説明

電子機器のボタンの良否判定方法、電子機器の製造方法及び電子機器ボタン試験装置

【課題】電子機器のボタンの良否判定方法、電子機器の製造方法及び電子機器ボタン試験装置に関し、ライン適用時に高速の押下速度による測定で精度の高い良否判定を行う。
【解決手段】第1の押下速度で求めた極大値を第1特徴点の第1荷重とする工程と、第1特徴点の前記第1荷重を、第2の押下速度で押下した時の第1特徴点の第2荷重に補正する第1の補正工程と、第1の押下速度で求めた極小値を第2特徴点の第3荷重とする工程と、第2特徴点の第3荷重を、第2の押下速度で押下した時の第2特徴点の第4荷重に補正する第2の補正工程と、第2荷重及び第4荷重に基づいて、ボタンの良否判定を行う工程を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器のボタンの良否判定方法、電子機器の製造方法及び電子機器ボタン試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などのキーは、操作感を高めるために「クリック感」を持っている。図7は、一般的な携帯電話のキーの構成説明図であり、図7(a)は押下前の概略的平面図であり、図7(b)は図7(a)におけるA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った概略的断面図であり、図7(c)は座屈時の概略的断面図である。
【0003】
図7(a)及び(b)に示すように、キーは回路基板41上に形成した中心電極42と周辺電極43とからなる電極対を覆うように導電性部材からなるとともに中央に当接部45を有するドーム44で覆い、その表面をシート46で覆って保護する。そして、背面にラバー48を介して押圧部49を設けたキートップ47が押圧部49がシート46を介してドーム44の頂部に当接するように設置されている。また、電極対は抵抗50を介して電源51と接続されており、電圧によりキーの押下を検出する。
【0004】
図7(c)に示すように、キーを押す力を増すと、薄いドーム44は徐々に変形するのではなく、ある荷重で飛び移りと呼ばれる座屈を起こして急激に潰れる。この時の反力の変化や衝撃などがクリック感になっていると考えられる。
【0005】
この「クリック感」の品質検査を定量的に行う方法として、加速度や衝撃音などを判定指標とする方法(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)、ストロークと荷重の関係から求める方法(例えば、特許文献3乃至特許文献6参照)が提案されている。
【0006】
この内、現状ではストロークと荷重(一定速の場合は時間と荷重でも良い)の関係から求めるのが一般的である。例えば、図8に示すように、一般的にクリック感のあるキーを押した時のキーからの反力は、極大荷重Pに達した後一旦極小荷重Pまで降下し、再度上昇する。この特徴的な荷重P,Pにより定義されるクリック率(P−P)/Pなどを比較して良否判定を行う(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−048097号公報
【特許文献2】特開平11−191330号公報
【特許文献3】特開昭62−217516号公報
【特許文献4】特開平05−333985号公報
【特許文献5】特開平05−273083号公報
【特許文献6】特開平07−055654号公報
【特許文献7】特開2003−173723号公報
【特許文献8】特開2008−218156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の提案では、以下の点が考慮されていない。まず、第1に減衰の影響が考慮されていないという問題がある。キーは、図7に示したようにラバーを内包している上、製品を検査対象とする場合にはキーを押す部品に傷防止部材が必要である。一般にこのような材料は減衰力が大きく、さらに減衰力は速度の関数になっていることが多い。
【0009】
このため、図9に示したように、比較的遅いmm/秒オーダの速度で押しても、P荷重,P荷重は速度の影響を受けることになる。さらに、クリック率に換算すると図10に示すように大きく変化してしまい、ある速度で求めたクリック率と別の速度で求めたクリック率は直接比較することができない。
【0010】
したがって、基準値を決定する場合など、精密測定が必要な場合には極低速でキーを押下することが多い。しかし、製造ラインの検査ではタクトタイム短縮のためキーを高速で押す必要がある。このように、判定基準の設定時とライン適用時では速度を変える可能性が高いが、ライン上での速度が変わる度に判定基準を計測し直すのは非効率であるという問題がある。
【0011】
第2に極小荷重Pの不連続性が考慮されていないという問題がある。上述のように、極小荷重Pは、ドームが座屈して負のばね特性となっている状態から、電極に接触して基板のばね特性へと突然変化する不連続点である。本質的に曲率無限大の点であるため、荷重計測手段の周波数帯域やローパスフィルタの影響を受けて鈍化し、Pの正しい値が得られないという問題がある。
【0012】
特に、図11に示すように、押下速度が速い程荷重計測手段の周波数帯域やローパスフィルタの影響を受けて鈍化が顕著になるため、精度の高い測定のためには、押下速度を遅く競っている必要があり、タクトタイムの短縮ができないという問題がある。
【0013】
したがって、本発明は、ライン適用時に高速の押下速度による測定で、精度の高い良否安定を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点からは、第1の押下速度で求めた極大値を第1特徴点の第1荷重とする工程と、第1特徴点の前記第1荷重を、第2の押下速度で押下した時の第1特徴点の第2荷重に補正する第1の補正工程と、第1の押下速度で求めた極小値を第2特徴点の第3荷重とする工程と、第2特徴点の第3荷重を、第2の押下速度で押下した時の第2特徴点の第4荷重に補正する第2の補正工程と、第2荷重及び第4荷重に基づいて、ボタンの良否判定を行う工程とを有する電子機器のボタンの良否判定方法が提供される。
【0015】
また、本発明の別の観点からは、第1の押下速度で電子機器のボタンの第1特徴点の第1荷重を求める工程と、前記第1特徴点の前記第1荷重を、第2の押下速度で押下した時の前記第1特徴点の第2荷重に補正する第1の補正工程と、前記第1の押下速度で第2特徴点の第3荷重を求める工程と、前記第2特徴点の前記第3荷重を、前記第2の押下速度で押下した時の前記第2特徴点の第4荷重に補正する第2の補正工程と、前記第2荷重及び前記第4荷重に基づいて、前記ボタンの良否判定を行う工程とを有する電子機器の製造方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明の別の観点からは、電子機器のボタンの複数の押下速度における第1特徴点及び第2特徴点の複数の荷重を備えるデータベースと、第1の押下速度で前記第1特徴点の第1荷重及び前記第2特徴点の第3荷重を求める測定部と、前記第1の押下速度で前記第1特徴点の前記第1荷重及び前記第2特徴点の前記第3荷重を、前記第2の押下速度で押下した時の前記第1特徴点の第2荷重及び前記第2特徴点の第4荷重に補正する補正部と、前記第2荷重及び前記第4荷重に基づいて、前記ボタンの良否判定を行う判定部とを有する電子機器ボタン検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
開示の電子機器のボタンの良否判定方法、電子機器の製造方法及び電子機器ボタン試験装置によれば、押下速度依存性のない、一定の評価指標でクリック感の品質管理が可能となる。また、押下速度依存性がないので高速の押下速度での試験が可能になり検査の高速化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の電子機器ボタン検査装置の概略的システム構成図である。
【図2】荷重−押下速度特性図である。
【図3】減衰関数C(v)の一例の説明図である。
【図4】本発明の実施例1の電子機器ボタンの良否判定方法を示すフローチャートである。
【図5】近似多項式の概念的説明図である。
【図6】本発明の実施例1の電子機器ボタンの良否判定方法を示すフローチャートである。
【図7】一般的な携帯電話のキーの構成説明図である。
【図8】キーの荷重変化の説明図である。
【図9】極大荷重及び極小荷重の押下速度依存性の説明図である。
【図10】クリック率の押下速度依存性の説明図である。
【図11】極小荷重の鈍化の押下速度依存性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態の電子機器ボタン検査装置の概略的システム構成図であり、測定系と制御系とにより構成される。図1(a)に示すように、測定系は台座10上に設置されたxステージ11、xステージ11に固定されたzステージ12、zステージ12に固定され、ロードセル14とロードセル14の先端に取り付けられた傷防止部材付き指15を備えた押圧部13、台座10上に設置されたyステージ16、yステージ16に載置された被検査電子機器18を載置する傷防止台17、被検査電子機器18を傷防止台17とともに回転させる回転ステージ19を備えている。なお、回転ステージ19は被検査電子機器18の側面に設けられた横ボタンのクリック特性を検査する場合に、被検査電子機器18の側面を傷防止部材付き指15を略垂直に当接させる際に用いる。
【0020】
一方、図1(b)に示すように、制御系は制御装置20、典型的にはコンピュータからなり、この制御装置20には、各ステージの移動を制御する制御ボード21、ロードセル14を上下動を制御するAD変換器22、ロードセル14による測定結果から荷重−ストローク特性の近似多項式や減衰特性を求める演算部23、演算部23で求めた結果をデータ格納部24に格納されたデータベースを用いて補正する補正部25、補正部25で補正した補正結果とデータ格納部24に格納した良否判定基準とを対比する良否判定部26を備えている。
【0021】
このような電子機器ボタン検査装置を用いて被検査電子機器18、典型的には携帯電話のキーボタンを検査を行う。まず、基準となる品質の被検査電子機器18に対して、各々のキーボタンについて押下速度−極大荷重、押下速度−極小荷重の計測を行い、速度と荷重増分の関数、即ち、減衰関数C(v)及びC(v)を求める。
【0022】
図2は、荷重−押下速度特性図であり、測定点はm個とし、m個の押下速度v〜vについて、特徴荷重P及びPをそれぞれ計測する。なお、ここでは、極小荷重Pについての荷重−押下速度特性図を示しているが、極大荷重Pについても同様の計測を行う。
【0023】
次に、測定結果Pは、n次(m≧n)の多項式で近似できると仮定し、得られたm個のデータについて下記の行列式P=Vaで表現する。なお、m≠nの場合には速度マトリクスVの逆行列が存在しないため、一般化逆行列V+ を求める。
【数1】

【0024】
ここで、P=Vaの両辺に一般化逆行列V+ をかけると、V+ V=1であるので、
a=V+
となり、このV+ Pから多項式の係a〜aが求まる。
このように求めた係数a〜aを用いて押下速度vに対する荷重Pの増減を示す減衰関数C(v)を下記の式で定義する。
C(v)=an +an-1 +・・・+an−1v=Σan-i
なお、C(v)は、極大値Pに関する減衰関数であり、C(v)は、極小値Pに関する減衰関数である。
【0025】
図3は、減衰関数C(v)の一例の説明図であり、この減衰関数C(v)は図2に示した荷重の押下速度特性図の理想曲線のオフセット分を除いたものと同等になる。したがって、図2に示した荷重の押下速度特性図における任意の2つの押下速度v,vにおける荷重P(v)とP(v)の差分は、図3に示した減衰関数C(v)における任意の2つの押下速度v,vにおける減衰値C(v)とC(v)の差分と等しくなる。
【0026】
したがって、例えば、良品となった製品のクリック率の統計データに必要なマージンを加味して良否判定の基準値を決定する。例えば、基準値、例えば、クリック率はキーボタンの押下速度が遅いほど精度が高くなるので、低速vで極大値P(v)及び極小値P(v)を計測して、クリック率〔P(v)−P(v)〕/P(v)を求める。このクリック率の統計データに必要なマージン、例えば、3σ或いは4σを加味して良否判定の基準値とする。ここでは、基準となる品質の製品に対して全ての製品で減衰特性が同じであるという仮定を前提としている。
【0027】
次に、被検査電子機器に対する極大値P及び極小値Pの測定を、タクトタイムの短縮のために比較的高速の押下速度vで行う。このままクリック率〔P(v)−P(v)〕/P(v)を求めても、押下速度が良否判定の基準値を求めた際の押下速度vと異なるので、図9から明らかなように直接的に比較することはできない。
【0028】
そこで、押下速度vにおける測定結果を図3に示した減衰関数C(v)を用いて押下速度vにおける荷重に変換する。上述のように、減衰特性が同じであるので、減衰関数C(v)を用いることによって、押下速度vにおける荷重P(v)を押下速度vにおける荷重P(v)に変換することができる。
【0029】
即ち、極大値Pについては、
(v)=P(v)+C(v)−C(v
となり、この式から押下速度vにおける荷重P(v)を求めると
(v)=P(v)−C(v)+C(v
となる。一方、極小値Pについては、
(v)=P(v)+C(v)−C(v
となり、この式から押下速度vにおける荷重P(v)を求めると
(v)=P(v)−C(v)+C(v
となる。
【0030】
このように変換した荷重を用いてクリック率を押下速度vにおけるクリック率〔P(v)−P(v)〕/P(v)として求める、その結果を、良品から求めた良否判定の基準値と比較して良否判定を行う。この場合の良否判定基準は、ある標準のキーひとつについて決めたデータを用いても、ある標準となる端末の全てのキーについて決めたデータを、計測するキー毎に呼び出して用いても良い。
【0031】
このように、本発明の実施の形態においては、予め良品に関して求めた減衰関数C(v)を用いて、所定の押下速度vにおいて測定した荷重P(v)を、精度の高い測定が可能な低押下速度vにおける荷重P(v)に変換して良否判定を行っている。したがって、短いタクトタイムで低押下速度vの場合と同様の高精度の良否判定を行うことが可能になる。
【0032】
以上の説明においては、クリック率を判定指標に用いているため、キー毎に、極大荷重P及び極小荷重Pについての押下速度−荷重特性曲線を求め、これの押下速度−荷重特性曲線から減衰関数C(v)を求めている。そのために、計測数が増え、事前のデータベースの構築に多くの時間を要することになる。
【0033】
そこで、判定指標として2つの押下速度における極大荷重及び極小荷重について勾配を求め、この勾配を良品についても求めた勾配の統計データに必要なマージン(±α)を加味して良否判定の基準値とする。それによって、データベースの構築時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
この場合、被検査電子機器のキーボタンについてデータベースと同じ2つの押下速度v,vにおける極大荷重P(v),P(v)及び極小荷重P(v),P(v)を求め、それから極大値に関する勾配c及び極小値に関する勾配cを、それぞれ、
=〔P(v)−P(v)〕/(v−v
=〔P(v)−P(v)〕/(v−v
として求める。このc,cが良否判定基準を満たしている場合に良品として判定する。
【0035】
なお、上記の判定方法においては、キーボタンの動応答の影響が反映されていないため、ライン適用時にすり抜けや過剰な不良判定を生じる可能性がある。即ち、P荷重やP荷重から求めるクリック率は、低速で押下すれば、どの計測器でも比較可能な絶対指標として運用できる長所はあるものの、あくまで準静的な指標である。しかし、上述のように、クリック感は、ドームが座屈して反力がPから急激に減少する際の動的な応答である。したがって、クリック率が実際の感触の良さと完全に一致する指標と言う訳ではないためである。
【0036】
この場合には、極大荷重に至るまでの押下速度−荷重特性曲線の傾きを剛性Kの指標とし、極小荷重以降の押下速度−荷重特性曲線の傾きを剛性Kの指標とする。この剛性K,Kを減衰C(v)と併せて判定基準とすることにより、実際の感覚に近い良否判定が可能となる。例えば、定性的には剛性Kが大きなキーは感触が良く、減衰C(v)が大きいキーは感触が悪いと判定される。
【実施例1】
【0037】
以上を前提として、次に、図4及び図5を参照して、本発明の実施例1の電子機器ボタンの良否判定方法を説明する。図4は本発明の実施例1の電子機器ボタンの良否判定方法を示すフローチャートである。
【0038】
図4に示すように、まず、
ステップS:被検査電子機器としての携帯電話を傷防止台にセットする。次いで、
ステップS:xステージ及びyステージを駆動して傷防止部材付き指を所定のキー位置へ移動させる。次いで、
ステップS:速度vでzステージを降下させる。次いで、
ステップS:ストローク計測を開始する。次いで、
ステップS:荷重計測を開始する。
ステップS:荷重が破壊防止のために予め定めた停止荷重に到達したか否かを判定し、停止荷重に到達するまで荷重計測を継続する。次いで、
ステップS:停止荷重に到達した時点で、荷重計測を停止するとともに、zステージを停止する。次いで、
ステップS:Zステージを上昇させる。
ここまでのステップを測定系において行い、以降のステップは制御系において行う。
【0039】
次に、制御装置の演算部において、
ステップS:測定した荷重データ列を二階微分する。次いで、
ステップS10:二階微分した値の最大値近傍で極小荷重Pに対応するストローク量x′を探索する。次いで、
ステップS11:ストローク量x′以下の領域において、極大荷重Pに対応するストローク量x′を探索する。次いで、
ステップS12:x′±(x′−x′)の範囲で、荷重Pの近似多項式fP1(x)を求める。次いで、
ステップS13:x′±(x′−x′)の範囲で、近似多項式fP1(x)の極大値をP(v)とする。次いで、
ステップS14:ストローク量x′〜x′の範囲において、荷重Pの近似多項式fP2(x)を求める。次いで、
ステップS15:ストローク量x′以降の任意の範囲で、近似多項式gP2(x)を求める。次いで、
ステップS16:近似多項式fP2(x)と近似多項式gP2(x)の交点を極小荷重P(v)として求める。
【0040】
図5は、近似多項式の概念的説明図であり、図5(a)は測定データにおける荷重−ストローク量曲線であり、図5(b)及び(b)は各近似多項式の説明図である。図5(c)に示すように、近似多項式fP2(x)と近似多項式gP2(x)の交点を極小荷重P(v)とすることによって、極小荷重P(v)を精度良く評価することができる。
【0041】
図10に示したように、押下速度が速い程、荷重計測手段の周波数帯域やローパスフィルタの影響を受けて測定データにおける極小値の鈍化が顕著になる。しかし、近似多項式fP2(x)と近似多項式gP2(x)を用いることによって、押下速度を速めても極小荷重Pが精度良く求まる。
【0042】
したがって、押下速度を速めた計測が可能になるのでタクトタイムを短縮することができる。また、荷重計測手段の周波数帯域やローパスフィルタの影響を大幅に低減することができるので、計測系の周波数帯域を下げることができ、それによって、検査装置の低コスト化も可能になる。
【0043】
再び、図4を参照して、次に、制御装置の補正部において、
ステップS17:極大荷重P(v)及び極小荷重P(v)を、データ格納部に予め格納した減衰関数C(v)及びC(v)を用いて減衰補正を行う。この減衰補正によって、判定基準値を求めた時の押下速度vにおける荷重P(v)及びP(v)に変換される。次いで、
ステップS18:クリック率α=〔P(v)−P(v)〕/P(v)を求める。
【0044】
最後に、制御装置の良否判定部において、
ステップS19:求めたクリック率αを、データ格納部に予め格納した判定基準となるクリック率αと比較する。ここで、α>αのものを良品と判定し、α≦αのものを不良品と判定する。なお、データベースの構築に際して必要な極大荷重P及び極小荷重Pの計測に際しても、上記のステップS〜ステップS16と同じステップを踏んで求める。
【0045】
このように、本発明の実施例1においては、予め良品に基づいて求めた減衰関数C(v)を用いて、ラインにおける測定時の押下速度vによる荷重を、良否判定基準値を設定した時の遅い押下速度vにおける荷重に変換している。したがって、ラインにおける測定時の押下速度vを速めても精度の高い良否判定が可能になるのでタクトタイムを大幅に短縮することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、図6を参照して、本発明の実施例2の電子機器ボタンの良否判定方法を説明する。図6は本発明の実施例2の電子機器ボタンの良否判定方法を示すフローチャートであり、まず、
ステップs:被検査電子機器としての携帯電話を傷防止台にセットする。次いで、
ステップs:xステージ及びyステージを駆動して傷防止部材付き指を所定のキー位置へ移動させる。次いで、
ステップs:押下速度をvに設定する。次いで、
ステップs:極大荷重P(v)及び極小荷重P(v)を計測する。この計測に際しては、上記の実施例1に示したステップS〜ステップS16と全く同様のステップを踏んで行う。
【0047】
次いで、
ステップs:押下速度をvに設定する。次いで、
ステップs:極大荷重P(v)及び極小荷重P(v)を計測する。この計測に際しても、上記の実施例1に示したステップS〜ステップS16と全く同様のステップを踏んで行う。
【0048】
次に、制御装置の演算部において、
ステップs:極大荷重Pの減衰に関する勾配c
=〔P(v)−P(v)〕/(v−v)として求める。次いで、
ステップs18:極小荷重Pの減衰に関する勾配c
=〔P(v)−P(v)〕/(v−v)として求める。
【0049】
最後に、制御装置の良否判定部において、
ステップs:求めた勾配c及びcを、データ格納部に予め格納した判定基準となる勾配cs1及びcs2のマージンβを見込んだ許容範囲内か否かを判定する。ここで、cs1−β<c<cs1+β、且つ、cs2−β<c<cs2+βのものを良品と判定し、それ以外のものを不良品と判定する。
【0050】
この実施例2においては、良否判定のデータベースを構築する際の押下速度はvとvの2測定点での測定だけで良いので、データベースの構築に要する時間を低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0051】
10 台座
11 xステージ
12 zステージ
13 押圧部
14 ロードセル
15 傷防止部材付き指
16 yステージ
17 傷防止台
18 被検査電子機器
19 回転ステージ
20 制御装置
21 制御ボード
22 AD変換器
23 演算部
24 データ格納部
25 補正部
26 良否判定部
41 回路基板
42 中心電極
43 周辺電極
44 ドーム
45 当接部
46 シート
47 キートップ
48 ラバー
49 押圧部
50 抵抗
51 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の押下速度で電子機器のボタンの第1特徴点の第1荷重を求める工程と、
前記第1特徴点の前記第1荷重を、第2の押下速度で押下した時の前記第1特徴点の第2荷重に補正する工程と、
前記第1の押下速度で前記ボタンの第2特徴点の第3荷重を求める工程と、
前記第2特徴点の前記第3荷重を、前記第2の押下速度で押下した時の前記第2特徴点の第4荷重に補正する工程と、
前記第2荷重及び前記第4荷重に基づいて、前記ボタンの良否判定を行う工程と
を有することを特徴とする電子機器のボタンの良否判定方法。
【請求項2】
前記補正する工程は、予め求められた複数の押下速度における前記第1特徴点及び前記第2特徴点の複数の荷重に基づいて補正することを特徴とする請求項1に記載の電子機器のボタンの良否判定方法。
【請求項3】
前記第1特徴点及び前記第2特徴点の荷重は変位荷重曲線を特徴付ける変化点にお
ける荷重であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器のボタンの良否判定方法。
【請求項4】
第1の押下速度で電子機器のボタンの第1特徴点の第1荷重を求める工程と、
前記第1特徴点の前記第1荷重を、第2の押下速度で押下した時の前記第1特徴点の第2荷重に補正する工程と、
前記第1の押下速度で第2特徴点の第3荷重を求める工程と、
前記第2特徴点の前記第3荷重を、前記第2の押下速度で押下した時の前記第2特徴点の第4荷重に補正する工程と、
前記第2荷重及び前記第4荷重に基づいて、前記ボタンの良否判定を行う工程と
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項5】
電子機器のボタンの複数の押下速度における第1特徴点及び第2特徴点の複数の荷重を備えるデータベースと、
第1の押下速度で前記第1特徴点の第1荷重及び前記第2特徴点の第3荷重を求める測定部と、
前記第1の押下速度で前記第1特徴点の前記第1荷重及び前記第2特徴点の前記第3荷重を、前記第2の押下速度で押下した時の前記第1特徴点の第2荷重及び前記第2特徴点の第4荷重に補正する補正部と、
前記第2荷重及び前記第4荷重に基づいて、前記ボタンの良否判定を行う判定部と
を有することを特徴とする電子機器ボタン検査装置。
【請求項6】
電子機器のボタンを一定の押下速度で押して、複数のストローク量における荷重‐ストローク特性を測定する工程と、
前記荷重‐ストローク特性のデータ列を二階微分して、二階微分値の最大値近傍における最大荷重に対応する第1のストローク量xを決定する工程と、
前記第1のストローク量x以下のストローク領域において、最大荷重に対応する第2のストローク量xを決定する工程と、
前記第2のストローク量x を中心としたx ±(x−x)の範囲において、前記荷重−ストローク特性の近似多項式fP1(x)を求め、前記近似多項式fP1(x)の極大値を求める工程と、
前記第2のストローク量xから前記第1のストローク量xの範囲において、前記荷重−ストローク特性の近似多項式fP2(x)を求めるとともに、前記第1のストローク量x以上のストローク領域において、前記荷重‐ストローク特性の近似多項式gP2(x)を求め、前記近似多項式fP2(x)と近似多項式gP2(x)との工程を極小点とする工程とを少なくとも有することを特徴とする電子機器のボタンの良否判定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−203821(P2010−203821A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47620(P2009−47620)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】