘わらず、電子回路基板を容易に、且つ短時間で被覆する方法を得る。
【解決手段】部品2を実装した基板1を覆うように筒状又はシート状の耐衝撃性に優れ、部品の再利用等が可能な、熱可塑性フィルム3を被せ、上記フイルム3を加熱して軟化させた後、基板1と上記フィルム3の間を減圧することにより、上記フイルム3を基板1に追従させて密着させるとともに、上記フイルム3の開口部を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が装着された回路基板などの回路形成体を筒状フィルムで覆う電子回路形成品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板の形成方法として、接合剤にクリーム半田、あるいは導電性接着剤を用いたリフロー工法等が知られている。
【0003】
しかしながら、クリーム半田の成分中には鉛が含まれるため、地球環境保護の点で問題があった。
【0004】
また、導電性接着剤は樹脂中に充填される金属粉量が多いため、接合強度が低く、金属半田に比して耐衝撃性が劣るという問題がある。耐衝撃性を改善するために、別途、封止剤を用いて、基板上に部品を封止する方法があるが、後々、部品交換等の基板の修理、及び部品の回収並びに再利用が困難になり、また、封止樹脂の硬化に長時間を要するという諸問題がある。
【0005】
また、防湿や防塵等の目的で、基板をシリコーン樹脂やウレタン樹脂等で封止する方法の場合、上記同様、部品交換等の基板の修理、及び部品の回収並びに再利用が困難になり、また、封止樹脂の硬化に長時間を要するという諸問題が生じていた。
【0006】
これを解決するためのひとつの方法として、特許文献1に記載された技術が提案されている。この公報には、導電層と熱溶着層とを有しかつ3辺が閉じられた矩形の袋の残りの1辺の開口部から基板を袋内に挿入したのち、開口部をヒートシールして熱溶着させることにより閉塞することにより、電磁遮蔽を行うようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】特開平8−18275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構造のものでは、基板を挿入する前に、予めフィルムの3辺が閉じられるため、袋内に挿入できる基板の大きさに限界があり、異なる大きさの基板に対応するためには、異なる大きさの袋を用意し、かつ、基板の大きさに対応して適切な大きさの袋を選択して使用しなければならず、汎用性に欠き、かつ、煩雑なものとなっていた。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決するためのものであって、異なる基板の大きさに対応することができて汎用性に富み、短時間に梱包でき、耐衝撃性が向上し、かつ、部品と基板などの回収及び再利用等が容易な電子回路形成品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、電子部品を備えた回路基板を筒状フィルムで覆うように上記基板を上記筒状フィルム内に挿入したのち、上記筒状フィルムの両方の開口部を閉塞して上記回路基板を梱包することにより、電子回路形成品を製造することを特徴とする電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、電子部品を備えた回路形成体の上記電子部品が備えられた領域をシート状フィルムにより覆うことにより、電子回路形成品を製造することを特徴とする電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、電子部品を備えた回路基板の表裏両面を2枚のシート状フィルムにより覆うとともに上記シート状フィルムにより上記回路基板を梱包することにより、電子回路形成品を製造することを特徴とする電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、上記2枚のシート状フィルムのうちの一方のシート状フィルムにより、上記回路基板の表面を覆ったのち、上記2枚のシート状フィルムのうちの他方のシート状フィルムにより、上記回路基板の裏面を覆うことにより、上記2枚のシート状フィルムにより上記回路基板を梱包するようにした第3の態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、上記2枚のシート状フィルムにより、上記回路基板の表面及び裏面を同時に覆うことにより、上記2枚のシート状フィルムにより上記回路基板を梱包するようにした第3の態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、上記フィルムを予め加熱して軟化させたのち、上記基板を覆うようにした第1〜5のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、上記フィルムの膜厚が、10〜200μmである第1〜6のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、上記フィルムで上記基板を覆うとき、上記フィルムと上記基板との間を減圧して、上記フィルムを上記部品又は上記基板に追従させるようにした第1〜7のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第9態様によれば、上記フィルムは熱収縮性材料より構成されており、上記フィルムを加熱して熱収縮させることにより、上記フィルムを上記基板及び上記部品に追従させるようにした第1〜8のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の第10態様によれば、上記フィルムは可視性材料より構成されている第1〜9のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の第11態様によれば、上記フィルムで上記基板を覆うとき、上記フィルムと上記基板との間を上記部品の孔を利用して減圧して、上記フィルムを上記部品又は上記基板に追従させるようにしたのち、上記孔に設けた弁により上記通気孔を経て外部から上記フィルムと上記基板との間内に気体が入るのを妨げるようにした第1〜10のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の第12態様によれば、上記フィルムと上記部品又は基板との間に弾性シート備えるようにした第1〜11のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の第13態様によれば、上記フィルムの内面に、上記フィルムと、上記電子部品又は上記基板とを接着させる接着層を備えるようにした第1〜12のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の第14態様によれば、上記フィルムは、基板や部品中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などをフィルム内部から外部に向けて通過させるが、フィルム外部から内部に向けて水分やゴミは通過させない機能を有する第1〜13のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の第15態様によれば、上記フィルム内に、乾燥剤や活性炭など、上記基板や部品中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などを吸収する吸収剤を備える第1〜14のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0026】
本発明の第16態様によれば、上記フィルムが軟化する温度以上で上記フィルムが溶融する温度未満の温度で、かつ、上記基板と上記部品との接合剤が溶けない程度の温度まで、予め基板1を加熱したのち、上記フィルムで上記基板を梱包することにより、加熱された上記基板に上記フィルムが接触して軟化し、上記フィルムを上記基板に追従させる第1〜15のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0027】
本発明の第17態様によれば、上記フィルムが熱可塑性材料より構成され、上記フィルムで上記基板を覆うとき、上記フィルムと上記基板との間を減圧して、上記フィルムを上記部品又は上記基板に追従させると同時に、上記フィルム同士をを加熱融着して密閉するようにした第1〜8及び10〜16のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0028】
本発明の第18態様によれば、電子部品を備えた回路基板を筒状フィルム内に挿入したのち、上記筒状フィルムの両方の開口部を閉塞するとともに上記筒状フィルムを切断して上記回路基板を梱包することを特徴とする電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の第19態様によれば、回路基板の電極上に電子部品実装用接合剤を印刷又は塗布する工程と、
上記位置に電子部品を機械的に加圧して接近させる工程と、
加熱により上記部品を基板上に固定する工程と、
上記基板を上記筒状又はシート状フィルムにより梱包する工程とを備えることを特徴とする電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の第20態様によれば、上記電子部品実装用接合剤が、金属半田、もしくは熱硬化性の導電性接着剤である第19の態様に記載の電子回路形成品の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の第21態様によれば、第1〜20のいずれか1つの態様に記載の電子回路形成品の製造方法により製造される電子回路形成品を提供する。
【発明の効果】
【0032】
従来、部品が装着された基板を袋内に入れて梱包する場合には、基板の大きさや部品の大きさが異なる種々の製品を梱包するとき、異なる大きさの袋を予め用意しておき、それぞれに対応した適切な大きさの袋を選択する必要がある。
【0033】
これに対して、本発明のように、筒状フィルムにより回路形成体例えば基板を覆うようにしたので、基板の大きさや部品の大きさが異なる種々の製品を梱包する場合でも、同一の筒状フィルムを使用して梱包作業を行うことができるので、汎用性に富んだものとなるとともに、梱包作業が簡単かつ容易になる。例えば、矩形の筒状フィルムで矩形の基板を梱包するときには、通常、矩形の基板ではその大きさが長手方向沿いに異なる場合が多く、基板の長手方向と矩形の筒状フィルムの長手方向とを一致させるようにして基板を筒状フィルムに挿入すれば、筒状フィルムの長手方向において閉塞する位置を変えるだけで、異なる大きさの基板に対応することができる。
【0034】
この結果、異なる基板の大きさに対応することができて汎用性に富み、短時間に梱包でき、耐衝撃性が向上し、かつ、部品と基板などの回収及び再利用等が容易となる。さらに、フィルムで基板や部品が覆われているため、回路の保護、結露の防止、ゴミやホコリの混入又は堆積の防止、ゴキブリやアリなどの虫の侵入防止(蟻酸による腐食防止)、塩風などによる塩害防止など、耐湿性等の信頼性の優れた電子部品回路形成品を提供することができる。
【0035】
また、上記フィルムを透明又は半透明の可視性材料より構成すれば、基板及び基板上の電子部品を見ることができ、メインテナンスやリペアやリサイクル時に便利なものとなる。
【0036】
また、上記フィルムと上記部品又は基板との間に弾性シートを備えるようにすれば、弾性シートに衝撃吸収機能をもたせることができて、基板や部品の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0037】
また、上記フィルムの内面に、上記フィルムと上記電子部品又は上記基板とを接着させる接着層を備えるようにすれば、フィルム内に空気などが入り込みフィルム内の真空度が劣化した場合でも、フィルムが電子部品又は上記基板から離れるのを防止することができ、フィルムによる基板及び部品の保護機能を持続させることができる。
【0038】
また、基板上のコネクタ付近やイヤホーンジャックなどの外部出力端子付近や入力端子付近や電源端子付近や電池ホルダ付近などの接続部付近において、フィルムと当該接続部とを接着剤などで密着させることにより、接続部付近においてフィルムの密閉性が損なわれるのを防止することができる。
【0039】
また、上記フィルムは、基板や部品中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などをフィルム内部から外部に向けて通過させるが、フィルム外部から内部に向けて水分やゴミは通過させない機能を有するようにすれば、基板や部品や半田用フラックスなどから発生する気体や水分により、基板を梱包したフィルムが膨張して真空度が劣化したり破損したりするのを長期間にわたって防止することができる。
【0040】
なお、フィルム同士を溶着して一旦密閉状態に基板を梱包したのち、外部回路の接続や部品の調整が必要なときなどにおいて、フィルム同士の溶着部分を切断するなどして密閉状態を解除したのち、必要な作業終了後、シーリング剤などによりフィルム同士を再び固着させて密閉させることもできる。
【0041】
また、上記フィルム内に、乾燥剤や活性炭など、上記基板や部品中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などを吸収する吸収剤を備えるようにすれば、基板や部品や半田用フラックスなどから発生する気体や水分により、基板を梱包したフィルムが膨張して真空度が劣化したり破損したりするのを長期間にわたって防止することができる。
【0042】
また、筒状フィルムが軟化する温度以上で筒状フィルムが溶融する温度未満の温度で、かつ、基板と部品との接合剤が溶けない程度の温度まで、予め基板1を加熱したのち、筒状フィルムで基板を梱包すれば、加熱された基板に筒状フィルムが接触すると軟化し、筒状フィルムを基板に追従させやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0044】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法は、図1及び図2に示す回路基板1の電極上に電子部品実装用接合剤を印刷又は塗布する工程と、上記位置に電子部品2,…,2を機械的に加圧して接近させる工程と、加熱により上記部品2を基板1上に固定する工程とを経て図2に示す部品装着回路基板1を製造したのち、上記回路基板1に部品2,…,2が装着された部品装着回路基板1の状態で、上記部品装着回路基板1のほぼ全体を図3の筒状のフィルム3により梱包して、図4に示す電子回路形成品80を形成する工程とを含むようにしている。すなわち、電子回路形成品80とは、部品を備える基板1又は電化製品や電子機器などのケーシングなど電子部品が配置され回路が形成されている回路形成体の部品が備えられた領域をフィルムにより覆われた製品のことを意味する。
【0045】
印刷又は塗布する工程は、回路基板1の各電極上に、例えば金属半田もしくは熱硬化性の導電性接着剤のような電子部品実装用接合剤を回路基板1の電極上に印刷又は塗布する。
【0046】
接近させる工程は、回路基板1の当該電子部品2を装着すべき位置にある各電極に、吸着ヘッド(図示せず)などにより吸着保持された電子部品2を、吸着ヘッドにより機械的に基板1に向けて接近させて加圧して載置する。
【0047】
固定する工程は、加熱により上記半田を溶融して、上記載置された電子部品2,…,2の電極とを基板1上の電極とを半田で接合して、上記載置された電子部品2,…,2を基板1上に固定する。なお、図2において、2Aは電子部品2のうちのコネクタである。
【0048】
梱包する工程は、上記電子部品2,…,2が装着された基板1の表裏両面のほぼ全体を筒状のフィルム3内に挿入して(図4(A)参照)、基板1の表裏両面のほぼ全体を覆って梱包する(図4(B)参照)。なお、ここで、筒状とは、矩形の2枚のシート状フィルムの対向する2辺が閉じられるか一体となって連続しているような状態を言う。
【0049】
梱包用の筒状のフィルム3は、その膜厚が10μm未満であると、耐衝撃性が劣り、不都合である。フィルム3の膜厚が200μmより大きいと、電子部品の外形に対する追従性が悪く、内部の空間が大きくなるため、封止効果が得られない。よって、フィルム3の膜厚を10〜200μmとすると、耐衝撃性に優れ、かつ、封止効果も良好となる。
【0050】
また、筒状フィルム3を熱可塑性材料より構成すると、フィルム3内に基板1を挿入したのち(図4(A)参照)、フィルム3を加熱しつつフィルム3内を減圧すると、加熱されて軟化したフィルム3が基板1の表面及び基板上の部品2,…,2に追随しやすくなり、フィルム3と基板1の表面及び基板上の部品2,…,2との間に残る気体を少なくすることができ、減圧作業及び減圧状態を保存するための密閉作業を確実に行うことができる。
【0051】
また、フィルム3により梱包するために基板1を内部に挿入したときのフィルム3内の内圧を200Torr 以下とすると、フィルム3の電子部品2,…,2に対する密着性が向上し、電子部品2,…,2の基板1に対する固着力を補強することになり、耐衝撃性が良好になる。
【0052】
また、筒状フィルム3を熱収縮性の材料より構成すると、筒状フィルム3の両方の開口部分のいずれか一方から上記基板1を、筒状フィルム3内に挿入したのち(図4(A)参照)、フィルム3を加熱することにより、フィルム3を熱収縮させてフィルム3を回路基板1及びその上の部品2,…,2に密着させて、基板1の梱包が可能となる(図4(B)参照)。
【0053】
なお、上記筒状フィルム3は、梱包対象となる基板1の全ての大きさに対応できる程度に長い寸法のものを一種類用意し、梱包すべき基板1の大きさに合わせて梱包前に所定長さに切断するようにしてもよいが、上記筒状フィルム3内に基板1を挿入したのち、上記筒状フィルム3の両方の開口部を閉塞するとともに上記筒状フィルム3を切断して上記回路基板1を梱包するようにしてもよい。
【0054】
上記したように第1実施形態の電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0055】
すなわち、部品が装着された基板を袋内に入れて梱包する場合には、基板の大きさや部品の大きさが異なる種々の製品を梱包する場合には、異なる大きさの袋を予め用意しておき、それぞれに対応した適切な大きさの袋を選択する必要がある。これに対して、本発明の第1実施形態のように、筒状フィルム3により回路形成体例えば基板1を覆うようにしたので、基板1の大きさや部品の大きさが異なる種々の製品を梱包する場合でも、同一の筒状フィルム3を使用して梱包作業を行うことができるので、汎用性に富んだものとなるとともに、梱包作業が簡単かつ容易になる。特に、矩形の筒状フィルム3で矩形の基板1を梱包するときには、通常、矩形の基板1ではその大きさが長手方向沿いに異なる場合が多く、基板1の長手方向と矩形の筒状フィルム3の長手方向とを一致させるようにして基板1を筒状フィルム3に挿入すれば、筒状フィルム3の長手方向において閉塞する位置を変えるだけで、異なる大きさの基板1に対応することができる。
【0056】
また、従来、導電性接着剤の接合強度を補強するために、別途、封止剤を用いて、封止剤を基板及びその上の部品を覆うように塗布して、基板上の部品を封止する方法があるが、基板上の部品が封止剤で封止されているため、後々、部品交換等の基板の修理、及び部品の回収並びに再利用が困難になるとともに、封止剤である封止樹脂の硬化に4時間以上を要することになり、封止作業に多くの時間を要することになる。これに対して、第1実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法により電子部品2,…,2が装着された基板1を筒状フィルム3で梱包すると、筒状フィルム3により電子部品2,…,2を保護しかつ接合力を補強することにより、耐衝撃性が向上するとともに、梱包された筒状フィルム3を開封するだけで、基板1や部品2の修理や、部品2の回収及び再利用が容易に可能となり、また、基板1の梱包に要する時間は、例えば1分以下となる。また、部品2の修理後に再び梱包することも簡単に行うことができる。
【0057】
また、防湿や防塵や耐塩害などの目的で、基板をシリコーン樹脂やウレタン樹脂等で封止する方法の場合、上記と同様、部品交換等の基板の修理、及び部品の回収並びに再利用が困難になり、封止樹脂の硬化に8時間程度を要することになり、封止作業に多くの時間を要することになる。これに対して、第1実施形態のように、基板1を筒状フィルム3で梱包すると、基板1の防湿や防塵や耐塩害が容易にかつ確実に達成でき、従来の封止方法では困難であった、基板1や部品2の修理等の諸問題が梱包された筒状フィルム3を開封するだけで容易に行うことができ,従来の種々の問題を容易に解決できる。なお、図4において、81は水滴である。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について説明する。この第2実施形態は、上記第1実施形態と異なる点は、梱包するフィルム3で基板1を覆う前に、フィルムを予め加熱することと、筒状フィルム3の代わりに、2枚のシート状フィルム3A,3Bを使用することである。
【0059】
すなわち、基板1をフィルム3A,3Bで梱包する前に、図5に示すように、矩形のフィルム3A,3Bのそれぞれの少なくとも対向する2辺を一対の棒状のフィルム保持部11,11で保持した状態で、加熱装置10,10の電熱線10a,10aで上下方向からフィルム3A,3Bを加熱して軟化させるようにする。このようにフィルム3A,3Bを軟化させたのち、上記基板1及び基板1上の部品2,…,2をフィルム3A,3Bによりそれぞれ覆うようにして梱包すると、基板1及び基板1上の部品2,…,2に対するフィルム3A,3Bの追従性が良くなり、基板1及び基板1上の部品2,…,2とフィルム3A,3Bとの間の隙間を小さくすることができ、短時間で効率良く梱包することができる。なお、フィルム3A,3Bの縁は、互いに、接着剤又は溶着により固定して、密封状態又は密封に近い状態とする。
【0060】
上記フィルム3A,3Bの加熱軟化時、フィルム3A,3Bのそれぞれは少なくとも対向する2辺を一対の棒状のフィルム保持部11,11で保持されているが、フィルム軟化時にフィルム3A,3Bの姿勢を安定化させるには、フィルム3A,3Bのそれぞれの4辺を保持するほうが好適である。フィルム3A,3Bを軟化させるには、加熱装置10,10の電熱線10a,10aに限らず、熱風等で加熱しても良く、フィルム3A,3Bのそれぞれに対して上下いずれかの一方向からでも良いが、上下同時に加熱した方が短時間で均一にフィルム3A,3Bを軟化させることができる。
【0061】
なお、上記シート状フィルム3A,3Bは、梱包対象となる基板1の全ての大きさに対応できる程度の大きな寸法のものを一種類用意し、梱包すべき基板1の大きさに合わせて梱包前に所定の大きさに切断するようにしてもよいが、上記シート状フィルム3A,3B間に基板1を挟んだのち、上記シート状フィルム3A,3Bの四辺を閉塞するとともに上記シート状フィルム3A,3Bの不要部分を切断して上記回路基板1を梱包するようにしてもよい。
【0062】
上記第2実施形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。すなわち、部品が装着された基板を袋内に入れて梱包する場合には、基板の大きさや部品の大きさが異なる種々の製品を梱包する場合には、異なる大きさの袋を予め用意しておき、それぞれに対応した適切な大きさの袋を選択する必要がある。これに対して、本発明の上記第2実施形態のように、シート状フィルム3A,3Bにより回路形成体例えば基板1を覆うようにしたので、基板1の大きさや部品の大きさが異なる種々の製品を梱包する場合でも、同一のシート状フィルム3A,3Bを使用して梱包作業を行うことができるので、汎用性に富んだものとなるとともに、梱包作業が簡単かつ容易になる。特に、矩形の基板1ではその大きさが長手方向沿いのみならず長手方向と直交する短手方向にも異なる場合には、1枚の矩形のシート状フィルム3A又は3Bで矩形の基板1を覆ってフィルム3A又は3Bを基板に固定するか、又は、2枚の矩形のシート状フィルム3A,3Bで矩形の基板1の表裏両面を覆ってシート状フィルム3A,3B同士を固定するようにすれば、シート状フィルム3A,3Bの固定位置を変えるだけで、異なる大きさの基板に対応することができる。
【0063】
また、基板1をシート状フィルム3A,3Bで梱包すると、基板1の防湿や防塵や耐塩害が容易にかつ確実に達成でき、従来の封止方法では困難であった、基板1や部品2の修理等の諸問題が梱包されたシート状フィルム3A,3Bを開封するだけで容易に行うことができ,従来の種々の問題を容易に解決できる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について説明する。この第3実施形態は、上記第1及び第2実施形態と異なる点は、基板1の表裏両面を2枚のシート状のフィルム3A,3Bで順に片面ずつ真空成形して密着させることである。この第3実施形態を図6に基き説明する。
【0065】
図6において、底部中央が真空ポンプ15に接続された矩形箱状の吸引ボックス14を用意し、吸引ボックス14内の配置空間14a内の矩形枠状支持突起14b上に配置板17を固定し、基板1を配置板17上に複数の棒状のスペーサー16,…,16を介して載置する。配置板17には多数の貫通孔17a,…,17aが形成されている。
【0066】
基板1の表面側を覆うフィルム3Aを、その少なくとも対向する2辺を一対の棒状のフィルム保持部11,11で保持し、かつ、加熱されて軟化した状態で、基板1をセットした吸引ボックス14の上部開口に載置する。このとき、フィルム3Aと吸引ボックス14との間には隙間がなるべくできないようにする。
【0067】
次いで、真空ポンプ15を駆動させ、吸引ボックス14の配置空間14aの底部を真空ポンプ15により吸引する。すなわち、基板1がセットされた配置空間14aの気体例えば空気を、配置板17の貫通孔17a,…,17aを通して真空ポンプ15側に吸引する。吸引ボックス14がフィルム3Aと接していることにより、基板1がセットされた配置空間14aは密閉され、さらに、真空ポンプ15が駆動し続けられて上記配置空間14aの空気を吸引すると、軟化したフィルム3Aは変形して配置空間14a内に入り込み、図7のように基板1の表面に倣うようにしてフィルム3Aが基板1の表面に密着する。基板1はスペーサー16,…,16により配置板17から浮かされているので、フィルム3Aは基板1の端縁から裏面すなわち下面側まで回り込ませることができる。
【0068】
その後、基板1を上下逆さまにして、基板1の下側に位置していた基板裏面を上側にして、上記配置板17にスペーサ16,…,16を介して配置空間14a内に配置する。その後、上記基板表面側をフィルム3Aで覆った工程と同様に、基板1の裏面に対して別のフィルム3Bの真空成形を行う。この結果、軟化したフィルム3Bは変形して吸引ボックス14の配置空間14a内に入り込み、図7のように基板1の裏面に倣うようにしてフィルム3Bが基板1の裏面に密着する。このようにすることにより、基板1の表裏両面を2枚のフィルム3A,3Bで密閉することができる。図2の基板1をフィルム3A,3Bで梱包した状態を図8に示す。また、そのように梱包された基板1の断面を図9(A)に示す。図9(B)に拡大して示すように、基板1の端縁では、上側のフィルム3Aの端部3aの上に、下側のフィルム3Bの端部3bが重なりあって、溶着などにより固着されて、密封状態が保持されるようになっている。
【0069】
上記第3実施形態によれば、2枚のフィルムを異なる厚み又は材質にする事が可能となる。例えば、基板にの接続用貫通穴内にリードを挿入して電気的接続させる挿入部品のリード先端がある基板の一方の面側には厚いフィルムを配置し、発熱部品やリフロー部品などがある基板の他方の面側には薄いフィルムを配置することにより、さらに一層の機能向上を図ることができる。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について説明する。この第4実施形態は、上記第3実施形態と異なる点は、図10に示すように、基板1の表裏両面に対して2枚のフィルム3A,3Bを基板1の上下にそれぞれ対向させることにより、基板1の表裏両面を同時に密閉して梱包することが可能である。この場合、フィルム3Aは、少なくとも、その対向する2辺を一対の(好ましくは4辺を2組の一対の)棒状のフィルム保持部21A,21Aで保持するとともに、フィルム3Bは、少なくとも、その対向する2辺を一対の(好ましくは4辺を2組の一対の)棒状のフィルム保持部21B,21Bで保持する。次いで、フィルム保持部21A,21Aで保持されたフィルム3Aとフィルム保持部21B,21Bで保持されたフィルム3Bとの間に基板1を挟み込んだ状態で、それぞれフィルム保持部21A,21B間で空気が漏れないようにフィルム保持部21A,21B同士を密着させて、フィルム3Aと、フィルム保持部21A,21Aと、フィルム3Bと、フィルム保持部21B,21Bとで囲まれ、かつ、基板1が収納されている空間82が閉鎖空間となるようにする。そして、一方又は両方のフィルム保持部21A,21B間に挟み込んだ吸引管21a又は21bを介して真空ポンプにより、空間82内の空気を真空吸引する。このとき、フィルム保持部21A又は21Bには基板1に向けて突出した基板支持部21Cが取り付けられており、基板支持部21Cは基板1のコネクタ2A等を利用してフィルム保持部21A,21Bにつながり、基板1を支持している。この基板支持部21Cにより、コネクタ2Aを介して基板1を上記空間82内の中間に支持するようにしている。
【0071】
上記第4実施形態によれば、2枚のシート状フィルム3A,3Bを基板1の表裏に対して一度の吸引工程で密封させることができ、生産性が良くなる。
【0072】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について図12及び図13を用いて説明する。この第5実施形態は、先の実施形態と異なる点は、図13に示すように、基板1に実装されているコネクタ2Aを利用して吸引することである。
【0073】
基板1に実装されているコネクタ2Aには、通常、空気が通る通路があり、基板1のコネクタ2Aに真空吸引用のコネクタ31を取付けた後、基板1を筒状のフィルム3又はシート状フィルム3A,3B内に挿入して、基板1の周辺を筒状のフィルム3又はシート状フィルム3A,3Bで密閉し、真空吸引用コネクタ31から吸引管30を介して真空ポンブなどにより空気を吸引して、図13のように梱包する。真空吸引用コネクタ31には、図16に示すように、少なくとも1箇所、好ましくは多数の吸引管31a,…,31aを設けて、円滑に吸引できるようにしている。
【0074】
なお、コネクタ2Aにも、真空吸引用コネクタ31に対応して、少なくとも1箇所、好ましくは多数の吸引孔40,…,40を設けて、より円滑に吸引できるようにしてもよい。
【0075】
また、図12は基板1の周辺を筒状のフィルム3又はシート状フィルム3A,3Bだけで密閉されている状態だが、ブロック等によりフィルムを押さえて密閉するようにしてもよい。
【0076】
上記第5実施形態によれば、経年変化などにより内部の真空度が低下した場合にフィルムを切断することなく、吸引管31a,…,31aより吸引することにより、真空度を再び回復させることができる。
【0077】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について説明する。この第6実施形態は、先の実施形態と異なる点は、図14に示すように、筒状又はシート状の熱収縮フィルム3Dを用いることである。
【0078】
熱収縮フィルム3Dは収縮後のフィルム形状が予測困難である為、基板上のコネクタ2Aにおいて、基板1への電源や信号伝達を行う為のコネクタをコネクタ2Aに差し込むスペースをあらかじめ確保しておく必要がある。このため、基板1のコネクタ2Aにコネクタ用スぺーサ35を差し込む。その後、フィルム3Dを加熱することにより、フィルム3Dが熱収縮して基板1にならう。その後、フィルム3Dの不要な部分をカットし、コネクタ用スペーサ35を取り外すことにより、図15のようにコネクタ差し込みスペースを確保しつつ基板1を梱包することができる。
【0079】
この第6実施形態によれば、熱収縮フィルム3Dを使用するときでも、基板1のコネクタ2Aにコネクタ用スぺーサ35を差し込むことにより、フィルム3Dが熱収縮して基板1にならっても、コネクタ2A内に不用意にフィルム3Dが入り込まず、コネクタ差し込みスペースを確保しつつ基板1を梱包することができる。
【0080】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について説明する。この第7実施形態は、先の実施形態と異なる点は、図17に示すように、基板側又はフィルム側の吸引孔40に弁44を設けることにより、梱包内の真空度を保つことが可能とするものである。
【0081】
図17(A)に弁44を示す。上記吸引孔40に固定される弁44は、ゴムなどの弾性材料より構成され、円形の中央部42がその周囲の環状部41に対して浮き上がって、中央部42と環状部41との間に穴43及び隙間ができる開状態(図17(B)参照)と、円形の中央部42がその周囲の環状部41に密着して中央部42と環状部41とが接触して隙間が無い閉状態(図17(C)参照)とに作動するものである。
【0082】
よって、上記吸引孔40において、真空吸引されるときには、円形の中央部42がその周囲の環状部41に対して浮き上がって、中央部42と環状部41との間に穴43及び隙間ができる開状態(図17(B)参照)となり、基板側から空気を吸引することができる。一方、吸引動作が停止されると、大気圧により、円形の中央部42がその周囲の環状部41に密着して中央部42と環状部41とが接触して隙間が無い閉状態(図17(C)参照)となり、基板側すなわちフィルム内に外側から空気が入ろうとするのを妨げることができる。
【0083】
なお、真空吸引されるときには、円形の中央部42がその周囲の環状部41に対して浮き上がって、中央部42と環状部41との間に隙間ができる開状態(図17(B)参照)となる弁44に限らず、図17(D)に示すように、円形の弾性体に切れ目を入れることにより、円形の中央部47の一部がその周囲の環状部46に対して傾斜しつつ浮き上がって、中央部47と環状部46との間に隙間ができる弁45でもよい。
【0084】
この第7実施形態によれば、基板側又はフィルム側の吸引孔40に弁44を設けることにより、空気が梱包内に入り込むのを妨げることができ、長期間にわたって梱包内の真空度を保つことができる。さらに、内部ガス発生などで梱包内の真空度が低下した場合でも、フィルムを交換することなく、再度吸引することにより、真空度を回復させることができる。
【0085】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及び電子回路形成品について説明する。この第8実施形態は、先の実施形態と異なる点は、図18に示すように、真空吸引用のコネクタ31を基板1のコネクタ2Aに差し込むことにより、真空吸引用のコネクタ31の吸引管31aをコネクタ2Aの吸引孔40内に差し込み、吸引孔40内の弁50を強制的に開けるようにするものである。
【0086】
図18(A)に示すように、弁50は、複数枚の弾性片51,51より構成され、常時は、複数枚の弾性片51,51の弾性力により互いに重なり合って密閉可能とする一方、吸引管31aの先端により複数枚の弾性片51,51を分離させるようにすると、弾性片51,51の隙間が形成されて弁50が開き状態となる。この状態では、吸引管31aにより吸引動作を行うことができる。一方、吸引管31aの先端を引き抜くと、複数枚の弾性片51,51の弾性力により互いに重なり合って密閉状態となる。
【0087】
この第8実施形態によれば、基板側又はフィルム側の吸引孔40に弁50を設けることにより、空気が梱包内に入り込むのを妨げることができ、長期間にわたって梱包内の真空度を保つことができる。さらに、内部ガス発生などで梱包内の真空度が低下した場合でも、フィルムを交換することなく、再度吸引することにより、真空度を回復させることができる。
【0088】
なお、上記第1〜第8実施形態において、各フィルム3,3A,3B,3Dの材料としては、材質として延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)(熱変形型)の場合には、吸水性(防水性)が0.3%、透湿度(防湿性)が28g/m2/24hr、酸素透過率(酸化防止性)が3cc/m2/hr/atm、熱伝導率(放熱性)が6.7×10-4cal/sec・cm℃が使用できる。また、他の材料としては、材質として延伸ポリスチレンの場合には、吸水性(防水性)が0.05%、透湿度(防湿性)が100g/m2/24hr、酸素透過率(酸化防止性)が300cc/m2/hr/atm、熱伝導率(放熱性)が6.7×10-4cal/sec・cm℃が使用できる。また、他の材料としては、材質として延伸ナイロンの場合には、吸水性(防水性)が10%、透湿度(防湿性)が130g/m2/24hr、酸素透過率(酸化防止性)が2cc/m2/hr/atm、熱伝導率(放熱性)が6.7×10-4cal/sec・cm℃が使用できる。また、他の材料としては、材質としてPEの場合には、吸水性(防水性)が0.02%、透湿度(防湿性)が20g/m2/24hr、酸素透過率(酸化防止性)が250cc/m2/hr/atm、熱伝導率(放熱性)が6.7×10-4cal/sec・cm℃が使用できる。また、他の材料としては、材質として延伸ポリプロピレン(PP)の場合には、吸水性(防水性)が0.01%、透湿度(防湿性)が8g/m2/24hr、酸素透過率(酸化防止性)が100cc/m2/hr/atm、熱伝導率(放熱性)が6.7×10-4cal/sec・cm℃が使用できる。また、熱収縮タイプのポリエチレンテレフタレート(PET)も使用することができる。
【0089】
本発明の上記実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法及びそれにより製造された電子回路形成品は、例えば、電話基地局、エアーコンディショナー、洗濯機、ガスメータ、各種屋外機器、屋外使用可能な各種AV(オーディオビシュアル)機器などの回路基板に適用することができる。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0091】
例えば、部品が装着された基板上に、電磁波防止用の銅やアルミニウムなどのシールド材で形成されたシートを載置した状態で、上記フィルムにより、上記基板を梱包するようにしてもよい。この場合、上記した作用効果に加えて、電磁シールド効果も奏することができる。また、シールド材として、ナイロンのOH基をAgに置換したシールド材も使用することができる。
【0092】
また、上記フィルム3,3A,3B,3Dを透明又は半透明の可視性材料より構成すれば、基板1及び基板1上の電子部品2,…,2,2Aを見ることができ、メインテナンスやリペアやリサイクル時に便利なものとなる。特に、LEDなどを有する基板1の場合には、LEDなどの視認性を高める上でフィルム3,3A,3B,3Dを透明とするのが好ましい。
【0093】
また、図19に示すように、上記フィルム3,3A,3B,3Dと上記部品2,…,2,2A又は基板1との間に弾性シート70を備えるようにすれば、電子回路形成品に衝撃吸収機能をもたせることができて、基板1や部品2,…,2,2Aの耐衝撃性をより一層向上させることができる。この場合、フィルムの上記部品2,…,2,2A又は基板に対向する面に、弾性シートを予め貼り付けたり、一体的に備えるようにすれば、フィルムを配置すると同時に弾性シートを配置することができ、生産性を高めることができる。
【0094】
また、図20に示すように、上記フィルム3,3A,3B,3Dの内面に、上記フィルム3,3A,3B,3Dと上記電子部品2,…,2,2A又は上記基板1とを接着させる接着層71を備えるようにすれば、フィルム3,3A,3B,3D内に空気などが入り込みフィルム3,3A,3B,3D内の真空度が劣化した場合でも、フィルム3,3A,3B,3Dが電子部品2,…,2,2A又は上記基板1から離れるのを防止することができ、フィルム3,3A,3B,3Dによる基板1及び部品2,…,2,2Aの保護機能を持続させることができる。接着層71としては、ドット状又は面状又はストライプ状に接着剤を設けるようにすればよい。
【0095】
また、図21に示すように、基板1上のコネクタ2A付近やイヤホーンジャックなどの外部出力端子付近や入力端子付近や電源端子付近や電池ホルダ付近などの接続部付近(外部との接続部品付近)において、フィルム3,3A,3B,3Dと当該接続部とをシーリング剤などの接着剤72などで密着させることにより、接続部付近においてフィルム3,3A,3B,3Dの密閉性が損なわれるのを防止することができる。
【0096】
また、上記フィルム3,3A,3B,3Dは、基板1や部品2,…,2,2A中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板1などにおいて発生する水分などをフィルム3,3A,3B,3Dの内部から外部に向けて通過させるが、フィルム3,3A,3B,3Dの外部から内部に向けて水分やゴミは通過させない機能を有するようにすれば、基板1や部品2,…,2,2Aや半田用フラックスなどから発生する気体や水分により、基板1を梱包したフィルム3,3A,3B,3Dが膨張して真空度が劣化したり破損したりするのを長期間にわたって防止することができる。上記したような機能を有する材料の一例としては、PTFE(4フッ化エチレン)(商品名:ゴアテックス)がある。
【0097】
なお、フィルム3,3A,3B,3Dの端縁同士を溶着して一旦密閉状態に基板1を梱包したのち、外部回路の接続や部品2,…,2,2Aの調整が必要なときなどにおいて、フィルム3,3A,3B,3Dの端縁同士の溶着部分を切断するなどして密閉状態を解除したのち、必要な作業終了後、シーリング剤などによりフィルム3,3A,3B,3Dの端縁同士を再び固着させて密閉させることもできる。
【0098】
また、図22に示すように、上記フィルム3,3A,3B,3D内に、乾燥剤や活性炭など、上記基板1や部品2,…,2,2A中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などを吸収する吸収剤73を備えるようにすれば、基板1や部品2,…,2,2Aや半田用フラックスなどから発生する気体や水分により、基板1を梱包したフィルム3,3A,3B,3Dが膨張して真空度が劣化したり破損したりするのを長期間にわたって防止することができる。
【0099】
また、フィルム3,3A,3B,3Dが軟化する温度以上でフィルム3,3A,3B,3Dが溶融する温度未満の温度で、かつ、基板1と部品2,…,2,2Aとの接合剤が溶けない程度の温度(例えば100〜130℃)まで、予め基板1を加熱したのち、フィルム3,3A,3B,3Dで基板1を梱包すれば、加熱された基板1にフィルム3,3A,3B,3Dが接触すると軟化し、フィルム3,3A,3B,3Dを基板1及び部品2,…,2,2Aに追従させやすくなる。上記したような機能を有する材料の一例としては、PET、ABS、PEN(ポリエチレンナフタレート)がある。
【0100】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【実施例】
【0101】
以下に、本発明の上記実施形態の実施例及び比較例を挙げて、本発明の上記実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法をより詳細に説明する。
【0102】
(回路基板)
ガラスエポキシ基板(寸法:95mm×140mm×0.8mm)の電極上に、導電性接着剤(成分:銀充填エポキシ樹脂系)を印刷し、チップコンデンサ部品(寸法:1.0mm×0.5mm×0.5mm)を電子部品装着機(図略)にて上記所定の位置に装着し、上記基板を、リフロー炉を通過させ上記導電性接着剤を加熱硬化させ、基板電極と部品電極との電気的接合を完了する。
【0103】
次に、上記方法により得られた回路基板を下記の通り加工し、サンプルを作製した。
サンプル作製を、以下の材料及び条件を用いた。
【0104】
(フィルム材料)
・フィルムA: ナイロン6(東レ社製;熱可塑性樹脂)
・フィルムB: ABS(太平化学社製;熱可塑性樹脂)
・フィルムC: PET(帝人化成社製;熱収縮性樹脂)
・フィルムD: シリコーンゴム(東レ;ダウコーニング社製)
・フィルムE: ポリカーボネート(筒中プラスチック社製;熱膨張性樹脂)
(フィルム状態)
筒状フィルムでのフィルム梱包状態「b」、2枚のシート状フィルムでのフィルム梱包状態「c」とする。
【0105】
そして、下記の表1の条件にて、サンプル(実施例1〜5)を作製した。
【0106】
《実施例1〜5》
【0107】
【表1】

【0108】
《比較例1〜8》
また、下記の表2の条件にて、サンプル(比較例1〜8)を作製した。
【0109】
【表2】

【0110】
上記のようにして得られたサンプルについて、各種特性を測定した。その測定方法は以下の通りである。
【0111】
1) 耐衝撃性: サンプルを高さ1mの位置より落下し、部品脱落の有無を観察し、脱落が無いものを○、脱落があるものを×とした。
【0112】
2) 梱包(封止)時間: サンプル作製時の梱包又は封止工程に要した時間を測定した。
【0113】
3) 部品回収性: 部品を基板から取り外すことの可能性を確認することを目的として、サンプルの開封作業を行った。部品を損傷することなく開封できたものを○、できなかったものを×とした。
【0114】
4) 吸水率:サンプルの重量(w0)を測定し、それを60℃90%RH恒温高湿槽内に1000時間放置した後、取り出したサンプルの重量(w1)を測定し、{(w1−w0)/w0}×100=吸水率(%)とした。
【0115】
各サンプルの特性測定の結果を表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
表3より、本発明の実施形態に対応する実施例による電子回路形成品の製造方法により製造された電子回路形成品は、短時間の梱包が可能であり、耐衝撃性に優れ、部品を安定して回収でき、かつ、吸水性も優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明にかかる電子回路形成品の製造方法は、電子部品が装着された回路基板などの回路形成体を筒状フィルムで覆う電子回路形成品の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法が適用される、部品が装着された実装基板の側面図である。
【図2】上記第1実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法が適用される、部品が装着された実装基板の斜視図である。
【図3】上記第1実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法で使用する筒状フィルムの斜視図である。
【図4】(A),(B)はそれぞれ上記第1実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法で形成される前後の電子回路形成品の側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法においてフィルムを軟化させる状態を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において使用する真空成形ユニットの概略構成を示す説明図である。
【図7】図6の真空成形ユニットを使用して真空成形を行う状態の説明図である。
【図8】上記第3実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板を真空梱包して形成された電子回路形成品の斜視図である。
【図9】(A),(B)はそれぞれ上記第3実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板を真空梱包して形成された電子回路形成品断面図及び(A)の矢印Aで示された部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板の上下にフィルムを配置して梱包する状態を説明するための説明図である。
【図11】上記第4実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において使用される装置の概略斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板のコネクタから真空吸引する状態の説明図である。
【図13】上記第5実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板のコネクタから真空吸引した状態の説明図である。
【図14】本発明の第6実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板のコネクタ用スペーサを用いて梱包する状態の説明図である。
【図15】上記第6実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板のコネクタから真空吸引した後の状態の説明図である。
【図16】上記第5実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において使用するコネクタ及び真空吸引用コネクタの断面図である。
【図17】(A),(B),(C),(D)はそれぞれ本発明の第7実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板のコネクタに弁を設けるときの弁の斜視図、開き状態の弁の状態の説明図、閉じ状態の弁の状態の説明図、及び、変形例にかかる弁の斜視図である。
【図18】(A),(B)はそれぞれ本発明の第8実施形態にかかる電子回路形成品の製造方法において、部品が装着された実装基板のコネクタに吸引管が差し込まれて弁を開かれた開き状態の弁の状態の説明図、及び、コネクタから吸引管が引き抜かれて閉じ状態の弁の状態の説明図である。
【図19】弾性シートを有する本発明の他の実施形態にかかる電子回路形成品の概略説明図である。なお、理解しやすくするため、弾性シートとフィルムと基板や部品との間に隙間を設けて図示しているが、実際には密着させるのが好ましい。
【図20】接着層を有する本発明の他の実施形態にかかる電子回路形成品の概略説明図である。なお、理解しやすくするため、接着層とフィルムと基板や部品との間に隙間を設けて図示しているが、実際には密着させるのが好ましい。
【図21】接続部に接着層を有する本発明の他の実施形態にかかる電子回路形成品の概略説明図である。なお、理解しやすくするため、接着層とフィルムと基板や部品との間に隙間を設けて図示しているが、実際には密着させるのが好ましい。
【図22】吸収剤を有する本発明の他の実施形態にかかる電子回路形成品の概略説明図である。なお、理解しやすくするため、吸収剤とフィルムと基板や部品との間に隙間を設けて図示しているが、実際には密着させるのが好ましい。
【符号の説明】
【0120】
1…基板、2…部品、2A…コネクタ、3…筒状フィルム、3a,3b…端部、3A,3B…シート状フィルム、3D…熱収縮フィルム、14…吸引ボックス、14a…配置空間、14b…矩形枠状支持突起、15…真空ポンプ、16…スペーサー、17…配置板、17a…貫通孔、21A,21B…フィルム保持部、21a,21b…吸引管、21C…基板支持部、30…吸引管、31…真空吸引用のコネクタ、31a…吸引管、35…コネクタ用スぺーサ、40…吸引孔、41…環状部、42…中央部、43…穴、44…弁、45…弁、46…環状部、47…中央部、80…電子回路形成品、81…水滴、82…空間、70…弾性シート、71…接着層、72…接着剤、73…吸収剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を備えた回路基板を筒状フィルムで覆うように上記基板を上記筒状フィルム内に挿入し、
上記フィルムを加熱して軟化させ、上記フィルムと上記基板との間を上記部品の孔を利用して減圧して、上記フィルムを上記部品及び上記基板に追従させ密着させるとともに上記筒状フィルムの両方の開口部を閉塞するようにして、上記回路基板を梱包することにより、電子回路形成品を製造することを特徴とする電子回路形成品の製造方法。
【請求項2】
上記フィルムで上記基板を覆うとき、上記フィルムと上記基板との間を上記部品の孔を利用して減圧して、上記フィルムを上記部品又は上記基板に追従させるようにしたのち、上記孔に設けた弁により上記通気孔を経て外部から上記フィルムと上記基板との間内に気体が入るのを妨げるようにした請求項1に記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項3】
上記フィルムと上記部品との間に弾性シート備えるようにした請求項1又は2に記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項4】
上記フィルムの内面に、上記フィルムと、上記電子部品又は上記基板とを接着させる接着層を備えるようにした請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項5】
上記フィルムは、基板や部品中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などをフィルム内部から外部に向けて通過させるが、フィルム外部から内部に向けて水分やゴミは通過させない機能を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項6】
上記フィルム内に、乾燥剤や活性炭など、上記基板や部品中に使用される難燃剤や半田用フラックスなどから発生する気体や紙・フェノール基板などにおいて発生する水分などを吸収する吸収剤を備える請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項7】
上記フィルムの膜厚が、10〜200μmである請求項1〜6のいずれか1つに記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項8】
上記フィルムは可視性材料より構成されている請求項1〜7のいずれか1つに記載の電子回路形成品の製造方法。
【請求項9】
上記フィルムを加熱して軟化させ、上記フィルムと上記基板との間を上記部品の孔を利用して減圧して、上記フィルムを上記部品及び上記基板に追従させ密着させるとともに上記筒状フィルムの両方の開口部を閉塞するとともに上記筒状フィルムを切断して上記回路基板を梱包することにより、電子回路形成品を製造する請求項1〜8のいずれか1つに記載の電子回路形成品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−310870(P2006−310870A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134014(P2006−134014)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【分割の表示】特願2000−90509(P2000−90509)の分割
【原出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】