説明

電子回路部品

【課題】初期化や動作確認、検査などの特定の処理が完了したか否かを簡便に判別することができる電子回路部品の提供。
【解決手段】CPUの制御により初期化、動作確認若しくは検査などの特定の処理が実行される第1素子と、前記特定の処理が完了した後にCPUの制御により動作して温度が上昇する第2素子と、を含む電子回路部品において、前記第2素子の上面に、当該第2素子を動作させる前の第1温度と動作させた時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、前記感熱部材の形態により、前記第1素子に対する前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路部品に関し、特に、初期化や動作確認、検査などの特定の処理が実行される電子回路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
装置に組み込まれる電子回路部品は、モジュールとして製造されている。この電子回路部品は、プリント基板上に複数の素子が搭載されており、工場から出荷される前に初期化や動作確認、検査などの特定の処理が行われる。例えば、不揮発性メモリが搭載される電子回路部品の場合は、記憶領域の初期化が行われる。
【0003】
この初期化の処理は、搭載されている不揮発性メモリの容量によっては時間がかかる場合があり、初期化の途中で不用意に電源を落としてしまう恐れがある。この場合、次回の電源投入時に、プリント基板上のCPU(Central Processing Unit)は不揮発性メモリの内容が破棄されたと判断して、再度、不揮発性メモリの初期化を最初から実施するため、より多くの時間がかかってしまう。
【0004】
このような特定の処理の途中に電源を落としてしまうという問題を防止するためには、電子回路部品にオペレータパネルを接続したり、表示用のLED(Light Emitting Diode)を搭載したりして、特定の処理が完了したことをユーザに通知する必要があるが、オペレータパネルの接続は着脱の煩わしさが有り、LEDの搭載は余分なコストが発生するというデメリットがある。
【0005】
また、上記方法では、オペレータパネルやLEDの表示を確認することにより特定の処理が完了したことが判別できるが、プリント基板単体では、それが処理済みのボードであるのか、未処理のボードであるのかを判断することができない。そこで、オペレータパネルやLEDの表示結果に基づいてオペレータがプリント基板上に特定の処理が完了したことを示すマーキングを行なう方法も用いられるが、この方法では人為的なオペレーションミスの可能性がつきまとう。
【0006】
また、別の方法として、例えば、下記特許文献1には、部品類が実装されたプリント板に、温度に依存して変色する感熱シールを被せ、前記プリント板の所定の配線パターンに通電し、前記感熱シールを変色させて変色パターンを形成し、前記変色パターンの変色度合いを、良品プリント板によって変色させた標準パターンと比較して良否を判定するプリント板の外観検査法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−107212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、検査対象となるプリント基板の変色パターンと良品のプリント基板の変色パターンとを比較しないと、そのボードが良品であるかどうかを外見から判断することができないため、検査が完了したかどうかを簡便に判別することができないという問題がある。
【0009】
また、感熱シールでプリント基板全体を覆ったままとすると、プリント基板全体の厚みが増し、複数のプリント基板を高密度に実装することができない。また、感熱シールが他のプリント基板の素子に接触して破損や断線、ショートの原因になる恐れもある。そのため、感熱シールは検査終了後に取り外す工程が必要になるが、プリント基板全体を覆う感熱シールは取り外しが容易ではなく、取り外しの際にプリント基板上の素子に不具合が生じる可能性もある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、初期化や動作確認、検査などの特定の処理が完了したか否かを簡便に判別することができる電子回路部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、特定の処理が完了した後の動作により温度が上昇する素子を含む電子回路部品において、前記素子の上面に、当該素子の動作前の第1温度と動作時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、前記感熱部材の形態により、前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となるものである。
【0012】
また、本発明は、CPUの制御により特定の処理が実行される第1素子と、前記特定の処理が完了した後にCPUの制御により動作して温度が上昇する第2素子と、を含む電子回路部品において、前記第2素子の上面に、当該第2素子を動作させる前の第1温度と動作させた時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、前記感熱部材の形態により、前記第1素子に対する前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となるものである。
【0013】
また、本発明は、発熱量が少ない第1の動作モードで特定の処理を実行した後、前記第1の動作モードよりも発熱量が多い第2の動作モードで他の処理を実行する素子を含む電子回路部品において、前記素子の上面に、当該素子を前記第1の動作モードで動作させた時の第1温度と前記第2の動作モードで動作させた時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、前記感熱部材の形態により、前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となるものであり、前記素子は、前記特定の処理に成功した場合に前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに移行し、所定時間経過後の前記感熱部材の形態により、前記特定の処理の結果が判別可能となる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子回路部品によれば、オペレータパネルを接続したり、表示用LEDを追加したり、手動でマーキングしなくても、初期化や動作確認、検査などの特定の処理が完了したかが分かるため、特定の処理の途中で電源を落としてしまうような作業ミスを防ぐことができる。また、感熱シールの変色パターンを比較したり、感熱シールを取り外したりする必要がないため、特定の処理が完了したかを簡便に判別することができる。
【0015】
その理由は、初期化や動作確認、検査などの特定の処理を行った後に動作させる素子を含む電子回路部品において、当該素子上に、温度上昇によって色などの形態が不可逆的に変化する感熱部材が配置されているため、感熱部材の形態を観察することによって特定の処理が完了したか否かを判別することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子回路部品の構成例を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る感熱部材の構成及び実装例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る電子回路部品(プリンタコントローラ)の構成例を示すブロック図である。
【図4】電子回路部品の電源投入時の通常処理を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る電子回路部品の最初の電源投入時の処理を示すフローチャート図である。
【図6】2つの動作モードで動作するCPUを含む電子回路部品の電源投入時の通常処理を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る電子回路部品の最初の電源投入時の処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
背景技術で示したように、電子回路部品は、工場から出荷される前に初期化や動作確認、検査などの特定の処理が行われるが、この特定の処理が完了したか否かを外観で判別することは困難である。そこで、オペレータパネルを接続したり、表示用のLEDを搭載したり、プリント基板全体を感熱シールで覆うなどの方法が用いられる。
【0018】
しかしながら、オペレータパネルを接続するのは煩雑であり、表示用のLEDを搭載すると余分なコストが発生する。また、プリント基板全体を感熱シールで覆う方法では、良品の変色パターンと比較しなければならないため、検査完了を簡便に判別することができないし、感熱シールを取り除くための余分な工程が発生し、感熱シールを取り除く際に不具合が生じる恐れもある。
【0019】
そこで、本発明の一実施の形態では、図1に示すように、プリント基板などの基板4上に、不揮発性メモリやCPUなど、初期化や動作確認、検査などの特定の処理が必要な素子(第1素子2)と、DC−DCコンバータなど、第1素子2に対する特定の処理が完了した後に動作させる素子(第2素子3)とが少なくとも搭載される電子回路部品1において、第2素子3上に、所定の温度に達すると不可逆的に色などの形態が変化する感熱部材5を配置しておく。
【0020】
そして、電子回路部品1の製造後、最初の電源投入時に実施される不揮発性メモリの初期化やCPUの動作確認などの特定の処理が完了したか否かを感熱部材の形態の変化により確認する。
【0021】
これにより、特定の処理の途中で電源を落とすことがなくなり、電子回路部品1単体で、特定の処理が完了したか否かを簡便に判別することができる。また、上記感熱部材5は第2素子3上のみに配置されており、感熱部材5を取り除かなくても問題は生じないため、余分な工数や不具合の発生を未然に防止することができる。
【0022】
なお、本発明の電子回路部品1は、初期化や動作確認、検査などの特定の処理が完了した後に動作させる素子を含んでいればよく、素子の数量や配置、構成などは任意である。例えば、第1素子2と第2素子3とは必ずしも別の素子である必要はなく、所定の素子を第1の動作モードで動作させて特定の処理を行った後、第2の動作モードで動作させる場合は、所定の素子を第1素子2と第2素子3とを兼ねる素子とすることもできる。
【0023】
また、第2素子3上に配置する感熱部材5は、第2素子3が動作することによる温度上昇により不可逆的に色などの形態が変化する部材であればよく、例えば、構成材料の化学的変化により色が変化(例えば、色素の化学反応により色が変化)する部材、構成材料の物理的変化により色が変化(例えば、膜厚の減少により色が変化)する部材などを使用することができる。
【0024】
また、感熱部材5の実装形態も任意であり、例えば、図2(a)に示すように、第2素子3の上面全面に配置してもよいし、図2(b)に示すように、第2素子3の上面の一部に配置してもよいし、図2(c)に示すように、第2素子3の周囲も覆う形状としてもよい。また、この感熱部材5は、裏面に粘着性部材を設けて第2素子3の上面に粘着させてもよいし、図2(d)に示すように、第2素子3に嵌合するキャップ形状としてもよい。また、この感熱部材5は、第2素子3上に直接配置してもよいし、図2(e)に示すように、熱伝導性部材6などの他の部材を介在させてもよい。また、感熱部材5は、可撓性を有するシート状としてもよいし、図2(f)に示すように、インク等の流動性を有する部材としてもよい。
【実施例1】
【0025】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の実施例1に係る電子回路部品について、図3乃至図5を参照して説明する。図3は、本実施例の電子回路部品(プリンタコントローラ)の構成を模式的に示すブロック図である。また、図4は、電子回路部品の電源投入時の通常処理を示すフローチャート図であり、図5は、本実施例の電子回路部品の最初の電源投入時の処理を示すフローチャート図である。
【0026】
図3に示すように、本実施例の電子回路部品は、プリンタや複合機などの画像形成装置を制御するプリンタコントローラであり、プリンタコントローラ10には、CPU12が搭載されており、CPU12は、周辺素子をコントロールする機能を備えたチップ(ノースチップ13と呼ぶ。)を介して、不揮発性メモリ11、FlashROM(Read Only Memory)14、RAM(Random Access Memory)などのメモリ15と接続されている。
【0027】
また、プリンタコントローラ10には、画像処理回路18を含む画像処理ASIC(Application Specific Integrated Circuit)17と、プリントエンジンへのビデオデータの出力を行なうビデオ出力ASIC19などのカスタムLSI(Large Scale Integration)が搭載されており、それぞれノースチップ13の汎用I/Fに接続されている。
【0028】
上記画像処理ASIC17とビデオ出力ASIC19は、実際の印刷処理を行なう際にしか動作しないため、装置の待機状態での待機電力を下げる目的で、電源制御素子(ここではDC−DCコンバータ16)が設けられており、このDC−DCコンバータ16をOFFすることで、電源の供給を停止する構成となっている。DC−DCコンバータ16をON/OFFする制御には、ノースチップ13のGPIO(General Purpose I/O)ポートが使用される。また、電源投入時はDC−DCコンバータ16がOFFとなるような論理になっている。
【0029】
プリンタコントローラ10に搭載されているDC−DCコンバータ16は、プリントコントローラ10の電源電圧(例えば、+3.3V)からASICコア電圧(例えば、+1.1V)を生成しているが、一般的に素子の電圧変換効率は90%程度であり、残りは熱エネルギーとなる。このため、DC−DCコンバータ16をONした場合にその表面温度は上昇し、50℃程度の温度となる。
【0030】
このように構成されるプリンタコントローラ10における、電源投入時の通常処理について、図4のフローチャート図を参照して説明する。
【0031】
プリンタコントローラ10に対して電源の供給が開始されると、CPU12は、ノースチップ13を介してFlashROM14からプログラムを読み出し、実行する。CPU12が、FlashROM14から読み出したプログラムにおいては、最初にメモリ15の構成をチェックして、RAMのリードライト実験を実施する。
【0032】
次に、CPU12は、ノースチップ13を介して不揮発性メモリ11の内容を読み出す(S101)。そして、不揮発性メモリ11の先頭のアドレスに初期化済みを示すバイナリコード(例えば、“0x00AA55FF”)が格納されているかをチェックし、もし、バイナリコードが格納されていれば(S102のYes)、続けて不揮発性メモリ11の全領域のチェックサムを計算し(S103)、チェックサム値が“0x0”になっているかの確認を行なう。
【0033】
もし、先頭アドレスにバイナリコードが格納されていないか(S102のNo)、あるいは全領域のチェックサム値が“0x0”になっていない場合(S104のNo)、CPU12は、不揮発性メモリ11の内容が壊れていると判断し、不揮発性メモリ11に対して初期化を実施する(S106)。
【0034】
そして、初期化が完了したら(S107のYes)、不揮発性メモリ11の先頭のアドレスに初期化済みを示すバイナリコード(例えば、“0x00AA55FF”)を書き込み(S108)、不揮発性メモリ11の先頭から最終アドレスの1つ手前までのチェックサムを計算し(S109)、不揮発性メモリ11の最終アドレスの位置に、全体のチェックサムが“0x0”になるような値を書き込む(S110)。
【0035】
不揮発性メモリ11のチェックが正常に終了したか(S104のYes)、あるいは初期化が完了した場合に、CPU12はノースチップ13のGPIOを操作して、DC−DCコンバータ16をONして、画像処理ASIC17とビデオ出力ASIC19の2つのLSIに対して電源供給を開始する(S105)。
【0036】
ここで問題となるのは、もし不揮発性メモリ11の初期化が行なわれた場合、オペレータパネルや表示のためのLEDが無い状態では、初期化が完了したかどうか外部から知る手段が無いということである。
【0037】
そこで、本実施例では、プリンタコントローラ10の製造の段階で、図1及び図2に示すように、第2素子3であるDC−DCコンバータ16の表面に、常温からDC−DCコンバータ16の通電時の温度(約50℃)に上昇する際に不可逆的に形態が変化する感熱部材5(ここでは色が変化する感熱シールとする。)を貼付しておく。
【0038】
図5に、DC−DCコンバータ16の表面に感熱シールを貼付したプリンタコントローラ10が製造された後、最初に電源投入された際の処理の流れを示す。
【0039】
この場合、不揮発性メモリ11は当然一度も初期化されていない状態なので、先頭アドレスに初期化済みを示すバイナリコード“0x00AA55FF”が格納されておらず、不揮発性メモリ11の初期処理の方へ処理が移行する(S202のNo)。
【0040】
そして、図4のフローチャート図と同様に、不揮発性メモリ11の初期処理が終了してからDC−DCコンバータ16がONされる(S206〜S211)。DC−DCコンバータ16がONすると、素子が発熱し、DC−DCコンバータ16表面に貼付した感熱シールが変色する。
【0041】
従って、オペレータは、DC−DCコンバータ16上に貼付されている感熱シールの変色を目視で確認することで(S212)、プリンタコントローラ10に搭載されている不揮発性メモリ11の初期化が完了したことを知ることができ、不揮発性メモリ11の初期化の途中で誤って電源を落とすような作業ミスを防ぐことができる。
【0042】
また、上記感熱シールは、一度変色するとその状態を保持するため、プリンタコントローラ10単体であっても、不揮発性メモリ11の初期化が完了しているか(この場合、少なくともLSIへの通電処理までの一連の処理が正常に実施されているか)を知ることができる。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明の第2の実施例に係る電子回路部品について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、電子回路部品の電源投入時の通常処理を示すフローチャート図であり、図7は、本実施例の電子回路部品の最初の電源投入時の処理を示すフローチャート図である。
【0044】
前記した第1の実施例では、DC−DCコンバータ16の温度変化を利用する場合について説明したが、最近のCPUでは処理の負荷に応じて内部の動作クロックを可変できるものがあり、動作クロックが変わるとそれに伴って発熱量も変化するため、CPUの温度変化を利用することも可能である。
【0045】
以下、その手法について説明するが、まず、低い周波数で動作する第1の動作モードと最高速の周波数で動作する第2の動作モードとが存在するCPU12が搭載されたプリンタコントローラ10における、電源投入時の通常処理について、図6のフローチャート図を参照して説明する。
【0046】
プリンタコントローラ10に対して電源の供給が開始されると、CPU12は、低速で発熱量の小さい第1の動作モードで動作し(S301)、ノースチップ13を介して不揮発性メモリ11の内容を読み出す(S302)。そして、不揮発性メモリ11の先頭のアドレスに初期化済みを示すバイナリコード(例えば、“0x00AA55FF”)が格納されているかをチェックし、もし、バイナリコードが格納されていれば(S303のYes)、不揮発性メモリ11の全領域のチェックサムを計算し(S304)、チェックサム値が“0x0”になっているかの確認を行なう。
【0047】
先頭アドレスにバイナリコードが格納されていないか(S303のNo)、あるいは全領域のチェックサム値が“0x0”になっていない場合(S305のNo)、CPU12は、不揮発性メモリ11に対して初期化を実施する(S307)。
【0048】
そして、初期化が完了したら(S308のYes)、不揮発性メモリ11の先頭のアドレスに初期化済みを示すバイナリコード(例えば、“0x00AA55FF”)を書き込み(S309)、不揮発性メモリ11の先頭から最終アドレスの1つ手前までのチェックサムを計算し(S310)、不揮発性メモリ11の最終アドレスの位置に、全体のチェックサムが“0x0”になるような値を書き込む(S311)。
【0049】
不揮発性メモリ11のチェックが正常に終了したか(S305のYes)、あるいは初期化が完了した場合に、CPU12は、高速で発熱量の大きい第2の動作モードで動作する(S306)。
【0050】
ここで、前記した実施例1では、DC−DCコンバータ16の表面に感熱シールを貼付したが、この構成では、不揮発性メモリ11の初期化が完了した後にDC−DCコンバータ16に通電しないと、初期化が完了したか否かを知ることができない。そこで、本実施例では、第1の動作モードの温度では変色せず、第2の動作モード温度で変色する感熱シールをCPU12上に貼付しておく。
【0051】
図7に、CPU12の表面に感熱シールを貼付したプリンタコントローラ10が製造された後、最初に電源投入された際の処理の流れを示す。
【0052】
この場合、不揮発性メモリ11は当然一度も初期化されていない状態なので、先頭アドレスに初期化済みを示すバイナリコード“0x00AA55FF”が格納されておらず、不揮発性メモリ11の初期処理の方へ処理が移行する(S403のNo)。
【0053】
そして、図6のフローチャート図と同様に、不揮発性メモリ11の初期処理が終了してから、CPU12を、高速で発熱量の大きい第2の動作モードで動作させる(S408〜S413)。CPU12が第2の動作モードで動作すると、素子が発熱し、CPU12表面に貼付した感熱シールが変色する。
【0054】
従って、オペレータは、CPU12上に貼付されている感熱シールの変色を確認することで(S414)、プリンタコントローラ10に搭載されている不揮発性メモリ11の初期化が完了したことを知ることができ、不揮発性メモリ11の初期化の途中で誤って電源を落とすような作業ミスを防ぐことができる。
【0055】
また、上記感熱シールは、一度変色するとその状態を保持する為、プリンタコントローラ10単体であっても、不揮発性メモリ11の初期化が完了しているか(この場合、少なくともCPU12の動作モードが第2の動作モードに移行したか)を知ることができる。
【0056】
なお、上記説明では、感熱シールの変色により不揮発性メモリ11の初期化が完了しているかを判定する構成としたが、プリント基板に対して電源が供給された直後に、CPU12が、ボード上に搭載されている各素子に対して自己診断を実施し、全ての素子に対して自己診断の結果が正常であると判断した時点で次の処理に移行する場合においても、感熱シールを利用することができる。
【0057】
例えば、CPU12が起動した際に、プリント基板全体の動作チェック(自己診断)については第1の動作モードで実行し、すべての自己診断の項目が正常であった場合のみ第2の動作モードに移行する制御を行なうようにすれば、感熱シールに変色によって自己診断が正常に終了したことを検出することができる。
【0058】
以上、電子回路部品としてプリンタコントローラを例にして説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、初期化や動作確認、検査などの特定の処理が必要な素子と、その素子に対する特定の処理後に動作して熱を発生させる素子(同じ素子でも異なる素子でもよい。)と、を含む任意の電子回路部品に対して同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、基板上に素子が搭載された電子回路部品、特に、画像形成装置を制御するプリンタコントローラに利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 電子回路部品
2 第1素子
3 第2素子
4 基板
5 感熱部材
6 熱伝導性部材
10 プリンタコントローラ
11 不揮発性メモリ
12 CPU
13 ノースチップ
14 Flash ROM
15 メモリ
16 DC−DCコンバータ
17 画像処理ASIC
18 画像処理回路
19 ビデオ出力ASIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の処理が完了した後の動作により温度が上昇する素子を含む電子回路部品において、
前記素子の上面に、当該素子の動作前の第1温度と動作時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、
前記感熱部材の形態により、前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となる、ことを特徴とする電子回路部品。
【請求項2】
CPUの制御により特定の処理が実行される第1素子と、前記特定の処理が完了した後に、CPUの制御により動作して温度が上昇する第2素子と、を含む電子回路部品において、
前記第2素子の上面に、当該第2素子を動作させる前の第1温度と動作させた時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、
前記感熱部材の形態により、前記第1素子に対する前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となる、ことを特徴とする電子回路部品。
【請求項3】
発熱量が少ない第1の動作モードで特定の処理を実行した後、前記第1の動作モードよりも発熱量が多い第2の動作モードで他の処理を実行する素子を含む電子回路部品において、
前記素子の上面に、当該素子を前記第1の動作モードで動作させた時の第1温度と前記第2の動作モードで動作させた時の第2温度とでその形態が不可逆的に変化する感熱部材が貼付若しくは塗布され、
前記感熱部材の形態により、前記特定の処理が完了したか否かが判別可能となる、ことを特徴とする電子回路部品。
【請求項4】
前記素子は、前記特定の処理に成功した場合に前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに移行し、
所定時間経過後の前記感熱部材の形態により、前記特定の処理の結果が判別可能となる、ことを特徴とする請求項3に記載の電子回路部品。
【請求項5】
前記感熱部材は、化学的若しくは物理的変化により色が変化するシール状若しくはインク状の部材である、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の電子回路部品。
【請求項6】
前記特定の処理は、初期化、動作確認若しくは検査のいずれかの処理である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の電子回路部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−95031(P2011−95031A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247605(P2009−247605)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】