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電子材料組成物
説明

電子材料組成物

【課題】高いキャリア移動度を有する電子材料組成物を提供する。
【解決手段】半導体特性を有するディスコチック液晶を少なくとも1種含むことを特徴とする電子材料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギーから直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いた太陽電池、GaAsやCIGSなどの化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型太陽電池などが提案・実用化されている。
【0003】
化石燃料による発電コストよりも低コストな太陽電池として、透明電極と対電極との間に電子供与体層(π電子ドナー層)と電子受容体層(π電子アクセプター層)を設けた電子材料組成物を含む太陽電池が提案されている(非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、これらの太陽電池は、内部量子効率が低く、より高い光電変換効率を実現できる電子材料組成物が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.Heeger:Nature Mat.;vol.6(2007),p497
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高いキャリア移動度を有する電子材料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光吸収材料において、単独成分からなる材料は、その固有の分子構造に由来するがその異方的な分子集合体における異方的な電子状態への摂動によっても光吸収特性は変化し得る。しかしながら1つの分子構造からカバーし得る光吸収領域は限られたものであり、光吸収波長域の拡大には自ずから限界があった。光吸収波長の拡大には異なる光吸収体を持つ材料を混合する手法が考えられるが、要求される仕様に高速のキャリア移動度及び効率的な電荷輸送性が加わる場合、電子状態の異なる分子種の混合は電荷輸送行程にエネルギー的不均一性をもたらすためにキャリア移動度及び電荷輸送効率は著しく低下する。
【0008】
一方、液晶性物質は熱力学的に同等の液晶相では任意の組成で混和性を示すことが知られている。また、非液晶性物質であっても特定の組成範囲である温度域の液晶相を維持することができる。現行のディスプレー用ネマチック材料はその原理を応用している。有機系電子材料においては液晶の混和性をそのまま利用できないが、本発明者は半導体特性を持つディスコチック液晶を有する電子材料組成物が、高速のキャリア移動を維持し、光吸収域の拡大が図れることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の電子材料組成物を提供するものである。
項1. 半導体特性を有するディスコチック液晶を少なくとも1種含むことを特徴とする電子材料組成物。
項2. 前記組成物を構成する少なくとも1種の成分がカラムナー中間相を有することを特徴とする項1に記載の電子材料組成物。
項3. 前記組成物がアルキル鎖長が互いに異なる以外は同種の化学構造を有する2種以上の成分を有することを特徴とする項1または2に記載の電子材料組成物。
項4. 前記組成物が、配位子とその金属錯体を含み、前記配位子とその金属錯体の少なくとも1種はディスコチック液晶を形成し得る、項1〜3のいずれかに記載の電子材料組成物。
項5. 前記組成物が、可視光域の吸収が互いに異なる2種以上の成分を含む、項1〜4のいずれかに記載の電子材料組成物。
項6. 前記組成物がフタロシアニン化合物を含む、項1〜5のいずれかに記載の電子材料組成物。
項7. 前記組成物がポルフィリン化合物を含む、項1〜5のいずれかに記載の電子材料組成物。
項8. 前記組成物が10-1cm2V-1s-1以上のキャリア移動度を示すことを特徴とする項1に記載の電子材料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子材料組成物は、10-1cm2V-1s-1以上の高いキャリア移動度を有し、有機薄膜太陽電池、有機半導体などに有用である。特に、電子材料組成物が可視光域の光吸収が異なる2種以上の化合物を含む場合、広範囲の可視光を吸収することができ、さらに高い光電変換効率を実現できる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】C10PcH2-C10PcZn2成分系相図。
【図2】飛行時間計測法によるC10PcH2-C10PcZn(1:1)の98℃における光電流過渡波形。
【図3】C10PcH2-C10PcZn(1:1)混合系の薄膜の吸収スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電子材料組成物は、半導体特性を有するディスコチック液晶を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【0013】
半導体特性を有するディスコチック液晶としては、以下のような化学構造を有する化合物が例示される:
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rは、互いに独立してC〜C22の直鎖又は分岐を有するアルキル基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルキニル基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルキルチオ基である。
【0016】
金属Mは、Zn、Cu、Ni、Co、Feである。
【0017】
XはCHまたは
【0018】
【化2】

【0019】
を示す。)
【0020】
好ましい半導体特性を有するディスコチック液晶はフタロシアニン系化合物(I)/(Ia)、又はポルフィリン化合物(II)/(Iia)が好ましく例示できる。
【0021】
好ましいフタロシアニン化合物は、一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物またはその金属錯体(Ia)である。また、好ましいポルフィリン化合物は、一般式(II)で表されるポルフィリン化合物またはその金属錯体(Iia)である。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、Rは、互いに独立してC〜C22の直鎖又は分岐を有するアルキル基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルキニル基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、C〜C22の直鎖又は分岐を有するアルキルチオ基である。
【0024】
金属Mは、Zn、Cu、Ni、Co、Feである。
【0025】
XはCHまたは
【0026】
【化4】

【0027】
を示す。)
【0028】
〜C22のアルキルとしては、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシルなどの直鎖又は分岐を有するC〜C22アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基が挙げられ、好ましくはn-ペンチル、n-ヘキシルである。
【0029】
〜C22のアルケニルとしては、ビニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル、tert-ブテニル、n-ペンテニル、n-ヘキセニル、n-ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、エイコセニル、ドコセニルなどの直鎖又は分岐を有するC〜C22アルケニル基、好ましくはC〜Cアルケニル基が挙げられる。
【0030】
〜C22のアルキニルとしては、アセチニル、n-プロパルギル、n-ブチニル、sec-ブチニル、n-ペンチニル、n-ヘキシニル、n-ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、エイコシニル、ドコシニルなどの直鎖又は分岐を有するC〜C22アルキニル基、好ましくはC〜Cアルキニル基が挙げられる。
【0031】
〜C22のアルコキシとしては、-O-(C〜C22のアルキル)で表される基が挙げられ、好ましくはn-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、n-ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ、エイコシルオキシ、ドコシルオキシなどの直鎖又は分岐を有するC〜C22アルコキシ基、好ましくはC〜Cアルコキシ基が挙げられ、好ましくはn-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシである。
【0032】
〜C22のアルキルチオとしては、-S-(C〜C22のアルキル)で表される基が挙げられ、好ましくはエチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、n-ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、ヘキサデシルチオ、ヘプタデシルチオ、オクタデシルチオ、エイコシルチオ、ドコシルチオなどの直鎖又は分岐を有するC〜C22アルキルチオ基、好ましくはC〜Cアルキルチオ基が挙げられ、好ましくはn-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオである。
【0033】
半導体特性を有するディスコチック液晶を形成可能な化合物において、複数のR基は全て同一でもよく、1つの化合物の中に2種以上の置換基が存在してもよい。例えば、一般式(I)、(II)及びその金属錯体の(Ia)、(IIa)において、8つのR基は全て同一でもよく、1つの化合物の中に2種以上の置換基が存在してもよい(例えば4つがヘキシル基であり、4つがペンチル基である化合物)。
【0034】
好ましいフタロシアニン化合物は、フタロシアニン環の1,4,8,11,15,18,22,25位にアルキル基を持つ化合物である。
【0035】
好ましいポルフィリン化合物は、Rがアルキル基の化合物である。
【0036】
ベンゼン、トリフェニレン、アントラキノン、トルキセン、ジケトナート金属錯体などの半導体特性を有するディスコチック液晶を形成可能な他の化合物においても同様に、Rがアルキル基の化合物が好ましい。
【0037】
一般式(I)及びその金属錯体の(Ia)の化合物は、公知の化合物であり、公知の方法により合成でき、例えば以下のスキーム1に従い合成することができる。
【0038】
【化5】

【0039】
(R、Mは前記に定義されるとおりである)
【0040】
上記ジシアノ化合物において2つのR基が異なるか(例えばペンチル基とヘキシル基)、或いは、Rが異なる2種以上のジシアノ化合物を原料として用いれば、一般式(I)及びその金属錯体の(Ia)においてRが2種以上である化合物を得ることができる。
【0041】
一般式(I)、(Ia)以外の半導体特性を有するディスコチック液晶を形成可能な化合物も公知であり、市販品を使用するか、公知の方法により容易に製造することができる。
【0042】
一般式(I)、(II) 及びその金属錯体の(Ia)、(IIa)の化合物はカラムナー中間相を有する。このうち、中間相の発現及びその温度領域を広げるという観点から8個のRは異なる2種以上の直鎖或は分岐鎖の炭化水素基からなるのが好ましい。ここで、中間相とは、結晶相と非晶相の中間に位置する一定の分子配向秩序をもった相状態の総称であり、ディスコティックカラムナー液晶相の分子凝集状態を指す。かかる中間相形成性化合物は、その自発的配向性により得られる膜の大面積均一性とキャリヤ移動に好都合な分子配向様式という2つの長所をあわせ持つことから、有機半導体、有機薄膜太陽電池などのデバイス作製上有利である。
【0043】
本発明の電子材料組成物は、半導体特性を有するディスコチック液晶の他にC5〜C22アルカン、C5〜C22アルキルアルコール、C5〜C22アルキルアクリレート、ジC5〜C22アルキルアクリレート、C5〜C22アルキルメタクリレート、ジC5〜C22アルキルメタクリレート、C5〜C22アルキルアミン、イオン性アルカン、重合性官能基を持つディスコチック液晶性化合物及びその非液晶性類縁体などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、電子材料組成物の粘性、流動性などを調整し、基体への塗布を容易にすることができる。また、これらの化合物は、アルキル基などの官能基を含んでいるので、ディスコチック液晶を構成する化合物のR基と相互作用することができる。さらに、C5〜C22アルキルアクリレート、ジC5〜C22アルキルアクリレート、C5〜C22アルキルメタクリレート、ジC5〜C22アルキルメタクリレート、重合性官能基を持つディスコチック液晶性化合物などは重合性官能基を有しているので、該組成物を硬化剤、紫外線、電子線などを用いて硬化させることで、ディスコチック液晶の構造を保持したままで硬化膜を形成することができる。
【0044】
本発明において、ディスコチック液晶を形成可能な2種以上の化合物を含むことで、さらなる性能の向上を図ることができる。例えばRで表される官能基のアルキル長鎖の異なる2種以上の化合物を混合することで、キャリア移動度、内部量子効率などの向上が期待できる。
【0045】
本発明において、ディスコチック液晶を形成可能な2種以上の化合物が金属の配位子を含む場合、配位子とその金属錯体を各々1種以上含むことで、キャリア移動度、内部量子効率などの向上が期待できる。配位子とその金属錯体は、両方共にディスコチック液晶を形成可能であることが好ましい。配位子とその金属錯体は、吸収波長が異なるので、光吸収波長の拡大により光電変換効率の改善効果も期待できる。
【0046】
本発明において、ディスコチック液晶を形成可能な2種以上の化合物が可視光域に
光吸収を有する化合物である場合、キャリア移動度、内部量子効率、光電変換効率の改善が期待できる。なお、本発明の電子材料組成物は、ディスコチック液晶を形成可能な化合物が1種であり、液晶を形成しないが可視光吸収可能な化合物を添加剤として配合した場合でも太陽光に対する光電変換効率を向上させることができる。
【0047】
本発明の電子材料組成物は、キャリア移動度が10-1cm2V-1s-1以上のものが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
一般式(I)においてR=n-デカン(n-C10H21)であるC10PcH2とその亜鉛錯体C10PcZnの混合物を、それぞれ所定濃度のトルエン溶液を所定量混合し、トルエンを留去することにより調製した。
【0050】
このようにして調製したC10PcH2/C10PcZn混合物をDSC測定し、温度可変の蛍光顕微鏡で状態観察を行ったところ、図1に示すような相図となることが判った。C10PcH2とC10PcZnは混和性を示す。この相図から、本混合系は任意の組成比で分子レベルで混和性を持つことが判った。また、結晶相では固溶体の形成が示された。
【0051】
モル比で1:1組成の試料について飛行時間計測法にてキャリア移動度を測定したところ、良好な過渡光電流波形を得た。98℃での過渡光電流波形を図2に示す。この結果、混和前のそれぞれの化合物は、C10PcH2で1.0×10-1cm2V-1s-1、C10PcZnで3.6×10-1cm2V-1s-1であったキャリア移動度は1:1混合系では7.0×10-2cm2V-1s-1となり、若干のキャリア移動度減少はあるものの、高速性は維持していることが明らかになった。
【0052】
このC10PcH2/C10PcZn(1:1)混合物の薄膜の吸収スペクトルを測定したところ(図3)、元の単一成分において見られる吸収スペクトルのほぼ重ね合わせとなっており、それぞれの光吸収が有効であることから光吸収の波長範囲はより広がるばかりでなく、波長によってその見かけの吸光係数の増大が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体特性を有するディスコチック液晶を少なくとも1種含むことを特徴とする電子材料組成物。
【請求項2】
前記組成物を構成する少なくとも1種の成分がカラムナー中間相を有することを特徴とする請求項1に記載の電子材料組成物。
【請求項3】
前記組成物がアルキル鎖長が互いに異なる以外は同種の化学構造を有する2種以上の成分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子材料組成物。
【請求項4】
前記組成物が、配位子とその金属錯体を含み、前記配位子とその金属錯体の少なくとも1種はディスコチック液晶を形成し得る、請求項1〜3のいずれかに記載の電子材料組成物。
【請求項5】
前記組成物が、可視光域の吸収が互いに異なる2種以上の成分を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の電子材料組成物。
【請求項6】
前記組成物がフタロシアニン化合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の電子材料組成物。
【請求項7】
前記組成物がポルフィリン化合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の電子材料組成物。
【請求項8】
前記組成物が10-1cm2V-1s-1以上のキャリア移動度を示すことを特徴とする請求項1に記載の電子材料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43987(P2013−43987A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185282(P2011−185282)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】