説明

電子機器、電池パックおよび通信システムならびに通信方法

【課題】認証信号の内容を外部からハッキングされないようにする。
【解決手段】電子機器1と電池パック2との間で、SMBus3のクロックライン3aおよびデータライン3bを使用して通常通信が行われる。さらに、電子機器1と電池パック2との間で、認証準備通信と認証信号通信とからなる認証通信が行われる。通常通信および認証準備通信は、クロックライン3aおよびデータライン3bを使用して行われる。認証信号通信は、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方が選択され、選択されたラインを使用して行われる。認証信号通信で送受信される認証信号は、SMBusの電気的仕様とは異なるオリジナルの電気的仕様に基づいて生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、例えば、電子機器と二次電池との間でなされる認証に対して適用される電子機器、電池パックおよび通信システムならびに通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの電子機器に対して、電源として充電可能な二次電池が装着される。近年は、電気自動車やハイブリッドカーなどに対しても二次電池が装着されており、二次電池の需要が増加している。
【0003】
二次電池の需要の増加に伴い、二次電池の模造品が出回るようになってきた。二次電池の模造品は正規品に比べて品質が劣悪であることが多く、安全性、信頼性に欠ける。例えば、二次電池の模造品が電気自動車に使用されると、模造品は残容量の計測の精度を欠くことから、残容量が50%から10%にジャンプして電気自動車が停止してしまうおそれもある。このように、二次電池の模造品を電子機器等に装着して使用すると、電子機器等の本体に悪影響を与えるおそれがある。
【0004】
二次電池の模造品対策のため、電子機器と二次電池との間で認証を行い、認証の結果、正規品の二次電池と判断された場合に、二次電池の使用を許可することが行われている。例えば、図10乃至図12に模式的に示すような認証システムや下記特許文献1に記載されている認証システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−197706号公報
【0006】
図10および図11に示す認証システムでは、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器のMPU(Micro Processing Unit)と二次電池のマイクロコンピュータ(以下、適宜BMU(Battery Management Unit)と称する)とが、SMBus(System Management Bus)(登録商標)により接続されている。さらに、電子機器と二次電池とが認証用のラインにより接続されている。認証用のラインを使用して、認証信号の送受信が行われる。
【0007】
図12に示す認証システムでは、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器のMPUと二次電池のマイクロコンピュータとが、SMBusにより接続されている。SMBusを使用して、SMBus規格に基づく信号により認証通信が行われる。特許文献1に記載の認証システムでは、SMBusのクロックラインを使用してダミークロック信号を伝送しながら、データラインを使用して認証信号を伝送することで認証通信が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10および図11に示す認証システムでは認証用のラインを設けるため、ラインや接続端子の増加によりコスト面において不利になる問題がある。さらに、図12および特許文献1に記載の認証システムでは、SMBus規格に基づく信号により認証を行う。このため、SMBus規格に対応するバスモニタ等により、認証信号がハッキングされてしまうおそれがある。さらに、特許文献1に記載の認証システムは、SMBusのデータラインを常に使用して認証を行うため、データラインのみを監視することで認証信号を容易にハッキングされてしまう問題がある。
【0009】
したがって、本願開示は、外部から認証信号をハッキングすることが困難である電子機器、電池パックおよび通信システムならびに通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本願開示の電子機器は、電池パックと双方向通信路を介して接続され、
電池パックとの間で、双方向通信路を介して通常通信および認証通信を行い、
双方向通信路は、複数のラインからなり、
認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
通常通信および認証準備通信を、複数のラインを使用して行い、
複数のラインのうち一のラインを選択し、認証信号通信を選択したラインを使用して行う電子機器である。
【0011】
本願開示の電池パックは、電子機器と双方向通信路を介して接続され、
電子機器との間で、双方向通信路を介して通常通信および認証通信を行い、
双方向通信路は、複数のラインからなり、
認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
通常通信および認証準備通信を、複数のラインを使用して行い、
複数のラインのうち一のラインを選択し、認証信号通信を選択したラインを使用して行う電池パックである。
【0012】
本願開示の通信システムは、電子機器と電池パックとが双方向通信路を介して接続され、
電子機器と電池パックとの間で、双方向通信路を介して通常通信および認証通信が行われ、
双方向通信路は、複数のラインからなり、
認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
通常通信および認証準備通信は、複数のラインを使用して行われ、
認証信号通信は、複数のラインのうち、選択された一のラインを使用して行われる通信システムである。
【0013】
本願開示の通信方法は、電子機器と電池パックとが双方向通信路を介して接続され、
電子機器と電池パックとの間で、双方向通信路を介して通常通信および認証通信が行われ、
双方向通信路は、複数のラインからなり、
認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
通常通信および認証準備通信は、複数のラインを使用して行われ、
認証信号通信は、複数のラインのうち、選択された一のラインを使用して行われる通信方法である。
【発明の効果】
【0014】
少なくとも一つの実施形態によれば、認証用のラインを設けることなく、電子機器と電池パックとの間で通信される認証信号がハッキングされることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態における通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】SMBusまたはオリジナルの電気的仕様に基づくそれぞれの信号の波形図である。
【図3】SMBusまたはオリジナルの電気的仕様に基づくそれぞれの信号の波形図である。
【図4】オリジナルの電気的仕様に基づく信号の具体例を示す波形図である。
【図5】通常通信の流れを示すシーケンス図である。
【図6】認証通信の流れを示すシーケンス図である。
【図7】認証通信のタイミングの一例を示す略線図である。
【図8】認証通信のタイミングの他の例を示す略線図である。
【図9】認証通信のタイミングの他の例を示す略線図である。
【図10】従来の認証システムの一例を示す略線図である。
【図11】従来の認証システムの他の例を示す略線図である。
【図12】従来の認証システムの他の例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、複数の実施形態および変形例について図面を参照しながら説明する。説明は以下の順序で行う。
<一実施形態>
<変形例>
なお、以下に説明する実施形態等は好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、以下の説明において、明示的に限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態等に限定されないものとする。
【0017】
<一実施形態>
1.通信システムの概要
図1に、一実施形態における通信システムの構成を示す。一実施形態における通信システムは、電子機器1および電池パック2からなる。電子機器1に対して電池パック2が着脱可能とされる。電子機器1は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯端末、充電装置等である。電池パック2は、例えば、充放電可能なリチウムイオン電池を有している。電池パック2の形状は、矩形や円筒形などとされる。
【0018】
電池パック2の+側端子および−側端子が電子機器1と接続されることで、電子機器1に対して電源が供給される。さらに、電子機器1および電池パック2は、複数のラインからなる双方向通信路により接続される。例えば、電子機器1および電池パック2が、2ライン(2線式)のSMBus3により接続される。SMBus3は、クロックライン3aおよびデータライン3bの2ラインで構成される。
【0019】
SMBus3を使用して信号の送受信がなされ、電子機器1と電池パック2との間で通信がなされる。電子機器1と電池パック2との間では、例えば、SMBusプロトコル基づく通信がなされる。SMBusプロトコルに基づく通信で伝送される信号のローやハイのレベル等がSMBusの電気的仕様として規定されている。
【0020】
本願開示では、電子機器1と電池パック2との間で、後述するオリジナルプロトコル基づく通信がなされる。オリジナルプロトコルに基づく通信で伝送される信号のローやハイのレベル等がオリジナルの電気的仕様として規定されている。
【0021】
2.電子機器の通信部の構成
図1では、電子機器1の通信部の構成が示されている。図示する構成以外に、電子機器1の機能に応じて種々の構成を採ることができる。電子機器1の通信部は、MPU10、認証IC(Integrated Circuit)11、SMBusプロトコル部12、オリジナルプロトコル部13および通信インターフェース14を備える。
【0022】
MPU10は、例えば、マイクロコンピュータからなり、電子機器1の有する機能や、電子機器1と電池パック2と間でなされる通信処理を制御する。さらに、MPU10は、
オリジナルプロトコルに基づく通信の際に、通信に使用するクロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方を選択する。例えば、MPU10の制御によって、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方がランダムに選択される。
【0023】
認証IC11は、MPU10によって制御されるICである。認証IC11は、認証通信の際に機能し、例えば、信号生成回路および比較回路(図示は省略している)を含む構成とされる。認証IC11により、例えば、認証コマンドが生成される。
【0024】
認証IC11によって生成された信号が、SMBusプロトコル部12またはオリジナルプロトコル部13に対して供給される。さらに、電池パック2から電子機器1に対して供給された認証信号が認証IC11の比較回路により所定の信号と比較される。比較結果に応じて電池パック2が正規品であるか否かの判定がなされる。判定の結果がMPU10に対して供給される。
【0025】
SMBusプロトコル部12は、MPU10や認証IC11から供給される「1」または「0」のデータ信号をSMBusの電気的仕様に基づく信号に変換する。ここで、「1」または「0」は、論理的な「1」または「0」を意味する。さらに、SMBusプロトコル部12は、電池パック2からのSMBusの電気的仕様に基づく信号より「1」または「0」を識別する。SMBusプロトコル部12により識別された「1」または「0」のビット列がMPU10または認証IC11に対して供給される。
【0026】
オリジナルプロトコル部13は、認証IC11から供給されるデータ信号をオリジナルの電気的仕様に基づく信号に変換する。さらに、オリジナルプロトコル部13は、電池パック2からの、オリジナルの電気的仕様に基づく信号より「1」または「0」を識別する。オリジナルプロトコル部13により識別された「1」または「0」のビット列が認証IC11に対して供給される。
【0027】
通信インターフェース14は、SMBus3のクロックライン3aおよびデータライン3bを接続するためのコネクタを有する。通信インターフェース14はMPU10により制御される。MPU10の制御により、通信に使用するラインが選択される。例えば、SMBusプロトコルに基づく通信の際には、クロックライン3aおよびデータライン3bが、通信に使用するラインとして選択される。オリジナルプロトコルに基づく通信の際には、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方が、通信に使用するラインとして選択される。
【0028】
3.電池パックの構成
電池パック2は、BMU20、認証IC21、SMBusプロトコル部22、オリジナルプロトコル部23、通信インターフェース24、セル25、電流検出抵抗26、充電制御用のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)27、放電制御用のMOSFET28を備える。
【0029】
BMU20は、例えば、マイクロコンピュータからなり、電池パック2の各部を制御する。例えば、セル25の端子間電圧を測定する電圧測定機能、電流検出抵抗26により電流を検出する電流検出機能、サーミスタ等の温度検出素子(図示は省略している)により電池温度を測定する温度検出機能等を有する。各機能により測定された電圧、電流、温度等の情報は、SMBusプロトコルに基づく通信により電子機器1に対して送信されてもよい。
【0030】
さらに、BMU20は、電池パック2を保護する保護機能を有する。保護機能には、過充電保護、過放電保護および過電流保護の3つの機能がある。これらの機能を簡単に説明する。
【0031】
過充電保護機能について説明する。BMU20は、セル25の端子間の電圧を監視し、セル25の電池電圧が所定値以上になった場合に、充電制御用MOSFET27をオフする。充電制御用MOSFET27をオフすることで充電電流が遮断される。この機能が過充電保護機能である。
【0032】
過放電保護機能について説明する。BMU20がセル25の端子間の電圧を監視し、電池電圧が例えば1.5V〜2V以下の過放電状態となった場合に放電制御用MOSFET28をオフする。放電制御用MOSFET28をオフすることで、放電電流が遮断される。この機能が過放電保護機能である。
【0033】
過電流保護機能について説明する。電池の+−端子間が短絡された場合には大電流が流れてしまい、異常発熱するおそれがある。そこで、BMU20は、電流検出抵抗26により電流を検出し、放電電流がある電流値以上流れた場合は放電制御用MOSFET28をオフする。放電制御用MOSFET28をオフすることで放電電流が遮断される。この機能が過電流保護機能である。
【0034】
さらに、BMU20は、オリジナルプロトコルに基づく通信の際に、通信に使用するクロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方を選択する。例えば、BMU20の制御によって、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方がランダムに選択される。
【0035】
認証IC21は、BMU20によって制御されるICである。認証IC21は、認証通信の際に機能し、例えば、信号生成回路および比較回路を含む構成とされる。認証IC21により、例えば、認証データが生成される。認証IC21によって生成された信号が、SMBusプロトコル部22またはオリジナルプロトコル部23に対して供給される。
【0036】
SMBusプロトコル部22は、BMU20や認証IC21から供給されるデータ信号をSMBusの電気的仕様に基づく信号に変換する。さらに、SMBusプロトコル部22は、電子機器1からのSMBusの電気的仕様に基づく信号より「1」または「0」を識別する。SMBusプロトコル部22により識別された「1」または「0」のビット列がBMU20または認証IC21に対して供給される。
【0037】
オリジナルプロトコル部23は、認証IC21から供給されるデータ信号をオリジナルの電気的仕様に基づく信号に変換する。さらに、オリジナルプロトコル部23は、電子機器1からの、オリジナルの電気的仕様に基づく信号より「1」または「0」を識別する。オリジナルプロトコル部23により識別された「1」または「0」のビット列が認証IC21に対して供給される。
【0038】
通信インターフェース24は、SMBus3のクロックライン3aおよびデータライン3bを接続するためのコネクタを有する。通信インターフェース24はBMU20により制御される。BMU20の制御により、通信に使用するラインが設定される。例えば、SMBusプロトコルに基づく通信の際には、クロックライン3aおよびデータライン3bが、通信に使用するラインとして設定される。オリジナルプロトコルに基づく通信の際には、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方が、通信に使用するラインとして設定される。
【0039】
4.SMBusについて
SMBusについて説明する。SMBusは、電池の規格団体であるSBS−IFにより規格化されたインターフェースであり、I2Cバスがベースとなっている。SMBusは、電気的仕様を含む物理仕様と通信プロトコルとが規定されている。SMBusの物理仕様は、クロックライン(SCL)とデータライン(SDA)の2線式のマルチマスタ対応の双方向バスである。SMBusを介して伝送される信号の電気的仕様のうち、DC(Direct Current)特性を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、電気的仕様のうち、例えば、信号のローレベルVILが−0.5Vから0.8Vの範囲とされる。信号のハイレベルVIHが2.1Vから5.5Vの範囲とされる。この他に、リーク電流ILEAKやプルアップ電流IPULLUP等の値が規定されている。表1に示す規格から外れた信号は、SMBusによる通信には対応せず、SMBus対応のバスモニタ等では検知できない。もしくは、ノイズとして識別される。
【0042】
SMBusを介して伝送される信号の電気的仕様のうち、AC(Alternating Current)特性を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示すように、例えば、スタートコンディションからストップコンディションまでの間でバスフリーを許可される時間(バス解放時間)であるTBUFは、4.7μsとされる。ローレベルの信号を検知する時間TLOWは、4.7μsとされ、ハイレベルの信号を検知する時間THIGHは、4.0μsとされる。タイムアウト時間TTIMEOUTは、35msとされる。この他にも、例えば、最大および最小クロック周波数FSMB、クロックとデータの立下り時間TF、クロックとデータの立上がり時間TR等が規定されている。表2に示す規格を外れた信号は、SMBusによる通信には対応せず、SMBus対応のバスモニタ等では検知できない。もしくは、ノイズとして識別される。
【0045】
SMBusの通信プロトコルは、9種類のプロトコルが規定されている。9種類のプロトコルの中で、おもにリード・ワード、ライト・ワード、ブロック・リードの3種類が使用されている。
【0046】
SMBusの通信プロトコルでは、送信するデータごとにスタートコンディションおよびストップコンディションが付加される。スタートコンディションは、クロックラインがハイレベルであるときに、データラインをローレベルに立ち下げることによって発生する。ストップコンディションは、クロックラインがハイレベルであるときに、データラインをハイレベルに立ち上げることにより発生する。データは、1バイト(Byte)(8ビット)単位で送受信される。
【0047】
なお、上述したようなSMBusの通信プロトコルおよび物理仕様(電気的仕様を含む)に従ってなされる通信を、SMBusプロトコルに基づく通信と称する。
【0048】
SMBusプロトコルに基づく通信により、電子機器1と電池パック2との間で通常通信や認証準備通信が行われる。例えば、電子機器1から電池パック2に対して、充電電流の指示、充電電圧の指示、残容量の送信要求が通常通信により送信される。電子機器1から電池パック2に対して、認証を開始する旨の認証開始コマンドなどが認証準備通信により送信される。
【0049】
電池パック2から電子機器1に対しては、例えば、電池パック2の残容量やセル26の温度の通知が通常通信により送信される。電池パック2から電子機器1に対して、認証準備が完了した旨の応答が認証準備通信により送信される。
【0050】
5.オリジナルプロトコルについて
ところで、従来の認証システムではSMBusプロトコルに基づく通信により認証を行っていた。このため、SMBusに対応したバスモニタによれば容易に認証通信の内容をハッキングされてしまうおそれがあった。そこで、本願開示では、認証通信を行う際に、オリジナルプロトコルに基づく通信を行う。オリジナルについての通信プロトコルおよび電気的仕様含む物理仕様が設定される。
【0051】
オリジナルの物理仕様は、複数のラインの中のうち、選択された1ラインに対して適用される。例えば、電子機器1と電池パック2とが、クロックラインおよびデータラインとからなるSMBusで接続されている場合は、クロックラインおよびデータラインのいずれか一方のラインが選択される。オリジナルプロトコルに基づく通信では、同期のためのクロック信号が使用されない。すなわち、オリジナルプロトコルに基づく通信は、1ライン非同期で行われる。
【0052】
オリジナルの電気的仕様(DC特性およびAC特性)の一例を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
オリジナルの電気的仕様は、表1および表2に示したSMBusの電気的仕様を外れたものとされる。信号のローレベルVILについて、SMBusの電気的仕様では、VILが−0.5Vから0.8Vまでの範囲と規定されている。これに対してオリジナルの電気的仕様では、VILが例えば、0.9Vから1.2Vまでの範囲に設定される。
【0055】
信号のハイレベルVIHについて、SMBusの電気的仕様では、VIHが2.1Vから5.5Vまでの範囲として規定されている。これに対してオリジナルの電気的仕様では、VIHが例えば、5.6Vから7.0Vまでの範囲に設定される。TBUFについて、SMBusの電気的仕様では、TBUFが4.7μsと規定されている。これに対してオリジナルの電気的仕様では、TBUFが例えば、5.7μsに設定される。
【0056】
ローレベルの信号を検知する時間TLOWについて、SMBusの電気的仕様では、TLOWが4.7μsと規定されている。これに対してオリジナルの電気的仕様では、TLOWが例えば、3.7μsに設定される。ハイレベルの信号を検知する最大時間THIGHについて、SMBusの電気的仕様では、THIGHが4.0μsと規定されている。これに対してオリジナルの電気的仕様では、THIGHが例えば、3.0μsに設定される。
【0057】
なお、表3に示すオリジナルの電気的仕様は一例であり、これに限定されることはない。SMBusの電気的仕様と異なる数値や範囲でオリジナルの電気的仕様を適宜設定できる。例えば、オリジナルの電気的仕様におけるハイレベルを、SMBusの電気的仕様のハイレベルより小さいレベル(例えば、1.8V)としてもよい。表3に示したパラメータ以外のパラメータについても、オリジナルの電気的仕様を適宜設定できる。
【0058】
オリジナルの通信プロトコルは、適宜設定可能である。例えば、1バイト単位でデータの送受信がなされる。送信するデータ1バイト毎にスタートビットおよびストップビットが付けられる。スタートビットに続いて1バイトのデータ信号が伝送され、最後にストップビットが送信される。受信側では、スタートビットを受けるとデータの受信が開始され、ストップビットを受けるとデータの受信が解除される。
【0059】
なお、上述したようなオリジナルの通信プロトコルおよび物理仕様(電気的仕様を含む)に従ってなされる通信を、オリジナルプロトコルに基づく通信と称する。
【0060】
電池パック2が正規品である場合は、電子機器1および電池パック2は、オリジナルの通信プロトコルおよび物理仕様に対応することができる。したがって、電子機器1と電池パック2との間では、オリジナルプロトコルに基づく通信が行うことができる。一方、電池パック2が模造品である場合は、電池パック2は、オリジナルの物理仕様等に対応することができない。したがって、例えば、電子機器1からオリジナルプロトコルに基づく通信により信号が送信されても、電池パック2は、送信された信号を意味ある信号として識別できない。
【0061】
図2は、SMBusの電気的仕様に基づく信号とオリジナルの電気的仕様に基づく信号とを対比して示したものである。図2では、両信号の電圧レベルを対比して示している。図2Aは、SMBusの電気的仕様に基づく信号を示し、図2Bは、オリジナルの電気的仕様に基づく信号を示す。オリジナルの電気的仕様に基づく信号のハイレベルは、例えば、SMBusの電気的仕様に基づく信号のハイレベルより大きくされる。また、オリジナルの電気的仕様に基づく信号のローレベルは、例えば、SMBusの電気的仕様に基づく信号のローレベルより小さくされる。
【0062】
オリジナルの電気的仕様に基づく信号は、SMBusの電気的仕様から外れている。このため、オリジナルの電気的仕様に基づく信号をSMBus対応のバスモニタで監視しても検知できない。バスモニタ等で検知したとしても、オリジナルの電気的仕様に基づく信号は、インラッシュ電流等のノイズとして観測される。
【0063】
図3は、SMBusの電気的仕様に基づく信号とオリジナルの電気的仕様に基づく信号とを対比して示したものである。図3では、両信号のタイムアウト時間を対比的に示している。図3Aは、SMBusの電気的仕様に基づく信号を示し、図3Bは、オリジナルの電気的仕様に基づく信号を示す。オリジナルの電気的仕様におけるタイムアウト時間は、例えば、SMBusの電気的仕様におけるタイムアウト時間より長くされる。
【0064】
例えば、SMBusの電気的仕様のタイムアウト時間(35ms)の間、ハイまたはローレベルが継続すると、リセット処理がなされバスが解放される。オリジナルの電気的仕様におけるタイムアウト時間を、SMBusの電気的仕様におけるタイムアウト時間より長くする。すると、ローレベルまたはハイレベルの期間がSMBusの電気的仕様のタイムアウト時間より長く継続する。したがって、オリジナルの電気的仕様に基づく信号は、SMBus対応のバスモニタ等で計測することができない。もしくは、ノイズ等の無意味な信号として識別される。
【0065】
図4は、オリジナルの電気的仕様に基づく信号の具体例である。例えば、後述する電子機器1から電池パック2へ送信される認証コマンドや、電池パック2から電子機器1へ送信される認証データは、図4に示すような1バイトを単位としている。電子機器1と電池パック2との間でなされる非同期通信では、1バイトごとにスタートビットおよびストップビットが付けられる。
【0066】
スタートビットは、例えば、以下の信号として定義される。SMBusプロトコルに基づく通信からオリジナルプロトコルに基づく通信に切り換わり、オリジナルプロトコルに基づく通信が開始される。通信が開始されると、信号のレベルが、SMBusの電気的仕様のハイレベルからオリジナルの電気的仕様のハイレベルへと切り換えられる。そして、オリジナルの電気的仕様のハイレベルとされた信号のレベルが、オリジナルの電気的仕様のローレベルとされる。この信号をスタートビットとする。
【0067】
ストップビットは、例えば、以下の信号として定義される。オリジナルプロトコルに基づく通信が終了した後に、信号のレベルがオリジナルの電気的仕様のハイレベルとされる。そして、オリジナルの電気的仕様のハイレベルとされた信号のレベルが、SMBusの電気的仕様のハイレベルとされる。この信号をストップビットとする。
【0068】
電池パック2は、例えば、スタートビットを発生した後に、電圧が0.9V〜1.2Vの範囲のローレベル信号と電圧が5.6V〜7.0Vの範囲のハイレベル信号とを生成して通信を行う。最後に、ストップビットを発生する。
【0069】
オリジナルの電気的仕様に基づく信号を検知する処理について説明する。ローレベルの信号を1ビット分認識するには、信号がローとなってからTLOW<Time<(TLOW×2)の期間、ローレベルの信号を検知する必要がある。また、ローレベルの信号をnビット分認識するには、信号がローとなってから(TLOW×n)<Time<(TLOW×(n+1))の期間、ローレベルの信号を検知する必要がある。TLOWは、例えば、5.7μsとされる。
【0070】
ハイレベルの信号を1ビット分認識するには、信号がハイとなってからTHIGH<Time<(THIGH×2)の期間、ハイレベルの信号を検知する必要がある。また、ハイの信号をnビット分認識するには、信号がハイとなってから(THIGH×n)<Time<(THIGH×(n+1))の期間、ハイレベルの信号を検知する必要がある。THIGHは、例えば、5.0μsとされる。
【0071】
例えば、図4に示すように「01000110(0x46)」の信号を生成する場合は、スタートビットに続くローレベルの信号の期間(t1)をTLOW<Time(t1)<(TLOW×2)を満たすように設定する。続くハイレベルの信号の期間(t2)をTHIGH<Time(t2)<(THIGH×2)を満たすように設定する。
【0072】
続くローレベルの信号の期間(t3)を(TLOW×3)<Time(t3)<(TLOW×4)を満たすように設定する。続くハイレベルの信号の期間(t4)を(THIGH×2)<Time(t4)<(THIGH×3)を満たすように設定する。続くローレベルの信号の期間(t5)をTLOW<Time(t5)<(TLOW×2)を満たすように設定する。このようにして、「01000110(0x46)」の信号を生成する。以上の処理は、例えば、オリジナルプロトコル部13やオリジナルプロトコル部23により実行される。
【0073】
受信側では、スタートビットに続くローベルの信号の期間(t1)がTLOW<Time(t1)<(TLOW×2)であることから1ビット(Bit7)を「0」と識別する。続くハイレベルの信号の期間(t2)がTHIGH<Time(t2)<(THIGH×2)であることから、1ビット(Bit6)を「1」と識別する。続くローレベルの信号の間(t3)が(TLOW×3)<Time(t3)<(TLOW×4)であることから、Bit5からBit3までの3ビットを「0」と識別する。
【0074】
続くハイレベルの信号の期間(t4)が(THIGH×2)<Time(t4)<(THIGH×3)であることから、Bit2およびBit1の2ビットを「1」と識別する。続くローレベルの信号の期間(t5)がTLOW<Time(t5)<(TLOW×2)であることからBit0を「0」と識別する。以上の識別処理は、例えば、オリジナルプロトコル部13やオリジナルプロトコル部23により実行される。
【0075】
6.通常通信の流れ
電子機器1と電池パック2との間でなされる通常通信について説明する。通常通信は、SMBusプロトコルに基づく通信により行われる。すなわち、SMBus3のクロックライン3aおよびデータライン3bが使用される。クロックライン3aでクロック信号を伝送しながら、データライン3bを使用してデータ信号が送受信される。データ信号は、SMBusプロトコルの電気的仕様に基づいて生成される。
【0076】
図5は、通常通信の処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図中のマスターデバイスが電子機器1であり、バッテリーパックは電池パック2である。ステップS1において、MPU10の制御によって、使用するプロトコルがSMBusプロトコルに設定される。MPU10は、2値のデータ信号である1バイト単位の指定コマンドを生成する。指定コマンドは、充電または放電の指示、セル25の残容量情報の送信要求、セル25の温度情報の送信要求などである。図5に示す例では、指定コマンドは、例えば、セル25の残容量情報の送信要求である。
【0077】
MPU10により生成された指定コマンドがSMBusプロトコル部12に供給される。SMBusプロトコル部12は、供給された指定コマンドをSMBusの電気的仕様に基づく信号に変換する。そして、処理がステップS2に進む。
【0078】
ステップS2において、SMBusの電気的仕様に変換された信号が、通信インターフェース14を介して電池パック2に送信される。始めに、MPU10の制御によって、クロックラインがハイレベルであるときに、データラインをローレベルに立ち下げることによってスタートコンディションが発生する。
【0079】
スタートコンディションに続いて、指定コマンドがデータラインにより送信される。データラインの「1」または「0」の状態は、クロックラインのクロック信号の立ち上がりでラッチされ、受信側である電池パック2において同期をとることができる。そして、処理がステップS3に進む。
【0080】
ステップS3において、電子機器1から送信された指定コマンドは、通信インターフェース24を介してSMBusプロトコル部22に供給される。SMBusプロトコル部22は、クロック信号に基づいて指定コマンドの「1」または「0」を識別し、2値のビット列からなる指定コマンドを生成する。
【0081】
生成された指定コマンドがBMU20に対して供給される。BMU20は、供給された指定コマンドに応じた処理を行う。この例では、電子機器1からセル25の残容量情報の送信要求がなされている。したがって、BMU20は、セル25の残容量情報を示す2値のデータ信号を生成する。そして、処理がステップS4に進む。
【0082】
BMU20によって生成されたデータ信号がSMBusプロトコル部22に供給される。SMBusプロトコル部22は、供給されたデータ信号をSMBusの電気的仕様に基づく信号に変換する。そして、処理がステップS5に進む。
【0083】
ステップS5において、SMBusの電気的仕様に変換されたデータ信号が、通信インターフェース24を介して電子機器1に送信される。例えば、1ビットのアクノリッジ信号に続いて、1バイト単位のデータ信号が送信される。そして、処理がステップS6に進む。
【0084】
ステップS6において、電池パック2から送信されたデータ信号は、通信インターフェース14を介してSMBusプロトコル部12に供給される。SMBusプロトコル部12は、クロック信号に基づいてデータ信号の「1」または「0」を識別し、2値のビット列を生成する。生成されたビット列がMPU10に対して供給される。
【0085】
通信のセッションが終了すると、MPU10の制御によってストップコンディションが発生する。ストップコンディションは、クロックラインがハイレベルのときにデータラインをハイレベルへ立ち上げることによって発生する。
【0086】
MPU10は、供給されたデータ信号に応じて処理を行う。例えば、セル25の残容量情報を示すデータ信号を使用して、電子機器1の有する表示部に残容量を表示する処理を行う。残容量が所定値以下の場合は、電池パック2に対して放電を禁止する指示を通常通信によって行ってもよい。
【0087】
7.認証通信の流れ
電子機器1と電池パック2との間でなされる認証通信について説明する。認証通信は、電子機器1と電池パック2との間で認証準備を確立する通信(認証準備通信)と、電子機器1と電池パック2との間で認証信号を送受信する通信(認証信号通信)とからなる。認証準備通信は、SMBusプロトコルに基づく通信により行われる。
【0088】
認証信号通信は、オリジナルプロトコルに基づく通信によりなされる。すなわち、データライン3aおよびクロックライン3bのいずれか一方のラインが選択される。選択されたラインを介して認証信号が送受信される。認証信号は、オリジナルの電気的仕様に適合するように生成される。例えば、認証信号としての認証コマンドが、電子機器1から電池パック2へ送信される。認証コマンドに応答して、認証信号としての認証データが、電池パック2から電子機器1へ送信される。
【0089】
図6は、認証通信の処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図中のマスターデバイスが電子機器1であり、バッテリーパックは電池パック2である。ステップS11からステップS16までの処理が認証準備通信である。ステップS17からステップS22までの通信が認証信号通信である。
【0090】
ステップS11において、MPU10の制御によって、使用するプロトコルがSMBusプロトコルに設定される。そして、MPU10は、認証を行う旨を示す認証開始コマンドを生成する。認証開始コマンドは、「1」または「0」からなる2値のデータ信号である。
【0091】
MPU10によって生成された認証開始コマンドがSMBusプロトコル部12に対して供給される。SMBusプロトコル部12は、供給された認証開始コマンドのデータ信号をSMBusの電気的仕様に基づく信号に変換する。そして、処理がステップS12に進む。
【0092】
ステップS12では、認証開始コマンドが、通信インターフェース14を介して電子機器1から電池パック2へ送信される。クロックライン3aを使用してクロック信号が送信され、データライン3bを使用して認証開始コマンドが送信される。送信された認証開始コマンドが通信インターフェース24で受信される。
【0093】
受信された認証開始コマンドがSMBusプロトコル部22に供給される。SMBusプロトコル部22は、クロック信号に基づくタイミングにより認証開始コマンドの「1」または「0」を識別する。そして、処理がステップS13に進む。
【0094】
ステップS13では、「1」または「0」が識別された認証開始コマンドがBMU20に供給される。BMU20は、供給された認証開始コマンドに応答して、認証準備が完了したことを示すアクノリッジ信号を生成する。アクノリッジ信号は、例えば、1ビットのデータとされる。そして、処理がステップS14に進む。
【0095】
ステップS14では、BMU20によって生成されたアクノリッジ信号がSMBusプロトコル部22に供給される。SMBusプロトコル部22は、供給されたアクノリッジ信号をSMBusの電気的仕様に基づく信号に変換する。そして、処理がステップS15に進む。
【0096】
ステップS15では、アクノリッジ信号が、通信インターフェース24を介して電池パック2から電子機器1へ送信される。クロックライン3aを使用してクロック信号が送信され、データライン3bを使用してアクノリッジ信号が送信される。送信されたアクノリッジ信号が通信インターフェース14で受信される。受信されたアクノリッジ信号がSMBusプロトコル部12に供給される。そして、処理がステップS16に進む。
【0097】
ステップS16において、SMBusプロトコル部12は、アクノリッジ信号をMPU10に供給する。アクノリッジ信号が供給されることで、MPU10は、認証通信を行う準備が完了したことを認識する。そして、処理がステップS17に進み、認証信号通信が行われる。
【0098】
ステップS17において、MPU10は、オリジナルプロトコルに基づく通信を行う。例えば、最初に認証コマンドの生成指示を認証IC11に対して行う。生成指示に応じて、認証IC11は、スタートビット、ストップビット、および、例えば1バイト単位のデータ信号からなる認証コマンドを生成する。生成された認証コマンドが、認証IC11からオリジナルプロトコル部13に供給される。オリジナルプロトコル部13は、供給された認証コマンドをオリジナルの電気的仕様に基づく信号へ変換する。
【0099】
さらに、ステップS17では、認証信号通信に使用されるラインがMPU10の制御によって選択される。例えば、MPU10の制御によって、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方のラインがランダムに選択される。ここでは、例えば、データライン3bが選択されたものとする。そして、処理がステップS18に進む。
【0100】
ステップS18では、通信インターフェース14を介して、オリジナルの電気的仕様に変換された認証コマンドが電池パック2に送信される。はじめに、MPU10によって選択されたデータライン3bを使用して、スタートビットが送信される。続いて、1バイト単位のデータ信号が送信される。最後に、ストップビットが送信される。
【0101】
送信された認証コマンドが通信インターフェース24により受信される。受信された認証コマンドがオリジナルプロトコル部23に供給される。オリジナルプロトコル部23は、認証コマンドのデータの「1」または「0」を識別する。そして、処理がステップS19に進む。
【0102】
ステップS19において、オリジナルプロトコル部23は、「1」または「0」のビット列を識別した認証コマンドを認証IC21に供給する。認証IC21は、供給された認証コマンドをBMU20に供給する。
【0103】
認証コマンドが供給されると、BMU20は、オリジナルプロトコルに基づく通信を行う。例えば、認証IC21に対して認証データの生成を指示する。生成指示に応じて、認証IC21は、例えば、スタートビット、ストップビット、および、1バイト単位のデータ信号からなる認証データを生成する。
【0104】
さらに、ステップS19では、認証信号通信に使用されるラインがBMU20の制御によって選択される。例えば、BMU20の制御によって、クロックライン3aおよびデータライン3bのいずれか一方のラインがランダムに選択される。ここでは、例えば、データライン3bが選択されたものとする。そして、処理がステップS20に進む。
【0105】
ステップS20において、認証IC21により生成された認証データがオリジナルプロトコル部23に対して供給される。オリジナルプロトコル部23は、認証データをオリジナルの電気的仕様に基づく信号に変換する。そして、処理がステップS21に進む。
【0106】
ステップS21では、通信インターフェース24を介して、認証データが電子機器1に送信される。はじめに、BMU20によって選択されたデータライン3bを使用してスタートビットが送信される。続いて、1バイト単位のデータ信号が送信される。最後に、ストップビットが送信される。
【0107】
電池パック2から送信された認証データが電子機器1の通信インターフェース14により受信される。受信された認証データがオリジナルプロトコル部13に供給される。オリジナルプロトコル部13は、供給された認証データのビット列を識別する。識別されたビット列が認証IC11に供給される。
【0108】
認証IC11は、供給された認証データと、認証コマンドとを比較する。比較の結果、認証が成立する場合は、電池パック2が正規品であると判定する。認証が成立しない場合は、電池パック2が正規品でない(模造品)と判定する。認証IC11による判定結果がMPU10に供給される。
【0109】
MPU10は、認証IC11から供給される判定結果に応じた処理を実行する。例えば、電池パック2が正規品であれば、電池パック2の使用を許可する。電池パック2が模造品である場合は、電池パック2の使用を禁止して警告表示等の処理を実行する。
【0110】
なお、さらに相互認証がなされるようにしてもよい。例えば、ステップS22の後に、認証が成立した旨の信号が電子機器1から電池パック2に対して送信される。電池パック2は、オリジナルの電気的仕様に基づく認証コマンドを生成する。生成した認証コマンドを1ラインで電子機器1に対して送信する。
【0111】
電子機器1は、認証コマンドに応じた認証データをオリジナルの電気的仕様に基づいて生成する。生成された認証データを1ラインで電池パック2に送信する。電池パック2の認証IC21において比較処理がなされて認証が成立するか否かが判定されるようにしてもよい。認証が成立するか否かに応じて、電子機器1が正規品であるか否かが判定されるようにしてもよい。
【0112】
このように、認証コマンドや認証データなどの認証信号を、複数のラインのうち選択された1ラインで送受信する。したがって、認証信号の送受信に使用されるラインが特定されることを防止できる。既存の複数のラインから1ラインを選択して通信を行うため、認証用のラインを設ける必要もない。さらに、認証信号を通常通信で使用される信号と異なる電気的仕様に基づいて生成することで、認証信号をノイズのように見せることができる。したがって、認証信号の内容が特定されず、認証信号の内容がハッキングされることを防止できる。
【0113】
8.認証処理のタイミング
認証通信は、例えば、図7に示すように通常通信が行われる前に行われる。電子機器1に対して電池パック2が装着されると、最初に認証通信が行われ、電池パック2が正規品であるか否かの判別が行われる。電池パック2が正規品であると判別された後に通常通信が行われる。
【0114】
<変形例>
以上、一実施形態について具体的に説明したが、各種の変形が可能であることは言うまでもない。以下、変形例について説明する。
【0115】
例えば、図8に示すように通常通信のあとに認証通信がなされてもよい。認証通信の前になされる通常通信の内容は、電池パック2が充電を行わない内容とされる。例えば、電子機器1から電池パック2に対して送信される充電を禁止する制御や、電池パック2から送信される電子機器1へ送信される放電電流の情報を通知する内容とされる。通常通信のあとに認証通信を行うことで、認証信号を通常通信の際に生じたノイズと見せることができる。さらに、図9に示すように、通常通信を複数回行うようにしてもよい。
【0116】
上述した一実施形態では、電子機器1と電池パック2とが2ラインで接続された構成としたがこれに限られない。例えば、2ライン以上の複数のラインにより接続されてもよい。複数のラインから1ラインが選択されることで、認証通信に使用されるラインが特定されることを防止できる。
【0117】
上述した一実施形態において、認証IC11、SMBusプロトコル部12、オリジナルプロトコル部13が有する機能のうち、全てまたは一部の機能がMPU10によって実現されてもよい。認証IC21、SMBusプロトコル部22、オリジナルプロトコル部23が有する機能のうち、全てまたは一部の機能がBMU20によって構成されてもよい。
【0118】
上述した一実施形態では、選択される1ラインがデータライン3bとして説明したが、クロックライン3aが選択される1ラインとされてもよい。さらに、MPU10とBMU20とによって選択されるラインが異なるものとされてもよい。
【0119】
上述した一実施形態では、1ラインを使用して認証コマンドや認証データを送信する際には、他のラインには信号を伝送しないようにした。1ラインを使用して認証コマンドや認証データを送信する際に、他のラインを使用して信号を伝送してもよい。例えば、電子機器1がSMBusおよびオリジナルの電気的仕様を外れる信号を生成し、生成した信号を他のラインに伝送するようにしてもよい。
【0120】
認証準備通信が認証IC11や認証IC21を使用して行われてもよい。例えば、認証開始コマンドが認証IC11で生成されてもよく、アクノリッジ信号が認証IC21により生成されてもよい。さらに、認証準備通信を含む認証通信の全てがオリジナルプロトコルに基づく通信により行なわれるようにしてもよい。
【0121】
電子機器1は、ノート型のパーソナルコンピュータ等に限られない。例えば、車両と車両に搭載される二次電池として認証システムを構成することもできる。さらに、電子機器間で通常通信および認証通信を行う場合に対しても本願開示の技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1・・・・電子機器
2・・・・電池パック
3・・・・SMBus
3a・・・クロックライン
3b・・・データライン
10・・・MPU
20・・・BMU
11、21・・・認証IC
12、22・・・SMBusプロトコル部
13、23・・・オリジナルプロトコル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと双方向通信路を介して接続され、
前記電池パックとの間で、前記双方向通信路を介して通常通信および認証通信を行い、
前記双方向通信路は、複数のラインからなり、
前記認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
前記通常通信および前記認証準備通信を、前記複数のラインを使用して行い、
前記複数のラインのうち一のラインを選択し、前記認証信号通信を前記選択したラインを使用して行う電子機器。
【請求項2】
前記複数のラインのうち、一のラインをランダムに選択する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記通常通信および前記認証準備通信を行う信号と、前記認証信号通信を行う信号とが異なる電気的仕様に基づいて生成される請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電気的仕様は、信号のハイレベル、信号のローレベル、ハイレベルの信号の期間およびローレベルの信号の期間の少なくとも一つを規定する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電池パックとの間で前記通常通信が行われた後に、前記認証通信を行う請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
電子機器と双方向通信路を介して接続され、
前記電子機器との間で、前記双方向通信路を介して通常通信および認証通信を行い、
前記双方向通信路は、複数のラインからなり、
前記認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
前記通常通信および前記認証準備通信を、前記複数のラインを使用して行い、
前記複数のラインのうち一のラインを選択し、前記認証信号通信を前記選択したラインを使用して行う電池パック。
【請求項7】
前記複数のラインのうち、一のラインをランダムに選択する請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記通常通信および前記認証準備通信を行う信号と、前記認証信号通信を行う信号とが異なる電気的仕様に基づいて生成される請求項6または7に記載の電池パック。
【請求項9】
前記電気的仕様は、信号のハイレベル、信号のローレベル、ハイレベルの信号の期間およびローレベルの信号の期間の少なくとも一つを規定する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項10】
前記電子機器との間で前記通常通信が行われた後に、前記認証通信を行う請求項6乃至9のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項11】
電子機器と電池パックとが双方向通信路を介して接続され、
前記電子機器と前記電池パックとの間で、前記双方向通信路を介して通常通信および認証通信が行われ、
前記双方向通信路は、複数のラインからなり、
前記認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
前記通常通信および前記認証準備通信は、前記複数のラインを使用して行われ、
前記認証信号通信は、前記複数のラインのうち、選択された一のラインを使用して行われる通信システム。
【請求項12】
電子機器と電池パックとが双方向通信路を介して接続され、
前記電子機器と前記電池パックとの間で、前記双方向通信路を介して通常通信および認証通信が行われ、
前記双方向通信路は、複数のラインからなり、
前記認証通信は、認証準備通信と認証信号通信とからなり、
前記通常通信および前記認証準備通信は、前記複数のラインを使用して行われ、
前記認証信号通信は、前記複数のラインのうち、選択された一のラインを使用して行われる通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−104039(P2012−104039A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254014(P2010−254014)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】