説明

電子材料洗浄方法および洗浄システム

【課題】過硫酸を含む硫酸溶液を洗浄液として、循環利用して電子材料を洗浄する際に、洗浄排液の廃棄と循環とを効果的に選り分けることを可能にする。
【解決手段】過硫酸を含む硫酸溶液を洗浄液として電子材料に供給することにより該電子材料に前記洗浄液を接触させて該電子材料を枚葉式で洗浄し、洗浄排液を系内に循環させ過硫酸を再生して前記洗浄液として再利用する洗浄方法において、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄開始から、第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を系内に循環させ、前記第1のタイミング後、第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を系外に廃棄し、前記第2タイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を系内に循環させることで、レジスト濃度の高い時間帯の洗浄排液は系外に廃棄し、それ以外の時間帯の洗浄排液は系内に循環し再利用することが可能になり、効果的な選り分けが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品製造分野、具体的には半導体基板、液晶基板、有機EL基板、フォトマスク基板、ハードディスク基板等の製造分野において、電子材料上のレジストを効率的に剥離除去するための洗浄方法および洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板等の基板の表面に薬液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。特に、ここ最近ゲート間隔が狭くなるに従い、この枚葉式の使用ニーズが高まっている。
枚葉式で基板のフォトレジストを剥離する工程においては硫酸と過酸化水素水とを混合して製造したSPM溶液(ペルオキソ一硫酸を含む)が一般的に使用されるが、一過性でのいわゆる使い捨てでの処理となっており、その薬液の使用量が大きな問題になりつつある。そこで、薬液の消費量の低減を図るために、硫酸を電気分解して製造した硫酸電解液(ペルオキソ二硫酸を含む)を用いて基板上のレジストを剥離する技術がある(特許文献1、2)。この発明により、硫酸は循環利用することが可能となり、廃薬液の発生を大幅に削減できることとなった。また硫酸電解液を用いてアッシングレスでの基板洗浄を行うことも可能となった。
なお、本願においてはペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸とを総じて過硫酸と称することがある。
【0003】
しかし枚葉式の基板洗浄を行った洗浄排液を回収して再使用しようとする場合、特に洗浄初期の洗浄排液中にはレジスト由来有機物などの多量の異物が含まれることがあり、回収に際して異物の量を低減するためにフィルタを設ける、又は異物が残留しないように予め洗浄中の酸化剤の量を多くするといった工夫が必要であった。あるいは、洗浄初期の洗浄排液については系外に廃棄し、その後の洗浄排液については系内に循環して再生後に基板洗浄に再使用することも提案されている。(特許文献3)
さらには、不純物の濃度によって洗浄排液を選り分けて不純物が濃厚な排液は系外に廃棄し、不純物が希薄な排液を系内に循環させ再利用する技術思想も従来から知られている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4412301号公報
【特許文献2】特開2010−248618号公報
【特許文献3】特開2006−024793号公報
【特許文献4】特開平11−238716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の洗浄排液の選り分けでも、洗浄排液の効果的な廃棄と循環の選り分けは十分になされておらず、廃棄が不十分で必要以上に循環する洗浄排液を増やして硫酸電解液の負荷が増えたり、廃棄が過度になって溶液補充の負担が増えたり、レジスト濃度の高い洗浄排液が循環されることで洗浄能力の低下を招いたりする問題がある。このため、より効果的な洗浄排液の選り分けが望まれている。
特にアッシングレス洗浄の場合は、枚葉式洗浄の際に洗浄排液の量が少量であり有機物濃度の測定が困難である点、アッシングレスではレジストは剥離してしばらくは洗浄排液中に固形物として存在することがあるのでオンタイムで正確な有機物濃度を測定することが難しい点、があり、上記選り分けを一層困難にするという問題点がある。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、硫酸電解液を用いた枚葉式の洗浄において硫酸電解液の負荷を低減する電子材料洗浄方法及び電子材料洗浄システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、電子材料に難剥離性のレジストなどが付着していると、洗浄開始時から一定時間はレジスト剥離が殆ど起こらないため洗浄排液中のレジスト濃度は小さく、レジスト剥離する時間帯のみ洗浄排液のレジスト濃度が高くなることを見出した。前処理としてアッシング(レジスト剥離の前処理としてレジストを高温で灰化させるドライ処理)を行えばレジストの大部分は灰化するためレジストを分解するための過硫酸の負荷が小さく、比較的早期にレジストの剥離は生じるが、特に、アッシングを行わないときはウエハ1枚当たりのレジストの絶対量が多くなるので過硫酸の負荷も大きくなり、洗浄開始直後のレジスト剥離が速やかに進行しない。本発明は、斯かる知見に基づいてなされたものであり、より効果的な洗浄廃液の選り分けを可能にする。
【0007】
すなわち、本発明の電子材料の洗浄方法のうち第1の本発明は、過硫酸を含む硫酸溶液を洗浄液として電子材料に供給することにより該電子材料に前記洗浄液を接触させて該電子材料を枚葉式で洗浄し、洗浄排液を系内に循環させ、過硫酸を再生して前記洗浄液として再使用する洗浄方法において、
前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄開始から、第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を系内に循環させ、前記第1のタイミング後、第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を系外に廃棄し、前記第2のタイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を系内に循環させることを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記第1のタイミングが、前記洗浄開始から予め設定された第1の所定時間を経過した時点であることを特徴とする。
第3の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1の本発明において、予め、基準となる電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、測定値が第1の所定値を越えた第1時点を求めておき、電子材料ごとの洗浄に際し、予め求めた前記第1時点を前記第1のタイミングとすることを特徴とする。
第4の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、測定値が第1の所定値を越えた時点を前記第1のタイミングとすることを特徴とする。
第5の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記第2のタイミングが前記洗浄開始からまたは前記第1のタイミングから、予め設定された第2の所定時間を経過した時点であることを特徴とする。
第6の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、予め、基準となる電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、前記第1のタイミング以降に測定値が第2の所定値を下回った第2時点を求めておき、電子材料ごとの洗浄に際し、予め求めた前記第2時点を第2のタイミングとすることを特徴とする。
第7の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、測定値が第2の所定値を下回った時点を第2のタイミングとすることを特徴とする。
第8の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、前記第1のタイミング以降に測定値が第1の所定値を越えないで所定時間経過した時点を第2のタイミングとすることを特徴とする。
第9の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、前記第2のタイミング以降に、測定値が所定値を上回ると洗浄排液を系外に廃棄し、測定値が所定値を下回ると洗浄排液を系内に循環することを特徴とする。
第10の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第9の本発明のいずれかにおいて、前記電子材料がアッシングレスで前記洗浄に供されたものであることを特徴とする。
第11の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第10の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄液が、硫酸溶液と過酸化水素水とを混合したSPM溶液であることを特徴とする。
第12の本発明の電子材料の洗浄方法は、前記第1〜第10の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄液が、硫酸溶液を電気分解した硫酸電解液であることを特徴とする。
【0009】
第13の本発明の電子材料洗浄システムは、電子材料に過硫酸を含む洗浄液を供給して前記洗浄液を前記電子材料に接触させる枚葉式の洗浄装置と、
前記洗浄装置の洗浄排液を系外に廃棄する廃棄ラインと、
前記洗浄排液を循環させて前記洗浄装置に環流する循環ラインと、
前記循環ラインに介設されて前記洗浄排液の一部または全部に過硫酸を含有させて再生する洗浄液再生部と、
前記排出ラインにおける洗浄排液の排出と、前記循環ラインにおける洗浄排液の循環とを制御する洗浄排液制御部と、を備え、
前記洗浄排液制御部は、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの時間範囲内で第1のタイミングと第2のタイミングとが設定されており、前記洗浄装置による洗浄に際し、前記洗浄開始から第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させ、前記第1のタイミング後、第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記廃棄ラインによって系外に廃棄し、前記第2のタイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させる制御を行うことを特徴とする。
【0010】
第14の本発明の電子材料洗浄システムは、電子材料に過硫酸を含む洗浄液を供給して前記洗浄液を前記電子材料に接触させる枚葉式の洗浄装置と、
前記洗浄装置の洗浄排液を系外に廃棄する廃棄ラインと、
前記洗浄排液を循環させて前記洗浄装置に環流する循環ラインと、
前記循環ラインに介設されて前記洗浄排液の一部または全部に過硫酸を含有させて再生する洗浄液再生部と、
前記洗浄装置から排出された洗浄排液の色度または濁度を測定する測定部と、
前記排出ラインにおける洗浄排液の排出と、前記循環ラインにおける洗浄排液の循環とを制御する洗浄排液制御部と、を備え、
前記洗浄排液制御部は、前記測定部の測定結果を受け、該測定結果に基づいて前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの時間範囲内で第1のタイミングと第2のタイミングとを設定し、前記洗浄開始から第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させ、前記第1のタイミング後、前記第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記廃棄ラインによって系外に廃棄し、前記第2のタイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させる制御を行うことを特徴とする。
【0011】
第15の本発明の電子材料洗浄システムは、前記第13または第14の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄液再生部は、前記洗浄排液に過酸化水素水を添加する装置であることを特徴とする。
第16の本発明の電子材料洗浄システムは、前記第13または第14の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄液再生部は、前記洗浄排液を電解する装置であることを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明によれば、電子材料ごとの洗浄時間中に、レジスト濃度の高い時間帯の洗浄排液は系外に廃棄し、それ以外の時間帯の洗浄排液は系内に循環し再利用することが可能になる。
本発明は、電子材料の枚葉式の洗浄に用いた洗浄排液を再使用するために回収する方法であって、電子材料ごとの洗浄を完了するまでの間に、一部の処理時間においてその処理に用いた洗浄排液を廃棄する廃液工程と、この廃液工程以外の処理時間において電子材料の処理に用いた洗浄排液を回収する工程とを含むことになる。
実際の処理では、洗浄排液を用いて電子材料の洗浄を開始し若干の時間が経ち、剥離溶解したレジスト濃度の高い洗浄排液が戻ってくる。これは電子材料上に残っているレジストの剥離性、すなわち剥離しやすいかしにくいかは、レジストパターン、レジスト厚さ、レジスト種、ドーズ量、ドーズする際の加速電圧などによって異なり、レジスト濃度の高い洗浄排液の戻ってくる時間は異なるからである。
ここで特にアッシングレスではレジストが多量にあって、かつ表面がドーズ元素による強固な層で覆われているため、洗浄初期は殆どレジストの剥離が起こらず、上記傾向が強い。
【0013】
また一方、レジスト量が多いため洗浄液にレジストが多量に溶け込むと洗浄液が黒褐色に濁り、またレジストが固形物として剥離されることもあるので、溶解した有機物の濃度ではなく、濁質として色度や濁度でレジスト濃度を測定することができる。アッシングした電子材料では、レジストが少ないので、洗浄排液が黒褐色に濁りにくい。
本発明では、洗浄液を電子材料に供給して接触させる枚葉式の洗浄において洗浄排液を回収する配管などに色度計または濁度計を組み込み、ある測定値、すなわち第1の所定値を越える色度または濁度ならば、その時点を第1のタイミングとして後段の弁などを系外廃棄に切替え、またある測定値、すなわち第2の所定値以下の色度または濁度ならば弁を系内循環に切り替えて回収・再利用することができる。
第1の所定値と第2の所定値とは同じ値にしてもよく、また、第1の所定値>第2の所定値の条件で両所定値を異なる値としてもよい。これらの所定値は、洗浄システムのプログラムに記憶させておくことができる。
【0014】
この発明により、洗浄排液のうち、レジスト濃度の高い部分を廃棄することができる。色度計または濁度計は過硫酸を含む高温高濃度の硫酸溶液に耐えうる材質及び方式ならば測定原理を問わない。
しかし、色度計または濁度計を設置することにより装置価格が高くなる。より安価にするには、予め洗浄排液の系外廃棄・系内循環の切替えの時間帯を設定しておき、実機に色度計や濁度計を備えないようにする。この場合は、洗浄対象の基準となる電子材料(素材やドーズ量など同一条件のもの)に対して、本番と同一の洗浄条件で洗浄を行い、レジスト剥離の開始時期と終了時期を測定することによって切替えの時間帯、すなわち第1のタイミングと第2のタイミングとを設定することができる。電子材料の種類によってレジスト剥離の難易度が異なるので、難易度に応じて分画回収のタイミングを変えて行うためであり、予め最適タイミングを測定して、洗浄システムのプログラムに記憶させておくことになる。
また、第1のタイミングや第2のタイミングは、その他の実験データなどによって設定することも可能である。
また、第1のタイミングと第2のタイミングの設定値は、操作者によって変更可能にしてもよい。これにより実際の稼働状態などを考慮してタイミングの修正を行いたいような場合にも、適切な設定変更が可能になる。
【0015】
なお、洗浄対象の電子材料によっては色度や濁度の経時変化が単純な極大値を持った変化になる可能性があるので、そのときは測定値が第1の所定値を越えない時間が所定時間継続することで、第2のタイミングと判断することができる。この所定時間は予め実験や、基準となる電子材料の洗浄において求めておくことができる。
【0016】
本発明では、前処理としてアッシングがなされたか否かに拘わらず適用が可能であるが、アッシングレスで洗浄に供される電子材料に好適に適用することができる。
【0017】
また、洗浄液には、過硫酸を含む硫酸溶液を用いる。レジスト剥離に寄与する酸化性物質としては、過硫酸以外にオゾンが挙げられる。また、硫酸溶液は、洗浄効果を高めるため、硫酸濃度が80質量%以上であるのが望ましい。硫酸濃度80質量%未満では、電子材料上のレジストなどを十分に洗浄することが難しくなるおそれがある。
【0018】
通常、枚葉式洗浄機のターンテーブル上などに1枚のウェハなどの電子材料が載っている時間は1分から5分である。このうち、レジスト剥離のための洗浄液が電子材料上に供給される時間は1分程度であって、それ以外の時間は他の薬液や純水による洗浄に要する時間である。この1分間の中で、レジストが剥離するのは極短時間であり、その後はウエハ表面の清浄度を向上するために必要な時間である。液を回収して循環使用する場合には、特にレジスト濃度が高い洗浄排液のみ廃棄して、その他の比較的きれいな液は回収して循環使用される。
【0019】
色度および濁度は、既知の方法、既知の装置により測定することができ、比色計や吸光度計などを用いて測定することができ、本発明としては特にその方法や装置が限定されるものではない。閾値は、予め実験を行った結果や、文献などにより提示されるデータを利用することができる。
【0020】
洗浄排液を系内に循環させる場合、洗浄排液中に過硫酸を再生する。再生は、系内に循環させる洗浄排液の全部を対象にしてもよく、一部の洗浄排液を対象にしてもよい。さらに、再生を常に行ってもよく、また、一時的、間欠的に行うようにしてもよい。
洗浄排液中の過硫酸の再生は、例えば、過酸化水素水の添加や電解によって行うことができる。
【0021】
本発明において洗浄対象となる電子材料は、例えば、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、およびそのフォトマスク等の製造工程において、レジストパターンが形成された電子材料である。
通常、電子材料上のレジスト膜の厚さは0.1〜5.0μm程度であるが、何らこの厚さに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、電子材料ごとの洗浄時間中に第1のタイミングと第2のタイミングを用いて洗浄排液の廃棄と循環とを選り分けるので、レジスト残渣濃度の高い時間帯の洗浄排液は系外に廃棄し、それ以外の時間帯の洗浄排液は系内に循環し再利用することが可能になり、効果的な選り分けが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態における洗浄システムの概略構成を示す図である。
【図2】同じく、洗浄装置の概略構造を示す図である。
【図3】同じく、洗浄排液の選り分けを行う制御手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態における洗浄システムの概略構成を示す図である。
【図5】同じく、洗浄排液の選り分けを行う他の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の洗浄システムの実施形態を、図1、2を参照して詳細に説明する。
本発明の洗浄液再生部に相当する電解装置1は無隔膜型であり、少なくとも硫酸溶液と接液する部分をダイヤモンド電極とした陽極1aおよび陰極1bが隔膜で隔てることなく内部に配置され、両電極には図示しない直流電源が接続されている。なお、本発明としては、電解装置を隔膜型によって構成することも可能であり、バイポーラ電極を備えるものであってもよい。
上記電解装置1には、電解液貯留槽20が電解側循環ライン11を介して循環通液可能に接続されている。送り側の電解側循環ライン11には、硫酸溶液を循環させる第1循環ポンプ12が介設されている。
【0025】
電解液貯留槽20には、送液ポンプ21を介して送液ライン22が接続されている。
送液ライン22の送液側には、急速加熱器23が介設されており、送液ライン22の送液先端側は、洗浄開閉弁22aを介して枚葉式の洗浄装置30の洗浄液ノズル31に接続されている。 急速加熱器23は、石英製の管路を有し、例えば近赤外線ヒータによって硫酸溶液を一過式で、洗浄装置30の洗浄液ノズル31出口で120〜220℃の液温が得られるように過硫酸含有硫酸溶液を急速加熱する。
【0026】
上記した枚葉式の洗浄装置30では、搬入された電子材料基板100に向けた洗浄液ノズル31と、電子材料基板100を載置して回転させる回転台32とを備える。洗浄液ノズル31で、洗浄液として酸化性物質として過硫酸を含む硫酸溶液がスプレーされるか少量ずつ流れ落ちて、回転台32に保持された電子材料基板100に供給される。さらに、洗浄装置30には、洗浄排液の共通排液ライン40が接続されている。共通排液ライン40は、回収ライン41と廃棄ライン42とに分岐しており、それぞれに回収開閉弁41aと廃棄開閉弁42aとが介設されている。廃棄ライン42の送液側は、系外に伸長して、洗浄排液を排出する。
回収ライン41の送液側端部は、洗浄排液を回収する洗浄排液回収部44に接続されており、該洗浄排液回収部44の下流側で、上流側環流ライン46に第1環流ポンプ45が介設されている。
【0027】
上流側環流ライン46には、洗浄に用いられた硫酸溶液、すなわち洗浄排液を一時的に貯留する分解貯留槽50が接続されている。分解貯留槽50には、下流側循環ライン52が接続されており、該下流側循環ライン52は、第2環流ポンプ51、冷却器53を順次介して送液先端側が前記電解液貯留槽20に接続されている。また、送液ライン22からは、前記洗浄開閉弁22aの上流側で分岐送液ライン47が分岐しており、分岐送液ライン47は、分岐開閉弁47aを介して分解貯留槽50に接続されている。
【0028】
上流側環流ライン46および下流側環流ライン52は、両者によって洗浄液環流ラインを構成している。前記した電解側循環ライン11、送液ライン22、上流側環流ライン46および下流側環流ライン52は、これらによって本発明の循環ラインを構成している。
前記した洗浄開閉弁22a、分岐開閉弁47a、回収開閉弁41a、廃棄開閉弁42aの動作は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPUおよびこれを動作させるプログラムを主構成としており、その他に、作業エリアとなるRAM、プログラムなどを格納するROM、制御パラメータなどを格納した不揮発メモリなどを備えている。なお、制御部60は、本発明の洗浄排液制御部として機能する。
【0029】
図2は、洗浄装置30の概略を示す図である。
洗浄装置30は、電子材料基板100をほぼ水平に保持して回転する回転台32と、この回転台32に保持された電子材料基板100の上面に洗浄液を供給するための洗浄液ノズル31と、回転台32を収納した処理カップ33とを備えている。
洗浄液ノズル31には、前記した送液ライン22が接続されている。
処理カップ33は、回転台32の下方に位置する底壁33aと、この底壁33aから鉛直上方に立ち上がる円筒状隔壁33bとを備えている。底壁33aには、共通排液ライン40が接続されている。
【0030】
次に、上記構成からなる洗浄システムの動作について説明する
電解液貯留槽20には、硫酸濃度80質量%以上(好適には85質量%以上)の硫酸溶液が貯留される。前記硫酸溶液は、第1循環ポンプ12により電解側循環ライン11を通じて送液され、電解装置1の入液側に導入される。電解装置1では、直流電源によって陽極1a、陰極1b間に通電され、電解装置1内に導入された硫酸溶液が電解される。なお、該電解によって電解装置1では、陽極側で過硫酸を含む酸化性物質が生成される。酸化性物質は、前記硫酸溶液と混在した状態で電解側循環ライン11を通じて電解液貯留槽20に返送される。硫酸溶液は、過硫酸を含んでおり、電解側循環ライン11を通じて、電解液貯留槽20に戻された後、繰り返し電解装置1に送られ、電解により過硫酸の濃度が高められる。過硫酸濃度が適度になると、電解液貯留槽20内の硫酸溶液の一部は送液ポンプ21によって送液ライン22を通じて送液される。送液ライン22を流れる硫酸溶液は、急速加熱器23に達して急速加熱され、さらに洗浄開閉弁22aを開けた送液ライン22を通じて洗浄装置30に送液される。
【0031】
急速加熱器23では、過硫酸を含む硫酸溶液が流路を通過しながら近赤外線ヒータによって急速に加熱される。急速加熱器23では、洗浄装置30に送液されて洗浄液ノズル31の出口で120℃〜220℃の範囲の液温を有するように加熱される。急速加熱器23を洗浄装置30の近傍に配置することで、加熱温度を利用時の温度とほぼ同じにすることができる。
過硫酸を含む、加熱された硫酸溶液は、送液ライン22を通じて枚葉式の洗浄装置30に洗浄液として送液され、電子材料基板100の洗浄に使用される。このとき前記硫酸溶液は、急速加熱器23の入口から洗浄装置30で使用されるまでの通液時間が1分未満となるように、流量が調整されているのが望ましい。洗浄装置30では、送液ライン22により送液される酸化性物質を含んだ硫酸溶液が洗浄液ノズル31を通じて電子材料基板100に供給される。
【0032】
電子材料基板100に供給された洗浄液は、電子材料基板100の回転による遠心力を受けて、電子材料基板100の上面を周縁部に向けて拡がる。これによって、電子材料基板100の上面に洗浄液が行き渡り、電子材料基板100の洗浄が行われる。洗浄液は、電子材料基板100の回転による遠心力によって、その周縁から振り切られて側方に飛散し、処理カップ33内に落下する。処理カップ33の底壁33aに至る洗浄排液は、共通排液ライン40を通じて洗浄装置30外に取り出される。
【0033】
電子材料基板100の枚葉式洗浄においては、洗浄装置30に洗浄液を送っている時間は約1分間であるが、真にレジスト剥離が発生している時間はこのうち10〜15秒程度である。
また、アッシングレスの電子材料基板100のように、難剥離性のレジストなどが付着しているものでは、洗浄開始直後にレジストの剥離は顕在化せず、時間を経てレジストの剥離が効果的になされるようになる。
このため、洗浄初期から所定の時間までは、廃棄開閉弁42aを閉じるとともに回収開閉弁41aを開けて、洗浄排液を回収し、循環させる。すなわち、廃棄開閉弁42aを閉、回収開閉弁41aを開の状態では、洗浄装置30から共通排液ライン40を通じて排出される洗浄排液は、回収ライン41へと流れ、洗浄排液回収部44に回収される。この際の洗浄排液のレジスト濃度は比較的低くなっている。
【0034】
洗浄排液回収部44に回収された洗浄排液は、第1環流ポンプ45により上流環流ライン46を通じて分解貯留槽50に送液される。
分解貯留槽50の液滞留時間は10〜20分であり、枚葉式洗浄のインターバルに比較して長い。洗浄装置30に液を送っていない間(例えば、3分−1分=2分)は、洗浄開閉弁22aを閉じ、分岐開閉弁47aを開けて急速加熱器23からの液を分岐送液ライン47を通じて直接、分解貯留槽50に受け入れ、これを酸化剤として未分解レジストを酸化分解することができる。レジスト濃度が下がった洗浄排液は、第2環流ポンプ51により下流側環流ライン52を通じて電解液貯留槽20へ送り返される。この際には、冷却器53によって洗浄排液を電解に適した温度、例えば40〜90℃に冷却する。電解液貯留槽20に戻された洗浄排液は、電解側循環ライン11で循環しつつ電解装置1で、再度電解を行って過硫酸濃度を高め、洗浄液として再生し、洗浄に循環使用する。
【0035】
また、洗浄開始から所定時間を経過した時点を第1のタイミングとして、これ以降、第2のタイミングまでは洗浄排液を系外に廃棄する。この時期の洗浄排液は、電子材料基板100から効果的にレジストが剥離されている状態にあり、洗浄排液中のレジスト濃度は比較的高くなっている。
このため、この時期では制御部60の制御によって、回収開閉弁41aを閉じ、廃棄開閉弁42aを開いて洗浄排液を共通排液ライン40から廃棄ライン42へと流し、系外に排出する。
【0036】
また、第2のタイミングになると、電子材料基板100からはレジストが効果的に除去されつつ、洗浄排液が廃棄されているので、洗浄排液中のレジスト濃度が低くなっている。したがって、第2のタイミング以降は、洗浄排液を回収して洗浄に循環使用する。すなわち、廃棄開閉弁42a閉じ、回収開閉弁41aを開けて、前記のように洗浄排液回収部44、分解貯留槽50、電解液貯留槽20、電解装置1を経て、洗浄排液を環流させて再生し、洗浄装置30へと送液する。
【0037】
次に、上記洗浄システムにおける洗浄排液の回収と廃棄の選り分けの制御手順を図3のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の動作制御は制御部60によって行われる。
なお、この例では、予め制御部60に第1のタイミングと第2のタイミングとが洗浄開始からの経過時間データとして格納されている。また、電解液貯留槽20には、所定の硫酸溶液が収納されているものとする。
まず、第1循環ポンプによる硫酸溶液の循環、電解装置1での電解、送液ポンプ21による送液、第2環流ポンプ51による送液を開始する。
【0038】
電子材料基板100の枚葉式洗浄では、制御部60は洗浄開始の指示を受けると、洗浄開閉弁22aを開、分岐開閉弁47aを閉、回収開閉弁41aを開、廃棄開閉弁42aを閉として、洗浄排液を回収して循環しつつ洗浄を行う(ステップs1)。洗浄開始の指示は、操作者による操作や、他装置による制御指令などによって行われる。この際に第1環流ポンプ45が洗浄を感知して稼働開始する。
洗浄開始に際し、制御部60では、前記第1のタイミングデータと第2のタイミングデータを参照するともに、経過時間のカウントを開始する。
【0039】
制御部60では、洗浄開始後の経過時間をカウントしており、経過時間が第1のタイミングに達したか否か判定する(ステップs2)。経過時間が第1のタイミングに達していなければ、洗浄排液を回収しつつ洗浄を継続する(ステップs2、NO)。また、経過時間が第1のタイミングに達すると(ステップs2、YES)、回収開閉弁41aを閉、廃棄開閉弁42aを開にすることで洗浄排液の循環利用を停止し、洗浄排液を廃棄する処理に切り替えて洗浄を継続する(ステップs3)。この際に第1環流ポンプ45が送液の切替えを検知して稼働を停止する。
その後、経過時間が第2のタイミングに達したか否かを判定する(ステップs4)。第2のタイミングに達していなければ(ステップs4、NO)、洗浄排液を廃棄しつつ洗浄を継続する。
経過時間が第2のタイミングに達すると(ステップs4、YES)、再び回収開閉弁41aを開、廃棄開閉弁42aを閉にすることで洗浄排液の廃棄を停止し、洗浄排液を回収して循環利用する(ステップs5)。この際に第1環流ポンプ45が送液の切替えを検知して再び稼働する。
その後、洗浄終了時間まで洗浄排液を循環しつつ洗浄を継続し、洗浄終了時間に達すると(ステップs6、YES)、洗浄開閉弁22aを閉、分岐開閉弁47aを開とすることで洗浄を終了する。この際に第1環流ポンプが送液の切替えを検知して停止する。
【0040】
なお、上記第1のタイミングと第2のタイミングの設定値は、予め設定して、制御部60の不揮発メモリに格納しておく。
設定値は、予め、上記電子材料基板と同種の基準となる電子材料基板について、上記と同じ洗浄条件で洗浄を行い、その際に、洗浄装置30から排出される洗浄排液の色度または濁度を測定し、測定値が所定値を越える第1時点を第1のタイミングに設定し、測定値が所定値以下になる第2時点を第2のタイミングに設定することができる。電子材料基板の種別毎に、第1のタイミングと第2のタイミングのデータを取得しておいてもよい。
【0041】
なお、第2の時点を判別することが難しい場合、測定値が所定値を越えない状態が所定時間継続した場合、その継続後の時点を第2のタイミングに設定することができる。第1のタイミングを決定する所定値と、第2のタイミングを決定する所定値とは同じである他、数値が異なるものであってもよい。ただし、その場合、第1のタイミングを決定する所定値>第2のタイミングを決定する所定値とする。また、洗浄する電子材料基板の種別や洗浄条件が、基準となる電子材料基板の種別や洗浄条件と異なる場合、上記相違点に基づく影響度を数値化し、基準となる第1のタイミングと第2のタイミングとを修正して、修正された第1のタイミングと第2のタイミングを算出するようにしてもよい。
【0042】
(実施形態2)
次に、洗浄装置30から排出される洗浄排液の色度または濁度を測定する測定部49を備える本発明の他の実施形態の洗浄システムを図4に基づいて説明する。
なお、この実施形態では、洗浄システムに測定部49を備える以外は前記実施形態と同様の構成を有している。ただし、制御部60では、測定値に対する閾値として、第1のタイミングを決定するための第1の所定値と、第2のタイミングを決定するための第2の所定値とが設定されて図示しない不揮発メモリに格納されている。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化する。
【0043】
この実施形態では、排液回収ライン40に、洗浄排液の色度または濁度を測定する測定部49が介設されている。この例では、測定部49を洗浄排液が一過式に流れ、その際に洗浄排液の色度または濁度が測定される。測定部49の測定結果は、制御部60に送信される。なお、この形態では、排液回収ライン40に測定部49を設けるものとしたが、排液回収ライン40などから測定路を分岐させ、該測定路に設けた測定部で色度または濁度を測定し、測定後に洗浄排液を排液回収ラインに返流するようにしてもよい。また、色度または濁度の測定箇所は特に限定されず、また、複数箇所で測定するようにしてもよいが、共通排液ラインを有するものでは、少なくとも当該共通排液ラインを流れる洗浄排液の色度または濁度を測定する必要がある。
【0044】
以下に、上記測定値を用いた制御手順を図5のフローチャートに基づいて説明する。
なお、以下の動作制御は制御部60によって行われる。
なお、この例では、予め制御部60に第1のタイミングを決定するための第1の所定値と、第2のタイミングを決定するための第2の所定とが格納されている。第1の所定値と第2の所定値は、適宜設定することができ、洗浄システム構築後においても、適宜変更できるようにしてもよい。第1の所定値と第2の所定値とは同じ値としてもよく、また、異なる値としてもよい。この場合、第1の所定値>第2の所定値とする。
また、電解液貯留槽20には、所定の硫酸溶液が収納されているものとする。
まず、循環ポンプによる硫酸溶液の循環、電解装置1での電解、送液ポンプ21による送液、第2環流ポンプ51による送液を開始する。
【0045】
電子材料基板100の枚葉式洗浄で、制御部60は洗浄開始の指示を受けると、洗浄開閉弁22aを開、分岐開閉弁47aを閉、回収開閉弁41aを開、廃棄開閉弁42aを閉として、洗浄装置30から排出される洗浄排液を回収して循環しつつ洗浄を行う(ステップs10)。
また、洗浄開始に伴って、測定部49による測定を開始する(ステップs11)。測定は、連続または回分して行う。
【0046】
測定部49による測定結果は、前記したように制御部60に送信されており、制御部60では、取得した測定値と第1の所定値とを比較し、測定値が第1の所定値を越えたか否かを判定する(ステップs12)。測定値が第1の所定値を越えていなければ(ステップs12、NO)、洗浄排液のレジスト濃度は高くはなく、第1のタイミングには至っていないものとして、洗浄排液を回収ライン41を通じて回収し、系内に循環しつつ洗浄を継続する(ステップs11)。また、測定値が第1の所定値を越えると(ステップs12、YES)、洗浄排液のレジスト濃度は高くなって第1のタイミングに達したものとして、回収開閉弁41aを閉、廃棄開閉弁42aを開にすることで洗浄排液を廃棄ライン42によって系外に廃棄しつつ洗浄を継続する(ステップs13)。この際に第1環流ポンプ45が送液の切り替えを検知して停止する。
その後、測定値が第2の所定値以下になったか否かの判定を行う(ステップs14)。測定値が第2の所定値以下にならなければ(ステップs14、NO)、洗浄排液は系外に廃棄しつつ洗浄を継続する(ステップs13)。一方、測定値が第2の所定値以下になった場合(ステップ14、YES)、再び回収開閉弁41aを開、廃棄開閉弁42aを閉にすることで洗浄排液の廃棄を停止し、洗浄排液を回収して系内に循環しつつ洗浄を継続する(ステップs15)。この際に第1環流ポンプ45が送液の切替えを検知して再び稼働する。
その後、洗浄終了時間まで洗浄排液を循環しつつ洗浄を継続し、洗浄終了時間に達すると(ステップs16、YES)、洗浄開閉弁22aを閉、分岐開閉弁47aを開とすることで洗浄を終了する。この際に第1環流ポンプが送液の切替えを検知して停止する。
なお、上記手順では、測定値が第2の所定値以下になった時点で第2のタイミングとして洗浄排液を廃棄から循環に切り替えたが、判別が難しい場合や判定の正確性を期する場合、測定値が第1の所定値を越えない状態が所定時間継続したときに、第2のタイミングになったものとして制御することも可能である。
【0047】
なお、上記各実施形態では、洗浄液再生部として電解装置を備えるものについて説明したが、洗浄液再生部として硫酸溶液に過酸化水素水を添加する再生部を設けたものとすることができ、この形態においても前記各実施形態と同様に洗浄排液の選り分けを効果的に行うことができる。
【実施例1】
【0048】
試験用の電子材料基板に対し、図1の洗浄システムを用い、硫酸濃度92質量%、洗浄装置入口の洗浄液の液温180℃にして、図3の制御手順で、分画回収しながら洗浄を行った。処理条件及び結果を表1に示す。この結果、硫酸電解液の負荷が低減されるため、廃棄しない場合(No.10)と比較して電解セル数を1/5〜1/2にできることが確認された。
【0049】
【表1】

【符号の説明】
【0050】
1 電解装置
11 電解側循環ライン
20 電解液貯留槽
22 送液ライン
23 急速加熱器
30 洗浄装置
31 洗浄液ノズル
40 共通排液ライン
41 回収ライン
41a 回収開閉弁
42 廃棄ライン
42a 廃棄開閉弁
46 上流側環流ライン
49 測定部
50 分解貯留槽
52 下流側環流ライン
60 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過硫酸を含む硫酸溶液を洗浄液として電子材料に供給することにより該電子材料に前記洗浄液を接触させて該電子材料を枚葉式で洗浄し、洗浄排液を系内に循環させ過硫酸を再生して前記洗浄液として再利用する洗浄方法において、
前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄開始から第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を系内に循環させ、前記第1のタイミング後、第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を系外に廃棄し、前記第2のタイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を系内に循環させることを特徴とする電子材料の洗浄方法。
【請求項2】
前記第1のタイミングが、前記洗浄開始から、予め設定された第1の所定時間を経過した時点であることを特徴とする請求項1に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項3】
予め、基準となる電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、測定値が第1の所定値を越えた第1時点を求めておき、電子材料ごとの洗浄に際し、予め求めた前記第1時点を前記第1のタイミングとすることを特徴とする請求項1に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項4】
前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、測定値が第1の所定値を越えた時点を前記第1のタイミングとすることを特徴とする請求項1に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項5】
前記第2のタイミングが前記洗浄開始からまたは前記第1のタイミングから、予め設定された第2の所定時間を経過した時点であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項6】
予め、基準となる電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、前記第1のタイミング以降に測定値が第2の所定値を下回った第2時点を求めておき、電子材料ごとの洗浄に際し、予め求めた前記第2時点を第2のタイミングとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項7】
前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、前記第1のタイミング以降に測定値が第2の所定値を下回った時点を第2のタイミングとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項8】
前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、測定値が第1の所定値を越えないで所定時間経過した時点を第2のタイミングとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項9】
前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの間に、前記洗浄排液の色度または濁度を連続的または回分的に測定し、前記第2のタイミング以降に、測定値が所定値を上回ると洗浄排液を系外に廃棄し、測定値が所定値を下回ると洗浄排液を系内に循環することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項10】
前記電子材料がアッシングレスで前記洗浄に供されたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄液が、硫酸溶液と過酸化水素水とを混合したSPM溶液であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄液が、硫酸溶液を電気分解した硫酸電解液であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項13】
電子材料に過硫酸を含む洗浄液を供給して前記洗浄液を前記電子材料に接触させる枚葉式の洗浄装置と、
前記洗浄装置の洗浄排液を系外に廃棄する廃棄ラインと、
前記洗浄排液を循環させて前記洗浄装置に環流する循環ラインと、
前記循環ラインに介設されて前記洗浄排液の一部または全部に過硫酸を含有させて再生する洗浄液再生部と、
前記排出ラインにおける洗浄排液の排出と、前記循環ラインにおける洗浄排液の循環とを制御する洗浄排液制御部と、を備え、
前記洗浄排液制御部は、前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの時間範囲内で第1のタイミングと第2のタイミングとが設定されており、前記洗浄装置による洗浄に際し、前記洗浄開始から第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させ、前記第1のタイミング後、第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記廃棄ラインによって系外に廃棄し、前記第2のタイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させる制御を行うことを特徴とする電子材料洗浄システム。
【請求項14】
電子材料に過硫酸を含む洗浄液を供給して前記洗浄液を前記電子材料に接触させる枚葉式の洗浄装置と、
前記洗浄装置の洗浄排液を系外に廃棄する廃棄ラインと、
前記洗浄排液を循環させて前記洗浄装置に環流する循環ラインと、
前記循環ラインに介設されて前記洗浄排液の一部または全部に過硫酸を含有させて再生する洗浄液再生部と、
前記洗浄装置から排出された洗浄排液の色度または濁度を測定する測定部と、
前記排出ラインにおける洗浄排液の排出と、前記循環ラインにおける洗浄排液の循環とを制御する洗浄排液制御部と、を備え、
前記洗浄排液制御部は、前記測定部の測定結果を受け、該測定結果に基づいて前記電子材料ごとの洗浄開始から洗浄終了までの時間範囲内で第1のタイミングと第2のタイミングとを設定し、前記洗浄開始から第1のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させ、前記第1のタイミング後、前記第2のタイミングまでは、前記洗浄排液を前記廃棄ラインによって系外に廃棄し、前記第2のタイミング後、洗浄終了まで、前記洗浄排液を前記循環ラインによって系内に循環させる制御を行うことを特徴とする電子材料洗浄システム。
【請求項15】
前記洗浄液再生部は、前記洗浄排液に過酸化水素水を添加する装置であることを特徴とする請求項13または14に記載の電子材料洗浄システム。
【請求項16】
前記洗浄液再生部は、前記洗浄排液を電解する装置であることを特徴とする請求項13または14に記載の電子材料洗浄システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−199295(P2012−199295A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61007(P2011−61007)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】