電子楽器
【目的】本発明は、楽音の高調波係数をエンべロープに応じて時間的に変化させることにより、真に音楽的な楽音波形を発生させるようにした。
【構成】メモリ回路11には複数の高調波係数データが記憶され、時間的変化データ発生回路13からは、エンベロープに応じた時間的変化データが発生される。アドレス発生回路12では、前記時間的変化データに応じて、メモリ回路11の高調波係数データに対する読み出しアドレスが変化され、これにより読み出される高調波係数データがエンベロープ波形に応じたものになる。前記読み出しアドレスの変化は、図3(b)に示す基音(第1倍音)となる高調波係数を読み出すアドレスP1(F1,F2…)と各高調波係数をびとびに読み出すアドレススキップ値d(d1,d2…)の各変化である。
【構成】メモリ回路11には複数の高調波係数データが記憶され、時間的変化データ発生回路13からは、エンベロープに応じた時間的変化データが発生される。アドレス発生回路12では、前記時間的変化データに応じて、メモリ回路11の高調波係数データに対する読み出しアドレスが変化され、これにより読み出される高調波係数データがエンベロープ波形に応じたものになる。前記読み出しアドレスの変化は、図3(b)に示す基音(第1倍音)となる高調波係数を読み出すアドレスP1(F1,F2…)と各高調波係数をびとびに読み出すアドレススキップ値d(d1,d2…)の各変化である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、楽音波形の各サンプル点の波形振幅値をフーリエ合成によって個々に計算して楽音波形を形成する方式の電子楽器において、音色を設定するための高調波係数をエンベロープに応じて時間的に変化させるようにした電子楽器に関する。
【0002】
【発明の背景】従来、デイジタル方式の電子楽器においては、楽音波形の各サンプル点の波形振幅値を何らかの方法で発生し、これを音高周波数に対応した読み出しレートで読み出す方式のものが多く提案されてきた。その最も単純な方法は波形データそのものを記憶して読み出すいわゆる「波形メモリ方式」であり、アナログ入力をA/D変換して波形データとする方式もこれに準ずる。しかし楽音波形を音域に応じて変化させるためには膨大なメモリ容量を必要とする上に、楽音波形が時間的に変化しない、等の欠点があった。また各種の連続関数を用いてパラメーターを計算したり、周波数変調方式による実時間波形合成において楽音波形の時間的変化を計算する方法も考えられたが、波形発生のためのパラメーターと発生される楽音の音色との対応が人間の感覚にとって極めて不自然であり、所望の音色を得ることが困難であった。
【0003】一方、フーリエ合成による楽音波形発生方式は、高調波係数のパラメータが聴覚的な音色評価に自然に対応しているため、波形合成演算量が多いという短所を補うための種々の改良とともに広く採用されてきた。フーリエ合成による楽音波形発生方式において楽音の音色を決定するのは高調波係数の構成比であり、楽音波形を時間的に変化させる方法については、複数のメモリを用いて多くの高調波係数を選択する方法が考えられたが、回路規模が膨大になる割りに十分な音色変化が得られない欠点があった。また特公昭53−46445号に記載されたような、設定された高調波係数と「フォルマントフィルタ」を乗算する方式、および特開昭57−172396号に記載されたような、時間変化関数を高調波係数毎に乗算する方式に置いては、その回路規模・演算時間によって全体のシステムが制約を受けて、デイジタル方式の楽音波形の時間的変化としては十分でない欠点があった。
【0004】本発明は上記のような点に鑑みてなされたもので、回路構成を簡略化し、また動作時間を短縮化した状態で、高調波係数の時間的変化を実現し、実際の楽音により近い楽音を発生させるようにした。そのために、本発明においては、フーリエ合成に用いられる高調波係数データを複数記憶するメモリ手段から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスに着目し、楽音波形のエンベロープに応じた時間的変化やタッチレスポンスに応じた変化を前記読み出しアドレスに対して制御することによって、最終的にフーリエ係数となる高調波係数の構成比を変化させることを特徴とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータであって、エンべロープに対応した時間的変化データを発生し、高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データにじて変化させるようにした。
【0006】
【作用】これにより、任意の構成の高調波係数をエンべロープに応じて時間的に変化させることができ、実際の楽音により近い楽音を発生する。
【0007】
【実施例】図1は、本発明による電子楽器の構成を説明するための構成概念図であり、3は押鍵検出・発音割当回路、4は高調波係数回路、5は波形発生回路、6は波形記憶回路、7は音高周波数回路、8はD/A変換回路、9はエンべロープ回路である。
【0008】すなわち、押鍵検出・発音割当回路3においては、鍵盤1及び音色設定タブレット2によって入力された音色情報・演奏情報に応じた制御信号を各部分に供給する。高調波係数回路4においては、押鍵検出・発音割当回路3からの音色情報に応じて楽音波形合成演算のためのフーリエ高調波係数を設定する。波形発生回路5においては、高調波係数回路4からのフーリエ高調波係数によって楽音波形を順次演算・合成して波形記憶回路6に供給する。
【0009】一方音高周波数回路7においては、押鍵検出・発音割当回路3からの演奏情報によって楽音周波数に対応した読み出し信号を発生し、波形記憶回路6から楽音周波数に対応した楽音波形を読み出す。またエンべロープ回路9においては、押鍵検出・発音割当回路3からの演奏情報によって個々の楽音の立上り・立下りやエンべロープ特性等の振幅変調データを設定する。以上の動作はデイジタル的に時分割動作させることで、回路規模を節約することが可能である。
【0010】D/A変換回路8においては、波形記憶回路6から音高周波数回路7によって読み出された楽音周波数に対応した楽音波形をデイジタル−アナログ変換し、エンべロープ回路9からの振幅変調データを乗算し、アナログ信号出力を得る。D/A変換回路8からのアナログ信号は効果回路、アンプ、スピーカーを含むサウンドシステム10によって音響に変換され、電子楽器の演奏音として発音される。
【0011】図2は、図1に示す高調波係数回路4に設けられる、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分を説明するための具体的構成例である。図2において、11はフーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数記憶するメモリ回路、13は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ発生回路、12はメモリ回路11からの高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路、14は波形発生回路5とアドレス発生回路12との時分割動作を同期させるタイミング回路である。
【0012】図2に示す具体的構成例について、波形発生回路5で楽音波形が演算・合成されるまでの動作を説明すると、一般に波形発生回路5においては、F(s)=ΣCΣ・sin(2πns/S)…(1)式によって楽音波形の振幅値が順次演算される。ここで第1番目のΣは高調波の最高次数Nまでの累算を示す記号、第2番目のΣは高調波の次数n=1からn=nまでの累算を示す記号、nは高調波の次数、Nは高調波の最高次数、sはサンプル点、Sは1周期のサンプル数、Cnは高調波係数回路4で設定される高調波係数である。
【0013】楽音波形が一定である音色を合成する場合には(1)式で充分であっても時間的に変化する楽音波形を合成する場合には、このサンプリング定数sとは別に時間的なパラメーターtを用いて、 F(s,t)=ΣCn(t)・sin(2πns/S)…(2)式に従って演算を行う必要がある。ここでΣは高調波の次数n=1から高調波の最高次数n=Nまでの累算を示す記号である。
【0014】ここに前述のようにフォルマント関数等f(t)を用いた方法の場合、高調波計数Cn(t)が、Cn(t)=Cn・f(t)…(3)式として計算されるため、楽音波形演算全体としては、 F(s,t)=ΣCn・f(t)・sin(2πns/S)…(4)式となって、電子楽器の回路動作に大きな比重を占める乗算操作がサンプル点ごとに2度ずつ必要になるため、回路規模と動作速度の限界によって倍音数を少なく限定したり、1周期に対するサンプル点の精度を限定しなければならなかった。ここでΣは高調波の次数n=1から高調波の最高次数n=Nまでの累算を示す記号である。
【0015】図2に示す、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分を説明するための具体的構成例においては、上記のような乗算操作を必要とせず、フーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数組記憶するメモリ回路11、楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ発生回路13、メモリ回路11から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路12によって時間的波形変化を実現する。すなわち、高調波係数Cn(t)を前記メモリ回路から読み出すためのアドレス:Adを用いて、Cn(t)=Cn(Ad(t))…(5)式という表現で高調波係数Cn(t)を求めるが、これはメモリ回路のアドレス操作にすぎないため、複雑な演算回路を必要とせずに容易に実現できる。
【0016】この動作を図3に示すグラフを用いて説明すると、従来の方式のフーリエ合成ではたとえば図3(a)のような高調波係数を高調波係数メモリの形で波形合成演算のために用意して、(1)式にしたがって波形発生を行ったが、本発明におけるメモリ回路11の役割はこれと異なる。図2のメモリ回路11にはたとえば図3(b)のような高調波データが記憶されているが、これは図3(a)のような「第n倍音」というフーリエ係数の形式でなく、ある構成を持った一群の高調波データである。そして、図2のアドレス発生回路12によって図3(b)のような高調波データをたとえばF1というアドレス地点からd1というアドレス間隔でとびとびに読み出すと、この場合には図3(a)のような高調波係数データが得られ、またF2というアドレス地点からd1というアドレス間隔でとびとびに読み出すと、この場合には図3(c)のような高調波係数データが得られる。
【0017】ここで図3(a)および図3(c)の高調波係数構成を比較してみると、全体の傾向は図3(b)の高調波データの輪郭に近いながら音色に影響のある幾つかの特徴的な低音のレベルに大きな変化のあるのがわかる。このように図2のアドレス発生回路12からの読み出しアドレスを少し制御するだけで楽音波形をコントロールでき、かつ楽音の全体の傾向は失わないという特性は、電子楽器の楽音波形発生方式としては理想的なものである。
【0018】図2の時間的変化データ発生回路13においては、楽音の立上り時の音色変化として、ピアノの打弦の瞬間・トランペットの吹き始め・ベースの弾き始め等の音や、周期的な音色変化であるワウワウ効果に対応した時間的変化データが発生される。これは特開昭52−93315号に記載されたようなADSRエンべロープ発生器を用いたり、アナログ的にエンべロープを発生してD/A変換することで容易に実現でき、この場合、前記時間的変化データは、エンベロープ波形に応じたものになる。
【0019】この時間的変化データは鍵盤のON/OFFを基準として独自の時間的パラメーターのもとに進行し、波形発生回路5のサンプリングのタイミングとは同期していない。このため、図2のタイミング回路14は波形発生回路5のフーリエ演算の高調波次数情報をアドレス発生回路12に供給するとともに、全体の回路の時分割動作のタイミングをコントロールする。図2のアドレス発生回路12によってメモリ回路11から読み出される高調波係数データを(2)式に従って求めると、波形発生回路5において、あるサンプル点sにおける演算は倍音nごとの乗算・累算であり、 G(n,s,t)=Cn(t)・sin(2πns/S)…(6)式という倍音nごとの乗算結果G(n,s,t)を、F(s,t)=ΣG(n,s,t)…(7)式とN次まで累算していることがわかる。この乗算タイムスロットごとにアドレス発生回路12とタイミング回路14から高調波次数情報nを受け取り、更に時間的変化データ発生回路13から時間的変化データを受け取る。ここでΣは高調波の次数n=1から高調波の最高次数n=Nまでの累算を示す記号である。
【0020】ここにたとえば図3(b)のような高調波データに対して、時間tにおける第n次高調波係数を読み出すアドレスを、 Ad(t,n)=P1+(n−1)・d+V(t)…(8)式と設定することができる。(8)式において、P1は基音(第1倍音)の高調波係数を読み出すアドレス、dは前述のように「とびとびに」読み出すスキップ値、V(t)は時間的変化データである。(8)式の計算は形式的には面倒のように見えるが、実際にはスキップ値dをメモリの一定の上位アドレスとすれば単なるアドレス操作になり、また時間的変化データV(t)は時間変化パラメーターtのみの関数で十分演算時間があるため、実現は容易である。
【0021】このようなアドレスに対して、メモリ回路11は(5)式に置ける高調波係数Cn(t)を発生する一種の変換テーブル:Mとして機能し、Cn(t)=M(Ad(t,n))
=M(P1+(n−1)・d+V(t))…(9)式なる高調波係数データを波形発生回路5に供給する。これによって波形発生回路5においては、各乗算タイムスロット:nごとに、 G(n,s,t)=(M(P1+(n−1)・d+V(t)))
・sin(2πns/S)…(10)式なる演算を行うことになる。ここで3つのパラメーターn,s,tを同期させるために、タイミング回路14は必要なデータをラッチし、また各部分に必要なラッチパルスを供給するとともに、アドレス発生回路12のアドレス生成に関与する。
【0022】図4は、図1に示す高調波係数回路4に設けられる、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例である。図4において、21はフーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数組記憶するメモリ回路、23は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ発生回路、22はメモリ回路21から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路、25はアドレス発生回路22からの読み出しアドレスによってメモリ回路21から読み出された高調波係数データを補間する補間回路、24は波形発生回路5及びアドレス発生回路22及び補間回路25の時分割動作を同期させるタイミング回路である。
【0023】図4に示す、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例の動作を図5に示すグラフを用いて説明すると、メモリ回路21においてはたとえば図5(a)のような高調波係数データが代表値として格納されるが、このデータ自身は楽音波形の高調波係数構成と直接対応するものではなく、合成される楽音波形の任意性に応じて任意に構成できる。ここで、アドレス発生回路22の設定する読み出しアドレスが、(8)式にしたがって図5(b)のF3をスタート点に、d2をスキップ値として設定されると、補間回路25においてはメモリ回路21の高調波係数データP1,P2………によって対応する補間値が計算される。この補間値を楽音波形の倍音構成として表したのが図5(c)のグラフであり、アドレス発生回路22の設定する読み出しアドレスによって効果的に高調波係数構成が設定されるのがわかる。この具体的構成例では図2よりも構成が複雑に見えるが、メモリ回路21に要求されるメモリ容量は非常に少なくなるため、実際にはむしろ有効で、補間回路25の補間方式をシフト回路による非線型補間等にすれば、回路規模も少なくてすむ。
【0024】図6は図1に示す高調波係数回路4に設けられる、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の更に別の実施例を説明するための具体的構成例である。図6において、31はフーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数組記憶するメモリ回路、36は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを押鍵検出・発音割当回路3からのタッチレスポンス情報に応じて発生する時間的変化データ発生回路、32はメモリ回路31から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路、34は波形発生回路5及びアドレス発生回路32の時分割動作を同期させるタイミング回路である。
【0025】図7は図6に示す時間的変化データ発生回路36における動作を説明するための具体的構成例である。すなわち図7において、41は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ計算回路、42は時間的変化データ計算回路41によって発生される時間的変化データの振幅を設定するデプス設定回路、43は演奏におけるタッチレスポンス情報に応じてバイアス値を設定するバイアス設定回路、44は押鍵検出・発音割当回路3からのタッチレスポンス情報に応じてデプス設定回路42およびバイアス設定回路43を制御するタッチレスポンスコントロール回路である。
【0026】図6及び図7に示す、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例の動作を図8に示すグラフを用いて説明すると、時間的変化データ計算回路41においてはたとえば図8(a)のような時間的変化データが計算される。この図8(a)のような時間的変化特性曲線は、多くの自然楽器の持つ高調波特性の時間的変化に対応した代表的なものである。この出力信号であるアドレス信号の振幅値に対して、図8(b)に示すように時刻tにおける曲線Cの振幅値Lcに一定の比率をデプス設定回路42において乗ずることでLa,Lbのような値が得られ、全体としては曲線A、曲線Bのような出力信号が得られる。この一定の比率を演奏におけるタッチレスポンス情報に応じて制御することで、発生する楽音波形は豊富な時間変化特性を持つことになる。
【0027】また図8(c)に示すように、互いに類似の特性曲線である曲線D,曲線Eにおいても、バイアス設定回路43で設定されるアドレスのバイアス値Ld,Leが異なれば高調波係数の特性は大きく変化するため、たとえばピアノをff(フォルテシモ)で弾いた時の高音の伸びの表現等に有効である。また、時間的変化データ計算回路41によって発生される時間的変化データを図8(d)に示すように、曲線Fのような特性だけでなく、曲線Gのような時間変化特性を用いることで、ハープシコードの音色の特徴である高音の鋭い立上りの表現等にも有効である。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る電子楽器によれば、楽音波形のエンベロープに応じた時間的変化を実現する上で、フーリエ合成演算に必要な高調波係数を簡単な構成で短時間に発生することができるため、高調波係数の次数およびサンプリングレートおよび回路規模の制約を克服して、真に音楽的な楽音波形を発生することができる。また補間回路やタッチレスポンスコントロール回路によって回路規模の節約およびタッチレスポンス表現を実現することで、音楽性豊かな電子楽器を容易に提供できるものであり、良質の音楽のために貢献するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子楽器の構成を説明するための構成概念図である。
【図2】図1に示す高調波係数回路4に設けられる本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分を説明するための具体的構成例である。
【図3】図2に示す具体的構成例の動作を説明するためのグラフである。
【図4】図1に示す高調波係数回路4に設けられる本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例である。
【図5】図4に示す具体的構成例の動作を説明するためのグラフである。
【図6】図1に示す高調波係数回路4に設けられる本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の更に別の実施例を説明するための具体的構成例である。
【図7】図6に示す時間的変化データ発生回路36における動作を説明するための具体的構成例である。
【図8】図6および図7に示す具体的構成例の動作を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1…鍵盤、2…音色設定タブレット、3…押鍵検出・発音割当回路、4…高調波係数回路、5…波形発生回路、6…波形記憶回路、7…音高周波数回路、8…D/A変換回路、9…エンべロープ回路、10…サウンドシステム、11…メモリ回路、12…アドレス発生回路、13…時間的変化データ発生回路、14…タイミング回路、21…メモリ回路、22…アドレス発生回路、23…時間的変化データ発生回路、24…タイミング回路、25…補間回路、31…メモリ回路、32…アドレス発生回路、34…タイミング回路、36…時間的変化データ発生回路、41…時間的変化データ計算回路、42…デプス設定回路、43…バイアス設定回路、44…タッチレスポンスコントロール回路。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、楽音波形の各サンプル点の波形振幅値をフーリエ合成によって個々に計算して楽音波形を形成する方式の電子楽器において、音色を設定するための高調波係数をエンベロープに応じて時間的に変化させるようにした電子楽器に関する。
【0002】
【発明の背景】従来、デイジタル方式の電子楽器においては、楽音波形の各サンプル点の波形振幅値を何らかの方法で発生し、これを音高周波数に対応した読み出しレートで読み出す方式のものが多く提案されてきた。その最も単純な方法は波形データそのものを記憶して読み出すいわゆる「波形メモリ方式」であり、アナログ入力をA/D変換して波形データとする方式もこれに準ずる。しかし楽音波形を音域に応じて変化させるためには膨大なメモリ容量を必要とする上に、楽音波形が時間的に変化しない、等の欠点があった。また各種の連続関数を用いてパラメーターを計算したり、周波数変調方式による実時間波形合成において楽音波形の時間的変化を計算する方法も考えられたが、波形発生のためのパラメーターと発生される楽音の音色との対応が人間の感覚にとって極めて不自然であり、所望の音色を得ることが困難であった。
【0003】一方、フーリエ合成による楽音波形発生方式は、高調波係数のパラメータが聴覚的な音色評価に自然に対応しているため、波形合成演算量が多いという短所を補うための種々の改良とともに広く採用されてきた。フーリエ合成による楽音波形発生方式において楽音の音色を決定するのは高調波係数の構成比であり、楽音波形を時間的に変化させる方法については、複数のメモリを用いて多くの高調波係数を選択する方法が考えられたが、回路規模が膨大になる割りに十分な音色変化が得られない欠点があった。また特公昭53−46445号に記載されたような、設定された高調波係数と「フォルマントフィルタ」を乗算する方式、および特開昭57−172396号に記載されたような、時間変化関数を高調波係数毎に乗算する方式に置いては、その回路規模・演算時間によって全体のシステムが制約を受けて、デイジタル方式の楽音波形の時間的変化としては十分でない欠点があった。
【0004】本発明は上記のような点に鑑みてなされたもので、回路構成を簡略化し、また動作時間を短縮化した状態で、高調波係数の時間的変化を実現し、実際の楽音により近い楽音を発生させるようにした。そのために、本発明においては、フーリエ合成に用いられる高調波係数データを複数記憶するメモリ手段から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスに着目し、楽音波形のエンベロープに応じた時間的変化やタッチレスポンスに応じた変化を前記読み出しアドレスに対して制御することによって、最終的にフーリエ係数となる高調波係数の構成比を変化させることを特徴とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータであって、エンべロープに対応した時間的変化データを発生し、高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データにじて変化させるようにした。
【0006】
【作用】これにより、任意の構成の高調波係数をエンべロープに応じて時間的に変化させることができ、実際の楽音により近い楽音を発生する。
【0007】
【実施例】図1は、本発明による電子楽器の構成を説明するための構成概念図であり、3は押鍵検出・発音割当回路、4は高調波係数回路、5は波形発生回路、6は波形記憶回路、7は音高周波数回路、8はD/A変換回路、9はエンべロープ回路である。
【0008】すなわち、押鍵検出・発音割当回路3においては、鍵盤1及び音色設定タブレット2によって入力された音色情報・演奏情報に応じた制御信号を各部分に供給する。高調波係数回路4においては、押鍵検出・発音割当回路3からの音色情報に応じて楽音波形合成演算のためのフーリエ高調波係数を設定する。波形発生回路5においては、高調波係数回路4からのフーリエ高調波係数によって楽音波形を順次演算・合成して波形記憶回路6に供給する。
【0009】一方音高周波数回路7においては、押鍵検出・発音割当回路3からの演奏情報によって楽音周波数に対応した読み出し信号を発生し、波形記憶回路6から楽音周波数に対応した楽音波形を読み出す。またエンべロープ回路9においては、押鍵検出・発音割当回路3からの演奏情報によって個々の楽音の立上り・立下りやエンべロープ特性等の振幅変調データを設定する。以上の動作はデイジタル的に時分割動作させることで、回路規模を節約することが可能である。
【0010】D/A変換回路8においては、波形記憶回路6から音高周波数回路7によって読み出された楽音周波数に対応した楽音波形をデイジタル−アナログ変換し、エンべロープ回路9からの振幅変調データを乗算し、アナログ信号出力を得る。D/A変換回路8からのアナログ信号は効果回路、アンプ、スピーカーを含むサウンドシステム10によって音響に変換され、電子楽器の演奏音として発音される。
【0011】図2は、図1に示す高調波係数回路4に設けられる、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分を説明するための具体的構成例である。図2において、11はフーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数記憶するメモリ回路、13は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ発生回路、12はメモリ回路11からの高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路、14は波形発生回路5とアドレス発生回路12との時分割動作を同期させるタイミング回路である。
【0012】図2に示す具体的構成例について、波形発生回路5で楽音波形が演算・合成されるまでの動作を説明すると、一般に波形発生回路5においては、F(s)=ΣCΣ・sin(2πns/S)…(1)式によって楽音波形の振幅値が順次演算される。ここで第1番目のΣは高調波の最高次数Nまでの累算を示す記号、第2番目のΣは高調波の次数n=1からn=nまでの累算を示す記号、nは高調波の次数、Nは高調波の最高次数、sはサンプル点、Sは1周期のサンプル数、Cnは高調波係数回路4で設定される高調波係数である。
【0013】楽音波形が一定である音色を合成する場合には(1)式で充分であっても時間的に変化する楽音波形を合成する場合には、このサンプリング定数sとは別に時間的なパラメーターtを用いて、 F(s,t)=ΣCn(t)・sin(2πns/S)…(2)式に従って演算を行う必要がある。ここでΣは高調波の次数n=1から高調波の最高次数n=Nまでの累算を示す記号である。
【0014】ここに前述のようにフォルマント関数等f(t)を用いた方法の場合、高調波計数Cn(t)が、Cn(t)=Cn・f(t)…(3)式として計算されるため、楽音波形演算全体としては、 F(s,t)=ΣCn・f(t)・sin(2πns/S)…(4)式となって、電子楽器の回路動作に大きな比重を占める乗算操作がサンプル点ごとに2度ずつ必要になるため、回路規模と動作速度の限界によって倍音数を少なく限定したり、1周期に対するサンプル点の精度を限定しなければならなかった。ここでΣは高調波の次数n=1から高調波の最高次数n=Nまでの累算を示す記号である。
【0015】図2に示す、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分を説明するための具体的構成例においては、上記のような乗算操作を必要とせず、フーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数組記憶するメモリ回路11、楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ発生回路13、メモリ回路11から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路12によって時間的波形変化を実現する。すなわち、高調波係数Cn(t)を前記メモリ回路から読み出すためのアドレス:Adを用いて、Cn(t)=Cn(Ad(t))…(5)式という表現で高調波係数Cn(t)を求めるが、これはメモリ回路のアドレス操作にすぎないため、複雑な演算回路を必要とせずに容易に実現できる。
【0016】この動作を図3に示すグラフを用いて説明すると、従来の方式のフーリエ合成ではたとえば図3(a)のような高調波係数を高調波係数メモリの形で波形合成演算のために用意して、(1)式にしたがって波形発生を行ったが、本発明におけるメモリ回路11の役割はこれと異なる。図2のメモリ回路11にはたとえば図3(b)のような高調波データが記憶されているが、これは図3(a)のような「第n倍音」というフーリエ係数の形式でなく、ある構成を持った一群の高調波データである。そして、図2のアドレス発生回路12によって図3(b)のような高調波データをたとえばF1というアドレス地点からd1というアドレス間隔でとびとびに読み出すと、この場合には図3(a)のような高調波係数データが得られ、またF2というアドレス地点からd1というアドレス間隔でとびとびに読み出すと、この場合には図3(c)のような高調波係数データが得られる。
【0017】ここで図3(a)および図3(c)の高調波係数構成を比較してみると、全体の傾向は図3(b)の高調波データの輪郭に近いながら音色に影響のある幾つかの特徴的な低音のレベルに大きな変化のあるのがわかる。このように図2のアドレス発生回路12からの読み出しアドレスを少し制御するだけで楽音波形をコントロールでき、かつ楽音の全体の傾向は失わないという特性は、電子楽器の楽音波形発生方式としては理想的なものである。
【0018】図2の時間的変化データ発生回路13においては、楽音の立上り時の音色変化として、ピアノの打弦の瞬間・トランペットの吹き始め・ベースの弾き始め等の音や、周期的な音色変化であるワウワウ効果に対応した時間的変化データが発生される。これは特開昭52−93315号に記載されたようなADSRエンべロープ発生器を用いたり、アナログ的にエンべロープを発生してD/A変換することで容易に実現でき、この場合、前記時間的変化データは、エンベロープ波形に応じたものになる。
【0019】この時間的変化データは鍵盤のON/OFFを基準として独自の時間的パラメーターのもとに進行し、波形発生回路5のサンプリングのタイミングとは同期していない。このため、図2のタイミング回路14は波形発生回路5のフーリエ演算の高調波次数情報をアドレス発生回路12に供給するとともに、全体の回路の時分割動作のタイミングをコントロールする。図2のアドレス発生回路12によってメモリ回路11から読み出される高調波係数データを(2)式に従って求めると、波形発生回路5において、あるサンプル点sにおける演算は倍音nごとの乗算・累算であり、 G(n,s,t)=Cn(t)・sin(2πns/S)…(6)式という倍音nごとの乗算結果G(n,s,t)を、F(s,t)=ΣG(n,s,t)…(7)式とN次まで累算していることがわかる。この乗算タイムスロットごとにアドレス発生回路12とタイミング回路14から高調波次数情報nを受け取り、更に時間的変化データ発生回路13から時間的変化データを受け取る。ここでΣは高調波の次数n=1から高調波の最高次数n=Nまでの累算を示す記号である。
【0020】ここにたとえば図3(b)のような高調波データに対して、時間tにおける第n次高調波係数を読み出すアドレスを、 Ad(t,n)=P1+(n−1)・d+V(t)…(8)式と設定することができる。(8)式において、P1は基音(第1倍音)の高調波係数を読み出すアドレス、dは前述のように「とびとびに」読み出すスキップ値、V(t)は時間的変化データである。(8)式の計算は形式的には面倒のように見えるが、実際にはスキップ値dをメモリの一定の上位アドレスとすれば単なるアドレス操作になり、また時間的変化データV(t)は時間変化パラメーターtのみの関数で十分演算時間があるため、実現は容易である。
【0021】このようなアドレスに対して、メモリ回路11は(5)式に置ける高調波係数Cn(t)を発生する一種の変換テーブル:Mとして機能し、Cn(t)=M(Ad(t,n))
=M(P1+(n−1)・d+V(t))…(9)式なる高調波係数データを波形発生回路5に供給する。これによって波形発生回路5においては、各乗算タイムスロット:nごとに、 G(n,s,t)=(M(P1+(n−1)・d+V(t)))
・sin(2πns/S)…(10)式なる演算を行うことになる。ここで3つのパラメーターn,s,tを同期させるために、タイミング回路14は必要なデータをラッチし、また各部分に必要なラッチパルスを供給するとともに、アドレス発生回路12のアドレス生成に関与する。
【0022】図4は、図1に示す高調波係数回路4に設けられる、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例である。図4において、21はフーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数組記憶するメモリ回路、23は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ発生回路、22はメモリ回路21から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路、25はアドレス発生回路22からの読み出しアドレスによってメモリ回路21から読み出された高調波係数データを補間する補間回路、24は波形発生回路5及びアドレス発生回路22及び補間回路25の時分割動作を同期させるタイミング回路である。
【0023】図4に示す、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例の動作を図5に示すグラフを用いて説明すると、メモリ回路21においてはたとえば図5(a)のような高調波係数データが代表値として格納されるが、このデータ自身は楽音波形の高調波係数構成と直接対応するものではなく、合成される楽音波形の任意性に応じて任意に構成できる。ここで、アドレス発生回路22の設定する読み出しアドレスが、(8)式にしたがって図5(b)のF3をスタート点に、d2をスキップ値として設定されると、補間回路25においてはメモリ回路21の高調波係数データP1,P2………によって対応する補間値が計算される。この補間値を楽音波形の倍音構成として表したのが図5(c)のグラフであり、アドレス発生回路22の設定する読み出しアドレスによって効果的に高調波係数構成が設定されるのがわかる。この具体的構成例では図2よりも構成が複雑に見えるが、メモリ回路21に要求されるメモリ容量は非常に少なくなるため、実際にはむしろ有効で、補間回路25の補間方式をシフト回路による非線型補間等にすれば、回路規模も少なくてすむ。
【0024】図6は図1に示す高調波係数回路4に設けられる、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の更に別の実施例を説明するための具体的構成例である。図6において、31はフーリエ合成に用いられる1組の高調波係数データを複数組記憶するメモリ回路、36は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを押鍵検出・発音割当回路3からのタッチレスポンス情報に応じて発生する時間的変化データ発生回路、32はメモリ回路31から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生回路、34は波形発生回路5及びアドレス発生回路32の時分割動作を同期させるタイミング回路である。
【0025】図7は図6に示す時間的変化データ発生回路36における動作を説明するための具体的構成例である。すなわち図7において、41は楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータを発生する時間的変化データ計算回路、42は時間的変化データ計算回路41によって発生される時間的変化データの振幅を設定するデプス設定回路、43は演奏におけるタッチレスポンス情報に応じてバイアス値を設定するバイアス設定回路、44は押鍵検出・発音割当回路3からのタッチレスポンス情報に応じてデプス設定回路42およびバイアス設定回路43を制御するタッチレスポンスコントロール回路である。
【0026】図6及び図7に示す、本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例の動作を図8に示すグラフを用いて説明すると、時間的変化データ計算回路41においてはたとえば図8(a)のような時間的変化データが計算される。この図8(a)のような時間的変化特性曲線は、多くの自然楽器の持つ高調波特性の時間的変化に対応した代表的なものである。この出力信号であるアドレス信号の振幅値に対して、図8(b)に示すように時刻tにおける曲線Cの振幅値Lcに一定の比率をデプス設定回路42において乗ずることでLa,Lbのような値が得られ、全体としては曲線A、曲線Bのような出力信号が得られる。この一定の比率を演奏におけるタッチレスポンス情報に応じて制御することで、発生する楽音波形は豊富な時間変化特性を持つことになる。
【0027】また図8(c)に示すように、互いに類似の特性曲線である曲線D,曲線Eにおいても、バイアス設定回路43で設定されるアドレスのバイアス値Ld,Leが異なれば高調波係数の特性は大きく変化するため、たとえばピアノをff(フォルテシモ)で弾いた時の高音の伸びの表現等に有効である。また、時間的変化データ計算回路41によって発生される時間的変化データを図8(d)に示すように、曲線Fのような特性だけでなく、曲線Gのような時間変化特性を用いることで、ハープシコードの音色の特徴である高音の鋭い立上りの表現等にも有効である。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る電子楽器によれば、楽音波形のエンベロープに応じた時間的変化を実現する上で、フーリエ合成演算に必要な高調波係数を簡単な構成で短時間に発生することができるため、高調波係数の次数およびサンプリングレートおよび回路規模の制約を克服して、真に音楽的な楽音波形を発生することができる。また補間回路やタッチレスポンスコントロール回路によって回路規模の節約およびタッチレスポンス表現を実現することで、音楽性豊かな電子楽器を容易に提供できるものであり、良質の音楽のために貢献するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子楽器の構成を説明するための構成概念図である。
【図2】図1に示す高調波係数回路4に設けられる本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分を説明するための具体的構成例である。
【図3】図2に示す具体的構成例の動作を説明するためのグラフである。
【図4】図1に示す高調波係数回路4に設けられる本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の別の実施例を説明するための具体的構成例である。
【図5】図4に示す具体的構成例の動作を説明するためのグラフである。
【図6】図1に示す高調波係数回路4に設けられる本発明に係る楽音波形の時間的変化処理操作部分の更に別の実施例を説明するための具体的構成例である。
【図7】図6に示す時間的変化データ発生回路36における動作を説明するための具体的構成例である。
【図8】図6および図7に示す具体的構成例の動作を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1…鍵盤、2…音色設定タブレット、3…押鍵検出・発音割当回路、4…高調波係数回路、5…波形発生回路、6…波形記憶回路、7…音高周波数回路、8…D/A変換回路、9…エンべロープ回路、10…サウンドシステム、11…メモリ回路、12…アドレス発生回路、13…時間的変化データ発生回路、14…タイミング回路、21…メモリ回路、22…アドレス発生回路、23…時間的変化データ発生回路、24…タイミング回路、25…補間回路、31…メモリ回路、32…アドレス発生回路、34…タイミング回路、36…時間的変化データ発生回路、41…時間的変化データ計算回路、42…デプス設定回路、43…バイアス設定回路、44…タッチレスポンスコントロール回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】楽音波形の各サンプル点の波形振幅値をフーリエ合成によって個々に計算して楽音波形を形成する方式の電子楽器において、フーリエ合成に用いられる高調波係数データを複数記憶するメモリ手段と、楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータであって、エンべロープに対応した時間的変化データを発生する時間的変化データ発生手段と、前記メモリ手段から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生手段とを具備し、任意の構成の高調波係数をエンべロープに応じて時間的に変化させることを特徴とする電子楽器。
【請求項2】前記電子楽器は、さらに前記アドレス発生手段からの読み出しアドレスの下位アドレスに対応した高調波係数データを計算する補間手段を具備し、前記メモリ手段に格納される高調波係数データは前記アドレス発生手段からの読み出しアドレスの上位アドレスに対応した特徴的な代表点とし、前記補間手段によって前記メモリ手段から読み出される高調波係数データを補間するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
【請求項3】前記電子楽器は、さらに前記アドレス発生手段からの読み出しアドレスに更にバイアス値を設定して加えるバイアス設定手段と、前記時間的変化データ発生手段において発生される時間的変化データの振幅を設定するデプス設定手段とを具備し、演奏におけるタッチレスポンス情報に応じて前記バイアス設定手段のバイアス値及び前記デプス設定手段の振幅デプス値を制御するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の電子楽器。
【請求項4】前記電子楽器は、さらに演奏におけるタッチレスポンス情報を発生するタッチレスポンス情報発生手段を具備し、前記アドレス発生手段は、読み出しアドレスを、タッチレスポンス情報発生手段からのタッチレスポンス情報に応じて、さらに変化させながら発生させるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子楽器。
【請求項1】楽音波形の各サンプル点の波形振幅値をフーリエ合成によって個々に計算して楽音波形を形成する方式の電子楽器において、フーリエ合成に用いられる高調波係数データを複数記憶するメモリ手段と、楽音波形の時間的変化に対応して高調波係数の構成比を時間的に変化させるためのデータであって、エンべロープに対応した時間的変化データを発生する時間的変化データ発生手段と、前記メモリ手段から高調波係数データを読み出すための読み出しアドレスを前記時間的変化データに応じて変化させながら発生させるアドレス発生手段とを具備し、任意の構成の高調波係数をエンべロープに応じて時間的に変化させることを特徴とする電子楽器。
【請求項2】前記電子楽器は、さらに前記アドレス発生手段からの読み出しアドレスの下位アドレスに対応した高調波係数データを計算する補間手段を具備し、前記メモリ手段に格納される高調波係数データは前記アドレス発生手段からの読み出しアドレスの上位アドレスに対応した特徴的な代表点とし、前記補間手段によって前記メモリ手段から読み出される高調波係数データを補間するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
【請求項3】前記電子楽器は、さらに前記アドレス発生手段からの読み出しアドレスに更にバイアス値を設定して加えるバイアス設定手段と、前記時間的変化データ発生手段において発生される時間的変化データの振幅を設定するデプス設定手段とを具備し、演奏におけるタッチレスポンス情報に応じて前記バイアス設定手段のバイアス値及び前記デプス設定手段の振幅デプス値を制御するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の電子楽器。
【請求項4】前記電子楽器は、さらに演奏におけるタッチレスポンス情報を発生するタッチレスポンス情報発生手段を具備し、前記アドレス発生手段は、読み出しアドレスを、タッチレスポンス情報発生手段からのタッチレスポンス情報に応じて、さらに変化させながら発生させるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子楽器。
【図2】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6】
【図7】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開平6−118963
【公開日】平成6年(1994)4月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−99858
【分割の表示】特願昭58−201663の分割
【出願日】昭和58年(1983)10月27日
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【公開日】平成6年(1994)4月28日
【国際特許分類】
【分割の表示】特願昭58−201663の分割
【出願日】昭和58年(1983)10月27日
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
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