説明

電子機器の冷却装置とその冷却方法、および電子光学装置

【課題】 小型で低消費電力でありつつ、優れた冷却性能を発揮するような噴流冷却の構造および冷却方法を提供する。
【解決手段】 平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部における発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段を備える発熱部冷却構造を有する発熱部冷却装置であって、上記冷却手段は内側ノズル部と上記内側ノズル部の外周を囲むように配置された外側ノズル部とを備えた二重の噴出し口を介して送風を行うことを特徴としている。また、上記発熱部材の冷却方法であって、上記発熱部材の間にのみ内側ノズル部を介して第1の送風を行う一方、上記発熱部材の表面に外側ノズル部を介して第2の送風を行うとともに、上記第1の送風の流速を上記第2の送風の流速より大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタ装置等の電子機器の冷却装置とその冷却方法、および電子光学装置に関し、特に複数の並列する平板状発熱部材を有する電子機器の冷却装置とその冷却方法、および電子光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における液晶プロジェクタ装置等における電子機器や電子光学装置は、高性能を要求されるとともに、小型化も同時に求められている。そのため、高密度実装により、発熱密度の高い電子機器が多く開発され、冷却技術の向上が求められている。
【0003】
特に液晶プロジェクタ装置はより明るく、より鮮明な映像を実現させるために高輝度化が進められており、光の照射により発熱する光学部品の寿命維持のため、冷却方法の改善が求められている。
【0004】
液晶プロジェクタ装置の筐体内には、液晶ユニット部を強制空冷するための冷却ファンと空冷ダクトが実装されており、この他にも光源や電源ユニットなどを冷却するためのランプ用冷却ファンや、筐体排気用の排気ファンなどが必要に応じて設けられている。
【0005】
空冷装置の動作中は、冷却ファンからの送風を空冷ダクトに用意された吐出口を介して、液晶ユニット部の下端から各液晶ユニット部を構成する入射側偏光板、液晶パネル、出射側偏光板の間の空間に通風して強制空冷を行っている。
【0006】
例えば、図12に示すように、関連技術における発熱部材と送風ノズル部との対応関係を説明する概略斜視図において、平面状の発熱部材11および12がその法線方向に2面配列された発熱部10が示されている。そのような発熱部材11および12の一例としては液晶プロジェクタ装置の場合を例に挙げれば、液晶パネルと偏光板との組合せた液晶ユニット部がある。両発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段として、図示のように、ノズル部20と送風ダクト部30を介して送風を行う。
【0007】
近年、液晶プロジェクタ装置に対しては、その利用方法の多様化に合わせて、小型・高輝度化への要求が高まってきている。このような要求に応えるために、ランプ出力の増加と表示デバイスの小型化が進められ、その結果、液晶ユニット部へ入射する光の光束密度が増大し、液晶ユニット部を構成する各ユニットの熱負荷は上昇の一途をたどっており、関連技術における空冷方式では冷却が困難になってきている。
【0008】
強制空冷において熱伝達率を大きくする手法の一例としては、衝突噴流が挙げられる。衝突噴流冷却は、発熱面に対して垂直に冷媒(空気)を衝突させることで、温度境界層を破壊して局所的に熱伝達率を高める効果があり、空気の流れを高乱流化して冷却性能を改善する方法である。
【0009】
しかしながら、プロジェクタ装置の液晶ユニットのように板間の狭い状態(以下、狭板間)で平行配置された発熱部材(液晶パネルや偏光板)を冷却する場合、関連技術における空冷方法では、発熱面に平行に空気が流れて層流が形成されるため、風速増加に対する冷却性能の改善が十分ではなかった。
【0010】
そこで、例えば特許文献1には、液晶ユニット近傍において液晶パネル、偏光板などが形成する狭板間に対して異なる2方向から送風し、発熱面近傍で風を衝突させることにより、光の透過を妨げることなく、発熱面に垂直へ向かう空気流れを形成して局所熱伝達率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008-107387号公報(段落番号58−68;図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示された冷却方法は、関連技術の空冷方法に比べて高い冷却性能を提供するものであるが、異なる方向から狭板間に通風して、発熱面上で送風を衝突させる構成をとるため、噴流生成のために圧力損失の大きなノズルが使用される。また、冷却に必要な流量がノズルを通る必要があるため、圧力損失に打ち勝つような高性能な送風ファンが必要となる。
【0013】
とくに液晶プロジェクタでは、光の三原色に対応する複数の液晶ユニットが用いられており、それぞれに高性能な送風ファンが必要となる。
【0014】
したがって、冷却構造を改善し、より汎用的な送風ファンを用いることができることが求められる。より汎用的な送風ファンを用いることで、より低価格で低消費電力の冷却ソリューションを提供することが出来る。
【0015】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、小型で低消費電力でありつつ、優れた冷却性能を発揮するような噴流冷却用の冷却装置とその冷却方法および電子光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、この発明の構成は、平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部における発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段を備える発熱部冷却構造を有する発熱部冷却装置であって、上記冷却手段は内側ノズル部と上記内側ノズル部の外周を囲むように配置された外側ノズル部とを備えた二重の噴出し口を介して送風を行うことを特徴としている。
【0017】
また、平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部における上記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却方法であって、上記発熱部材の間にのみ内側ノズル部を介して第1の送風を行う一方、上記発熱部材の表面に外側ノズル部を介して第2の送風を行うとともに、上記第1の送風の流速を上記第2の送風の流速より大きくしたことを特徴としている。
【0018】
さらに、上記発熱部冷却装置を備えることを特徴とする電子光学装置が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施の形態によれば、二重ノズル構造とすることにより、内側小ノズルからの高速噴流は、平板状発熱体表面からの熱伝達を促進させる。一方、外側大ノズルは圧力損失を小さくできるため、発熱部品群を通過する必要風量を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に基づく噴出口が大小二重の送風ノズル部(以下、二重ノズル部と称す)と平板状発熱部材との対応関係を示す概略斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に基づく平板状発熱部材と二重ノズルの通風概念を示す概略断面図であり、 (a)は二重ノズル部と発熱部材との対応関係を示す概略断面図を示し、 (b)は(a)に示された断面線I−Iに沿った概略断面図を示す。
【図3】図1に示す二重ノズル部に連結される送風ダクト部の構成を説明する概略図であり、 (a)は図1に示す二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、 (b)は図1に示す二重ノズル部に連接された二重ダクト部を示す概略正面図を示し、 (c)は(b)の概略右側面図を示す。
【図4】図3(c)に示す二重ノズル部に連接された二重ダクト部に異なる特性の送風ファンを配置した場合の冷却装置を示す概略右側面図。
【図5】関連技術構造(大型ブロワファンのみ)と本発明との比較実験結果を示す特性図。
【図6】送風ファンの特性曲線と通風抵抗特性曲線との関係を示す特性図。
【図7】図4に示す冷却装置を電子投影装置へ採用する場合の概略図であり、 (a)は複数の内側ノズル部用の一台の送風ファンに連結された送風ダクトが分岐されて複数の内側ノズル部へ連結されており、複数の外側ノズル部用の他の一台の送風ファンに連結された送風ダクトが分岐されて複数の外側ノズル部へ連結されている様子を示す概略平面図を示し、 (b)は(a)の概略正面図を示す。
【図8】本発明の第2の実施の形態に基づく二重ノズル部と送風ダクト部の関係を示す概略図であり、 (a)は二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、 (b)は二重ノズル部に連接された二重ダクト部を備えた本発明の冷却装置を示す概略正面図を示し、 (c)は(b)の概略右側面図を示す。
【図9】本発明の第3の実施の形態に基づく内側の噴出口が複数ある二重ノズル部およびその送風ダクト部を示す概略図であり、 (a)は二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、 (b)は二重ノズル部に連接された二重ダクト部を備えた本発明の第3の実施の形態に基づく冷却装置を示す概略正面図を示し、 (c)は(b)の概略右側面図を示す。
【図10】本発明の第4の実施の形態に基づく複数の内側ノズルが角度をもっている二重ノズル部およびその送風ダクト部を示す概略図であり、 (a)は二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、 (b)は二重ノズル部に連接された二重ダクト部を備えた本発明の第4の実施の形態に基づく冷却装置を示す概略正面図を示し、 (c)は(b)の概略右側面図を示す。
【図11】本発明の第5の実施の形態に基づくノズル部を液晶パネル側に固定する通風構造を示す概略図であり、 (a)は概略右側面図を示し、 (b)は(a)に示された断面線II−IIに沿った断面図を示す。
【図12】関連技術における発熱部材と送風ノズル部との対応関係を説明する概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に基づく二重ノズルと発熱部材との相対関係を示す概略斜視図である。同図では、平面状の発熱部材11および12がその法線方向に2面配列された発熱部10が示されている。そのような発熱部材11および12の一例としては液晶プロジェクタ装置の場合を例に挙げれば、液晶パネルと偏光板との組合せがある。両発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段として、図示のように、内側ノズル部40とこの内側ノズル部40の外周を囲むように配置された外側ノズル部50とを備えた二重の噴出し口を介して送風を行う。図示のように、内側ノズル部40の先端部は外側ノズル部50から突出している。すなわち、発熱部10と内側ノズル部40との間隔は発熱部10と外側ノズル部50との間隔より小さくなるような構造としている。
【0023】
図2は本発明の第1の実施の形態に基づく二重ノズルの発熱部材に対する空冷動作を説明するための概略断面図であり、図2(a)は正面断面図であり、図2(b)は図2(a)の断面線I−Iに沿った断面図である。
【0024】
大小の送風ダクト、すなわち送風ダクト部45および55の先端に内側ノズル部40および外側ノズル部50がそれぞれ形成されている。図示のように、送風ダクトは二重構造で、内側ノズル部40の先端は細く絞られており、噴流の流速を速める構造となっている。内側ノズル部40の噴出し口は発熱部材11および12の間に送風を行うように配置され、外側ノズル部50の噴出し口は発熱部材11および12の少なくとも外表面に送風を行うように配置されている。図示のように、内側ノズル部40の先端部は外側ノズル部50から突出している。図2に示した例では、外側ノズル部50の先端も、板状発熱部材11および12の法線方向に向けて絞られており、発熱部10の外表面の冷却効率を高める構造としているが、図1に示すように、外部ノズル部50の先端を絞らない構成でも構わない。また、板状発熱部材11および12の平面方向においては、図2(b)に示すように、内側ノズル部40および外側ノズル部50の両方とも先端を絞らない構成を採用している。
【0025】
本発明の実施の形態によれば、二重ノズル構造とすることにより、内側小ノズルからの高速噴流は、平板状発熱体表面からの熱伝達を促進させる。高い熱伝達係数により、冷却による熱の移動のうち、平板表面から空気への伝熱ステージである。一方、外側大ノズルは圧力損失を小さくできるため、発熱部品群を通過する必要風量を得ることが可能となる。
【0026】
図3は図1に示す二重ノズル部に連結される送風ダクト部の構成を説明する概略図である。図3(a)は図1に示す二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、図3(b)は図1に示す二重ノズル部に連接された二重ダクト部を示す概略正面図を示す。図3(c)は図3(b)の概略右側面図を示す。
【0027】
図3(c)に示すように、内側ノズル部40に連結された内側ノズル用送風ダクト部45は外側ノズル部50の管軸に沿って延在し、途中で直角に曲げられて外側ノズル部50の側壁を貫通して外側ノズル部50の管軸に直交する方向へ引き出されている。これにより、内側ノズル部40と外側ノズル部50への送風手段をそれぞれのノズル部に適切な送風ファンを選定することができる。
【0028】
発熱部材11および12の一例として、15mm角程度の平板が、約5mmの間隔で向き合っている場合、内側ノズル部40の噴出し口の寸法としては、10mm×3mm程度の開口が良好である。外側ノズル部50の噴出し口の寸法としては、15mm×10mm程度の開口が良好である。
【0029】
図4は図3(c)に示す二重ノズル部に連接された二重送風ダクト部に異なる特性の送風ファンを配置した場合の冷却装置を示す概略右側面図である。これらの送風ダクトには、それぞれに設置された送風ファンから供給される冷却空気が送られる。内側ノズル部40に連結される送風ダクト部45への送風には圧力損失に強いブロアファン400を用いることが好ましく、外側ノズル部50に連結される送風ダクト部55への送風には大きな流量を送れる軸流ファン500を用いることが好ましい。図示の例では、送風ダクト部55の入り口部は軸流ファン500の外径に合わせて広げられている。
【0030】
関連技術である図12に示す単一ノズルによる冷却構造のように、噴出し口は一箇所で、一台の大型ブロアファンで送風ダクトへ送風している構造と本発明が提案する小型のブロワファンと軸流ファンとの併用構造との比較評価結果を図5に示す。ここでの冷却対象物は10mm×10mmの平板状の発熱面が、2mmの空間を介して向き合った構造であり、発熱3Wで評価した結果である。液晶パネル面を模した平板上の温度を、25℃以下に冷却しようとするとき、本発明の構造であるブロアファンと軸流ファンの組み合わせのほうが、トータル消費電力が小さくなることが同図からわかる。
【0031】
このように、内外それぞれの送風ダクトの上流には、それぞれに適した送風機、すなわちファンを設置することが望ましい。その理由は、ノズル形状、ダクト形状の違いから、通風抵抗が違うからである。
【0032】
さらに、それぞれのノズルから所望の風速や風量を得るために、最適なファンの選定が望ましい。
【0033】
送風ファンは図6に示す特性のものを使用した。図6に示す通風抵抗特性曲線に沿うようにファンを選定することで、所望の流速および流量をそれぞれ得ることができる。すなわち、ブロワファンの選定においては、図6にて右上がり2点鎖線で示す内側ノズル部用の通風ダクトの通風抵抗特性曲線402と、右下がり実線で示すブロワファン特性曲線401の交点を動作点とするブロワファンを採用するのが望ましい。軸流ファンの選定においては、図6にて右上がりの1点鎖線で示す外側ノズル部用の通風ダクトの通風抵抗特性曲線502と、右下がり点線で示す軸流ファン特性曲線501の交点を動作点とする軸流ファンを採用するのが望ましい。このように両ファンを選定すると、軸流ファンの動作点における風量がブロワファンの動作点における風量より多いことが図6の特性図からわかる。
【0034】
このように、上記本発明の実施の形態による効果としては、複数噴流による冷却において、ノズルの形状とそれぞれに給気するファンの大きさと特性が違うものを採用することで、高性能な冷却を実現した電子投影装置を提供することができる。
【0035】
その他の効果としては、小ノズルが要求する風量は小さく、複数の発熱部品群に対しての給気を1台のファンでまとめられる可能性がある。発熱面からの高い除熱効果がある小ノズルからの噴流が要求する風量は小さいからである。その結果、冷却系が必要とする容積を小型に出来る可能性がある。
【0036】
さらなる効果は、大ノズル用の給気ファンは汎用的なものを用いることが可能で、冷却構造全体の小型化・低消費電力化を達成することが可能である。同じ容積・電力であれば、より高性能な冷却、パネルの温度低減が出来る可能性がある。
【0037】
次に、本発明の冷却装置を液晶プロジェクタへ適用する場合の一例について図7を参照して説明する。図7は、図4に示す冷却装置を電子投影装置15へ採用する場合の概略図であり、図7(a)は複数の内側ノズル部用の一台の送風ファンに連結された送風ダクトが分岐されて複数の内側ノズル部へ連結されており、複数の外側ノズル部用の他の一台の送風ファンに連結された送風ダクトが分岐されて複数の外側ノズル部へ連結されている様子を示す概略平面図を示す。図7(b)は図7(a)の概略正面図を示す。図7に示す例のようにカラー液晶プロジェクタの場合、図示しない光源からの白色光が三分割されて赤緑青色用の各液晶ユニット部101,102,103にそれぞれ入射される。各液晶ユニット部101,102,103によって、ビデオ信号に従った光変調を受け各色光は、色合成プリズム72により合成されて投射光学系73を介してスクリーン上に投射される。したがって、三箇所の液晶ユニット部101,102,103が発熱部となり、それぞれを効率的に冷却する必要がある。
【0038】
各液晶ユニット部101,102,103は、入射側偏光板、液晶パネル、および出射側偏光板で構成される。図7では、図示簡略化のため、液晶パネルと出射側偏光板とが貼り合わせている場合を示す。よって、各発熱部としての各液晶ユニット部101,102,103は図1に示すように入射側偏光板からなる発熱部材11と液晶パネルからなる発熱部材12を冷却する場合に対応する。
【0039】
ブロワファン400に連結される送風ダクト部450は三本の送風ダクト部451,452,453に分岐されて各液晶ユニット部101,102,103の下部にそれぞれ配置されている内部ノズル部40に連結される。一方、軸流ファン500に連結される送風ダクト部550も三本の送風ダクト部551,552,553に分岐されて各液晶ユニット部101,102,103の下部にそれぞれ配置されている外部ノズル部50に連結される。図面簡略化のため、三本の送風ダクト部551,552,553については中途までしか描いていないが、各送付ダクト部の詳細は図3等に示す構成となっている。また、図中の参照番号16はダクト固定位置決め部材を、17は液晶パネルユニット固定位置決め部材を、151は電子投影装置(液晶プロジェクタ)15の脚部を表している。
【0040】
このように、本発明によれば、ブロワファン400に連結された各送風ダクトと軸流ファン500に連結された各送風ダクトの全てが各液晶ユニットの下側に配置されるので、特許文献1に開示された構造のように、各液晶ユニットの上下に送風ダクトを配置する場合に比較して液晶プロジェクタ全体の寸法を小型化できる利点もある。
【0041】
なお、本発明における送風ダクトを樹脂モールド製とすれば、ノズル部も同時に形成できる利点がある。
【0042】
以上に述べた本発明の第1の実施の形態に基づく二重ノズル部構造は、図2に示すように、内側ダクト部45が外側ダクト部55に内接しない構造である。この場合、外側ダクト部55内の風はより均一にパネル領域に送られることになり、パネル領域にて均一の冷却効果を得やすい構造である。本発明は上記構造に限定されるものではなく、次に述べるような種々の形態も含むものである。
【0043】
図8は本発明の第2の実施の形態に基づく二重ノズル部と送風ダクト部の関係を示す概略図であり、図8(a)は二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、図8(b)は二重ノズル部に連接された二重ダクト部を備えた本発明の第2の実施の形態の冷却装置を示す概略正面図を示し、図8(c)は図8(b)の概略右側面図を示す。図8(a)および(c)に示すように、内側ダクト部45の外側ダクト部55と平行な外側面の一部が外側ダクト部55の内面の一部を内接面54とするように設置している。この結果、外側ダクト部55の通風抵抗を小さくすることが可能となり、より大きな風量を得ることができる。
【0044】
図9は本発明の第3の実施の形態に基づく内側の噴出口が複数ある二重ノズル部およびその送風ダクト部を示す概略図であり、図9(a)は二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示す。図9(b)は二重ノズル部に連接された二重ダクト部を備えた本発明の第3の実施の形態に基づく冷却装置を示す概略正面図を示し、図9(c)は図9(b)の概略右側面図を示す。
【0045】
図9(a)および(c)に示すように、内側ノズル部用の送風ダクト部45は、外側ダクト部55の内部で二つに分岐されて小ノズル部41および小ノズル部42にそれぞれ連結された小ダクト部46および小ダクト部47を備える。各小ダクト部46および47の管軸に沿った外側面の一部は外側ダクト部55の内面の一部に内接するように設置している。高い風速を得ようとする場合、ノズルのサイズが小さくなるが、その結果、高い伝熱特性が得られる範囲が狭くなってしまう。これを補うために、複数のノズルを用いることにより、発熱面上の複数の箇所で同様に高い伝熱特性を得ることが可能となる。
【0046】
図10は本発明の第4の実施の形態に基づく複数の内側ノズルが角度をもっている二重ノズル部およびその送風ダクト部を示す概略図である。図10(a)は二重ノズル部を上方から見た概略上面図を示し、図10(b)は二重ノズル部に連接された二重ダクト部を備えた本発明の第4の実施の形態に基づく冷却装置を示す概略正面図を示す。図10(c)は図10(b)の概略右側面図を示す。
【0047】
図10(a)および(c)に示すように、内側ノズル部用の送風ダクト部45は、外側ダクト部55の内部で二つに分岐されて小ノズル部43および小ノズル部44にそれぞれ連結された小ダクト部46および小ダクト部47を備える。各小ダクト部46および47の管軸に沿った外側面の一部は外側ダクト部55の内面の一部に内接するように設置している点は本発明の第3の実施の形態と同様であるが、小ノズル部43および44の管軸が互いに外部ノズル部の管軸に向けて傾斜している点が異なる。図10(c)に示すように、複数のノズルを用いる場合、ダクトの外側に設置することで、高い伝熱特性を発熱面上の広範囲に得ることが可能となる。この場合、高風量のダクトは圧力損失を低く抑えるために、中央部に設置することが好ましい。外側に設置された噴流ノズルの先端の角度を制御することで、温度が高くなる液晶パネル中央に向けて設置すると良好な効果が得られる。
【0048】
図11は本発明の第5の実施の形態に基づくノズル部を液晶パネル側に固定する通風構造を示す概略図である。図11(a)は概略右側面図を示し、図11(b)は図11(a)に示された断面線II−IIに沿った断面図を示す。
【0049】
図11に示す構造では、外側送風ダクト部58の内部に配置された内側送風ダクト部458の先端にはノズルが形成されていない。その代わりの内側ノズル部48が発熱部側に固定されている構造である。すなわち、図11(a)および(b)に示すように、発熱部材11および12に一端がそれぞれ固定された支持板481および支持板482の他端側、すなわち内側ノズルを持たない内側送風ダクト部458の先端部に対向する側にノズル部48を備えている。このノズル部48は、図示のように四方から絞り込まれており、板状発熱部材の中心部の冷却が重要な場合に望ましい構造としている。この実施の形態では、特に内側ノズル部の液晶パネルに対する相対的な位置精度が課題である場合には、好ましい構造である。ここでは、ノズル部を液晶パネル側に固定箇所483にスポット溶接等で固定することで、噴流位置の精度を高めようとしている。この場合、ノズル部は板金製とすることにより、支持部とノズル部とを一体形成することも可能となるので好ましい。このように、本発明の第5の実施の形態による効果は、小ノズルを発熱部品群側に設置することで、噴流位置の精度を高めることが可能で、位置依存性の高い噴流冷却の性能を高く維持することができる。
【0050】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。たとえば、本発明に基づく電子投影装置は、平面状の発熱体が1つ以上並列に設置された平板状発熱部品群と、発熱部品群の端部に設置され発熱平板間に冷却風を送り込むためのノズルと、ノズルに冷却風を供給するダクトと、ダクトに外気から風を供給するファンとを有する。ダクトは一方向に二種類が設置され、それぞれのダクトの先端に平板間に冷却風を送り込むための大小のノズルを設置する。噴出し口を大きくしたノズルは、大きな流量を供給するためのファンを用いて、給気する。小さなノズルは高速の噴流を供給するため、小流量・高圧力に対応できるファンを使用する。小ノズルからの高速な噴流は、平板状発熱体の表面に到達するように、形成・設置される。大ノズルは発熱部品群全体に供給され、部品群を冷却することで暖められた空気を部品群から排気する。小ノズルは、断面積が小さいほど高速な噴流を供給することが出来るため、小さな断面積で設置される。そのため、大小のノズルは部品群の1端面に設置し、他の3端面は排気に利用する。
【0051】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部と、
前記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段と、
を備える発熱部冷却構造を有する発熱部冷却装置であって、
前記冷却手段は内側ノズル部と前記内側ノズル部の外周を囲むように配置された外側ノズル部とを備えた二重の噴出し口を介して送風を行うことを特徴とする発熱部冷却装置。
(付記2)
前記内側ノズル部の噴出し口は前記発熱部材の間に送風を行うように配置され、前記外側ノズル部の噴出し口は前記発熱部材の少なくとも外表面に送風を行うように配置されているとともに、前記内側ノズル部からの送風の流速は前記外側ノズル部からの送風の流速より大きいことを特徴とする付記1に記載の発熱部冷却装置。
(付記3)
前記外側ノズル部からの送風の流量は前記内側ノズル部からの送風の流量より大きいことを特徴とする付記2に記載の発熱部冷却装置。
(付記4)
前記内側ノズル部は第1の送風ダクト部を介して第1の送風ファンからの送風を受けるとともに、前記外側ノズル部は第2の送風ダクト部を介して第2の送風ファンからの送風をそれぞれ受けるとともに、前記第1の送風ファンと前記第2の送風ファンとは送風特性が互いに異なることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
(付記5)
前記内側ノズル部の噴出し口が2箇所以上に分岐されていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
(付記6)
前記分岐された噴出し口からの送風方向が前記発熱部材面の中心部に向かうように前記分岐された噴出し口の中心軸は互いに交差する方向に傾斜していることを特徴とする付記5に記載の発熱部冷却装置。
(付記7)
前記内側ノズル部に連結された第1の送風ダクト部の一部が前記外側ノズル部に連結された第2の送風ダクト部の一部に内接していることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
(付記8)
前記内側ノズル部は前記発熱部の一部に固定されていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
(付記9)
付記1乃至8のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置を備えることを特徴とする電子光学装置。
(付記10)
平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部における前記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却方法であって、
前記発熱部材の間に内側ノズル部を介して第1の送風を行う一方、前記発熱部材の表面に外側ノズル部を介して第2の送風を行うとともに、前記第1の送風の流速を前記第2の送風の流速より大きくしたことを特徴とする発熱部の冷却方法。
(付記11)
平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部と、
前記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段と、
を備える発熱部冷却構造を有する発熱部冷却装置であって、
前記冷却手段は内側ノズル部と前記内側ノズル部の外周を囲むように配置された外側ノズル部とを備えた二重の噴出し口を介して送風を行うものであって、
前記内側ノズル部の噴出し口は前記発熱部材の間に送風を行うように配置され、前記外側ノズル部の噴出し口は前記発熱部材の少なくとも外表面に送風を行うように配置されているとともに、前記内側ノズル部からの送風の流速は前記外側ノズル部からの送風の流速より大きく、かつ、前記外側ノズル部からの送風の流量は前記内側ノズル部からの送風の流量より大きいことを特徴とする発熱部冷却装置。
(付記12)
前記内側ノズル部の噴出し口は前記外側ノズル部の噴出し口よりも前記発熱部に近い側に配置されていることを特徴とする付記11に記載の発熱部冷却装置。
(付記13)
前記発熱部を複数備えるとともに前記発熱部冷却装置を前記発熱部にそれぞれ対応して備えるとともに、前記発熱部冷却装置の前記内側ノズル部への送風を1台の送風ファンで行うことと、は各送風ダクトを介して共通の第1の送風ファンを前記外側ノズル部への送風を1台の送風ファンで行うことを特徴とする付記11に記載の発熱部冷却装置。
(付記14)
平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部における前記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却方法であって、
前記発熱部材の間にのみ内側ノズル部を介して第1の送風を行う一方、前記発熱部材の表面に外側ノズル部を介して第2の送風を行うとともに、前記第1の送風の流速を前記第2の送風の流速より大きくし、かつ前記第2の送風の流量を前記第1の送風の流量より大きくしたことを特徴とする発熱部の冷却方法。
(付記15)
電子工学部品の製造方法であって、平板状発熱部品群を組み立てる工程と、発熱部品ユニットに噴流用ノズルを設置する工程と、ファンおよびダクトを組み立てる工程と、ノズルが設置された発熱部品群を電子投影装置筐体に組み込む工程と、ファン・ダクトを同筐体に組み込む工程とを有することを特徴とする電子工学部品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、平板発熱部材を有する電子投影装置等の電子機器の冷却に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 発熱部
11、12 発熱部材
20 ノズル部
30、45、55 送風ダクト部
40、48 内側ノズル部
41,42,43,44 小ノズル部
46,47 小ダクト部
50 外側ノズル部
54 内接面
400 ブロワファン
401 ブロワファン特性曲線
402 内側ノズル部用の通風ダクトの通風抵抗特性曲線
500 軸流ファン
501 軸流ファン特性曲線
502 外側ノズル部用の通風ダクトの通風抵抗特性曲線
15 電子投影装置
16 ダクト固定位置決め部材
17 液晶パネルユニット固定位置決め部材
151 脚部
101,102,103 液晶ユニット部
450、451,452,453 送風ダクト部
550、551,552,553 送風ダクト部
458 内側ノズルを持たない内側送風ダクト部
58 外側送風ダクト部
481,482 支持板
483 固定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部と、
前記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却手段と、
を備える発熱部冷却構造を有する発熱部冷却装置であって、
前記冷却手段は内側ノズル部と前記内側ノズル部の外周を囲むように配置された外側ノズル部とを備えた二重の噴出し口を介して送風を行うことを特徴とする発熱部冷却装置。
【請求項2】
前記内側ノズル部の噴出し口は前記発熱部材の間に送風を行うように配置され、前記外側ノズル部の噴出し口は前記発熱部材の少なくとも外表面に送風を行うように配置されているとともに、前記内側ノズル部からの送風の流速は前記外側ノズル部からの送風の流速より大きいことを特徴とする請求項1に記載の発熱部冷却装置。
【請求項3】
前記外側ノズル部からの送風の流量は前記内側ノズル部からの送風の流量より大きいことを特徴とする請求項2に記載の発熱部冷却装置。
【請求項4】
前記内側ノズル部は第1の送風ダクト部を介して第1の送風ファンからの送風を受けるとともに、前記外側ノズル部は第2の送風ダクト部を介して第2の送風ファンからの送風をそれぞれ受けるとともに、前記第1の送風ファンと前記第2の送風ファンとは送風特性が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項5】
前記内側ノズル部の噴出し口が2箇所以上に分岐されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項6】
前記分岐された噴出し口からの送風方向が前記発熱部材面の中心部に向かうように前記分岐された噴出し口の中心軸は互いに交差する方向に傾斜していることを特徴とする請求項5に記載の発熱部冷却装置。
【請求項7】
前記内側ノズル部に連結された第1の送風ダクト部の一部が前記外側ノズル部に連結された第2の送風ダクト部の一部に内接していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項8】
前記内側ノズル部は前記発熱部の一部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置を備えることを特徴とする電子光学装置。
【請求項10】
平面状の発熱部材がその法線方向に2面以上配列された発熱部における前記発熱部材の間および表面に沿って送風を行う冷却方法であって、
前記発熱部材の間に内側ノズル部を介して第1の送風を行う一方、前記発熱部材の表面に外側ノズル部を介して第2の送風を行うとともに、前記第1の送風の流速を前記第2の送風の流速より大きくしたことを特徴とする発熱部の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−134220(P2012−134220A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283051(P2010−283051)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】