説明

電子機器、機能実行方法及び機能実行プログラム

【課題】制御機器との通信が可能となるまでの時間を短縮できる電子機器、方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】PCカード1は、PC101と通信を実行する有線通信部60と、所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理部31と、起動処理されたタスクによって、PC101から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行部32と、を備え、起動処理部31は、複数のタスクを順次起動処理する前に、複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御機器から受信したコマンドに対応する機能を実行する電子機器、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータの他、自動販売機やコピー機等、様々な制御機器において、通信機能により稼動状態を外部の管理装置等へ通知することが行われている。通常、この通信機能は、制御機器に組み込まれた通信モジュールにより実現されている。
【0003】
ところで、通信機能を搭載する制御機器は、多岐にわたっているため、電源投入後に通信モジュールと通信を開始できるようになるまでの時間も様々である。したがって、制御機器の種類によっては、通信モジュールが通信可能となる前にコマンドを送信可能となる場合がある。この場合、制御機器から送信したコマンドに対する応答が得られないため、正常動作ができなくなる。
【0004】
そこで、例えば、制御機器及び通信モジュールの双方の起動状態を監視し、制御機器は、通信モジュールが制御機器と通信可能になってからコマンドを送信する対策がとられている。また、特許文献1では、制御機器がサスペンド状態である場合、通信を開始する前の着信イベントで制御機器を復帰させておき、さらに、通信モジュールからの入力データをバッファに保存しておくことで、制御機器が起動する際にコマンドの受信を失敗しない方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−235433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、電源投入時には着信を受けられない、又はバッファが利用できない場合もあるため、制御機器がサスペンド状態から復帰する場合にしか対応できない。したがって、電源投入後、制御機器と通信モジュールとで通信を開始するためには、双方が相手方の通信準備が整うまで待機しなければならなかった。
【0007】
本発明は、制御機器との通信が可能となるまでの時間を短縮できる電子機器、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、制御機器と通信を実行する第1通信部と、所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理部と、前記起動処理されたタスクによって、前記制御機器から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行部と、を備え、前記起動処理部は、前記複数のタスクを順次起動処理する前に、前記複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理することを特徴とする。
【0009】
また、前記特定の機能は、前記制御機器と通信する機能であることが好ましい。
【0010】
また、前記起動処理部は、前記特定のタスクの起動処理後に、前記複数の機能の内、前記特定のタスクにより実行される機能の初期化処理を除いて前記複数のタスクを起動処理することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電子機器は、前記制御機器から送信されるコマンドごとに、当該コマンドに対応する機能を実行する上で起動処理が必要なタスクを示す対応データを記憶する記憶部を備え、前記実行部は、前記制御機器からコマンドを受信した際に、当該受信したコマンドに対応する前記起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したか否かを判定することにより、前記受信したコマンドに対応する機能の実行の可否を判定し、当該実行が可能と判定した場合に当該機能を実行することが好ましい。
【0012】
また、前記記憶部は、前記対応データにより示される前記起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したか否かを示す状態データをさらに記憶し、前記起動処理部は、前記起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したことに応じて前記状態データを更新して前記記憶部に記憶させ、前記実行部は、前記状態データに基づいて、前記受信したコマンドに対応する機能の実行の可否を判定することが好ましい。
【0013】
また、前記実行部は、前記対応する機能の実行が不可能と判定した場合、前記制御機器へエラー信号を送信することが好ましい。
【0014】
また、前記起動処理部は、前記複数のタスクの起動処理が完了すると、前記特定のタスクから前記複数のタスクへ処理を切り替えることが好ましい。
【0015】
また、前記起動処理部は、前記複数のタスクの起動処理が完了した時に、前記特定のタスクにより前記対応する機能を実行している場合、当該機能の実行が終了した後に、前記特定のタスクから前記複数のタスクへ処理を切り替えることが好ましい。
【0016】
また、前記起動処理部は、前記特定のタスクから前記複数のタスクへ処理を切り替える際に、前記特定のタスクが前記制御機器から受信して蓄積しているコマンドの処理を、前記複数のタスクへ引き継がせることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、他の通信機器と通信を実行する第2通信部をさらに備えることが好ましい。
【0018】
また、前記所定のタイミングは、電源起動時であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る機能実行方法は、制御機器と通信接続された電子機器が当該制御機器から受信したコマンドに対応する機能を実行する機能実行方法であって、所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理ステップと、前記起動処理されたタスクによって、前記制御機器から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行ステップと、を含み、前記起動処理ステップにおいて、前記複数のタスクを順次起動処理する前に、前記複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る機能実行プログラムは、制御機器と通信接続された電子機器に、当該制御機器から受信したコマンドに対応する機能を実行させるための機能実行プログラムであって、所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理ステップと、前記起動処理されたタスクによって、前記制御機器から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行ステップと、を実行させ、前記起動処理ステップにおいて、前記複数のタスクを順次起動処理する前に、前記複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子機器において、制御機器との通信が可能となるまでの時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係るPCカードがPCに有線接続され、ネットワークに無線接続される様子を示す図である。
【図2】実施形態に係るPCカードの機能を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る複数のタスクの一例を示す図である。
【図4】実施形態に係る初期化状態テーブルの一例を示す図である。
【図5】実施形態に係る電源起動時の処理を示すシーケンス図である。
【図6】実施形態に係る擬似ATコマンドタスクを起動しない場合の起動処理を示すシーケンス図である。
【図7】実施形態に係る擬似ATコマンドタスクを起動する場合の起動処理を示すシーケンス図である。
【図8】実施形態に係る擬似ATコマンドタスクを起動させた場合に、受信したATコマンドに対応する機能を実行する処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、電子機器の一例としてPC(Personal Computer)101に接続されるPCカード1を説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るPCカード1がPCに有線接続され、ネットワークに無線接続される様子を示す図である。
【0025】
PCカード1は、PC101のカードスロット102に挿入又はPC101の所定の通信規格(例えば、USB)に準拠したインタフェース103にアダプタ104を介して有線接続される。また、PCカード1は、無線通信用のアンテナを有しており、基地局201を介して、PC101をネットワーク202(例えば、インターネット)へ無線接続させる。
【0026】
図2は、本実施形態に係るPCカード1の機能を示すブロック図である。
PCカード1は、制御部30と、無線通信部40(第2通信部)と、記憶部50と、有線通信部60(第1通信部)とを備える。
【0027】
制御部30は、PCカード1の全体を制御しており、例えば、無線通信部40等の各部に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、有線通信部60等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部50を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。なお、本実施形態に係る制御部30の詳細機能は後述する。
【0028】
無線通信部40は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で他の通信機器(例えば、基地局201)と通信を行う。そして、無線通信部40は、アンテナより受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、アンテナから外部装置に送信する。
【0029】
記憶部50は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、本実施形態に係る各種プログラム等を記憶する。さらに、記憶部50は、後述の初期化状態管理テーブル(図7)を記憶し、制御部30により参照又は更新される。
【0030】
有線通信部60は、PC101と有線通信を行い、PC101から制御コマンドを受信して制御部30へ提供するPCカードインタフェースである。
【0031】
次に制御部30の機能を詳述する。
制御部30は、起動処理部31と、実行部32とを備え、複数のタスクを並列処理することにより、PC101から受信した制御コマンドに対応する機能を実行する。
【0032】
起動処理部31は、所定のタイミング、すなわち電源起動時において、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する。ここで、起動処理には、各タスクにより実行可能な機能の初期化処理が含まれ、タスク起動時に初期化処理を実行し、初期化が完了すると、この機能が実行可能となる。
【0033】
図3は、本実施形態に係るPCカード1において起動される複数のタスクの一例を示す図である。
【0034】
制御部30では、起動処理部31を構成し、他の複数のタスクの動作を統括するメインタスク301が実行される。また、実行部32を構成する複数のタスクとして、有線通信部60によりPC101との通信を実行するPCカードタスク302、無線通信部40により外部装置との無線通信を実行するプロトコルタスク303やGPSタスクや無線LAN(WLAN)タスク、PC101から受信したATコマンドを実行するATコマンドタスク304の他、記憶部50等に対応する各種タスクが実行される。
【0035】
まず、起動処理部31は、実行部32を構成するこれら複数のタスクを順次起動処理する前に、複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理する。本実施形態において、特定のタスクとは、PC101と通信する機能を含み、PC101から送信されるATコマンドを受信して、このATコマンドに対応する機能を最低限に実行するためのタスクである。具体的には、特定のタスクは、ATコマンドタスク304の少なくとも一部の機能と、PCカードタスク302の機能とを含む擬似ATコマンドタスクである。なお、特定のタスクに含まれるPCカードタスク302は一例であり、PC101との有線接続方式に応じて、他の有線インタフェースに関するタスクを含んでもよい。
【0036】
続いて、起動処理部31は、擬似ATコマンドタスクの起動処理が完了すると、他の複数のタスクを起動処理する。このとき、起動処理部31は、これら複数のタスクで実行される複数の機能の内、擬似ATコマンドタスクにおいて既に初期化処理されている機能の初期化処理を除いて複数のタスクを起動処理する。
【0037】
次に、起動処理部31は、複数のタスク、すなわち本来起動されるべき全てのタスクの起動処理が完了すると、擬似ATコマンドタスクから複数のタスクのいずれか、具体的にはATコマンドタスク304へ処理を切り替え、擬似ATコマンドタスクを終了させる。
【0038】
起動処理部31は、複数のタスクの起動処理が完了した時に、擬似ATコマンドタスクにより受信したコマンドに対応する機能を実行している場合、この機能の実行が終了した後に、擬似ATコマンドタスクからATコマンドタスク304へ処理を切り替える。
【0039】
また、起動処理部31は、擬似ATコマンドタスクからATコマンドタスク304へ処理を切り替える際に、擬似ATコマンドタスクがPC101から受信してバッファに蓄積しているコマンドの処理を、ATコマンドタスク304へ引き継がせる。すなわち、既に受信したコマンドが蓄積されているバッファをATコマンドタスク304へ受け渡すことにより、処理待ちとなっているコマンドが破棄されることなく処理される。
【0040】
実行部32は、起動処理されたタスクによって、PC101から送信されたコマンドに対応する機能を実行する。すなわち、実行部32は、タスクの起動処理が完了しておらず、受信したコマンドに対応する機能が初期化されていない場合、この機能を実行できない。
【0041】
ここで、実行部32は、擬似ATコマンドタスクの起動処理が完了すれば、PC101との間でコマンドを送受信できる。ところが、プロトコルタスク303の起動処理が完了していなければ、発信コマンド「ATD」等のプロトコルタスク303の起動を必要とするコマンドを受信した場合、このコマンドを処理する際に、PCカード1の異常動作を引き起こすおそれがある。
【0042】
そこで、実行部32は、PC101からコマンドを受信した際に、記憶部50の初期化状態テーブルを参照し、この受信したコマンドに対応する起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したか否かを判定する。そして、実行部32は、この判定結果により、受信したコマンドに対応する機能の実行の可否を判定し、実行が可能と判定した場合にこの機能を実行する。
【0043】
一方、実行部32は、対応する機能の実行が不可能と判定した場合、PC101へエラー信号を送信し、PC101やPCカード1の異常動作を防止する。
【0044】
図4は、本実施形態に係る記憶部50に格納される初期化状態テーブルの一例を示す図である。
初期化状態テーブルは、PC101から送信されるコマンドごとに、このコマンドに対応する機能を実行する上で起動処理が必要なタスクを示す対応データ、及びこのタスクの起動処理が完了したか否かを示す状況データを記憶している。ここで、初期化中とは、起動処理の際に実行される初期化処理が実行されている最中を意味する。
【0045】
例えば、設定コマンド「ATE」は、擬似ATコマンドタスクの起動処理が完了していれば応答が可能である。また、発信コマンド「ATD」、応答コマンド「ATA」及び切断コマンド「ATH」は、プロトコルタスク303の起動処理が完了していなければ機能を実行できない。ところが、プロトコルタスク303が初期化処理中であるため、応答が不可能である。ここで、プロトコルタスク303の初期化処理が完了すると起動処理が完了し、上記コマンドに対して応答が可能となる。
【0046】
起動処理部31は、これらの起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したことに応じて、初期化状態テーブルの状態データを更新して記憶部50に記憶させる。なお、図4の例では、状態データとして、起動処理が完了したか否かだけでなく、処理中であることも記憶されている。このことにより、詳細な管理が可能となる。
【0047】
図5は、本実施形態に係るPCカード1及びPC101における電源起動時の処理を示すシーケンス図である。
【0048】
ステップS1においてPCカード1及びPC101の電源が投入されると、PC101は、ステップS2において起動処理を実行し、ステップS3において通信可能状態となる。そして、PC101は、ステップS4においてPCカード1の起動処理が完了するまで待機する。
【0049】
また、PCカード1は、ステップS5において起動処理を実行し、ステップS6において通信可能状態となる。そして、PCカード1は、ステップS7においてPC101の起動処理が完了するまで待機する。
【0050】
PCカード1及びPC101の起動処理が完了し、ステップS8においてPC101からPCカード1へATコマンドが送信されると、ステップS9においてPCカード1からPC101へ応答が送信される。
【0051】
このとき、PC101における起動処理に掛かる時間に比べて、PCカード1における起動処理に掛かる時間が長いと、PC101において待ち時間が発生する(ステップS4)。
【0052】
図6は、本実施形態に係る擬似ATコマンドタスクを起動しない従来のPCカード1における起動処理を示すシーケンス図である。
なお、説明の簡略化のため、メインタスク301の他、電源起動時に起動されるタスクは、PCカードタスク302、プロトコルタスク303及びATコマンドタスク304であるとする。
【0053】
ステップS1において電源が投入されると、ステップS11においてメインタスク301の起動処理が実行される。メインタスク301は、自身の起動処理が完了すると、ステップS12においてPCカードタスク302の起動処理を、ステップS13においてプロトコルタスク303の起動処理を、ステップS14においてATコマンドタスク304の起動処理を順次実行させる。
【0054】
そして、ATコマンドタスク304の起動処理が完了すると、メインタスク301は、ステップS15において通信可能状態になったと判断する。
【0055】
本処理の場合、複数のタスクの全てについて起動処理が完了するまで、PCカード1は通信可能状態とならない。
【0056】
図7は、本実施形態に係る擬似ATコマンドタスクを起動する場合のPCカード1における起動処理を示すシーケンス図である。
【0057】
ステップS1において電源が投入されると、ステップS11においてメインタスク301の起動処理が実行される。メインタスク301は、自身の起動処理が完了すると、ステップS21において擬似ATコマンドタスクの起動処理を実行させる。擬似ATコマンドタスクの起動処理が完了すると、メインタスク301は、ステップS22において通信可能状態になったと判断する。
【0058】
その後、メインタスク301は、ステップS23においてPCカードタスク302の起動処理を実行させ、続いて、プロトコルタスク303、ATコマンドタスク304の起動処理を実行させていく。ここで、擬似ATコマンドタスクに、PCカードタスク302の機能を含む場合、PCカードタスク302の起動処理の際に、既に初期化処理されている機能の初期化処理を除いて初期化処理を実行する。
【0059】
本処理の場合、擬似ATコマンドタスクの起動処理が完了した時点で、PCカード1は通信可能状態となるので、擬似ATコマンドタスクを起動させない場合に比べて、通信可能状態になるまでの時間が大幅に短縮される。
【0060】
図8は、本実施形態に係る擬似ATコマンドタスクを起動させた場合に、受信したATコマンドに対応する機能を実行する処理の一例を示すシーケンス図である。
【0061】
擬似ATコマンドタスクは、ステップS31において設定コマンド「ATE」を受信すると、ステップS32において「ATE」を処理し、対応する機能を実行する。
【0062】
一方、ATコマンドタスク304は、ステップS33において起動処理が完了すると、ステップS34において擬似ATコマンドタスクへ起動処理の終了通知を行う。
このとき、ステップS32における「ATE」の処理が完了していない場合、擬似ATコマンドタスクは終了せず、ステップS35において完了通知を行った後、ステップS36において擬似ATコマンドタスクは終了する。
【0063】
また、ステップS36で擬似ATコマンドタスクが終了するまでの間に、擬似ATコマンドタスクがPC101から後続のATコマンド、例えばステップS37において発信コマンド「ATD」を受信した場合、このATコマンドはバッファに蓄積される。そして、ステップS36で擬似ATコマンドタスクが終了すると、このバッファは、ステップS38においてATコマンドタスク304へ受け渡される。
【0064】
そして、ATコマンドタスク304は、バッファに蓄積されているATコマンドの処理を引き継ぎ、ステップS39において「ATD」を処理し、対応する機能を実行する。ATコマンドタスク304は、「ATD」の処理が完了すると、ステップS40においてPC101へ完了通知を行う。
【0065】
本処理によれば、ATコマンドタスク304の起動処理が完了し、擬似ATコマンドタスクが不要になると、PC101から受信したATコマンドを失うことなく、擬似ATコマンドタスクを終了させ、ATコマンドタスク304へ処理が切り替えられる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、PCカード1は、複数のタスクを順次起動処理する前に擬似ATコマンドタスクを起動処理する。これにより、PC101と通信するのに必要な機能のみが優先的に初期化され、全てのタスクの起動処理が完了するのを待って通信を開始するのに比べて、PC101との間でATコマンドの送受信が可能となるまでの時間が短縮される。
【0067】
したがって、PCカード1において、特殊なカスタマイズをすることなく、起動時間がPCカード1よりも短い様々な制御機器との間で、素早くATコマンドの送受信が可能となる。すなわち、起動時間が短い制御機器に合わせて起動タイミングを変更する特殊な回路を組み込んだり、ソフトウェアの変更をしたりすることなく、単一のPCカード1で、より多くの制御機器に対応できる。
【0068】
また、PCカード1は、PC101と通信に必要な機能のみを含む擬似ATコマンドタスクを優先して起動処理するので、PC101からATコマンドを受信できるようになるまでの時間を極力短縮できる。
【0069】
また、PCカード1は、擬似ATコマンドタスクの起動処理により既に初期化されている機能について、他のタスクの起動処理に初期化処理しないため、処理負荷は増大せず、擬似ATコマンドタスクを設けない場合に比べて、起動時間の増加を抑制できる。
【0070】
また、PCカード1は、初期化状態テーブルを参照することにより、各コマンドに対応する機能を実行する上で起動処理が必要なタスクを把握できるので、必要なタスクの起動処理が完了している場合にのみ機能を実行し、異常動作を抑制できる。また、PCカード1は、この必要なタスクの起動処理が完了したか否かを、初期化状態テーブルにおいて適時に更新するので、この情報に基づいて容易に実行の可否を判定できる。
さらに、PCカード1は、機能の実行が不可能と判定した場合、PC101へエラー信号を送信するので、PC101の異常動作を抑制できる。
【0071】
また、PCカード1は、擬似ATコマンドタスクの起動処理が完了した後、他の複数のタスクの起動処理が完了すると、擬似ATコマンドタスクを終了させ、ATコマンドタスクへ処理を切り替える。したがって、PCカード1は、同一の機能に対応するタスクの重複を避け、記憶容量及び処理負荷を低減できる。
【0072】
このとき、PCカード1は、擬似ATコマンドタスクで実行中の機能が有る場合、この機能の実行が終了するまで、ATコマンドタスクへの切り替えを待機するので、擬似ATコマンドタスクの終了に伴って実行中の機能が異常終了するのを回避できる。
【0073】
さらに、PCカード1は、擬似ATコマンドタスクを終了させる際に、受け付けたATコマンドのバッファを、ATコマンドタスクへ引き継がせるので、PC101から受信したATコマンドが処理されず破棄されるのを回避できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0075】
本実施形態においてPCカード1を一例としたが、本発明に係る電子機器は、これには限られない。電子機器は、有線通信部60としてUSBインタフェースやシリアル入出力(SIO)インタフェース等を有する通信モジュールや、PC101の内部に備えられた専用通信モジュール等でもよい。また、本発明は、携帯電話機、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等、様々な電子機器に適用可能である。
【0076】
さらに、前述の実施形態では、PCカード1は、PC101と有線通信部60により有線での通信を行うこととしたが、本発明はこれには限られず、所定のプロトコルにより無線接続されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 PCカード(電子機器)
30 制御部
31 起動処理部
32 実行部
40 無線通信部(第2通信部)
50 記憶部
60 有線通信部(第1通信部)
101 PC(制御機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器と通信を実行する第1通信部と、
所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理部と、
前記起動処理されたタスクによって、前記制御機器から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行部と、を備え、
前記起動処理部は、前記複数のタスクを順次起動処理する前に、前記複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記特定の機能は、前記制御機器と通信する機能であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記起動処理部は、前記特定のタスクの起動処理後に、前記複数の機能の内、前記特定のタスクにより実行される機能の初期化処理を除いて前記複数のタスクを起動処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御機器から送信されるコマンドごとに、当該コマンドに対応する機能を実行する上で起動処理が必要なタスクを示す対応データを記憶する記憶部を備え、
前記実行部は、前記制御機器からコマンドを受信した際に、当該受信したコマンドに対応する前記起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したか否かを判定することにより、前記受信したコマンドに対応する機能の実行の可否を判定し、当該実行が可能と判定した場合に当該機能を実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記記憶部は、前記対応データにより示される前記起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したか否かを示す状態データをさらに記憶し、
前記起動処理部は、前記起動処理が必要なタスクの起動処理が完了したことに応じて前記状態データを更新して前記記憶部に記憶させ、
前記実行部は、前記状態データに基づいて、前記受信したコマンドに対応する機能の実行の可否を判定することを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記実行部は、前記対応する機能の実行が不可能と判定した場合、前記制御機器へエラー信号を送信することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記起動処理部は、前記複数のタスクの起動処理が完了すると、前記特定のタスクから前記複数のタスクへ処理を切り替えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記起動処理部は、前記複数のタスクの起動処理が完了した時に、前記特定のタスクにより前記対応する機能を実行している場合、当該機能の実行が終了した後に、前記特定のタスクから前記複数のタスクへ処理を切り替えることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記起動処理部は、前記特定のタスクから前記複数のタスクへ処理を切り替える際に、前記特定のタスクが前記制御機器から受信して蓄積しているコマンドの処理を、前記複数のタスクへ引き継がせることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
他の通信機器と通信を実行する第2通信部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記所定のタイミングは、電源起動時であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項12】
制御機器と通信接続された電子機器が当該制御機器から受信したコマンドに対応する機能を実行する機能実行方法であって、
所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理ステップと、
前記起動処理されたタスクによって、前記制御機器から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行ステップと、を含み、
前記起動処理ステップにおいて、前記複数のタスクを順次起動処理する前に、前記複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理することを特徴とする機能実行方法。
【請求項13】
制御機器と通信接続された電子機器に、当該制御機器から受信したコマンドに対応する機能を実行させるための機能実行プログラムであって、
所定のタイミングにおいて、複数の機能を実行するために必要な処理を含む複数のタスクを順次起動処理する起動処理ステップと、
前記起動処理されたタスクによって、前記制御機器から送信されたコマンドに対応する機能を実行する実行ステップと、を実行させ、
前記起動処理ステップにおいて、前記複数のタスクを順次起動処理する前に、前記複数の機能の内の特定の機能を実行するために設けられた特定のタスクを起動処理することを特徴とする機能実行プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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