説明

電子工学用途のための、ポリマー酸コロイドを用いて製造された水分散性ポリアニリン

ポリアニリンと、コロイド形成ポリマー酸との水性分散物を含む組成物が提供される。本発明の組成物からのフィルムは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーのようなエレクトロルミネッセンスデバイスを含む有機電子デバイスのバッファ層として有用である。また本発明の組成物からキャスティングされたフィルムは、金属メタルワイヤーまたは炭素ナノチューブと組み合わせて、薄膜電界効果トランジスターのドレイン、ソースまたはゲート電極のような用途において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー酸コロイドの存在下で導電性ポリマーが合成される、アニリンの導電性ポリマーの水性分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリマーは、発光ディスプレーにおいて使用するためのエレクトロルミネッセンス(EL)デバイスの開発に含まれる、様々な有機電子デバイスにおいて使用されている。導電性ポリマー含有有機発光ダイオード(OLED)のようなELデバイスに関して、かかるデバイスは、以下の構造:
アノード/バッファ層/ELポリマー/カソード
を一般的に有する。アノードは、典型的に、例えば、インジウム/酸化スズ(ITO)のような半導電性ELポリマーの別の充填π−帯中に正孔を注入する能力を有する、任意の材料である。アノードは、任意選択的に、ガラスまたはプラスチック基材上に支持されている。ELポリマーは、典型的に、ポリ(パラフェニレンビニレン)またはポリフルオレンのような共役半導電性ポリマーである。カソードは、典型的に、半導電性ELポリマーの別の空π−帯中に電子を注入する能力を有する、任意の材料(例えば、CaまたはBa)である。
【0003】
バッファ層は、典型的に導電性ポリマーであり、アノードからELポリマー層中への正孔の注入を促進する。バッファ層を正孔注入層、正孔輸送層と称することもできるか、または二層アノードの一部として特徴付けられてもよい。バッファ層として利用される典型的な導電性ポリマーとしては、ポリアニリン(PANI)、およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)のようなポリジオキシチオフェンが挙げられる。ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)のような水溶性ポリマー酸の存在下で、水溶液中で相当するモノマーを重合することによって、これらの材料を調製することができる。
【0004】
水溶性ポリマースルホン酸を用いて合成された水性導電性ポリマー分散物は、望ましくない低pHレベルを有する。低pHは、かかるバッファ層を含有するELデバイスの応力寿命(stress life)の低下に寄与し、そしてデバイス内の腐食に寄与し得る。従って、改善された特性を有する組成物およびそれによって調製されたバッファ層に対する必要性が存在する。
【0005】
典型的に、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウムのような酸化剤を使用する酸化重合によって、水溶液中のアニリンまたは置換アニリンモノマーを重合することによって、導電性ポリアニリンを調製する。水溶液は、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「PAAMPSA」)、PSS等のような水溶性ポリマー酸を含有する。一般的に、ポリアニリンのエメラルド色塩基との酸/塩基塩を形成するために、十分な量の酸が存在する。ここで、酸/塩基塩の形成によって、ポリアニリンが導電性となる。従って、例えば、ポリアニリン(PANI)のエメラルド色塩基は典型的に、PAAMPSAによって形成され、導電性PANI/PAAMPSAが得られる。
【0006】
水性ポリアニリン分散物は、オルメコン ヒェミー GmbH アンド Co.KG(Ormecon Chemie GmbH and Co.KG)(ドイツ、アンマースベック(Ammersbeck,Germany))から市販品として入手可能である。これは、D 1005 W LEDとして既知である。ポリアニリンは、アニリンおよび水溶性ポリ(スチレンスルホン酸)から製造される。D 1005 W LEDから得られる乾燥フィルムは、水中に容易に再分散する。水は、2.5%(w/w)で1の範囲のpHによって酸性となる。フィルムは、周囲条件で約24.0%(w/w)の湿分を得る。
【0007】
ポリアニリン/ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)の実験室バッチ水性分散物からの乾燥フィルムも、水中に容易に再分散する。ポリアニリンは、アニリンおよび水溶性PAAMPSAから製造される。
【0008】
導電性ポリマーは、薄膜電界効果トランジスターのような電子デバイス用電極としても有用性を有する。かかるトランジスターにおいて、有機半導電性フィルムは、ソース電極とドレイン電極との間に存在する。電極用途のために有用であるように、導電性ポリマーまたは半導電性ポリマーのいずれかの再溶解を回避するため、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを分散または溶解するための液体は、半導電性ポリマーおよび半導電性ポリマーのための溶媒と適合性でなければならない。導電性ポリマーから製造された電極の導電性は、10S/cm(Sは逆オームである)より高いべきである。しかしながら、ポリマー酸によって製造された導電性ポリアニリンは、典型的に、約10−3S/cm以下の範囲の導電性を提供する。導電性を増加させるために、ポリマーに導電性添加剤を添加してもよい。しかしながら、かかる添加剤の存在は、導電性ポリアニリンの加工性に悪影響を及ぼし得る。従って、良好な加工性および増加された導電性を有する、改善された導電性ポリアニリンに対する必要性が存在する。
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 026 152 A1号明細書
【特許文献2】米国特許第3,282,875号明細書
【特許文献3】米国特許第4,358,545号明細書
【特許文献4】米国特許第4,940,525号明細書
【特許文献5】米国特許第4,433,082号明細書
【特許文献6】米国特許第6,150,426号明細書
【特許文献7】国際公開第03/006537号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態において、ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物を含む組成物が提供される。本発明の組成物は、有機発光ダイオード(OLED)のような様々な有機電子デバイスにおいてバッファ層として有用である。また本発明の組成物は、金属ナノワイヤーまたは炭素ナノチューブのような導電性充填剤と組み合わせて、薄膜電界効果トランジスターのドレイン電極、ソース電極またはゲート電極のような用途において有用である。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態に従って、キャスティングされた本発明の組成物のバッファ層を含む、エレクトロルミネッセンスデバイスを含む有機電子デバイスが提供される。0012本発明のさらにもう1つの実施形態に従って、アニリンモノマーおよび酸化剤の少なくとも1つが添加された場合、少なくとも一部のコロイド形成ポリマー酸が存在することを条件として、任意の順序で、水と、アニリンモノマーと、コロイド形成ポリマー酸と、酸化剤との組合せを形成する工程を含む、ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ポリアニリンと、コロイド形成ポリマー酸との水性分散物を含む組成物が提供される。本明細書で使用される場合、用語「分散物」は、微小粒子の懸濁液を含有する連続液体媒体を指す。本明細書に従って、「連続媒体」は、典型的に水性液体、例えば、水である。本明細書で使用される場合、用語「水性」は、著しい部分の水を有する液体を指し、一実施形態において、少なくとも約40重量%の水である。本明細書で使用される場合、用語「コロイド」は、ナノメートル規模の粒径を有する、連続媒体に懸濁された微小粒子を指す。本明細書で使用される場合、用語「コロイド形成」は、水溶液に分散された時に微小粒子を形成する物質を指し、すなわち、「コロイド形成」ポリマー酸は水溶性ではない。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を含むように意図される。例えば、要素の一覧表を含むプロセス、方法、物品または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されるわけではなく、明白に一覧表に記載されていないかまたはかかるプロセス、方法、物品または装置に固有である他の要素も含んでよい。さらに、反対に明言されない限り、「または」は包含的論理和を指し、排他的論理和を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。すなわち、Aが真(または存在する)であり、かつBが偽(または存在しない)である。Aが偽(または存在しない)であり、かつBが真(または存在する)である。そして、両AおよびBが真(または存在する)である。
【0014】
また、本発明の要素および成分を記載するために、「a」または「an」の使用も利用される。これは単に都合が良いように、本発明の一般的な意味を与えるために利用されている。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読解されるべきであり、また別に意味があることが明白でない限り、この単数形は複数形も含む。
【0015】
コロイド形成ポリマー酸の存在下でアニリンモノマーが化学的に重合される場合に、導電性ポリ(アニリン)の水性分散物を調製することができることが発見された。さらに、ポリ(アニリン)の水性分散物の調製において、水溶性ではないポリマー酸を使用することによって、優れた電気特性を有する組成物が得られる。これらの水性分散物の1つの利点は、使用前の長期間に別々の相が形成されずに、導電性微小粒子が水性媒体中で安定であることである。さらに、それらは一度フィルムへと乾燥されると、一般的に再分散しない。
【0016】
本発明の組成物は、ポリアニリンおよびコロイド形成ポリマー酸が分散している連続水性相を含有する。本発明の実施において使用するために考慮されたポリアニリンは、次式I:
【0017】
【化1】

【0018】
(式I中、
nは、0〜4の整数であり、
mは、1〜5の整数であるが、ただし、n+m=5であり、そして
は、独立して、出現するごとに同一であるかもしくは異なるように選択され、かつアルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボン酸、ハロゲン、シアノ、または1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、ハロ、ニトロ、シアノもしくはエポキシ部分によって置換されたアルキルから選択されるか、あるいは任意の2つのR基が一緒になって、任意選択的に1つまたは複数の二価の窒素、イオウまたは酸素原子を含んでもよい3、4、5、6または7員の芳香族環もしくは脂環式環を完成するアルキレンまたはアルケニレン鎖を形成してもよい)を有するアニリンモノマーから誘導される。
【0019】
重合材料は、アニリンモノマー単位を含み、それぞれのアニリンモノマー単位は、次式IIおよび次式III:
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、n、mおよびRは、上記で定義された通りである)から選択される式を有する。
【0022】
本発明の実施において使用するために考慮されたコロイド形成ポリマー酸は、水に不溶性であり、水性媒体中に分散された時にコロイドを形成する。ポリマー酸は、典型的に、約10,000〜約4,000,000の範囲の分子量を有する。一実施形態において、ポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイドの粒径は、典型的に、2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲である。一実施形態において、コロイドは2nm〜約30nmの粒径を有する。水中に分散された時にコロイド形成する、いずれのポリマー酸も、本発明の実施において使用するために適切である。一実施形態において、コロイド形成ポリマー酸は、ポリマースルホン酸である。他の容認できるポリマー酸としては、ポリマーリン酸、ポリマーカルボン酸、ポリマーアクリル酸およびそれらの混合物が挙げられ、これにはポリマースルホン酸を有する混合物が含まれる。もう1つの実施形態において、ポリマースルホン酸はフッ素化されている。さらにもう1つの実施形態において、コロイド形成ポリマースルホン酸は過フッ素化されている。さらにもう1つの実施形態において、コロイド形成ポリマースルホン酸は、ペルフルオロアルキレンスルホン酸である。
【0023】
さらにもう1つの実施形態において、コロイド形成ポリマー酸は、高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)である。「高度にフッ素化された」は、ポリマー中のハロゲンおよび水素原子の総数の少なくとも約50%、一実施形態において、少なくとも約75%、そしてもう1つの実施形態において、少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。もう1つの実施形態において、ポリマーは過フッ素化されている。用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基またはスルホン酸基の塩のいずれかを指し、そして一実施形態において、アルカリ金属またはアンモニウム塩を指す。官能基は、式−SOX(式中、Xはカチオンである)によって表され、「対イオン」としても既知である。Xは、H、Li、Na、KまたはN(R)(R)(R)(R)であってよく、R、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なり、一実施形態において、H、CHまたはCである。一実施形態において、XはHであり、この場合、ポリマーは「酸型」と称される。Xは、Ca++およびAl+++のようなイオンによって表されるように、多価であってもよい。一般的にMn+として表される多価対イオンの場合、対イオン当たりのスルホネート官能基数が原子価「n」に等しいことは、当業者に明白である。
【0024】
一実施形態において、FSAポリマーは、骨格に結合している循環側鎖を有するポリマー骨格を含む。この側鎖は、カチオン交換基を有する。ポリマーとしては、ホモポリマーまたは2つ以上のモノマーのコポリマーが挙げられる。コポリマーは典型的に、非官能性モノマーと、カチオン交換基またはその前駆体、例えば、その後にスルホネート官能基へと加水分解され得るフッ化スルホニル基(−SOF)を有する第2のモノマーとから形成される。例えば、フッ化スルホニル基(−SOF)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーと一緒の、第1のフッ素化ビニルモノマーのコポリマーを使用することができる。可能な第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)およびそれらの組合せが挙げられる。TFEが、好ましい第1のモノマーである。
【0025】
もう1つの実施形態において、可能な第2のモノマーとしては、ポリマー中に所望の側鎖を提供し得るスルホネート官能基または前駆体基を有するフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。所望であれば、エチレン、プロピレンおよびR−CH=CH(式中、Rは、炭素原子を1〜10個有する過フッ素化アルキル基である)を含む追加のモノマーをこれらのポリマー中に組み入れることができる。ポリマーは、本明細書で、ポリマー鎖に沿うモノマー単位の分布が、それらの相対濃度および相対反応性に従うように、コモノマーの相対濃度が可能な限り一定に保たれる重合によって製造されるコポリマーであるランダムコポリマーと称される種類のものであってもよい。重合の経過においてモノマーの相対濃度を変更することによって製造された、よりランダムではないコポリマーを使用してもよい。(特許文献1)に開示されるような、ブロックコポリマーと称される種類のポリマーを使用してもよい。
【0026】
一実施形態において、本発明において使用されるFSAポリマーとしては、次式:
−(O−CFCFR−O−CFCFR’SO
(式中、RfおよびR’fは、独立して、F、Cl、または炭素原子を1〜10個有する過フッ素化アルキル基であり、a=0、1または2であり、そしてXは、H、Li、Na、KまたはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3およびR4は、同一であるかまたは異なり、一実施形態において、H、CHまたはCである)によって表される、過フッ素化されたものを含む、高度にフッ素化された炭素骨格および側鎖が挙げられる。もう1つの実施形態において、XはHである。上記の通り、Xは多価であってもよい。
【0027】
一実施形態において、FSAポリマーとしては、例えば、米国特許公報(特許文献2)ならびに米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)に開示されるポリマーが挙げられる。FSAポリマーの例は、次式:
−O−CFCF(CF)−O−CFCFSO
(式中、Xは、上記で定義された通りである)によって表されるペルフルオロカーボン骨格および側鎖を含む。この種類のFSAポリマーは米国特許公報(特許文献2)に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF、ペルフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフロリド)(PDMOF)との共重合によって、続いて、フッ化スルホニル基の加水分解によるスルホネート基への転換、および必要であればそれらを所望のイオン型へと転換するためのイオン交換によって、製造することができる。側鎖−O−CFCFSOX(式中、Xは上記の通りである)を有する種類の好ましいポリマーの例は、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)に開示されている。テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCFSOF、ペルフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフロリド)(POPF)との共重合、それに続く加水分解、および必要であればさらにイオン交換によって、このポリマーを製造することができる。
【0028】
一実施形態において、本発明において使用するためのFSAポリマーは、約33未満のイオン交換比を有する。本願において、「イオン交換比」または「IXR」は、カチオン交換基に関するポリマー骨格中の炭素原子数として定義される。所望であれば、特定の適用に対して、約33未満の範囲内でIXRを変更することができる。ほとんどのポリマーに対して、IXRは約3〜約33であり、そして一実施形態において、約8〜約23である。
【0029】
ポリマーのカチオン交換容量は、しばしば、当量(EW)に関して表現される。本願の目的のため、当量(EW)は、1当量の水酸化ナトリウムを中和するために必要とされる、酸型のポリマーの重量であるとして定義される。ポリマーがペルフルオロカーボン骨格を有し、かつ側鎖が−O−CF−CF(CF)−O−CF−CF−SOH(またはそれらの塩)であるスルホネートポリマーの場合、約8〜約23のIXRに相当する当量の範囲は、約750EW〜約1500EWである。このポリマーのIXRは、次式を使用して当量に関連付けることができる。50IXR+344=EW。米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)に開示されるスルホネートポリマー、例えば、側鎖−O−CFCFSOH(またはそれらの塩)を有するポリマーに対して同様のIXR範囲を使用するが、カチオン交換基を含有するモノマー単位のより低い分子量のため、当量はいくらか低い。約8〜約23の好ましいIXR範囲のため、相当する当量範囲は、約575EW〜約1325EWである。このポリマーのIXRは、次式を使用して当量に関連付けることができる。50IXR+178=EW。
【0030】
コロイド状水性分散物としてFSAポリマーを調製することができる。それらは、他の媒体中の分散物の形態であってもよく、それらの例としては、限定されないが、アルコール、テトラヒドロフランのような水溶性エーテル、水溶性エーテルの混合物、およびそれらの組合せが挙げられる。分散物の製造において、酸型のポリマーを使用することができる。米国特許公報(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)および(特許文献7)は、水性アルコール分散物の製造方法を開示する。分散物の製造後、当該分野で既知の方法によって、濃度、および分散液組成物の組成を調整することができる。
【0031】
FSAポリマーを含むコロイド形成ポリマー酸の水性分散物は、安定なコロイドが形成する限り、可能な限り小さい粒径、および可能な限り小さいEWを有する。
【0032】
FSAポリマーを含むコロイド形成ポリマー酸の水性分散物は、本願特許出願人からナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物として市販品として入手可能である。
【0033】
本発明に従って、水性コロイド形成ポリマー酸分散物の存在下で、導電性ポリアニリンを最初に合成し、それによって導電性ポリアニリンとコロイド状ポリマー酸とを含む合成された水性分散物を形成することによって、安定水性分散物を調製する。本発明の方法で利用される導電性ポリアニリンは、典型的に、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等のような酸化剤の存在下で、水性コロイド形成ポリマー酸分散物においてアニリンまたは置換アニリンモノマーを酸化重合することによって調製される。水性分散物は、ポリアニリンのエメラルド色塩基との塩基/酸塩を形成するために、少なくとも十分な量の適切なコロイド形成ポリマー酸を含有し、酸/塩基塩の形成によって、ポリアニリンが導電性となる。
【0034】
一実施形態において、ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物の製造方法は、アニリンモノマーおよび酸化剤の少なくとも1つが添加された場合、少なくとも一部のコロイド形成ポリマー酸が存在することを条件として、任意の順序で、水と、アニリンモノマーと、コロイド形成ポリマー酸と、酸化剤とを混合することによって反応混合物を形成する工程を含む。
【0035】
一実施形態において、ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物の製造方法は、
(a)コロイド形成ポリマー酸の水性分散物を供給する工程と、
(b)酸化剤を、工程(a)の分散物と混合する工程と、
(c)アニリンモノマーを、工程(b)の分散物と混合する工程と、
を含む。
【0036】
もう1つの実施形態において、酸化剤を添加する前に、コロイド形成ポリマー酸の水性分散物にアニリンモノマーを混合する。次いで、酸化剤を混合する上記工程(b)を実行する。
【0037】
もう1つの実施形態において、典型的に、約0.5重量%〜約2.0重量%のアニリン濃度範囲で、水とアニリンモノマーとの混合物を形成する。このアニリン混合物をコロイド形成ポリマー酸の水性分散物に添加し、次いで、酸化剤との組合せを実行する。
【0038】
もう1つの実施形態において、水性重合分散物は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等のような重合触媒を含んでもよい。最後の工程の前に、触媒を添加する。もう1つの実施形態において、酸化剤と一緒に触媒を添加する。
【0039】
一実施形態において、水と混和性である補助分散液の存在下で重合を実行する。適切な補助分散液の例としては、限定されないが、エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミドおよびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態において、補助分散液はアルコールである。一実施形態において、補助分散液は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンおよびそれらの混合物から選択される。一実施形態において、補助分散液の量は、約60体積%未満であるべきである。一実施形態において、補助分散液の量は、約20体積%〜50体積%の間である。重合に補助分散液を使用することによって、粒径が著し33/19kく減少し、そして分散物の濾過性が改善される。加えて、このプロセスによって得られる緩衝材は、粘度の改善を示し、これらの分散物から調製されたフィルムは高品質である。
【0040】
どちらが最後に添加されても、酸化剤またはアニリンモノマーのいずれかの添加の前に、このプロセスの任意の点で、補助分散液を反応混合物に添加することができる。一実施形態において、アニリンモノマーおよびコロイド形成ポリマー酸の両方の前に、補助分散液が添加され、そして酸化剤が最後に添加される。一実施形態において、アニリンモノマーの添加の前に補助分散液が添加され、そして酸化剤が最後に添加される。
【0041】
一実施形態において、ブレンステッド酸である補助酸の存在下で重合を実行する。酸は、HCl、硫酸等のような無機酸、または酢酸のような有機酸であり得る。あるいは、酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)等のような水溶性ポリマー酸、または上記のような第2のコロイド形成酸であり得る。酸の組合せを使用することができる。
【0042】
どちらが最後に添加されても、酸化剤またはアニリンモノマーのいずれかの添加の前に、プロセスの任意の点で、補助酸を反応混合物に添加することができる。一実施形態において、アニリンモノマーおよびコロイド形成ポリマー酸の両方の前に、補助酸が添加され、そして酸化剤が最後に添加される。一実施形態において、アニリンモノマーの添加の前に補助酸が添加され、そして酸化剤が最後に添加される。
【0043】
一実施形態において、補助分散液および補助酸の両方の存在下で重合を実行する。アルコール補助分散剤および補助酸の存在下で重合されたポリアニリン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)から製造されたバッファ層を有するデバイスは、高効率、低動作電圧、低漏洩電流および長寿命を示す。
【0044】
ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物の製造方法において、アニリンモノマーに対する酸化剤のモル比は、一般的に0.1〜2.0の範囲内であり、そして一実施形態において、0.4〜1.5である。アニリンモノマーに対するコロイド形成ポリマー酸のモル比は、一般的に0.2〜5の範囲内である。全固体含量は、一般的に重量%で約1.0%〜6%の範囲内であり、そして一実施形態において、約2%〜4.5%である。反応温度は、一般的に約4℃〜40℃の範囲内であり、一実施形態において、約20℃〜35℃である。アニリンモノマーに対する任意の補助酸のモル比は、約0.05〜4である。酸化剤の添加時間は、粒径および粘度に影響する。従って、添加速度を低下させることによって、粒径を減少させることができる。同時に、添加速度を低下させることによって、粘度を増加させる。反応時間は、一般的に約1時間〜約30時間の範囲内である。
【0045】
合成された、ポリアニリンとポリマー酸コロイドとの水性分散物は、一般的に非常に低いpHを有する。デバイスの特性に悪影響を及ぼすことなく、pHを、典型的に約1〜約8の間に調整することができることが見出された。しばしば、酸性度が腐食性であり得るため、ほぼ中性のpHを有することが望ましい。既知の技術、例えば、イオン交換を使用して、または塩基水溶液による滴定によって、pHを調整することができることが見出された。7〜8までのpHを有する、ポリアニリンとフッ素化ポリマースルホン酸コロイドとの安定分散物が形成されている。ポリアニリンと他のコロイド形成ポリマー酸との水性分散物を同様に処理して、pHを調整することができる。
【0046】
一実施形態において、重合反応の完了後、合成された水性分散物を、分解種、副反応物および未反応モノマーを除去するために、そして所望のpHを有する安定水性分散物を製造するようにpHを調整するために適切な条件下で、イオン交換樹脂の少なくとも1つと接触させる。一実施形態において、合成された水性分散物を、任意の順番で、第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂と接触させる。合成された水性分散物を、第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂の両方で同時に処理することもでき、または一方、次いで他方で別々に処理することができる。
【0047】
イオン交換は、逆化学反応であり、(水性分散物のような)流体媒体のイオンは、流体媒体に不溶性である不動固体粒子に結合している同様に荷電したイオンと交換される。用語「イオン交換樹脂」は、本明細書で使用される場合、かかる物質の全てを指す。イオン交換基が結合するポリマー支持体の架橋性のため、樹脂は不溶性となる。イオン交換樹脂は、カチオン交換体またはアニオン交換体として分類される。カチオン交換体は、交換のために利用可能な陽性に荷電した可動性イオン、典型的に、プロトン、またはナトリウムイオンのような金属イオンを有する。アニオン交換体は、陰性に荷電した交換性イオン、典型的に、水酸化物イオンを有する。
【0048】
一実施形態において、第1のイオン交換樹脂は、プロトン性または金属イオン、典型的にナトリウムイオン型であり得る、カチオン、酸交換樹脂である。第2のイオン交換樹脂は、塩基性アニオン交換樹脂である。プロトン交換樹脂を含む酸性カチオン交換樹脂、および塩基性アニオン交換樹脂の両方は、本発明の実施における使用のために熟考される。一実施形態において、酸性カチオン交換樹脂は、スルホン酸カチオン交換樹脂のような無機酸、カチオン交換樹脂である。本発明の実施において使用するために熟考されるスルホン酸カチオン交換樹脂としては、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒドスルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。もう1つの実施形態において、酸性カチオン交換樹脂は、カルボン酸、アクリル酸または亜リン酸カチオン交換樹脂のような、有機酸、カチオン交換樹脂である。加えて、様々なイオン交換樹脂の混合物を使用することができる。
【0049】
もう1つの実施形態において、塩基性アニオン交換樹脂は、第三級アミンアニオン交換樹脂である。本発明の実施において使用するために熟考される第三級アミンアニオン交換樹脂としては、例えば、第三級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、第三級アミノ化架橋スチレンポリマー、第三級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第三級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる実施形態において、塩基性アニオン交換樹脂は、第四級アミンアニオン交換樹脂、またはこれらと他の交換樹脂との混合物である。
【0050】
第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂を、同時に、または連続的に、合成された水性分散物に接触させてよい。例えば、一実施形態において、両樹脂は、導電性ポリマーの合成された水性分散物に同時に添加され、少なくとも約1時間、例えば、約2時間〜約20時間、分散物と接触したままにさせる。次いで、濾過により、分散物からイオン交換樹脂を除去することができる。フィルターの大きさは、より小さい分散物粒子は通過するが、相対的に大きいイオン交換樹脂粒子が除去されるように選択される。理論に拘束されることは望まれないが、イオン交換樹脂は、重合を抑制し、そして合成された水性分散物からイオン性および非イオン性不純物、ならびにほとんどの未反応モノマーを有効に除去すると考えられる。さらに、塩基性アニオン交換樹脂および/または酸性カチオン交換樹脂は、酸性部位をより塩基性にさせ、分散物のpH増加が得られる。一般的に、1グラムのポリアニリン/ポリマー酸コロイドあたり、約1グラム〜5グラムのイオン交換樹脂を使用する。
【0051】
多くの場合、所望のレベルまでpHを調整するために、塩基性イオン交換樹脂を使用することができる。いくつかの場合、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラ−メチルアンモニウム等の溶液のような塩基性水溶液によって、pHをさらに調整することができる。
【0052】
一実施形態において、最初に、反応容器を、水と、アルコール補助分散剤と、無機補助酸との混合物で充填する。これに、順番に、アニリンモノマー、およびフッ素化ポリマースルホン酸コロイドの水性分散物、および酸化剤を添加する。酸化剤を、ゆっくり滴下して添加し、酸コロイドを不安定化し得る高イオン濃度の局在性領域の形成を防止する。制御温度下で混合物を撹拌し、次いで反応を続行させる。重合完了時に、反応混合物を強酸カチオン樹脂で処理し、撹拌して、そして濾過し、次いで、塩基アニオン交換樹脂で処理し、撹拌し、そして濾過する。上記で検討された通り、別の添加順序を使用することもできる。
【0053】
もう1つの実施形態において、ポリアニリンとコロイド形成ポリマー酸との水性分散物に、高導電性の添加剤を添加することによって、より導電性の分散物が形成される。相対的に高いpHを有する分散物を形成することができるため、導電性添加剤、特に金属添加剤は、分散物中の酸によって攻撃されない。さらに、ポリマー酸は事実上、コロイド状であり、酸基を優先的に含有する表面を有するため、導電性ポリアニリンはコロイド表面上に形成される。この独特な構造のため、浸透限界値を達成するために、低重量%の高導電性の添加剤のみが必要とされる。適切な導電性の添加剤の例としては、限定されないが、金属粒子およびナノ粒子、ナノワイヤー、炭素ナノチューブ、グラファイト繊維または粒子、炭素粒子、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0054】
本発明のもう1つの実施形態において、ポリマーアニリンとコロイド形成ポリマー酸とを含む水性分散物からキャスティングされたバッファ層が提供される。一実施形態において、コロイド形成ポリマースルホン酸を含む水性分散物からバッファ層をキャスティングする。一実施形態において、ポリアニリンとフッ素化ポリマー酸コロイドとを含有する水性分散物からバッファ層をキャスティングする。もう1つの実施形態において、フッ素化ポリマー酸コロイドは、フッ素化ポリマースルホン酸コロイドである。さらにもう1つの実施形態において、ポリアニリンとペルフルオロエチレンスルホン酸コロイドを含有する水性分散物からバッファ層をキャスティングする。
【0055】
ポリアニリンと、フッ素化ポリマースルホン酸コロイドのようなポリマー酸コロイドとの乾燥フィルムは、一般的に水に再分散性ではない。従って、多数の薄層としてバッファ層を適用することができる。加えて、損害を生じずに、様々な水溶性または水分散性材料の層によって、バッファ層にオーバーコーティングすることができる。
【0056】
もう1つの実施形態において、他の水溶性または分散性材料とブレンドされたポリマーアニリンとコロイド形成ポリマー酸とを含む水性分散物からキャスティングされたバッファ層が提供される。本発明の組成物の最終的な適用に依存して、添加され得る追加材料の種類の例としては、限定されないが、ポリマー、炭素ナノチューブ、ナノワイヤー、染料、コーティング助剤、有機および無機導電性インクおよびペースト、電荷輸送材料、架橋剤、ならびにそれらの組合せが挙げられる。他の水溶性または分散性材料は、単分子またはポリマーであり得る。適切なポリマーの例としては、限定されないが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアミン、ポリピロール、ポリアセチレンおよびそれらの組合せのような導電性ポリマーが挙げられる。
【0057】
本発明のもう1つの実施形態において、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも1つの電気的活性層(通常、半導体共役ポリマー)を含む電子デバイスが提供される。ここでは、デバイスの少なくとも1つの層が本発明のバッファ層を含む。本発明の一実施形態を、アノード層110、バッファ層120、エレクトロルミネッセンス層130、およびカソード層150を有するデバイスである、図1に示される一種のOLEDデバイスにおいて説明する。カソード層150に隣接して、任意の電子注入/輸送層140が存在する。バッファ層120とカソード層150(または任意の電子注入/輸送層140)との間に、エレクトロルミネッセンス層130が存在する。
【0058】
このデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接し得る支持体または基材(示されない)を含んでもよい。非常にしばしば、支持体はアノード層110に隣接する。支持体は、可撓性または剛性、有機または無機であり得る。一般的に、支持体として、ガラスまたは可撓性有機フィルムが使用される。アノード層110は、カソード層150と比較して、正孔注入に関して、より有効である電極である。アノードとしては、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合酸化物を含有する材料を挙げることができる。適切な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4族、5族および6族の元素、ならびに8族〜10族の遷移元素の混合酸化物が挙げられる。アノード層110が光透過性である場合、インジウム−スズ−オキシドのような12族、13族および14族元素の混合酸化物を使用してもよい。本明細書で使用される場合、句「混合酸化物」は、2族元素、または12族、13族もしくは14族元素から選択される2つ以上の異なるカチオンを有する酸化物を指す。アノード層110の材料の、いくつかの非限定的な具体例としては、限定されないが、インジウム−スズ−オキシド(「ITO」)、アルミニウム−スズ−オキシド、金、銀、銅およびニッケルが挙げられる。またアノードは、ポリアニリン、ポリチオフェンまたはポリピロールのような有機材料を含んでもよい。一貫してIUPAC数体系が使用され、周期表の族は、左から右へ1から18まで番号が付けられる(CRCハンドブック オブ ケミストリー アンド フィジックス(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、第81版、2000)。
【0059】
化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピン−キャスト法によって、アノード層110を形成してよい。プラズマ加速化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として、化学蒸着を実行してよい。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングを含む全形態のスパッタリング、ならびに電子ビームエバポレーションおよび抵抗エバポレーションを挙げることができる。物理蒸着の具体的形態としては、rfマグネトロンスパッタリングおよび誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの蒸着技術は、半導体製造分野において周知である。
【0060】
リソグラフ操作間にアノード層110をパターン化してもよい。所望により、パターンを変更してもよい。例えば、第1の電気接触層材料を適用する前に、第1の可撓性複合バリヤー構造上にパターン化マスクまたはレジストを配置することによって、パターンにおいて層を形成することができる。あるいは、層を、全体的な層として適用し(ブランケット沈着とも称される)、その後、例えば、パターン化レジスト層および湿式化学エッチングもしくはドライエッチング技術を使用してパターン化することができる。当該分野において周知である他のパターン化方法も使用可能である。電子デバイスが配列内に位置する場合、アノード層110は典型的に、実質的に同一方向に延在する長さを有する実質的に平行のストリップに形成される。
【0061】
バッファ層120は、通常、当業者に周知の様々な技術を使用して基材上にキャスティングされる。典型的なキャスティング技術としては、例えば、溶液キャスティング、ドロップキャスティング、カーテンキャスティング、スピン−コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。あるいは、インクジェット印刷のような様々な沈着法を使用して、バッファ層をパターン化することができる。
【0062】
エレクトロルミネッセンス(EL)層130は、典型的に、PPVと略されるポリ(パラフェニレンビニレン)またはポリフルオレンのような共役ポリマーであってよい。選択された特定の材料は、具体的な適用、操作間に使用される電位または他の要因に依存する。スピン−コーティング、キャスティングおよび印刷を含む任意の従来技術によって、エレクトロルミネッセンス有機材料を含有するEL層130を、溶液から適用することができる。材料の性質に依存して、蒸着法によって、EL有機材料を直接適用することができる。もう1つの実施形態において、ELポリマー前駆体を適用して、次いで、典型的に熱または他の外部エネルギー源(例えば、可視光またはUV照射)によって、ポリマーへと変換することができる。
【0063】
任意の層140は、電子注入/輸送の両方を促進するために機能し得、そしてまた層界面での抑制反応を防止する制限層としても機能し得る。より具体的には、層140は、電子可動性を促進し、そして層130および150が別の状態で直接接触する場合の抑制反応の可能性を低下させる。任意の層140のための材料の例としては、限定されないが、金属キレート化オキシノイド化合物(例えば、Alq等)、フェナントロリンをベースとする化合物(例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)等)、アゾール化合物(例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」)等)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」)等)、他の同様の化合物、またはそれらの1つまたは複数の組合せが挙げられる。あるいは、任意の層140は、無機であってもよく、BaO、LiF、LiO等を含む。
【0064】
カソード層150は、電子または陰性電荷担体を注入するために特に効率的である電極である。カソード層150は、第1の電気接触層(この場合、アノード層110)よりも低い仕事関数を有する、任意の金属または非金属であり得る。本明細書で使用される場合、用語「より低い仕事係数」は、材料が約4.4eV以下の仕事係数を有することを意味するように意図される。本明細書で使用される場合、「より高い仕事係数」は、材料が少なくとも約4.4eVの仕事係数を有することを意味するように意図される。
【0065】
カソード層のための材料は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、2族金属(例えば、Mg、Ca、Ba等)、12族金属、ランタニド(例えば、Ce、Sm、Eu等)およびアクチニド(例えば、Th、U等)から選択され得る。アルミニウム、インジウム、イットリウムおよびそれらの組合せのような材料も使用してよい。カソード層150のための材料の具体的な非限定的な例としては、限定されないが、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユーロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組合せが挙げられる。
【0066】
カソード層150は、通常、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。一般的に、アノード層110に関して上記で説明される通り、カソード層はパターン化される。デバイスが配列内に位置する場合、カソード層150を実質的に平行のストリップにパターン化してよく、ここでは、カソード層の長さは、実質的に同一方向に、アノード層ストリップの長さに対して実質的に垂直に延在する。ピクセルと呼ばれる電子的要素は、クロスポイント(配列を平面または上面から見た時に、アノード層ストリップがカソード層ストリップと交差する点)で形成される。
【0067】
他の実施形態において、有機電子デバイス内に追加の層が存在してもよい。例えば、バッファ層120とEL層130との間の層(示されていない)は、陽性電荷輸送、層のバンドギャップ整合、保護層としての機能等を促進し得る。同様に、EL層130とカソード層150の間の追加の層(示されていない)は、陰性電荷輸送、層間のバンドギャップ整合、保護層としての機能等を促進し得る。当該分野において既知である層を使用することができる。加えて、上記層のいずれも、2つ以上の層から製造することができる。あるいは、無機アノード層110、バッファ層120、EL層130およびカソード層150のいくつか、または全てを表面処理して、電荷担体輸送効率を増加させることができる。それぞれの成分層の材料の選択は、高いデバイス効率を有するデバイスを提供する目標と、製造コスト、製造の複雑さ、または潜在的な他の要因との釣り合いによって決定されてよい。
【0068】
異なる層が任意の適切な厚さを有してよい。無機アノード層110は、通常、約500nm以下、例えば、約10nm〜200nmであり、バッファ層120は、通常、約250nm以下、例えば、約50nm〜200nmであり、EL層130は、通常、約1000nm以下、例えば、約50nm〜80nmであり、任意の層140は、通常、約100nm以下、例えば、約20nm〜80nmであり、そしてカソード層150は、通常、約100nm以下、例えば、約1nm〜50nmである。アノード層110またはカソード層150が、少なくともいくつかの光を透過する必要がある場合、かかる層の厚さは、約100nmを超えてはならない。
【0069】
電子デバイスの適用に依存して、EL層130は、信号によって活性化される発光層(例えば、発光ダイオード)、または印加電位の有無に関わらず放射エネルギーに応答し、信号を生じる材料の層(例えば、検出器またはボルタ電池)であり得る。放射エネルギーに応答する電子デバイスの例は、光導電セル、フォトレジスター、光スイッチ、バイオセンサー、フォトトランジスターおよび光電管、ならびに光電池から選択される。この記述を読んだ後、当業者は、それらの特定の適用に適切である材料を選択することができるだろう。添加剤の有無に関わらず、発光材料をもう1つの材料のマトリックスに分散してもよく、または単独の層を形成してもよい。EL層130は、一般的に、約50nm〜500nmの範囲の厚さを有する。
【0070】
有機発光ダイオード(OLED)において、カソード150およびアノード110層のそれぞれからEL層130中へ注入される電子および正孔は、ポリマーにおいて陰性および陽性荷電ポラロンを形成する。これらのポラロンは適用された電場の影響下で移動し、逆荷電種を有するポラロンエキシトンを形成し、その後、放射再結合を受ける。通常、約12ボルト未満であり、多くの例で約5ボルト以下である、アノードとカソードとの間の十分な電位差がデバイスに印加されてよい。実際の電位差は、より大きい電子部品におけるデバイスの使用に依存する。多くの実施形態において、電子デバイスの操作間、アノード層110は正の電圧に偏り、そしてカソード層150は、実質的に地電位またはゼロボルトである。回路の一部として、電子デバイスに電池または他の電源が電気的に連結してもよいが、図1には説明されていない。
【0071】
ポリマーアニリンとコロイド形成ポリマー酸とを含む水性分散物からキャスティングされたバッファ層によって提供されたOLEDは、改善された寿命を有することが見出された。バッファ層は、ポリアニリンとフッ素化ポリマースルホン酸コロイドとの水性分散物からキャスティングされてもよく、一実施形態において、水性分散物は、pHが約3.5より高くまで調整されたものである。
【0072】
より酸性が低いか、またはpHが中性である材料を使用することによって、デバイス製造の間、ITO層のエッチングの著しい低下が導かれ、従って、OLEDのポリマー層中へのより低濃度のInおよびSnイオン拡散が導かれる。InおよびSnイオンは、操作寿命の低下に寄与することが疑われているため、これは非常に有益である。
【0073】
より酸性が低いことも、製造間および長期間の貯蔵間のディスプレーの金属部品(例えば、電気接触パッド)の腐食を低下させる。PANI/PSSA残渣は残留湿分と相互作用して、ディスプレー中に酸を放出し、緩慢な腐食をもたらす。
【0074】
本発明のバッファ層は、より低い湿分取り込みを有し、従って、デバイス製造プロセスにおいて、より少量の水が含まれる。このより低い湿分レベルによって、デバイスのより良好な操作寿命、および腐食の減少をもたらすことができる。
【0075】
酸性PANI/PSSAを分配するために使用される装置は、PANI/PSSAの強酸性を取り扱えるように特別に設計される必要がある。例えば、PANI/PSSAをITO基材上へコーティングするために使用されるクロムメッキスロットダイコーティングヘッドは、PANI/PSSAの酸性のため腐食することが見出された。コーティングされたフィルムがクロム粒子によって汚染されるため、これはヘッドを使用不可にさせる。また、特定のインクジェット印刷ヘッドも、OLEDディスプレーの製造のために興味深い。それらは、ディスプレーの正確な位置で、バッファ層および発光ポリマー層の両方を分配するために使用される。これらの印刷ヘッドは、インクの粒子の内部トラップとして、ニッケルメッシュフィルターを含有する。これらのニッケルフィルターは、酸性PANI/PSSAによって分解し、使用不可となる。これらの腐食の問題のいずれも、酸性度が低い本発明の水性PANI分散物では生じない。
【0076】
さらに、特定の発光ポリマーは、酸性条件に感応性であることが見出され、そしてそれらが酸性バッファ層と接触する場合、それらの発光能力は低下する。より低い酸性度または中性のため、本発明の水性PANI分散物を使用してバッファ層を形成することが有利である。
【0077】
2つ以上の異なる発光材料を使用するフルカラーまたはエリアカラーディスプレーの製造は、それぞれの発光材料が、性能を最適化するために異なるカソード材料を必要とする場合、複雑となる。ディスプレーデバイスは、発光する多数のピクセルから製造される。多色デバイスにおいて、異なる色を発光する少なくとも2つの異なる種類のピクセル(サブピクセルと称されることもある)が存在する。サブピクセルは、異なる発光材料によって構成される。全ての発光素子を有し、良好なデバイス性能を与える単一カソード材料を有することが非常に望ましい。これは、デバイス製造の複雑さを最小化する。本発明の水性PANI分散物からバッファ層が製造される多色デバイスにおいて、それぞれの色の良好なデバイス性能を保持しながら、一般的なカソードを使用できることが予測される。上記材料のいずれかからカソードを製造することができ、アルミニウムのようなより不活性な金属によってオーバーコーティングされたバリウムであってもよい。
【0078】
ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物を含む1つまたは複数の層を有することから利益を得る、他の有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射へと変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレーまたはダイオードレーザー)、(2)電子工学プロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器(例えば、光導電セル、フォトレジスター、光スイッチ、フォトトランジスター、光電管)、IR検出器)、(3)放射を電気エネルギーへと変換するデバイス(例えば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスターまたはダイオード)が挙げられる。
【0079】
水溶液または溶媒から適用された導電性ポリマーの層で、バッファ層をさらにオーバーコーティングすることができる。導電性ポリマーは、電荷輸送を促進することができ、そしてまた被覆性も改善することができる。適切な導電性ポリマーの例としては、限定されないが、ポリアニリン、ポリチオフェン、同時係属中の出願デュポン番号PE0688号に開示されるもののようなポリチオフェン−ポリマー酸コロイド、またはポリチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール、ポリアセチレン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0080】
本発明のさらにもう1つの実施形態において、ポリアニリンとコロイド形成ポリマースルホン酸とを含む電極を含む薄膜電界効果トランジスターが提供される。薄膜電界効果トランジスターにおいて電極として使用するために、導電性ポリマーまたは半導電性ポリマーのいずれかの再溶解を回避するため、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを分散または溶解するための液体は、半導電性ポリマーおよび半導電性ポリマーのための溶媒と適合性でなければならない。導電性ポリマーから製造された薄膜電界効果トランジスター電極は、10S/cmより高い導電性を有するべきである。しかしながら、水溶性ポリマー酸によって製造された導電性ポリマーは、約10−3S/cm以下の範囲の導電性のみを提供する。従って、一実施形態において、電極は、金属ナノワイヤー、炭素ナノチューブ等のような導電性促進剤との組合せで、ポリアニリンとフッ素化コロイド形成ポリマースルホン酸とを含む。さらにもう1つの実施形態において、電極は、金属ナノワイヤー、炭素ナノチューブ等のような導電性促進剤との組合せで、ポリアニリンとコロイド形成ペルフルオロエチレンスルホン酸とを含む。ゲート電極、ドレイン電極またはソース電極として、薄膜電界効果トランジスターにおいて本発明の組成物を使用してよい。
【0081】
図2に示される通り、本発明のもう1つの説明は薄膜電界効果トランジスターである。この説明において、絶縁性ポリマーまたは絶縁性酸化物薄膜210は、1つの側面でゲート電極220を有し、そして他の側面でドレイン電極230およびソース電極240を有する。ドレイン電極とソース電極との間に、有機半導電性フィルム250を配置する。溶液薄膜沈着における有機ベース絶縁性ポリマーおよび半導電性ポリマーとの適合性のため、金属ナノワイヤーまたは炭素ナノチューブを含有する本発明の水性分散物は、ゲート、ドレインおよびソース電極の適用に関して理想的である。本発明の導電性組成物、例えば、PANIおよびコロイド状ペルフルオロエチレンスルホン酸は、コロイド状分散物として存在するため、高導電性に対する浸透限界値を達成するために、より重量%の低い導電性充填材が必要とされる(水溶性ポリマースルホン酸を含有する組成物と相関して)。
【0082】
本発明のさらにもう1つの実施形態において、ポリマー酸コロイドの存在下でアニリンモノマーを重合する工程を含む、ポリアニリンの水性分散物の製造方法が提供される。もう1つの実施形態において、コロイド形成ポリマー酸は、カルボン酸、アクリル酸、スルホン酸、リン酸等、または上記の組合せである。本発明の方法の一実施形態において、ポリアニリンはポリアニリンであり、そしてコロイド形成ポリマー酸はフッ素化されている。本発明の方法のもう1つの実施形態において、ポリアニリンは非置換ポリアニリンであり、そしてコロイド形成ポリマー酸は過フッ素化されている。さらにもう1つの実施形態において、コロイド形成酸はポリエチレンスルホン酸である。さらにもう1つの実施形態において、ポリエチレンスルホン酸はペルフッ素化されている。重合は、水の存在下で実施される。さらにもう1つの実施形態において、ペルフルオエオエチレンスルホン酸を含有する重合は、上記で明示された追加の酸と一緒に実行される。得られる反応混合物をイオン交換樹脂によって処理し、反応副生物を除去して、所望のpH水性分散物を達成することができる。もう1つの実施形態において、イオン交換体または塩基性水溶液によってpHをさらに調整することができる。
【0083】
以下の非限定的な実施例を参照することによって、本発明はさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0084】
(比較例1)
この比較例は、オルメコン カンパニー(Ormecon Company)のD 005 W OLDから調製された乾燥固体の高い湿分取り込み、および再分散性を説明する。乾燥フィルムと接触する水の酸性度も説明する。
【0085】
オルメコン ヒェミー GmbH アンド Co.KG(Ormecon Chemie GmbH and Co.KG)(ドイツ、アンマースベック(Ammersbeck,Germany))から購入したD 1005 W LEDは、水性ポリアニリン分散物である。ポリアニリンポリマーを、アニリンと水溶性ポリ(スチレンスルホン酸)との重合から製造した。窒素流体によって、約15mlの水性分散物を乾燥させた。0.05gの乾燥ポリマーフィルムを、pH7を有する0.45gの脱イオン水を混合させた。カラー ペーハースト(Color pHast.)(登録商標)指示ストリップ(EM サイエンス(EM Science)、pH0〜14の範囲、カタログ番号9590)の断片によって、pHを測定した。湿潤ストリップの色を、pH判断のための色チャートと比較した。ポリマーフィルムを脱イオン水と接触させたらすぐに、水は深緑色に変化し、その後、すぐに水中に完全に分散した。水のpHは約1であり、これは非常に酸性であった。また周囲条件(約25℃/50%相対湿度(RH))において、乾燥フィルムは約24%までの湿分を取り込んだ。この例は、水溶性ポリマー酸から製造されたポリアニリンは、水中に容易に分散し、低pHの分散物を形成することを説明する。また、これは相当な量の湿分を吸収する。全ての結果は、酸が非常に可動性であり、光ポリマー層のような隣接ポリマー層中への高い移動傾向を有し、それらの機能に損害を与えることを示す。
【0086】
(比較例2)
この比較例は、分散ポリアニリンがアニリンと水溶性PAAMSAから製造される、水性PAni/PAAMPSA分散物から調製された乾燥固体の再分散性を説明する。また水性分散物の酸性度も説明する。
【0087】
60.65g(43.90ミリモルの酸モノマー単位)のPAAMPSA水溶液(アルドリッチ(Aldrich)、カタログ番号19,197−3、ロット番号07623EO、M約200万、水中固体15%)を、ジャケット付き500ml三つ口フラスコに導入し、続いて335.07gの脱イオン水を加えた。フラスコに、空気駆動式オーバーヘッド撹拌機を動力源とする撹拌パドル、および過硫酸アンモニウムを添加するための小型管を装備した。小型管を、先端部を取り外したガラスピペット内に配置し、このピペットを29サイズのセプタ(Septa)を通して挿入し、管の末端がピペットから約1/2インチ反応混合物上に延在するようにした。ジャケット付きフラスコ中の重合液の温度を監視するための注入口を備えた熱電対を使用して、22℃で流体の循環を保持した。PAAMPSA/水混合物の撹拌開始後、全容ピペットを介して、新たに蒸留したアニリン(4.0mL、43.9ミリモル)をフラスコに添加した。約1時間、混合物を撹拌しながら混合した。撹拌を続けながら、過硫酸アンモニウム(4.01g、17.572ミリモル、純度99.999+%、アルドリッチ(Aldrich)から)をシンチレーションバイアル中に集合させ、そしてこの集合体を16.38gの脱イオン水と混合した。この混合物を、17ゲージシリンジ針を使用して、フラスコの管に連結したノーム−ジェクト(Norm−Ject)30mlシリンジに配置した。このシリンジを、30分かけて過硫酸アンモニウム(APS)を添加するようにプログラムされたハーバード アパラタス 44 シリンジ ポンプ(Harvard Apparatus 44 Syringe Pump)に連結した。APS添加の間、混合物の温度は約23℃であった。APS添加の1分後、反応混合物は青色に変わり、暗色化が始まった。APS溶液の添加完了後、一定の撹拌をしながら反応を24時間続行した。
【0088】
24時間後、反応混合物を4Lプラスチックナルゲン(Nalgen)(登録商標)ビーカー中に注入し、オーバーヘッド撹拌機からの撹拌を開始し、そしてアセトン(2000L)を4Lビーカー中に注入した。アセトン混合物の撹拌を30分間続けた。一度、撹拌を停止し、混合物を静置し、2層化させた。ほとんどの赤黄色液体相をデカンテーションし、タール質の固体生成物を残し、次いで、これをエルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに移した。撹拌のために撹拌ブレードを使用できるような様式で、フラスコを配置した。さらに430mlの新たなアセトンを迅速にビーカーに添加した。これを15分間撹拌した。これによってスラリーが生じ、一片のワットマン(Whatman)#54濾紙を備えたブフナー(Buchner)漏斗を通して吸引濾過する前に、これを約30分間静置させた。母液は無色透明であった。さらに430mlの新たなアセトンを迅速に生成物に添加した。これを約90分間撹拌した。一片のワットマン(Whatman)#54濾紙を備えたブフナー(Buchner)漏斗を通して吸引濾過する前に、このスラリーを約4時間静置させた。濾紙上に、緑色の固体生成物を収集した。濾液は、それに関連した非常に淡い緑色を有した。濾過ケーキは微細粒子を有するが、いくらかの大きい粒子も有した。漏斗およびその内容物を約2日間、真空オーブン中に置いた(約20インチ水銀、周囲温度)。収量は、11.93gであった。
【0089】
0.31gの上記製造されたPAni/PAAMPSA粉末を、20.38gの脱イオン水と混合した。ポリマー粉末は水中に非常に迅速に分散し、1.5%(w/w)分散物を形成した。上記カラーペーハースト(Color pHast.)(登録商標)指示ストリップの一片を使用するpH試験のために、1.5gの分散物を3.0gの脱イオン水と混合した。分散物のpHは約3である。この例は、水溶性ポリマー酸によって製造されたポリアニリンは迅速に水中に分散して、低pHの分散物を形成することを説明する。結果は、酸が非常に可動性であり、光ポリマー層のような隣接ポリマー層中への移動傾向を有し、それらの機能に損害を与えることを示す。
【0090】
(実施例1)
この実施例は、分散ポリアニリンが、アニリンと、ナフィオン(Nafion)(登録商標)、コロイド状ペルフルオロエチレンスルホン酸とから製造される、水性PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物の調製を説明する。またこの実施例は、水性PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物から調製された乾燥固体の非分散性および低湿分取り込みも説明する。また、乾燥フィルムと接触する水の中性も説明する。
【0091】
本発明において、2000年11月21日発行の米国特許公報(特許文献6)に記載の方法に従って製造されたナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマー分散物を使用した。ナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマー分散物試料は、水中12.0%(w/w)ペルフルオロエチレンスルホン酸コロイドを含有し、そしてナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマーは、1050g/モルのモノマー単位の酸を有する。ジャケット付き500ml三つ口フラスコ中に、191.63g(21.90ミリモルのナフィオン(Nafion)(登録商標)モノマー単位)のナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマー分散物および206.32gの脱イオン水を注入した。フラスコに、空気駆動式オーバーヘッド撹拌機を動力源とする撹拌パドル、および過硫酸アンモニウムのための小型管を装備した。小型管を、先端部を取り外したガラスピペット内に配置した。このピペットを29サイズのセプタ(Septa)を通して配置し、管がピペットから約1/2インチ反応混合物上に延在するようにした。熱電対は、20℃の流体の循環を可能にする、ジャケット付きフラスコ中の重合液の温度を監視するための注入口を有する。次いで、ナフィオン(Nafion)(登録商標)/水混合物の撹拌を開始した。次いで、全容ピペットを介して、2.0ml(21.9ミリモルのアニリン)の蒸留アニリンを添加した。これを約1時間撹拌した。撹拌しながら、2.02g(8.852ミリモル)の過硫酸アンモニウム(純度99.999+%、アルドリッチ(Aldrich)から)をシンチレーションバイアル中に集合させた。次いで、この集合体を8.16gの脱イオン水と混合した。次いで、これを、17ゲージシリンジ針を使用して、前記管に連結したノーム−ジェクト(Norm−Ject)30mlシリンジに吸引させた。このシリンジを、ハーバード アパラタス 44 シリンジ ポンプ(Harvard Apparatus 44 Syringe Pump)に連結した。このシリンジポンプは、30分かけて過硫酸アンモニウム(APS)を添加するように設定されたが、実際の添加時間は28分であった。重合間、温度は約20℃であった。反応混合物は非常に泡沫状であり、APS添加の20分以内に青色に変わった。1時間以内で、重合はすでに非常に暗色になり、非常に均質であるように見えた。重合を約25時間続けて、重合液の全内容物を1リットルのエルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコ中に注入した。
【0092】
重合液は深緑色であり、これは、導電性ポリアニリンに対して予期される色である。液体を44時間、不攪乱状態のままにした。驚くべきことに、重合液は、上部の透明液層と底部の緑色沈殿物とを意味する二相に分離しないことが発見された。この結果は、ポリアニリン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の安定水性分散物が製造されたことを明白に示す。
【0093】
次いで、重合液を、二片のワットマン(Whatman)#54濾紙を含有するブフナー(Buchner)漏斗を通して吸引濾過した。濾液が通過を開始した時、それは深緑色であり、濾紙の目詰まりのため、より色が薄くなった。濾過は極端に遅くなり、従って、濾紙を数回変えなければならなかった。収集した濾過ケーキは、まだ湿っていたが、400ml脱イオン水中に再分散させた。同様の様式で濾過を実行し、そして収集した濾過ケーキは、まだ湿っていたが、300ml脱イオン水中に再分散させた。
【0094】
300mlのPAni/ナフィオン(Nafion)分散物の部分を1週間、不攪乱状態のままにした。再度、いくらかの緑色沈殿が底部にあったが、透明液相への分散物の分離はない。窒素流体にいよって分散物の部分を乾燥させ、固体パーセントのための固体フィルムを形成した。これは3.2%であると決定された。次いで、乾燥フィルムを、非常に深緑色である微細粉末へと粉砕した。TGAは、25℃/50%RHで平衡である時に、乾燥粉末が1.7%のみの湿分を吸収することを示す。
【0095】
0.1255gのPAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)粉末を、4.8770gの脱イオン中性水と混合し、振盪機で撹拌した。水が退色することなく、PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマー粉末はそのまま残る。ペーハースト(pHastt)(登録商標)リトマス紙の一片で試験した時に、水のpHは中性のままである。この結果は、水との接触時にポリマー酸はポリマー中に残り、これは中性のままであることを明白に示す。
【0096】
(実施例2)
この実施例は、水性PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物の調製、ならびに分散物の安定性およびpHに及ぼす樹脂処理の影響を説明する。またこの実施例は、水性PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物から調製された乾燥固体の非分散性および低湿分取り込みも説明する。また、乾燥フィルムと接触する水の中性も説明する。
【0097】
本発明の実施例において、アニリンとの重合のために、SE10072 ナフィオン(Nafion)(登録商標)を使用した。ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、本願特許出願人から市販品として入手可能である。2000年11月21日発行の米国特許公報(特許文献6)に記載の、2nm〜30nmの範囲のコロイド径を有する本発明の実施例1で使用されるナフィオン(Nafion)(登録商標)に対して、SE10072のナフィオン(Nafion)(登録商標)は40nm〜140nmの範囲のコロイド径を有する。
【0098】
PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を製造するための本発明の実施例1に記載の重合手順に厳密に従った。本実施例で使用されるSE10072 ナフィオン(Nafion)(登録商標)コロイド状分散物は、水中11.2%(w/w)ペルフルオロエチレンスルホン酸コロイドを含有する。ナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマーは、約920g/モルのモノマー単位の酸を有する。ジャケット付き500ml三つ口フラスコ中に、97.29g(11.84ミリモルのナフィオン(Nafion)(登録商標)モノマー単位)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物および296.15gの脱イオン水を注入した。次いで、ジャケット付きフラスコ中に連続的に20℃の流体を循環させながら、ナフィオン(Nafion)(登録商標)/水混合物の撹拌を開始した。次いで、全容ピペットを介して、フラスコに1.079ml(11.84ミリモル)の蒸留アニリンを添加した。これを1時間撹拌した。撹拌しながら、1.08g(4.73ミリモル)の過硫酸アンモニウム(純度99.999+%、アルドリッチ(Aldrich)から)をシンチレーションバイアル中に集合させた。次いで、この集合体を4.38gの脱イオン水と混合した。34分間で、過硫酸アンモニウム溶液を反応混合物に添加した。重合間、温度は約20.4℃であった。反応混合物は泡沫状であった。1時間以内で、重合はすでに非常に深緑色になり、均質ではないように見えた。重合の小滴を顕微鏡スライド上に置いた。これは、一度乾燥させると、非常に粗いフィルムを形成した。約24.5時間、重合を続けた。重合液を反応器から2つのプラスチックボトルへ移した。一部は184gの重量であり、もう一部は203gの重量であった。184g部分を一晩静置させた。これは二相に分離した。上層は透明液体であるが、底層は深緑色沈殿であった。
【0099】
203g部分の重合液を7.69gのダウエックス(Dowex)(登録商標)550Aおよび7.94gのダウエックス(Dowex)(登録商標)66と混合し、これを反応フラスコに添加し、そして20時間撹拌させた。ダウエックス(Dowex)550Aは第四級アミンアニオン交換樹脂であり、そしてダウエックス(Dowex)66は第三級アミンイオン交換樹脂である(ミシガン州、ダウ ケミカル カンパニー(Dow Chemical Company,MI))。使用前の水洗浄で色または匂いがなくなるまで、脱イオン水で樹脂を繰返し洗浄した。次いで、樹脂処理スラリーを、チーズクロス(Cheese Cloth)を通して直接、1リットルビーカー中へ前置濾過した。500メッシュステンレス鋼を通して、第2の濾過を実行した。濾液は安定であり、0.45ミクロンdpフィルター(ワットマン(Whatman)25mm GDX、カタログ番号:6992−2504)を通過することができた。ジェンコ エレクトロニクス インコーポレイテッド(Jenco Electronics,Inc.)からのpHメーター モデル63で、濾過された分散物のpHを測定し、7.4であることがわかった。樹脂処理は、明らかに、PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)重合液を安定分散物にさせた。使用されたイオン交換樹脂の量および樹脂処理時間に依存して、重合液のpHを約1.5から任意の中性未満のpHまで調整することができることも理解されるべきである。1モルのアニリン/1モルのナフィオン(Nafion)(登録商標)/0.4モルの過硫酸アンモニウムの重合から誘導された液体の典型的なpHは、1.5である。
【0100】
一定重量まで、流動窒素によって、小部分の樹脂処理PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を乾燥させた。次いで、これを周囲室温で平衡状態にさせ、湿分を吸収させた。湿分取り込みは3.6%であることが決定された。乾燥固体は水中に再分散せず、固体に接触している水は、ジェンコ エレクトロニクス インコーポレイテッド(Jenco Electronics,Inc.)からのpHメーター モデル63で測定すると7のpHを有した。
【0101】
(実施例3)
この実施例は、高pHの水性PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物の調製、およびデバイス特性を説明する。
【0102】
本発明実施例において、アニリンとの重合のために、SE10072 ナフィオン(Nafion)(登録商標)を使用した。ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、本願特許出願人から市販品として入手可能である。2000年11月21日発行の米国特許公報(特許文献6)に記載の、2nm〜30nmの範囲のコロイド径を有する本発明の実施例1で使用されるナフィオン(Nafion)(登録商標)に対して、SE10072のナフィオン(Nafion)(登録商標)は40nm〜140nmの範囲のコロイド径を有する。
【0103】
PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を製造するための本発明の実施例1に記載の重合手順に厳密に従った。本実施例で使用されるSE10072 ナフィオン(Nafion)(登録商標)コロイド状分散物は、水中11.2%(w/w)ペルフルオロエチレンスルホン酸コロイドを含有する。ナフィオン(Nafion)(登録商標)ポリマーは、約920g/モルのモノマー単位の酸を有する。ジャケット付き1リットル三つ口フラスコ中に、194.6g(23.69ミリモルのナフィオン(Nafion)(登録商標)モノマー単位)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物および602.28gの脱イオン水を注入した。次いで、ジャケット付きフラスコ中に連続的に20℃の流体を循環させながら、ナフィオン(Nafion)(登録商標)/水混合物の撹拌を開始した。次いで、全容ピペットを介して、フラスコに2.159ml(23.69ミリモル)の蒸留アニリンを添加した。これを1時間撹拌した。撹拌しながら、2.18g(9.553ミリモル)の過硫酸アンモニウム(純度99.999+%、アルドリッチ(Aldrich)から)をシンチレーションバイアル中に集合させた。次いで、この集合体を8.74gの脱イオン水と混合した。30分間で、過硫酸アンモニウム溶液を反応混合物に添加した。重合間、温度は約20.4℃であった。反応混合物は非常に泡沫状であった。1時間以内で、重合はすでに非常に深緑色になり、非常に均質であるように見えた。重合を約24時間続けた。18.82gのダウエックス(Dowex)(登録商標)550Aおよび14.88gのダウエックス(Dowex)(登録商標)66を反応フラスコに添加し、4.4時間撹拌させた。ダウエックス(Dowex)550Aは第四級アミンアニオン交換樹脂であり、そしてダウエックス(Dowex)66は第三級アミンイオン交換樹脂である(ミシガン州、ダウ ケミカル カンパニー(Dow Chemical Company,MI))。使用前の水洗浄で色または匂いがなくなるまで、脱イオン水で樹脂を繰返し洗浄した。次いで、樹脂処理スラリーを、チーズクロス(Cheese Cloth)を通して直接、1リットルビーカー中へ前置濾過した。500メッシュステンレス鋼を通して、第2の濾過を実行した。収量:670.80g。
【0104】
上記調製された約30mlの分散物試料を、0.45ミクロンdpフィルター(ワットマン(Whatman)25mm GDX、カタログ番号:6992−2504)を通して濾過した。ジェンコ エレクトロニクス インコーポレイテッド(Jenco Electronics,Inc.)からのpHメーター モデル63で、濾過された分散物のpHを測定し、7.4であることがわかった。
【0105】
発光測定のために、800rpmのスピン速度で7.2のpHを有する水性PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散物をITO/ガラス基材上にスピンコーティングし、1000Åの厚さを得た。90℃で30分間、窒素中で、PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)コーティングされたITO/ガラス基材を乾燥させた。次いで、PAni/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層に、ポリ(置換フェニレンビニレン)(ドイツ、フランクフルトのコビオン カンパニー(Covion Company,Frankfurt,Germany))であるスーパーイエロー発光体(PDY131)をトップコーティングした。エレクトロルミネッセンス(EL)層の厚さは、約70nmであった。テンコー500 サーフェイス プロフィラー(TENCOR 500 Surface Profiler)を使用して、全てのフィルムの厚さを測定した。カソードに関して、1×10−6トールの真空下でEL層の上部にBaおよびAl層を蒸着させた。Ba層の最終的な厚さは30Åであり、Al層の厚さは3000Åであった。以下の通り、デバイス特性を試験した。236ソース測定ユニット(ケイスレー(Keithley))、および較正ケイ素フォトダイオードを有するS370オプトメーター(UDTセンサー)によって、電流対電圧、発光強度対電圧、および効率を測定した。1つの発光デバイスは3.65ボルトの操作電圧を示し、そして発光効率は、200Cd/mで7.2Cd/A(Cd:カンデラ、A:アンペア数)発光効率である。
【0106】
(実施例4)
室温で、500mL二重ジャケット付き反応容器中に直接、92.00gの脱イオン(DI)水および92.00gの99.7%n−プロパノールを集合させた。次に、ピペットを介して、3.58mL(43.59ミリモル)の37重量%HClおよび1.988mL(21.80ミリモル)のアニリン(蒸留)を反応容器に添加した。頭上に500RPMに設定されたU型撹拌ロッドを備えて、混合物を撹拌した。5分後、ガラス漏斗を介して、0.3μmプロフィールフィルターを通過した91.98g(10.90ミリモル)の水分散性ナフィオン(Nafion)(登録商標)(DE−1020、10.9%固体、920EW)をゆっくり添加した。さらに5分間、混合物を均質化させた。1時間かけて、シリンジ注入ポンプを介して、20gのDI水に溶解された1.99g(8.72ミリモル)の過硫酸アンモニウム(99.99+%)を反応物に滴下して添加した。8分後、溶液は淡いトルコ色に変わった。濃深緑色に変化する前に、溶液は濃青色へと進行した。APS添加開始後、混合物を90分間撹拌し、そして7.00gのアンバーリスト(Amberlyst)−15(ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム アンド ハース カンパニー(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,PA))カチオン交換樹脂(32%n−プロパノール(DI水中)混合物で数回すすぎ、窒素下で乾燥させた)を添加し、そして一晩200RPMで撹拌を開始した。翌朝、鋼メッシュを通して混合物を濾過し、アンバージェット(Amberjet)4400(OH)(ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム アンド ハース カンパニー(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,PA))アニオン交換樹脂(32%n−プロパノール(DI水中)混合物で数回すすぎ、窒素下で乾燥させた)と一緒に、pHが0.9から4.4へと変更するまで撹拌した。樹脂を再び濾過した。使用前、PVDF膜を有する0.45μmミリポア ミレックス(Millipore Millex)−HVシリンジフィルターを通して、分散物を濾過した。収量:32%n−プロパノール/68%DI水中4%固体を有する約300gの分散物。
【0107】
この分散物を1600RPMでガラス上にスピンし、1151Åの厚さを有するフィルムを得た。導電性は、1.36×10−5S/cmであった。
【0108】
実施例3に記載の通り、デバイスを製造した。このデバイスは、以下に与えられる性能を有した。ここで、t1/2は、示された温度で、輝度が初期の輝度の2分の1になる後の連続操作時間である。
600cd/mにおける電圧および効率:3.45Vおよび9.8cd/A
−7Vにおける漏洩電流:2μA
80℃におけるt1/2(初期の輝度:412cd/m):97時間
【0109】
(実施例5)
室温で、500mL二重ジャケット付き反応容器中に直接、88.11gの99.7%n−プロパノールおよび88.11gのDI水を集合させた。次に、ピペットを介して、0.167mL(2.0ミリモル)の37重量%HClおよび0.901mL(9.9ミリモル)のアニリン(蒸留)を反応容器に添加した。頭上に500RPMに設定されたU型撹拌ロッドを備えて、混合物を撹拌した。5分後、ガラス漏斗を介して、0.3μmプロフィールフィルターを通過した100.03g(11.90ミリモル)の水分散性ナフィオン(Nafion)(登録商標)(DE−1020、11.1%固体、935EW)をゆっくり添加した。さらに10分間、混合物を均質化させた。6時間かけて、シリンジ注入ポンプを介して、20gのDI水に溶解された2.82g(12.4ミリモル)の過硫酸アンモニウム(99.99+%)を反応物に滴下して添加した。7分後、溶液は淡いトルコ色に変わった。濃深緑色に変化する前に、溶液は濃青色へと進行した。APS添加開始後、混合物を360分間撹拌し、そして7.50gのアンバーリスト(Amberlyst)−15カチオン交換樹脂(32%n−プロパノール(DI水中)混合物で数回すすぎ、窒素下で乾燥させた)を添加し、そして一晩200RPMで撹拌を開始した。翌朝、鋼メッシュを通して混合物を濾過し、アンバージェット(Amberjet)4400(OH)アニオン交換樹脂(32%n−プロパノール(DI水中)混合物で数回すすぎ、窒素下で乾燥させた)と一緒に、pHが1.3から4.8へと変更するまで撹拌した。樹脂を再び濾過した。使用前、PVDF膜を有する0.45μmミリポア ミレックス(Millipore Millex)−HVシリンジフィルターを通して、分散物を濾過した。収量:31%n−プロパノール/69%DI水中4%固体を有する約270gの分散物。
【0110】
この分散物を1000RPMでガラス上にスピンし、2559Åの厚さを有するフィルムを得た。導電性は、1.67×10−6S/cmであった。
【0111】
実施例3に記載の通り、デバイスを製造した。このデバイスは、以下の性能を有した。
600cd/mにおける電圧および効率:3.56Vおよび10.3cd/A
−7Vにおける漏洩電流:6μA
80℃におけるt1/2(初期の輝度:490cd/m):148時間
【0112】
特定の好ましい実施形態を参照しながら、本発明は詳細に記載されたが、修正および変更が、記載および請求されるものの精神および範囲内であることは理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明によるバッファ層を含む電子デバイスの断面図。
【図2】本発明による電極を含む薄膜電界効果トランジスターの断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリアニリンが、次式IIおよび次式III:
【化1】

(式中、
nは、0〜4の整数であり、
mは、1〜5の整数であるが、ただし、n+m=5であり、そして
は、独立して、出現するごとに同一であるかもしくは異なるように選択され、かつアルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボン酸、ハロゲン、シアノ、または1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、ハロ、ニトロ、シアノもしくはエポキシ部分によって置換されたアルキルから選択されるか、あるいは任意の2つのR基が一緒になって、任意選択的に1つまたは複数の二価の窒素、イオウまたは酸素原子を含んでもよい3、4、5、6または7員の芳香族環もしくは脂環式環を完成するアルキレンまたはアルケニレン鎖を形成してもよい)
から選択される式を有するアニリンモノマー単位を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コロイド形成ポリマー酸が、ポリマースルホン酸、ポリマーカルボン酸、およびポリマーリン酸、またはポリマーアクリル酸、あるいはそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コロイド形成ポリマー酸が、ペルフルオロエチレンスルホン酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
ポリアニリンと、少なくとも1つのコロイド形成ポリマー酸との水性分散物の製造方法であって、
(a)水とアニリンとの均質な水性混合物を供給する工程と、
(b)ポリマー酸の水性分散物を供給する工程と、
(c)前記アニリン混合物を、コロイド形成ポリマー酸の前記水性分散物に混合する工程と、
(d)任意の添加順序で、酸化剤および触媒を、工程(c)の前記分散物に混合する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記水性ポリアニリン分散物を、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂またはそれらの混合物であるイオン交換樹脂の少なくとも1つと接触させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸化剤、触媒、補助分散剤、補助酸、または全てのこれらの追加の加工助剤をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたはそれらの組合せから選択される酸化剤と、
硫酸第二鉄、塩化第二鉄またはそれらの混合物から選択される触媒と、
エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシドおよびそれらの組合せから選択される補助分散剤と
をさらに含み、
そして前記分散物を、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン酸、スルホン化架橋スチレンポリマー、ベンゼン−ホルムアルデヒドスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、第三級アミン、第四級アミンアニオン交換樹脂、およびそれらの混合物から選択されるイオン交換樹脂と接触させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ポリアニリンと、少なくともコロイド形成ポリマー酸との有機水性分散物を含む組成物から製造された、少なくとも1つの有機層を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスであって、前記デバイスは、光センサー、光スイッチ、フォトレジスター、フォトトランジスター、光電管、IR検出器、光電池、太陽電池、発光ダイオード、バイオセンサー、発光ダイオードディスプレーまたはダイオードレーザーであることを特徴とするデバイス。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−500461(P2006−500461A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540020(P2004−540020)
【出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/030512
【国際公開番号】WO2004/029133
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】