説明

電子機器の結合構造

【課題】 既設電子機器に対して増設電子機器を隣接するように取り付ける際、可動スライダを両者間の平行度を確保できる案内部材として機能させ、相互に隣接する電子機器の連結を容易かつ確実に行うこと。
【解決手段】 背面10a側における第1係合部11の高さh1と第2係合部12、13、14の高さh2の間の領域Rに、相互に隣接する既設電子機器10と増設電子機器40の境界Kを跨ぐように可動スライダ20を配置し、可動スライダ20により相互に隣接する電子機器同士を結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に延在しかつ外方に張り出す張出片部を両側に有するレール状構造物の延在方向に沿って、相互に隣接するように電子機器を結合するための電子機器の結合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一方向に延在しかつ外方に張り出す張出片部を両側に有するレール状構造物の延在方向に沿って、相互に隣接するように電子機器を結合するための電子機器の結合構造としては、例えば端子台の上下端部近くにスライド方向と一致する方向にスライド溝が形成され、そのスライド溝に挿入されるスライドによって固定される構成が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その従来の技術を、図6(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0004】
図6(a)において、レール106は、左右方向(水平方向)に延在し、外方に張り出す張出片部を上下の両側に有している。
【0005】
そして、図6(b)は、レール106に予め取り付けられた端子台151の上端部の要部H1を示したものである。
【0006】
ここで、端子台連結装置は、スライド溝101と、連結板結合用切欠き溝102と、スライダ103とからなり、スライド溝101は、端子台151、152の上下端部近くであって、端子台151と端子台152のスライド方向と一致する方向にそれぞれ形成されている。
【0007】
そして、連結板結合用切欠き溝102は、スライド溝101の底面の所望の位置に、スライド溝101と直交する方向に形成された断面三角状の溝であり、スライダ103は各スライド溝101にそれぞれ挿入されるスライダ本体110とスライダ本体110に直交するように固定され、両端部に連結板結合用切欠き溝102に係合可能な突起部104aを有する連結板104が一体的に構成されたものである。
【0008】
このような構成の端子台連結装置を端子台151と端子台152の上下端部に有し、図6(c)に示すように、雌側コネクタ107と雄側コネクタ108とを接続し、電子機器111と電子機器112を電気的に接続した状態で、スライダ103を隣接する端子台152の一方から他方の端子台151にかけて配置した。
【0009】
すなわち、連結板104の突起部104aを連結板結合用切欠き溝102に係合させて、隣接する端子台151、152相互間を連結するようにしたものである。
【0010】
上記の構成により、両者間の固定金具等が必要なく、振動が生じても外れることがなくなり、雌側コネクタ107と雄側コネクタ108との間の電気的な接触性が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】 特開2000−59043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来技術のような電子機器の結合構造においては、相互に隣接する電子機器を連結する際には、予めレール状構造部物に取り付けられた一方の電子機器の雌側コネクタに、他方の電子機器の雄側コネクタを接続した後、スライダをその上下端部に嵌挿する構成であるため、最初の接続時に雄側コネクタと雌側コネクタとの間に位置決めを作業者自身が行う必要があった。
【0013】
その結果、接続作業の慎重さが欠いた場合、両者間の物理的な干渉により、内蔵されるコンタクトピンやコネクタ自体の変形を引き起こすおそれがあった。
【0014】
また、仮に雌側コネクタの雄側コネクタを接続する作業よりも先にスライダを挿入してしまうと、上下端部のスライド溝に嵌挿されたスライダを介して一方の電子機器の重さ(荷重)がそのまま他方の電子機器の重さに加わってしまい、その結果背面側の下方の係合部を支点として電子機器の上部が手前側(前面側)に倒れる方向の力が作用する。
【0015】
つまり、背面側の上下方向にスライドする係合部に対して、スライド方向(上下方向)とは異なる方向(前面側に倒れる方向)の力が作用するため、電子機器の重さ(荷重)が大きなものであれば、その分それら係合部に変形、破損又はガイドからの脱着(係合部がガイドから外れること)等の不具合が生じるおそれがある。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、相互に隣接する電子機器の連結を容易かつ確実に行うことのできる電子機器の結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電子機器の結合構造は、一方向に延在しかつ外方に張り出す張出片部を両側に有するレール状構造物の延在方向に沿って、相互に隣接するように電子機器を結合するための電子機器の結合構造であって、相互に隣接する電子機器は、いずれも背面側にレール状構造物の一方の張出片部が嵌り込む第1係合部と、レール状構造物の他方の張出片部が嵌り込む第2係合部を備え、背面側における、第1係合部の高さと第2係合部の高さとの間の領域に、相互に隣接する電子機器の境界を跨ぐように可動スライダが配置され、可動スライダが相互に隣接する電子機器同士を結合することを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、増設しようとする電子機器(以下、増設電子機器と称する)が、仮に可動スライダにより案内される増設作業の途中で自重により重力方向に変位しようとしても、そのときの荷重は可動スライダを介して既にレール状構造物に取り付けられた電子機器(以下、既設電子機器と称する)の背面側に加わる。
【0019】
したがって、仮に電子機器の重さ(荷重)が大きなものであっても、同じ荷重が上下端部から加わる場合と比較した場合、第1係合部や第2係合部に与える影響(変形、破損又は脱着等の不具合)を大きく軽減できる。
【0020】
また、既設電子機器と増設電子機器の背面側とレール状構造物との間のデッドスペースを有効に活用できるため、その分上下端部に結合のための構成要素を設ける必要がなく、実質的に電子機器の高さを小さくすることができ、ダウンサイジングも可能とする。
【0021】
さらに、新たに増設する際、既にレール状構造物に取り付けられた既設電子機器の背面側に可動スライダを予め配置しておくことが必須となる。
【0022】
したがって、電子機器とレール状構造物との間に可動スライダが配置される構成となるため、予め既設電子機器の背面側に可動スライドを配置しておかないと、増設電子機器を隣接させて結合できない。
【0023】
そのため、増設電子機器を隣接するように取り付ける際、可動スライダが両者間の平行度を確保できる案内部材として作用し、両者間の位置決めが容易となる。
【0024】
その結果、既設電子機器に対する増設電子機器の結合が確実となり、同時にコンタクトやコネクタの変形を引き起こすおそれがなくなり、電気的接続も十分に確保できる。
【0025】
また、本発明の電子機器の結合構造は、前記構成に加え、可動スライダは、相互に隣接する電子機器のそれぞれの背面側に設けられたスライド用凹部に嵌挿され、相互に隣接する電子機器の境界側に位置するそれぞれの側面と直交する方向に沿ってスライド可能であることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、予め一方の電子機器をレール状構造物に取り付けた後に、レール状構造物の延在方向に沿ってその背面側に可動スライダをスライドさせながら取り付けることができるので結合作業を簡素化できる。
【0027】
また、本発明の電子機器の結合構造は、前記構成に加え、スライド用凹部は、相互に隣接する電子機器の背面の境界側にそれぞれ形成され、スライド用凹部の反境界側は、可動スライダの嵌挿を防止する嵌挿防止壁により閉塞されていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、可動スライダを案内部材として作用させることが容易となるため、電子機器同士を相互に密接させなくても案内作用が得られる。
【0029】
また、嵌挿防止壁によりスライド用凹部の反境界側が閉塞されていることにより、仮に両者共レール状構造物に取り付けていない状態で結合させようとする場合においても、予め電子機器同士を密着させた(例えば、電気的接続等を行った)後に可動スライダを嵌挿させて結合することが不可能となる。
【0030】
そのため、予め可動スライダを嵌挿した状態での結合が必須となるため、慎重さを欠いた作業によるコンタクトピンやコネクタの変形を引き起こすことがない。
【0031】
また、本発明の電子機器の結合構造は、前記構成に加え、可動スライダは、弾性片部を有し、その弾性片部の先端部に設けられたガイド用凸部が、相互に隣接する電子機器の背面の境界側に形成されたガイド用凹部に嵌り込むことにより、可動スライダの進退に応じて前進、後退または停止のための弾性力が付与されることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、作業者は、予め一方の電子機器をレール状構造物に取り付けた後に、可動スライダをレール状構造物の延在方向に沿って進退させる位置に応じてその負荷を触覚により感知できるので、背面側の可動スライダを視認することなく、より明確に可動スライダの嵌挿状態を把握できる。
【0033】
すなわち、嵌挿後の進行距離に応じてそれぞれの弾性片部が弾性変形し、その反作用としての弾性力、すなわち弾性復帰しようとする復元力が付与されるため、作業者がどの位置まで可動スライダを嵌挿したかを容易に把握できる。
【0034】
また、可動スライダが停止のための弾性力が付与される進行距離に位置する場合には、その可動スライダが所定の位置で略固定された状態となるので、その位置で相互に隣接する電子機器が結合されると両者が離間することなく確実に結合される。
【0035】
その結果、振動や衝撃等の外部要因によって両者間を離間するような力が作用しても、安定した結合が維持される。
【発明の効果】
【0036】
本発明の電子機器の結合構造によれば、相互に隣接する電子機器の連結を容易かつ確実に行うことのできる電子機器の結合構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における既設電子機器の背面図
【図2】本発明の実施の形態1における既設電子機器の右側面図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における可動スライダの背面側の斜視図、(b)本発明の実施の形態1における可動スライダの前面側の斜視図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における既設電子機器と増設電子機器の結合前の部分斜視図、(b)本発明の実施の形態1における既設電子機器と増設電子機器の結合後の部分斜視図
【図5】(a)本発明の実施の形態2における既設電子機器と増設電子機器の結合前の部分斜視図(b)本発明の実施の形態2における既設電子機器と増設電子機器の結合後の部分斜視図
【図6】(a)従来の構成を示す斜視図、(b)前図の要部のみを示す斜視図、(c)機器が連結された状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における既設電子機器の背面図、図2は、本発明の実施の形態1における既設電子機器の右側面図で、図3(a)は、本発明の実施の形態1における可動スライダの背面側の斜視図で、図3(b)は、本発明の実施の形態1における可動スライダの前面側の斜視図で、図4(a)は、本発明の実施の形態1における既設電子機器と増設電子機器の結合前の部分斜視図で、図4(b)は、本発明の実施の形態1における既設電子機器と増設電子機器の結合後の部分斜視図である。
【0040】
まず、図1では、水平方向(左右方向)に延在しかつ外方に張り出す張出片部を上下の両側に有する、レール状構造物Lの張出片部の既設電子機器10への当接部分を2点鎖線で示し、その延在方向に長手方向が一致するように取り付けられた既設電子機器10の背面10aを示している。
【0041】
既設電子機器10の背面10aにおいて、長手方向の略中央に位置し、レール状構造物Lの下側の張出片部が嵌り込む第1係合部11には、上方に向く爪部11aと爪部11bが間隔を置いて設けられている。
【0042】
また、爪部11aの内方には上下方向の弾性力が付与されるように弾性片部11cが設けられ、爪部11bの内方には上下方向の弾性力が付与されるように弾性片部11dが設けられている。
【0043】
そして、爪部11aと爪部11bに挟まれる壁部10eが、既設電子機器10の背面10aに設けられ、爪部11aには壁部10eの方向にガイド用凸部11eが形成され、爪部11bには壁部10eの方向にガイド用凸部11fが形成されている。
【0044】
以上のような構成により、上下方向に進退可能な第1係合部11にはレール状構造物Lが嵌り込むだけでなく、上方に向けて弾性力(弾性復帰しようとする復元力)も付与される。
【0045】
一方、レール状構造物Lの上側の張出片部が嵌り込む第2係合部12には下方に向く爪部12aが、第2係合部13には下方を向く爪部13aが、第2係合部14には下方を向く爪部14aが設けられている。
【0046】
ここで、第2係合部12、13、14は、いずれも既設電子機器10の背面10aに固定的に形成されている。
【0047】
以上のように、既設電子機器10の第1係合部11と第2係合部12、13、14にレール状構造物Lの張出片部が嵌り込み、前述した弾性力が付与されることにより、強固に固定される。
【0048】
また、第1係合部11の高さh1を、既設電子機器10の下面10bから爪部11aの上方の先端部または爪部11bの上方の先端部までの距離と定義し、第2係合部12、13、14の高さh2を、既設電子機器10の下面10bから爪部12a、13a、14aのそれぞれの下方の先端部までの距離と定義する。
【0049】
そして、背面10a側の高さh1と高さh2の間の領域Rにおける右端部には、後述する可動スライダ20(図3(a)及び図3(b)参照)が右側面10cと直交する方向に沿ってスライド可能に嵌挿されるスライド用凹部30(図2参照)がレール状構造物Lの延設方向と略平行に形成される。
【0050】
そして、スライド用凹部30の反端部側(左側)は、可動スライダ20の嵌挿を防止する嵌挿防止壁31により閉塞されている。
【0051】
また、2つのスライド用凹部30に挟まれる背面10aの一部には、可動スライダ20の一対の弾性片部20aの先端部に設けられたガイド用凸部20bが嵌り込むガイド用凹部32が形成されている。
【0052】
ガイド用凹部32は、スライド方向(左右方向)と直交する方向(上下方向)の幅長Woが進退方向(左右方向)に沿って連続的に可変されていて、可動スライダ20の進退に応じて前進(左方向へ進む)のための弾性力を付与する前進ガイド用凹部32a、後退(右方向へ進む)のための弾性力を付与する後退ガイド用凹部32b、停止のための弾性力を付与する停止ガイド用凹部32cを具備している。
【0053】
また、左側面10fには、隣接して他の電子機器が結合された場合、内部の電源回路や通信回路等と電気的な接続を可能とする雄側コネクタ15が設けられており、その突出する長さLcは約6mmに設定されている。
【0054】
次に、図2では、前述したレール状構造物Lの延設方向の直交断面をハッチングで示し、第1係合部11の高さh1と第2係合部12、13、14の高さh2を示し、高さh1と高さh2の間の領域Rを示しているが、背面10a側の領域Rに前述した2つのスライド用凹部30が2つ形成されている。
【0055】
また、右側面10cには、内部の電源回路や通信回路等と電気的な接続を可能とする雌側コネクタ16が設けられ、後述する増設電子機器40が隣接して結合されるとその雄側コネクタ45(図4(a)参照)が嵌挿される。
【0056】
次に、図3(a)と図3(b)で示したように、可動スライダ20には、前述したスライド用凹部30に嵌り込むように、幅方向の両側端部にスライド用凸部20cが形成されている。
【0057】
また、内方に形成された一対の弾性片部20aの先端部にはガイド用凸部20bが設けられ、一対の弾性片部20dの先端部にはガイド用凸部20eが設けられている。
【0058】
それらのうち、一対の弾性片部20aの先端部に設けられたガイド用凸部20bは、前述したガイド用凹部32(図1及び図2参照)に嵌り込むように形成されている。
【0059】
そして、可動スライダ20がスライド用凹部30に嵌挿されると、ガイド用凸部20bの最大幅長Wmがガイド用凹部32の幅長Woによりその進退に応じて連続的に可変されるため、一対の弾性片部20aが弓形に屈曲するように弾性変形して、弾性片部20aが復元しようとする応力が得られる。
【0060】
つまり、ガイド用凸部20bの最大幅長Wmに対して、ガイド用凹部32の幅長Woが小さく設定されている位置(前進ガイド用凹部32aや後退ガイド用凹部32b)においては、可動スライダ20に対して、幅長Woがガイド用凹部32の両側の傾斜面に沿って連続的に拡がる方向(左への前進方向又は右への後退方向)にスライドしようとする復元力が作用する。
【0061】
また、ガイド用凸部20bの最大幅長Wmに対して、ガイド用凹部32の幅長Woが大きく設定されている位置においては、可動スライダ20にはスライドしようとする力が作用せず停止する。
【0062】
例えば停止ガイド用凹部32cにおいては、ガイド用凹部32の両側が傾斜せず垂直に拡大するように形成されているため、可動スライダ20を右方向へ後退させるためには、一対の弾性片部20aを強制的に中央に寄せるような手作業を要する。
【0063】
一方、一対の弾性片部20dのガイド用凸部20eは、隣接させて結合させる際に、予め増設電子機器40(図4(a)参照)のガイド用凹部42(ガイド用凹部32をミラー反転した形状)に嵌り込み同様の作用が得られる。
【0064】
また、可動スライダ20のスライド方向の全長Lsは、スライド用凹部30のスライド方向の全長Lp(図1参照)の約2倍の長さに相当する約50mmに設定されている。
【0065】
そのため、スライド用凹部30に可動スライダ20が嵌挿され、所定の位置で停止すると、可動スライダ20の中央(全長Ls×50%)の位置と、既設電子機器10の右側面10c(図1参照)の位置が、レール状構造物Lの延設方向(既設電子機器10の長手方向)において略一致する。
【0066】
また、既設電子機器10と増設電子機器40との境界K(図4(b)参照)の位置もその位置と略一致している。
【0067】
加えて、可動スライダ20の全長Lsの50%の長さLhは、可動スライダ20が増設電子機器40の背面40aのスライド用凹部50に予め嵌挿され、所定の位置で停止したときの左側面40fから突出する長さに略相当する。
【0068】
次に、図4(a)〜図4(b)を参照し、既設電子機器10に対して増設電子機器40を相互に隣接させて結合する過程について説明する。
【0069】
なお、これらは、既設電子機器10が予めレール状構造物Lに取り付けられた状態を背面10a側から見た斜視図で説明するものであるが、レール状構造物Lは省略する。
【0070】
まず、図4(a)で示したように、増設電子機器40の背面40aの左端部にも2つのスライド用凹部50が設けられ、スライド用凹部50の反端部側は、可動スライダ20の嵌挿を防止する嵌挿防止壁51により閉塞されている。
【0071】
また、2つのスライド用凹部50に挟まれる背面40aの一部には、可動スライダ20の一対の弾性片部20dの先端部に設けられたガイド用凸部20e(図3(b)参照)が嵌り込むガイド用凹部42が形成されている。
【0072】
そして、増設電子機器40には、予め可動スライダ20が嵌挿され、所定の位置で停止している。
【0073】
この状態においては、前述したように可動スライダ20は、左側面40fから長さLh(図3(a)参照)だけ突出し、かつ、この長さLhは、雄側コネクタ45の左側面40fから突出する長さLc(図1参照、雄側コネクタ15の突出する長さと同じ)よりも大きく約25mmに設定されている。
【0074】
次に、図4(b)で示したように、増設電子機器40を既設電子機器10に対して隣接するようレール状構造物L(図示せず)に取り付ける際、可動スライダ20が両者間の平行度を確保できる案内部材として作用し、両者間の位置決めが容易となる。
【0075】
すなわち、雄側コネクタ45が既設電子機器10の右側面10cに設けられた雌側コネクタ16(図2参照)に嵌挿されるよりも前の段階で、必ず可動スライダ20の左側面40fから突出した部分が、既設電子機器10のスライド用凹部30に嵌挿されて結合方向を案内するため、増設電子機器40を隣接させることが容易となる。
【0076】
そして、結合後においては、図4(b)で示したように、背面10a側における第1係合部11の高さh1と第2係合部12、13、14の高さh2の間の領域R(図1及び図2参照)に、既設電子機器10と増設電子機器40の境界Kを跨ぐように可動スライダ20が配置され、可動スライダ20が既設電子機器10と増設電子機器40を結合している。
【0077】
以上説明したように、新たに増設する際には、増設電子機器40の背面40a側に可動スライダ20を予め配置しておくことが必須となる。
【0078】
すなわち、増設電子機器40とレール状構造物Lとの間に可動スライダ20が配置される構成となるため、予め増設電子機器40の背面40a側に可動スライダ20を配置しておかないと、増設電子機器40を隣接させて結合できない。
【0079】
そのため、増設電子機器40を隣接するように取り付ける際、可動スライダ20が両者間の平行度を確保できる案内部材として作用し、両者間の位置決めが容易となる。
【0080】
その結果、既設電子機器10に対する増設電子機器40の結合が確実となり、同時に雄側コネクタ45に内蔵されたコンタクトピン(図示せず)、雌側コネクタ16に内蔵されたコンタクトピン(図示せず)、及び雄側コネクタ45または雌側コネクタ16の変形を引き起こすおそれがなくなり、その分電気的な接続も十分に確保できる。
【0081】
また、増設電子機器40が、仮に可動スライダ20により案内される増設作業の途中で自重により重力方向に変位しようとしても、そのときの荷重は可動スライダ20を介して既設電子機器10の背面10a側に加わるため、同じ荷重が上下端部から加わる場合と比較した場合、仮に電子機器の重さ(荷重)が大きなものであっても、第1係合部11や第2係合部12、13、14に与える影響(変形、破損又は脱着等の不具合)を大きく軽減できる。
【0082】
さらに、既設電子機器10の背面10a側とレール状構造物Lとの間のデッドスペースを有効に活用できるため、その分上下端部(上面10d側及び下面10b側に結合のための構成要素を設ける必要がなく、実質的に既設電子機器10の高さを小さくすることができ、よりダウンサイジングが可能となる。
【0083】
また、可動スライダ20は、既設電子機器10のスライド用凹部30と増設電子機器40のスライド用凹部50のそれぞれに嵌挿され、既設電子機器10の境界K側に位置する右側面10cと、増設電子機器40の境界K側に位置する左側面40fのいずれにも直交する方向に沿ってスライド可能である。
【0084】
これにより、予め既設電子機器10をレール状構造物Lに取り付けた後に、レール状構造物Lの延在方向に沿ってその背面10a側に可動スライダ20をスライドさせながら取り付けることができるので結合作業を簡素化できる。
【0085】
また、スライド用凹部30は背面10aの境界K側に形成され、スライド用凹部30の境界Kの反対側は可動スライダ20の嵌挿を防止する嵌挿防止壁31により閉塞されている。
【0086】
同様に、スライド用凹部50は背面40aの境界K側に形成され、スライド用凹部50の境界Kの反対側は可動スライダ20の嵌挿を防止する嵌挿防止壁51により閉塞されている。
【0087】
これにより、仮に既設電子機器10と増設電子機器40を両者共レール状構造物Lに取り付けていない状態で結合させようとする場合においても、予め電子機器同士を密着させた(例えば、電気的接続等を行った)後に可動スライダ20を嵌挿させて結合することが不可能となる。
【0088】
そのため、予め可動スライダ20を嵌挿した状態での結合が必須となるため、慎重さを欠いた作業によるコネクタピンやコネクタの変形を引き起こすことがない。
【0089】
また、可動スライダ20は、一対の弾性片部20aと一対の弾性片部20dを有し、一対の弾性片部20aの先端部に設けられたガイド用凸部20bが既設電子機器10の背面10aの境界K側に形成されたガイド用凹部32に嵌り込んでいる。
【0090】
そして、一対の弾性片部20dの先端部に設けられたガイド用凸部20eが増設電子機器40の背面40aの境界K側に形成されたガイド用凹部42に嵌り込んでいる。
【0091】
これにより、可動スライダ20は、その進退に応じて前進、後退または停止のための弾性力を付与される。
【0092】
その結果、作業者は、予め既設電子機器10をレール状構造物Lに取り付けた後に、可動スライダ20をレール状構造物Lの延在方向に沿って進退させる位置に応じてその負荷を触覚により感知できるので、背面10a側や背面40a側の可動スライダ20を視認することなく、より明確に可動スライダ20の嵌挿状態を把握できる。
【0093】
すなわち、嵌挿後の進行距離に応じて一対の弾性片部20a、20dが弾性変形し、その反作用としての弾性力、すなわち弾性復帰しようとする復元力が付与されるため、作業者がどの位置まで可動スライダ20を嵌挿したかを容易に把握できる。
【0094】
なお、以上の事例においては、最初に増設電子機器40に可動スライダ20を嵌挿してから、次に既設電子機器10に案内させた場合について説明したが、最初に既設電子機器10に可動スライダ20を嵌挿してから、次に増設電子機器40を案内させても、同様の効果が得られる。
【0095】
(実施の形態2)
図5(a)は、本発明の実施の形態2における既設電子機器と増設電子機器の結合前の部分斜視図で、図5(b)は、本発明の実施の形態2における既設電子機器と増設電子機器の結合後の部分斜視図である。
【0096】
なお、本発明の実施の形態2における既設電子機器10と可動スライダ20の構成は、実施の形態1で説明した内容と同一であるため、説明を省略する。
【0097】
ここで、図5(a)で示したように、増設電子機器60の背面60aの左端部には2つのスライド用凹部70が設けられ、スライド用凹部70の反端部側は、可動スライダ20の嵌挿を防止する嵌挿防止壁71により閉塞されている。
【0098】
2つのスライド用凹部70に挟まれる背面60aの一部には、可動スライダ20の一対の弾性片部20d(図3(a)、(b)参照)の先端部に設けられたガイド用凸部20e(図3(b)参照)が嵌り込むガイド用凹部72が形成されている。
【0099】
そして、増設電子機器60を既設電子機器10に対して隣接するようにレール状構造物L(図示せず)に取り付ける際、可動スライダ20が両者間の平行度を確保できる案内部材として作用し、両者間の位置決めが容易となる。
【0100】
すなわち、雄側コネクタ65が雌側コネクタ16に嵌挿されるよりも前の段階で、必ず可動スライダ20の左側面60fから突出した部分が、既設電子機器10のスライド用凹部30に嵌挿されて結合方向を案内するため、増設電子機器60を隣接させることが容易となる。
【0101】
結合後においては、図5(b)で示したように、背面10a側における第1係合部11の高さh1と第2係合部12、13、14の高さh2の間の領域Rに、既設電子機器10と増設電子機器60の境界Kを跨ぐように可動スライダ20が配置され、可動スライダ20が既設電子機器10と増設電子機器60を結合している。
【0102】
その結果、既設電子機器10に対する増設電子機器60の結合が確実となり、同時に雄側コネクタ65に内蔵されたコンタクトピン(図示せず)、雌側コネクタ16に内蔵されたコンタクトピン(図示せず)、及び雄側コネクタ65または雌側コネクタ16の変形を引き起こすおそれがなくなり、その分電気的な接続も十分に確保できる。
【0103】
なお、その他の構成や作用、効果についても、実施の形態1の場合と同一なので、説明は省略し、実施の形態1と大きく異なる点について説明する。
【0104】
まず、増設電子機器60のスライド用凹部70の全長Lyは、既設電子機器10のスライド用凹部30の全長Lp(図1参照)よりも大きく約2倍の長さを有し、可動スライダ20の全長Ls(図3(a)参照)と略等しい。
【0105】
したがって、嵌挿防止壁71も境界Kから可動スライダ20の全長Lsと等しい距離を置いて形成されている。
【0106】
また、ガイド用凹部72の全長も可動スライダ20がスライド用凹部70に収まるように長く形成されており、かつ、右側終端では進行方向に位置する嵌挿防止壁71に向かって幅長Woが大きくなるように形成されているため、可動スライダ20の幅方向の両側端部のスライド用凸部20cを全てスライド用凹部70に収容することもできる。
【0107】
これにより、例えば予め可動スライダ20の幅方向の両側端部のスライド用凸部20cをスライド用凹部70に収めた状態で増設電子機器60の運搬も可能となるので、分離して運搬する必要がない。
【0108】
加えて、増設時には増設電子機器60の左側面60fから可動スライダ20の全長Lsの半分(長さLh相当部分)が突出するようにスライドさせて、既設電子機器10に案内させればよい。
【0109】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した2つの実施の形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変形が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的な手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態の変形例についても本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0110】
また、前述した2つの実施の形態で説明した既設電子機器及び増設電子機器の筐体や可動スライダ、第1係合部及び第2係合部等の構成要素の素材としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)、ABS(アクリロニトリンブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネイト)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)などのプラスティック素材が好ましいが、アルミニウム、マグネシウム、SUS(ステンレス鋼)などの金属素材やそれらを複合した素材であっても構わない。
【0111】
以上のように、本発明にかかる電子機器の結合構造は、相互に隣接する電子機器の連結を容易かつ確実に行うことのできる電子機器の結合構造として有用である。
【符号の説明】
【0112】
10 既設電子機器
10a 背面
10b 下面
10c 右側面
10d 上面
10e 壁部
10f 左側面
11 第1係合部
11a、11b 爪部
11c、11d 弾性片部
11e、11f ガイド用凸部
12、13、14 第2係合部
12a、13a、14a 爪部
15 雄側コネクタ
16 雌側コネクタ
20 可動スライダ
20a、20d 一対の弾性片部
20b、20e ガイド用凸部
20c スライド用凸部
30 スライド用凹部
31 嵌挿防止壁
32 ガイド用凹部
32a 前進ガイド用凹部
32b 後退ガイド用凹部
32c 停止ガイド用凹部
40 増設電子機器
40a 背面
40b 下面
40f 左側面
42 ガイド用凹部
45 雄側コネクタ
50 スライド用凹部
51 嵌挿防止壁
60 増設電子機器
60a 背面
60b 下面
60f 左側面
65 雄側コネクタ
70 スライド用凹部
71 嵌挿防止壁
72 ガイド用凹部
Wo ガイド用凹部の幅長
Wm ガイド用凸部の最大幅長
h1 第1係合部の高さ
h2 第2係合部の高さ
L レール状構造物
K 既設電子機器と増設電子機器の境界
Ls 可動スライダの全長
Lp、Ly スライド用凹部の全長
Lh 可動スライダ全長の50%の長さ
Lc 雄側コネクタの側面から突出する長さ
R 背面側における第1係合部の高さと第2係合部の高さの間の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延在しかつ外方に張り出す張出片部を両側に有するレール状構造物の延在方向に沿って、相互に隣接するように電子機器を結合するための電子機器の結合構造であって、 前記相互に隣接する電子機器は、いずれも背面側に前記レール状構造物の一方の張出片部が嵌り込む第1係合部と、前記レール状構造物の他方の張出片部が嵌り込む第2係合部を備え、
前記背面側における、前記第1係合部の高さと前記第2係合部の高さとの間の領域に、前記相互に隣接する電子機器の境界を跨ぐように可動スライダが配置され、その可動スライダが前記相互に隣接する電子機器同士を結合することを特徴とする電子機器の結合構造。
【請求項2】
前記可動スライダは、前記相互に隣接する電子機器のそれぞれの背面側に設けられたスライド用凹部に嵌挿され、前記相互に隣接する電子機器の境界側に位置するそれぞれの側面と直交する方向に沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項1記載の電子機器の結合構造。
【請求項3】
前記スライド用凹部は、前記相互に隣接する電子機器の背面の境界側にそれぞれ形成され、前記スライド用凹部の反境界側は、前記可動スライダの嵌挿を防止する嵌挿防止壁により閉塞されていることを特徴とする請求項2記載の電子機器の結合構造。
【請求項4】
前記可動スライダは、弾性片部を有し、その弾性片部の先端部に設けられたガイド用凸部が、前記相互に隣接する電子機器の背面の境界側に形成されたガイド用凹部に嵌り込むことにより、前記可動スライダの進退に応じて前進、後退または停止のための弾性力が付与されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の電子機器の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115419(P2013−115419A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276424(P2011−276424)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(390001166)株式会社エム・システム技研 (25)
【Fターム(参考)】