説明

電子機器の筐体および電源分離型増幅器

【課題】片手でのスムーズな開閉操作を簡素な構成で実現可能な電子機器の筐体を提供する。
【解決手段】電子機器の筐体は、蓋部130が本体部に対して回動可能に取付けられてなるものであって、閉状態において蓋部130を本体部に係止する係止機構を有する。係止機構は、蓋部130に設けられた梁部181、操作摘み182およびフック部183と、本体部に設けられ、フック部183が引っ掛けられる段差部とを含む。フック部183は、梁部181の延在方向と直交する方向に向けて突設され、操作摘み182は、その操作すべき方向が梁部181の延在方向と略平行な方向に延びる軸線回りの方向となるように、梁部181の延在方向と直交する方向に向けて突設される。梁部181は、変形しろ181aを有し、閉状態において操作摘み182を操作することにより、変形しろ181aが、捩れ変形および撓み変形が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部とこれに開閉可能に取付けられた蓋部とによって形成される収容空間に電子部品を含むユニットが収容されてなる電子機器の筐体に関し、また、当該電子機器の筐体と、当該筐体の収容空間に収容された増幅回路ユニットと、当該筐体の収容空間に着脱自在に収容される電源回路ユニットとを備えた電源分離型増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン信号に代表される高周波伝送信号のレベルが低い場合に、入力された伝送信号を増幅して出力する増幅器を伝送経路上に設置することが行なわれている。この種の増幅器は、伝送信号を増幅する増幅回路ユニットと、当該増幅回路ユニットに直流電力を供給する給電部としての電源回路ユニットとを備えており、電源回路ユニットは、商用交流電源等の外部電源から入力された交流電力を直流電力に変換してこれを被給電部としての増幅回路ユニットに供給する。
【0003】
通常、増幅器は、戸建住宅あるいは集合住宅等に代表される建物の外壁に設置される場合が多く、そのため上記増幅回路ユニットおよび電源回路ユニットは、風雨に曝されることを防いだり、塵埃や虫等の侵入を防いだりする目的から、比較的密閉性の高い筐体の内部に収容配置される。
【0004】
ここで、増幅器の設置位置の近傍に商用交流電源等のコンセントがない場合に備え、増幅器から電源回路ユニットを取り外して使用することができるように考案された電源分離型増幅器と呼ばれるものがある。当該電源分離型増幅器は、設置位置の近傍にコンセントがない場合に、当該増幅器から電源回路ユニットのみを取り外してこれを住宅内等に設けられたコンセントに接続できるように構成されるとともに、テレビジョン受像機と増幅器とを接続する同軸ケーブルにコンセントに接続された上記電源回路ユニットを介在するように接続できるように構成されており、これにより当該同軸ケーブルを介して電源回路ユニットから増幅回路ユニットに給電が行なわれることになる。
【0005】
上述した電源分離型増幅器にあっては、電源回路ユニットを増幅器から取り外すことが可能となるように、筐体を本体部と当該本体部に開閉可能に取付けられた蓋部とによって構成することが一般的である。その場合、本体部と蓋部とには、閉状態において蓋部を本体部に係止する係止機構が設けられ、当該係止機構による係止を解除することで蓋部を開けることができるように筐体が構成されている。ここで、係止機構は、本体部および蓋部の一方に設けられたフック部と、本体部および蓋部の他方に設けられ、上記フック部が引っ掛けられる穴や凹部等の段差部とによって構成されることが一般的である。なお、当該構成が採用された電源分離型増幅器が開示された文献としては、たとえば特開2006−115332号公報(特許文献1)や特開2008−148208号公報(特許文献2)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−115332号公報
【特許文献2】特開2008−148208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、電源分離型増幅器の筐体においては、操作性よくスムーズに蓋部が開閉できることが好ましい。これは、電源分離型増幅器の設置の際やメンテナンスの際等に作業が容易に行なえることになるためであり、特に電源分離型増幅器が建物の比較的高所に設置される場合が少なくないことを考慮すれば、作業の安全性の面からも蓋部の開閉が操作性よくスムーズに行なえることが望ましい。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示された係止機構は、いずれも蓋部を開ける際に両手での操作が強いられるものであり、必ずしも操作性よくスムーズに蓋部を開けることができるものとは言えず、片手での操作が可能となるようにその係止機構が改良されることが望まれている。
【0009】
なお、電源分離型増幅器の筐体以外にも各種の電子機器において筐体が開閉可能に構成されたものが存在するが、片手でのスムーズな開閉操作が可能となるように構成されたものとしては構造的に非常に複雑なものがあるのみであり、簡素な構造でこれを実現する電子機器の筐体が要求されている。
【0010】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、片手でのスムーズな開閉操作を簡素な構成で実現可能な電子機器の筐体および当該筐体を備えた電源分離型増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく電子機器の筐体は、本体部および蓋部を備え、上記本体部と上記蓋部とによって形成される収容空間に電子部品を含むユニットが収容されるとともに、上記本体部に対して上記蓋部が開閉可能となるように上記蓋部が上記本体部に対して回動可能に取付けられてなるものであって、上記本体部および上記蓋部は、閉状態において上記蓋部を上記本体部に係止する係止機構を有している。上記係止機構は、上記蓋部に設けられた梁部、操作摘みおよびフック部と、上記本体部に設けられ、閉状態において上記フック部が引っ掛けられる段差部とを含んでいる。上記フック部は、上記梁部の延在方向と直交する方向に向けて上記梁部から突設されており、上記操作摘みは、その操作すべき方向が上記梁部の延在方向と略平行な方向に延びる軸線回りの方向となるように、上記梁部の延在方向と直交する方向であってかつ上記フック部が突設された方向とは異なる方向に向けて上記梁部から突設されている。上記梁部は、その固定端と上記フック部が設けられた位置との間に変形しろを有しており、閉状態において上記操作摘みを操作することにより、上記変形しろが、上記軸線回りに弾性的に捩れ変形が可能であるとともに、上記フック部を上記段差部から遠ざける方向に弾性的に撓み変形が可能である。
【0012】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記梁部がその両端が固定された固定梁にて構成されるとともに、上記フック部が上記梁部の延在方向における略中央位置に設けられることにより、上記変形しろが、上記フック部を挟み込む位置に一対設けられていることが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記梁部が、上記フック部が設けられた位置と上記変形しろが設けられた位置との間に閉状態において上記本体部に接触する接触部を有していることが好ましく、その場合に、上記フック部と上記接触部とが、上記梁部の延在方向と直交する方向において離間して位置していることが好ましい。これにより、上記操作摘みの回転中心である上記軸線が上記接触部に重なることになり、上記変形しろの捩れ変形および撓み変形が上記接触部を基点に生じるように構成されることになる。
【0014】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記操作摘みと上記フック部とが、上記梁部の延在方向における同じ位置に設けられていることが好ましい。
【0015】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記梁部を基準とした上記操作摘みの突出方向が、上記梁部を基準とした上記フック部の突出方向と反対側を向いていることが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記梁部の延在方向が、上記本体部に対して回動する上記蓋部の回動軸が延びる方向と略平行であることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記係止機構が、閉状態において上記本体部および上記蓋部の外形端面よりも内側に後退した位置に配設されていることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく電子機器の筐体にあっては、上記梁部、上記操作摘みおよび上記フック部が、上記蓋部と一体の部材にて構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に基づく電源分離型増幅器は、上述した本発明に基づく電子機器の筐体と、上記ユニットとして、高周波信号を増幅する増幅回路ユニットおよび上記増幅回路ユニットに電力を供給する電源回路ユニットとを備えたものであって、上記電源回路ユニットが、開状態において上記電子機器の筐体に着脱自在に取付けられることにより、上記収容空間に収容が可能に構成されたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、片手でのスムーズな開閉操作を簡素な構成で実現可能な電子機器の筐体および当該筐体を備えた電源分離型増幅器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の閉状態における斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の開状態における斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の電源回路ユニットを取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の被係止部の構造を示す本体部の要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の係止部の構造を示す蓋部の要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の係止部の構造を示す蓋部の要部拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の蓋部を閉める際の係止機構の動きを説明するための要部拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の蓋部を開ける際の係止機構の動きを説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、電子機器として電源分離型増幅器を例示し、電子機器の筐体として当該電源分離型増幅器に具備される筐体を例示して説明を行なう。ここで、電源分離型増幅器とは、電源回路ユニットを筐体の内部に収容した状態および筐体の外部に取り出した状態の両方で使用が可能な、電源回路ユニットが増幅器とは分離された構成の増幅器のことである。なお、電子機器の筐体としては、当該電源分離型増幅器の筐体に限られるものではなく、たとえば家庭用のブースタや分配器、混合器、光ケーブルを用いたシステムに使用される光・電気変換装置等の筐体など、各種の電子機器の筐体が含まれることは言うまでもない。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態における電源分離型増幅器の閉状態における斜視図であり、図2は、開状態における斜視図である。また、図3は、本実施の形態における電源分離型増幅器の電源回路ユニットを取り外した状態を示す斜視図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態における電源分離型増幅器の概略的な構成について説明する。なお、図3においては、蓋部の図示を省略している。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施の形態における電源分離型増幅器100は、本体部120および蓋部130を含む筐体110と、増幅回路ユニット150と、電源回路ユニット160とを主として備えている。筐体110は、図1に示す閉状態において偏平な略直方体形状の外形を有している。本体部120は、収容空間122を規定する箱状の形状を有しており、蓋部130は、図1に示す閉状態において当該箱状の形状を有する本体部120の開口面を閉塞する。
【0025】
ここで、電源分離型増幅器100は、建物の外壁に設置して使用される場合が多く、設置後において、筐体110の後述する接続端子141〜144が設けられた面は、鉛直下方を向いた状態となる。そのため、ここでは、当該設置後の状態に合わせて、筐体110の上記接続端子141〜144が設けられた面を底面(下面)と定義し、本体部120の開口面が位置する側の筐体110の面を正面(前面)と定義し、これに準じて天面(上面)、右側面、左側面および背面(後面)をそれぞれ定義する。
【0026】
本体部120は、正面視略矩形状の背板部と、この背板部の外縁から立設した右側板部、左側板部、天板部および底板部123(図4参照)とを有している。一方、蓋部130は、正面視略矩形状の前板部133(図5および図6参照)と、この前板部133の外縁から立設した右側板部、左側板部および天板部を有している。
【0027】
蓋部130の互いに対向する右側板部および左側板部のそれぞれには、その上端寄りの位置に孔部131が設けられている。本体部120の側板部のそれぞれには、当該蓋部130の孔部131に対応する位置に軸部121が設けられている。本体部120に設けられた一対の軸部121は、それぞれ蓋部130に設けられた孔部131に挿入されており、これにより蓋部130は、本体部120に対して回動可能に取付けられている。したがって、図1および図2に示すように、蓋部130が本体部120に対して相対的に回転移動されることにより、筐体110の開閉が行なわれる。
【0028】
なお、本体部120の底板部123には、係止機構の一部を構成する被係止部170が設けられており、蓋部130の前板部133には、上記被係止部170に対応して、係止機構の一部を構成する係止部180が設けられている。これら係止機構としての被係止部170および係止部180は、閉状態において蓋部130を本体部120に係止させるための部位である。なお、その詳細な構成については、後述することとする。
【0029】
上述した本体部120および蓋部130としては、耐候性および機械的強度の観点から、たとえばAES(Acrylonitrile-Ethylene-Styrene)樹脂等からなる部材にて構成されていることが好ましく、より好ましくは、当該AES樹脂等を用いた射出成形によって一体的に形成されていることが好ましい。
【0030】
図2および図3に示すように、本体部120に設けられた収容空間122は、背板部から左右方向に沿って延びるように立設された隔壁によって上下2つの空間に区画されている。これら2つの空間のうち、下側に位置する空間に増幅回路ユニット150が収容され、上側に位置する空間に電源回路ユニット160が収容される。
【0031】
ここで、増幅回路ユニット150は、容易には取り外しできないように本体部120に固定的に組付けられ、電源回路ユニット160は、容易に取付けおよび取り外しができるように本体部120に着脱自在に組付けられる。その詳細な構造の説明は省略するが、電源回路ユニット160の上面および下面には、係合突起を含む弾性変形が可能な係合片が設けられており、本体部120の天板部および上記隔壁には、上記係合片に設けられた係合突起に係合が可能な係合孔が設けられており、これら係合突起と係合孔が係合または非係合となることにより、電源回路ユニット160の着脱が行なわれる。
【0032】
増幅回路ユニット150は、主として4つの同軸接栓座からなる接続端子141〜144をその下面に備えた偏平な略直方体形状の外形を有している。増幅回路ユニット150は、被給電部に相当するものであり、テレビジョン信号に代表される高周波伝送信号の入力を受け、これを増幅して出力するための回路ユニットである。
【0033】
上述した増幅回路ユニット150に設けられた4つの接続端子141〜144は、具体的には、UHF(Ultra High Frequency)帯のテレビジョン下り伝送信号に対しての入力端子または上り伝送信号に対しての出力端子となる接続端子141と、BS(Broadcasting Satellite)/CS(Communications Satellite)伝送信号に対しての入力端子となる接続端子142と、UHF帯のテレビジョン上り伝送信号に対しての入力端子または下り伝送信号に対しての出力端子、あるいは下り伝送信号とBS/CS伝送信号との混合信号に対しての出力端子となる接続端子143と、UHF帯のテレビジョン下り伝送信号およびBS/CS受信信号の出力レベルをレベルチェッカ等の測定器を用いて測定するためのモニター端子としての接続端子144とを含んでいる。また、接続端子143は、電源回路ユニット160が筐体110から取り外されて使用される場合には、直流電力受電端子をも兼ねることになり、接続端子144は、上り伝送信号の出力レベルをレベルチェッカ等の測定器を用いて測定するためのモニター端子として機能する場合もある。
【0034】
一方、電源回路ユニット160は、主として2つの同軸接栓座からなる接続端子を備えた偏平な略直方体形状の外形を有しており、さらに電源回路ユニット160からは、商用交流電源のコンセントに差し込みが可能なプラグを先端に備えた電源ケーブル161が引き出されている。電源回路ユニット160は、給電部に相当するものであり、商用交流電源等の外部電源から入力された交流電力を直流電力に変換してこれを増幅回路ユニット150に供給するための回路ユニットである。
【0035】
上述した電源回路ユニット160に設けられた2つの接続端子は、具体的には、テレビジョン受像機と上述した接続端子143とを接続する同軸ケーブルを中継するかたちで接続される接続端子であり、このうちの接続端子143と同軸ケーブルを介して接続される方の端子は、電源回路ユニット160が筐体110から取り外されて使用される場合には、直流電力給電端子をも兼ねることになる。
【0036】
なお、本体部120の背板部の所定位置には、電源回路ユニット160が筐体110に取付けられて使用される場合に、電源回路ユニット160から増幅回路ユニット150に向けて直流電力を供給するための給電クリップおよび給電配線を含む給電ラインが設けられている。
【0037】
図1ないし図3に示すように、本体部120の底板部123には、左右方向に沿って4つの開口部が並べて設けられている。これら4つの開口部には、上述した増幅回路ユニット150に設けられた4つの接続端子141〜144が挿通配置されており、これにより上記4つの接続端子141〜144が筐体110の外部に突出して位置することになる。
【0038】
また、図1および図2に示すように、電源ケーブル161は、電源回路ユニット160が筐体110に取付けられて使用される場合に、増幅回路ユニット150の側方に設けられたケーブル挿通部を介して筐体110の外部に引き出されることになる。
【0039】
以上において説明した電源分離型増幅器100は、設置位置の近傍に商用交流電源等のコンセントがない場合には、筐体110から電源回路ユニット160のみを取り外してこれを住宅内等に設けられたコンセントに接続するとともに、テレビジョン受像機と接続端子143とを接続する同軸ケーブルにコンセントに接続された上記電源回路ユニット160を介在するように接続することで使用される。これにより、当該同軸ケーブルを介して増幅回路ユニット150と電源回路ユニット160とが電気的に接続されることになり、電源分離型増幅器100が動作可能な状態となる。
【0040】
一方、設置位置の近傍に商用交流電源等のコンセントがある場合には、電源回路ユニット160が筐体110の収容空間に収容されることにより、上述した給電ラインを介して増幅回路ユニット150と電源回路ユニット160とが電気的に接続されることになる。これにより、電源回路ユニット160から引き出された電源ケーブル161のプラグをコンセントに差し込むことにより、電源分離型増幅器100が動作可能な状態となる。
【0041】
図4は、本実施の形態における電源分離型増幅器の被係止部の構造を示す本体部の要部拡大斜視図であり、図5および図6は、係止部の構造を示す蓋部の要部拡大斜視図である。次に、これら図4ないし図6を参照して、本実施の形態における電源分離型増幅器の筐体に設けられた係止部および被係止部を含む係止機構の構成について詳説する。
【0042】
図4に示すように、本体部120の底板部123の所定位置には、内側に向けて窪むように凹部171が形成されており、当該凹部171の後退面172には、段差部173と一対の突出部174とを含む被係止部170が設けられている。
【0043】
段差部173は、2つの面が交差するように構成されることで後述するフック部183(図5および図6参照)を引っ掛け可能にする部位であり、たとえば本体部120の後退面172に貫通孔や凹凸形状を付与すること等によって形成される。なお、ここでは、後退面172の一部を外側に向けて突出させることで形成された凹凸形状にて段差部173を構成した場合を特に図示している。
【0044】
一対の突出部174は、左右方向に沿って段差部173を挟み込む位置に設けられている。この一対の突出部174の各々は、後述する係止部180に含まれる一対の突起部184の先端が閉状態においてそれぞれ接触する本体部120側の部位である。
【0045】
図5および図6に示すように、蓋部130の前板部133の下端から上方側に向けて所定距離だけ入り込んだ位置には、内側に突出するように左右方向に離間して一対の基部134が設けられている。係止部180は、この一対の基部134の各々の先端部を橋渡すように設けられている。係止部180は、上記一対の基部134を橋渡すように左右方向に沿って延在する梁部181と、当該梁部181に設けられた操作摘み182、フック部183および一対の突起部184とを含んでいる。なお。梁部181の延在方向は、蓋部130と本体部120との連結部である軸部121および孔部131(図1および図2参照)によって構成される回動軸が延びる方向と平行である。
【0046】
梁部181は、その両端が蓋部130から突設された一対の基部134に固定された固定梁(両持ち梁)構造を有している。この梁部181は、本体部120に蓋部130を係止させる際および蓋部130の本体部120に対する係止を解除させる際に、後述する弾性的な捩れ変形や撓み変形が可能となるように構成された変形しろ181aを含む部位であり、当該変形を許容すべく比較的厚みが薄い板状の部材にて構成される。上記変形しろ181aは、基部134に対する梁部181の固定部である固定端とフック部183との間に左右一対設けられている。
【0047】
操作摘み182は、梁部181の延在方向の略中央部に設けられており、当該梁部181から下方側に向けて突設されている。当該操作摘み182は、上述した係止および係止の解除の際に、作業者等が指でこれを摘んで操作するための部位である。なお、操作摘み182は、上述したように梁部181から下方側に向けて(すなわち、梁部181の延在方向と直交する方向に向けて)設けられているため、その操作すべき方向は、梁部181の延在方向と略平行な方向に延びる軸線回りの方向となる。すなわち、上記のように構成することにより、操作摘み182の回転操作の際の回転中心となる軸線は、梁部181の延在方向と略平行な方向に配置されることになる。
【0048】
フック部183は、梁部181の延在方向の略中央部に設けられており、当該梁部181から上方側に向けて突設されている。このフック部183は、閉状態において上述した被係止部170の段差部173に係止する部位であり、当該段差部173に引っ掛かるべく爪形状を有している。なお、フック部183は、梁部181の延在方向において上記操作摘み183が設けられた位置と同じ位置に設けられており、その突出方向は、操作摘み183の突出方向とは反対側を向いている。そのため、操作摘み182およびフック部183は、梁部181の延在方向に沿って上記一対の変形しろ181aによって挟み込まれて位置している。
【0049】
一対の突起部184は、梁部181の延在方向に沿ってフック部183を挟み込む位置に設けられており、当該梁部181から上方に向けて突設されている。この一対の突起部184は、上述した被係止部170の一対の突出部174の先端に閉状態において接触する接触部に相当し、梁部181の延在方向と直交する方向においてフック部183と離間して位置している。
【0050】
なお、上記において説明した被係止部170を構成する段差部173および突出部174は、いずれも本体部120と一体の部材にて構成されており、本体部120の射出成形の際に同時に成形されることが好ましい。また、上記において説明した係止部180を構成する梁部181、操作摘み182、フック部183および突起部184は、いずれも基部134を含む蓋部130と一体の部材にて構成されており、蓋部130の射出成形の際に同時に成形されることが好ましい。
【0051】
図7は、本実施の形態における電源分離型増幅器の蓋部を閉める際の係止機構の動きを説明するための要部拡大断面図であり、図8は、蓋部を開ける際の係止機構の動きを説明するための要部拡大断面図である。次に、これら図7および図8を参照して、蓋部の開閉の際の係止機構の各部の動きについて説明する。
【0052】
図7に示すように、蓋部130を閉じる際には、蓋部130と本体部120との連結部である軸部121および孔部131(図1および図2参照)を回動軸として、蓋部130の当該回動軸が設けられた側とは反対側に位置する下端が、本体部120に近付く方向(図中矢印A1方向)に回転移動することで行なわれる。
【0053】
図7(A)に示すように、被係止部170と係止部180とが離間した状態においては、梁部181が何ら外力を受けないため、係止部180に変形は生じない。
【0054】
図7(B)に示すように、被係止部170と係止部180とが接触し始めた状態においては、梁部181に設けられたフック部183の先端が段差部173に当接し、この当接に伴って梁部181の変形しろ181aに僅かに図5および図6に示す矢印C方向に向けて弾性的に撓み変形および捩れ変形が生じる。これにより、梁部181の操作摘み182およびフック部183が設けられた略中央部は、下方側に向けて(すなわち段差部173から遠ざかる方向に向けて)変位し、蓋部130の移動に伴って当該略中央部が段差部173に乗り上げるよう移動する。
【0055】
図7(C)に示すように上記略中央部が段差部173を乗り越えた状態においては、変形しろ181aの上記変形が解除されて上記略中央部が上方側に向けて(すなわち段差部173に近付く方向に向けて)変位し、フック部183が段差部173に引っ掛かった状態となる。これにより、蓋部130が本体部120に係止された状態となり、閉状態が維持されることになる。なお、図7(C)に示す状態において、一対の突起部184の先端は、一対の突出部174に対向配置された状態となり、軽く接触または僅かなギャップを持って非接触した状態となる。
【0056】
一方、図8に示すように、蓋部130を開ける際には、上記本体部120に対する蓋部130の係止が解除された後に、蓋部130と本体部120との連結部である軸部121および孔部131(図1および図2参照)を回動軸として、蓋部130の当該回動軸が設けられた側とは反対側に位置する下端が、本体部120から遠ざかる方向(図中矢印A2方向)に回転移動させることで行なわれる。
【0057】
図8(A)に示すように、作業者等が操作摘み182を指で摘むことにより、梁部181の操作摘み182およびフック部183が設けられた略中央部には、梁部181の延在方向と平行な方向に延びる軸線回りの方向(図中矢印B方向)に力が加わることになり、これを受けて梁部181の変形しろ181aに大きく図5および図6に示す矢印C方向に向けて弾性的に撓み変形および捩れ変形が生じる。これにより、上記略中央部は、下方側に向けて(すなわち段差部173から遠ざかる方向に向けて)変位する。
【0058】
なお、このとき、変形しろ181aに生じる上記撓み変形および捩れ変形は、一対の突起部184の先端が一対の突出部174に接触する部分を基点として生じる(すなわち、上記軸線が当該接触部に重なる)ことになる。ここで、当該接触する部分は、梁部181の延在方向と直交する方向に離間して配置されているため、フック部183の変位量(すなわちフック部183の移動ストローク)は、大きく確保されることになる。
【0059】
図8(B)に示すように、操作摘み182を指で摘んだ状態で蓋部130の下端を本体部120から遠ざける方向に移動させることにより、フック部183が段差部173に引っ掛かることなく、蓋部130がスムーズに移動することになる。これにより、本体部120に対する蓋部130の係止が解除され、その後図8(C)に示すようにさらに蓋部130の下端を本体部120から遠ざける方向に移動させることにより、開状態が実現されることになる。
【0060】
以上において説明した本実施の形態における電源分離型増幅器100またはこれに具備される如くの筐体110とすることにより、片手でのスムーズな開閉操作を簡素な構成で実現できることになる。
【0061】
すなわち、上述したように、操作摘み182を操作することで梁部181の変形しろ181aに撓み変形のみならず捩れ変形をも生じるように構成することにより、段差部173に引っ掛かった状態にあるフック部183を段差部173に引っ掛かっていない状態にするために必要となるフック部183の移動ストロークを大きく確保できることになり、スムーズな開閉操作が簡素な構成で実現できることになる。
【0062】
また、変形しろ181aに撓み変形のみならず捩れ変形をも生じるように構成することにより、少ない力でフック部183に大きな移動ストロークが生じることにもなるため、操作性の面でも非常に有利なものとなる。
【0063】
加えて、上記構成を採用することにより、変形しろ181aが形成される部分が操作摘み182およびフック部183の左右方向となるため、係止部180が筐体外側に向かって大きく出っ張ることもなく、スペースの有効活用が可能になる効果も得られる。
【0064】
さらには、上記構成によれば、係止機構である被係止部170および係止部180が、いずれも閉状態において筐体110の外形端面(すなわち筐体110の下面)よりも内側に後退した位置に配設されることになるため、これらが筐体110の外側に向けて出っ張ることもなくなり、デザイン性および設置スペースの狭小化においても有利なものとなる。
【0065】
以上において説明した本発明の一実施の形態においては、係止部180を構成する梁部181を両端が蓋部130に固定された固定梁(両持ち梁)にて構成した場合を例示したが、当該梁部181は、一端のみが蓋部130に固定された片持ち梁とすることもできる。
【0066】
また、以上において説明した本発明の一実施の形態においては、本体部120に設けられた一対の突出部174の各々が、閉状態において蓋部130に設けられた一対の突起部184の先端にそれぞれ接触するように構成された場合を例示したが、これら突出部174と突起部184とは必ずしも閉状態において接触している必要はなく、操作摘み182を操作することによってこれらが接触するように閉状態において当該一対の突起部184の先端に僅かなギャップをもって一対の突出部174が配置されるように構成されていてもよい。
【0067】
また、以上において説明した本発明の一実施の形態においては、蓋部130に接触部としての突起部184を設けて変形しろ181aの撓み変形の基点を設けた構成とした場合を例示したが、必ずしもこのように構成する必要はなく、梁部181が本体部120に非接触のまま変形するように構成することも当然に可能である。
【0068】
また、以上において説明した本発明の一実施の形態においては、蓋部130の回動軸が設けられた筐体110の上端側とは反対側の下端側に係止機構を設けた構成とした場合を例示したが、係止機構を右側面側または左側面側に設けることも当然に可能である。
【0069】
また、以上において説明した本発明の一実施の形態においては、操作摘み182およびフック部183を梁部181の延在方向における略中央部の同じ位置に設けた場合を例示したが、これらが梁部181の延在方向において異なる位置に設けられていてもよい。また、梁部181から突設される操作摘み182およびフック部183の突出方向についても、これらが必ずしも反対方向とされる必要はなく、これらが梁部181の延在方向と直交する方向において異なってさえいれば、操作性が低下することはない。
【0070】
また、以上において説明した本発明の一実施の形態においては、係止機構が筐体110の外形端面よりも内側に後退して設けられた場合を例示したが、これが外側に張り出して構成されることとしても何ら問題ない。
【0071】
さらには、以上において説明した本発明の一実施の形態においては、被係止部170および係止部180をいずれも本体部120および蓋部130と一体の部材にて構成した場合を例示したが、これらが別部材にて構成されていても当然によい。
【0072】
このように、今回開示した上記一実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0073】
100 電源分離型増幅器、110 筐体、120 本体部、121 軸部、122 収容空間、123 底板部、130 蓋部、131 孔部、133 前板部、134 基部、141〜144 接続端子、150 増幅回路ユニット、160 電源回路ユニット、161 電源ケーブル、170 被係止部、171 凹部、172 後退面、173 段差部、174 突出部、180 係止部、181 梁部、181a 変形しろ、182 操作摘み、183 フック部、184 突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部および蓋部を備え、前記本体部と前記蓋部とによって形成される収容空間に電子部品を含むユニットが収容されるとともに、前記本体部に対して前記蓋部が開閉可能となるように前記蓋部が前記本体部に対して回動可能に取付けられてなる電子機器の筐体であって、
前記本体部および前記蓋部は、閉状態において前記蓋部を前記本体部に係止する係止機構を有し、
前記係止機構は、前記蓋部に設けられた梁部、操作摘みおよびフック部と、前記本体部に設けられ、閉状態において前記フック部が引っ掛けられる段差部とを含み、
前記フック部は、前記梁部の延在方向と直交する方向に向けて前記梁部から突設され、
前記操作摘みは、その操作すべき方向が前記梁部の延在方向と略平行な方向に延びる軸線回りの方向となるように、前記梁部の延在方向と直交する方向であってかつ前記フック部が突設された方向とは異なる方向に向けて前記梁部から突設され、
前記梁部は、その固定端と前記フック部が設けられた位置との間に変形しろを有し、
閉状態において前記操作摘みを操作することにより、前記変形しろが、前記軸線回りに弾性的に捩れ変形が可能であるとともに、前記フック部を前記段差部から遠ざける方向に弾性的に撓み変形が可能である、電子機器の筐体。
【請求項2】
前記梁部がその両端が固定された固定梁にて構成されるとともに、前記フック部が前記梁部の延在方向における略中央位置に設けられることにより、前記変形しろが、前記フック部を挟み込む位置に一対設けられている、請求項1に記載の電子機器の筐体。
【請求項3】
前記梁部は、前記フック部が設けられた位置と前記変形しろが設けられた位置との間に閉状態において前記本体部に接触する接触部を有し、
前記フック部と前記接触部とは、前記梁部の延在方向と直交する方向において離間して位置し、
前記操作摘みの回転中心である前記軸線が前記接触部に重なることにより、前記変形しろの捩れ変形および撓み変形が前記接触部を基点に生じる、請求項1または2に記載の電子機器の筐体。
【請求項4】
前記操作摘みと前記フック部とが、前記梁部の延在方向における同じ位置に設けられている、請求項1から3のいずれかに記載の電子機器の筐体。
【請求項5】
前記梁部を基準とした前記操作摘みの突出方向が、前記梁部を基準とした前記フック部の突出方向と反対側を向いている、請求項1から4のいずれかに記載の電子機器の筐体。
【請求項6】
前記梁部の延在方向が、前記本体部に対して回動する前記蓋部の回動軸が延びる方向と略平行である、請求項1から5のいずれかに記載の電子機器の筐体。
【請求項7】
前記係止機構が、閉状態において前記本体部および前記蓋部の外形端面よりも内側に後退した位置に配設されている、請求項1から6のいずれかに記載の電子機器の筐体。
【請求項8】
前記梁部、前記操作摘みおよび前記フック部が、前記蓋部と一体の部材にて構成されている、請求項1から7のいずれかに記載の電子機器の筐体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の電子機器の筐体と、
前記ユニットとして、高周波信号を増幅する増幅回路ユニットおよび前記増幅回路ユニットに電力を供給する電源回路ユニットとを備え、
前記電源回路ユニットが、開状態において前記電子機器の筐体に着脱自在に取付けられることにより、前記収容空間に収容が可能である、電源分離型増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−114489(P2012−114489A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259080(P2010−259080)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】