説明

電子書籍装置

【課題】ディスプレイに直接接触することなく入力することができ、かつ、その入力に専用ペンを不要とし、かつ、その入力したメモ等を紙に残すことができ、かつ、入力が容易にできる電子書籍装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイDを備えた電子書籍端末Mと、四角枠状の光導波路Wを有し、その光導波路Wの枠内に入力した情報を上記電子書籍端末Mに出力して上記ディスプレイDに表示する入力装置Aとを備えている。上記光導波路Wは、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモ等を入力できる電子書籍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、書籍の文字や写真等の情報が電子化されて提供されるようになってきており、その電子化情報を表示するものとして電子書籍端末が普及してきている。その電子書籍端末のなかには、上記書籍の文字等を表示するだけでなく、メモ等を入力することができるよう、上記書籍の文字等を表示するディスプレイがタッチセンサ付きのもの(タッチパネル)になっているものがある(例えば、特許文献1参照)。すなわち、このものは、上記書籍の文字等が表示されているディスプレイ(タッチパネル)に、ペン先や指先等を接触させ、そのペン等を動かすことにより、そのペン先等の移動軌跡がメモ等として、上記ディスプレイに入力されるようになっている。
【0003】
また、上記ペン先等の移動軌跡を検知するものとして、複数の発光素子および受光素子を備えた光学的位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このものは、四角枠状に形成され、その四角枠を構成する一対のL字状部分の一方に、発光素子を複数並設し、他方に、上記発光素子に対向する受光素子を複数並設したものとなっている。そして、その四角枠内でペンや指等を移動させることにより、メモ等の情報を入力するようになっている。すなわち、上記四角枠内でペンや指等を移動させると、上記発光素子からの光が上記ペンや指等により遮光され、その遮光を、上記発光素子に対向する受光素子が感知することにより、上記ペンや指等の軌跡(メモ等の入力情報)を検知するようになっている。そして、その軌跡を信号として上記電子書籍端末に出力すると、その電子書籍端末のディスプレイにメモ等として入力することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−147871号公報
【特許文献2】特許第3682109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電子書籍端末では、メモ等を入力する際に、ペン等がディスプレイに直接接触するため、たとえディスプレイに防傷処理が施されていたとしても、使用頻度が多くなるにつれて傷が発生し、その傷により、ディスプレイに表示される文字等の視認性が低下するという問題がある。しかも、入力した上記メモ等は、上記電子書籍端末にデジタルデータ(電子データ)として保存(記憶)することができるが、高齢者を中心として、上記メモ等を紙にも残したいという要望がある。また、上記電子書籍端末のなかには、入力に専用ペンを要するものもある。
【0006】
上記光学的位置検出装置を入力手段に用いると、上記電子書籍端末の問題点を解消することができる。すなわち、上記光学的位置検出装置では、入力の際にペン等をディスプレイに直接接触させる必要がないため、上記ディスプレイの傷は防止することができる。また、上記光学的位置検出装置は、四角枠状であるため、その下に紙を設置し、その紙の一部分を枠内から露呈させ、その露呈した紙の部分に直接、筆記用具でメモ等を書き込みながら、そのメモ等を入力することができる。そのため、そのメモ等を紙に残すこともできる。さらに、上記光学的位置検出装置は、入力に専用ペンを要しない。
【0007】
しかしながら、上記光学的位置検出装置は、複数の発光素子および受光素子を枠状に並設しているため、その枠体が厚くなっており(厚み約6mm以上)、枠内でペンや指等の入力体を移動させて入力する場合、上記枠体の厚みのため、その入力に用いる手が不自然に位置決めされ、入力し難くなっている。それに加えて、発光素子が厚いことから、発光素子からの光は、上記光学的位置検出装置の底面からある程度高い位置(4mm程度)を走行するため、ペンや指等で入力する場合、その入力位置が、枠内の底面ではなく、ある程度高い位置で検知される。しかも、入力する際のペンや指等は、通常、枠内の底面に直角ではなく、斜めになるため、検知される軌跡は、ペン先や指先等の軌跡(枠内の底面での軌跡)ではなく、その斜め上の軌跡となり、ディスプレイに表示されるメモ等が、入力者が意図した表示位置とずれる。これらのことから、入力するメモ等をディスプレイに適正に表示するためには、その入力が不自然になる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ディスプレイに直接接触することなく入力することができ、かつ、その入力に専用ペンを不要とし、かつ、その入力したメモ等を紙に残すことができ、かつ、入力が容易にできる電子書籍装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の電子書籍装置は、ディスプレイを備えた電子書籍端末と、上記ディスプレイに表示された情報に加える新たな情報を入力体の移動により入力し、その入力情報を上記電子書籍端末に出力する入力手段とを備えた電子書籍装置であって、上記入力装置が、下記(A)の枠状の光導波路を備え、その光導波路の枠内での上記入力体の軌跡を上記新たな情報とするという構成をとる。
(A)枠状に形成され、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している光導波路。
【0010】
ここで、本発明における電子書籍端末の「ディスプレイ」には、例えば、液晶パネル,有機エレクトロルミネッセンスパネル,電子ペーパ等が用いられる。その「ディスプレイ」は、タッチセンサ付きのもの(タッチパネル)であってもよいし、そうでなくてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子書籍装置は、入力手段における、入力体の軌跡の検知手段として、上記(A)の枠状の光導波路を備えている。そのため、入力に専用ペンは不要であり、入力体として、通常の筆記に用いるペンや人の指等の細長い物を用いることができる。また、光導波路を用いた入力は、光導波路の枠内で、入力体を移動させることにより行うことから、その入力には、入力体を上記電子書籍端末のディスプレイに直接接触させる必要がない。そのため、入力の際に上記ディスプレイに傷をつけることがない。また、上記光導波路は、枠状であるため、その枠内に紙を位置決めすることができ、そして、上記入力体として筆記用具を用いると、入力するメモ等を上記紙に直接書き込むことができるため、そのメモ等を紙に残すこともできる。さらに、光導波路は、薄く形成することができるため、その光導波路が入力の際の妨げにならず、入力体の移動に用いる手を自然な位置に位置決めすることができる。そのため、入力が容易にできる。そして、光導波路は、上記のように薄いことから、光出射用のコアの先端部から出射する光は、その枠内の底面から僅かに高い位置を走行するため、ペンや指等の入力体を斜めにした状態で入力しても、検知される軌跡は、ペン先や指先等の、入力体の先端の軌跡(枠内の底面での軌跡)と略同じであり、ディスプレイに表示されるメモ等が、入力者が意図した表示位置とずれず、ディスプレイにおける表示位置を容易に定めることができる。
【0012】
特に、電子書籍端末に装着される見開き型のブックカバーを備え、そのブックカバーのうち、上記ディスプレイに対応する部分に、そのディスプレイの大きさの開口部が形成され、その開口部に沿って上記枠状の光導波路が設けられている場合には、上記ブックカバーの見開き部分を開くことにより、電子書籍端末のディスプレイと、入力手段の枠状の光導波路とを並設することができるため、より入力し易くなる。また、上記ブックカバーの見開き部分を閉じた状態でも、上記光導波路の枠内から、上記ディスプレイの表示を見ることができる。
【0013】
また、電子書籍端末に装着される見開き型のブックカバーを備え、そのブックカバーのうち、上記ディスプレイに対応する側の見開き部分全体が、上記入力手段となっており、その入力手段の枠状の光導波路の中空枠が、上記ディスプレイの外周縁に沿って位置決め可能になっている場合にも、上記と同様、上記ブックカバーの見開き部分(入力手段)を開くことにより、電子書籍端末のディスプレイと、入力手段の枠状の光導波路とを並設することができるため、より入力し易くなる。また、上記ブックカバーの見開き部分(入力手段)を閉じた状態でも、上記光導波路の枠内から、上記ディスプレイの表示を見ることができる。さらに、ディスプレイに対応する側が上記入力手段のみとなるため、ブックカバー部分の厚み分を薄くすることができる。
【0014】
そして、光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部が、レンズ部に形成されている場合には、光出射用のコアのレンズ部からの出射光を、光の拡散を適正に抑制した状態で出射することができ、光入射用のコアのレンズ部では、上記出射光を、適正に収束させた状態で、コア内に導くことができる。その結果、光導波路の枠内での光伝送効率を向上させることができ、その枠内での入力体の軌跡を正確に検知することができる。
【0015】
さらに、光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部を被覆した状態でオーバークラッド層の先端部が形成され、そのオーバークラッド層の先端部が、レンズ部に形成されている場合には、光出射側では、オーバークラッド層のレンズ部からの出射光を、光の拡散を適正に抑制した状態で出射することができ、光入射側では、上記出射光を、オーバークラッド層のレンズ部の広い領域で入射させ、その光を、さらに絞って集束した状態でコアの端面に入射させることができる。その結果、光導波路の枠内での光伝送効率を向上させることができ、その枠内での入力体の軌跡を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電子書籍装置の一実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、上記電子書籍装置の入力手段を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のX1−X1断面図であり、(c)は、(a)のX2−X2断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、上記入力手段の作製方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、上記図3に示す工程に続く入力手段の作製方法を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(b)は、上記図4に示す工程に続く入力手段の作製方法を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)は、上記図5に示す工程に続く入力手段の作製方法を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)のX4−X4断面図である。
【図7】上記図6に示す工程に続く入力手段の作製方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の電子書籍装置の一実施の形態を示している。この実施の形態の電子書籍装置は、図1に示すように(図1では、下記ブックカバーBを開いた状態を示している)、ディスプレイDを備えた電子書籍端末Mと、この電子書籍端末Mに装着された見開き型のブックカバーBと、このブックカバーBの見開き部分Baに設けられ、上記ディスプレイDに表示する情報を入力するための、四角枠状の光導波路Wを有する入力手段Aとを備えている。その入力手段Aは、上記光導波路Wの枠内に入力したメモ等の情報を上記電子書籍端末Mに出力するようになっている。上記四角枠状の光導波路Wは、この実施の形態では、上記ブックカバーBのうち、上記ディスプレイDに対応する部分に形成された、ディスプレイDの大きさの開口部に沿って、固定されている。また、上記入力手段Aから上記電子書籍端末Mへの情報の出力は、接続ケーブルにより行ってもよいし、無線により行ってもよいが、この実施の形態では、接続ケーブル(図示せず)で行われるようになっている。このように、電子書籍端末Mに、光導波路Wで入力情報を検知する入力手段Aを設けたことが、本発明の大きな特徴である。
【0019】
その特徴的な入力手段Aについて詳しく説明する。
【0020】
上記入力手段Aは、その平面図を図2(a)に示すように、各辺が同一太さの上記四角枠状の光導波路Wと、上記入力手段A自体を制御する制御手段Cとを備えており、一辺(図の下側の辺)が太く、他の3辺が同一太さの四角枠状に形成されている。この入力手段Aにおいて、四角枠状の中空枠の外側部分に、上記四角枠状の光導波路Wが配設され、上記太い一辺の外側端縁側に、上記制御手段Cが帯状に配設されている。また、上記入力手段Aのうち、上記光導波路Wが配置された部分の拡大断面図〔図2(a)のX1−X1断面図〕である図2(b)および上記制御手段Cが配置された部分の拡大断面図〔図2(a)のX2−X2断面図〕である図2(c)に示すように、この実施の形態では、上記光導波路Wおよび上記制御手段Cは、ステンレス等からなる四角枠状の保持板30上に固定されているとともに、それらの頂面がポリカーボネート等からなる保護板40で覆われている。上記保持板30は、入力手段Aの平面性を保持し易くするためのものであり、上記保護板40は、入力手段Aを保護するためのものである。
【0021】
上記四角枠状の光導波路Wは、図2(a),(b)に示すように、つぎのような、アンダークラッド層1,コア2a,2b,オーバークラッド層3からなっている。すなわち、上記四角枠状の保持板30上に、四角枠状のアンダークラッド層1が形成されている。そして、そのアンダークラッド層1の四角枠を構成する一対のL字状部分の一方の表面に、光出射用のコア2aが複数に分岐された状態で形成され、他方の表面に、光入射用の複数のコア2bが並列状態で形成されている。各コア2a,2bの先端部は、上記四角枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコア2aの先端部と光入射用のコア2bの先端部とが対向した状態に形成されている。さらに、上記光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを被覆した状態で、上記アンダークラッド層1の表面に、オーバークラッド層3が四角枠状に形成されている。この実施の形態では、上記四角枠状の内側縁に位置決めされているコア2a,2bの先端部が、平面視形状が略1/2円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部に形成され、そのレンズ部を被覆するオーバークラッド層3の先端部が、側断面形状が略1/4円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部3aに形成されている。なお、図2(a)では、コア2a,2bを鎖線で示しており、鎖線の太さがコア2a,2bの太さを示している。また、図2(a),(b)では、コア2a,2bの数を略して図示している。
【0022】
上記制御手段Cは、図2(a),(c)に示すように、上記光出射用のコア2aの端部に接続された発光素子5,上記光入射用のコア2bの端部に接続された受光素子6,上記入力手段Aを制御するIC,上記光導波路Wの枠内に入力したメモ等の情報(ペンや指等の入力体の先端の移動軌跡の情報)を記憶するメモリ,そのメモ等の情報を電子書籍端末Mに出力する接続モジュール等がフレキシブルプリント基板7に搭載されてなる回路基板を備えている。なお、図2(c)では、上記IC,メモリ,接続モジュール等をまとめて符号8を付した斜線部分で示している。また、上記回路基板への電気は、電子書籍端末MからUSBケーブル等の接続ケーブル(図示せず)を介して供給される。
【0023】
そして、上記入力手段Aにおいて、上記発光素子5からの光は、上記光出射用のコア2aを通り、その先端のレンズ部を経て、それを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの表面から出射される。これにより、その光は、上記四角枠状の光導波路Wの枠内において、格子状に走った状態となる。その格子状に走る光は、上記光出射用のコア2aの先端のレンズ部およびそれを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの屈折作用により、発散が抑制されている。そして、この状態で、光導波路Wの枠内でペンや指等の入力体を移動させることにより、メモ等の情報を入力することができる。すなわち、上記光導波路Wの枠内で上記入力体を移動させると、上記格子状に走る光は、上記入力体の先端(ペン先や指先等)により遮光され、その遮光が上記受光素子6により感知されることにより、上記入力体の先端の軌跡(メモ等の入力情報)が検知され、デジタルデータ(電子データ)として上記メモリに記憶されるとともに、上記電子書籍端末Mに出力され、ディスプレイDに表示されるようになっている。
【0024】
このように、上記入力手段Aにおいて、入力体の軌跡の検知手段として、上記枠状の光導波路Wを用いると、その光導波路Wの枠内で、ペンや人の指等の入力体を移動させることにより入力することができるため、その入力体を上記電子書籍端末MのディスプレイDに直接接触させる必要がなく、上記ディスプレイDに傷をつけることがない。また、上記入力手段Aの光導波路Wは、四角枠状であるため、その入力手段Aの下に紙を設置し、その紙の一部分を光導波路Wの枠内から露呈させ、その露呈した紙の部分に直接、筆記用具でメモ等を書き込みながら、そのメモ等を入力することができる。そのため、そのメモ等を紙に残すことができる。
【0025】
さらに、この実施の形態では、上記入力手段Aの制御手段Cに、光導波路Wの枠内に入力したメモ等の情報を記憶するメモリを備えているため、そのメモ等の情報を電子書籍端末Mに記憶させたくない場合(ニーズ)にも、対応することができる。そして、そのメモリに記憶したメモ等の情報は、単独で(書籍の文字等の情報を表示することなく)、電子書籍端末MのディスプレイDに表示(再生)することができる。
【0026】
また、光導波路Wは、薄く形成することができ(厚くても1mm程度)、この実施の形態のように、光導波路Wの表裏面に保持板30および保護板40を設けても、総厚を2mm程度に形成できるため、その光導波路Wに保持板30および保護板40を合わせた四角枠状の部分が入力の際の妨げにならず、入力し易くなっている。そして、光導波路Wは、上記のように薄いことから、光出射用のコア2aの先端部から出射する光は、上記保持板30の厚みを考慮しても、その枠内の底面から僅かに高い位置(0.6mm程度)を走行するため、上記入力体を斜めにした状態で入力しても、検知される軌跡は、入力体の先端の軌跡(枠内の底面での軌跡)と略同じである。そのため、ディスプレイDに表示されるメモ等が、入力者が意図した表示位置とずれないことから、ディスプレイDにおける表示位置を容易に定めることができる。
【0027】
つぎに、上記入力手段A以外の、上記電子書籍装置の構成である電子書籍端末MおよびブックカバーBについて説明する。
【0028】
上記電子書籍端末Mは、電子化された、書籍の文字や写真等の情報を、ディスプレイDに表示するとともに、上記入力手段Aからの情報(入力手段Aで入力したメモ等の情報)をディスプレイDに表示するものとなっている。これにより、上記ディスプレイDには、上記書籍の文字等の情報に、上記入力手段Aで入力したメモ等の情報が重ね合わさった状態で表示される。また、入力手段Aで入力したメモ等を、その入力した位置に対応するディスプレイDの位置に表示させるために、入力手段Aの四角枠状の光導波路Wの枠内の座標を、ディスプレイDの画面の座標に変換し、入力手段Aで入力したメモ等をディスプレイDに表示するソフトウェア(プログラム)が、上記電子書籍端末Mに組み込まれている。なお、上記書籍の文字等の情報は、通常、上記電子書籍端末M内のハードディスク等や外部のSDメモリカード等の情報記憶媒体に予め記憶させておき、その情報記憶媒体から出力される。また、上記ディスプレイDに表示された、上記書籍の文字等の情報と上記入力手段Aで入力したメモ等の情報とが重ね合わさった情報は、上記情報記憶媒体に記憶することができる。
【0029】
また、上記電子書籍端末MのディスプレイDとしては、先に述べたように、例えば、液晶パネル,有機ELパネル,電子ペーパ等が用いられる。また、そのディスプレイDは、タッチパネルであってもよいし、そうでなくてもよい。
【0030】
上記ブックカバーBは、四角形状に形成され、中央から一方側の領域が、電子書籍端末Mを固定する固定部に形成されており、他方側の領域が、上記四角枠状の光導波路Wを有する入力手段Aの形成部に形成されている。
【0031】
つぎに、上記入力手段Aの作製方法の一例について説明する。なお、この説明のうち、光導波路Wの作製方法の説明に引用する図3〜図4は、図2(a)のX3−X3断面に相当する部分を図示している。
【0032】
まず、光導波路Wを形成するための四角枠状の基板10〔図3(a)参照〕を準備する。この基板10の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。
【0033】
ついで、図3(a)に示すように、上記四角枠状の基板10の表面に、それと同形状の四角枠状のアンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1は、感光性樹脂を形成材料として、フォトリソグラフィ法により形成することができる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0034】
つぎに、図3(b)に示すように、上記四角枠状のアンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により前記パターンの光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを形成する。これらコア2a,2bの形成材料としては、上記アンダークラッド層1および下記オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の形成材料よりも屈折率が高い感光性樹脂が用いられる。
【0035】
ここで、図3(c)に示すように、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する四角枠状の成形型20を準備する。この成形型20には、オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の表面形状に対応する型面を有する凹部21が形成されている。そして、その凹部21を上にして、成形型20を成形ステージ(図示せず)の上に設置し、その凹部21に、オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3Aを充填する。
【0036】
ついで、図4(a)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面にパターン形成したコア2a,2bを、上記成形型20の凹部21に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層1を上記成形型20に押圧し、上記オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3A内に、上記コア2a,2bを浸す。そして、この状態で、紫外線等の照射線を、上記成形型20を透して上記感光性樹脂3Aに照射し、その感光性樹脂3Aを露光する。これにより、上記感光性樹脂3Aが硬化し、四角枠状の内周縁部がレンズ部3aに形成された四角枠状のオーバークラッド層3が形成される。
【0037】
つぎに、図4(b)〔図4(a)とは上下を逆に図示している〕に示すように、上記成形型20〔図4(a)参照〕から、上記オーバークラッド層3を、上記基板10,アンダークラッド層1およびコア2a,2bと共に脱型する。
【0038】
そして、図4(c)に示すように、上記基板10〔図4(b)参照〕をアンダークラッド層1から剥離し、アンダークラッド層1,コア2a,2bおよびオーバークラッド層3からなる四角枠状の光導波路Wを得る。
【0039】
つぎに、図5(a)に平面図で示すように、フレキシブルプリント基板7を準備し、それに、発光素子5,受光素子6,上記入力手段A(図1参照)を制御するIC,上記光導波路W(図1参照)の枠内に入力した情報を記憶するメモリ,その情報を電子書籍端末M(図1参照)に出力する接続モジュール等を搭載し、回路基板を作製する。なお、図5(a)では、上記IC,メモリ,接続モジュール等をまとめて符号8で示している。
【0040】
ここで、図5(b)に平面図で示すように、前記四角枠状の保持板30を準備する。この保持板30は、四角枠状の一辺31が太く形成されている。この保持板30の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。なかでも、平面性の保持に優れている点で、ステンレスが好ましい。保持板30の厚みは、例えば、0.5mm程度に設定される。
【0041】
そして、図6(a)に平面図で示し,図6(b)に断面図〔図6(a)のX4−X4断面図〕で示すように、上記回路基板の上記発光素子5を光出射用のコア2aに接続し、上記受光素子6を光入射用のコア2bに接続する。この状態で、上記保持板30の表面に、上記光導波路Wを貼着するとともに、上記回路基板を固定する。このとき、上記光導波路Wの貼着は、上記保持板30の表面のうち、上記太い一辺31の外側端縁側の帯状部分31a〔図5(b)参照〕を残して施され、上記回路基板の固定は、上記帯状部分31aに施される。
【0042】
その後、図7に断面図で示すように、上記オーバークラッド層3のレンズ部3aを除く頂面と、上記回路基板の固定部分とを、保護板40で被覆する。この保護板40の形成材料としては、例えば、樹脂,金属,ガラス,石英,シリコン等があげられる。保護板40の厚みは、例えば、0.5mm程度に設定される。
【0043】
このようにして、上記入力手段Aを作製することができる。この入力手段Aにおいて、上記光導波路Wの部分は、先に述べたように、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせても、総厚を2mm程度と、薄く形成することができる。上記回路基板が固定された部分も、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせても、総厚を2mm程度と、薄く形成することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、電子書籍端末MにブックカバーBを装着し、そのブックカバーBの見開き部分Baに入力手段Aを設けたが、ブックカバーBの見開き部分Baの全体が、入力手段Aに形成されていてもよい。この場合も上記実施の形態と同様、上記ディスプレイDの外周縁に沿って、上記入力手段Aの枠状の光導波路Wの中空枠が位置決めされるようになっている。また、ブックカバーBを用いることなく、上記電子書籍端末Mと入力手段Aとで電子書籍装置を構成してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態では、入力手段Aの四角枠状の光導波路Wにおいて、枠内での光伝送効率を向上させるために、光出射用のコア2aの先端部および光入射用のコア2bの先端部をレンズ部に形成するとともに、それを被覆するオーバークラッド層3の先端部もレンズ部3aに形成したが、枠内での光伝送効率が充分であれば、上記レンズ部は、コア2a,2bまたはオーバークラッド層3の一方のみに形成してもよいし、両方とも形成しなくてもよい。また、上記レンズ部を形成しない場合、別体のレンズ体を準備し、光導波路Wの枠内に設置してもよい。
【0046】
そして、上記実施の形態では、上記光導波路Wの平面性を保持するために、光導波路Wの裏面に保持板30を設け、さらに、光導波路Wを保護するために、光導波路Wの表面に保護板40を設けたが、上記平面性保持や保護が充分であれば、いずれか一方のみを設けてもよいし、両方とも設けなくてもよい。
【0047】
さらに、上記実施の形態では、上記入力手段Aの制御手段Cの表裏面にも、保持板30および保護板40を設けたが、その入力手段Aから電子書籍端末Mへの情報出力を無線で行う場合、上記保護板40がステンレス製であると、無線電波に対してノイズが発生し、適正な情報出力ができなくなるおそれがあるため、上記保護板40は、ポリカーボネート製等の樹脂製であることが好ましい。
【0048】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0049】
〔アンダークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)75重量部。
成分B:エポキシ基含有アクリル系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0150M)25重量部。
成分C:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部。
これら成分A〜Cを、紫外線吸収剤(チバジャパン社製、TINUVIN479)5重量部とともに、シクロヘキサノン(溶剤)に溶解することにより、アンダークラッド層の形成材料を調製した。
【0050】
〔コアの形成材料〕
成分D:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、157S70)85重量部。
成分E:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)5重量部。
成分F:エポキシ基含有スチレン系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0250SP)10重量部。
これら成分D〜Fと上記成分C4重量部とを、乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0051】
〔オーバークラッド層の形成材料〕
成分G:脂環骨格を有するエポキシ樹脂(アデカ社製、EP4080E)100重量部。
この成分Gと上記成分C2重量部とを混合することにより、オーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0052】
〔光導波路の作製〕
四角枠状のステンレス製基板(厚み50μm)の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料を塗布した後、160℃×2分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。ついで、上記感光性樹脂層に対し、紫外線を照射して積算光量1000mJ/cm2 の露光を行い、厚み10μmの四角枠状のアンダークラッド層(波長830nmにおける屈折率1.510)を形成した。
【0053】
ついで、上記四角枠状のアンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料を塗布した後、170℃×3分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。つぎに、フォトマスクを介して(ギャップ100μm)、紫外線を照射し、積算光量3000mJ/cm2 の露光を行った。つづいて、120℃×10分間の加熱処理を行った。その後、現像液(γ−ブチロラクトン)を用い現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×5分間の乾燥処理を行い、幅30μm×高さ50μmのコア(波長830nmにおける屈折率1.570)をパターン形成した。
【0054】
ここで、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する四角枠状の成形型を準備した。この成形型には、オーバークラッド層の表面形状に対応する型面を有する凹部が形成されている。そして、その凹部を上にして、成形型を成形ステージの上に設置し、その凹部に、上記オーバークラッド層の形成材料を充填した。
【0055】
ついで、上記アンダークラッド層の表面にパターン形成したコアを、上記成形型の凹部に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層を上記成形型に押圧し、上記オーバークラッド層の形成材料内に、上記コアを浸した。そして、この状態で、紫外線を、上記成形型を透して上記オーバークラッド層の形成材料に照射して積算光量8000mJ/cm2 の露光を行い、四角枠状の内周縁部が凸状のレンズ部に形成された四角枠状のオーバークラッド層を形成した。その凸状のレンズ部は、側断面形状が略1/4円弧状のレンズ曲面(曲率半径1.4mm)を有するものであった。
【0056】
つぎに、上記成形型から、上記オーバークラッド層を、上記基板,アンダークラッド層およびコアと共に脱型した。
【0057】
そして、上記基板をアンダークラッド層から剥離し、アンダークラッド層,コアおよびオーバークラッド層からなる四角枠状の光導波路(総厚1mm)を得た。
【0058】
〔入力手段の作製〕
つぎに、フレキシブルプリント基板を準備し、それに、発光素子(Optwell社製、SM85−2N001),受光素子(浜松ホトニクス社製、S−10226),CMOS駆動IC,水晶振動子,光導波路の枠内への入力情報を記憶するメモリ,電子書籍端末と接続する接続モジュール等を搭載し、回路基板を作製した。そして、この回路基板の上記発光素子を光出射用のコアに接続し、上記受光素子を光入射用のコアに接続した。この回路基板を備えた制御手段の総厚は、1mmであった。
【0059】
ここで、四角枠状のステンレス製保持板(厚み0.5mm)を準備した。この保持板の中空枠は、縦94.7mm×横125.7mmの四角形とした。また、上記四角枠状の一辺は、幅25mmと太く形成し、他の3辺は、幅7mmに形成した。そして、上記保持板の表面のうち、上記中空枠の外側部分に、上記四角枠状の光導波路を貼着するとともに、上記太い一辺の外側端縁側に、上記回路基板を固定した。その後、上記オーバークラッド層のレンズ部を除く頂面と、上記回路基板の固定部分とを、ポリカーボネート製保護板(厚み0.5mm)で被覆し、入力手段を得た。この入力手段において、光導波路部分も回路基板部分も、それらの表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚2mmであった。
【0060】
〔電子書籍装置の作製〕
電子書籍端末を準備し、それと上記入力手段とを、情報伝達用の接続ケーブルおよび通電用の接続ケーブルで接続した。上記電子書籍端末には、入力手段の四角枠状の光導波路の枠内の座標を、電子書籍端末のディスプレイの画面の座標に変換し、入力手段で入力したメモ等をディスプレイに表示するソフトウェア(プログラム)が、組み込まれている。なお、上記入力手段は、上記ステンレス製保持板を下にして、平坦なテーブルの上に載置した。
【0061】
〔実施例1〕
〔電子書籍装置の作動確認〕
上記電子書籍端末のディスプレイに、書籍の文字情報を表示した。この状態で、上記入力手段の四角枠状の光導波路の枠内で、入力者が自分の指を移動させた。その結果、その移動軌跡が、上記ディスプレイに表示されている上記書籍の文字情報に重ね合わさった状態で、表示された。また、上記入力手段のメモリに、上記指の移動軌跡を記憶させることができ、後に、その移動軌跡のみを、上記ディスプレイに再生することができた。
【0062】
〔実施例2〕
紙を準備し、その紙を、を入力装置の下に設置し、その紙の一部分を光導波路の枠内から露呈させた。この状態で、その光導波路の枠内で、筆記用のペンを移動させた。その結果、その移動軌跡が、上記ディスプレイに表示されている資料等の情報に重ね合わさった状態で、表示された。また、上記筆記用のペンを用いたため、上記紙に、上記移動軌跡を書き込むことができた。さらに、上記入力手段のメモリに、上記指の移動軌跡を記憶させることができ、後に、その移動軌跡のみを、上記ディスプレイに再生することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の電子書籍装置は、電子書籍端末で書籍を読む際に、メモ等を残すことに利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
A 入力手段
D ディスプレイ
M 電子書籍端末
W 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを備えた電子書籍端末と、上記ディスプレイに表示された情報に加える新たな情報を入力体の移動により入力し、その入力情報を上記電子書籍端末に出力する入力手段とを備えた電子書籍装置であって、上記入力装置が、下記(A)の枠状の光導波路を備え、その光導波路の枠内での上記入力体の軌跡を上記新たな情報とすることを特徴とする電子書籍装置。
(A)枠状に形成され、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している光導波路。
【請求項2】
電子書籍端末に装着される見開き型のブックカバーを備え、そのブックカバーのうち、上記ディスプレイに対応する部分に、そのディスプレイの大きさの開口部が形成され、その開口部に沿って上記枠状の光導波路が設けられている請求項1記載の電子書籍装置。
【請求項3】
電子書籍端末に装着される見開き型のブックカバーを備え、そのブックカバーのうち、上記ディスプレイに対応する側の見開き部分全体が、上記入力手段となっており、その入力手段の枠状の光導波路の中空枠が、上記ディスプレイの外周縁に沿って位置決め可能になっている請求項1記載の電子書籍装置。
【請求項4】
光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部が、レンズ部に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子書籍装置。
【請求項5】
光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部を被覆した状態でオーバークラッド層の先端部が形成され、そのオーバークラッド層の先端部が、レンズ部に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子書籍装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−141934(P2012−141934A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1275(P2011−1275)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】