説明

電子放出素子、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】電子放出材料自体の劣化の少ない構造・構成を有し、コンパクトで薄型かつ低コストな電子放出素子を提供する。
【解決手段】本発明の電子放出素子10では、電子放出材料として窒化ホウ素材料13を用い、該窒化ホウ素材料を形成する基板11として、金属材料または半導体材料を用いた。これにより、基板上に良質の窒化ホウ素材料を得ることができる。また、同材料に電子を放出する際の電圧印加を行うことが可能となり、かつ、電子を供給することができる。また、窒化ホウ素材料13としてSp結合性窒化ホウ素を用い、さらには、Sp結合性窒化ホウ素として、Sp結合性5H−BN材料又はSp結合性6H−BN材料を使用することにより、従来にない高効率の電子放出特性が得られる電界電子放出素子を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に装備される帯電装置や、ディスプレイ等の画像表示装置に用いられる電子放出素子に関し、さらにはその電子放出素子を用いた帯電装置、前記電子放出素子または前記帯電装置を用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、あるいはプリンタと複写機及びファクシミリの機能を備えた複合機等の各種画像形成装置として電子写真プロセスを用いる画像形成装置が知られている。この電子写真プロセスにおいて、像担持体としての感光体に静電潜像を形成するために像担持体を一様に帯電させる帯電装置にはコロナ放電を利用するものが多い。
【0003】
このコロナ帯電方式は、白金やタングステンの直径50〜200μm程度のワイヤー電極、あるいは、ステンレス材料などの針状電極の周囲に、導電性のケース電極を設け、電極とケースの間に直流又は交流の高圧バイアスを印加して、電極周辺での空気分子が電離したイオンを用いて、感光体を帯電させるものであり、遠距離からの均一な帯電が可能である。
【0004】
しかしながら、コロナ帯電方式は、空気を電離・イオン化させるため、オゾンや窒素酸化物(NOx)といった放電生成物が生成される。その発生量はオゾン、窒素酸化物ともに60分の帯電後で4〜10ppmにも上ることが知られている。
オゾンは、高濃度で画像形成装置内に滞留すると、感光体表面を酸化し、感光体の光感度の低下や帯電能力の劣化を生じさせ、形成画像が悪化することが知られている(非特許文献1参照)。また、感光体以外の部材の劣化が促進され、部品寿命が低下する等の不具合も生じる。
【0005】
また、窒素酸化物は、次のような不具合を生じる。すなわち、放電により、窒素酸化物が発生することが知られているが、窒素酸化物は空気中の水分と反応して硝酸が生成され、また、金属などと反応して金属硝酸塩が生成される。これらの生成物は、低湿環境下では高抵抗であるが、高湿環境下では空気中の水と反応し、低抵抗となる。そのため、感光体表面に硝酸又は硝酸塩による薄い膜が形成されると、画像が流れたような異常画像が発生する。これは硝酸、硝酸塩が吸湿することで低抵抗となり、感光体表面の静電潜像が壊れてしまうためである。
【0006】
さらに、窒素酸化物は、放電後も空気中に分解されずにその場に留まっているため、窒素酸化物から生成された化合物の感光体表面への付着は、帯電を行っていないとき、すなわち、プロセスの休止期間中にも生じる。そして、この化合物は、時間が経過するにつれて、感光体の表面から内部に浸透することから、感光体の劣化の一因となっている。
この場合、感光体表面の付着物は、クリーニング時に感光体を少しずつ削りとることで除去するといった方法が取られているが、コストの上昇や経時的な劣化を生じるという新たな問題を伴っている。
【0007】
また、コロナ帯電方式は、遠距離からの放電のため、印加電圧がかなりの高電圧(4kV〜10kV)となる他、帯電電位は帯電時間によって変わるため、必要な帯電電位(400V〜1000V)を得るためには、感光体速度が大きい場合にはケース電極の感光体回転方向の幅を大きくする必要があり、プリント速度が速い画像形成装置の小型化が難しくなる。
【0008】
一方、帯電装置としては、近接ローラ帯電方式も広く使用されるようになっている。この、近接ローラ帯電方式は、感光体近傍に保持した帯電部材(帯電ローラ)と感光体との間に、直流又は交流のバイアスを印加し、両者間の空隙で放電を生じさせ、感光体を帯電させるものである。この帯電方式では、パッシェンの放電則に則った帯電現象を利用しており、所望の帯電電位に対し放電開始電圧分だけ大きい電位差を形成することで、所望の帯電電位を得ている。
【0009】
この場合、交流バイアス方式では、近接帯電部材と感光体との間で電界の向きが時間とともに交互となり、放電、逆放電が繰り返される。交流バイアス方式では、放電、逆放電によって帯電がならされ、より均一な帯電が得られる利点があるものの、放電による感光体へのハザード(大気放電によって生成される高酸化活性種によって感光体が酸化を受ける現象)が非常に大きくなっている。
【0010】
このように、感光体への電荷付与はこれまで何らかのパッシェン放電を伴う帯電手段で行われており、その結果、放電によって放電生成物が感光体表面に付着したり、放電によって生じた活性種によって感光体表面が酸化されたりするハザードは避けられない。
そのため、現在、経時的な画質の劣化を低減して画質を維持するために、上述したように感光体の表面を微小に削りながら使用している。一方、感光体を削ることは消耗であり、長期的な観点から避けることが好ましいが、前述の感光体ハザードによる画質劣化の防止とトレードオフとなっており、根本的な解決が困難である。
【0011】
さらに、帯電部材を感光体に接触させて感光体を帯電させる接触帯電装置がある。これは、例えば、ローラ状の帯電部材を感光体上に接触従動させて感光体の帯電を行なうものである。この接触帯電方式は、上述したコロナ帯電方式に比べると、オゾンの発生量、直流電圧印加時の60分帯電後のオゾン発生量が0.01ppmと少なく、また、印加電圧が低いため電源のコストが小さく、電気絶縁の設計が行い易いなどの利点を有している。
【0012】
この接触帯電方式としては、例えば特許文献1(特開昭57−178257号公報)、特許文献2(特開昭56−104351号公報)、特許文献3(特開昭58−40566号公報)、特許文献4(特開昭58−139156号公報)、特許文献5(特開昭58−150975号公報)、特許文献6(特開昭63−7380号公報)等に記載されているように、その接触又は近接部分近傍に狭い空間を形成し、パッシェンの法則で解釈できるような放電を形成することにより、感光体を帯電する方法があり、これらの場合に、帯電開始電圧以上の直流電圧を導電性部材に印加する方法や、詳しくは特許文献7(特開昭63−149669号公報)に記載されているように、目標帯電電位に相当する直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加することで帯電均一化を一層促進することができる。
【0013】
しかしながら、交流電圧を印加すると、帯電部材と感光体との間で電界の向きが時間と伴に交互となり、放電、逆放電が繰り返され、放電、逆放電によって帯電がならされ、より均一な帯電が得られる利点がある反面、電流量が増えるため、オゾン、窒素酸化物の発生量も、電流量が増えるに従って多くなり、交流印加条件によっては60分の帯電後にコロナ帯電方式に近い3ppmものオゾンが発生することもある。
【0014】
また、一方で、例えば特許文献8(特開平8−106200号公報)に記載されているように、電圧を印加した導電性部材を感光体に接触させ、感光体表面にあるトラップ準位に電荷を注入して接触注入帯電を行なう方法もある。この方法における導電性部材としては、接触/離間状態や形状の制御のしやすさといった観点から、ローラ形状の導電性部材(帯電ローラ)が汎用的に使用される。
【0015】
しかしながら、帯電ローラを構成する帯電部材がゴム材であるため、長期間、画像形成装置を停止させた場合、感光体に接した状態にあるローラが変形する可能性がある。また、ゴムは吸水しやすい材料であるため環境の変化に伴う電気抵抗変動が大きい。さらに、ゴムはその弾性を発揮させるためや劣化防止のため、数種の可塑剤や活性剤を必要としており、導電性顔料を分散させるためには分散補助剤を用いることも少なくない。つまり、感光体の表面はポリカーボネートやアクリルといった非晶性樹脂であるため、上述した可塑剤や活性剤および分散補助剤に対し非常に弱いとい問題がある。
【0016】
また、接触帯電方式では、帯電部材と感光体との間に異物を巻き込み、帯電部材が汚染されて帯電不良が発生するという問題や、直接感光体にローラが触れているために長期保存した場合に感光体が汚染され、そのために横スジ等の画像不良を生じるという問題もある。
【0017】
そこで、これらに変わる帯電技術として、電子放出材料を用いた方式が着目されつつある。例えば本出願人が先に提案した技術として、特許文献9(特開2003−145826号公報)には、絶縁層と半導体材料層、もしくは絶縁層と金属材料層よりなる電子放出層が、基板電極および薄膜電極とにより挟み込まれた構成を有する、所謂MIS(Metal Insulator Semiconductor)型やMIM(Metal Insulator Metal)型の電子放出素子と、それを用いた画像形成装置が記載されている。
【0018】
特許文献10(特開2001−250467号公報)には、先端部分に金属または合金(a)、あるいは金属を含む窒化物、炭化物、ケイ化物またはホウ化物の少なくとも1種(b)で被覆されたカーボンナノチューブを構成要素として有する電子放出素子と、それを用いた帯電器および画像形成装置が記載されている。
【0019】
特許文献11(特開2002−279885号公報)には、石英、ガラス、セラミックス、金属、シリコン基板などによって構成される支持体と、支持体の片面上に金属または合金を成膜することにより形成されたエミッタ電極と、エミッタ電極上に所定の間隔で設置された複数のアルミニウム膜を硫酸、過塩素酸などの酸中で陽極化することにより形成された複数の陽極化膜と、複数の陽極化膜の各陽極化膜間に形成され、エミッタ電極と反対側に開口部を有する細孔と、複数の陽極化膜の各陽極化膜間に形成された細孔内に底面がエミッタ電極に接するように設置され、電子を電界放出するカーボンナノチューブと、細孔の開口部を被覆する引き出し電極と、を備え、カーボンナノチューブは、エミッタ電極と陽極酸化膜と引き出し電極とに囲まれていることを特徴とする電子放出装置と、それを用いた帯電装置および画像形成装置が記載されている。
【0020】
特許文献12(特開2003−140444号公報)には、上部電極と下部電極との間に半導体層が形成されている電子放出素子であって、半導体層の半導体表面に有機化合物を吸着させて有機化合物吸着層を形成させる電子放出素子と、それを用いた帯電装置および画像形成装置が記載されている。
【0021】
その他、電子放出素子を用いるものとしては、特許文献13(特開2002−311684号公報)や特許文献14(特開2004−327084号公報)に記載されているものもある。
【0022】
【特許文献1】特開昭57−178257号公報
【特許文献2】特開昭56−104351号公報
【特許文献3】特開昭58−40566号公報
【特許文献4】特開昭58−139156号公報
【特許文献5】特開昭58−150975号公報
【特許文献6】特開昭63−7380号公報
【特許文献7】特開昭63−149669号公報
【特許文献8】特開平8−106200号公報
【特許文献9】特開2003−145826号公報
【特許文献10】特開2001−250467号公報
【特許文献11】特開2002−279885号公報
【特許文献12】特開2003−140444号公報
【特許文献13】特開2002−311684号公報
【特許文献14】特開2004−327084号公報
【特許文献15】特許第3598381号公報
【非特許文献1】明珍寿史他、「オゾンによる感光体劣化軽減のためのコロナチャージャの開発」、電子写真学会誌、第31、1、1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述したような電子放出素子を用いるものの内でも、カーボンナノ材料についての研究は近年盛んに行われており、その中でもカーボンナノチューブについての研究は広く行われ、高い電子放出能が示唆されている。例えば、上記特許文献10には、カーボンナノチューブ先端部分の構成要素を規定することでカーボンナノチューブの耐久性を向上させると共に、帯電器として非接触、接触で使用可能であることが記載されている。
【0024】
しかしながら、カーボンナノ材料は有機物であるため、電子写真方式で使用されるような大気中での電子放出では、放出された電子よって励起された酸素原子によってカーボンナノ材料そのものが酸化され、燃焼により分解されてしまい、構造的に非常に弱く所望の寿命を達成できない恐れがあるという課題がある。
また、その他の特許文献9や特許文献12に記載のMIS構造やMIM構造などを有する電子放出素子を用いた場合、十分な電子放出性が得られないという課題がある。
【0025】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子放出材料自体の劣化の少ない構造・構成を有する電子放出素子を提供することを目的とする。また、本発明は、コンパクトで薄型かつ低コスト、さらには、多種の形状にフィットできる構造・構成を有する電子放出素子を提供することを目的とする。さらに本発明は、その電子放出素子を用い、放電生成物が発生しないレベルでの電子放出を行ない得ることで像担持体のハザードを防止でき、かつ電子放出材料自体の劣化の少ない帯電装置と、この帯電装置を備えるプロセスカートリッジ、及び、その帯電装置又はプロセスカートリッジを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の目的を達成するため、本発明では以下のような技術的手段を採っている。
本発明の第1の手段は、電子放出手段として、電子放出特性を有する材料を用いた電子放出素子において、電子放出材料として窒化ホウ素材料を用い、該窒化ホウ素材料を形成する基板として、金属材料または半導体材料を用いたことを特徴とする(請求項1)。
また、本発明の第2の手段は、第1の手段の電子放出素子において、前記窒化ホウ素材料がSp結合性窒化ホウ素であることを特徴とする(請求項2)。
さらに、本発明の第3の手段は、第2の手段の電子放出素子において、前記Sp結合性窒化ホウ素が六方晶系5H型または6H型結晶を主な結晶形態として含むことを特徴とする(請求項3)。
【0027】
本発明の第4の手段は、第1〜第3のいずれか1つの手段の電子放出素子において、前記基板を構成する金属材料が、可塑性のあるリボン状であることを特徴とする(請求項4)。
また、本発明の第5の手段は、第1〜第3のいずれか1つの手段の電子放出素子において、前記基板として、絶縁材料上に金属層を設けた複合基板を用いたことを特徴とする(請求項5)
さらに、本発明の第6の手段は、第1〜第3のいずれか1つの手段の電子放出素子において、前記基板として、絶縁材料上に半導体層を設けた複合基板を用いたことを特徴とする(請求項6)。
【0028】
本発明の第7の手段は、第5または第6の手段の電子放出素子において、前記絶縁材料としてポリマーフィルムを使用した複合基板を用いたことを特徴とする(請求項7)。
また、本発明の第8の手段は、第7の手段の電子放出素子において、前記絶縁材料として膜厚が50μm〜3mmのポリマーフィルムを使用した複合基板を用いたことを特徴とする(請求項8)。
【0029】
本発明の第9の手段は、第1〜第8のいずれか1つの手段の電子放出素子において、前記電子放出材料部位が複数の独立した領域に分離され、その各領域に対して独立に電圧を設定・印加できる電圧供給手段を備えていることを特徴とする(請求項9)。
【0030】
本発明の第10の手段は、第1〜第9のいずれか1つの手段の電子放出素子において、前記基板の表面に先端の尖った突起が複数設けてあり、かつ、前記基板に形成される電子放出材料の膜厚が100μm以下であることを特徴とする(請求項10)。
【0031】
本発明の第11の手段は、被帯電体に電荷を付与して帯電する帯電装置において、前記被帯電体に電荷を付与する手段として、第1〜第10のいずれか1つの手段の電子放出素子を用いたことを特徴とする(請求項11)。
【0032】
本発明の第12の手段は、少なくとも像担持体、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記帯電手段として、第1〜第10のいずれか1つの手段の電子放出素子、あるいは第11の手段の帯電装置を備えたことを特徴とする(請求項12)。
また、本発明の第13の手段は、第12の手段の画像形成装置において、前記帯電手段は、前記像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成することを特徴とする(請求項13)。
【0033】
本発明の第14の手段は、像担持体、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくともいずれか1つと、帯電手段とを含み、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、前記帯電手段として、第1〜第10のいずれか1つの手段の電子放出素子、あるいは第11の手段の帯電装置を備えたことを特徴とする(請求項14)。
【0034】
本発明の第15の手段は、画像を形成する画像形成装置において、第14の手段のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする(請求項15)。
また、本発明の第16の手段は、多色またはカラー画像を形成する画像形成装置において、第14の手段のプロセスカートリッジを複数備えたことを特徴とする(請求項16)。
さらに本発明の第17の手段は、第15または第16の手段の画像形成装置において、前記プロセスカートリッジの帯電手段は、前記像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成することを特徴とする(請求項17)。
【発明の効果】
【0035】
第1の手段の電子放出素子では、電子放出材料として窒化ホウ素(BN)材料を用い、該窒化ホウ素材料を形成する基板として、金属材料または半導体材料を用いたことにより、基板上に良質の窒化ホウ素材料を得ることができる。また、同材料に電子を放出する際の電圧印加を行うことが可能となり、かつ、電子を供給することができる。
また、第2の手段の電子放出素子では、第1の手段の構成に加え、前記窒化ホウ素材料としてSp結合性窒化ホウ素を用いたことにより、従来にない高効率の電子放出特性が得られる電界電子放出素子を実現することができる。
さらに、第3の手段の電子放出素子では、第2の手段の構成に加え、Sp結合性窒化ホウ素として、Sp結合性5H−BN材料又はSp結合性6H−BN材料を使用したことにより、従来にない高効率の電子放出特性が得られる電界電子放出素子を実現することができる。
【0036】
第4の手段の電子放出素子では、第1〜第3のいずれか1つの手段の構成に加え、前記基板を構成する金属材料として、可塑性のあるリボン状の金属を使用したことにより、従来にない高効率の電子放出特性を有すると共に、素子自体が薄く、小型に作製でき、さらには自由な形状(例えば曲面等)にもフィットさせることができる。
また、第5の手段の電子放出素子では、第1〜第3のいずれか1つの手段の構成に加え、前記基板として、絶縁材料上に金属層を設けた複合基板を用いたことにより、従来にない高効率の電子放出特性を有すると共に、長尺、大面積に対応した電子放出素子が作製でき、かつ、基板材料の選択幅が広がり製造コストを安価にすることができる。
さらに、第6の手段の電子放出素子では、第1〜第3のいずれか1つの手段の構成に加え、前記基板として、絶縁材料上に半導体層を設けた複合基板を用いたことにより、従来にない高効率の電子放出特性を有すると共に、長尺、大面積に対応した電子放出素子が作製でき、かつ、基板材料の選択幅が広がり製造コストを安価にすることができる。
【0037】
第7の手段の電子放出素子では、第5または第6の手段の構成に加え、前記絶縁材料としてポリマーフィルムを使用した複合基板を用いたことにより、従来にない高効率の電子放出特性を有すると共に、素子自体が薄く、小型に作製でき、さらには自由な形状(例えば曲面等)にもフィットさせることができる。また、長尺、大面積に対応した電子放出素子が作製でき、かつ、基板材料の選択幅が広がり、製造コストを安価にすることができる。特に、製造時の装置への基板の装着を枚葉式ではなく、ロールtoロールにすることができ、連続的な生産が可能となり、コストの低減には絶大な効果がある。
【0038】
第8の手段の電子放出素子では、第7の手段の構成に加え、前記絶縁材料として膜厚が50μm〜3mmのポリマーフィルムを使用した複合基板を用いたことにより、電界電子放出素子の作製時に発生する、基板の反り及び基板の伸縮、ならびにその結果起こる素子の損傷が、実用上支障のない範囲に抑制され、かつ、上記で述べてきたような、ポリマーフィルムの特徴をも兼ね備えた、量産効果の大きい、そして素子自体が薄く、小型に作製でき、さらには自由な形状(例えば曲面等)にもフィットできる素子を実現することができる。
【0039】
第9の手段の電子放出素子では、第1〜第8のいずれか1つの手段の構成に加え、前記電子放出材料部位が複数の独立した領域に分離され、その各領域に対して独立に電圧を設定・印加できる電圧供給手段を備えていることにより、像担持体等の被帯電体を1ドット単位で帯電/非帯電することができるようになり、画像形成装置に用いた場合には、形成したい潜像を帯電時に直接像担持体上に形成することができ、像担持体として光半導体である感光体に潜像を形成するための露光装置を必要としなくなり、画像形成装置の低コスト化を図ることができる。
【0040】
第10の手段の電子放出素子では、第1〜第9のいずれか1つの手段の構成に加え、前記基板の表面に先端の尖った突起が複数設けてあり、かつ、前記基板に形成される電子放出材料の膜厚を100μm以下に作製したことにより、電子放出材料(窒化ホウ素材料等)に尖塔状の形状がなくても、基板に設けた突起形状によって電界が集中し電子放出が促進され、かつ材料自体が持つNEA(負の電子親和力)特性とも相まって、従来にない高効率の電子放出特性が得られる電子放出素子を実現することができる。さらに窒化ホウ素材料は導電材料(上記の基板)の表層に形成された100μm以下、さらに好ましくは50μm以下の薄膜とすることで、製造に時間がかかりコストが高くなる単結晶を用いる場合に比べて、電子放出特性をある程度維持したまま製造時間を短縮し、材料費を抑えつつコストダウンを図ることができる。あるいは、粉体化した窒化ホウ素材料を電極となる基板の導電性部分に導電的に接触させて固定化することにより、単結晶の窒化ホウ素材料を用いた場合に比べて製造工程が簡略され、コストの低減を図ることができる。
【0041】
第11の手段の帯電装置では、像担持体等の被帯電体に電荷を付与する手段として、第1〜第10のいずれか1つの手段の電子放出素子を用いたことにより、オゾンや窒素酸化物(NOx)の発生がなく被帯電体を帯電することができ、また、印加電圧を従来のコロナ帯電やローラ帯電方式に比べて低減することができるので、省エネルギーの帯電装置を構成することができる。
【0042】
第12の手段の画像形成装置では、像担持体に電荷を付与する帯電手段として、第1〜第10のいずれか1つの手段の電子放出素子、あるいは第11の手段の帯電装置を備えたことにより、オゾンや窒素酸化物(NOx)の発生がなく像担持体を帯電することができ、また、印加電圧を従来のコロナ帯電やローラ帯電方式に比べて低減することができるので、省エネルギーの画像形成装置を構成することができる。さらに、電子放出を低エネルギーで行うことができるので、感光体材料のポリカーボネートなどの有機材料をアタックして酸化・焼失させることがないので、感光体の膜削れも低減することができる。
また、第13の手段の画像形成装置では、第12の手段の構成に加え、前記帯電手段は、前記像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成する(すなわち潜像形成手段を兼ねる)ことにより、形成したい潜像を帯電時に直接像担持体上に形成することができ、像担持体として光半導体である感光体に潜像を形成するための露光装置を必要としなくなり、画像形成装置の低コスト化を図ることができる。
【0043】
第14の手段のプロセスカートリッジでは、帯電手段として、第1〜第10のいずれか1つの手段の電子放出素子、あるいは第11の手段の帯電装置を備えたことにより、第1〜第10のいずれか1つの手段の効果、あるいは第11の手段の効果に加えて、装置本体に対して着脱自在であるプロセスカートリッジ内に帯電手段を具備させることにより、メンテナンス性の向上、他の装置との一体交換を容易に行うことができるようになる。
【0044】
第15の手段の画像形成装置では、第14の手段のプロセスカートリッジを備えたことにより、メンテナンス性や交換時の作業性を向上した画像形成装置を提供することができる。
また、多色またはカラー画像形成装置では、複数の画像形成部を有するため装置が大きくなってしまい、また、クリーニングや帯電などの各ユニットが個別で故障したり、寿命による交換時期がきた場合は、装置が複雑で各ユニットの交換に非常に手間がかかることになるが、第16の手段の画像形成装置では、第14の手段のプロセスカートリッジを複数備えたことにより、ユーザーによるプロセスカートリッジの交換が可能な小型で高耐久のカラー画像形成装置を実現することができる。
さらに、第17の手段の画像形成装置では、第15または第16の手段の構成に加え、前記プロセスカートリッジの帯電手段は、前記像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成する(すなわち潜像形成手段を兼ねる)ことにより、形成したい潜像を帯電時に直接像担持体上に形成することができ、像担持体として光半導体である感光体に潜像を形成するための露光装置を必要としなくなり、画像形成装置の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の構成、動作及び作用を、図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
まず、本発明に係る帯電装置を構成する電子放出手段としての電子放出素子について図1及び図2を参照して説明する。
図1は電子放出素子の一例を示す構成説明図であり、同図(A)は電子放出素子の斜視図、同図(B)は電子放出素子の断面図を示している。図1に示す電子放出素子10は、方形ロッド状の基板を兼ねる金属材料11上に窒化ホウ素材料の薄膜13を固定化して形成したものである。
また、図2は電子放出素子の別の例を示す構成説明図であり、同図(A)は電子放出素子の斜視図、同図(B)は電子放出素子の断面図を示している。図2に示す電子放出素子20は、ワイヤー状の基板を兼ねる金属材料21上に窒化ホウ素材料の粉体23を分散して固定化して形成したものである。
【0047】
図1(又は図2)に示す電子放出素子10(又は20)は、基板を兼ねる金属材料11(又は21)に対して図示しない電源によって電圧を印加することで窒化ホウ素材料13(又は23)から電子を放出する。このとき金属材料11(又は21)はその機能から言えば電極としても機能しており、実施例のように基板として金属材料11(又は21)を使用することで、別部材として電極を設ける必要がなくなり、製造工程を省略でき、低コストに電子放出素子10(又は20)を作製することができる。本実施例では金属材料11(又は21)は、方形ロッド状(又はワイヤー状)をしているが、この形状に特に限定されるものではなく、要は導電性が有り、ある程度の剛性と製造時のプロセス温度、特に窒化ホウ素材料13(又は23)を作製・堆積するときの製膜温度に耐える材質と形状の金属であれば使用可能である。より具体的には、金属材料としてNi,Cr,Ni−Cr,W,Ta,Mo,Au,Ag,Pt,Cu,Ai,Fe等が使用可能である。
【0048】
図1(又は図2)に示す電子放出素子10(又は20)から放出された電子は、気体分子、例えば酸素、二酸化炭素、窒素またはこれらに水が付着した分子に付着し、負イオンを発生し、これらの負イオンによって被帯電体を帯電することができる。
【0049】
ここで、このような電子放出素子10(又は20)を用いた場合のオゾン及び窒素酸化物(NOx)の低減化について説明する。
一般的に、コロナ放電を用いて帯電を行なう場合においては、非常に多くのオゾンや窒素酸化物(NOx)が生じる。これは、コロナワイヤーから放出される電子のエネルギーが30eV以上であるために、電子衝突により気体分子(酸素分子、窒素分子等)が解離して反応する結果、オゾンや窒素酸化物(NOx)が発生するものである。実際、電子衝突による窒素分子の解離エネルギーは24.3eV、電子衝突による酸素分子の解離エネルギーは8eVであり、解離反応が起こって当然である。
【0050】
これに対して、図1(又は図2)に示すような窒化ホウ素材料を用いた電子放出素子10(又は20)の場合、発生する電子のエネルギーは6eV程度であり、放出された電子は気体分子の解離を起こさず、窒素酸化物もオゾンも発生しない。
これによって、放電生成物(オゾン、NOxなど)の発生がないので、放電生成物が被帯電体である像担持体表面に付着したり、放電により生じた活性な気体によって像担持体表面が酸化して劣化したりするハザードを防止できるとともに、電子放出材料そのものも酸化による燃焼などの劣化を生じなく、長期にわたり安定した帯電を行なうことができるようになる。また、低電圧動作で、短時間で十分な像担持体の帯電電位を得ることができ、さらに非接触帯電方式のため、転写残トナーの付着による劣化等を生じることもなくなる。
【0051】
次に、窒化ホウ素材料について説明する。本発明者らは電子放出用の材料を鋭意探索した結果、特定の条件下で製作した窒化ホウ素の中には、電界電子放出特性に優れた表面形状を呈してなるものが生成し、かつ強い耐電界強度を有することを見出した。すなわち、窒化ホウ素を気相反応によって基板上に堆積する場合、基板近傍に高エネルギーの紫外光を照射することで基板上に窒化ホウ素が膜状に形成され、且つ膜表面上には、先端が尖った形状の窒化ホウ素が適宜間隔を置いて光方向に自己組織的に生成・成長すること、及び、その膜に電界をかけると容易に電子を放出し、かつ、従来の電子放出材料から考えると、極めて高いレベルの電流密度を保ちつつも、材料の劣化、損傷、脱落のない極めて安定した状態、性能を維持し得ることを見出した。
【0052】
本発明の窒化ホウ素材料膜においては、電界電子放出特性に優れた表面形状が気相反応によって自己造形的に形成されるためには紫外光の照射が必要である。その理由については現段階では必ずしも明確ではないが、次のように考えることができる。すなわち、自己組織化による表面形態の形成は、イリヤ・プロゴジン等によって指摘された「チューリング構造」として把握され、前駆体物質の表面拡散と表面化学反応とが競合する、ある種の条件において出現する。ここでは、紫外光照射がその両者の光化学的促進に関わり、初期核の規則的な分布に影響していると考えられる。紫外光照射により表面での成長反応が促進されるが、これは光強度に反応速度が比例することを意味する。初期核が半球形であると仮定すると、頂点付近では光強度が大きく、成長が促進されるのに対して、周縁部分では光強度が弱まり成長が遅れる。これが先端の尖った表面形成物の形成要因の一つであると考えられる。何れにしても紫外光照射が極めて重要な役割を担っており、これが重要なポイントであることは否定できない。
【0053】
次に本発明に使用した、電界電子放出特性に優れたSp結合性窒化ホウ素膜体を得るための気相反応について条件等を説明する。使用される形成装置の反応容器は、図3に示す構造のCVD(Chemical Vapor Deposition)反応容器である。すなわち、図3において、反応容器31は、反応ガス及びその希釈ガスを導入するためのガス導入口32と、導入された反応ガス等を容器外へ排気するためのガス流出口33とを備え、ガス流出口33は図示しない真空ポンプに接続され、大気圧以下に減圧維持されている。容器内のガスの流路には窒化ホウ素析出基板34が設置され、その基板34に面した反応容器31の壁体の一部には光学窓35が取り付けられ、この光学窓35を介して基板34に紫外光36が照射されるよう、図示しないエキシマ紫外光レーザー装置が設置されている。
【0054】
ガス導入口32から反応容器31内に導入された反応ガスは、基板34の表面において照射される紫外光36によって励起され、反応ガス中の窒素源とホウ素源とが気相反応し基板上に、一般式;BNで示され、5H型または6H型多形構造を有してなるSp結合型窒化ホウ素が生成し、析出し、膜状に成長する。その場合の反応容器内の圧力は、0.001〜760Torrの広い範囲において実施可能であり、また、反応空間に設置された基板34の温度は、室温〜1300℃の広い範囲で実施可能であることが実験の結果明らかとなったが、目的とする反応生成物を高純度で得るためには、圧力は低く、高温度で実施した方が好ましい。なお、基板表面ないしその近傍空間領域に対して紫外光36を照射して励起する際、プラズマを併せて照射する態様も一つの実施の態様である。図3において、プラズマトーチ37は、この態様を示すものであり、反応ガス及びプラズマ38が基板34に向けて照射されるよう、反応ガス導入口32と、プラズマトーチ37とが基板34に向けて一体に設定されている。
【0055】
本発明では、以上のような反応容器31を用いてSp3結合性窒化ホウ素膜体の製膜が実施されるが、以下さらに図面及び具体的な実施例に基づいて説明する。ただし、以下に開示する実施例は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、これによって本発明が限定されるものではない。すなわち、本発明の狙いとするところは、電界電子放出特性に優れた表面形状が気相反応によって自己造形的に形成されてなる、電界電子放出特性に優れたSp結合性窒化ホウ素膜体とその製造方法を提供し、また、電子放出材料としての用途発明を提供するものであり、その目的が達成しうる限りで、反応条件等は適宜変更、設定することができることは言うまでもない。
【0056】
こうして得られるSp結合性窒化ホウ素の構造は例えば、Sp結合性5H−BN材料又はSp結合性6H−BN材料である。つまり、一般式:BNで示され、六方晶系5H型又は6H型多形構造を有するSp結合性窒化ホウ素としては、例えば特許文献15(特許第3598381号公報)等に記載されているものが知られている。
【0057】
本発明者らは、このようなSp結合性5H−BN材料又はSp結合性6H−BN材料について、画像形成装置における像担持体の帯電装置等に使用可能な電子放出素子に適用可能かを鋭意検討した結果、Sp結合性5H−BN材料又はSp結合性6H−BN材料を電子放出材料として使用することで像担持体を帯電させることができることを見出して本発明を完成させたものである。
【0058】
特にSp結合性5H−BNは、ダイヤモンドと同じ結合状態をもち、ダイヤモンドの次に硬い窒化ホウ素の一種である。窒化ホウ素は例えばルツボなどにも使われる材料であり、抜群の耐熱性と化学物質に対する耐性を有することから、従来にない耐久性を持ち、かつ高負荷にも耐えられる電子放出材料であると言える。
【0059】
このような窒化ホウ素材料を用いた電子放出素子を作製するとき、上述したように窒化ホウ素材料は導電材料(上記の電極となる金属材料等)の表層に形成された100μm以下の薄膜とすることで、製造に時間がかかりコストが高くなる単結晶を用いる場合に比べて、電子放出特性をある程度維持したまま製造時間を短縮し、材料費を抑えつつコストダウンを図ることができる。
あるいは、ボールミル、粉砕機等の物理的な手段によって、粉体化した窒化ホウ素材料を電極となる導電性部分に導電的に接触させて固定化することにより、単結晶の窒化ホウ素材料を用いた場合に比べて製造工程が簡略され、コストの低減を図ることができる。
【0060】
[生成条件例1]
次にSp結合性窒化ホウ素膜の生成条件例を示す。
図3に示す反応容器31を用い、反応ガス導入口32から導入されるアルゴン流量2SLM、水素流量50sccmの混合希釈ガス流中に、ジボラン流量10sccm及び、アンモニア流量20sccmを導入し、同時にガス流出口33から図示しない真空ポンプにより排気することで圧力30Torrに保った雰囲気中にて、加熱により800℃に保持したシリコン基板34上に、エキシマレーザー紫外光36を照射した。60分の合成時間により、目的とする薄膜を得た。薄膜生成物をX線回折法により同定した結果、この試料の結晶系は六方晶系であり、Sp結合による5H型多形構造で、格子定数は、a=2.52Å、c=10.5Åであった。
【0061】
得られた薄膜の表面形状を走査型電子顕微鏡によって観察した結果、この薄膜は電界集中の生じやすい先端の尖った円錐状の突起構造物(0.001μmから数十μmの長さ)に覆われた特異な表面形状が自己造形的に形成されていることが観察された。この薄膜の電界電子放出特性を調べるため、直径1mmの円柱状の金属電極を表面から30μm離して真空中で薄膜−電極間に電圧を印加し、電子放出量を測定した。その結果、電界強度15−20(V/μm)において電流密度の増大が見られ、20(V/μm)において、測定用高圧電源の限界電流値(1.3A/cm相当)で飽和することが判った。
また、この時の電流値の時間変化を観察した結果、約15分の間、電流値に多少の揺動が認められたが、ほぼ平均的な電流値が維持され、材料劣化による電流値の減少は見られず安定な材料であることが確認された。
【0062】
[生成比較例1]
比較のため、紫外光の照射条件以外は生成条件例1の条件と同様の条件で同時に作製した薄膜で、紫外光の照射されなかった部分の電界電子放出特性を調べた。その結果、電子放出開始の閾値電界強度が42(V/μm)となり、紫外光照射のある部分の15(V/μm)に比べて大幅に高くなっていることが判った。また、この部分を走査型顕微鏡で観察したところ、電界電子放出による薄膜の損傷・剥離が見られた。一方、紫外光照射下で成長した突起状表面形状を示す部分には、電界電子放出実験の後、このような損傷は見いだされなかった。
【0063】
[生成条件例2]
次にSp結合性窒化ホウ素膜の別の生成条件例を示す。
図3に示す反応容器31を用い、反応ガス導入口32から導入されるアルゴン流量2SLM、水素流量50sccmの混合希釈ガス流中に、ジボラン流量10sccm及び、アンモニア流量20sccmを導入し、同時にガス流出口33から図示しない真空ポンプにより排気することで圧力30Torrに保った雰囲気中にて、プラズマトーチ37から出力800w、周波数13.56MHzのRFプラズマ38を発生し、加熱により900℃に保持したシリコン基板34上に、エキシマレーザー紫外光36を照射した。60分の合成時間により、薄膜生成物を得た。この生成物を生成条件例1と同様の方法で同定した結果、結晶系は六方晶系であり、Sp結合による5H型多形構造で、格子定数は、a=2.5Å、c=10.4Åであった。
【0064】
得られた薄膜の表面形状を走査型電子顕微鏡によって観察した結果、この薄膜は電界集中の生じやすい先端の尖った円錐状の突起構造物(0.001μm〜数μmの長さ)に覆われた特異な表面形状が自己造形的に形成されていることが観察された。この薄膜の電界電子放出特性を調べるため、直径1mmの円柱状の金属電極を表面から40μm離して真空中で薄膜−電極間に電圧を印加し電子放出量を測定した。その結果、電界強度18−22(V/μm)において電流密度の増大が見られ、22(V/μm)において、測定用高圧電源の限界電流値(1.3A/cm相当)で飽和していることが判った。すなわち、生成条件例1と同様に、安定な材料が得られたことが確認された。
【0065】
以上述べたとおり、本発明の電子放出素子に用いる電子放出特性に優れたSp結合性窒化ホウ素膜体(Sp−bonded 5H−BN)は、電界電子放出特性に優れた表面形状、すなわち、先端の尖った状態を呈した形状が自己造形的に形成されてなる特異な構造を有してなるものである。
【0066】
また、以上の方法によって電界電子放出特性に優れた表面形状のSp結合性窒化ホウ素膜体が作製できる。これによって、電界電子放出閾値が低く、電流密度の高い、また、電子放出寿命の長い極めて良好な、まさに電子放出材料として理想的な新規材料を、特段の加工手段、加工プロセスによることなく作製できる。
【0067】
なお、以上に述べた電子放出特性に優れたSp結合性窒化ホウ素膜体を用いた電子放出素子は、その応用範囲が後述するように極めて多様で広く、今後大いに産業の発展に寄与することが期待される。
【0068】
[実施例2]
次に本発明の別の実施例を説明する。
図4は本発明の別の実施例を示す電子放出素子の斜視図である。図4に示す電子放出素子40は、基板を兼ねる金属材料41が板厚の比較的薄いリボン状をしていることが特徴である。このリボン状の金属材料41上に窒化ホウ素材料の薄膜43を固定化して形成してある。また、窒化ホウ素材料の薄膜43は同材料の粉体を分散・固定化して形成しても同様な性能及び機能を示すものである。
【0069】
この実施形態では基板を兼ねる金属材料41が板厚の比較的薄いリボン状であるために、帯電対象としている像担持体(通常はドラム形状)の形状に沿って、変形(ねじれ、湾曲等)することができ、それにより像担持体と対向するエリアを広くできるので、帯電の機能を発揮する面積を増やせるために帯電効率が向上する。これは画像形成装置としては高速の印字に対応できることを意味する。さらに、組み立て時に省スペースにできることもこの実施例の効果である。
また、リボン状の金属材料41を予め変形させておき、その上に窒化ホウ素材料の薄膜43を形成すればさらに大きな変形に対応することができる。
【0070】
リボン状の金属材料41には、導電性があり、ある程度延性及び剛性と製造時のプロセス温度、特に窒化ホウ素材料43を作製・堆積するときの製膜温度に耐える材質であれば使用可能である。より具体的にはNi,Cr,Ni−Cr,W,Ta,Mo,Au,Ag,Pt,Cu,Ai,Fe等が使用可能である。
【0071】
なお、本実施例の電子放出素子40からの電子放出及び負イオンの発生による帯電過程及び、オゾンや窒素酸化物の低減化、電子放出素子を構成するSp結合性窒化ホウ素膜の製膜方法、生成条件等については上述した実施例1と同じ内容であり、同様の効果が得られる。
【0072】
[実施例3]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。
図5は本発明のさらに別の実施例を示す電子放出素子の構成説明図であり、同図(A)は電子放出素子の斜視図、同図(B)は電子放出素子の断面図を夫々示している。
図5に示す電子放出素子50は、窒化ホウ素材料を形成する基板として絶縁材料51上に金属層52を設けた複合基板を用いたものであり、金属層52上には窒化ホウ素材料の薄膜53を固定化して形成してある。また、窒化ホウ素材料の薄膜53は同材料の粉体を分散・固定化して形成しても同様な性能及び機能を示すものである。
【0073】
絶縁材料51としては石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、表面に不純物ブロック用のSiO膜を形成したガラス基板、及びアルミナ、マグネシア等のセラミックス基板等を用いることができる。金属層52の材料としては、一般的な導電材料を用いることができ、例えばNi,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属、あるいはNi−Cr等の合金などが使用できる。金属層52の作製方法としては、真空蒸着、イオンプレーテイング、クラスターイオンビーム蒸着、スパッタ、マグネトロンスパッタ等の気相製膜法及び、スクリーン法、インクジェット法等による湿式印刷法などが適宜使用可能である。また、金属層52の膜厚dは、100Å〜10μmの範囲がコスト及び金属層の抵抗値さらには金属層の内部応力による剥がれ等の観点から好ましい。
【0074】
このように窒化ホウ素材料の基板として、長尺・大面積基板への成形に適した絶縁材料51上に金属層52を設けた複合基板を用いることで、長尺、大面積に対応した電子放出素子50が作製でき、かつ、基板材料の選択幅が広がり、製造コストを安価にすることができる。さらに窒化ホウ素材料の特質として、従来にない高効率の電子放出特性を有することは言うまでもない。
【0075】
なお、本実施例の電子放出素子50からの電子放出及び負イオンの発生による帯電過程及び、オゾンや窒素酸化物の低減化、電子放出素子を構成するSp結合性窒化ホウ素膜の製膜方法、生成条件等については上述した実施例1と同じ内容であり、同様の効果が得られる。
【0076】
[実施例4]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。
電子放出素子の構成図は図5と同様なので図示を省略する。本実施例では、窒化ホウ素材料を形成する基板として、絶縁材料上に半導体層を設けた複合基板を用いたものであり、半導体層上には窒化ホウ素材料の薄膜を固定化して形成してある。また、窒化ホウ素材料の薄膜は同材料の粉体を分散・固定化して形成しても同様な性能及び機能を示すものである。
【0077】
絶縁材料としては石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、表面に不純物ブロック用のSiO膜を形成したガラス基板、及びアルミナ、マグネシア等のセラミックス基板等を用いることができる。半導体層の材料としてはSi、Ge、GaAS、GaN、GaP、AlN、BN等のIV族及びIII−V族の半導体層が使用可能であり、その構造形態とした結晶、多結晶、非晶質等が使用可能である。
【0078】
半導体層の作製方法としては真空蒸着、イオンプレーテイング、クラスターイオンビーム蒸着、スパッタ、マグネトロンスパッタ、エピタキシャル成長等の気相製膜法が適用可能である。また、半導体層の膜厚は、100Å〜10μmの範囲がコスト及び半導体層の内部応力による剥がれ等の観点から好ましい。
【0079】
このように窒化ホウ素材料の基板として、長尺・大面積基板への成形に適した絶縁材料上に半導体層を設けた複合基板を用いることで、長尺、大面積に対応した電子放出素子が作製でき、かつ、基板材料の選択幅が広がり製造コストを安価にすることができる。さらに窒化ホウ素材料の特質として従来にない高効率の電子放出特性を有することは言うまでもない。
【0080】
上述の半導体材料中、特にSi、Ge、GaN、AlN、BNは窒化ホウ素材料との密着性に優れており(窒化ホウ素材料中のホウ素原子が半導体材料への拡散しやすいか、材料同士の格子定数が近いことにより)、本実施例の電子放出素子にはまさに好適である。また、上記の半導体層をそのまま電極として機能させるためには、一般の半導体プロセスで行う常法により不純物をドーピングして抵抗値を制御してやればよい。ドーピンングを行わない場合は窒化ホウ素材料の下地層としてのみの機能になるが、この場合は電極として半導体層の下層に導電体層を設ける必要がある。かかる導電体層には上述したような金属材料及び酸化物導電体(ITO,In,SnO等)などが好ましい。
【0081】
なお、本実施例の電子放出素子からの電子放出及び負イオンの発生による帯電過程及び、オゾンや窒素酸化物の低減化、電子放出素子を構成するSp結合性窒化ホウ素膜の製膜方法、生成条件等については上述した実施例1と同じ内容であり、同様の効果が得られる。
【0082】
[実施例5]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。
図6は本発明のさらに別の実施例を示す電子放出素子の斜視図である。図6に示す電子放出素子60は、窒化ホウ素材料を形成する基板として絶縁材料61上に電極層(金属層または半導体層)62を設けた複合基板を用いたものであるが、その絶縁材料61としてポリマーフィルムを使用した複合基板を用いていることが特徴である。すなわち、電子放出素子60としては、ポリマーフィルム61に設けられた電極層62上に窒化ホウ素材料の薄膜63を固定化して形成してある。また、窒化ホウ素材料の薄膜63は同材料の粉体を分散・固定化して形成しても同様な性能及び機能を示すものである。
【0083】
この実施例では、その形成基板の絶縁材料としてポリマーフィルム61を使用した複合基板を用いているために、帯電対象としている像担持体(通常はドラム形状)の形状に沿って、自由に変形(ねじれ、湾曲等)することができ、それにより像担持体と対向するエリアを広くできるので、帯電の機能を発揮する面積を増やせるために帯電効率が向上する。これは画像形成装置としては高速の印字に対応できることを意味する。さらに、省スペースであるためにシステム全体が小型化できると共に、帯電装置の設置場所に制約が少なくなり、システムレイアウトの自由度が向上し、設計を容易に行うことができる。また、組み立て時の多少の無理な変形にも対応できるので、組み立て工数の低減にも効果がある。また、ポリマーフィルム61を予め設計した型を用いて作製すれば、任意の形状の電子放出素子が作製でき、組み立て・システムレイアウト上のメリットは大変大きい。
【0084】
さらに、基板の絶縁材料にポリマーフィルム61を用いることで長尺、大面積に対応した電子放出素子が作製でき、かつ、基板材料の選択幅が広がり製造コストが安価にできる。特に、製造時の装置への基板の装着を枚葉式ではなく、ロールtoロールにすることができ連続的な生産が可能となり、コスト低減には絶大な効果がある。尚、窒化ホウ素材料の特質として従来にない高効率の電子放出特性を有することは言うまでもない。
【0085】
ポリマーフィルム61の材料としてはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフロロエチレン等が使用できる。さらに、電極層62を形成するときに真空製膜法を用いることがあるが、その際にポリマーフィルム61からの出ガスで電極の品質が劣るか場合によっては電極層が剥離して形成できないことがある。その出ガスの対策及びポリマーフィルム61自体のガス透過性(あるいは水蒸気も含めたガスの含有)の対策として、ポリマーフィルム61の上にガスバリアー層を設けることも有効である。ガスバリアー層としてはSiO、SiNx、SiON、SiC、SiCO、DLC等の無機薄膜が有効である。
また、電極層62にはNi,Cr,Ni−Cr,W,Ta,Mo,Au,Ag,Pt,Cu,Ai,Fe等々の金属あるいは上述した半導体材料が使用可能である。
【0086】
なお、本実施例の電子放出素子60からの電子放出及び負イオンの発生による帯電過程及び、オゾンや窒素酸化物の低減化、電子放出素子を構成するSp結合性窒化ホウ素膜の製膜方法、生成条件等については上述した実施例1と同じ内容であり、同様の効果が得られる。
【0087】
[実施例6]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。
図7は本発明のさらに別の実施例を示す電子放出素子の構成説明図であり、同図(A)は電子放出素子の平面図、同図(B)は電子放出素子の断面図を夫々示している。
図7に示す電子放出素子70は、基板として絶縁材料71上に複数の分離独立した電極層72を設けた複合基板を用いたものであり、夫々の電極層72に対応して夫々分離独立した複数の窒化ホウ素材料73を固定化して形成してある。また、窒化ホウ素材料の薄膜73は同材料の粉体を分散・固定化して形成しても同様な性能及び機能を示すものである。図7では複数の窒化ホウ素材料73は夫々分離独立して形成しているが、窒化ホウ素材料73の抵抗値が高い場合には連続した薄膜で形成してもよく、電極層72が複数に分離独立しているために、隣接するビット同士であっても電気的には分離されるので素子の動作に影響はない。この場合はむしろ窒化ホウ素材料73の分離工程(通常はフォトリソ・エッチングプロセスで行う)を必要とせず、製造コストが安くなる。
【0088】
次に図7に示す構成の電子放出素子70の動作・作用について説明する。図7に示す電子放出素子70では、窒化ホウ素材料の薄膜73と電極層72からなる電子放出材料部位が複数の独立した領域(ドット)に分離されており、その各領域(ドット)に対して独立に電圧を設定・印加できる電圧供給手段を備えている。この電圧供給手段は、各領域(ドット)の電極層72に電圧を印加するための電源系と、電圧を印加するドットを選択するスイッチング素子などで構成されるが、図示は省略している。
【0089】
図7に示す構成の電子放出素子70は、電子放出材料側を被帯電体である像担持体に対向させて配置し、図示しない電圧供給手段で各領域(ドット)に対して独立に電圧を設定・印加することにより、像担持体を1ドット単位で帯電/非帯電することができるようになり、形成したい静電潜像を、帯電時に直接像担持体上に形成することができる。すなわち、図7に示す電子放出素子70は、像担持体の帯電手段と潜像形成手段を兼ねることができ、これにより像担持体として光半導体である感光体に潜像を形成するための露光装置を必要としなくなり、画像形成装置の低コスト化を図ることができる。
【0090】
より具体的には、電子放出素子70の複数の分離独立した電子放出材料部位を像担持体の軸方向の長さ、例えば300mmに亘って600dpiの密度で並べて配置し、各々の電子放出材料部位に対して、画像に対応した位置のドットを選択するための選択信号とそのドットの帯電量に対応した動作信号とを印加することで、その信号に応じた電子が放出され、対向する像担持体の1ドットに当たるエリアを帯電することができる。また、電子放出材料部位に電圧が印加されなかった箇所は帯電しないので、像担持体上に帯電部と非帯電部が形成され、これが静電潜像となる。つまり、電子放出素子を含む帯電装置は、像担持体の帯電手段と潜像形成手段を兼ねており、像担持体上に静電潜像を書き込む書込み装置としても機能することになる。
【0091】
また、この場合、複数の分離独立した電子放出材料部位(微細な帯電手段)に対してはそれぞれ同量の電荷を像担持体に供給するように制御された電圧を印加する電圧印加手段を備えることが好ましい。つまり、複数の微細な帯電手段により帯電時に潜像を直接形成する場合には、各帯電手段の電位が揃っていなければ高画質な画像を得られないことになるので、一画素に当たる帯電手段のそれぞれが付与する電荷が同じになるように制御することが必要であり、これにより電位が揃い、高画質な画像を得られる。
【0092】
図7に示す構成の電子放出素子70の基板に用いる絶縁材料71としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、表面に不純物ブロック用のSiO膜を形成したガラス基板、及びアルミナ、マグネシア等のセラミックス基板等を用いることができる。
電極層72の材料としては、一般的な導電材料を用いることができ、例えばNi,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属、あるいはNi−Cr等の合金などが使用できる。電極層72の作製方法としては真空蒸着、イオンプレーテイング、クラスターイオンビーム蒸着、スパッタ、マグネトロンスパッタ等の気相製膜法、及びスクリーン法、インクジェット法等による湿式印刷法などが適宜使用可能である。また、金属層72の膜厚dは、100Å〜1μmの範囲がコスト及び金属層の抵抗値さらには金属層の内部応力による剥がれ等の観点から好ましい。
【0093】
[実施例7]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。
本実施例の電子放出素子の構成図は図6と同様なので図示を省略する。本実施例では、窒化ホウ素材料を形成する基板として、図6と同様に絶縁材料61上に電極層(金属層または半導体層)62を設けた複合基板を用いたものであるが、その絶縁材料61として膜厚が50μm〜2mmのポリマーフィルムを用いた複合基板を使用したことを特徴としている。
【0094】
そもそも基板としてポリマーフィルムを使用することで自由な変形に対応できるのであるが、ポリマーフィルムの膜厚があまりにも薄い場合には、その上に形成する電極層や窒化ホウ素材料のストレスによってポリマーフィルムに反りやカールが発生し、作用面の平面が維持できないことが起こりうる。場合によってはストレスによりポリマーフィルム自体が寸法変化(伸縮する)を起こし、より上層の機能層との位置合わせに支障をきたす事態も起こる。特に、上述の実施例5のように、素子密度を600dpi以上に形成しようとする場合には、電極層72のパターンと窒化ホウ素材料のパターンとが一致しない事態が起こる。また、基板の伸縮以外にも基板の変形によって上層からの剥離を生じ、素子が形成できないという問題が起こる。従って、本実施例のように、ポリマーフィルムの膜厚を50μm以上とすることで、基板の寸法変化は600dpiのドット密度では実用上支障のない範囲におさめることができる。さらに基板の反りに関しては、望ましくは100μm以上であれば実用上支障のない範囲におさまる。一方、ポリマーフィルムの膜厚が3mm以上の場合には上述したような問題の発生はないが、むしろフィルムとしての利点、具体的には、(1)ある程度の変形に対応できる、(2)マザーボードとして大面積の基板を使用して素子作製後に任意の形状に自由にカットできる、等の利点が発揮されなくなる。なお、窒化ホウ素材料の特質として従来にない高効率の電子放出特性を有することは実施例1で述べたとおりである。
【0095】
ポリマーフィルムの材料としては、前述したようにポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフロロエチレン等が使用できる。さらに、ポリマーフィルムからの出ガス対策及びポリマーフィルム自体のガス透過性(あるいは水蒸気も含めたガスの含有)の対策として、ポリマーフィルム上にガスバリアー層を設けることも有効である。ガスバリアー層としてはSiO、SiNx、SiON、SiC、SiCO、DLC等の無機薄膜が有効である。
【0096】
[実施例8]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。
図8は本発明のさらに別の実施例を示す電子放出素子の断面図である。本実施例の電子放出素子80は、基板81の表面に先端の尖った突起84が複数設けてあり、その突起上に電極材料82が形成されており(膜厚は0.2〜5μm程度)、さらにその上に電子放出材料83が100μm以下の膜厚で作製されたものである。この構成を採用することで電子放出材料(窒化ホウ素材料等)に尖塔状の形状がなくても、基板81に設けた突起形状によって、その先端に電界が集中し、電子放出が促進され、かつ材料自体がもつNEA(負の電子親和力)特性とも相まって、従来にない高効率の電子放出特性が得られる電界電子放出素子80を実現することができる。
【0097】
さらに窒化ホウ素材料は導電材料(上記の電極材料)82の表層に形成された100μm以下の膜厚、さらに好ましくは50μm以下の膜厚の薄膜とすることで、製造に時間がかかりコストが高くなる単結晶を用いる場合に比べて、電子放出特性をある程度維持しつつ製造時間を短縮し、材料費を抑えつつコストダウンを図ることができる。あるいは、上述したように、粉体化した窒化ホウ素材料を電極となる導電性部分に導電的に接触させて固定化することにより、単結晶の窒化ホウ素材料を用いた場合に比べて製造工程が簡略され、コストの低減を図ることができる。
【0098】
次に基板81上の突起84の構成及び作製方法について説明する。基板81が金属材料の場合にはポリマーあるいはレジスト(通常はドライレジストフィルムを使用する)パターンを型とした電鋳あるいはエレクトロフォーミング法によって、先に作製した型のレプリカとして形成できる。金属材料としてはNi,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属、あるいはNi−Cr等の合金などが使用できる。さらに、ポリマーあるいはレジストパターンの上に真空蒸着、イオンプレーテイング、クラスターイオンビーム蒸着、スパッタ、マグネトロンスパッタ等の気相製膜法、及びスクリーン法、インクジェット法のような湿式印刷法などがで金属層を設ける方法でも作製することができる。金属層の膜厚dは、100Å〜1μmの範囲がコスト及び金属層の抵抗値さらには金属層の内部応力による剥がれ等の観点から好ましい。
【0099】
[実施例9]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。本実施例は、被帯電体(例えば像担持体)に電荷を付与する手段として実施例1〜8のいずれかの構成の電子放出素子を用いた帯電装置に関するものである。
図9は本実施例の帯電装置の構成例を示す断面図である。この帯電装置211の主要部分は、例えば先に実施例3で説明した図5の構成の電子放出素子50を使用したものである。すなわち電子放出素子50は、基板として絶縁材料51上に金属層52を設けた複合基板を用いたものであり、金属層52上には窒化ホウ素材料の薄膜53を固定化して形成してある。また、窒化ホウ素材料の薄膜53は同材料の粉体を分散・固定化して形成しても同様な性能及び機能を示すものである。なお、絶縁材料51と金属層52の材料および膜厚は先に実施例3で記載した内容と同様でありここでは省略する。
【0100】
より具体的に電子放出素子50の作製法を説明する。絶縁材料51上としては300mm×7mm、厚み1.3mmのパイレックス(登録商標)ガラスを使用し、その上に金属層52となるNi薄膜をスパッタ法にて約2μm堆積した。さらにその上に図3の形成装置のCVD反応容器31を用いて混合ガスプラズマ(ジボラン:水素化ホウ素B、水素、アンモニア、アルゴン)に紫外エキシマレーザー(波長λ:193nm、周波数f:1030Hz)を照射して窒化ホウ素材料の薄膜53を堆積させた。
【0101】
帯電装置211は上述した電子放出素子50を絶縁性の略コ字状のケース4内に収納し、ケース4の開口部4aを被帯電体(例えば像担持体)に対向するように配置する。そして、ケース4の開口部4aにステンレス製のグリッド7を取り付け、このグリッド7に電源から電圧を印加する構成としている。
【0102】
ここで、グリッド7としては、従来からスコロトロン帯電方式で用いられているハニカム構造のステンレス板を用いているが、その他の電子が通過する構造の導電性膜や穴を形成した導電性板状部材を使用することもできる。
そして、電子放出素子50とグリッド7との距離は50μm、グリッド7と像担持体201間のギャップは1mmとし、電子放出素子50に電源から−200Vの電圧を印加し、グリッド7に別電源から−650Vの電圧を印加し、ケース4の開口部4aが像担持体に対向するように配置して非接触帯電を行なった。
【0103】
この実施例の帯電装置211を用いて像担持体の線速を200mm/secとした場合、像担持体の表面は−600Vに帯電した。グリッド7に対する印加電圧を変化させると像担持体の表面電位も変化し、グリッド7に−850Vの電圧を印加すると、像担持体は約−800Vに帯電することが確認された。また、グリッド7に対する印加電圧を小さくすると、像担持体の表面電位もそれに対応して小さくなることが確認された。
【0104】
このように、窒化ホウ素材料53と像担持体表面との間の空隙(ギャップ)に像担持体表面電位を制御する導電性部材(グリッド)7を配置することにより、窒化ホウ素材料53と像担持体表面との間の空隙を広くしても所要の帯電電位を得ることができるようになる。これにより、遠距離から帯電を行うことができ、トナーなどによる汚れを防ぐことができるとともに、帯電電位を安定化させることができ、帯電部材(電子放出素子)50への異物や像担持体の衝突による傷を防止することができ、窒化ホウ素材料の部材寿命を延ばすことができる。また、窒化ホウ素材料を用いた電子放出素子50を帯電装置211に使用したことで、前述したようにオゾンや窒素酸化物(NOx)を発生させることなく像担持体を帯電することができる。さらに、電子放出を低エネルギーで行うことができるので、感光体材料のポリカーボネートなどの有機材料をアタックして酸化・焼失させることがないので、感光体の膜削れも低減することができる。また、印加電圧を従来のコロナ帯電やローラ帯電方式に比べて低減することができるので、省エネルギーの画像形成装置を構成することができる。
【0105】
なお、図9には、実施例3で説明した図5の構成の電子放出素子50を使用した帯電装置の例を示したが、これに限るものではなく、実施例1,2,4〜8のいずれかの構成の電子放出素子を同様に使用して帯電装置を構成することができる。
【0106】
[実施例10]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。本実施例は、像担持体に電荷を付与する帯電手段として、実施例1〜8のいずれかの構成の電子放出素子、あるいは実施例9の帯電装置を使用した画像形成装置に関するものである。
図10は本実施例の画像形成装置の構成例を示す概略構成図であり、像担持体(例えば感光体ドラム)201に電荷を付与する帯電手段として、図9に示した構成の帯電装置211を用いた例である。
【0107】
この画像形成装置は、図中の矢示方向に回転する感光体ドラム201の周囲に、感光体ドラム201の表面を帯電させるための上述した電子放出素子50で構成した帯電装置211が配置され、帯電した感光体ドラム201上には原稿画像等の画像データに応じて図示しない書込み装置から照射されるレーザー光212によって静電潜像が形成される。さらに感光体ドラム201の周囲には、静電潜像を現像するための現像装置213と、感光体ドラム201上のトナー像を転写材214に転写するための転写装置216及び転写材搬送ベルト215と、転写後の感光体ドラム201上の残留トナーを除去するクリーニング装置217と、感光体ドラム201上の残留電荷を除去する除電装置218とを配置している。また、転写装置216でトナー像が転写された転写材215に定着処理を行なう定着装置219を備えている。
【0108】
ここで、帯電装置211の電子放出素子50と感光体ドラム201表面との距離(ギャップG)は50μmとし、電子放出素子50に−150Vの電圧を印加することで、電子放出素子50から放出された電子により発生する負イオンが感光体ドラム201上に付着し、感光体ドラム201の表面が帯電する。帯電後の感光体ドラム201は200mm/secで回転し、図示しない書込み装置により画像データに応じたレーザー光212が照射され静電潜像が形成される。その後、現像装置213によって静電潜像が現像剤のトナーで現像されて可視像となり、感光体201上に形成されたトナー像は次に転写装置216により紙などの転写材215に転写される。トナー像が転写された転写材214は転写材搬送ベルト215により定着装置219に搬送され、定着装置219によりトナー像が転写材214に定着処理された後、図示しない排紙部に排紙される。一方、トナー像が転写された後の感光体ドラム201上には微量の転写残トナーが残るが、次のクリーニング装置217によりクリーニングされ、次に除電装置218によって必要に応じて感光体ドラム201は除電され、次の画像形成プロセスに備える。
なお、クリーニング工程のない、クリーナレスプロセスを行い、転写残トナーを現像装置により回収する構成とすることもできる。
【0109】
本実施例の画像形成装置の特徴は、窒化ホウ素材料を用いた電子放出素子を帯電装置211に使用したことであり、前述したようにオゾンや窒素酸化物(NOx)を発生させることなく感光体ドラム201を帯電することができる。さらに、電子放出を低エネルギーで行うことができるので、感光体材料のポリカーボネートなどの有機材料をアタックして酸化・焼失させることがなく、感光体膜削れも低減できる。従って、従来のコロナ帯電やローラ帯電方式を使用した画像形成装置に比べて非常に長寿命でかつ省エネルギーな画像形成装置を実現することができる。
【0110】
なお、図10の画像形成装置の構成例では、帯電手段として図9に示した構成の帯電装置211を用いた例を示したが、帯電装置の主要部を構成する電子放出素子として、実施例6で説明した図7に示す構成の電子放出素子70を用いることにより、帯電装置が像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成する潜像形成手段を兼ねる構成とすることができ、形成したい潜像を帯電時に直接像担持体上に形成することができるので、像担持体として光半導体である感光体に潜像を形成するための露光装置(例えば上述のレーザー光212を照射する書込み装置)を必要としなくなり、画像形成装置の低コスト化を図ることができる。
【0111】
[実施例11]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。本実施例は、像担持体、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくともいずれか1つと、帯電手段とを含み、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジに関するものであり、帯電手段として、実施例1〜8のいずれかの構成の電子放出素子、あるいは実施例9の帯電装置を使用したことを特徴とするものである。
【0112】
図11は本実施例のプロセスカートリッジの構成例を示す概略断面図である。このプロセスカートリッジ300は、像担持体である感光体ドラム301と、本発明に係る電子放出素子または帯電装置を用いた帯電手段311と、現像手段313と、クリーニング手段317をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジ300を複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成したものである。一例としては、図10に示した画像形成装置の感光体ドラム、帯電装置、現像装置、クリーニング装置の構成部分に、図11に示すプロセスカートリッジ300を用いることができる。また、プロセスカートリッジ300を用いた場合も、画像形成動作は実施例10と同様である。
【0113】
なお、本発明に係るプロセスカートリッジの構成としては、図11の構成に限るものではなく、本発明に係る電子放出素子または帯電装置を用いた帯電手段311と、像担持体301、現像手段313、クリーニング手段317の少なくともいずれか1つとでプロセスカートリッジを構成することもできる。
【0114】
本実施例では、帯電手段311を装置本体に対して着脱自在であるプロセスカートリッジ300内に具備させることにより、メンテナンス性の向上、他の装置との一体交換を容易に行なうことができるようになる。
【0115】
[実施例12]
次に本発明のさらに別の実施例を説明する。本実施例は、プロセスカートリッジを用いたカラー画像形成装置に関するものである。
図12はプロセスカートリッジを用いたカラー画像形成装置の構成例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、複数の支持ローラ315a,315b,315cに張架されて水平に延在する無端ベルト状の中間転写体(以下、中間転写ベルトと言う)314に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するためのプロセスカートリッジ300Y、300M、300C、300Kを並置した形式のカラー画像形成装置である。各プロセスカートリッジ300Y、300M、300C、300Kの構成は例えば実施例11で説明した図11の構成のプロセスカートリッジ300と同様であり、現像手段313で使用する現像剤の色が異なるだけである。各プロセスカートリッジ300Y、300M、300C、300Kの上方には、各感光体ドラム301にレーザー光を照射して潜像を書込むための書込み装置312が必要に応じて設置される。また、中間転写ベルト314を挟んで各プロセスカートリッジ300Y、300M、300C、300Kの感光体ドラム301と対向する位置には、各感光体ドラム301上に形成されたトナー像を中間転写ベルトに重ねて転写するための一次転写手段316が配置されている。さらに中間転写ベルト314の下側の支持ローラ315bに対向する位置には、中間転写ベルト上で重ね合わされた画像を転写材321に一括して転写するためのローラ状の二次転写手段(以下、二次転写ローラと言う)320が設置されている。また、図示を省略しているが、二次転写ローラ320の転写材搬送方向上流側には、転写材321を収納した給紙部や、給紙部から二次転写部に転写材321を給紙・搬送する給紙・搬送手段が設けられており、さらに二次転写ローラ320の転写材搬送方向下流側には、転写材321に転写された画像の定着処理を行う定着装置や、定着後の転写材を排紙する排紙部等が設けられている。
【0116】
なお、各プロセスカートリッジ300Y、300M、300C、300Kの帯電手段311が、電子放出素子として、実施例6で説明した図7に示す構成の電子放出素子70を用いる構成の場合には、帯電手段311が感光体ドラム301に電荷を付与して静電潜像を形成する潜像形成手段を兼ねる構成とすることができるので、形成したい潜像を帯電時に直接像担持体上に形成することができる。したがって、この場合には、像担持体として光半導体である感光体に潜像を形成するための露光装置(例えば上述のレーザー光を照射する書込み装置312)を必要としなくなるので、カラー画像形成装置の構成は図13に示すような構成となり、画像形成装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0117】
図12または図13に示す構成のカラー画像形成装置では、各プロセスカートリッジ300Y、300M、300C、300Kで、各感光体ドラム301上に各色の画像に対応した潜像形成が行われ、該潜像はそれぞれ各色の現像手段313のトナーで現像されて可視像化される。そして、各感光体ドラム301上の現像トナーは、一次転写手段316で転写電圧が印加された水平に延在する中間転写ベルト321に順次重ねて転写される。
【0118】
このようにしてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成が行なわれ、中間転写ベルト321上に多重に転写されたトナー像は、二次転写ローラ320で転写材321に一括して転写される。そして、転写材321上の多重トナー像は図示しない定着装置によって定着され、定着後の転写材321は図示しない排紙部に排紙される。
なお、プロセスカ−トリッジ300の配置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で説明したが、この順番に特定されるものではなく、どの順番で並置してもよい。
【0119】
通常、カラーの画像形成装置は複数の画像形成部を有するため装置が大きくなってしまう。また、クリーニングや帯電などの各ユニットが個別で故障したり、寿命による交換時期が来た場合は、装置が複雑でユニットの交換に非常に手間がかかることになる。そこで、本実施例のように、像担持体301、帯電手段311、現像手段313等の構成要素をプロセスカートリッジ300として一体に結合して構成することによって、ユーザーによる交換も可能な小型で高耐久のカラー画像形成装置を提供することができる。
また、上述したように、帯電手段311が感光体ドラム301に電荷を付与して静電潜像を形成する潜像形成手段を兼ねる構成とすることにより、感光体に潜像を形成するための露光装置(例えば図12に示す書込み装置312)を必要としなくなるので、カラー画像形成装置の構成は図13に示すような構成となり、カラー画像形成装置の更なる小型化や低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上、本発明に係る電子放出素子と、それを用いた帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置の実施例を説明したが、本発明に係る電子放出特性に優れたSp結合性窒化ホウ素膜体を用いた電子放出素子は、帯電装置やプロセスカートリッジ、画像形成装置に限らず、その応用範囲は極めて多様で広く、今後大いに産業の発展に寄与することが期待される。すなわち、従来の1000倍以上の電流密度で電子線を放出することにより超高輝度かつ高効率な照明システムの構築や、微小電子放出面積で十分な電流値が得られることを利用した超高精細ディスプレイ等の画像表示装置の実現(携帯電話、ウアラブルコンピューターなどへの応用)、成長時における紫外光照射面のみが電子放出特性に優れることを利用した、特有な電子放出パターンの形成、あるいは、超高輝度ナノ電子源としての利用、さらにまた、超小型電子ビーム源、等々への道を開くことができ、その結果、照明、画像表示装置をはじめとする、現代の日常生活の隅々に行き渡っている各種電気機器・デバイスの革新につながることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施例に係る電子放出素子の一例を示す構成説明図である。
【図2】本発明の一実施例に係る電子放出素子の別の例を示す構成説明図である。
【図3】本発明に係る電子放出素子の窒化ホウ素材料を形成する際に用いる反応装置の概略構成図である。
【図4】本発明の別の実施例に係る電子放出素子の斜視図である。
【図5】本発明のさらに別の実施例に係る電子放出素子の構成説明図である。
【図6】本発明のさらに別の実施例に係る電子放出素子の斜視図である。
【図7】本発明のさらに別の実施例に係る電子放出素子の構成説明図である。
【図8】本発明のさらに別の実施例に係る電子放出素子の概略断面図である。
【図9】本発明のさらに別の実施例に係る帯電装置の概略断面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施例に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図11】本発明のさらに別の実施例に係るプロセスカートリッジの概略断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施例に係るプロセスカートリッジを備えたカラー画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図13】本発明のさらに別の実施例に係るプロセスカートリッジを備えたカラー画像形成装置の別の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0122】
4:ケース
4a:開口部
7:グリッド
10,20,40,50,60,70,80:電子放出素子
11,21:金属材料
13,23,43,53,63,73,83:窒化ホウ素材料
31:反応容器
32:ガス導入口
33:ガス流出口
34:析出基板
35:光学窓
36:エキシマ紫外光レーザー
37:プラズマトーチ
38:プラズマ
41:リボン状金属材料
51,61:絶縁材料
52:金属層
62,72:電極層
81:基板
82:電極材料
83:電子放出材料
84:突起
201:感光体ドラム(像担持体)
211:帯電装置
212:レーザー光
213:現像装置
214:転写材
215:転写材搬送ベルト
216:転写装置
217:クリーニング装置
218:除電装置
219:定着装置
300:プロセスカートリッジ
300Y,300M,300C,300K:プロセスカートリッジ
301:感光体ドラム(像担持体)
311:帯電手段
312:書込み装置
313:現像手段
314:中間転写ベルト(中間転車体)
315a,315b,315c:支持ローラ
316:一次転写手段
317:クリーニング手段
320:二次転写ローラ(二次転写手段)
321:転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出手段として、電子放出特性を有する材料を用いた電子放出素子において、
電子放出材料として窒化ホウ素材料を用い、該窒化ホウ素材料を形成する基板として、金属材料または半導体材料を用いたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
請求項1に記載の電子放出素子において、
前記窒化ホウ素材料がSp結合性窒化ホウ素であることを特徴とする電子放出素子。
【請求項3】
請求項2に記載の電子放出素子において、
前記Sp結合性窒化ホウ素が六方晶系5H型または6H型結晶を主な結晶形態として含むことを特徴とする電子放出素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記基板を構成する金属材料が、可塑性のあるリボン状であることを特徴とする電子放出素子。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記基板として、絶縁材料上に金属層を設けた複合基板を用いたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記基板として、絶縁材料上に半導体層を設けた複合基板を用いたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電子放出素子において、
前記絶縁材料としてポリマーフィルムを使用した複合基板を用いたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項8】
請求項7に記載の電子放出素子において、
前記絶縁材料として膜厚が50μm〜3mmのポリマーフィルムを使用した複合基板を用いたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記電子放出材料部位が複数の独立した領域に分離され、その各領域に対して独立に電圧を設定・印加できる電圧供給手段を備えていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記基板の表面に先端の尖った突起が複数設けてあり、かつ、前記基板に形成される電子放出材料の膜厚が100μm以下であることを特徴とする電子放出素子。
【請求項11】
被帯電体に電荷を付与して帯電する帯電装置において、
前記被帯電体に電荷を付与する手段として、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子放出素子を用いたことを特徴とする帯電装置。
【請求項12】
少なくとも像担持体、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を有する画像形成装置において、
前記帯電手段として、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子放出素子、あるいは請求項11に記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成装置において、
前記帯電手段は、前記像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
像担持体、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくともいずれか1つと、帯電手段とを含み、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、
前記帯電手段として、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子放出素子、あるいは請求項11に記載の帯電装置を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項15】
画像を形成する画像形成装置において、
請求項14に記載のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
多色またはカラー画像を形成する画像形成装置において、
請求項14に記載のプロセスカートリッジを複数備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジの帯電手段は、前記像担持体に電荷を付与して静電潜像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−265884(P2007−265884A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91303(P2006−91303)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】