説明

電子機器およびコンピュータプログラム

【課題】
電子機器の表示画面上において、指示位置の決定と当該位置の確定操作をよりスムーズに行い、操作上の煩わしさを軽減できるようにする。
【解決手段】
本発明は、その面内にて多方向の操作を可能とする多方向スイッチ部材と、その多方向スイッチ部材の操作に基づく処理を制御する制御部150とを備える電子機器であって、その多方向スイッチ部材に、その面内の多方向において表裏方向に押圧操作可能な1または2以上の多方向キーと、多方向キーからの押圧操作を検知するための印刷回路基板とを備え、制御部150に、多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段151を備える電子機器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器およびコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、モバイルPC等の小型の電子機器の多くは、単なる電話や電子メールの送受信といった機能のみならず、様々な機能を併せ持つ。例えば、地図データ上で現在地と目的地との間をスムーズに移動できるようにするためのナビゲーション機能を備える電子機器や、搭載された小型カメラで写真を撮影する機能を備える電子機器などが知られている。かかる機能を実行する際、地図上で目的地を設定し、あるいは撮影した多くの写真から所望の写真を選択する際に、表示画面上にてカーソルを移動することが多い。このような操作に適した電子機器として、例えば、中央の確定キーとその周囲の選択スイッチとから成るボタンキーを具備し、その周囲の選択スイッチを押圧操作させてカーソルを移動した後に確定キーを押圧操作することによりカーソルの位置を確定できる携帯電話機が知られている(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−309752(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の電子機器には、次のような問題がある。それは、周囲の選択スイッチを操作後に中央の確定キーを押す際に、同時に周囲の選択スイッチにも触れる可能性が高く、それによって、折角決めたカーソルの位置がずれてしまうという問題である。特に、周囲の選択スイッチの高さに比べて中央の確定キーの高さが同等若しくは若干、下方にへこんでいるような場合には、かかる問題が生じやすい。このように、カーソルの位置が操作者の意思に反して移動すると、操作者は、再度、カーソルの位置決めをせざるを得ず、操作上の煩わしさを感じることが多い。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、電子機器の表示画面上において、指示位置の決定と当該位置の確定操作をよりスムーズに行い、操作上の煩わしさを軽減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、その面内にて多方向の操作を可能とする多方向スイッチ部材と、その多方向スイッチ部材の操作に基づく処理を制御する制御部とを備える電子機器であって、その多方向スイッチ部材に、その面内の多方向において表裏方向に押圧操作可能な1または2以上の多方向キーと、当該多方向キーからの押圧操作を検知するための印刷回路基板とを備え、制御部に、多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段を備える電子機器である。
【0007】
また、本発明の別の形態は、多方向キーをリング形状のキーとし、多方向キーの中央に、多方向キーの操作を確定可能な確定キーを備え、その確定キーを、キャンセル手段によるキャンセル状態においても押圧操作可能とする電子機器である。
【0008】
また、本発明の別の形態は、制御部に、さらに、キャンセル手段によるキャンセル状態において、多方向キー若しくはその他のキーの押圧操作を第二所定時間連続して行うとキャンセル状態を解除するキャンセル状態解除手段を備える電子機器である。
【0009】
また、本発明の一形態は、その面内の多方向において表裏方向に押圧操作可能な1または2以上の多方向キーおよび多方向キーからの押圧操作を検知するための印刷回路基板を有する多方向スイッチ部材と、その多方向スイッチ部材の操作に基づく処理を制御する制御部とを備える電子機器において、その制御部のメモリ内にインストール可能なコンピュータプログラムであって、それを実行することによって、制御部を、多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段として機能させるコンピュータプログラムである。
【0010】
また、本発明の一形態は、制御部を、さらに、キャンセル手段によるキャンセル状態において、多方向キー若しくはその他のキーの押圧操作を第二所定時間連続して行うとキャンセル状態を解除するキャンセル状態解除手段として機能させるコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子機器の表示画面上において、指示位置の決定と当該位置の確定操作をよりスムーズに行い、操作上の煩わしさを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す多方向スイッチ部材を携帯電話から取り外して表方向から一部透過的に見た状態を示す図である。
【図3】図3は、図2に示す多方向スイッチ部材のA−A線断面図である。
【図4】図4は、PCBの平面図である。
【図5】図5は、図4に示すPCBからメタルドームを取り外した状態を示す平面図である。
【図6】図6は、多方向キー上の所定方向を押圧操作した際の各櫛歯電極群への接触領域と、その際の操作方向の特定方法を説明するための図である。
【図7】図7は、多方向キー上の所定方向を押圧操作した際の各櫛歯電極群への接触領域と、その際の操作方向の特定方法を説明するための図であり、図6に示す方向と異なる方向を押圧操作する例を示す図である。
【図8】図8は、多方向キー上の所定方向を押圧操作した際の各櫛歯電極群への接触領域と、その際の操作方向の特定方法を説明するための図であり、図6および図7に示す方向と異なる方向を押圧操作する例を示す図である。
【図9】図9は、図2に示す多方向キーの左側(西側)を押圧する操作を行い、表示部に表示される地図上のカーソルの位置を移動し、その後、カーソルの位置を確定する状況を示す図である。
【図10】図10は、図2に示す多方向キーを回転操作した際、表示部に表示されるリスト上のカーソルを下方に移動し、その後、カーソルの位置を確定する状況を示す図である。
【図11】図11は、図1に示す携帯電話の本体に備えられる制御部の例示的なハードウェアの構成図である。
【図12】図12は、多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われない場合に、その後の多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルする処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図13】図13は、キャンセル状態において多方向キーをその周方向に沿ってなぞる操作を行った際に、初期の操作領域では押圧の検知がキャンセルされ、途中から押圧の検知が行われる様子を説明するための図である。
【図14】図14は、本発明の第二の実施の形態において、キャンセル状態への移行、その後のキャンセル状態の解除の流れを示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の電子機器およびコンピュータプログラムの各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施の形態では、電子機器として携帯電話を例に説明するが、電子機器は携帯電話に限定されず、他の種類の機器、例えば、車載用のナビゲーション装置、携帯用薄型PC、音楽再生用携帯機器、あるいはそれらの機器を操作するためのリモートコントローラなどでも良い。
【0014】
1.第一の実施の形態
1.1 多方向スイッチ部材の構造
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話の正面図である。
【0015】
図1に示すように、この実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話1は、多方向に操作可能な多方向スイッチ部材2と、表示部3とを備える。多方向スイッチ部材2は、上下左右の4方向(以後、「基準方向」と称する)と、2つの隣り合う基準方向の間にある方向(以後、「中間方向」と称する)とを含む合計8方向にそれぞれ押圧操作可能である。多方向スイッチ部材2は、略円形のスイッチ部材であり、その中心から8方向に押圧入力できるのみならず、中央部分を押圧入力できるものである。多方向スイッチ部材2の操作は、例えば、携帯電話1を持つ手の親指Tを使って好適に行われる。なお、多方向スイッチ部材2を、8方向に限定されず、4つの基準方向のみ、あるいは当該4つの基準方向に1以上の任意の数の中間方向を加えた複数方向に押圧入力可能なものとしても良い。
【0016】
図2は、図1に示す多方向スイッチ部材を携帯電話から取り外して表方向から一部透過的に見た状態を示す図である。図3は、図2に示す多方向スイッチ部材のA−A線断面図である。
【0017】
図3に示すように、多方向スイッチ部材2は、薄型の略円板形状の弾性押圧部材11と、その裏側に配置される略円板形状の印刷回路基板(PCB)20とを備える。弾性押圧部材11は、好適には、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ゴム等から構成され、特にシリコーンゴムからより好適に構成される。弾性押圧部材11は、径方向外側から内側に向かって、PCB20に固定される外周環状部11aと、表裏方向に弾性的に屈曲可能な屈曲ドーム11bと、その屈曲ドーム11bによってPCB20から非接触状態に支持される駆動板11cとを一体化した形態を有する。駆動板11cの表側の面の略中央部分には、表方向に突出する突出部11dを備える。PCB20は、好適には、ガラス繊維で編んだクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ製の回路基板である。ただし、PCB20として、カーボン繊維で編んだクロスにPET樹脂を含浸させた回路基板、ポリイミドフィルムを積層接着したポリイミド基板、ガラスコンポジット基板、あるいはアルミナ等から成るセラミックス基板を採用しても良い。弾性押圧部材11の突出部11dには、確定キー13が固定されている。確定キー13は、好適には、樹脂、金属あるいはガラスなどから構成することができる。確定キー13の天面は、緩やかに突出している。確定キー13の下端には、確定キー13の本体から径方向外側に突出する薄型のフランジ13aが形成されている。
【0018】
また、駆動板11cの突出部11dより外側には、リング形状の多方向キー12が固定されている。多方向キー12は、好適には、確定キー13と同様の材料から構成される。多方向キー12の上面は、その外周部から確定キー13の方向に緩やかに下方傾斜している。多方向キー12の下端には、多方向キー12の本体から径方向外側に突出する薄型のフランジ12aが形成されている。また、多方向キー12の上端には、多方向キー12の本体から径方向内側に突出する薄型の突出部12bが形成されている。確定キー13のフランジ13aおよび多方向キー12の突出部12bは、それぞれ、多方向キー12および確定キー13に非接触状態となっており、かつ表裏方向に一部重なる状態となっている。さらに、フランジ13aと突出部12bとの表裏方向には、多方向キー12を押し下げた際に、突出部12bがその押し下げた方向に移動可能な空間が形成されている。駆動板11cの裏面の略中央部分には、PCB20側に突出する1個の押圧子15が形成されている。また、当該裏面の外周近傍部分には、90度間隔で、PCB20側に突出する合計4個の押圧子16a,16c,16e,16g(図3では、押圧子16c,16gのみが見えている)が形成されている。以後、押圧子16a,16c,16e,16gを総称する場合には、押圧子16と称する。押圧子15,16は、例えば、樹脂から構成される。
【0019】
図2に示すように、駆動板11cの裏面であって押圧子15と押圧子16との間に挟まれる領域には、駆動板11cの中心から中心角略45度間隔に1個ずつ合計8個の接点用弾性体14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h(以後、総称する場合には、「接点用弾性体14」と称する)が固定されている。接点用弾性体14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hは、各押圧子16a,16c,16e,16gが周方向に隣り合う2個の接点用弾性体14の間に位置するように、配置されている。図3に示すように、接点用弾性体14は、略半球形状を有しており、その球面側先端がPCB20側を向くように、駆動板11cの裏面に固定されている。PCB20の表側の面には、押圧子15と対向する位置に1個のメタルドーム50、押圧子16a,16c,16e,16gとそれぞれ対向する位置に1個ずつのメタルドーム52,54等が配置されている。PCB20上の構成については後ほど詳述する。接点用弾性体14は、その先端位置が押圧子15,16の先端位置よりも低くなるような大きさで駆動板11cに固定されている。PCB20上において、接点用弾性体14が接する電極群(後述する)よりも、押圧子15,16が接するメタルドーム50,52,54等の方が高い位置にあるからである。
【0020】
接点用弾性体14は、PCB20上に接触後に弾性変形できるように、柔軟性に富む材料で構成されている。また、接点用弾性体14には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。導電性材料としては、カーボン、金属等を例示できるが、粒子径が小さいもの(ナノレベルの粒子)を容易に製造でき、かつその取り扱いが容易なカーボンブラックがより好ましい。また、接点用弾性体14を構成する母材としては、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、天然ゴムを用いることができ、それらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
【0021】
図4は、PCBの平面図である。また、図5は、図4に示すPCBからメタルドームを除いた状態を示す平面図である。
【0022】
図4に示すPCB20は、弾性押圧部材11の裏側に対向配置され、確定キー13および多方向キー12からの押圧を受けて押圧操作されたことを検知するためのものである。PCB20における各接点用弾性体14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hの裏側にそれぞれ対応する位置には、接点電極群の一例である櫛歯電極群21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h(総称する場合には、「櫛歯電極群21」と称する)が配置されている。櫛歯電極群21は、多数の歯を有する櫛形状の複数の電極を互いに接触しないように配置したものであり、4つの基準方向(ここでは、北、東、南、西の4つの方向とする)に配置される基準方向用櫛歯電極群21a,21c,21e,21gと、当該基準方向の内の互いに隣り合う基準方向の間に位置する中間方向(ここでは、北東、南東、南西、北西の4つの方向とする)に配置される中間方向用櫛歯電極群21b,21d,21f,21hとに分けられる。各櫛歯電極群21の上から各接点用弾性体14を押圧させて接触させると、その押圧に応じて各櫛歯電極群21と各接点用弾性体14との接触面積が大きくなり、その結果、各櫛歯電極群21を構成している電極間の電気抵抗が小さくなる。すなわち、各接点用弾性体14は、櫛歯電極群21を構成している電極間の電気抵抗を変えることができる可変抵抗機能を発揮する。
【0023】
図4に示すように、櫛歯電極群21aの外側と櫛歯電極群21bの外側、櫛歯電極群21bの外側と櫛歯電極群21cの外側、櫛歯電極群21cの外側と櫛歯電極群21dの外側、櫛歯電極群21dの外側と櫛歯電極群21eの外側、櫛歯電極群21eの外側と櫛歯電極群21fの外側、櫛歯電極群21fの外側と櫛歯電極群21gの外側、櫛歯電極群21gの外側と櫛歯電極群21hの外側および櫛歯電極群21hの外側と櫛歯電極群21aの外側は、それぞれ、配線22、配線23、配線24、配線25、配線26、配線27、配線28および配線29で接続されている。また、櫛歯電極群21bの内側と櫛歯電極群21cの内側、櫛歯電極群21cの内側と櫛歯電極群21dの内側、櫛歯電極群21dの内側と櫛歯電極群21eの内側、櫛歯電極群21eの内側と櫛歯電極群21fの内側、櫛歯電極群21fの内側と櫛歯電極群21gの内側、櫛歯電極群21gの内側と櫛歯電極群21hの内側および櫛歯電極群21hの内側と櫛歯電極群21aの内側は、それぞれ、配線33、配線34、配線35、配線36、配線37、配線38および配線39で接続されている。
【0024】
各櫛歯電極群21にて囲まれる領域の中央であって、押圧子15の下方に相当する位置には、1個のメタルドーム50が配置されている。前述のように、メタルドーム50の上面位置は、櫛歯電極群21のそれよりも高い。図5に示すように、メタルドーム50の外周端面は、PCB20上に形成された円環状のアース用の電極61と電気的に接続されている。また、アース用の電極61の内方には、円形の電極62が、アース用の電極61およびメタルドーム50のいずれにも接触しないように配置される。確定キー13をPCB20に向かって押圧すると、押圧子15が下方に押され、メタルドーム50をへこませることができ、その結果、メタルドーム50の中央部分が電極62に接触し、アース用の電極61と電極62とが電気的に接続される。なお、櫛歯電極群21aの内側は、アース用の電極61と、配線40にて接続されている。
【0025】
また、図4に示すように、PCB20上における櫛歯電極群21a,21c,21e,21gよりも外側であって、押圧子16a,16c,16e,16gの下方に相当する各位置には、それぞれ、1個のメタルドーム51,52,53,54が配置されている。メタルドーム51,52,53,54の上面位置は、先の述べたメタルドーム50と同様、櫛歯電極群21のそれよりも高い。図5に示すように、メタルドーム51,52,53,54の各外周端面は、PCB20上に形成された円環状の電極63,65,67,69とそれぞれ電気的に接続されている。その円環状の電極63,65,67,69の内方には、円形のアース用の電極64,66,68,70が、円環状の電極63,65,67,69および各メタルドーム51,52,53,54のいずれにも接触しないように配置されている。多方向キー12のある方向をPCB20に向かって押圧すると、その方向の周辺にある押圧子16a,16c,16e,16gの一部が下方に押され、メタルドーム51,52,53,54をへこませることができ、その結果、メタルドーム51,52,53,54の各中央部分がその直下にある各アース用の電極64,66,68,70に接触し、アース用の電極64,66,68,70と円環状の電極63,65,67,69とが電気的に接続される。なお、上述のメタルドーム50,51,52,53,54に代えて、樹脂製のエンボススイッチ(例えば、PET製ドーム)、タクタイルスイッチ等の他種のメカニカルスイッチを用いても良い。加えて、メタルドーム50,51,52,53,54のようなメカニカルスイッチを、弾性押圧部材11側に設けることもできる。
【0026】
図5に示すように、基準方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21aは、8個の櫛歯電極群21に囲まれる中心(電極62のある点)から見て外側(以後、単に「外側」と称する)にある櫛歯電極71と、電極62から見て内側(以後、単に「内側」と称する)にある櫛歯電極91とから構成される。櫛歯電極71と櫛歯電極91は、歯を互い違いにかみ合うような配置で形成されている。中間方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21bは、その外側であって櫛歯電極群21aに近い側に配置される半櫛歯電極72と、同じく外側であって櫛歯電極群21cに近い側に配置される半櫛歯電極74と、半櫛歯電極72,74より内側に配置される櫛歯電極92とから構成される。半櫛歯電極72等は、櫛歯電極71等の歯と垂直方向の長さを略半分にした大きさの電極である。他の半櫛歯電極74等も同様である。基準方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21cは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極75と、内側にある櫛歯電極93とから構成される。中間方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21dは、櫛歯電極群21bと同じ形態であり、その外側であって櫛歯電極群21cに近い側に配置される半櫛歯電極76と、同じく外側であって櫛歯電極群21eに近い側に配置される半櫛歯電極77と、半櫛歯電極76,77より内側に配置される櫛歯電極94とから構成される。
【0027】
基準方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21eは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極78と、内側にある櫛歯電極95とから構成される。中間方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21fは、櫛歯電極群21bと同じ形態であり、その外側であって櫛歯電極群21eに近い側に配置される半櫛歯電極79と、同じく外側であって櫛歯電極群21gに近い側に配置される半櫛歯電極80と、半櫛歯電極79,80より内側に配置される櫛歯電極96とから構成される。基準方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21gは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極81と、内側にある櫛歯電極97とから構成される。中間方向用櫛歯電極群の一つである櫛歯電極群21hは、櫛歯電極群21bと同じ形態であり、その外側であって櫛歯電極群21gに近い側に配置される半櫛歯電極82と、同じく外側であって櫛歯電極群21aに近い側に配置される半櫛歯電極73と、半櫛歯電極82,73より内側に配置される櫛歯電極98とから構成される。
【0028】
このように、基準方向用櫛歯電極群である4つの櫛歯電極群21a,21c,21e,21gは、外側にある櫛歯電極と内側にある櫛歯電極とをかみ合わせた構成を有する一方、中間方向用櫛歯電極群である4つの櫛歯電極群21b,21d,21f,21hは、外側にある2つの半櫛歯電極と、内側にある櫛歯電極とをかみ合わせた構成を有する。半櫛歯電極72,74,76,77,79,80,82,73の大きさは、櫛歯電極71,75,78,81,91,92,93,94,95,96,97,98を略半割にした大きさである。先に述べた配線22、配線23、配線24、配線25、配線26、配線27、配線28および配線29は、櫛歯電極71と半櫛歯電極72を、半櫛歯電極74と櫛歯電極75を、櫛歯電極75と半櫛歯電極76を、半櫛歯電極77と櫛歯電極78を、櫛歯電極78と半櫛歯電極79を、半櫛歯電極80と櫛歯電極81を、櫛歯電極81と半櫛歯電極82を、および半櫛歯電極73と櫛歯電極71を、それぞれ接続している。また、先に述べた配線33、配線34、配線35、配線36、配線37、配線38および配線39は、櫛歯電極92と櫛歯電極93を、櫛歯電極93と櫛歯電極94を、櫛歯電極94と櫛歯電極95を、櫛歯電極95と櫛歯電極96を、櫛歯電極96と櫛歯電極97を、櫛歯電極97と櫛歯電極98を、および櫛歯電極98と櫛歯電極91を、それぞれ接続している。
【0029】
半櫛歯電極73、櫛歯電極71、半櫛歯電極72および円環状の電極63は、北(N)方向の入力を検知するための電極である。半櫛歯電極74、櫛歯電極75、半櫛歯電極76および円環状の電極65は、東(E)方向の入力を検知するための電極である。半櫛歯電極77、櫛歯電極78、半櫛歯電極79および円環状の電極67は、南(S)方向の入力を検知するための電極である。半櫛歯電極80、櫛歯電極81、半櫛歯電極82および円環状の電極69は、西(W)方向の入力を検知するための電極である。すなわち、PCB20上の櫛歯電極群21の内、中間方向用櫛歯電極群は、当該中間方向(北東、南東、南西、北西)の各方向の入力を検知するための電極ではなく、当該中間方向の両隣の基準方向の入力を検知するための電極から構成されている。また、メタルドーム51,52,53,54が押し込まれて、円環状の電極63,65,67,69が円形の電極64,66,68,70と電気的に接続されると、各櫛歯電極群21を押圧した際の機能と別の機能を発揮することができる。
【0030】
1.2 操作方向の特定方法
図6〜図8は、多方向キー上の所定方向を押圧操作した際の各櫛歯電極群への接触領域と、その際の操作方向の特定方法を説明するための図である。なお、図6〜図8では、図の煩雑さを避けるため、円環状の電極63,65,67,69および円形の電極64,66,68,70は、示されていない。
【0031】
図6に示すように、多方向キー12上の北方向(図6の上方向)をPCB20に向かって押圧操作した場合、接点用弾性体14a,14b,14hが、それぞれN、NEおよびNWという3つの接触領域にてPCB20上の櫛歯電極群に接触する。ここで、当該3つの接触領域の各面積は、ほぼ等しいものとする。接触領域Nは、櫛歯電極71と櫛歯電極91とを接続するように接触する領域である。接触領域NEは、半櫛歯電極72,74と櫛歯電極92とを接続するように接触する領域である。また、接触領域NWは、半櫛歯電極73,82と櫛歯電極98とを接続するように接触する領域である。北方向を押圧操作しているため、北方向、北東方向および北西方向以外の5つの方向では、接点用弾性体14と櫛歯電極群21は接触していない。櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は、接触領域の面積に反比例して小さくなる。このため、一定の電流が流れるようにすると、その櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電圧値は、接触領域の面積に反比例して小さくなる。電圧値が小さいほどポイント(電圧値という計測値に連動する数値に相当)を高くすると、接触領域N,NE,NWに基づく北方向の電圧値に対して20ポイントを付与した場合、接触領域NEに基づく東方向の電圧値および接触領域NWに基づく西方向の電圧値に対して、例えばそれぞれ5ポイントが付与されるものとする。なお、南方向では櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は無限大であり、ポイントは付与されない。この結果、表101に示すように、北方向に20ポイント、東方向に5ポイント、西方向に5ポイントが付与され、互いに反対方向のポイントを差し引くと、北方向の20ポイントのみが残る。この結果、北方向の合成ベクトル102が生成され、押圧操作方向は北方向と決定される。
【0032】
また、図7に示すように、多方向キー12上の北東方向(図7の右上方向)をPCB20に向かって押圧操作した場合、接点用弾性体14b,14c,14aが、それぞれNE、EおよびNという3つの接触領域にてPCB20上の櫛歯電極群に接触する。ここで、当該3つの接触領域の各面積は、ほぼ等しいものとする。接触領域NEは、半櫛歯電極72,74と櫛歯電極92とを接続するように接触する領域である。接触領域Eは、櫛歯電極75と櫛歯電極93とを接続するように接触する領域である。また、接触領域Nは、櫛歯電極71と櫛歯電極91とを接続するように接触する領域である。北方向および東方向の各トータルの接触面積は等しいため、各電圧値も等しくなる。さらに、北東方向を押圧操作しているため、北東方向、北方向および東方向以外の5つの方向では、接点用弾性体14と櫛歯電極群21は接触していない。西方向および南方向では櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は無限大であり、ポイントは付与されない。この結果、表105に示すように、例えば、北方向に15ポイント、東方向に15ポイントがそれぞれ付与される。北方向に付与されたポイントと東方向に付与されたポイントは同一であり、その差が無い。この結果、北東方向の合成ベクトル108が生成され、押圧操作方向は北東方向と決定される。
【0033】
同様に、図8に示すように、多方向キー12上の東方向のやや北東寄りの方向をPCB20に向かって押圧操作した場合、接点用弾性体14b,14c,14d,14aが、それぞれNE、E、SEおよびNという4つの接触領域にてPCB20上の櫛歯電極群に接触する。ここで、接触領域NE、E、SEおよびNの各接触面積の比は、10:10:8:2であるものとする。押圧操作の方向は、東方向のやや北東寄りの方向であるため、その方向から大きく外れた位置の接触領域Nは、他の接触領域NE、EおよびSEに比べて小さい。この例において、櫛歯電極75と櫛歯電極93との間の電圧値に対して付与されるポイントを10ポイントとすると、半櫛歯電極72,74と櫛歯電極92との間の電圧値に対して付与されるポイントも10ポイントである。半櫛歯電極76,77と櫛歯電極94との間の電圧値に対して付与されるポイントは8ポイントであり、櫛歯電極71と櫛歯電極91との間の電圧値に対して付与されるポイントは、2ポイントである。西方向では、櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は無限大であり、ポイントは付与されない。この結果、表109に示すように、北方向に7ポイント、東方向に19ポイント、南方向に4ポイントがそれぞれ付与される。
【0034】
ここで、北と南は互いに反対方向である。このため、北方向に付与されたポイントと南方向のポイントの差し引きが行われる。一方、西方向のポイントはゼロであるが、実際の演算において、東方向のポイント(19ポイント)から西方向のポイント(ゼロポイント)を差し引くことになる。次に、北方向と南方向の各ポイントの差に相当する大きさの北方向のベクトルと、東方向のベクトルとを合成し、合成ベクトル112が生成される。この結果、押圧操作方向は、合成ベクトル112の方向、すなわち、東方向のやや北東寄りの方向と決定される。
【0035】
合成ベクトル112は、基準方向(北、東、南、西)および中間方向(北東、南東、南西、北西)のいずれの方向とも完全に一致しない方向である。上述のようなベクトルの演算処理を行うことにより、多方向スイッチ部材2において予め設定された8方向と一致しない任意の方向およびその強さを特定することができる。この利点の一つは、多方向キー12をその周方向に沿ってなぞる、いわゆる回転操作を行った際に、時々刻々と変化するベクトルの変化を細かく検知できることにある。
【0036】
その一方で、合成ベクトル112のように、8方向のいずれにも合致しない方向を持つベクトルが常に操作方向であると認識してしまうと、8方向のいずれかの方向のキーの機能を発揮しようとした場合に、不都合が生じる。このため、上述のような回転操作以外の場合には、合成ベクトル112が8方向のいずれの方向の範囲内にあるかを判別するようにするのが好ましい。例えば、多方向キー12を、中心角45度毎の8領域に分け、それぞれを、北、北東、東、南東、南、南西、西、北西の8方向に割り当てる。合成ベクトル112は、東方向の領域内に存在することになるので、東方向を操作方向と決定する。このように、多方向キー12上の複数方向を押圧した場合に生成される合成ベクトルがどの領域に存在するかによって操作方向を8方向のいずれかに決定すると、回転操作以外の操作を行う際に支障がなくなる。
【0037】
1.3 カーソルの移動状況
図9は、図2に示す多方向キーの左側(西側)を押圧する操作を行い、表示部に表示される地図上のカーソルを移動し、その後、カーソルの位置を確定する状況を示す図であり、(9A)は多方向キーの左側を押圧操作する様子を、(9B)は表示部に表示される地図上のカーソルが移動する状況を、それぞれ示す。
【0038】
例えば、表示部3に地図が表示されている状態で、多方向キー12の左側P(図9(9A)の黒塗り部分)を押圧し続けると、図9(9B)に示すように、地図上に表示されているカーソル120の位置が矢印方向(すなわち、左側)に移動する。これは、地図の画像がカーソル120の移動方向と逆方向(右側)に移動するとしても同義である。多方向キー12の連続した押圧操作を止めて、中央にある確定キー13を押圧すると、カーソル120の位置が確定する。確定キー13の押圧とほぼ同時に、多方向キー12に触れる可能性もある。しかし、後述するように、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間(一例として、0.5秒間)行われないと、その後の多方向キー12の押圧に基づく処理をキャンセルする処理を行っているので、操作者が多方向キー12を連続して押圧操作し、続いて確定キー13の押圧操作に移行する際には、確定キー13のみの押圧操作を検知し、多方向キー12の押圧操作の検知はキャンセルされる。この結果、カーソル120の位置が再び移動してしまう危険性は極めて低くなる。ここで、多方向キー12の連続した押圧操作は、多方向キー12の押圧操作の間隔が第一所定時間未満である押圧操作と定義することができる。当該押圧操作の間隔は、第一所定時間に比べて非常に短い時間(例えば、第一所定時間を0.5秒間とした場合に、押圧操作の間隔を0.1秒間)とすることもできる。
【0039】
図10は、図2に示す多方向キーをその周方向に沿ってなぞる操作(以後、「回転操作」ともいう)を行った際、表示部に表示されるリスト上のカーソルを下方に移動し、その後、カーソルの位置を確定する状況を示す図であり、(10A)は多方向キーの回転操作を行う様子を、(10B)は表示部に表示されるリスト上のカーソルの位置が移動する状況を、それぞれ示す。
【0040】
例えば、表示部3にリストが表示されている状態で、多方向キー12をその周方向に沿って右回り(矢印Fの方向)になぞるように連続して押圧操作すると、図10(10B)に示すように、リスト上に表示されているカーソル130の位置が下方に移動する。これは、リストの画像がカーソル130の移動方向と逆方向(上方)に移動するとしても同義である。多方向キー12の回転操作を止めて、中央にある確定キー13を押圧すると、カーソル130の位置が確定する。確定キー13の押圧とほぼ同時に多方向キー12に触れる可能性もあるが、前述と同様に、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理がキャンセルされるので、カーソル130の位置が再び移動しない。
【0041】
1.4 制御部の概略構成
図11は、図1に示す携帯電話の本体に備えられる制御部の例示的なハードウェアの構成図である。
【0042】
制御部150は、中央処理装置(CPU)151と、読み出し専用のメモリ(ROM)152と、読み書き可能なメモリ(RAM)153と、ビデオRAM(VRAM)154と、電気若しくは電圧の操作でデータの消去若しくは書き換えを可能としたメモリ(EEPROM)155と、インターフェイス(I/F)156とを備える。制御部150は、多方向スイッチ部材2のPCB20上あるいはPCB20以外に設けることができる。
【0043】
ROM152は、CPU151の制御用プログラム等の読み出し専用の情報を格納したメモリである。RAM153は、オペレーションシステム(OS)、各種アプリケーションソフト、この実施の形態における押圧操作方向の決定の他、CPU151を、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段として機能させるために必要なコンピュータプログラム等を格納した、読み書き可能なメモリである。
【0044】
コンピュータプログラムは、外部のネットワークを経由して携帯電話1にインストールし、あるいは情報記録媒体を携帯電話1内のスロット(図示せず)に装填し、その情報記録媒体に格納されたコンピュータプログラムを、制御部150内のRAM153若しくはEEPROM155に格納するようにしても良い。
【0045】
VRAM154は、種々のデータを表示部3に表示する際に、そのデータを一時的にストックしておくメモリである。EEPROM155も、一時的にデータを書き込んでおくメモリである。インターフェイス156は、制御部150の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。ここで、「制御部150の外部」には、「携帯電話1の外部」も含まれる。
【0046】
CPU151は、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段を兼ねる。ここで、第一所定時間は、どうような時間でも任意に設定できるが、多方向キー12の連続した押圧操作後、続いて確定キー13の押圧操作を行う際に誤って多方向キー12に接触することによる誤動作を防止する趣旨から、0.05〜1.0秒間、さらには、0.2〜0.7秒間が好ましい。
【0047】
メモリであるROM152、RAM153およびEEPROM155の内の少なくとも1つには、各接点用弾性体14が各櫛歯電極群21と接触した際の櫛歯電極71等と櫛歯電極91等との間(若しくは半櫛歯電極72等と櫛歯電極92等との間)の電圧値に応じたポイントの値を記述したテーブル若しくは数式を格納することができる。ここで、「ポイント」は、電圧値と対応する数値の他、電気抵抗値あるいは電流値と対応する数値などを含むように広義に解釈される。また、ポイントは、図6〜図8の表101,105,109に例示した数値以外に、どのような数値でも採用できる。
【0048】
1.5 例示的な移動処理の流れ
図12は、多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われない場合に、その後の多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルする処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0049】
CPU151は、多方向キー12の連続した押圧操作の検知が第一所定時間行われないかどうかを判別する(ステップST1)。当該判別の結果、第一所定時間に至る前に多方向キー12が押圧操作されていれば、ステップST1の処理を繰り返す。一方、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われなくなると、CPU151は、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理をキャンセルする状態にする(ステップST2)。なお、CPU151は、キャンセル手段としてステップST1およびステップST2に至る各処理を行っているが、各処理を個別に行う手段に分けて、第一所定時間の経過を判別する第一所定時間経過有無判別手段と、第一所定時間の経過によりキャンセル状態とするキャンセル状態設定手段としても良い。
【0050】
2.第二の実施の形態
2.1 多方向スイッチ部材の構造
電子機器の第二の実施の形態は、第一の実施の形態と同一形態の多方向スイッチ部材を備えるため、多方向スイッチ部材の説明は、省略する。
【0051】
2.2 制御部の概略構成
第二の実施の形態に係る携帯電話1の制御部の構成を、図11に示す構成を参照しながら説明する。制御部150は、CPU151と、ROM152と、RAM153と、VRAM154と、EEPROM155と、I/F156とを備える。制御部150は、多方向スイッチ部材2のPCB20上あるいはPCB20以外のいずれに設けても良い。このような構成の面で、第二の実施の形態と第一の実施の形態とは共通する。
【0052】
ROM152は、CPU151の制御用プログラム等の読み出し専用の情報を格納したメモリである。RAM153は、OS、各種アプリケーションソフト、この実施の形態における押圧操作方向の決定の他、CPU151を、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段と、キャンセル状態において、多方向キー12若しくはその他のキー(確定キー13も含む)の押圧操作を第二所定時間(一例として、0.5秒間)連続して行うとキャンセル状態を解除するキャンセル状態解除手段として機能させるために必要なコンピュータプログラム等を格納した、読み書き可能なメモリである。
【0053】
また、上記の各処理を行うコンピュータプログラムを別々にRAM153内に格納しておき、CPU151がそれらのコンピュータプログラムを読み出すことにより、キャンセルする状態とする処理、その後のキャンセル状態を解除する処理を行うようにしても良い。また、コンピュータプログラムは、外部のネットワークを経由して携帯電話1にインストールし、あるいは情報記録媒体を携帯電話1内のスロット(図示せず)に装填し、その情報記録媒体に格納されたコンピュータプログラムを、制御部150内のRAM153若しくはEEPROM155に格納するようにしても良い。
【0054】
VRAM154は、種々のデータを表示部3に表示する際に、そのデータを一時的にストックしておくメモリである。EEPROM155も、一時的にデータを書き込んでおくメモリである。インターフェイス156は、制御部150の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。ここで、「制御部150の外部」には、「携帯電話1の外部」も含まれる。
【0055】
CPU151は、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段と、キャンセル状態において、多方向キー12若しくはその他のキーの押圧操作を第二所定時間連続して行うとキャンセル状態を解除するキャンセル状態解除手段とを兼ねる。ここで、第二所定時間は、どうような時間でも任意に設定できるが、操作開始から早めに検知可能な状態にする必要から、0.05〜1.0秒間、さらには、0.2〜0.7秒間が好ましい。
【0056】
2.3 例示的な移動処理の流れ
図13は、キャンセル状態において多方向キーをその周方向に沿ってなぞる操作を行った際に、初期の操作領域では押圧の検知がキャンセルされ、途中から押圧の検知が行われる様子を説明するための図である。
【0057】
キャンセル状態において、最初に多方向キー12をその周方向に沿ってなぞる操作(矢印Fの方向の回転操作)を行うと、多方向スイッチ部材2は、その操作によって行われる処理を第二所定時間、キャンセルする。例えば、図13に示す多方向キー12の12時の方向から右回りになぞる操作を行うと、第二所定時間が経過するまで(この例では、12時の方向から3時の方向までの約90度まで)、当該操作により行われるはずの処理はキャンセルされる。図13では、キャンセル状態にある回転範囲を白抜き矢印F1で示している。第二所定時間経過後(3時の方向から以後)、キャンセル状態が解除され、当該なぞる操作に基づく処理が行われる。図13では、処理が行われる回転範囲を黒塗り矢印F2で示している。
【0058】
図14は、本発明の第二の実施の形態において、キャンセル状態への移行、その後のキャンセル状態の解除の流れを示すフローチャートの一例である。
【0059】
CPU151は、多方向キー12の連続した押圧操作の検知が第一所定時間行われないかどうかを判別する(ステップST11)。当該判別の結果、第一所定時間に至る前に多方向キー12が押圧操作されていれば、ステップST11の処理を繰り返す。一方、多方向キー12の連続した押圧操作が第一所定時間行われなくなると、CPU151は、その後の多方向キー12の押圧操作に基づく処理をキャンセルする状態にする(ステップST12)。このようなキャンセル状態において、CPU151は、多方向キー12若しくはその他のキーの連続操作が行われていることを検出し、かつその操作時間が第二所定時間に至ったかどうかを判別する(ステップST13)。連続操作の時間が第二所定時間に至っていない間は、キャンセル状態を継続する。一方、連続操作が第二所定時間継続すると、CPU151は、キャンセル状態解除手段として、キャンセル状態を解除する(ステップST14)。
【0060】
なお、CPU151は、キャンセル手段としてステップST11およびステップST12に至る各処理を行っているが、各処理を個別に行う手段に分けて、第一所定時間の経過を判別する第一所定時間経過有無判別手段と、第一所定時間の経過によりキャンセル状態とするキャンセル状態設定手段としても良い。また、CPU151は、キャンセル状態解除手段としてステップST13およびステップST14に至る各処理を行っているが、各処理を個別に行う手段に分けて、第二所定時間の経過を判別する第二所定時間経過有無判別手段と、第二所定時間の経過によりキャンセル状態を解除するキャンセル解除設定手段としても良い。
【0061】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0062】
例えば、多方向キー12は、多方向に押圧可能な1個のリング状のキーであるが、これに代えて、4個あるいは8個のキーをリング状に間隔をあけて配置し、各方向を押圧可能にしても良い。また、確定キー13は、必須の構成ではなく、多方向キー12の外側に配置されるリング状その他如何なる形状のキーであっても良い。第一所定時間をおよび第二所定時間を、一例として、ともに同じ0.5秒間として説明したが、各所定時間を異なる時間に設定しても良い。また、櫛歯電極群に代えて、櫛歯以外の形態、例えば半円形の電極を用いた接点電極群をPCB20上に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電子機器、特に小型の電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 携帯電話(電子機器)
2 多方向スイッチ部材
3 表示部
12 多方向キー
13 確定キー(その他のキーの一例を兼ねる)
20 PCB(印刷回路基板)
150 制御部
151 CPU(キャンセル手段、キャンセル状態解除手段)
152 ROM(メモリの一例)
153 RAM(メモリの一例)
155 EEPROM(メモリの一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その面内にて多方向の操作を可能とする多方向スイッチ部材と、その多方向スイッチ部材の操作に基づく処理を制御する制御部とを備える電子機器であって、
その多方向スイッチ部材は、
その面内の多方向において表裏方向に押圧操作可能な1または2以上の多方向キーと、
上記多方向キーからの押圧操作を検知するための印刷回路基板と、
を備え、
上記制御部は、
上記多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の上記多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記多方向キーをリング形状のキーとし、
前記多方向キーの中央に、前記多方向キーの操作を確定可能な確定キーを備え、
その確定キーは、前記キャンセル手段によるキャンセル状態においても押圧操作可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
さらに、前記キャンセル手段によるキャンセル状態において、前記多方向キー若しくはその他のキーの押圧操作を第二所定時間連続して行うと上記キャンセル状態を解除するキャンセル状態解除手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
その面内の多方向において表裏方向に押圧操作可能な1または2以上の多方向キーおよび上記多方向キーからの押圧操作を検知するための印刷回路基板を有する多方向スイッチ部材と、その多方向スイッチ部材の操作に基づく処理を制御する制御部とを備える電子機器の上記制御部のメモリ内にインストール可能なコンピュータプログラムであって、
それを実行することによって、
上記制御部を、
上記多方向キーの連続した押圧操作が第一所定時間行われないと、その後の上記多方向キーの押圧操作に基づく処理をキャンセルするキャンセル手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記制御部を、さらに、前記キャンセル手段によるキャンセル状態において、前記多方向キー若しくはその他のキーの押圧操作を第二所定時間連続して行うと上記キャンセル状態を解除するキャンセル状態解除手段として機能させることを特徴とする請求項4に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−118788(P2011−118788A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277132(P2009−277132)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】