説明

電子機器の冷却構造

【課題】圧縮空気を用いることで電子機器筐体の開口部を縮小し、さらに圧縮空気を各発熱部品へ直接導くことで風温上昇の影響を受けない冷却構造を提供する。
【解決手段】電子機器内部の発熱体を冷却する冷却構造において、電子機器の筐体10の外部に設置された高圧空気供給源110からの圧縮空気が供給され、圧縮空気を、発熱体102、104まで導く通風管106を備え、通風管106により発熱体102、104まで導かれた圧縮空気と電子機器の筐体内部の圧力差によって発生した噴流によって、発熱体102、104の冷却を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却構造に関し、特に、電子機器の筐体外部から供給される圧縮気体を用いて、各部品から発生した熱を、熱伝達により冷却する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器は日々進化しており、またそのスピードは目を見張るものがある。特に近年は電子機器の高密度化、高集積化が進み、装置は小型化している。
【0003】
これに対し、CPUやDIMMなど電子機器の主要部品は、計算速度の向上や記憶容量の増加により、消費電力は増大傾向にある。さらに高性能化への要求から、これらの部品を1つの筐体の中に複数搭載することが多く見られる。
【0004】
これに伴い、電源出力も増加傾向にある。電源サイズと出力には密接な関係にあり、出力が増加すると電源サイズは大型化する傾向にある。しかし装置の小型化の要求により、電源は十分なスペースを確保することが困難となっている。
【0005】
これらの部品を冷却するため、例えば、特開平7−162180号公報(特許文献1)などに記載されたように、装置冷却用の送風機は回転数や搭載個数の増加によって対応してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−162180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回転数の増加は送風機単体の消費電力増加を招き、搭載個数の増加は装置全体での消費電力増加の要因となっている。
【0008】
一方、環境への関心の高まりから、電子機器に対する低消費電力化の要望が強くなっている。また、送風機の搭載個数の増加は大きなスペースを必要とする。そのため装置小型化の流れに反することになり、高集積化を実現する上での課題にもなっている。
【0009】
また、電子機器の筐体の前面および背面にはUSB、LAN、VGA等の外部接続ポートやHDD、DVD、CD等のドライブが数多く配置されている。
【0010】
しかし、送風機を用いた電子機器の冷却では、筐体に吸気口と排気口の2種類の開口を設ける必要がある。また、それぞれの開口は発熱部品に対して対称位置に存在する場合が最も効率が良いが、同一方向にある場合は風向板によって風を導く必要があり、開口位置によって冷却性能が大きく異なってしまう。
【0011】
さらに、ブレードサーバのように複数の電子機器を並列に配置し、これらを送風機によって同時に冷却する場合、送風機は稼動中の保守性を考慮し、電子機器の前面もしくは背面に送風機を搭載することが多くある。送風機搭載部分や開口部には部品を搭載することができないため、十分な冷却能力を得るために搭載部品を制限する必要が生じているという問題がある。
【0012】
また、送風機による冷却では電子機器内部の風の流れは、ある一定方向に流れる。この場合、上流では装置周囲温度と同等の冷却風によって発熱部品を冷却するが、下流に配置する部品では上流に配置する部品の発熱によって冷却風の温度は上昇している。そのため高発熱部品の下流に配置する部品は、それ自身の発熱量が小さい場合であっても上流の発熱部品による風温上昇の影響を受け、温度が上昇するという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、これらの問題を有する従来技術に対し、圧縮空気を用いることで電子機器の筐体の開口部を縮小し、さらに圧縮空気を各発熱部品へ直接導くことで風温上昇の影響を受けない冷却構造を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0016】
すなわち、代表的なものの概要は、電子機器内部の発熱体を冷却する冷却構造であって、電子機器の筐体外部に設置された高圧空気供給源からの圧縮空気が供給され、圧縮空気を、発熱体まで導く通風管を備え、通風管により発熱体まで導かれた圧縮空気と電子機器の筐体内部の圧力差によって発生した噴流によって、発熱体の冷却を行うものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0018】
本発明では、圧縮空気を通風管や、通風管に接続された空気溜まりによって導き、噴流によって冷却を行うことにより、送風機を用いた冷却と比較して、同じ質量流量の空気を吸気するために必要な筐体開口部を減少することができる。
【0019】
これらの吸気口、排気口の位置に相対関係はなく、発熱部品に対し同一方向に吸気口、排気口を配置することも可能である。
【0020】
また、送風機を搭載する必要がなくなるため、新たにスペースが生まれる。筐体開口部の減少とスペースの確保により電子機器を追加することが可能となる。これにより、さらなる高密度実装が可能となり、CPUやDIMMの搭載数増加による性能向上、IO部品の搭載数増加による可用性の向上がある。
【0021】
また、圧縮空気を各発熱部品まで導くことで、上流の発熱部品による風温上昇の影響はなく、常に周囲温度と同等の冷却風による放熱が可能となる。そのため部品配置位置による冷却性能の差はなくなり、冷却に関する部品レイアウトの制約がなくなる。
【0022】
また、風温上昇の影響がなくなることで冷却効率が上昇し、従来より少ない冷却風量での冷却が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造をブレードサーバに用いた例を説明するための説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造をブレードサーバに用いた例を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造による発熱体の温度の制御方法を示す制御ブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造による発熱体の温度の制御方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
(実施の形態1)
<冷却構造の構成図>
図1により、本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【0026】
図1において、電子機器の筐体10内に設置された基板101上に発熱体1(102)および発熱体2(104)が搭載されている。発熱体1(102)および発熱体2(104)のそれぞれには冷却性能向上のため、ヒートシンク103、105が搭載されている。
【0027】
また、電子機器の冷却構造としては、電子機器の筐体10の外部に設置した高圧空気供給源110から通風管106を用いて、電子機器の筐体10の外部と接続するための端子107を通り、圧縮空気をヒートシンク103、105へ供給することにより、圧縮空気と電子機器の筐体内部の圧力差によって噴流が発生し、発熱体1(102)および発熱体2(104)の冷却を行う構造である。
【0028】
<通風管の断面積および肉厚>
次に、通風管の断面積および肉厚について説明する。
【0029】
電子機器の冷却に必要な通風管106の断面積は、送風機による冷却時の流量から求めることができる。ボイルの法則から、温度が一定のとき、気体の体積は圧力に反比例するため以下の式1の関係となる。
【0030】
PV=P’V’…(式1)
ここで、Pは状態変化前の気体の圧力[Pa]、Vは状態変化前の気体の体積[m3]、P’は状態変化後の気体の圧力[Pa]、V’は状態変化後の気体の体積[m3]を表す。ここで一般的なサーバの例として、電子機器全体での発熱量50[W]、送風機による冷却時の必要流量0.1[m3/min]とする。
【0031】
この電子機器の冷却に0.5[MPa]の圧縮空気を用いたとすると、大気圧はほぼ0.1MPaなので、式1より、高圧空気供給源110による状態変化後の気体の体積V’は、状態変化前の気体(すなわち、大気圧の気体)の体積Vに比べ1/5でよくなり、圧縮空気の必要流量は0.02[m3/min]となる。
【0032】
そして、送風機による冷却時の開口通過風速と通風管106の風速が同じとすると、電子機器の冷却に必要な通風管106の断面積は、(送風機による冷却時の吸気部開口面積)×1/5となる。
【0033】
また、通風管106の肉厚は圧縮された圧縮空気の圧力と通風管106の材質を用いて、t=Pd/(2σa)、σa=σ/Sから求めることができる。
【0034】
ここで、tは通風管106の肉厚[mm]、dは通風管106の内径[mm]、σは通風管106の引張強さ[N/mm2]、Sは安全率である。ここで、通風管106の内径を20[mm]、通風管106の材質にはポリ塩化ビニル管を使用したとすると通風管106の引張強さσは、40.67[N/mm2]、安全率Sは瞬間的な圧力の上昇や振動の影響も考慮し、8とする。これらの条件から通風管106の肉厚tは0.99[mm]以上の肉厚が必要と求まる。
【0035】
<高圧空気供給源>
また、高圧空気供給源として、工場内エアー配管などがある場合には、その工場内エアー配管などを電子機器に接続することで、本実施の形態の冷却構造を構築することが可能である。しかし、実際には電子機器が工場に設置されることは少なく、多くはオフィスなどの一角に部屋を設け、そこに配置される。そのような場合はエアー配管がないため、圧縮空気の供給源としてコンプレッサが新たに必要となる。
【0036】
このコンプレッサの性能としては、先述の電子機器の例では、圧縮空気の圧力0.5[MPa]、必要流量は0.02[m3/min]であった。これを3台同時に冷却すると仮定すると、圧縮空気の圧力0.5[MPa]以上、必要流量0.06[m3/min]となる。ここで、コンプレッサに必要な性能として配管の漏れや各種バルブの圧力損失を考慮すると、圧縮空気圧力より0.2[MPa]程度高く、必要流量の1.3倍程度の性能が必要となる。
【0037】
<ブレードサーバでの冷却構造>
次に、図2および図3により、本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造をブレードサーバに用いた例について説明する。図2および図3は本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造をブレードサーバに用いた例を説明するための説明図であり、図2はブレードサーバ全体を示す斜視図、図3はブレードサーバの内部を示す断面図である。
【0038】
図2および図3に示す例では、2筐体のブレードサーバを、コンプレッサ201で発生した圧縮空気を用いて冷却を行っている。
【0039】
図2および図3において、ブレードサーバは、前面にサーバブレード202を搭載し、背面には電源モジュール204、送風機モジュール205、スイッチモジュール206を搭載している。前面と背面の装置はミッドプレーン203によって電気的に接続している。
【0040】
コンプレッサ201で発生した圧縮空気は通風管106によって、それぞれのサーバブレード202へと送られている。そして、通風管106と通風管106を接続するための端子107を通り、ヒートシンク103、105を冷却する。サーバブレード202の稼動時保守の挿抜時には、電気的な接続はコネクタ301で行い、圧縮空気の供給は端子107で行っている。
【0041】
これにより、端子107の構造として、通風管106と通風管106とが正常に接続されたときに圧縮空気が通るような構造とすれば、サーバブレード202の挿抜時においても圧縮空気が漏れることない。
【0042】
さらに、この冷却構造を用いてサーバブレード202を冷却することで、圧縮空気のみでサーバブレード202の冷却することができれば、送風機モジュール205を削除することもでき、この送風機モジュール205の代わりにスイッチモジュール206を増設することも可能である。
【0043】
さらに、圧縮空気により電源モジュール204を冷却することにより、電源の小型化が可能となり、スイッチモジュール206のさらなる拡大が可能である。
【0044】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1では高圧空気供給源110からの圧縮空気を通風管106により発熱体へ冷却風として供給するものであったのを、圧縮空気による冷却風を常に一定にするだけではなく、発熱体の温度に応じて、圧縮空気による冷却風の風量を調節するようにしたものである。
【0045】
<冷却構造の構成図>
図4により、本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造について説明する。図4は本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【0046】
図4において、図1に示す実施の形態1の電子機器の冷却構造との差異は、発熱体1(102)および発熱体2(104)の温度を測定する温度測定部112と、温度の監視と冷却風の流量の調節を制御する制御回路403と、冷却風の流量を調節する圧縮空気調節部であるレギュレータ404を設け、温度測定部112と制御回路403の間を発熱体温度読み取り用信号線401で接続し、制御回路403とレギュレータ404との間をレギュレータ制御用信号線402によって接続した点である。その他の構成は図1に示す実施の形態1の電子機器の冷却構造と同様である。
【0047】
制御回路403は温度測定部112で測定された発熱体1(102)および発熱体2(104)の温度を発熱体温度読み取り用信号線401を介して読み取り、読み取った温度に基づいて、レギュレータ404を制御し、最適な風量を供給する。
【0048】
<温度の制御方法>
次に、図5および図6により、本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造による発熱体の温度の制御方法について説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造による発熱体の温度の制御方法を示す制御ブロック図、図6は本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造による発熱体の温度の制御方法を示すフローチャートである。
【0049】
図5において、制御回路403に発熱体1(102)および発熱体2(104)からの温度の情報および目標温度の情報が入力され、その入力された情報に基づいて、制御回路403からは、レギュレータ404を制御するための電圧が出力され、その電圧に基づいて、レギュレータ404の開度が制御されて、発熱体1(102)および発熱体2(104)を冷却する風量が変化する。
【0050】
図6において、まず、制御回路403の電源がONとなると、発熱体1(102)の温度を読み取り(S100)、発熱体2(104)の温度を読み取る(S101)。次に、発熱体1(102)の温度と発熱体2(104)の温度を比較し、発熱体1(102)の温度が発熱体2(104)の温度以上か否かを判断する(S102)。
【0051】
S102で発熱体1(102)の温度が発熱体2(104)の温度以上であると判断されれば、発熱体温度を発熱体1(102)の温度とし(S103)、S102で発熱体1(102)の温度が発熱体2(104)の温度以上でないと判断されれば、発熱体温度を発熱体2(104)の温度とする(S104)。
【0052】
S102〜S104の処理により、制御回路403の制御に使用される発熱体温度の情報は、発熱体1(102)の温度と発熱体2(104)の温度の高い方の温度(同じ場合は、発熱体1(102)の温度)となる。
【0053】
そして、発熱体温度と目標温度を比較し、レギュレータ404の開度を決定する。
【0054】
まずは、目標温度が発熱体温度+10以上か否かを判断し(S105)、S105で目標温度が発熱体温度+10以上(すなわち、目標温度に対して発熱体温度が10℃以上低い場合)であると判断されれば、レギュレータ404の開度を50[%]とする(S106)。
【0055】
また、S105で目標温度が発熱体温度+10以上でないと判断されれば、目標温度が発熱体温度以上か否かを判断し(S107)、S107で目標温度が発熱体温度以上(すなわち、目標温度に対して発熱体温度が10℃未満の低さであり、かつ目標温度を超えていない場合)であると判断されれば、レギュレータ404の開度を80[%]とする(S108)。
【0056】
また、S107で目標温度が発熱体温度以上でないと判断されれば、発熱体温度が目標温度を超えてしまっているので、レギュレータ404の開度を100[%]にして、最大の冷却を行う(S109)。
【0057】
S106、S108、S109でのレギュレータ404の開度の制御の後、ある程度のウエイトを取り(S110)、S100〜S109の各工程を1サイクルとして、冷却を行う電子機器などの装置が稼動している間は常にこの工程を繰り返し行う。
【0058】
本実施の形態では、発熱体の温度に基づいて、圧縮空気の風量を調節するので、発熱体の冷却を適切に行うことが可能である。
【0059】
なお、本実施の形態では、発熱体の温度を温度測定部112で測定しているが、発熱体温度を監視する方法として、電子機器に搭載されるCPUでは自身の温度を測定し、外部に出力する機能があり、この機能を用いて発熱体温度を測定しても良い。
【0060】
従来型の送風機による冷却構造を用いた電子機器では、電子機器に搭載されるCPUでからの温度の情報などを監視するBMCと呼ばれる制御装置を介することで送風機の回転数制御を行っている。
【0061】
このCPUの機能を使用し、CPUの温度の情報を制御回路403に入力し、その温度情報に基づいて、レギュレータ404の開度を制御して、風量の調節するようにしても良い。
【0062】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1では高圧空気供給源110からの圧縮空気を通風管106により発熱体へ冷却風として供給するものであったのを、空気溜まりによって圧縮空気の拡散を図った冷却構造としたものである。
【0063】
<冷却構造の構成図>
図7および図8により、本発明の実施の形態3に係る電子機器の冷却構造について説明する。図7および図8は本発明の実施の形態3に係る電子機器の冷却構造を示す構成図であり、図7は斜視図、図8は側面図を示している。
【0064】
図7および図8において、端子107に接続された通風管106には、圧縮空気の貯蓄部である空気溜まり509が接続されている。そして、空気溜まり509には、ヒートシンク501、502、および発熱体503〜508を冷却するための開口部510が設けられている。
【0065】
図7および図8に示す冷却構造では、通風管106によって圧縮空気を流入し、空気溜まり509により全体に広がる。ここで空気溜まり509とは通風管106から流入する圧縮空気を一時的に蓄える部分である。
【0066】
空気溜まり509は十分な容積を確保することで、開口部510の開口位置による圧縮空気の圧力分布や、圧縮空気供給源からの流入量の増減による影響を緩和することができる。
【0067】
そしてヒートシンク501、502および発熱体503〜508の上に、空気溜まり509の開口部510が来るようにして、この開口部510から圧縮空気が噴流として各部を冷却することができる。
【0068】
本実施の形態では、開口部510が設けられた空気溜まり509を使用することにより、複数の発熱体などへの圧縮空気の供給を行うことができ、発熱体の形状に基づいた最適な開口部510とすることにより、全体の冷却を効率よく行うことが可能となる。
【0069】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態3では、発熱体の1箇所に対して、1個の開口部からの圧縮空気の噴流で冷却するものであったのを、空気溜まり509の開口部を細分化して、細分化された開口部からの圧縮空気の噴流で冷却するようにしたものである。
【0070】
<冷却構造の構成図>
図9および図10により、本発明の実施の形態4に係る電子機器の冷却構造について説明する。図9および図10は本発明の実施の形態4に係る電子機器の冷却構造を示す構成図であり、図9は斜視図、図10は側面図を示している。
【0071】
図7および図8において、端子107に接続された通風管106には、空気溜まり509が接続されている。そして、空気溜まり509には、ヒートシンク501、502、および発熱体503〜508を冷却するための細分化された開口部511が設けられている。
【0072】
図9および図10に示す冷却構造では、図7および図8に示す実施の形態3と同様に、通風管106によって圧縮空気を流入し、空気溜まり509により全体に広がる。
【0073】
そしてヒートシンク501、502および発熱体503〜508の上に、空気溜まり509の細分化された開口部511が来るようにして、この細分化された開口部511から圧縮空気が噴流として各部を冷却することができる。
【0074】
本実施の形態では、空気溜まり509の開口部511を細分化し、細分化された開口のそれぞれの開口面積は同じで、その個数を変えることにより、発熱体ごとの圧縮空気の流量を調節している。
【0075】
この開口部511場合では、図7および図8に示す実施の形態3の開口部510と比較し、より広範囲に圧縮空気を当てることが可能である。そのため、消費電力は同じであっても面積が大きく発熱密度の小さいものや、メモリのように発熱部品が1箇所だけではなく、複数個に分かれている場合に有効である。
【0076】
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態3において、発熱体の1箇所に対して、1個の開口部からの圧縮空気の噴流で冷却するものであったのを、大きさの異なる発熱体に対し、開口部に設けられたノズルを用いて風量の調節を行うようにしたものである。
【0077】
<冷却構造の構成図>
図11により、本発明の実施の形態5に係る電子機器の冷却構造について説明する。図11は本発明の実施の形態5に係る電子機器の冷却構造を示す構成図である。
【0078】
図11において、それぞれ大きさの異なるヒートシンク501、発熱体503および発熱体505に対し、ノズル601〜603で圧縮空気を当てることにより、冷却を行う構成になっている。
【0079】
発熱体503のようにサイズが小さい場合、圧縮空気を直線的に当て、冷却を行う。例えば、オンボード電源では消費電力は3[W]程度と小さいが、面積も15[mm2]程度と小さい。その結果、発熱密度としてはCPU以上に大きくなり、ヒートシンク非搭載での冷却が難しいことがある。
【0080】
また、ヒートシンク501のように大きなヒートシンクに冷却風を当てる場合、直線的に当てるとヒートシンクのサイズを有効に利用することができない。そこでノズル602のようにダイバージェント型のノズルを用いることで、大きなヒートシンクを有効活用することができる。
【0081】
これと同様に発熱体505では、発熱体が複数個に分かれており、局所的な冷却では全ての発熱体を均一に冷却することは難しい。そこで、ノズル602よりさらに広範囲に冷却風を供給するノズル603が有効である。
【0082】
本実施の形態では、発熱体の大きさや種類などにより、ノズルの形状を変えることにより、効率の良い冷却を行うことが可能となる。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、電子機器の冷却構造に関し、各部品から発生した熱を冷却する構造を有する電子機器やシステムなどに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
10…筐体、101…基板、102、104…発熱体、103、105…ヒートシンク、106…通風管、107…端子、201…コンプレッサ、202…サーバブレード、203…ミッドプレーン、204…電源モジュール、205…送風機モジュール、206…スイッチモジュール、301…コネクタ、401…発熱体温度読み取り用信号線、402…レギュレータ制御用信号線、403…制御回路、404…レギュレータ、501〜502…ヒートシンク、503〜508…発熱体、509…空気溜まり、510〜511…開口部、601〜603…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器内部の発熱体を冷却する冷却構造であって、
前記電子機器の筐体外部に設置された高圧空気供給源からの圧縮空気が供給され、前記圧縮空気を、前記発熱体まで導く通風管を備え、
前記通風管により前記発熱体まで導かれた前記圧縮空気と前記電子機器の筐体内部の圧力差によって発生した噴流によって、前記発熱体の冷却を行うことを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の冷却構造において、
前記通風管の途中または端に設けられた圧縮空気調節部と、
前記発熱体の温度を取得し、取得した温度の情報に基づいて、前記圧縮空気調節部を制御し、前記圧縮空気の流量を前記発熱体の温度に応じた流量に調節する制御回路とを備えたことを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器の冷却構造において、
前記通風管に接続された前記圧縮空気の貯蔵部を備え、
前記貯蔵部に設けられた開口部から前記発熱体へ噴流を当てることを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器の冷却構造において、
前記開口部に前記噴流の流出方向を制御するノズルを備えたことを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器の冷却構造において、
前記電子機器は、前記電子機器の外部に設置された外部基板との電気的な接続を行うコネクタと、前記高圧空気供給源からの配管と前記通風管とを接続する端子とを備え、
前記コネクタにより前記外部基板と前記電子機器が電気的に接続されると、前記端子を介して前記圧縮空気が前記通風管に供給されることを特徴とする電子機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−248720(P2012−248720A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120043(P2011−120043)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】