説明

電子回路装置および電子回路装置の製造方法

【課題】ケースとカバーとをレーザー溶接により接合する工程や、接着材を用いてケースとカバーとを接着する工程を省略することができ、剛性を向上させた電子回路装置を提供する。
【解決手段】金属製のケース101およびカバー102により形成される内部空間SPに収納される回路基板を備える電子回路装置であって、ケース101およびカバー102は、それぞれ内部空間SPを挟んで対向する対向面部101A,102Aと、対向面部101A,102Aの周縁から立ち上がる側面部101B,102Bとを有し、カバー102は、その側面部102Bがケース101の側面部101Bよりも内側に入り込むようにケース101に嵌め込まれており、カバー102の側面部102Bは、回路基板103Aを封止するようにケース101の内側に充填されて硬化された封止樹脂105によってケース101に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置および電子回路装置の製造方法に関する。より具体的には、金属製のケースおよびカバーと、それらのケースおよびカバーにより形成される内部空間に収納される回路基板とを備える電子回路装置および電子回路装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば放電バルブを光源とする車両用灯具には、当該放電バルブの点灯を制御するための制御回路(バラストなどと称される)を備えている(例えば特許文献1参照)。このような制御回路は、例えば次のような構成を有する。すなわち、金属製のケースとカバーとで形成される筐体の内部に回路基板が配され、当該回路基板はケースに接地された状態で当該ケースに接着などの方法で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−210009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成を有する制御回路は、筐体の剛性を補うために、例えばケースに樹脂カバーを接着などの方法で固定した後、樹脂カバーを覆うように金属製のカバーを取り付ける構成とする。また、この場合、ケースとカバーとの接合にはレーザー溶接などの方法が用いられる。したがって、従来の制御回路の組み立てには、多くの工程を必要としていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、金属製のケースおよびカバーと、前記ケースおよび前記カバーにより形成される内部空間に収納される回路基板とを備える電子回路装置であって、前記ケースおよび前記カバーは、それぞれ前記内部空間を挟んで対向する対向面部と、前記対向面部の周縁から立ち上がる側面部とを有し、前記カバーは、その前記側面部が前記ケースの前記側面部よりも内側に入り込むように前記ケースに嵌め込まれており、前記カバーの前記側面部は、前記回路基板を封止するように前記ケースの内側に充填されて硬化された封止樹脂によって前記ケースに固定されていることを特徴とする電子回路装置を提供する。
【0006】
このような電子回路装置によれば、回路基板を封止する樹脂によってケースとカバーとが固定されるので、ケースとカバーとをレーザー溶接により接合する工程や、接着材を用いてケースとカバーとを接着する工程を省略することができる。また、硬化された封止樹脂の剛性によってケースの剛性が向上するので、ケースに剛性を持たせるために別個の部品を必要としない。
【0007】
また、上記電子回路装置において、前記カバーは、その前記側面部が前記ケースの前記側面部に嵌め込まれた状態において前記ケースの前記側面部の外面と接触する接触部を有することが好ましい。
【0008】
これにより、ケースとカバーとを、レーザー溶接などを用いることなく、容易かつ確実に導体接触させることができる。
【0009】
また、上記電子回路装置において、前記接触部は、前記カバーの前記側面部から分岐した分岐部に設けられ、前記カバーの前記側面部との間で、前記ケースの前記側面部を挟み込むことが好ましい。
【0010】
これにより、ケースとカバーとをより確実に導体接触させることができる。
【0011】
また、本発明は、他の形態として、金属製のケースおよびカバーと、前記ケースおよび前記カバーにより形成される内部空間に収納される回路基板とを備える電子回路装置の製造方法であって、前記ケースの内側に前記回路基板を配置した後、前記回路基板を封止するように前記ケースの内側に封止樹脂を充填する封止樹脂充填工程と、前記カバーの前記側面部が前記ケースの前記側面部よりも内側に入り込んで前記封止樹脂に接触するように前記カバーを前記ケースに嵌め込む嵌合工程と、前記封止樹脂を硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする電子回路装置の製造方法を提供する。
【0012】
このような製造方法により製造された電子回路装置によれば、回路基板を封止する樹脂によってケースとカバーとが接着されるので、ケースにカバーを固定するために、ケースとカバーとをレーザー溶接により接合する工程や、接着材を用いてケースとカバーとを接着する工程を省略することができる。また、封止樹脂が硬化されていることによりケースの剛性が向上するので、ケースに剛性を持たせるために別個の部品を必要としない。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両用灯具10の縦断面図である。
【図2】車両用灯具10のランプボディ40の上面における放熱フィン42が設けられた部分を抜き出して示す斜視図である。
【図3】車両用灯具10が備える電子回路装置100の縦断面図の一部を拡大した図である。
【図4】電子回路装置100の他の構成例の縦断面図の一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態における特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子回路装置100を備えた車両用灯具10の縦断面図である。また、図2は、車両用灯具10のランプボディ40の上面における放熱フィン42が設けられた部分を抜き出して示す斜視図である。
【0017】
本実施形態に係る車両用灯具10は、例えば自動車のヘッドランプなどに用いられるものであり、前面カバー(カバー)20、エクステンション30、ランプボディ40、後面カバー60、ガスケット70、リフレクタ80、回路装置保護カバー90、電子回路装置100、バルブソケット110、放電バルブ120、シェード130、リード線140、およびコネクタ150を備える。なお、図1では、説明の便宜上、車両用灯具10における上記構成のうち、前面カバー(カバー)20、エクステンション30、ランプボディ40、後面カバー60、リフレクタ80、および回路装置保護カバー90のみを断面として示す。
【0018】
また、本明細書において、「灯具前方」あるいは「前方」とは、例えば図1における左方向であり、車両用灯具10における後面カバー60側から前面カバー20側へと向かう方向を意味する。また、「灯具後方」あるいは「後方」とは、上記灯具前方と反対の方向(例えば図1における右方向)を意味する。また、「上方」あるいは「下方」とは、図1における「上方」あるいは「下方」であり、灯具前後方向に対して直交する方向である。
【0019】
ランプボディ40は、灯具前方側および灯具後方側が開口した筒状の部品であり、例えばアルミダイキャスト等の熱伝導性に優れた材料により形成されている。本例では、ランプボディ40の灯具前方側の開口の周縁には全周にわたってフランジ部41が設けられている。また、灯具後方側の開口の周縁には全周にわたってガスケット70を嵌め込むための凹部が設けられている。また、ランプボディ40の上面には、図1および図2に示すように、上方に突出し、灯具前後方向に沿って延びる複数の放熱フィン42が間隔を空けて設けられている。
【0020】
車両用灯具10は、ランプボディ40の内側(灯室内)に配される電子回路装置100や放電バルブ120から発生する熱が灯室内の空気の自然対流によって灯室上方に伝わることによりランプボディ40の上面の温度が上昇し易いが、上記のようにランプボディ40の上面に複数の放熱フィン42が設けられていることにより、ランプボディ40の上面に伝わった熱を効率良く放熱させることができる。なお、放熱フィン42は、ランプボディ40と一体に形成されてもよいが、別個の部品として設けてランプボディ40の上面に取り付けてもよい。
【0021】
前面カバー20は、例えば透明あるいは半透明な樹脂により形成され、車両用灯具10の前方を覆う。前面カバー20の周縁部には、灯具後方側に突出するフランジ挿通部21が設けられている。そして、このフランジ挿通部21は、ランプボディ40の全周にわたって設けられたフランジ部41の凹溝に挿通されており、当該凹溝に封入されたシーラント50を介してランプボディ40に固定されている。
【0022】
エクステンション30は、樹脂あるいは金属により形成される略円環形状の部品であり、ランプボディ40にネジ留めなどの方法で固定されている。このエクステンション30は、車両用灯具10を前面カバー20の外側から見たときにリフレクタ80とランプボディ40との隙間から灯具後方の構成が見えないようにする役割を果たす。また、エクステンション30に、放電バルブ120から発せられた光(以下、「光源光」と称する)の一部を拡散あるいは集光する反射面を設けてもよい。
【0023】
後面カバー60は、略円盤形状の部品であり、ランプボディ40の灯具後方側の開口に例えばネジ留めなどの方法により取り付けられて当該開口を覆う。また、本例では、ランプボディ40における灯具後方側の開口の周縁部に設けられた凹部にはガスケット70が嵌め込まれている。このガスケット70は、ランプボディ40と後面カバー60との接合部分から灯室内に水などが入るのを防ぐ。後面カバー60は、ランプボディ40と同様にアルミダイキャスト等の熱伝導性に優れた材料により形成されることが好ましい。
【0024】
放電バルブ120は、長手方向が灯具前後方向に沿うように灯室の中央に配されており、後方側でバルブソケット110に固定されている。この放電バルブ120は、バルブソケット110の後方側に取り付けられた電子回路装置100によって点灯される。なお、図示は省略するが、電子回路装置100およびバルブソケット110は、それぞれ直接あるいは他の部品を介して間接的にランプボディ40に固定されている。
【0025】
電子回路装置100は、放電バルブ120を点灯させる際のスターター回路および放電バルブ120の点灯状態を制御するバラスト回路を内蔵し、バッテリーなどの電源からコネクタ150およびリード線140を介して供給される電極によって駆動する。電子回路装置100のより具体的な構成については後段にて説明する。
【0026】
リフレクタ80は、灯具後方に凸な放物面を有し、放電バルブ120からの光源光を、当該放物面を含む内面で灯具前方へと反射する。本例のリフレクタ80は、図1に示すように、放物面の中央に、放電バルブ120を灯具後方側から挿通するための開口が設けられている。また、リフレクタ80の灯具後方側には、電子回路装置100を保護するための回路装置保護カバー90が取り付けられている。
【0027】
図3は、電子回路装置100の縦断面図の一部を拡大した図である。電子回路装置100は、図3に示すように、ケース101と、カバー102と、制御回路部103とを備える。
【0028】
ケース101は、略円筒形の部品であり、平面部101Aおよび平面部101Aの周縁から立ち上がる側面部101Bを有する。また、カバー102は、ケース101と同じ略円筒形の部品であり、平面部102Aおよび平面部102Aの周縁から立ち上がる側面部102Bを有する。本例では、ケース101およびカバー102は、ともに金属などの導体により形成されている。
【0029】
カバー102は、図3に示すように、その側面部102Bがケース101の側面部101Bよりも内側に入り込むようにケース101に嵌め込まれており、ケース101とカバー102とによって内部空間SPが形成されている。ここで、ケース101の平面部101Aとカバー102の平面部102Aとは対向しており、また、カバー102の側面部102Bの先端面は、ケース101の側面部101Bの内側に設けられた段付部101Cと当接している。
【0030】
また、カバー102の側面部102Bには、外側に向けて突出する突出部102Cが形成されており、カバー102がケース101に嵌め込まれた状態において、ケース101の側面部101Bの内面と導体接触している。
【0031】
制御回路部103は、回路基板103Aと、回路基板103A上に形成されたグランドパターンと電気的に接続するグランド端子103Bとを有し、ケース101とカバー102とによって形成される内部空間SPに収納されている。回路基板103Aは、図3に示すように、接着剤104を介してケース101の平面部101Aの内側に接着されており、グランド端子103Bは、ケース101の平面部101Aと当接している。したがって、回路基板103Aは、電子回路装置100の表面を覆うケース101とカバー102とによって接地されているので、制御回路部103で発生する電磁ノイズが電子回路装置100の外部に漏れにくく、また、電子回路装置100が外部からの電磁ノイズによる影響も受けにくい。
【0032】
また、制御回路部103は、封止樹脂105によって封止されている。この封止樹脂105は、例えば硬化状態において十分な剛性を有する電気絶縁性の熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、ケース101の内側に充填された後で加熱されて硬化されたものである。また、図3に示すように、封止樹脂105は、ケース101の内側における段付部101Cよりも上方まで充填されている。したがって、ケース101に嵌め込まれたカバー102における側面部102Bの先端部は、この封止樹脂105によってケース101に固定されている。なお、電子回路装置100の製造時には、封止樹脂105をケース101の内側に充填してからカバー102をケース101に嵌め込み、封止樹脂105を硬化させる順序が好ましいが、先にカバー102をケース101に嵌め込んでから封止樹脂105をケース101の内側に充填して封止樹脂105を硬化させてもよい。
【0033】
このように、本実施形態に係る電子回路装置100は、回路基板103Aを封止する封止樹脂105によってケース101とカバー102とが固定されるので、接着材を用いてケース101とカバー102とを接着する工程を省略することができる。また、硬化された封止樹脂105の剛性によってケース101の剛性が向上するので、ケース101に剛性を持たせるために別個の部品を必要としない。
【0034】
また、カバー102の側面部102Bに突出部102Cを設けることで、カバー102の側面部102Bとケース101の側面部101Bとが確実に導体接触するので、ケース101とカバー102とを導体接触させるために例えばレーザー溶接により互いを接合する工程が不要となる。したがって、ケース101とカバー102とをレーザー溶接により接合する場合と比べて、接合時の熱によってケース101あるいはカバー102にゆがみなどが生じることがなく、結果として放電バルブ120の取付位置の精度が向上する。
【0035】
図4は、電子回路装置100の他の構成例の縦断面図の一部を拡大した図である。図4に示す例において、図3を参照して説明した電子回路装置100の構成と同じものについては、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0036】
図4に示すように、本例の電子回路装置100では、カバー102は、側面部102Bから外側に分岐した分岐部102Dを有する。この分岐部102Dは、図4に示すように、その先端部が側面部102Bに沿って延びており、分岐部102Dの当該先端部の内側には、内側に向けて突出する突出部102Eが形成されている。そして、カバー102がケース101に嵌め込まれた状態において、突出部102Eは、図4に示すように、ケース101の側面部101Bの外面と接触するだけでなく、カバー102の側面部102Bに設けられた突出部102Cとの間で、ケース101の側面部101Bを挟み込む。
【0037】
本例の電子回路装置100は、このような構成により、カバー102の側面部102Bとケース101の側面部101Bとをより確実に導体接触させることができる。なお、本例の突出部102Eは、カバー102がケース101に嵌め込まれた状態においてケース101の側面部101Bの外面と接触する接触部としての構成の一例に過ぎない。したがって、本例のように分岐部102Dの一部を突出される構成に替えて、例えば、分岐部102D全体がケース101の側面部101Bと導体接触してもよい。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0039】
10…車両用灯具
20…前面カバー
21…フランジ挿通部
30…エクステンション
40…ランプボディ
41…フランジ部
42…放熱フィン
50…シーラント
60…後面カバー
70…ガスケット
80…リフレクタ
90…回路装置保護カバー
100…電子回路装置
101…ケース
101A…平面部(対向面部)
101B…側面部
101C…段付部
102…カバー
102A…平面部(対向面部)
102B…側面部
102C…突出部
102D…分岐部
102E…突出部(接触部)
103…制御回路部
103A…回路基板
103B…グランド端子
104…接着剤
105…封止樹脂
110…バルブソケット
120…放電バルブ
130…シェード
140…リード線
150…コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のケースおよびカバーと、前記ケースおよび前記カバーにより形成される内部空間に収納される回路基板とを備える電子回路装置であって、
前記ケースおよび前記カバーは、それぞれ前記内部空間を挟んで対向する対向面部と、前記対向面部の周縁から立ち上がる側面部とを有し、前記カバーは、その前記側面部が前記ケースの前記側面部よりも内側に入り込むように前記ケースに嵌め込まれており、前記カバーの前記側面部は、前記回路基板を封止するように前記ケースの内側に充填されて硬化された封止樹脂によって前記ケースに固定されていることを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記カバーは、その前記側面部が前記ケースの前記側面部に嵌め込まれた状態において前記ケースの前記側面部の外面と接触する接触部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記接触部は、前記カバーの前記側面部から分岐した分岐部に設けられ、前記カバーの前記側面部との間で、前記ケースの前記側面部を挟み込むことを特徴とする請求項2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
金属製のケースおよびカバーと、前記ケースおよび前記カバーにより形成される内部空間に収納される回路基板とを備える電子回路装置の製造方法であって、
前記ケースの内側に前記回路基板を配置した後、前記回路基板を封止するように前記ケースの内側に封止樹脂を充填する封止樹脂充填工程と、
前記カバーの前記側面部が前記ケースの前記側面部よりも内側に入り込んで前記封止樹脂に接触するように前記カバーを前記ケースに嵌め込む嵌合工程と、
前記封止樹脂を硬化させる硬化工程と、
を有することを特徴とする電子回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129344(P2012−129344A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279058(P2010−279058)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】