説明

電子機器およびこれに用いる情報記録カード

【課題】電子機器のカードスロットの小型化に伴い、情報記録カードを取り出す操作が不便になること。
【解決手段】本発明の電子機器は、UIMカード301と、UIMカード301を受容して機器本体に電気接続および固定するカードスロット201とを有する。カードスロット201は、UIMカード301を所定の差込向きで差し込むことで、UIMカード301の装着が完了する形である。そしてカードスロット201は、UIMカード301を取り出す機能および器具を具備していない。さらにカードスロット201は、UIMカード301が装着完了された状態でUIMカード301の表側面の差込方向手前側を露出させる部分を有している。また、上記の部分から露出する、UIMカード301の表側面の差込方向手前の場所に、カード取り出しに用いるフィルム状の帯501の一端が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カード形の情報記録媒体として、SIM(Subscriber Identity Module)、UIM(User Identity Module)、放送用B−CASなどのICカード全般や、SDカード等のメモリカードが知られており、これらのカードは、電子機器に設けられたカードスロットに挿入されることで電子機器に電気的に接続および固定される場合が多い。
【0002】
例えば、UIMカードまたは、USIMカード(Universal Subscriber Identity Module Card)は、W−CDMA(UMTS)方式用の携帯電話機に用いられるICカードであり、電話番号を特定するための固有のID番号が記録されている。SIMカードと呼ばれることもあるが、これらのICカードを、以後「UIMカード」に統一して記載する。
【0003】
UIMカードには、電話番号などの個人情報が記録されているため、UIMカードを交換することで別の携帯電話機でも利用することができる。
【0004】
昨今の携帯電話機を複数台所持するユーザが増え、その日の気分や用途に合わせて、携帯電話機を使い分けている。そのため、頻繁にUIMカードの差し替えを行うユーザが増えている。
【0005】
このような情報記録カードをカードスロットに容易に挿抜する構成は、特許文献1ないし3等にも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−222170号公報
【特許文献2】実開平07−010900号公報(段落[0006]参照)
【特許文献3】特開2003−006603号公報(段落[0035]、[0043]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
携帯電話機に代表される携帯端末は近年、小型化が進み、これに伴い、各構成部品が小型化している。携帯電話機では、UIMカードが挿入されるカードスロットが小型化している。
【0008】
特許文献1では、UIMカードを取り出すトレイ等の補助器具が提案されているが、機器の小型化のために、上記のトレイや取り出し補助機能を機器内に設けることが出来なくなっている。
【0009】
そのため、UIMカードの取り出し操作が非常に不便になっている。
【0010】
また、取り出し操作の際に、小型化しているカードスロットの壁に余計な力を加えてしまったり、UIMカードの端子面を手で触って皮脂を付けてしまい、接触不良の原因にもなっていた。
【0011】
また特許文献2では、メモリカードの構造として「抜去用突出把握片」が開示されている。しかし、この抜去用突出把握片は、このメモリカード専用の読み出し機にのみに有効に機能するだけである。つまり、既存のメモリカード及びICカードや、これらの一般的な読み出し機に対して適用することは考慮されていない。
【0012】
また特許文献3は、特定の通信カードにおいて、その使用時にカードスロットからはみ出すアンテナ部分の強度に関する発明を開示し、アンテナ部分を利用して引き出すことが可能とされている。しかし、このカードは、特許文献3に記載されている特定のデバイスのみでの使用が前提とされており、既存のメモリカード及びICカードや、これらの一般的な読み出し機に対して適用することは考慮されていない。
【0013】
本発明の目的の一つは、上記従来技術の実情に鑑み、電子機器のカードスロットから情報記録カードを取り出す操作を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、情報記録カードと、該情報記録カードを受容して機器本体に電気接続および固定するカードスロットとを有する電子機器に係るものである。このカードスロットは、情報記録カードを所定の差込向きで差し込むことで、情報記録カードの装着が完了する形である。そして、上記カードスロットは、情報記録カードをロックする機能および排出する機能を具備していない。さらに上記カードスロットは、情報記録カードが装着完了された状態で情報記録カードの表側面の差込方向手前側を露出させる部分を有している。また、情報記録カードがカードスロットに装着完了したときに上記の部分から露出する、情報記録カードの表側面の差込方向手前の場所に、情報記録カードの取り出しに用いる帯の一端が固定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子機器のカードスロットから情報記録カードを取り出す操作を容易にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例による携帯電話機の構成要素を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施例による携帯電話機におけるUIMカードスロットの配置場所を示す図。
【図3】図2のUIMカードスロットに差し込むUIMカードを示す図。
【図4】図3のUIMカードを図2の携帯電話機のUIMカードスロットに差込んだイメージを示す図。
【図5】図3のUIMカードに取り付けるフィルム状の帯を示す図。
【図6】図3のUIMカードへの帯の取り付け場所を示す図。
【図7】フィルム状の帯が取り付けられたUIMカードを、携帯電話機のUIMカードスロットに差込んだ状態を示す図。
【図8】本発明の他の実施例として、クレジットカード状に製造された未使用の新規なUIMカードを示す図。
【図9】図8に示すクレジットカード状の未使用のUIMカードにフィルム状の帯を取り付けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、UIMカードと、これを受容して電気的に接続および固定するカードスロットを備えた携帯電話機を例にとって説明する。
【0018】
図1において、本発明の一実施例として携帯電話機の構成要素をブロック図で示す。本例の携帯電話機の制御部102は、表示部101、UIMスロット103、無線通信部104、送受話部105、キー操作部106、カメラ部107、および記憶部108と繋がっている。UIMスロット103は、UIMカードを受容して制御部102と電気的に接続および固定するカードスロットである。表示部101は、キー制御部106からの指示により、記憶部108に保存された各種データを表示する。無線通信部104は、制御部102を介して、UIMスロット103に挿入されているUIMカードの情報を利用し、ネットワークサーバ(図示せず)とのデータ通信を行う。送受話部105は、制御部102の制御により、音声通話機能を実現する。
【0019】
図2に、本実施例の携帯電話機におけるUIMカードスロットの配置場所を示す。電話機本体の裏側にバッテリ収納スペース203が凹状に形成されている。バッテリ収納スペース203を普段はバッテリカバー202で覆われる。バッテリカバー202は、電話機本体の裏側のバッテリ収納スペース203を囲む側壁に接合可能となっている。そのバッテリカバー202が接合する一部の側壁の上面にUIMカードスロット201の一部が見えるように開口し、UIMカードスロット201の残りの部分は電話機本体の内部へ隠れるように形成されている。電話機本体内に隠れたUIMカードスロット201の奥側部分の底面には、UIMカード読み取り端子204が配置されている。
【0020】
UIMカードの端子を有する面をUIMカードスロット201の底面に合わせるように、矢印205の方向にUIMカードを差込むことで、UIMカードスロット201は、カード装着完了状態となる。尚、UIMカードスロット201は、装着完了したUIMカードをロックする機能および、該スロットから排出させるためのイジェクト機能を具備しないものである。またUIMカードスロット201のUIMカードが差し込まれる空間の寸法は、UIMカード裏側面の端子部とUIMカードスロット201底面のUIMカード読み取り端子204とが圧接されるように設計されている。
【0021】
また、UIMカードスロット201のカード挿入口がバッテリ収納スペース203の側面に配置されているため、バッテリをバッテリ収納スペース203から外した状態でないと、UIMカードの抜き指しが出来ない構造になっている。バッテリカバー202は、矢印206の方向にて電話機本体の裏側に取り付けられる。
【0022】
図3に、図2のUIMカードスロット201に差し込むUIMカードを示す。図3(a)はUIMカードの表側面を、図3(b)はUIMカードの裏側面を示している。UIMカード301の表側面にはUIMカード端子部302が無いが、UIMカード301の裏側面にはUIMカード端子部302がある。UIMカード301は四角形のカードであるが、UIMカード301のカードスロットへの差込時に手前側(矢印304の方向)となる端部には、角が無い部分303(すなわち面取り部)がある。UIMカード301のカードスロットへの差込時に奥側(矢印305の方向)となる端部には、UIMカード端子部302がある構成になっている。
【0023】
図4に、前述したUIMカード301を携帯電話機のUIMカードスロット201に差込んだイメージを示す。UIMカード301の大部分は、機器本体内部のUIMカードスロット201内に隠れ、UIMカード301の差込方向の手前部分のみが露出した状態になる。この状態からUIMカード301を取り出すことは、携帯電話機の小型化に伴ってUIMカードスロットも小型になるほど非常に不便になる。また、UIMカード301の取り出し操作が不便になると、取り出し操作の際にカードスロットに余計な力が付与される。さらに、手で端子部を触って皮脂をつけてしまい接触不良の原因にもなる。
【0024】
そこで、以下に説明するように、UIMカード301にフィルム状の帯を取り付けて、UIMカードの取り出し操作を容易にする。
【0025】
図5に、本実施形態のUIMカード301に取り付けるフィルム状の帯を示す。図5(a)は帯の表側面を、図5(b)は帯の裏側面を示している。フィルム状の帯501の片端の裏側面には、粘着材502が塗布されており、UIMカードに貼り付けることが出来る。
【0026】
図6に、UIMカード301への帯501の取り付け場所(図中の斜線部)を示す。帯501のUIMカード301への取り付け場所601は、UIMカード301の差込方向手前部分の表側面になる。換言すれば、UIMカード301の差込方向手前部分であって、UIMカード端子部302が配設されていない側の面である。
【0027】
図6の取り付け場所601に、図5に示したフィルム状の帯501を取り付ける。このとき、帯501の、粘着材502を塗布した端部とは反対側端を、取り付け場所601からUIMカード301の差込方向手前側の方向へ延出させる。
【0028】
もしフィルム状の帯501をUIMカード301の指定外の場所に取り付けた場合、UIMカード自体が規格外の大きさになり、UIMカードスロット201に差込みが出来なくなる。また、指定外の場所に帯501が取り付けられたUIMカード301をUIMカードスロット201に無理に差込むと、UIMカード端子部302とUIMカード読み取り端子204とが接触不良を起こし、携帯電話機がリセットされる要因になる。
【0029】
よって、帯の取り付け場所601は、UIMカード端子部302が配置されたUIMカード301の裏面の領域に対向しているUIMカード301のおもて面側の領域から外れた位置に設定されている。UIMカードスロット201の奥側の、UIMカード読み取り端子204が配置されている空間(図2参照)は、UIMカード301の厚みを想定して設定されている。このため、上記のような帯の取り付け場所601にすることで、前記空間に差し込まれる部分のUIMカード301の厚みに何も影響を与えることなく、UIMカード端子部302とUIMカード読み取り端子204を接続することができる。
【0030】
図7に、UIMカード301にフィルム状の帯501を取り付けて、携帯電話機のUIMカードスロット201に差込んだ状態を示す。この状態では、フィルム状の帯501は、UIMカードスロット201に干渉しない位置になる。
【0031】
また、フィルム状の帯501の大きさは、携帯電話機の裏面側のバッテリ収納スペース203にバッテリ(不図示)を装着した状態でバッテリカバー202(図2参照)を閉じることを妨げない帯長さと帯幅と厚みになっている。
【0032】
帯501の粘着材502の粘着強度は、UIMカード301に取り付けられた帯501を手で掴んで、UIMカードスロット201からUIMカード301を引き抜いても、帯501がUIMカード301から外れない強度とする。図7に示される状態で、UIMカードスロット201からUIMカード301を引き抜く際、帯501とUIMカード301との接着面に対して、垂直に力が加わる。このため、特別に強力な粘着力は必要としない。
【0033】
本発明では、図7に代表して示されるように、UIMカードスロット201から露出しているUIMカード301の表側面に、フィルム状の帯501が取り付けられている。これにより、UIMカードスロット201からUIMカード301を取り外す際、フィルム状の帯501を掴んでUIMカード301を容易に引き抜くことが出来る。よって、UIMカードの取り出し操作が容易になる。
【0034】
また本発明によれば、UIMカードスロット201からUIMカード301を取り出す際、フィルム状の帯501を摘むことが出来るので、指に汗や油が付着していても、汗や油を拭き取らずにUIMカード301の取り外しを行うことが出来る。
【0035】
さらに、UIMカード301にフィルム状の帯501を取り付けておくことで、UIMカードスロット201から取り外されたUIMカード301を再びUIMカードスロット201に装着するときに装着向きの間違いを防止することも可能になる。
【0036】
(その他の実施例)
上記実施例では携帯電話機に使用している状態のUIMカード(図3参照)にフィルム状の帯501を後付けする場合の例を示した。しかし、未使用の新規のUIMカードの場合であってもフィルム状の帯501を装着することが可能である。
【0037】
未使用の新規のUIMカードは現在、図8に示すように、使用状態のUIMカードより大きい面積のクレジットカード形状で製造されている。携帯電話機のユーザはクレジットカードからUIMカード部分をくり貫いて使用する。このようなクレジットカードの状態で、図9に示すように、フィルム状の帯501をUIMカード301の部分における帯取り付け場所601に取り付けておくことも可能である。
【0038】
また、帯501の取り付け方法は接着剤を用いた貼り付け以外に、UIMカードを構成する樹脂材に樹脂フィルムの帯501を熱で圧着固定する方法をとっても良い。
【0039】
また、UIMカードスロット201にUIMカード301を差し込む際、UIMカードスロット201の奥側のUIMカード読み取り端子204が帯501の厚みを許容できるのであれば、UIMカード端子部302が配設されている側のUIMカード面に帯501を貼り付けても良い。
【0040】
加えて、未使用のUIMカードが将来、UIMカードサイズで製造されるようになった場合は一対の板状プラスチックの間にICを挟みこんで成形することが考えられる。このため、帯501の一端をUIMカードの端面より内部に埋め込むように取り付ける方法であってもよい。
【0041】
また上記実施例では、UIMカードをUIMカードスロット201から引き抜くときに指で掴むことができる部材としてフィルム状の帯501を示した。しかし、そのような作用が得られる部材であれば、当該部材はフィルム状の帯で無くてもよい。
【0042】
なお、上記実施例では、UIMカードと、これを受容して電気的に接続および固定するカードスロットを備えた携帯電話機を示した。しかし本発明は、上記の実施例に限らず、ICカード全般もしくはメモリカードのような情報記録カードと、これを受容して機器本体に電気的に接続および固定するカードスロットを備えた電子機器全般に適用できるものである。なお、SDカードは、カードスロットに挿入した場合にロックするための形状が施されているので、カードスロット側にロック機構がないことが、本発明の適用条件となる。
【符号の説明】
【0043】
101 表示部
102 制御部
103 UIMスロット
104 無線通信部
105 送受話部
106 キー操作部
107 カメラ部
108 記憶部
201 UIMカードスロット
202 バッテリカバー
203 バッテリ収納スペース
204 UIMカード読み取り端子
205 UIMカードの差込向き
206 バッテリカバーの装着向き
301 UIMカード
302 UIMカード端子部
303 角が無い部分
304 UIMカードの差込方向手前側
305 UIMカードの差込方向奥側
501 フィルム状の帯
502 粘着材
601 UIMカードにおける帯取り付け場所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録カードと、該情報記録カードを受容して機器本体に電気接続および固定するカードスロットとを有する電子機器であって、
前記カードスロットは、前記情報記録カードを所定の差込向きで差し込むことで、前記情報記録カードの装着が完了する形であり、装着完了した前記情報記録カードをロックする機能および排出する機能を具備しておらず、かつ、前記情報記録カードが前記カードスロットに装着完了された状態で前記情報記録カードの表側面の差込方向手前側を露出させる部分を有し、
前記部分から露出する前記情報記録カードの表側面の差込方向手前の場所に、前記情報記録カードの取り出しに用いる帯の一端が固定されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記帯は、前記場所から前記情報記録カードの差込方向手前側の方向へ延出していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記情報記録カードは、前記情報記録カードの差込方向奥側の位置で前記表側面とは反対の裏側面に端子部を有しており、
前記帯の一端は、前記裏側面の前記端子部に対向している前記表側面の領域から外れた位置に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記情報記録カードは、ICカード全般もしくはメモリカードであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子機器は携帯電話機であって、前記情報記録カードはUIMカードであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器に使用される情報記録カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−147309(P2012−147309A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4890(P2011−4890)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】