説明

電子機器の蓋開閉検出方法および蓋固定機構

【課題】電池などのバックアップ電源を必要とすることなく簡単で廉価な構成により、電子機器の蓋が不正に外されたことを検出可能な方法を提案すること。
【解決手段】電子機器のケース1の内部に、蓋2に対峙するように基板3を固定し、基板表面に抵抗膜パターン4を形成し、基板3と蓋2の間にワッシャ8を挟んだ状態で、固定ねじ12によって蓋2をケース1に固定し、ワッシャ8の摺動子10を抵抗膜パターン4に接触させる。抵抗膜パターン4と摺動子10により可変抵抗が構成される。固定ねじ12をねじ込む際あるいは緩める際のワッシャ8の回転量は不定であるので、固定ねじ12を操作すると摺動子10の位置が以前とは相違し、これに基づき、蓋2が外されたことを検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技店に設置されている遊技機などの電子機器が不正に開けられてデータ解析などが行われることを防止するための蓋開閉検出方法および蓋固定機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器が不正に開けられて、記憶データのコピー、改ざんなどが行われることの無いようにするため、特許文献1には、電子機器の蓋などが開けられると記憶データが自動的に消去される方法が提案されている。この方法では、不正に扉が開放されると、電池などにより充電されていたコンデンサの電荷がRAM電源遮断回路に供給され、RAMへの電源が遮断してデータが消去されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−111836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、電池などのバックアップ電源を必要とすることなく、簡単で廉価な構成により、電子機器が不正に開けられて内部を解析されることの無いようにした電子機器の蓋開閉検出方法、および、そのために用いる電子機器の蓋固定機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明は、電子機器のケースに固定されている蓋が前記ケースから外されたか否かを検出するための電子機器の蓋開閉検出方法であって:
前記ケースの内部に、円環状の抵抗膜パターンが表面に形成された基板を配置し;
前記蓋と前記基板の間に、導電性の摺動子が取り付けられているワッシャを挟み;
前記蓋の表面側から、前記蓋および前記ワッシャを通して、固定ねじを前記基板にねじ込むことにより、前記蓋を前記ケースに固定して、前記摺動子が前記抵抗膜パターンに接触した状態を形成し;
前記抵抗膜パターンの円周方向の異なる位置に形成した一対の電極端子を介して当該抵抗膜パターンに通電し、前記摺動子を介して検出される電圧を記憶し;
前記電子機器の電源投入時に、前記抵抗膜パターンに通電して前記摺動子を介して検出される電圧を、記憶されている電圧と比較し;
これらが一致しない場合には、前記蓋が開けられたと判断することを特徴としている。
【0005】
本発明の方法において、固定ねじをねじ込む際には、蓋と基板の間に挟まれているワッシャも回り、そこに取り付けられている摺動子が基板側の円環状の抵抗膜パターンを摺動する。したがって、抵抗膜パターンと、これを摺動する摺動子によって可変抵抗が構成され、固定ねじを締め終わった後において、抵抗膜パターンに通電して摺動子を介して検出される電圧は、摺動子の円周方向の位置に対応している。
【0006】
固定ねじを締める際、あるいは固定ねじを緩める際におけるワッシャの回転量、すなわち、摺動子の回転位置は不定である。したがって、一旦、蓋が開けられた後に固定ねじを締めなおした後などにおいて、摺動子が元の回転位置に一致する可能性は殆どない。よって、電源投入時において検出された電圧が、記憶されている電圧と一致していない場合には、蓋が開けられたと判断できる。
【0007】
ここで、一箇所のワッシャが、偶然に同一回転して、その摺動子が同一位置となり、蓋が開けられたことを検出できない可能性がある。かかる事態が発生する確率は極めて低いが、このような事態を確実に防止するために、本発明の電子機器の蓋開閉検出方法では、前記抵抗膜パターンを前記基板の表面における複数の箇所に形成し、各抵抗膜パターンに対応して前記ワッシャを配置し、複数の固定ねじにより前記蓋を前記ケースに固定し、各ワッシャの前記摺動子を介して検出される各電圧を記憶し、前記電子機器の電源投入時には、各摺動子を介して検出される各電圧を、記憶されている各電圧と比較し、これらの一部でも一致していない場合には、前記蓋が開けられたと判断するようにしている。
【0008】
また、移動する摺動子から電圧検出用の配線を引き出すことを回避するためには、前記基板の表面に、前記抵抗膜パターンと同心状に円環状の配線膜パターンを形成し、前記蓋を前記ケースに固定した状態において、前記摺動子を前記配線膜パターンにも接触させ、前記配線膜パターンを介して前記電圧を検出すればよい。
【0009】
次に、蓋が不正に外されてデータ解析などが行われることを防止するためには、前記電子機器の電源投入時に検出される電圧が、記憶されている電圧に一致しない場合に、前記電子機器を強制的に動作不能状態にすればよい。例えば、フラッシュメモリ内のデータを強制的に消去すればよい。
【0010】
次に、本発明は、上記の電子機器の蓋開閉検出方法に用いる電子機器の蓋固定機構であって:
前記ケースの内部に配置されている、円環状の前記抵抗膜パターンが表面に形成されている前記基板と;
前記蓋および前記基板の間に挟まれている、前記摺動子が取り付けられている前記ワッシャと;
前記蓋の表面から、前記蓋および前記ワッシャを通して、前記基板にねじ込まれ、前記蓋を前記ケースに固定すると共に、前記摺動子を前記抵抗膜パターンに接触させた状態を形成している前記固定ねじとを有し;
前記抵抗膜パターンの円周方向の異なる位置に形成した通電用の前記電極端子とを有していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の電子機器の蓋固定機構は、前記基板の表面において、前記抵抗膜パターンと同心状に形成された円環状の配線膜パターンと、前記配線膜パターンにおける円周方向の所定の位置に形成された電圧検出用の端子とを有し、前記摺動子は前記配線膜パターンにも接触していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、固定ねじの回転により回転するものの、その回転量が不定なワッシャに摺動子を取り付け、これを、基板に形成した円環状の抵抗膜パターン上を摺動させることにより可変抵抗を構成し、固定ねじを締め直す毎に異なる値の電圧が摺動子から検出されるようにしてある。したがって、電池などのバックアップ電源を必要としない簡単で廉価な構成の蓋開閉検出方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明による電子機器の蓋開閉検出方法の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した電子機器の蓋固定機構を示す概略構成図、および、基板表面に形成した抵抗膜パターンおよび配線膜パターンを示す説明図である。図において、1は電子機器のケースであり、2はそこに固定されている蓋である。ケース1の内部には基板3が固定されており、この基板3の表面には、円環状の抵抗膜パターン4が形成され、当該抵抗膜パターン4の内側には同心状に円環状の配線膜パターン5が形成されている。また、これらの中心にはねじ穴6が形成されている。
【0015】
外側の抵抗膜パターン4には、その直径方向の両端から外方に通電用の電極端子4a、4bが延びている。内側の配線膜パターン5は導体膜あるいは抵抗膜から形成されており、その円周方向の所定の位置、例えば、電極端子4a、4bとは90度回転した位置から基板裏面側に電圧検出用の電極端子5aが延びている。
【0016】
蓋2と基板3の間にはワッシャ8が配置されている。ワッシャ8の中心部には円形の中心穴9が形成されており、その基板側の表面には、導電性の摺動子10が取り付けられている。摺動子10は、抵抗膜パターン4および配線膜パターン5の双方に接触可能な大きさのものである。
【0017】
蓋2には、基板3のねじ穴6に対峙した部位にねじ挿入穴11が形成されている。基板3の表面側から、固定ねじ12が、ねじ挿入穴11、ワッシャ8の中心穴9に通されて、基板3のねじ穴6にねじ込み固定されている。これにより、蓋2はケース1に固定され、蓋2および基板3の間に挟まれたワッシャ8の摺動子10は、基板表面の抵抗膜パターン4および配線膜パターン5の円周方向における所定の部位に押し付けられて電気的に接触した状態が形成されている。
【0018】
この構成の蓋固定機構には蓋開閉検出用の回路機構20が接続されている。本例の蓋開閉検出用の回路機構20は、抵抗膜パターン4に通電を行うために電極端子4a、4bに接続されている通電回路21を備えている。また、摺動子10から取り出される電圧を検出するために、配線膜パターン5の電極端子5aに接続された電圧検出回路22を備えている。さらに、電圧検出回路22で検出された電圧V0を記憶するための記憶回路23と、電圧V0および次の電源投入時において検出される電圧を比較する比較回路24と、これらが一致していない場合には、電子機器を動作不能状態に強制的に切り替える解析防止回路25を備えている。解析防止回路25は、例えば、電子機器の制御プログラムが格納されているフラッシュメモリを強制的に消去する。
【0019】
これに加えて、メンテナンス時などにおいて、解析防止回路25の機能を無効にし、記憶回路23に保持されている電圧V0をリセットして再設定させるための制御回路26が備わっている。制御回路26は、例えば、外部との間で暗号通信を行って、正当な管理者によって、このような動作を行うことができるように構成されている。
【0020】
次に、この構成の蓋固定機構を用いた電子機器の蓋開閉検出方法を説明する。まず、蓋2をケース1に取り付ける際には、蓋2と基板3の間に、摺動子10が下向きの状態でワッシャ8を挟む。この状態で、蓋2の表面側から、蓋2およびワッシャ8を通して、固定ねじ12を基板3にねじ込む。
【0021】
固定ねじ12をねじ込むと、ワッシャ8も回転して、その摺動子10が基板上の抵抗膜パターン4および配線膜パターン5を摺動する。ワッシャ8の回転量は不定であるので、摺動子10が止まる位置を事前に知ることはできない。
【0022】
固定ねじ12をねじ込み、蓋2をケース1に固定した後は、通電回路21により、一対の電極端子4a、4bを介して抵抗膜パターン4に通電し、配線膜パターン5を介して得られる摺動子10の電圧V0を電圧検出回路22において検出する。電圧V0は、摺動子10の止まる角度位置に対応した値となる。このように初期設定が行われる。
【0023】
この後に、不正に蓋2が開けられた場合、ワッシャ8が外れた状態で電子機器の電源が投入されると、電圧検出回路22により摺動子10の電圧がオープン状態であることが検出される。よって、不正に蓋2が開けられたことを検出できる。また、ワッシャ8が付いている場合には、固定ねじ12を外す際にワッシャ8も回るので、その摺動子10の位置が移動する。よって、記憶されている電圧V0とは異なる電圧が摺動子10から検出されるので、不正に蓋2が開けられたことを検出できる。
【0024】
ここで、蓋2の複数の箇所に本例の蓋固定機構を設けておけば、蓋2が不正に取り外されたことを確実に検出できる。
【0025】
なお、配線膜パターン5を省略して、摺動子10から直接に電圧検出用の配線を引き出して電圧検出回路22の側に接続することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明を適用した電子機器の蓋固定機構および蓋開閉検出用の回路機構を示す概略構成図であり、(b)はその基板表面に形成した抵抗膜パターンおよび配線膜パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ケース
2 蓋
3 基板
4 抵抗膜パターン
5 配線膜パターン
6 ねじ穴
8 ワッシャ
9 中心穴
10 摺動子
11 ねじ挿入穴
12 固定ねじ
20 蓋開閉検出用の回路機構
21 通電回路
22 電圧検出回路
23 記憶回路
24 比較回路
25 解析防止回路
26 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のケースに固定されている蓋が前記ケースから外されたか否かを検出するための電子機器の蓋開閉検出方法であって、
前記ケースの内部に、円環状の抵抗膜パターンが表面に形成された基板を配置し、
前記蓋と前記基板の間に、導電性の摺動子が取り付けられているワッシャを挟み、
前記蓋の表面側から、前記蓋および前記ワッシャを通して、固定ねじを前記基板にねじ込むことにより、前記蓋を前記ケースに固定して、前記摺動子が前記抵抗膜パターンに接触した状態を形成し、
前記抵抗膜パターンの円周方向の異なる位置に形成した一対の電極端子を介して当該抵抗膜パターンに通電し、前記摺動子を介して検出される電圧を記憶し、
前記電子機器の電源投入時に、前記抵抗膜パターンに通電して前記摺動子を介して検出される電圧を、記憶されている電圧と比較し、
これらが一致しない場合には、前記蓋が開けられたと判断することを特徴とする電子機器の蓋開閉検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の蓋開閉検出方法において、
前記抵抗膜パターンを前記基板の表面における複数の箇所に形成し、
各抵抗膜パターンに対応して前記ワッシャをそれぞれ配置し、
複数の固定ねじにより前記蓋を前記ケースに固定し、
各ワッシャの前記摺動子を介して検出される各電圧を記憶し、
前記電子機器の電源投入時には、各摺動子を介して検出される各電圧を、記憶されている各電圧と比較し、
これらの一部でも一致していない場合には、前記蓋が開けられたと判断することを特徴とする電子機器の蓋開閉検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器の蓋開閉検出方法において、
前記基板の表面に、前記抵抗膜パターンと同心状に円環状の配線膜パターンを形成し、
前記蓋を前記ケースに固定した状態において、前記摺動子を前記配線膜パターンにも接触させ、
前記配線膜パターンを介して前記電圧を検出することを特徴とする電子機器の蓋開閉検出方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の電子機器の蓋開閉検出方法において、
前記電子機器の電源投入時に検出される電圧が、記憶されている電圧に一致しない場合には、前記電子機器を強制的に動作不能状態にすることを特徴とする電子機器の蓋開閉検出方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電子機器の蓋開閉検出方法に用いる電子機器の蓋固定機構であって、
前記ケースの内部に配置されている、円環状の前記抵抗膜パターンが表面に形成されている前記基板と、
前記蓋および前記基板の間に挟まれている、前記摺動子が取り付けられている前記ワッシャと、
前記蓋の表面から、前記蓋および前記ワッシャを通して、前記基板にねじ込まれ、前記蓋を前記ケースに固定すると共に、前記摺動子を前記抵抗膜パターンに接触させた状態を形成している前記固定ねじとを有し、
前記抵抗膜パターンの円周方向の異なる位置に形成した通電用の前記電極端子とを有していることを特徴とする電子機器の蓋固定機構。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器の蓋固定機構において、
前記基板の表面において、前記抵抗膜パターンと同心状に形成された円環状の配線膜パターンと、
前記配線膜パターンにおける円周方向の所定の位置に形成された電圧検出用の端子とを有し、
前記摺動子は前記配線膜パターンにも接触していることを特徴とする電子機器の蓋固定機構。

【図1】
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