説明

電子媒体、電子媒体における電力供給方法

【課題】消費電力を少なくしつつ、電力供給のオフ時の誤作動等も防ぐことができる表示機能付きICカードなどの電子媒体等を提供する。
【解決手段】表示機能付きICカード1では、プッシュスイッチであるスイッチ4と電子スイッチ27aが電源25と制御部21の間で並列に接続され、スイッチ4のオンにより、電源25から制御部21に電力が供給されて制御部21が起動し、起動した制御部21の制御により電子スイッチ27aがオンとなり、スイッチ4がオフとなった場合でも電力供給が維持される。制御部21は、所定のプログラムを実行した後にシャットダウンし電子スイッチ27aをオフとするとともに電子スイッチ27bをオンとし、非動作時の電力供給を遮断する。さらに、電子スイッチ27bがオンとなることで、制御部21とグランド26とが接続され、制御部21の電圧が急速に降下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示機能付きICカード等の電子媒体、および電子媒体における電力供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IC(Integrated Circuit)カード本体に様々な機能を備えたものが開発されている。このような機能付きICカードのひとつに、接触式、あるいは非接触式通信により取得した電子マネー残額等のデータをICチップに記憶し、これを表示用CPU等の制御部の制御によりディスプレイに表示する表示機能付きICカードがある(特許文献1参照)。
【0003】
このようなICカードでは、従来、機械接点式のプッシュスイッチをオンとすることにより起動した制御部による処理が行われる。図6はその例を示す図である。図6において、101は制御部、103はプッシュスイッチ、105は電源を示す。
【0004】
制御部101は、非動作時には電池等の電源105からスタンバイ電流を受けてスタンバイ状態にあるが、プッシュスイッチ103を押下すると信号を受けて起動し、ICチップに記憶された電子マネー残額等のデータを表示するなどの処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−133563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような表示機能付きICカードについては、電池の長寿命化等の観点から、できるだけ省電力としつつ動作することが求められる。しかし、上記の方法では、スイッチがオフ状態の場合でもスタンバイ電流を供給しており、電力が消費されている。
スタンバイ電流を消費しない構成として、スライド式のスイッチなどを用いて電力供給のオン、オフを動作時と非動作時で完全に切り替えることも考えられるが、ICカードのような薄いものでは搭載できるスイッチは限られ、例えばスライド式スイッチを搭載することは難しい。
【0007】
また、このような表示機能付きICカードでは、制御部101への電力供給をオフとする際に、制御部101の電圧を迅速に降下させることも求められる。
すなわち、制御部101は、マイコン回路等で構成されるが、マイコン回路にはグランドとの間で大きな容量成分が接続されていることが多く、このため電力供給をオフとした場合でも制御部101の電圧降下が緩やかになる場合がある。制御部101には最低動作電圧が設定されており、電圧降下が緩やかになると最低動作電圧近辺の電圧値となる時間が長くなるため、制御部101の誤作動の原因となる可能性がある。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、消費電力を少なくしつつ、電力供給のオフ時の誤作動等も防ぐことができる表示機能付きICカードなどの電子媒体等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための第1の発明は、電源と、制御部と、押下されている場合にオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給されるプッシュスイッチと、前記制御部による制御によりオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給され、前記制御部による制御によりオフとなり前記電源から前記制御部への電力供給が遮断される第1の電子スイッチと、オンとなることにより前記制御部がグランドに接続される第2の電子スイッチと、を具備し、前記プッシュスイッチと前記第1の電子スイッチが前記電源と前記制御部の間で並列に接続され、前記プッシュスイッチのオンにより、前記電源から前記制御部に電力が供給されて前記制御部が起動し、起動した前記制御部の制御により前記第1の電子スイッチがオンとなり、前記制御部が所定のプログラムを実行した後にシャットダウンし前記第1の電子スイッチをオフとするとともに前記第2の電子スイッチがオンとなることを特徴とする電子媒体である。
【0010】
前記第1の電子スイッチが、前記制御部の制御により制御入力トランジスタがオンとなることによりスイッチトランジスタがオンとなることで、前記電源から前記制御部への電力供給が行われるハイサイドスイッチであり、前記制御入力トランジスタおよび前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることが望ましい。
【0011】
さらに、前記第2の電子スイッチがスイッチトランジスタであり、前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることが望ましい。
【0012】
また、前記電子媒体が、ICチップと表示部を更に具備した表示機能付きICカードであり、前記所定のプログラムを実行することにより、前記ICチップに記憶されたデータが前記表示部に表示されることが望ましい。
【0013】
前述した目的を達成するための第2の発明は、電源と、制御部と、押下されている場合にオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給されるプッシュスイッチと、前記制御部による制御によりオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給され、前記制御部による制御によりオフとなり前記電源から前記制御部への電力供給が遮断される第1の電子スイッチと、オンとなることにより前記制御部がグランドに接続される第2の電子スイッチと、を具備し、前記プッシュスイッチと前記第1の電子スイッチが前記電源と前記制御部の間で並列に接続される電子媒体における電力供給方法であって、前記プッシュスイッチのオンにより、前記電源から前記制御部に電力が供給されて前記制御部が起動し、起動した前記制御部の制御により前記第1の電子スイッチがオンとなり、前記制御部が所定のプログラムを実行した後にシャットダウンし前記第1の電子スイッチをオフとするとともに前記第2の電子スイッチがオンとなることを特徴とする電子媒体における電力供給方法である。
【0014】
前記第1の電子スイッチが、前記制御部の制御により制御入力トランジスタがオンとなることによりスイッチトランジスタがオンとなることで、前記電源から前記制御部への電力供給が行われるハイサイドスイッチであり、前記制御入力トランジスタおよび前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることが望ましい。
【0015】
また、前記第2の電子スイッチがスイッチトランジスタであり、前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることが望ましい。
【0016】
前記電子媒体が、ICチップと表示部を更に具備した表示機能付きICカードであり、前記所定のプログラムを実行することにより、前記ICチップに記憶されたデータが前記表示部に表示されることが望ましい。
【0017】
上記の構成により、電子媒体は、制御部の非動作時の電源からのスタンバイ電流を省略しつつ、動作時には、プッシュスイッチのオンにより電力供給を受けた制御部の制御により、第1の電子スイッチをオンとして、プッシュスイッチをオフとした場合の電力供給を確保する。そして、所定のプログラムを実行して処理を終了すると第1の電子スイッチをオフとするとともに、第2の電子スイッチをオンとして制御部をグランドに接続する。
これにより、スタンバイ時の消費電力を削減しつつ、プッシュスイッチのオンに伴う、制御部による処理を可能とする。さらに、第1の電子スイッチをオフとして電力供給を遮断した際に第2の電子スイッチがオンとなり制御部がグランドに接続されるので、制御部の電圧がすばやくグラウンドレベルにまで低下し、前記したような制御部の誤作動等を防ぐことができる。
【0018】
また、第1の電子スイッチをハイサイドスイッチとし、これを構成するトランジスタに小信号用のMOSトランジスタを用いることで、バイアス電流などスイッチ制御にかかる消費電力を小さくでき、また、非動作時のリーク電流も抑えることができる。
さらに、第2の電子スイッチとしても小信号用のMOSトランジスタを用いることで、上記と同様、スイッチ制御にかかる消費電力を小さくでき、非動作時のリーク電流を抑えることができる。
加えて、電子媒体において、制御部によるプログラムの実行によりICチップに記憶されたデータを表示部に表示する処理を行うことで、少ない電力で動作する表示機能付きICカードが構成できる。表示機能付きICカードは、一般的に薄型のものとするため簡易な構成のプッシュスイッチを設けることが求められ、上記のような省電力化の方法が特に効果的である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、消費電力を少なくしつつ、電力供給のオフ時の誤作動等も防ぐことができる表示機能付きICカードなどの電子媒体等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】表示機能付きICカード1の外観図
【図2】表示機能付きICカード1の構成を示す図
【図3】電力供給方法の流れを示す図
【図4】スイッチ4と電子スイッチ27a、27bの概略構成について示す図
【図5】電子スイッチ回路27の例を示す図
【図6】従来の制御部101、プッシュスイッチ103、電源105の概略構成について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る表示機能付きICカード1(電子媒体)の外観について説明する。
【0022】
図1に示す表示機能付きICカード1は、非接触式および接触式の通信を行うことによりICチップに電子マネー残額等のデータを記録し、制御部の制御により当該データを表示するものであり、カード本体2の表面にディスプレイ3、スイッチ4、接触式の通信を行なうための接触端子5を有する。なお、これらの配置は図1に示すものに限られることはない。
【0023】
ディスプレイ3は、例えば液晶ディスプレイ、電子ペーパ等であり、文字等のデータを表示する。
スイッチ4は、機械接点式のプッシュスイッチである。
接触端子5は、接触式の通信を行う際に外部のリーダライタの端子と接触するもので、接触式の通信を行なう際は、接触端子5を介してデータやICチップの駆動用の電力が供給される。
【0024】
図2は、表示機能付きICカード1の構成を示す図である。表示機能付きICカード1は、制御部21、ディスプレイドライバ23、ディスプレイ3、電源25、スイッチ4、電子スイッチ回路27、ICチップ28、アンテナ29等を有する。
【0025】
制御部21は、電源25からの電力供給を受けてディスプレイ3へのデータの表示等を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)等のメモリや、外部入出力端子等がワンチップ化されたマイコンなどによるマイコン回路等で構成される。ROM等には、後述する電力供給方法に従って制御を行うためのプログラムや、種々の処理を実行し表示機能付きICカード1の機能を果たすための所定のプログラムが格納される。
【0026】
ディスプレイドライバ23は、ディスプレイ3と接続し、制御部21による制御に従い、ディスプレイ3を駆動する。ディスプレイ3は、制御部21による制御に従い、データの表示を行なう。
【0027】
電源25は、制御部21に電力を供給する電池であり、一次電池、二次電池等、その種類は問わない。
【0028】
スイッチ4は、前記したように機械接点式のプッシュスイッチであり、触れて押下している場合にオン状態となり、電源25から制御部21へ電力が供給される。スイッチ4を離し押下を解除するとオフとなる。
【0029】
電子スイッチ回路27は、電子スイッチ27a(第1の電子スイッチ)と電子スイッチ27b(第2の電子スイッチ)を含む。
【0030】
電子スイッチ27aは、ハイサイドスイッチであり、電源25から制御部21へ電力を供給するためのスイッチである。制御部21の非動作時にはオフ状態であるが、スイッチ4のオンにより電力を供給された制御部21の制御によりオン状態となり、電源25から制御部21に電力を供給する。制御部21のシャットダウン動作時には制御部21によりオフ状態とされ、電力供給が遮断される。
スイッチ4と電子スイッチ27aは、制御部21と電源25の間で並列に接続される。
【0031】
電子スイッチ27bは、制御部21とグランドとを接続するためのスイッチである。電子スイッチ27bは、前記の電子スイッチ27aがオン状態となるとともにオフ状態となり、制御部21とグランドとの接続が遮断される。また、前記の電子スイッチ27aがオフ状態となるとともにオン状態となり、制御部21とグランドとが接続される。
【0032】
ICチップ28は、CPU、ROM、RAM、EEPROM等を備える。ICチップ28は、非接触式および接触式の通信を行うためのインタフェースを有するデュアルインタフェースICチップである。
ICチップ28は、外部のカードリーダライタとの間で通信を行い、ROMに格納されたプログラムに従ってデータ処理を実行する。例えば、電子マネー残額等のデータをカードリーダライタから受信し、EEPROMに保存する。
【0033】
アンテナ29は、ICチップ28がカードリーダライタと非接触式の通信を行なうためのアンテナである。ICチップ28の通信時、アンテナ29はリーダライタから生じている磁界により交流電圧を発生し、これによりICチップ28が駆動する。アンテナ29は、カード本体2の内部を周回して設けられ、その両端がICチップ28に接続される。
【0034】
次に、図3、図4を用いて、電源25から制御部21へと電力を供給する(および電力供給を遮断する)電力供給方法について説明する。
図3は、電力供給方法の流れを示す図である。図4は、スイッチ4と電子スイッチ27a、27bの概略構成について示す図である。
【0035】
図3に示すように、本実施形態の電力供給方法では、まず、スイッチ4が押下されてオンとなる(ステップS101)と、図4に示す電源25から制御部21に、スイッチ4のオンにより導通された回路を介して、矢印aに示すように電力が供給される。なお、スイッチ4を離し押下を解除するとスイッチ4はオフとなり矢印aに示す電力供給が遮断される。
【0036】
制御部21は、電源25による上記の電力供給を受けて起動し、まず、図4に示す電子スイッチ27aをオン状態とするともに、電子スイッチ27bをオフ状態とする(ステップS102)。これにより、制御部21には、電子スイッチ27aのオンにより導通された回路を介して、図4の矢印bに示すように電力が供給される。
従って、瞬時的な一回の押下でスイッチ4がオンとなれば、その後スイッチ4を離しても電源25からの電力供給が維持される。なお、電子スイッチ27bのオフにより、制御部21とグランド26との接続は遮断されている。
【0037】
制御部21はこの後、ROM等に記憶された所定のプログラムを実行する(ステップS103)。本実施形態では、プログラムを実行することにより、ICチップ28に記憶された電子マネー残額等のデータを取得し、当該データを一定時間ディスプレイ3に表示する表示処理を行う。このため、ステップS102では、制御部21を介してICチップ28にも電源25から駆動用の電力が供給される。
【0038】
上記の処理が終了すると、制御部21はシャットダウンし、電子スイッチ27aをオフ状態とするとともに、電子スイッチ27bをオン状態とする(ステップS104)。電子スイッチ27aのオフにより、図4の矢印bに示す電源25から制御部21への電力供給が遮断され、非動作時の電力供給が遮断される。また、電子スイッチ27bのオンにより、制御部21とグランド26が接続されるので、制御部21の電圧が迅速に降下し、前記のような、制御部21の電圧降下が緩やかになることによる誤作動が防がれる。
【0039】
図5は、前記の電子スイッチ27a、27bを含む電子スイッチ回路27について示す図である。
図5において、31は制御入力トランジスタ(N型)である。また、33は電源25−出力端子39間のスイッチトランジスタ(P型)であり、図4等の電子スイッチ27aに対応する。スイッチトランジスタ33(電子スイッチ27a)は、ハイサイドスイッチとして構成されている。
また、34は出力端子39−グランド30間のスイッチトランジスタ(N型)であり、図4等の電子スイッチ27bに対応する。
これらのトランジスタとしては、漏れ電流および動作時の消費電流を抑えるため、エンハンスメント型の小信号用MOS(Metal Oxide Semiconductor)型トランジスタ(電界効果トランジスタ)が用いられる。
【0040】
37は制御部21から接続されるコントロール端子であり、スイッチトランジスタ33をオンとするとともに、スイッチトランジスタ34をオフとするために制御部21から電力が供給される。
39は制御部21に接続される出力端子であり、スイッチトランジスタ33がオンとなると、VDD(電源25)から出力端子39を介して制御部21に電力が供給される。
30はグランドであり、図4のグランド26に対応する。
【0041】
41、43はそれぞれ、制御入力トランジスタ31、スイッチトランジスタ33、34の制御用バイアス電流である。これらの値を適切に定めるために抵抗35a〜35cが設けられる。
さらに、電子スイッチ回路27では、出力端子39−グランド30間の接続(ショート)時にスイッチトランジスタ34に流れる電流を適切に定めるための抵抗35dが設けられる。
なお、45は制御部21の動作用の電流である。
【0042】
先ほどのステップS102では、制御部21の制御により、制御部21からコントロール端子37を介して電力が供給される。これにより、制御入力トランジスタ31のゲート電圧が上昇してスイッチが入り、図の端子Aから制御入力トランジスタ31側にVDD(電源25)からの電流が流れる。これによりスイッチトランジスタ33のゲート電圧が降下するので、スイッチトランジスタ33にスイッチが入り、VDD(電源25)より制御部21へ出力端子39を介して電力が供給されるようになる。なお、このときスイッチトランジスタ34のゲート電圧も同様に降下し、これによりスイッチトランジスタ34がオフとなり、制御部21に接続する出力端子39とグランド30との接続が遮断されている。すなわち、図4に示す制御部21とグランド26(グランド30)との接続は遮断されている。
【0043】
一方、先ほどのステップS104では、制御部21の制御により、コントロール端子37を介した電力の供給が停止される。これにより制御入力トランジスタ31のスイッチがオフとなる。この場合、スイッチトランジスタ33のゲート電圧が上昇し、スイッチトランジスタ33のスイッチがオフとなり、出力端子39を介した制御部21への電力供給が遮断される。一方、スイッチトランジスタ34のゲート電圧も同様に上昇し、これによりスイッチトランジスタ34がオンとなり、制御部21に接続する出力端子39がグランド30に接続される。すなわち、図4に示す制御部21とグランド26(グランド30)とが接続される。
【0044】
ここで、制御入力トランジスタ31、スイッチトランジスタ33、34としては、小信号用のMOSトランジスタを用いるので、制御入力トランジスタ制御用のバイアス電流41、スイッチトランジスタ制御用のバイアス電流43の量を少量とでき、回路全体を低消費電力で制御できる。
本実施形態では、例えば電源25の電圧が3Vの場合、バイアス電流41、43をそれぞれ約1μAとすることができ、動作時に消費する電流を2μA程度に抑えることができる。抵抗35a、35b、35cの値は上記バイアス電流41、43の値に合わせて定める。なお、抵抗35dの値は、前記したように、出力端子39−グランド30間の接続時にスイッチトランジスタ34に流れる電流を適切な値とすべく定め、例えば、100Ω程度としておく。
また、小信号用のMOSトランジスタを用いることで、非動作時のリーク電流も極めて小さくなり、これを数nA未満に抑えることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の表示機能付きICカード1では、制御部21の非動作時、電源25からのスタンバイ電流を省略できるとともに、動作時には、スイッチ4のオンにより電源25から電力供給を受けた制御部21の制御により、電子スイッチ27aをオンとして、スイッチ4をオフとした場合でも電力供給を確保する。これにより、消費電力を削減しつつ、制御部21が所定のプログラムを実行することによる表示機能付きICカード1の処理を可能とできる。
さらに、制御部21のシャットダウン時には、制御部21の制御により、前記の電子スイッチ27aをオフとするとともに電子スイッチ27bがオンとなり、制御部21がグランド26に接続されるので、制御部21の電圧がすばやくグラウンドレベルにまで低下し、前記したような制御部21の誤作動等を防ぐことができる。制御部21を市販のマイコン(セイコーエプソン株式会社製マイコン『S1C17602』)を用いたマイコン回路とし、本実施形態の方法を用いたシャットダウン動作を回路シミュレータにより検討したところ、シャットダウンから6msで制御部21の電圧レベルが0となり、急速に電圧を降下させ最低動作電圧付近での誤動作を防ぐことが可能であることが確認された。
【0046】
また、電子スイッチ27aをハイサイドスイッチとし、これを構成するトランジスタとして小信号用のMOSトランジスタを用いるとともに、電子スイッチ27bにも小信号用のMOSトランジスタを用いることで、バイアス電流などスイッチ制御にかかる消費電力を小さくでき、非動作時のリーク電流も抑えることができる。
【0047】
なお、本実施形態では電子媒体の例としてICチップのデータを表示部に表示する処理を行う表示機能付きICカードを挙げたが、制御部によるプログラムの実行により表示に限らず種々の処理を行う機能付きICカードであってもよい。
また、電子媒体の例としては、この他、制御部や記憶部等を備えた携帯端末なども挙げられる。ただし、本実施形態のような表示機能付きICカードは、一般的に薄型のものとするためプッシュスイッチなどの簡易な構成のスイッチを設けることが求められ、上記のような省電力化の方法が特に効果的である。
【0048】
さらに、本実施形態の変形例としては、上記の他、例えば、電子スイッチ27aとして、スイッチトランジスタ33をローサイドスイッチとして構成してもよい。但し、本実施形態のようにハイサイドスイッチとして構成する場合、ローサイドスイッチとする場合に比べリーク電流をより小さくできる利点がある。
【0049】
さらに、電子スイッチ27a、27bとして、従来型のトランジスタや大電流対応型のMOSトランジスタを用いることも可能である。ただし、前記のバイアス電流やリーク電流が大きくなるので、消費電力の観点からは、図5等で説明したように、小信号用のMOSトランジスタを用いたほうがより消費電力を少なくでき有利である。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
1………表示機能付きICカード
2………カード本体
3………ディスプレイ
4………スイッチ
5………接触端子
21………制御部
23………ディスプレイドライバ
25………電源
26、30………グランド
27a、27b………電子スイッチ
28………ICチップ
29………アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
制御部と、
押下されている場合にオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給されるプッシュスイッチと、
前記制御部による制御によりオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給され、前記制御部による制御によりオフとなり前記電源から前記制御部への電力供給が遮断される第1の電子スイッチと、
オンとなることにより前記制御部がグランドに接続される第2の電子スイッチと、
を具備し、
前記プッシュスイッチと前記第1の電子スイッチが前記電源と前記制御部の間で並列に接続され、
前記プッシュスイッチのオンにより、前記電源から前記制御部に電力が供給されて前記制御部が起動し、
起動した前記制御部の制御により前記第1の電子スイッチがオンとなり、
前記制御部が所定のプログラムを実行した後にシャットダウンし前記第1の電子スイッチをオフとするとともに前記第2の電子スイッチがオンとなることを特徴とする電子媒体。
【請求項2】
前記第1の電子スイッチが、前記制御部の制御により制御入力トランジスタがオンとなることによりスイッチトランジスタがオンとなることで、前記電源から前記制御部への電力供給が行われるハイサイドスイッチであり、前記制御入力トランジスタおよび前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることを特徴とする請求項1記載の電子媒体。
【請求項3】
前記第2の電子スイッチがスイッチトランジスタであり、前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子媒体。
【請求項4】
前記電子媒体が、ICチップと表示部を更に具備した表示機能付きICカードであり、
前記所定のプログラムを実行することにより、前記ICチップに記憶されたデータが前記表示部に表示されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子媒体。
【請求項5】
電源と、制御部と、押下されている場合にオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給されるプッシュスイッチと、前記制御部による制御によりオンとなり前記電源から前記制御部に電力が供給され、前記制御部による制御によりオフとなり前記電源から前記制御部への電力供給が遮断される第1の電子スイッチと、オンとなることにより前記制御部がグランドに接続される第2の電子スイッチと、を具備し、前記プッシュスイッチと前記第1の電子スイッチが前記電源と前記制御部の間で並列に接続される電子媒体における電力供給方法であって、
前記プッシュスイッチのオンにより、前記電源から前記制御部に電力が供給されて前記制御部が起動し、
起動した前記制御部の制御により前記第1の電子スイッチがオンとなり、
前記制御部が所定のプログラムを実行した後にシャットダウンし前記第1の電子スイッチをオフとするとともに前記第2の電子スイッチがオンとなることを特徴とする電子媒体における電力供給方法。
【請求項6】
前記第1の電子スイッチが、前記制御部の制御により制御入力トランジスタがオンとなることによりスイッチトランジスタがオンとなることで、前記電源から前記制御部への電力供給が行われるハイサイドスイッチであり、前記制御入力トランジスタおよび前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることを特徴とする請求項5記載の電子媒体における電力供給方法。
【請求項7】
前記第2の電子スイッチがスイッチトランジスタであり、前記スイッチトランジスタとして、小信号用のMOSトランジスタを用いることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電子媒体における電力供給方法。
【請求項8】
前記電子媒体が、ICチップと表示部を更に具備した表示機能付きICカードであり、
前記所定のプログラムを実行することにより、前記ICチップに記憶されたデータが前記表示部に表示されることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の電子媒体における電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65159(P2013−65159A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202848(P2011−202848)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】