電子機器とその取付構造
【課題】 金属端子を省略して製造コストの低減化が図れる電子機器を提供すること、および母基板上に簡単かつ確実に実装できる電子機器の取付構造を提供すること。
【解決手段】 筐体1の枠体3から下方へ突出するプリント基板2の延出部2aに、複数の引き出しパターン5と各引き出しパターン5を貫通する透孔6とを設け、各引き出しパターン5を接続用の端子として機能させるようにした。そして、このような立型の電子機器を母基板7に実装する場合は、電子機器の両脚片3aと延出部2aを母基板7の上方から挿入孔7a,7bにそれぞれ挿入し、両脚片3aによって筐体1を母基板7上に保持した後、母基板7の裏面側から噴流半田を塗着することにより、電子機器の両脚片3aおよび各引き出しパターン5と母基板7の各ランド8とを半田付けする。
【解決手段】 筐体1の枠体3から下方へ突出するプリント基板2の延出部2aに、複数の引き出しパターン5と各引き出しパターン5を貫通する透孔6とを設け、各引き出しパターン5を接続用の端子として機能させるようにした。そして、このような立型の電子機器を母基板7に実装する場合は、電子機器の両脚片3aと延出部2aを母基板7の上方から挿入孔7a,7bにそれぞれ挿入し、両脚片3aによって筐体1を母基板7上に保持した後、母基板7の裏面側から噴流半田を塗着することにより、電子機器の両脚片3aおよび各引き出しパターン5と母基板7の各ランド8とを半田付けする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筐体内に収納したプリント基板から延出部が突設され、この延出部に複数の引き出しパターンが設けられている電子機器と、この種の電子機器を母基板上に実装するための電子機器の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】チューナ等の電子機器においては、プリント基板に搭載された回路部品を外部からの不要信号に対してシールドしたり、回路部品から発生する信号やノイズ等を外部回路に対してシールドするために、プリント基板を箱型形状の筐体内に収納する必要がある。
【0003】図10はこのような電子機器の従来例を示す正面図であり、同図に示す電子機器は立型と呼ばれるものである。この電子機器は例えばチューナであり、箱型形状の筐体10と、この筐体10の内部に収納されたプリント基板11とで構成されている。プリント基板11には筐体10から下方へ突出する延出部12が延設されており、この延出部12には複数の引き出しパターン13が並設されると共に、各引き出しパターン13に入出力用の金属端子14がかしめ固定されている。また、筐体10には下方へ延びる複数の脚片15が突設されており、これら脚片15は延出部12の両側に位置している。
【0004】図11は電子機器の他の従来例を示す正面図であり、この電子機器は伏せ型と呼ばれるもので、基本的な構成は図10に示す立型のものと同様である。ただし、この伏せ型の電子機器においては、延出部12が筐体10から側方へ突出すると共に、各引き出しパターン13にかしめ固定された金属端子14が下方へ向けて直角に折り曲げられている。
【0005】このように構成された立型および伏せ型の電子機器は、セット側の母基板(マザーボード)16上に実装されて使用されるが、その場合、母基板16に穿設されている挿入孔に各金属端子14と各脚片15を挿入し、各脚片15によって筐体10を母基板16上に保持した状態で、母基板16の裏面に形成されているランドと各金属端子14とを噴流半田(フローディップ半田)の塗着によって半田付けするようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来の電子機器では、延出部12に並設された複数の引き出しパターン13にそれぞれ金属端子14をかしめ固定しているため、部品コストや組立コストが嵩んで製造コストを低減するのが困難になるという問題があり、また、各金属端子14が母基板16へ実装前の搬送中や母基板16への実装時に変形しやすいという問題があった。特に、伏せ型の電子機器の場合は、立型に比べると金属端子14の全長が長くなるため、金属端子14の変形という問題は顕著となり、しかも、金属端子14を引き出しパターン13にかしめ固定した後、治具を用いて直角に折り曲げる工程が必要となるため、金属端子14の曲げ精度を厳密に管理しなければならず、この点からも製造コストを低減するのが困難であった。
【0007】本発明の目的は、金属端子を省略して製造コストの低減化が図れる電子機器を提供することにあり、本発明の他の目的は、母基板上に簡単かつ確実に実装できる電子機器の取付構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による電子機器では、筐体と、この筐体内に収納されたプリント基板とを備え、前記プリント基板に前記筐体から突出する延出部を設け、この延出部に複数の引き出しパターンとこれら引き出しパターンを貫通する貫通部とを設けた。この場合において、前記貫通部は透孔またはスリットであることが好ましい。
【0009】このように構成すると、プリント基板に設けられた各引き出しパターンが接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。
【0010】また、上記目的を達成するために、本発明による電子機器の取付構造では、上記の如く構成された電子機器を実装する母基板に、前記延出部が挿入される挿入孔と、この挿入孔の周囲に位置する複数のランドとを設け、前記引き出しパターンと前記ランドとを前記母基板の裏面で半田付けした。
【0011】このように構成すると、電子機器を母基板に実装する場合において、延出部を母基板の挿入孔に挿入して裏面へ突出させた状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各ランドとを噴流半田の塗着によって半田付けすれば、立型の電子機器として使用することができる。その際、延出部に注がれる噴流半田が貫通部を通り抜けることになるため、隣接する引き出しパターン間に噴流半田が残存しにくくなり、半田ブリッジを回避することができる。
【0012】さらに、上記目的を達成するために、本発明による電子機器の取付構造では、上記の如く構成された電子機器を実装する母基板の表面に複数の金属端子を立設し、前記貫通部をこれら金属端子に挿入した状態で、前記引き出しパターンと前記金属端子とを半田付けした。
【0013】このように構成すると、電子機器を母基板に実装する場合において、母基板の表面に立設された複数の金属端子に各貫通部を挿入した状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各金属端子とを半田付けすれば、伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【0014】また、上記の構成において、前記筐体に互いに略直交する方向へ延出する第1の脚片と第2の脚片とを突設し、これら第1および第2の脚片のいずれか一方を前記母基板に挿入することにより、前記筐体を前記母基板上に保持するように構成すると、立型の電子機器としても伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】まず、立型と呼ばれる電子機器への適用例を図1〜図5に基づいて説明すると、図1は本発明の第1実施例に係る電子機器の斜視図、図2は該電子機器の正面図、図3は該電子機器が実装される母基板を裏面から見た要部平面図、図4は該電子機器を母基板に実装する直前の状態を示す正面図、図5は該電子機器を母基板に実装した状態を側方から見た部分断面図である。
【0017】図1と図2に示す電子機器は例えばチューナであり、この電子機器は、箱型形状の筐体1と、筐体1の内部に収納されたプリント基板2とで構成されている。筐体1は、前面および後面を開放する枠体3と、この枠体3の両開放面を覆う一対のカバー4とで構成されており、これら枠体3とカバー4は金属板から形成されている。枠体3の相対向する側面には脚片3aが形成されており、これら脚片3aは下方へ突出している。プリント基板2には図示せぬ回路部品が搭載されており、このプリント基板2には枠体3の底面を挿通して下方へ突出する延出部2aが延設されている。この延出部2aには複数の引き出しパターン5が並設されており、各引き出しパターン5の先端部には貫通部としての透孔6がそれぞれ穿設されている。なお、枠体3の両脚片3aは延出部5の両側に位置しており、これら脚片3aと延出部2aの突出量はほぼ同じに設定されている。
【0018】一方、図3に示すように、図1と図2に示す電子機器を実装するセット側の母基板(マザーボード)7には、両脚片3aに対応する挿入孔7aと延出部2aに対応する挿入孔7bとが穿設されている。また、この母基板7の裏面には、両脚片3aと各引き出しパターン5に半田付けされる複数のランド8が設けられており、これらランド8は各挿入孔7a,7bの周囲に位置している。
【0019】このような母基板7上に上記した立型の電子機器を実装する場合、まず、図4に示すように、電子機器の両脚片3aと延出部2aを母基板7の上方から挿入孔7a,7bにそれぞれ挿入し、両脚片3aによって筐体1を母基板7上に保持した状態にする。このとき、延出部2aの下半分は挿入孔7bを挿通して母基板7の裏面へ突出しており、各引き出しパターン5の先端部と透孔6は母基板7の裏面より若干下方へ配置される。しかる後、母基板7の裏面側から噴流半田(フローディップ半田)を塗着すると、図5に示すように、電子機器の両脚片3aおよび各引き出しパターン5と母基板7の各ランド8とが半田付けされ、母基板7上に立型の電子機器を実装することができる。
【0020】上記した第1実施例に係る立型の電子機器においては、筐体1の枠体3から下方へ突出するプリント基板2の延出部2aに、複数の引き出しパターン5と各引き出しパターン5を貫通する透孔6が設けてあり、これら引き出しパターン5を母基板7の各ランド8に半田付けするようになっている。したがって、プリント基板2に設けられた各引き出しパターン5が接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。また、このような立型の電子機器を母基板7に実装する場合、電子機器の延出部2aを母基板7の挿入孔7bに挿入するだけで、延出部2aに設けられた各引き出しパターン5と母基板7の各ランド8とを半田付けすることができ、しかも、かかる半田付け時に延出部2aに注がれる噴流半田が透孔6を通り抜けることになるため、隣接する引き出しパターン5間に噴流半田が残存しにくくなり、半田ブリッジを回避することができる。
【0021】次に、伏せ型と呼ばれる電子機器への適用例を図6と図7に基づいて説明すると、図6は本発明の第2実施例に係る電子機器の斜視図、図7は該電子機器を母基板に実装した状態の部分断面図である。
【0022】この第2実施例と前述した第1実施例との相違点の1つは、図6に示す伏せ型の電子機器においては、プリント基板2の延出部2aを枠体3の側面から外方へ突出させ、脚片3aを枠体3の四隅から下方へ突出させたことであり、この延出部2aに複数の引き出しパターン5と透孔6が設けられている点は同じである。第2実施例と第1実施例のもう1つの相違点は、図7に示すように、母基板7上に複数の端子9を立設し、これら端子9を延出部2aの透孔6に挿入して引き出しパターン5と半田付けしたことである。各端子9は母基板7に設けられたランド8と半田付けやかしめ等の手段で接続されており、端子9と透孔6の配列ピッチは同じになるように設定されている。また、この変更に伴って、母基板7には各脚片3aに対応する挿入孔7aのみが穿設され、延出部2aに対応する挿入孔は穿設されていない。
【0023】このように構成された第2実施例において、図6に示す伏せ型の電子機器を母基板7上に実装する場合は、予め複数の端子9を取り付けておいた母基板7に対して、図7に示すように、電子機器の各脚片3aを挿入孔7aに挿入すると共に、延出部2aの各透孔6を対応する端子9に挿入する。しかる後、延出部2aの表面で各端子9と各引き出しパターン5とを半田付けし、母基板7の裏面で各脚片3aをランド8に半田付けすれば、母基板7上に伏せ型の電子機器を実装することができる。
【0024】上記した第2実施例に係る伏せ型の電子機器においては、筐体1の枠体3から水平方向へ突出するプリント基板2の延出部2aに、複数の引き出しパターン5と各引き出しパターン5を貫通する透孔6が設けてあり、これら透孔6をセット側の母基板7に設けた各端子9に挿入した状態で、各引き出しパターン5と各端子9とを半田付けするようになっている。したがって、前述した第1実施例と同様に、プリント基板2に設けられた各引き出しパターン5が接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。
【0025】図8は本発明の第3実施例に係る電子機器の斜視図であり、この電子機器は立型としても伏せ型としても使用できるようになっている。すなわち、筐体1の枠体3には、延出部2aと同方向へ突出する複数の第1の脚片3bと、延出部2aの板面に対して直交する方向へ突出する複数の第2の脚片3cとが形成されている。したがって、図8に示す電子機器は、筐体1を第1の脚片3bを用いて母基板7上に保持すれば、第1実施例と同様に立型の電子機器として使用することができ、筐体1を複数の第2の脚片3cを用いて母基板7上に保持すれば、第2実施例と同様に伏せ型の電子機器として使用することができる。
【0026】なお、本発明においては、他にもいろいろな変形例が可能なことはいうまでもない。例えば、図9に示すように、延出部2aに各引き出しパターン5の先端部に達するスリット6aを設けてもよく、これらスリット6aは上記した各実施例における透孔6と同様に貫通部として機能する。また、筐体1を母基板7上に保持するための脚片3aは、必要に応じて形状や数量あるいは形成位置を変更可能であり、特に、伏せ型の電子機器の場合は、筐体1を構成する枠体3とカバー4のいずれか一方または両方に脚片3aを形成することができる。
【0027】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0028】筐体から突出するプリント基板の延出部に複数の引き出しパターンとこれら引き出しパターンを貫通する貫通部が設けてあり、これら各引き出しパターンが接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。
【0029】また、このような電子機器を母基板に実装する場合において、延出部を母基板の挿入孔に挿入して裏面へ突出させた状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各ランドとを噴流半田の塗着によって半田付けすれば、立型の電子機器として使用することができ、その際、延出部に注がれる噴流半田が貫通部を通り抜けることになるため、隣接する引き出しパターン間に噴流半田が残存しにくくなり、半田ブリッジを回避することができる。さらに、母基板の表面に複数の金属端子を立設しておき、各貫通部をこれら金属端子に挿入した状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各金属端子とを半田付けすれば、伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【0030】また、筐体に互いに略直交する方向へ延出する第1の脚片と第2の脚片とを突設し、これら第1および第2の脚片のいずれか一方を母基板に挿入することにより、筐体を母基板上に保持するように構成すると、立型の電子機器としても伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る立型の電子機器を示す斜視図である。
【図2】該電子機器の正面図である。
【図3】該電子機器が実装される母基板を裏面から見た要部平面図である。
【図4】該電子機器を母基板に実装する直前の状態を示す正面図である。
【図5】該電子機器を母基板に実装した状態を側方から見た部分断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る伏せ型の電子機器を示す斜視図である。
【図7】該電子機器を母基板に実装した状態の部分断面図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る電子機器の斜視図である。
【図9】貫通部の変形例である。
【図10】従来より知られている立型の電子機器を示す斜視図である。
【図11】従来より知られている伏せ型の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 筐体
2 プリント基板
2a 延出部
3 枠体
3a 脚片
3b 第1の脚片
3c 第2の脚片
4 カバー
5 引き出しパターン
6 透孔(貫通部)
6a スリット(貫通部)
7 母基板
7a,7b 挿入孔
8 ランド
9 端子
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筐体内に収納したプリント基板から延出部が突設され、この延出部に複数の引き出しパターンが設けられている電子機器と、この種の電子機器を母基板上に実装するための電子機器の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】チューナ等の電子機器においては、プリント基板に搭載された回路部品を外部からの不要信号に対してシールドしたり、回路部品から発生する信号やノイズ等を外部回路に対してシールドするために、プリント基板を箱型形状の筐体内に収納する必要がある。
【0003】図10はこのような電子機器の従来例を示す正面図であり、同図に示す電子機器は立型と呼ばれるものである。この電子機器は例えばチューナであり、箱型形状の筐体10と、この筐体10の内部に収納されたプリント基板11とで構成されている。プリント基板11には筐体10から下方へ突出する延出部12が延設されており、この延出部12には複数の引き出しパターン13が並設されると共に、各引き出しパターン13に入出力用の金属端子14がかしめ固定されている。また、筐体10には下方へ延びる複数の脚片15が突設されており、これら脚片15は延出部12の両側に位置している。
【0004】図11は電子機器の他の従来例を示す正面図であり、この電子機器は伏せ型と呼ばれるもので、基本的な構成は図10に示す立型のものと同様である。ただし、この伏せ型の電子機器においては、延出部12が筐体10から側方へ突出すると共に、各引き出しパターン13にかしめ固定された金属端子14が下方へ向けて直角に折り曲げられている。
【0005】このように構成された立型および伏せ型の電子機器は、セット側の母基板(マザーボード)16上に実装されて使用されるが、その場合、母基板16に穿設されている挿入孔に各金属端子14と各脚片15を挿入し、各脚片15によって筐体10を母基板16上に保持した状態で、母基板16の裏面に形成されているランドと各金属端子14とを噴流半田(フローディップ半田)の塗着によって半田付けするようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来の電子機器では、延出部12に並設された複数の引き出しパターン13にそれぞれ金属端子14をかしめ固定しているため、部品コストや組立コストが嵩んで製造コストを低減するのが困難になるという問題があり、また、各金属端子14が母基板16へ実装前の搬送中や母基板16への実装時に変形しやすいという問題があった。特に、伏せ型の電子機器の場合は、立型に比べると金属端子14の全長が長くなるため、金属端子14の変形という問題は顕著となり、しかも、金属端子14を引き出しパターン13にかしめ固定した後、治具を用いて直角に折り曲げる工程が必要となるため、金属端子14の曲げ精度を厳密に管理しなければならず、この点からも製造コストを低減するのが困難であった。
【0007】本発明の目的は、金属端子を省略して製造コストの低減化が図れる電子機器を提供することにあり、本発明の他の目的は、母基板上に簡単かつ確実に実装できる電子機器の取付構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による電子機器では、筐体と、この筐体内に収納されたプリント基板とを備え、前記プリント基板に前記筐体から突出する延出部を設け、この延出部に複数の引き出しパターンとこれら引き出しパターンを貫通する貫通部とを設けた。この場合において、前記貫通部は透孔またはスリットであることが好ましい。
【0009】このように構成すると、プリント基板に設けられた各引き出しパターンが接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。
【0010】また、上記目的を達成するために、本発明による電子機器の取付構造では、上記の如く構成された電子機器を実装する母基板に、前記延出部が挿入される挿入孔と、この挿入孔の周囲に位置する複数のランドとを設け、前記引き出しパターンと前記ランドとを前記母基板の裏面で半田付けした。
【0011】このように構成すると、電子機器を母基板に実装する場合において、延出部を母基板の挿入孔に挿入して裏面へ突出させた状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各ランドとを噴流半田の塗着によって半田付けすれば、立型の電子機器として使用することができる。その際、延出部に注がれる噴流半田が貫通部を通り抜けることになるため、隣接する引き出しパターン間に噴流半田が残存しにくくなり、半田ブリッジを回避することができる。
【0012】さらに、上記目的を達成するために、本発明による電子機器の取付構造では、上記の如く構成された電子機器を実装する母基板の表面に複数の金属端子を立設し、前記貫通部をこれら金属端子に挿入した状態で、前記引き出しパターンと前記金属端子とを半田付けした。
【0013】このように構成すると、電子機器を母基板に実装する場合において、母基板の表面に立設された複数の金属端子に各貫通部を挿入した状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各金属端子とを半田付けすれば、伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【0014】また、上記の構成において、前記筐体に互いに略直交する方向へ延出する第1の脚片と第2の脚片とを突設し、これら第1および第2の脚片のいずれか一方を前記母基板に挿入することにより、前記筐体を前記母基板上に保持するように構成すると、立型の電子機器としても伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】まず、立型と呼ばれる電子機器への適用例を図1〜図5に基づいて説明すると、図1は本発明の第1実施例に係る電子機器の斜視図、図2は該電子機器の正面図、図3は該電子機器が実装される母基板を裏面から見た要部平面図、図4は該電子機器を母基板に実装する直前の状態を示す正面図、図5は該電子機器を母基板に実装した状態を側方から見た部分断面図である。
【0017】図1と図2に示す電子機器は例えばチューナであり、この電子機器は、箱型形状の筐体1と、筐体1の内部に収納されたプリント基板2とで構成されている。筐体1は、前面および後面を開放する枠体3と、この枠体3の両開放面を覆う一対のカバー4とで構成されており、これら枠体3とカバー4は金属板から形成されている。枠体3の相対向する側面には脚片3aが形成されており、これら脚片3aは下方へ突出している。プリント基板2には図示せぬ回路部品が搭載されており、このプリント基板2には枠体3の底面を挿通して下方へ突出する延出部2aが延設されている。この延出部2aには複数の引き出しパターン5が並設されており、各引き出しパターン5の先端部には貫通部としての透孔6がそれぞれ穿設されている。なお、枠体3の両脚片3aは延出部5の両側に位置しており、これら脚片3aと延出部2aの突出量はほぼ同じに設定されている。
【0018】一方、図3に示すように、図1と図2に示す電子機器を実装するセット側の母基板(マザーボード)7には、両脚片3aに対応する挿入孔7aと延出部2aに対応する挿入孔7bとが穿設されている。また、この母基板7の裏面には、両脚片3aと各引き出しパターン5に半田付けされる複数のランド8が設けられており、これらランド8は各挿入孔7a,7bの周囲に位置している。
【0019】このような母基板7上に上記した立型の電子機器を実装する場合、まず、図4に示すように、電子機器の両脚片3aと延出部2aを母基板7の上方から挿入孔7a,7bにそれぞれ挿入し、両脚片3aによって筐体1を母基板7上に保持した状態にする。このとき、延出部2aの下半分は挿入孔7bを挿通して母基板7の裏面へ突出しており、各引き出しパターン5の先端部と透孔6は母基板7の裏面より若干下方へ配置される。しかる後、母基板7の裏面側から噴流半田(フローディップ半田)を塗着すると、図5に示すように、電子機器の両脚片3aおよび各引き出しパターン5と母基板7の各ランド8とが半田付けされ、母基板7上に立型の電子機器を実装することができる。
【0020】上記した第1実施例に係る立型の電子機器においては、筐体1の枠体3から下方へ突出するプリント基板2の延出部2aに、複数の引き出しパターン5と各引き出しパターン5を貫通する透孔6が設けてあり、これら引き出しパターン5を母基板7の各ランド8に半田付けするようになっている。したがって、プリント基板2に設けられた各引き出しパターン5が接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。また、このような立型の電子機器を母基板7に実装する場合、電子機器の延出部2aを母基板7の挿入孔7bに挿入するだけで、延出部2aに設けられた各引き出しパターン5と母基板7の各ランド8とを半田付けすることができ、しかも、かかる半田付け時に延出部2aに注がれる噴流半田が透孔6を通り抜けることになるため、隣接する引き出しパターン5間に噴流半田が残存しにくくなり、半田ブリッジを回避することができる。
【0021】次に、伏せ型と呼ばれる電子機器への適用例を図6と図7に基づいて説明すると、図6は本発明の第2実施例に係る電子機器の斜視図、図7は該電子機器を母基板に実装した状態の部分断面図である。
【0022】この第2実施例と前述した第1実施例との相違点の1つは、図6に示す伏せ型の電子機器においては、プリント基板2の延出部2aを枠体3の側面から外方へ突出させ、脚片3aを枠体3の四隅から下方へ突出させたことであり、この延出部2aに複数の引き出しパターン5と透孔6が設けられている点は同じである。第2実施例と第1実施例のもう1つの相違点は、図7に示すように、母基板7上に複数の端子9を立設し、これら端子9を延出部2aの透孔6に挿入して引き出しパターン5と半田付けしたことである。各端子9は母基板7に設けられたランド8と半田付けやかしめ等の手段で接続されており、端子9と透孔6の配列ピッチは同じになるように設定されている。また、この変更に伴って、母基板7には各脚片3aに対応する挿入孔7aのみが穿設され、延出部2aに対応する挿入孔は穿設されていない。
【0023】このように構成された第2実施例において、図6に示す伏せ型の電子機器を母基板7上に実装する場合は、予め複数の端子9を取り付けておいた母基板7に対して、図7に示すように、電子機器の各脚片3aを挿入孔7aに挿入すると共に、延出部2aの各透孔6を対応する端子9に挿入する。しかる後、延出部2aの表面で各端子9と各引き出しパターン5とを半田付けし、母基板7の裏面で各脚片3aをランド8に半田付けすれば、母基板7上に伏せ型の電子機器を実装することができる。
【0024】上記した第2実施例に係る伏せ型の電子機器においては、筐体1の枠体3から水平方向へ突出するプリント基板2の延出部2aに、複数の引き出しパターン5と各引き出しパターン5を貫通する透孔6が設けてあり、これら透孔6をセット側の母基板7に設けた各端子9に挿入した状態で、各引き出しパターン5と各端子9とを半田付けするようになっている。したがって、前述した第1実施例と同様に、プリント基板2に設けられた各引き出しパターン5が接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。
【0025】図8は本発明の第3実施例に係る電子機器の斜視図であり、この電子機器は立型としても伏せ型としても使用できるようになっている。すなわち、筐体1の枠体3には、延出部2aと同方向へ突出する複数の第1の脚片3bと、延出部2aの板面に対して直交する方向へ突出する複数の第2の脚片3cとが形成されている。したがって、図8に示す電子機器は、筐体1を第1の脚片3bを用いて母基板7上に保持すれば、第1実施例と同様に立型の電子機器として使用することができ、筐体1を複数の第2の脚片3cを用いて母基板7上に保持すれば、第2実施例と同様に伏せ型の電子機器として使用することができる。
【0026】なお、本発明においては、他にもいろいろな変形例が可能なことはいうまでもない。例えば、図9に示すように、延出部2aに各引き出しパターン5の先端部に達するスリット6aを設けてもよく、これらスリット6aは上記した各実施例における透孔6と同様に貫通部として機能する。また、筐体1を母基板7上に保持するための脚片3aは、必要に応じて形状や数量あるいは形成位置を変更可能であり、特に、伏せ型の電子機器の場合は、筐体1を構成する枠体3とカバー4のいずれか一方または両方に脚片3aを形成することができる。
【0027】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0028】筐体から突出するプリント基板の延出部に複数の引き出しパターンとこれら引き出しパターンを貫通する貫通部が設けてあり、これら各引き出しパターンが接続用の端子として機能するため、金属端子を省略して電子機器の製造コストを低減することができ、搬送時や実装時に懸念されていた金属端子の変形も解消することができる。
【0029】また、このような電子機器を母基板に実装する場合において、延出部を母基板の挿入孔に挿入して裏面へ突出させた状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各ランドとを噴流半田の塗着によって半田付けすれば、立型の電子機器として使用することができ、その際、延出部に注がれる噴流半田が貫通部を通り抜けることになるため、隣接する引き出しパターン間に噴流半田が残存しにくくなり、半田ブリッジを回避することができる。さらに、母基板の表面に複数の金属端子を立設しておき、各貫通部をこれら金属端子に挿入した状態で、延出部側の各引き出しパターンと母基板側の各金属端子とを半田付けすれば、伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【0030】また、筐体に互いに略直交する方向へ延出する第1の脚片と第2の脚片とを突設し、これら第1および第2の脚片のいずれか一方を母基板に挿入することにより、筐体を母基板上に保持するように構成すると、立型の電子機器としても伏せ型の電子機器としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る立型の電子機器を示す斜視図である。
【図2】該電子機器の正面図である。
【図3】該電子機器が実装される母基板を裏面から見た要部平面図である。
【図4】該電子機器を母基板に実装する直前の状態を示す正面図である。
【図5】該電子機器を母基板に実装した状態を側方から見た部分断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る伏せ型の電子機器を示す斜視図である。
【図7】該電子機器を母基板に実装した状態の部分断面図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る電子機器の斜視図である。
【図9】貫通部の変形例である。
【図10】従来より知られている立型の電子機器を示す斜視図である。
【図11】従来より知られている伏せ型の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 筐体
2 プリント基板
2a 延出部
3 枠体
3a 脚片
3b 第1の脚片
3c 第2の脚片
4 カバー
5 引き出しパターン
6 透孔(貫通部)
6a スリット(貫通部)
7 母基板
7a,7b 挿入孔
8 ランド
9 端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筐体と、この筐体内に収納されたプリント基板とを備え、前記プリント基板に前記筐体から突出する延出部を設け、この延出部に複数の引き出しパターンとこれら引き出しパターンを貫通する貫通部とを設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】 請求項1の記載において、前記貫通部が透孔またはスリットであることを特徴とする電子機器。
【請求項3】 請求項1または2に記載の電子機器を実装する母基板に、前記延出部が挿入される挿入孔と、この挿入孔の周囲に位置する複数のランドとを設け、前記引き出しパターンと前記ランドとを前記母基板の裏面で半田付けしたことを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項4】 請求項1または2に記載の電子機器を実装する母基板の表面に複数の金属端子を立設し、前記貫通部をこれら金属端子に挿入した状態で、前記引き出しパターンと前記金属端子とを半田付けしたことを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項5】 請求項3または4の記載において、前記筐体に互いに略直交する方向へ延出する第1の脚片と第2の脚片とを突設し、これら第1および第2の脚片のいずれか一方を前記母基板に挿入することにより、前記筐体が前記母基板上に保持されていることを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項1】 筐体と、この筐体内に収納されたプリント基板とを備え、前記プリント基板に前記筐体から突出する延出部を設け、この延出部に複数の引き出しパターンとこれら引き出しパターンを貫通する貫通部とを設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】 請求項1の記載において、前記貫通部が透孔またはスリットであることを特徴とする電子機器。
【請求項3】 請求項1または2に記載の電子機器を実装する母基板に、前記延出部が挿入される挿入孔と、この挿入孔の周囲に位置する複数のランドとを設け、前記引き出しパターンと前記ランドとを前記母基板の裏面で半田付けしたことを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項4】 請求項1または2に記載の電子機器を実装する母基板の表面に複数の金属端子を立設し、前記貫通部をこれら金属端子に挿入した状態で、前記引き出しパターンと前記金属端子とを半田付けしたことを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項5】 請求項3または4の記載において、前記筐体に互いに略直交する方向へ延出する第1の脚片と第2の脚片とを突設し、これら第1および第2の脚片のいずれか一方を前記母基板に挿入することにより、前記筐体が前記母基板上に保持されていることを特徴とする電子機器の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2003−37340(P2003−37340A)
【公開日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−341588(P2001−341588)
【出願日】平成13年11月7日(2001.11.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年11月7日(2001.11.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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