説明

電子回路

【課題】制御ICの有効利用を図る。
【解決手段】電源からの電圧を昇圧回路で昇圧して直列接続されたn個のLEDに供給する電子回路における昇圧回路のトランジスターをスイッチング制御するためのパルス信号を出力する制御IC30を使用し、直流電源22とLED24とを接続する電力ライン25にトランジスター(MOSFET)40を設け、制御IC30のDRV端子とトランジスター40のゲートとに積分回路50を接続し、積分回路50によりトランジスター40をリニア素子として動作させる。これにより、制御IC30を高電圧負荷駆動用のICとして用いることができると共に低電圧負荷駆動用のICとしても用いることができ、制御IC30に汎用性を持たせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と高電圧負荷と該電源の電圧を昇圧して前記高電圧負荷に供給する昇圧回路とを備える高電圧負荷駆動用の電子回路における前記昇圧回路が有するスイッチング素子をスイッチング制御するためのパルス信号を出力するパルス出力装置を用いて、低電圧負荷を駆動する低電圧負荷駆動用の電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子回路としては、電源と、電源の電圧よりも動作電圧が高い負荷(複数のLED)と、電源の電圧を昇圧して負荷に供給する昇圧回路と、昇圧回路を制御する制御回路とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この回路では、制御回路によりPWM信号(パルス信号)を生成し、昇圧回路が備えるスイッチング素子(FET)に出力することにより、スイッチング素子をスイッチング制御して電源の電圧を負荷の動作電圧にまで昇圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−318881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御回路の有効利用を図る上で、動作電圧のみ異なる負荷に対しても同じ制御回路を用いることが望ましい。しかしながら、単に上述した電子回路に負荷のみを置き換えるものとすると、昇圧回路の特性上、スイッチング素子をオフしているときでも電源はコイルとダイオードを介して負荷に接続されるため、負荷に微弱な電流が流れ、負荷の動作電圧によっては誤動作を起こすおそれがある。
【0005】
本発明の電子回路は、パルス出力装置に汎用性を持たせ、装置の有効利用を図ることを主目的とする。
【0006】
本発明の電子回路は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子回路は、
電源と高電圧負荷と該電源の電圧を昇圧して前記高電圧負荷に供給する昇圧回路とを備える高電圧負荷駆動用の電子回路における前記昇圧回路が有するスイッチング素子をスイッチング制御するためのパルス信号を出力するパルス出力装置を用いて、低電圧負荷を駆動する低電圧負荷駆動用の電子回路であって、
前記パルス出力装置からのパルス信号を入力して積分する積分回路と、
前記電源と前記低電圧負荷とを接続する電力ラインに取り付けられ、前記積分回路の出力によりリニア動作する素子と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電子回路では、電源と高電圧負荷と電源の電圧を昇圧して高電圧負荷に供給する昇圧回路とを備える高電圧負荷駆動用の電子回路における昇圧回路が有するスイッチング素子をスイッチング制御するためのパルス信号を出力するパルス出力装置を用いて、このパルス出力装置からのパルス信号を入力して積分する積分回路を設けると共に、電源と低電圧負荷とを接続する電力ラインに積分回路の出力によりリニア動作する素子を取り付けることにより、低電圧負荷を駆動する低電圧負荷駆動用の電子回路として構成する。これにより、パルス出力装置を高電圧負荷駆動用の電子回路と低電圧負荷駆動用の電子回路で共用することができるから、パルス出力装置に汎用性を持たせることができ、装置の有効利用を図ることができる。ここで、「素子」には、MOSFETが含まれる。
【0009】
こうした本発明の電子回路において、前記パルス出力装置は、前記高電圧負荷駆動用の電子回路における前記高電圧負荷を流れる電流を直接または間接に検出してフィードバック制御するための第1の誤差増幅器を備え、前記第1の誤差増幅器は、前記低電圧負荷を流れる電流を直接または間接に検出してフィードバック制御するために用いられるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の電子回路において、前記パルス出力装置は、前記高電圧負荷駆動用の電子回路における前記昇圧回路のスイッチング素子を流れる電流を監視するための第2の誤差増幅器を備え、前記第2の誤差増幅器は、グランドに接地されてなるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の低電圧負荷駆動用の電子回路20の構成の概略を示す構成図。
【図2】高電圧負荷駆動用の電子回路120の構成の概略を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である低電圧負荷駆動用の電子回路20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、高電圧負荷駆動用の電子回路120の構成の概略を示す構成図である。
【0013】
本実施形態の電子回路20は、負荷の動作電圧が電源電圧よりも高い高電圧負荷駆動用の制御IC30を用いて負荷の動作電圧が電源電圧よりも低い低電圧負荷を駆動するための回路、例えば、液晶ディスプレーのバックライト用に搭載された直列接続のn個の発光ダイオード(LED)を点灯させるための制御ICを用いて同様にバックライト用に搭載された1個の発光ダイオードを点灯させるための回路として構成されている。まず、高電圧負荷駆動用の電子回路120について説明し、その後に、本実施形態の低電圧負荷駆動用の電子回路20について説明する。
【0014】
高電圧負荷駆動用の電子回路120は、図2に示すように、回路全体の制御を司る制御IC30と、+5V(或いは3.3V)の直流電源122と、負荷として直列接続されたn個のLED124a〜124xと、直流電源22とLED124a〜124xとの間に介在しスイッチング素子としてのトランジスター(例えばPチャンネルMOSFET)148のスイッチングにより直流電源22からの直流電圧を昇圧してLED124a〜124xに供給する昇圧回路140と、LED124a〜124xに接続された電流検出用の抵抗126と、トランジスター148に接続された電流検出用の抵抗128とを備える。なお、LED124a〜124xは、1灯あたりの動作電圧が3V〜3.5Vとなっており、直列接続された複数のLED124a〜124xを点灯させるためには、昇圧回路140により電源122の電圧を昇圧する必要がある。
【0015】
昇圧回路140は、直流電源122に接続されたコイル142と、コイル142とLED124a〜124xとに接続されたダイオード144と、コイル142とダイオード144との接続点と抵抗128とにドレインとソースが接続されたスイッチング素子としてのトランジスター(MOSFET)148と、電源122から見てLED124a〜124xに並列接続された平滑用のコンデンサー146とにより構成されている。
【0016】
制御IC30は、PWM信号(パルス信号)を用いて昇圧回路140のトランジスター148をスイッチングするためのICチップとして構成されており、基準電圧が0.1Vの基準電源31と、IS端子(電流検出用端子)から入力された入力電圧と基準電圧とを比較してその誤差を増幅して出力する誤差増幅器32と、FB端子(電流フィードバック制御用端子)から入力された入力電圧と基準電圧とを比較してその誤差を増幅して出力する誤差増幅器34と、電圧指令を生成すると共に生成した電圧指令の振幅と三角波発振器からの三角波の振幅とをコンパレータによって比較することにより電圧指令を変調してPWM信号を生成するPWM回路36と、DRV端子にトランジスター148のゲートが接続されPWM回路36で生成したPWM信号に従ってトランジスター148のゲートにパルス電圧を作用させることによりトランジスター148をドライブするドライブ回路38と、を備える。この制御IC30では、誤差増幅器34で出力された誤差が打ち消されるようPWM回路36で電圧指令を生成すると共にPWM信号を生成しており、生成したPWM信号を用いてドライブ回路38によりトランジスタ148をスイッチング制御することにより、LED124a〜124xを流れる電流をフィードバック制御により制御している。また、制御IC30は、誤差増幅器32で出力された誤差が閾値を超えると、LED124a〜124xに許容範囲を超える電流が流れていると判断して、PWM回路36で生成する電圧指令に制限を加えることにより、回路の保護を図っている。
【0017】
本実施形態の電子回路20は、図1に示すように、上述した制御IC30と、+5V(或いは+3.3V)の直流電源22と、直流電源22に接続された負荷としての1個のLED24と、直流電源22とLED24とを接続する電力ライン25にドレインとソースが接続されたトランジスター(例えばPチャンネルMOSFET)40と、電力ライン25に接続された電流検出用の抵抗26と、制御IC30のDRV端子とトランジスター40のゲートとの間に接続された積分回路50と、を備える。
【0018】
積分回路50は、抵抗52とコンデンサー54とを直列に接続し、コンデンサー54を出力とする周知のRC回路である。この積分回路50は、制御IC30からのパルス信号(パルス電圧)を積算して直流信号としてトランジスター(MOSFET)40のゲートに印加することにより、トランジスター40がリニア素子として動作するよう比較的大きな時定数τ(抵抗52の抵抗値とコンデンサー54の静電容量)が定められている。
【0019】
本実施形態の電子回路20では、制御IC30のFB端子がトランジスター40と抵抗26との接続点に接続され、IS端子がグランドに接地されており、FB端子の入力電圧を誤差増幅器34に入力すると共に入力電圧と基準電圧との誤差を増幅し、誤差増幅器34からの誤差が打ち消されるようPWM回路36で電圧指令を生成して三角波との比較によりPWM信号を生成し、ドライブ回路38でパルス信号として積分回路50に出力することにより、負荷としてのLED24を流れる電流が定電流となるようフィードバック制御する。なお、このフィードバック制御を適切に行なうために、制御IC30は比較的高い精度(例えば、誤差が±0.2%程度)で電流検出できるよう設計されている。
【0020】
このように、本実施形態では、電源電圧に対して昇圧が必要な高電圧の負荷である複数のLED124a〜124xを点灯させるために昇圧回路140のトランジスター148にスイッチング用のパルス信号を出力する制御IC30を用いて、電源電圧に対して昇圧不要の負荷である1個のLED24を点灯させるために、電源22とLED24とを接続する電力ライン25にトランジスター(MOSFET)40を取り付け、制御IC30からのパルス信号を積分回路50を介してトランジスター40に出力することにより、トランジスター40をリニア素子として動作させているのである。これにより、制御IC30を、高電圧負荷の駆動に用いることができると共に低電圧負荷の駆動にも用いることができるから、ICに汎用性を持たせることができる。
【0021】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の1個のLED24が「低電圧負荷」に相当し、直列接続されたn個のLED124a〜124xが「高電圧負荷」に相当し、制御IC30が「パルス出力装置」に相当し、積分回路50が本発明の「積分回路」に相当し、トランジスター(MOSFET)40が「素子」に相当する。
【0022】
以上説明した実施例の電子回路20によれば、電源122からの電圧を昇圧回路140で昇圧して直列接続されたn個のLED124a〜124xに供給する電子回路120における昇圧回路140のトランジスター148をスイッチング制御するためのパルス信号を出力する制御IC30を使用し、直流電源22とLED24とを接続する電力ライン25にトランジスター(MOSFET)40を設け、制御IC30のDRV端子とトランジスター40のゲートとに積分回路50を接続し、制御IC30からのパルス信号を積分回路50を介してトランジスター40のゲートに出力することにより、トランジスター40をリニア素子として動作させるから、制御IC30を高電圧負荷駆動用のICとして用いることができると共に低電圧負荷駆動用のICとしても用いることができる。この結果、制御IC30に汎用性を持たせることができ、その有効利用を図ることができる。
【0023】
上述した実施形態では、パルス信号を出力する制御IC30を、1個のLED24を点灯させる1灯用と直列接続されたn個のLED124a〜124xを点灯させる多灯用とで共用する場合を例に説明したが、これに限られず、高電圧負荷と低電圧負荷とで共用することができる如何なる負荷に適用するものとしてもよい。
【0024】
上述した実施形態では、制御IC30のDRV端子を積分回路50を介して接続することにより制御IC30からのパルス信号を用いてリニア動作させる素子としてMOSFET(トランジスター40)を用いるものとしたが、これに限られず、制御IC30からのパルス信号によりリニア動作できる素子であれば如何なる素子(スイッチング素子)であっても構わない。
【0025】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
20,120 電子回路、22,122 直流電源、24,124a〜124x LED、26,126,128 抵抗、30 制御IC、31 基準電源、32,34 誤差増幅器、36 PWM回路、38 ドライブ回路、40 トランジスター(MOSFET)、50 積分回路、52 抵抗、54 コンデンサー、140 昇圧回路、142 コイル、144 ダイオード、146 コンデンサー、148 トランジスター(MOSFET)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と高電圧負荷と該電源の電圧を昇圧して前記高電圧負荷に供給する昇圧回路とを備える高電圧負荷駆動用の電子回路における前記昇圧回路が有するスイッチング素子をスイッチング制御するためのパルス信号を出力するパルス出力装置を用いて、低電圧負荷を駆動する低電圧負荷駆動用の電子回路であって、
前記パルス出力装置からのパルス信号を入力して積分する積分回路と、
前記電源と前記低電圧負荷とを接続する電力ラインに取り付けられ、前記積分回路の出力によりリニア動作する素子と、
を備える電子回路。
【請求項2】
請求項1記載の電子回路であって、
前記パルス出力装置は、前記高電圧負荷駆動用の電子回路における前記高電圧負荷を流れる電流を直接または間接に検出してフィードバック制御するための第1の誤差増幅器を備え、
前記第1の誤差増幅器は、前記低電圧負荷を流れる電流を直接または間接に検出してフィードバック制御するために用いられる
電子回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の電子回路であって、
前記パルス出力装置は、前記高電圧負荷駆動用の電子回路における前記昇圧回路のスイッチング素子を流れる電流を監視するための第2の誤差増幅器を備え、
前記第2の誤差増幅器は、グランドに接地されてなる
電子回路。
【請求項4】
前記素子は、MOSFETである請求項1ないし3いずれか1項に記載の電子回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−130553(P2011−130553A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285144(P2009−285144)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】