説明

電子機器、電子機器の電力制御方法、プログラム及び記録媒体

【課題】通信手段が外部機器と接続した場合の起動時において、ユーザの利便性を損なうことなく、且つ、消費電力を抑えることができる電子機器を提供すること。
【解決手段】複数の機器を備え、外部機器に接続してデータ通信を行うと共に電力の供給を受ける通信手段と、前記通信手段による前記外部機器との接続を検出する検出手段と、前記複数の機器への電力供給の制御を行う電力供給制御手段と、前記電力供給制御手段が前記複数の機器に対して電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードと、を有する電子機器であって、前記通信手段が前記外部機器と接続したことを前記検出手段が検出した時に、前記複数の起動モードの中から選択された起動モードに基づいて、前記電力供給制御手段が前記複数の機器への電力供給の制御を行うことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信を行うと共に電力の供給を受ける通信手段を介して外部機器と接続して動作する電子機器に関し、特に電子機器が備える複数の機器への電力供給制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハードディスクドライブ)やDVD−ROMドライブ、あるいはインクジェットプリンタといった電子機器の中には、USB等の通信手段を介してPC等の外部ホスト機器と接続し、データ通信を行うと共に電力の供給を受けて動作するものがある。
【0003】
さらに上記した電子機器の中には、USB等によりホスト機器との接続を検知した時に、自動的に電源が投入されて起動を開始するものがある。
【0004】
しかし、USB等の通信手段で接続する電子機器の全てが、ホスト機器との接続と同時に起動する必要がある訳ではなく、例えば、USB等の通信手段によりホスト機器に接続した直後に電子機器の使用を開始しない場合等、直ちに起動する必要が無い場合もある。
【0005】
この様な場合には、実際には使用されないにも関わらず起動してしまうために、必要以上に電力を消費してしまう、という問題があった。
【0006】
そこで、例えば特許文献1には、外部装置との複数の通信手段を備えた電子機器で、複数の通信手段の接続状態に応じて適切な電源制御をすることで、ユーザによる電源制御の手間を省き、ユーザの利便性を向上させる電子機器が提案されている。
【0007】
特許文献1に係る電子機器によれば、全ての通信手段が接続されていない状態になった時に電子機器の電源を切る様にするので、電子機器を利用しない場合の消費電力を抑えつつ、電源ボタンの押下などのユーザの手間を省くことが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る電子機器においても、通信手段による外部装置との接続が検知されて電源が投入された後において、直ぐに使用が開始されない場合等には、必要以上に電力を消費してしまうという問題を解消できない場合があった。
【0009】
そこで、通信手段が外部機器と接続して起動する際に、ユーザの利便性を損なうことなく、且つ、消費電力を抑えることができる電子機器、電子機器の電力制御方法、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明では、上記課題に鑑み、複数の機器を備え、外部機器に接続してデータ通信を行うと共に電力の供給を受ける通信手段と、前記通信手段による前記外部機器との接続を検出する検出手段と、前記複数の機器への電力供給の制御を行う電力供給制御手段と、前記電力供給制御手段が前記複数の機器に対して電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードと、を有する電子機器であって、前記通信手段が前記外部機器と接続したことを前記検出手段が検出した時に、前記複数の起動モードの中から選択された起動モードに基づいて、前記電力供給制御手段が前記複数の機器への電力供給の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る実施形態によれば、電子機器が備える複数の機器に対して電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードを備え、通信手段が外部機器と接続した場合にユーザに最適な起動モードで電子機器が起動することによって、ユーザの利便性を損なうことなく、消費電力の低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図
【図2】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のハードウェア構成を示す図
【図3】第1の実施形態に係る起動モードの例を示す図
【図4】第1の実施形態に係る起動時における処理例を示すフローチャート
【図5】第1の実施形態に係る操作パネルの画面表示及び遷移の例を示す図
【図6】第2の実施形態に係る起動時の処理例を示すフローチャート
【図7】第1の実施形態の変形例に係る起動時の処理例を示すフローチャート
【図8】第2の実施形態の変形例に係る起動時の処理例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について、図面を用いて詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1に、本発明に係る電子機器の一態様であるインクジェット記録装置の概略構成を示す。
【0014】
インクジェット記録装置10は、装置本体1の内部に画像形成部2等を有し、給紙トレイ4から給紙される用紙3を取り込み、搬送機構5で用紙3を搬送しつつ、画像形成部2によって画像を記録した後、装置本体1に装着された排紙トレイ6に用紙3を排出する。
【0015】
また、インクジェット記録装置10は、装置本体1に着脱可能に設けられた両面ユニット7を備えている。両面印刷を行うときには、一方の面(表面)の印刷終了後に、搬送機構5によって用紙3を逆方向に搬送しながら両面ユニット7内に取り込み、反転させて他方の面(裏面)を印刷面として搬送し、裏面印刷終了後に排紙トレイ6に用紙3を排出する。
【0016】
ここで、画像形成部2は、ガイドシャフト11,12にキャリッジ13を摺動可能に保持し、図示しない主走査モータでキャリッジ13を用紙3の搬送方向と直交する方向に移動(主走査)させる。
【0017】
キャリッジ13には、液滴を吐出する複数の吐出口であるノズル孔を配列した液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッド14を搭載し、また、記録ヘッド14に液体を供給するインクカートリッジ15を着脱自在に搭載している。
【0018】
なお、インクカートリッジ15に代えてヘッドタンクを搭載し、メインタンクからインクをヘッドタンクに補充供給する構成とすることもできる。
【0019】
記録ヘッド14としては、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドとしているが、各色のインク滴を吐出する複数のノズル列を有する1又は複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。なお、色の数及び配列順序はこれに限るものではない。
【0020】
記録ヘッド14を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを使用できる。
【0021】
給紙トレイ4の用紙3は、給紙コロ(半月コロ)21と図示しない分離パッドとによって1枚ずつ分離され装置本体1内に給紙され、搬送機構5に送り込まれる。
【0022】
搬送機構5は、給紙された用紙3をガイド面23aに沿って上方にガイドし、また両面ユニット7から送り込まれる用紙3をガイド面23bに沿ってガイドする搬送ガイド部23を有している。また、用紙3を搬送する搬送ローラ24と、この搬送ローラ24に対して用紙3を押し付ける加圧コロ25と、ガイド部材26,27と、搬送ローラ24から送り出す用紙3を押圧する押し付けコロ28とを有している。
【0023】
さらに、搬送機構5は、記録ヘッド14で用紙3の平面性を維持したまま搬送するために、駆動ローラ31と従動ローラ32との間に掛け渡した搬送ベルト33と、この搬送ベルト33を帯電させるための帯電ローラ34と、この帯電ローラ34に対向するガイドローラ35とを有している。また、図示しないが、搬送ベルト33を画像形成部2に対向する部分で案内するガイド部材(プラテンプレート)と、搬送ベルト33に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなるクリーニングローラ等を有している。
【0024】
搬送ベルト33は無端状ベルトであり、駆動ローラ31と従動ローラ32との間に掛け渡されて、矢印方向(用紙搬送方向)に周回するように構成している。
【0025】
この搬送ベルト33は、単層構成又は2層構成あるいは3層以上の構成とすることができる。例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏面(中抵抗層、アース層)とで構成する。
【0026】
帯電ローラ34は、搬送ベルト33の表層に接触し、搬送ベルト33に従動して回転するように配置されている。帯電ローラ34には図示しない高圧回路(高圧電源)から高電圧が所定のパターンで印加される。
【0027】
搬送機構5の下流側には、画像が記録された用紙3を排紙トレイ6に送り出すための排紙ローラ38を備えている。
【0028】
搬送ベルト33は矢印方向に周回し、高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ34と接触することで正に帯電される。この場合、帯電ローラ34は所定の時間間隔で極性を切り替えることによって、所定の帯電ピッチで搬送ベルト33を帯電させる。
【0029】
高電位に帯電した搬送ベルト33上に用紙3が給紙されると、用紙3内部が分極状態になり、搬送ベルト33上の電荷と逆極性の電荷が用紙3のベルト33と接触している面に誘電される。ベルト33上の電荷と搬送される用紙3上に誘電された電荷同士が互いに静電的に引っ張り合い、用紙3は搬送ベルト33に静電的に吸着される。吸着された用紙3は、反りや凹凸が矯正され、平滑な面が形成される。搬送ベルト33に吸着された用紙3は、画像形成部2まで搬送される。
【0030】
用紙3が画像形成部2を通過する間に、キャリッジ13を片方向又は双方向に移動走査しながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動し、記録ヘッド14から液滴を吐出(噴射)させて、停止している用紙3に液滴であるインク滴を付着させてドットを形成することにより、1行分を記録した後、用紙3を所定量搬送して次の行の記録を行う。
【0031】
記録終了信号又は用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。
【0032】
以上の過程を経て画像が記録された用紙3は排紙ローラ38によって排紙トレイ6に排紙される。
【0033】
図2に、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10のハードウェア構成を示す。
【0034】
インクジェット記録装置10の制御部100は、CPU101,RAM103,不揮発性メモリ(NVRAM)104、ASIC105等を備えている。
【0035】
CPU101は、用紙3の搬送動作及び記録ヘッド14の移動動作に関する制御など、装置全体の制御を司っている。
【0036】
ROM102は、CPU101が実行するプログラムその他の固定データを格納している。RAM103は、画像データなどを一時格納する際に使用され、NVRAM104は装置の電源が遮断されている間にもデータを保持する必要がある場合に用いられる。
【0037】
記録媒体I/F51は、記録媒体52と接続してプログラム等を読み出すことができ、CPU101は読み出されたプログラムを実行することもできる。
【0038】
また、ASIC105は、各種信号処理、並べ替えなどを行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号の処理を行う。
【0039】
ホストI/F106は、プリンタドライバを搭載可能なパーソナルコンピュータ等のデータ処理装置であるホスト装置90側と通信手段50を介してのデータ、信号の送受信を行う。
【0040】
ACバイアス供給部114は、帯電ローラ34に対して高電圧を印加するオン/オフの切り替え及び出力極性の切り替え制御を行う。
【0041】
印刷制御部107は、記録ヘッド14を駆動するための駆動波形を生成するとともに、記録ヘッド14の圧力発生手段を選択駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データをヘッドドライバ108に出力する。
【0042】
さらに、ヘッドドライバ108、主走査モータ110を駆動するための主走査モータ駆動部111、副走査モータ112を駆動するための副走査モータ駆動部113、帯電ローラ34にACバイアスを供給するACバイアス供給部114、リニアエンコーダ16、ホイールエンコーダ17からの検出パルス、その他の各種センサからの検知信号を入力するためのI/O116等を備えている。
【0043】
制御部100には、インクジェット記録装置10に必要な情報の入力及び表示を行うための操作部である操作パネル117が接続されている。
【0044】
制御部100は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置、イメージスキャナ等の画像読取装置や、デジタルカメラ等の撮像装置といったホスト装置90からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F106で受信する。
【0045】
制御部100に対する印刷データの生成出力は、ホスト装置90にインストールされたプリンタドライバ91によって行われる。
【0046】
ホストI/F106が印刷データ等を受信すると、CPU101はI/F106に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にてデータの並び替え処理等を行って印刷制御部107に転送し、印刷制御部107から所定のタイミングでヘッドドライバ108に印刷データや駆動波形を出力する。
【0047】
画像を出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM102にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト装置90のプリンタドライバ91で印刷データをビットマップデータに展開してからホストI/F106に転送する様にしても良い。
【0048】
印刷制御部107の駆動波形生成部は、ROM102に格納されてCPU101で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び増幅器等で構成され、1つ又は複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ108に出力する。
【0049】
ヘッドドライバ108は、記録ヘッド14の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて印刷制御部107から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド14の圧力発生手段に印加することで記録ヘッド14を駆動する。
【0050】
なお、このヘッドドライバ108は、例えば、クロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含む。アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動パルスを選択的に記録ヘッド14の圧力発生手段に印加して該記録ヘッド14を駆動する。
【0051】
ホストI/F106は外部装置であるホスト装置90と通信手段50を介して接続する。
【0052】
通信手段50としては、例えばUSB,IEEE1394,eSATA(External Serial ATA)等の複数の規格に対応している。これらはプラグアンドプレイ(接続した際にハードウェアとファームウェア、ドライバ、オペレーティングシステム、およびアプリケーション間が自動的に協調し、機器の組み込みと設定を自動的に行う仕組み)及びホットスワップ(電源を投入したまま脱着ができる構造を備えた装置の仕組み、活線挿抜)可能な仕組みを有し、ホスト装置90からの供給電源ラインを有する。
【0053】
ホストI/F106は、ホスト装置90から通信手段50を介して規定のプロトコルを検知し、ホスト装置90との接続を検知する検出手段を有している。
【0054】
ホストI/F106が有する検出手段は、通信手段50として例えばUSBの接続状態について、ホスト側から供給される電源ラインであるVBUS信号の電圧から検出することが可能である。
【0055】
検出手段が検出したVBUS信号がLowであれば、USBケーブルが繋がっていないか、ホスト装置90の電源が切れた状態であり、いずれの場合も非接続と見なすことができる。
【0056】
上記に例示したUSB以外の通信手段50によるホスト装置90との接続状態は、規定のプロトコルによってホスト装置90との接続が確立された時に検出することが可能である。
【0057】
また、ホストI/F106は、ホスト装置90から通信手段50を介して電力の供給を受け、CPU101、操作パネル117、ヘッドドライバ108、主操作モータ110といった複数の機器への電力の供給を制御する電力供給制御手段を有している。
【0058】
インクジェット記録装置10は、検出手段によってホスト装置90と接続したことを検出すると、NVRAM104に記憶された起動モードに従って、電力供給制御手段がCPU101等の複数の機器への電力供給を制御して起動する。
【0059】
インクジェット記録装置10が印刷を実行するためには、CPU電源、センサ電源、駆動系電源、操作パネル等への電力の供給が必要となる。
【0060】
CPU電源はCPU101に電力を供給する電源であり、センサ電源は給紙トレイ4やインクカートリッジ15等が有する各種センサに電力を供給する電源である。また、駆動系電源は主走査モータ110、副走査モータ112、搬送ベルト33、帯電ローラ34等に電力を供給し、操作パネル117にはバックライト等に電力が供給される。
【0061】
この様に、インクジェット記録装置10では、CPU101や駆動系、各種センサ、操作パネル117等の複数の機器を備えており、通信手段50がホスト装置90に接続すると、これらの機器に電力が供給されて起動する。
【0062】
しかし、通信手段50がホスト装置90と接続した時に、直ちにこれら全ての機器に電力を供給して起動する必要がある訳ではない。ユーザの使用目的によっては、接続後しばらくしてから印刷を実行する場合もあり、直ちに起動すると印刷実行までの間に必要以上に電力を消費してしまうことがある。
【0063】
そこで、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10では、通信手段50がホスト装置90と接続して起動する場合に、電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードを有している。
【0064】
図3に、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10の起動モードの例を示す。
【0065】
インクジェット記録装置10は、「通常」、「操作パネルOFF」、「低電力」、「電源OFF」という4つの起動モードを有し、起動時において操作パネル、駆動系電源、センサ電源、CPU電源といった制御対象機器への電力供給の制御を行っている。
【0066】
「通常」モードは、全ての機器に対して電力の供給を行い、インクジェット記録装置10が印刷を遅滞なく実行できる状態にする。
【0067】
「操作パネルOFF」モードは、操作パネル117自体への電力供給を停止するか、バックライトを消すことにより消費電力を低減した状態で、操作パネル117に表示は行わないが、印刷データを受信して印刷可能な状態で起動する。
【0068】
「低電力」モードは、CPU電源のみに電力を供給し、CPU101だけを起動させる。インクジェット記録装置10が印刷を実行することはできないが、通信手段50を介してホスト装置90から設定値の変更及び参照が可能な状態に起動する。
【0069】
「電源OFF」モードは、通信手段50がホスト装置90と接続した場合でも、制御対象機器には電力を供給せず、電源OFF状態にするものである。
【0070】
インクジェット記録装置10は、上記した複数のモードに基づいて起動することにより、ユーザの利便性を損なうことなく、電力消費量を低減することができる。
【0071】
なお、起動モードは上記に限るものではなく、さらに多くの種類を有しても良い。また、電力供給の制御対象機器についても、上記以外の組み合わせや、電子機器が備える機器に応じて制御内容を設定することができる。
【0072】
図4に、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10の起動時における処理例のフローチャートを示す。
【0073】
ステップS1にて通信手段50がホスト装置90と接続したことを検出手段が検出すると、ステップS2にてホストI/F106が有する電力供給制御手段がCPU電源に電力を供給する。
【0074】
CPU電源に電力が供給された後、ステップS3にてROM102に格納されたプログラムをRAM103に展開して実行可能にするboot処理を実行する。
【0075】
次に、ステップS4にてNVRAM104に保存されている起動モードを取得する。
【0076】
ステップS5にて取得した起動モードが「通常」モードであった場合には、ステップS6にてセンサ電源、ステップS7にて駆動系電源、ステップS8にて操作パネルに電力が供給され、インクジェット記録装置10が起動する。
【0077】
起動モードが「通常」モードではなく、ステップS9にて「操作パネルOFF」モードと判別された場合には、ステップS10にてセンサ電源、ステップS11にて駆動系電源に電力を供給して起動を完了する。
【0078】
起動モードが「操作パネルOFF」モードではなく、ステップS12にて「低電力」モードであると判別されると、CPU101のみが起動した状態で処理を終了する。
【0079】
ステップS12にて「低電力」モードではない場合には、「電源OFF」モードであると判断し、ステップS13にてCPU電源をOFFにして電源OFF状態にして処理を終了する。
【0080】
以上の処理により、各起動モードに基づいてインクジェット記録装置10の起動処理が実行され、ユーザの利用状況に適した状態で起動できる。
【0081】
起動モードは、インクジェット記録装置10の初期設定時に選択して設定しておくこともできるが、操作パネル117によってユーザが適宜選択できるようにしても良い。
【0082】
図5に、第1の実施形態に係る操作パネル117において、ユーザが起動モードを選択する際の画面表示及び遷移の例を示す。操作パネル117は、液晶ディスプレイの他に「OK」ボタン、「戻る」ボタン及び「選択」ボタン等を有して構成されている。
【0083】
「システム設定」から、「起動モード設定」を選択して「OK」ボタンを押下すると、各起動モードの選択画面に遷移する。
【0084】
まず「通常」モードが表示され、「選択」ボタンを押下すると、「操作パネルOFF」モード、「低電力」モード、「電源OFF」モードが順次表示される。各モードが表示されている状態で「OK」ボタンを押下すると起動モードが設定され、「戻る」ボタンを押下すると「起動モード設定」の初期画面に戻る。
【0085】
上記した操作を行うことにより、ユーザが各自の使用状況に応じた起動モードを適宜選択して設定することができる。
【0086】
以上説明した様に、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10では、電力供給対象が異なる複数の起動モードを有し、通信手段50がホスト装置90と接続したことを検出して起動する際に、設定された起動モードに基づいて備えられた複数の機器に電力の供給を行うことで、必要以上の電力消費を防止することができる。
[第1の実施形態の変形例]
図7に、第1の実施形態の変形例に係る起動時の処理例のフローチャートを示す。
【0087】
まず、ステップS41にて通信手段50がホスト装置90と接続したことが検出手段により検出されると、ステップS42にてCPU電源に電力が供給され、ステップS43にてboot処理が実行される。
【0088】
続いて、ステップS44にてセンサ電源、ステップS45にて駆動系電源、ステップS46にて操作パネルのそれぞれに電力を供給し、一度「通常」モードでの起動を行う。
【0089】
その後、ステップS47にて設定された起動モードをNVRAM104から取得する。
【0090】
ステップS48で起動モードが「低電力」モードであると判断された場合には、ステップS49にて操作パネル、ステップS50にて駆動系電源、ステップS51にてセンサ電源をOFFにし、CPU電源のみに電力を供給する「低電力」モードの状態にする。
【0091】
ステップS52にて起動モードが「操作パネルOFF」モードだと判断された場合には、ステップS53にて操作パネルの電力供給を遮断する。「操作パネルOFF」モードでは無い場合には「通常」モードであり、そのまま処理を終了する。
【0092】
各モードでの起動が終了するまでに一度起動しておくことによって、操作パネル117に電力が供給される間等にユーザが起動したことを知ることができ、ユーザに機能が実行されていないと誤認されることを防ぐ効果がある。
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、電子機器の一態様としてインクジェット記録装置10を用い、その構成等は第1の実施形態と同様である。
【0093】
第1の実施形態では、起動モードを予め設定するか、ユーザの操作により選択出来る様にしていたが、第2の実施形態では、過去の起動時におけるユーザの使用状況から自動的に起動モードを選択して実行する点で異なっている。
【0094】
具体的には、過去に通信手段50がホスト装置90と接続したことが検出されてから、インクジェット記録装置10がユーザの指示により動作するまでの時間をNVRAM104に保存しておき、保存された当該時間に基づいて起動モードの選択を行う。
【0095】
起動モードの選択は、保存された時間を閾値T1,T2,T3で判別することにより行う。閾値の数は3つに限るものではなく、起動モードの条件等に応じて適宜設定することが可能である。
【0096】
図6に、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置10の起動時の処理例のフローチャートを示す。
【0097】
ステップS21にて通信手段50がホスト装置90と接続したことが検出されると、ステップS22にてCPU電源が投入され、ステップS23にてboot処理が実行される。
【0098】
次に、ステップS24にてNVRAM104から、過去において通信手段50が接続してから印刷が開始されるまでに要した時間Tpを取得する。
【0099】
ステップS25にて時間Tpが閾値T1未満であった場合には、「通常」モードを選択し、ステップS26にてセンサ電源、ステップS27にて駆動系電源、ステップS28にて操作パネルに電力を供給する。過去におけるユーザの利用状況では、接続から動作までの時間が短いことから、直ちに印刷を実行できるように「通常」モードでの起動を実行する。
【0100】
ステップS29にて時間Tpが閾値T1以上であり、且つ、T2未満であった場合には、「操作パネルOFF」モードを選択し、ステップS30にてセンサ電源、ステップS31にて駆動系電源に電力を供給する。
【0101】
さらに、ステップS32にて時間Tpが閾値T2以上であり、且つ、T3未満である場合には、「低電力」モードであり、そのまま処理を終了する。時間Tpが閾値T3以上の場合には、実際に印刷が開始されるまで長時間経過すると考えられるため、「電源OFF」モードが選択され、ステップS33にてCPU電源への電力供給が遮断される。
【0102】
閾値T1,T2,T3は、例えばそれぞれ5分、15分、30分等に設定することができる。また、NVRAM104から取得する時間Tpは、前回起動時における時間であっても良く、過去の全ての起動時における通信手段50の接続から動作までの時間の平均値を用いることもできる。
【0103】
以上の様に、第2の実施形態では、過去の起動時における、通信手段50が外部機器であるホスト装置90と接続したことが検出されてから、電子機器であるインクジェット記録装置10が印刷動作を開始するまで、に要した時間に基づいて起動モードを選択する。ユーザの利用状況に応じた起動モードを自動的に設定することができ、且つ、必要以上の電力消費を防止することが可能になる。
[第2の実施形態の変形例]
図8に、第2の実施形態の変形例に係る起動時の処理例のフローチャートを示す。
【0104】
ステップS61にて通信手段50がホスト装置90と接続したことが検出手段により検出されると、ステップS62にてCPU電源に電力が供給され、ステップS63にてboot処理が行われる。
【0105】
次に、ステップS64にてセンサ電源、ステップS65にて駆動系電源、ステップS66にて操作パネルのそれぞれに電力を供給し、一度「通常」モードでの起動を行う。
【0106】
その後、ステップS67にて、NVRAM104に保存された過去における接続から動作までに要した時間Tpを取得する。
【0107】
ステップS68にて、時間Tpが閾値T1以上である場合には、「低電力」モードに設定し、ステップS69にて操作パネル、ステップS70にて駆動系電源、ステップS71にてセンサ電源への電力供給が遮断される。
【0108】
ステップS72にて時間Tpが閾値T1未満であり、且つ、T2以上である場合には、「操作パネルOFF」モードに設定され、ステップS73にて操作パネル電源がOFFにされる。
【0109】
ステップS72にて時間Tpが閾値T2未満である場合には、「通常」モードに設定され、そのまま処理を終了する。
【0110】
閾値T1,T2は、例えばそれぞれ15分、5分といった値に設定できる。
【0111】
各モードでの起動が終了するまでに一度起動することで、操作パネル117に電力が供給される間等にユーザが起動したことを知ることができ、ユーザに機能が実行されていないと誤認されることを防ぐ効果がある。
【0112】
また、本発明に係る電子機器及び電子機器の電力制御方法は、コンピュータにより実行可能なプログラムにより実現することができ、プログラムを記録した記録媒体をコンピュータにより読み取らせて実現することも可能である。
<まとめ>
以上説明した様に、本発明に係る実施形態によれば、複数の機器に対する電力供給対象が異なる複数の起動モードを有し、通信手段50がホスト装置90と接続したことを検出して起動する際に、設定された起動モードに基づいて電力の供給を行うことで、ユーザの利便性を損なうことなく、且つ、必要以上の電力消費を防止することができる。
【0113】
また、過去の起動時におけるユーザの使用状況に応じて、起動モードを適宜自動的に選択して実行することにより、ユーザが操作する手間を省くことができ、且つ、最適な起動モードにより電力の消費量を低減することが可能になる。
【0114】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0115】
10 インクジェット記録装置(電子機器)
16 リニアエンコーダ
17 ホイールエンコーダ
33 搬送ベルト
34 帯電ローラ
50 通信手段
52 記録媒体
90 ホスト装置(外部機器)
101 CPU
106 ホストI/F(検出手段、電力供給制御手段)
108 ヘッドドライバ
110 主走査モータ
112 副走査モータ
117 操作パネル(操作部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【特許文献1】特開2009−220334号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器を備え、
外部機器に接続してデータ通信を行うと共に電力の供給を受ける通信手段と、
前記通信手段による前記外部機器との接続を検出する検出手段と、
前記複数の機器への電力供給の制御を行う電力供給制御手段と、
前記電力供給制御手段が前記複数の機器に対して電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードと、
を有する電子機器であって、
前記通信手段が前記外部機器と接続したことを前記検出手段が検出した時に、
前記複数の起動モードの中から選択された起動モードに基づいて、前記電力供給制御手段が前記複数の機器への電力供給の制御を行う
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
過去の起動時における、前記通信手段が前記外部機器と接続したことが検出されてから、前記電子機器がユーザの指示により動作するまで、に要した時間に基づいて、前記起動モードが選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
ユーザが操作を行う操作部を有し、
前記操作部において前記起動モードが選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
複数の機器を備え、
外部機器に接続してデータ通信を行うと共に電力の供給を受ける通信手段と、
前記通信手段による前記外部機器との接続を検出する検出手段と、
前記複数の機器への電力供給の制御を行う電力供給制御手段と、
前記電力供給制御手段が前記複数の機器に対して電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードと、
を有する電子機器の電力制御方法であって、
前記通信手段が前記外部機器と接続したことを前記検出手段が検出した時に、
前記複数の起動モードの中から選択された起動モードに基づいて、前記電力供給制御手段が前記複数の機器への電力供給の制御を行う
ことを特徴とする電子機器の電力制御方法。
【請求項5】
複数の機器を備え、
外部機器に接続してデータ通信を行うと共に電力の供給を受ける通信手段と、
前記通信手段による前記外部機器との接続を検出する検出手段と、
前記複数の機器への電力供給の制御を行う電力供給制御手段と、
前記電力供給制御手段が前記複数の機器に対して電力供給を行う対象が異なる複数の起動モードと、
を有する電子機器のコンピュータに、
前記通信手段が前記外部機器と接続したことを前記検出手段が検出した時に、
前記複数の起動モードの中から選択された起動モードに基づいて、前記電力供給制御手段による前記複数の機器への電力供給の制御を実行させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240264(P2012−240264A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111101(P2011−111101)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】