説明

電子機器の電源回路

【課題】汎用性の高い電子機器の消費電力低減回路を提供する。
【解決手段】この電子機器の電源回路30は、携帯機の振動に伴ってローレベルの電圧を出力する振動センサ31を備えている。振動センサ31から出力されるローレベルの電圧がクロックモジュール32の入力端子32aに入力されると、クロックモジュール32は、出力端子32bからハイインピーダンスの割り込み出力を行うとともに、計時動作を開始する。また、クロックモジュール32は、計時動作を通じて計時された時間が規定時間に達することをもって、出力端子32bのローレベルの電圧の割り込み出力を行う。そして、クロックモジュール32の割り込み出力に基づいてMOSトランジスタFET1がオン/オフされることで、電子部品15の不要な電力消費を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の電源回路に関し、特に車両の電子キーシステムに用いられる携帯機に実装して有益な電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近することにより車両ドアの解錠が自動的に実行されたり、ユーザが車室内に入ることによりエンジンの始動が許可される、いわゆる電子キーシステムが周知である。この電子キーシステムでは、車両ドアの周辺や車室内に通信エリアが形成されており、この通信エリアに携帯機を所持したユーザが進入すると、車両に設けられた車載機と携帯機との間で無線通信が行われる。そして、この無線通信を通じて車両ドアの解錠やエンジン始動許可などが行われるようになっている。
【0003】
ところで、電子キーシステムに用いられる携帯機は、車両運転時以外は、例えば家の中で机上に置かれたままの状態で静置されるなど、未使用の状態で放置されることが多い。このため、こうした携帯機にあっては、内蔵される電子部品への給電を常時行っていると、未使用時に電源用のバッテリが消耗してしまい、バッテリ切れを招きやすくなるといった懸念がある。
【0004】
そこで従来は、例えば特許文献1に見られるように、携帯機に振動センサを設けた上で、同振動センサを通じて検出される携帯機の振動に基づいて電子部品の給電経路を断続させるといった方法が提案されている。特許文献1に記載の携帯機では、振動センサの出力が携帯機に設けられたマイクロコンピュータに取り込まれている。マイクロコンピュータは、振動センサの出力に基づき携帯機の振動を監視しつつ、携帯機の振動が一旦検知されてから、振動が検知されなくなったとき、その時点からの経過時間を、内蔵されるタイマを通じて計測する。そして、携帯機の振動が検知されなくなった時点から一定時間が経過した時点で、携帯機に設けられた電源装置に給電停止要求信号を送信する。電源装置は、給電停止要求信号が伝達されると、携帯機に搭載された電子部品への給電を遮断する。また、電源装置は、電子部品への給電が停止されている期間に振動センサを通じて携帯機の振動が検知された場合には、電子部品への給電を開始する。これにより、携帯機を所持したユーザが乗車しようとして歩き始めたとすると、携帯機が振動するため、電子部品への給電が開始される。よって、ユーザが乗車しようとするときには携帯機が駆動状態となっているため、携帯機を用いて車両ドアを解錠させることができる。一方、例えばユーザが降車した後に携帯機を静置した場合には、その時点から一定時間が経過した時点で、携帯機に搭載された電子部品への給電が自動的に遮断される。これにより、利便性を確保しつつ、消費電力を低減することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−205186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の携帯機のように、マイクロコンピュータに内蔵されたタイマを利用して経過時間の計測を行う場合、振動センサの出力に基づいてタイマの割り込み時間の設定や計時(カウント)の開始設定などを実行するソフトウェアをマイクロコンピュータに組み込む必要がある。よって、従来の携帯機に搭載されているマイクロコンピュータをそのまま用いることが難しく、例えば別途のマイクロコンピュータを用意せざるを得なくなるなど、汎用性及びコスト性の面で改善すべき点があった。
【0007】
なお、このような課題は、車両の電子キーシステムに用いられる携帯機に限らず、例えばスマートフォンやポータブルのゲーム機など、バッテリを電源として用いる各種電子機器に共通する課題である。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電力を低減しつつも、汎用性を高めることのできる電子機器の電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子機器の振動を検出する振動センサと、同振動センサから出力される検出結果に基づいて第1の割り込み出力を行うとともに、計時動作を開始して且つ、同計時動作中に前記検出結果が入力される都度、それまでに計時された時間をリセットしつつ、前記計時動作を通じて計時された時間が規定時間に達することをもって第2の割り込み出力を行うクロックモジュールと、前記電子機器に搭載された負荷の給電経路中に設けられて、前記クロックモジュールが前記第1の割り込み出力を行っているとき、前記負荷への給電を行うとともに、前記クロックモジュールが前記第2の割り込み出力を行っているとき、前記負荷への給電を遮断する給電状態切替手段とを備えることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、例えば電子機器を所持したユーザが歩き始めたとすると、歩行動作に伴って電子機器が振動するため、この振動が振動センサによって検出される。ここで、振動センサとして、例えば電子機器の振動に基づき所定の電圧を出力する機械式の振動センサを用いたとする。この場合、振動センサから検出結果として所定の電圧が出力されると、クロックモジュールが第1の割り込み出力を行うため、給電状態切替手段を通じて電子機器に設けられた負荷への給電が行われる。またこのとき、クロックモジュールが計時動作を開始する。さらに、ユーザが歩行動作を行っている期間は、電子機器の振動に伴って振動センサから所定の電圧が断続的に出力されるため、その都度、クロックモジュールにより計時された時間がリセットされる。そして、ユーザが電子機器を静置するなどして電子機器が振動しなくなると、振動センサから所定の電圧が出力されなくなるため、その時点から規定時間が経過したときにクロックモジュールが第2の割り込み出力を行う。よって、給電状態切替手段を通じて電子機器に設けられた負荷への給電が遮断される。これにより、マイクロコンピュータの不要な構成でありながらも、消費電力を低減することができるため、汎用性を高めることができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子機器の電源回路において、前記給電状態切替手段は、前記負荷及び前記クロックモジュールの共通の給電経路中に設けられて、前記負荷への給電を行う際に前記クロックモジュールへの給電を行うとともに、前記負荷への給電を遮断する際に前記クロックモジュールへの給電を遮断して且つ、前記振動センサからの前記検出結果に基づいて前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を開始するものであることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、給電状態切替手段によって、負荷への給電のみならず、クロックモジュールへの給電も遮断することができるため、更に消費電力を低減することができるようになる。なお、同構成によるように、振動センサからの検出結果に基づいて給電状態切替手段が負荷及びクロックモジュールへの給電を開始することとすれば、電子機器が振動し始めたときに、負荷の駆動及びクロックモジュールの計時動作を開始することができるため、それらを適切に動作させることができる。
【0013】
そしてこの場合、請求項3に記載の発明によるように、
・前記給電状態切替手段は、前記負荷及び前記クロックモジュールの共通の給電経路中に設けられて、前記振動センサからの前記検出結果に基づいてオン状態となって前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を行うとともに、前記クロックモジュールが前記第1の割り込み出力を行っている期間はオン状態を維持して前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を継続して且つ、前記クロックモジュールが前記第2の割り込み出力を行っている期間はオフ状態を維持して前記負荷及び前記クロックモジュールの給電経路を遮断するスイッチング素子からなる、
といった構成、あるいは請求項4に記載の発明によるように、
・前記給電状態切替手段は、前記負荷及び前記クロックモジュールの共通の給電経路中に設けられて、オン状態であるときに前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を行うとともに、オフ状態であるときに前記負荷及び前記クロックモジュールの給電経路を遮断する第1のスイッチング素子と、オン/オフ駆動により前記第1のスイッチング素子をオン/オフさせる第2のスイッチング素子からなるものであって、同第2のスイッチング素子は、前記振動センサからの前記検出結果に基づいてオン状態となって前記第1のスイッチング素子をオンさせるとともに、前記クロックモジュールが前記第1の割り込み出力を行っている期間はオン状態を維持して前記第1のスイッチング素子をオン状態に保持して且つ、前記クロックモジュールが前記第2の割り込み出力を行っている期間はオフ状態を維持して前記第1のスイッチング素子をオフ状態に保持するものである、
といった構成を採用することが有効であり、これにより、負荷及びクロックモジュールへの給電及び給電の遮断を容易に行うことができるため、請求項1及び2に記載の発明を容易に実現することができるようになる。また、請求項3に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と比較して素子数を低減することができるため、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子機器の電源回路において、前記振動センサと前記給電状態切替手段との間には、前記振動センサから出力される電圧を一定時間だけ前記給電状態切替手段に入力させるフィルタ手段が設けられてなることを要旨とする。
【0015】
振動センサとして、例えば電子機器の振動に基づき可動部が固定電極に接触することにより所定の電圧を出力する機械式接点構造からなる振動センサを用いるようにした場合、電子機器が静置されたとき、その姿勢によっては、可動部が固定電極に接触したままの状態となって、振動センサから所定の電圧が連続的に出力されることがある。このような場合、前述のように、例えば振動センサから所定の電圧が出力されることに基づいて負荷及びクロックモジュールへの給電を開始するようにしていると、振動センサから所定の電圧が連続的に出力されている期間、負荷及びクロックモジュールへの給電が継続される懸念があり、消費電力が増加するおそれがある。この点、上記構成によるように、振動センサから出力される電圧を一定時間だけ給電状態切替手段に入力させるフィルタ手段を設けることとすれば、仮に振動センサから所定の電圧が連続的に出力されるようになった場合であっても、負荷及びクロックモジュールへの給電が継続されるような状況を回避することができる。したがって、振動センサとして機械式接点構造からなる振動センサを用いた場合であれ、消費電力の増加を回避することが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子機器の電源回路において、前記クロックモジュールは、前記規定時間を可変設定できる構成からなることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、例えばユーザがクロックモジュールの規定時間を自由に変更することが可能となるため、設計の自由度が向上するようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる電子機器の電源回路によれば、消費電力を低減しつつも、汎用性を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両の電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【図2】本発明にかかる電子機器の電源回路の第1の実施形態について同電源回路を搭載した携帯機の構成を示すブロック図。
【図3】同第1の実施形態の電源回路についてその回路構成を示す回路図。
【図4】(a)〜(e)は、同第1の実施形態の電源回路についてその動作例を示すタイミングチャート。
【図5】本発明にかかる電子機器の電源回路の第2の実施形態についてその回路構成を示す回路図。
【図6】(a)〜(f)は、同第2の実施形態の電源回路についてその動作例を示すタイミングチャート。
【図7】本発明にかかる電子機器の電源回路の第3の実施形態についてその回路構成を示す回路図。
【図8】(a)〜(e)は、同第3の実施形態の電源回路についてその動作例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電子機器の電源回路を車両の電子キーシステムの携帯機に適用した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。はじめに、図1及び図2を参照して、車両の電子キーシステムの概要について説明する。
【0021】
図1に示すように、この電子キーシステムでは、ユーザが所持する携帯機1と車両2との間で無線通信を通じた各種通信制御が実行される。
図2に示すように、携帯機1には、車両2から送信される無線信号を受信する受信回路10、及び車両2に対して無線信号を送信する送信回路11が設けられている。また、携帯機1には、電池などの電源用のバッテリ12の電圧を検出する電圧センサ13が設けられている。そして、受信回路10を介して受信される無線信号の処理、並びに送信回路11からの無線信号の送信制御が、マイクロコンピュータを中心に構成された携帯機制御装置14を通じて行われる。携帯機制御装置14は、車両2から送信されるリクエスト信号を受信回路10を介して受信すると、識別コード(IDコード)を含む応答信号を送信回路11から送信する。また、携帯機制御装置14は、車両2から送信されるバッテリ電圧要求信号を受信すると、電圧センサ13を通じてバッテリ12の電圧を検出するとともに、検出したバッテリ12の電圧情報を含むバッテリ電圧信号を送信回路11から送信する。なお、携帯機1には、バッテリ12から、負荷としての各種電子部品15への給電を制御する電源回路30が設けられている。
【0022】
一方、図1に示すように、車両2には、車両ドアの周辺に設定された車外通信エリアAに無線信号を送信する車外送信装置20、及び車室内に設定された車内通信エリアBに無線信号を送信するための車内送信装置21が設けられている。また、車両2には、携帯機1から送信される無線信号を受信する受信装置22が設けられている。そして、送信装置20,21からの無線信号の送信制御、並びに受信装置22を介して受信される無線信号の処理が、マイクロコンピュータを中心に構成された車載制御装置23を通じて行われる。この車載制御装置23は、車両ドアを解錠したり、エンジンを始動させるなど、各種車両制御を統括的に実行する部分でもある。
【0023】
そして、この電子キーシステムは、次のように動作する。
まず、車載制御装置23は、車両が駐車状態であるとき、車外送信装置20から車外通信エリアAにリクエスト信号を所定の周期で送信する。ここで、携帯機1を所持したユーザが乗車しようとして車外通信エリアAに進入したとすると、車外送信装置20から送信されたリクエスト信号が携帯機1によって受信されて、携帯機1から応答信号が送信される。このとき、車載制御装置23は、携帯機1から送信された応答信号を受信装置22を介して受信すると、同応答信号に含まれるIDコードに基づいて携帯機1の認証を行い、当該認証が成立した場合には車両ドアを解錠する。
【0024】
また、車載制御装置23は、車両ドアが開状態となった後に閉じられたことを検知すると、車内送信装置21から車内通信エリアBにリクエスト信号を送信する。すなわち、ユーザが乗車して車両ドアを閉めたときに車内通信エリアBにリクエスト信号が送信される。そしてこのリクエスト信号が、乗車したユーザの所持する携帯機1によって受信されると、携帯機1から応答信号が送信される。このとき、車載制御装置23は、携帯機1から送信された応答信号を受信装置22を介して受信すると、同応答信号に含まれるIDコードに基づいて携帯機1の認証を行い、当該認証が成立した場合には、車両に設けられたエンジンスタートスイッチ(図示略)が操作されることを条件にエンジンを始動させる。
【0025】
さらに、車載制御装置23は、車両のエンジンが始動しているときに車両ドアが開状態となった後に閉じられたことを検知した場合にも、車内送信装置21から車内通信エリアBにリクエスト信号を送信する。そしてこのとき、受信装置22を介して応答信号を受信することができなかった場合には、車室内に携帯機1が存在していないと判断して、車両に設けられたブザーを鳴動させる。これにより、例えば同乗者が電子キーを持ち出したような場合に警報が発せられるようになっている。
【0026】
また、車載制御装置23は、車両に設けられた着座センサを通じてユーザが着座状態であることが検知されている期間、車内送信装置21からバッテリ電圧要求信号を所定の周期で送信する。そしてこのバッテリ電圧要求信号が、ユーザが所持する携帯機1によって受信されると、携帯機1からバッテリ電圧信号が送信される。このとき、車載制御装置23は、携帯機1から送信されたバッテリ電圧信号を受信装置22を介して受信すると、同バッテリ電圧信号に含まれる携帯機1のバッテリ12の電圧情報を取得する。そして、携帯機1のバッテリ12の電圧が所定の閾値よりも小さい場合には、例えば車両のインストルメントパネルに設けられた警告表示灯を点灯させるなどして、携帯機1のバッテリ電圧が低下していることをユーザに報知する。
【0027】
ところで、こうした電子キーシステムにあっては、少なくともユーザが乗車するときから降車するまでの期間、携帯機1が駆動していることが要求される。一方、ユーザは、車両を運転しようとする際、携帯機1を所持した状態で車両まで歩くこととなるため、携帯機1が振動する。また、ユーザが乗車すると、携帯機1は車室内で静置されるため、携帯機1は必ずしも振動しなくなる。そこで、携帯機1の電源回路30では、通常は電子部品15への給電を遮断しつつ、携帯機1が振動したときに電子部品15への給電を開始するようになっている。また、携帯機1が振動しなくなってから一定時間が経過したときに、電子部品15への給電を遮断するようになっている。なお、一定時間は、例えば平均的な運転時間に対して十分に長い時間(例えば数時間程度)に設定されている。そして、本実施形態では、このように携帯機1の電子部品15への給電を断続させることによって、携帯機1の消費電力の低減を図るようにしている。
【0028】
次に、図3を参照して、電源回路30の構成について詳述する。なおここでは、接地電圧に対応する電圧をローレベルの電圧とするとともに、バッテリ12の電圧に対応する電圧をハイレベルの電圧としている。
【0029】
図3に示すように、この電源回路30には、携帯機1の振動を検知して所定の電圧を出力する振動センサ31、及び振動センサ31から出力される電圧に基づいて計時動作を開始するクロックモジュール32が設けられている。また、電源回路30には、電子部品15とグランドGとを電気的に接続する給電経路中に設けられて同電子部品15への給電を断続させるスイッチング素子としてのNチャンネルMOSトランジスタFET1が設けられている。なお本実施形態では、MOSトランジスタFET1が給電状態切替手段となっている。
【0030】
振動センサ31は、その出力端子31cに接続された導電性の可動部31aと、同可動部31aと所定の間隙を隔てて配置されてグランドGに電気的に接続された固定電極31bとからなるものであって、機械式接点構造を有している。そして、振動センサ31は、携帯機1の振動に伴って可動部31aが固定電極31bに接触することによりオン状態となったり、可動部31aが固定電極31bから離間することによりオフ状態となったりするものであって、こうしたオン/オフ駆動を通じて出力端子31cからローレベルの電圧を断続的に出力する。
【0031】
また、クロックモジュール32は、振動センサ31の出力端子31cに電気的に接続された入力端子32aと、MOSトランジスタFET1のゲート端子に電気的に接続された出力端子32bとを備えている。なお、入力端子32aには、抵抗R1を介してバッテリ12が電気的に接続されている。すなわち、入力端子32aには通常、ハイレベルの電圧が入力されており、振動センサ31の出力端子31cからローレベルの電圧が出力されることで、ローレベルの電圧が入力される。そして、このクロックモジュール32は、入力端子32aに所定時間(入力フィルタ時間)以上のローレベルのパルス(ローパルス)が入力されたとき、出力端子32bの出力状態が、ローレベルの電圧を出力する状態(ローレベル出力状態)であればハイインピーダンス状態に切り替え、ハイインピーダンス状態であればそれを継続する。またこのとき、内蔵する水晶振動子を利用して計時動作を開始する。そして、クロックモジュール32は、計時動作中に入力端子32aに所定時間以上のローパルスが入力される都度、それまでに計時された時間をリセットする。また、クロックモジュール32は、計時動作を通じて計時された時間が予め設定された規定時間Tに達すると、出力端子32bの出力状態をハイインピーダンス状態からローレベル出力状態に切り替えて、その状態を継続する。なお、クロックモジュール32には図示しない複数の入力端子が設けられており、これらの入力端子にハイレベルの電圧及びローレベルの電圧をそれぞれ入力することで、各入力端子における入力電圧のパターンに応じて規定時間Tが設定されるようになっている。すなわち、規定時間Tがハード的に設定されるようになっている。
【0032】
一方、MOSトランジスタFET1のゲート端子には、抵抗R2を介してバッテリ12が電気的に接続されている。これにより、クロックモジュール32の出力端子32bの出力状態がハイインピーダンス状態である場合には、MOSトランジスタFET1がオン状態となって、電子部品15への給電が行われる。また、クロックモジュール32の出力端子32bの出力状態がローレベル出力状態である場合には、MOSトランジスタFET1がオフ状態となるため、電子部品15への給電が遮断される。
【0033】
次に図4を参照して、本実施形態にかかる電源回路30の動作例(作用)を説明する。
例えばユーザが車両2を運転しようとして、静置されていた携帯機1を手に取って歩き出したとすると、ユーザが携帯機1を手に取った時刻t1で携帯機1が振動し始める。このため、図4(a)に示すように、時刻t1で振動センサ31からローパルスが出力される。このとき、図4(b)に示すように、時刻t2でクロックモジュール32の入力端子32aに所定時間以上のローパルスが入力されると、図4(c)に示すように、クロックモジュール32が計時動作を開始する。またこのとき、図4(d)に示すように、クロックモジュール32が出力端子32bからハイインピーダンスの割り込み出力(第1の割り込み出力)を行うため、図4(e)に示すように、MOSトランジスタFET1がオン状態となって、電子部品15への給電が開始される。
【0034】
そして、時刻t1以降、ユーザが歩行動作を行っている間は、図4(a)に示すように、携帯機1の振動に伴って振動センサ31からローパルスが断続的に出力される。これにより、図4(b),(c)に示すように、クロックモジュール32は、入力端子32aに所定時間以上のローパルスが入力される都度(例えば時刻t3,t4)、それまでに計時された時間をリセットする。
【0035】
その後、時刻t4で、乗車したユーザが携帯機1を車室内の適宜の場所に静置したとすると、時刻t4以降、携帯機1が振動しなくなって、図4(a)に示すように、振動センサ31からローパルスが出力されなくなる。これにより、図4(b)に示すように、クロックモジュール32の入力端子32aに入力される電圧がハイレベルに維持されるため、図4(c)に示すように、時刻t4からの経過時間がクロックモジュール32により計時されることとなる。
【0036】
一方、時刻t4から規定時間Tが経過するよりも前の時刻t5でユーザが携帯機1を所持した状態で降車したとする。このとき、図4(e)に示すように、MOSトランジスタFET1はオン状態に維持されているため、電子部品15への給電が継続される。したがって、ユーザが乗車してから降車するまでの期間、電子部品15の電源を的確に確保することができるため、電子キーシステムとしての動作を確実に実行することができる。
【0037】
そして、時刻t5以降のユーザが歩行動作を行っている期間は、図4(a)に示すように、携帯機1の振動に伴って振動センサ31からローパルスが断続的に出力される。このため、図4(c)に示すように、クロックモジュール32は、入力端子32aに所定時間以上のローパルスが入力される都度(例えば時刻t6,t7,t8)、それまでに計時された時間をリセットする。そして、時刻t8でユーザが携帯機1を静置したとすると、その時点から携帯機1が振動しなくなるため、図4(a)に示すように、時刻t8以降、振動センサ31からローパルスが出力されなくなる。これにより、図4(b)に示すように、クロックモジュール32の入力端子32aにはハイレベルの電圧が入力されたままの状態となる。したがって、図4(c)に示すように、時刻t8から規定時間Tが経過した時刻t9で、すなわち携帯機1の最後の振動から規定時間Tが経過した時点で、図4(d)に示すように、クロックモジュール32が出力端子32bからローレベルの電圧の割り込み出力(第2の割り込み出力)を行う。これにより、図4(e)に示すように、時刻t9でMOSトランジスタFET1がオフ状態となって、電子部品15への給電が遮断される。よって、それ以降は電力消費を削減することができる。
【0038】
このような構成によれば、携帯機1の消費電力の低減を図りながらも、電源回路30にマイクロコンピュータが不要となるため、その分だけ汎用性を高めることができる。
以上説明したように、本実施形態にかかる電源回路によれば、以下のような効果が得られるようになる。
【0039】
(1)携帯機1の振動に伴ってローレベルの電圧及びハイレベルの電圧を繰り返し出力する振動センサ31を設けることとした。また、振動センサ31から出力されるローパルスが入力端子32aに所定時間以上入力されることに基づいてハイインピーダンスの割り込み出力を行うとともに、計時動作を開始するクロックモジュール32を設けることとした。さらに、クロックモジュール32では、計時動作中に入力端子32aに所定時間以上のローパルスが入力される都度、それまでに計時された時間をリセットすることとした。そして、クロックモジュール32では、計時動作を通じて計時された時間が規定時間Tに達することをもってローレベルの電圧の割り込み出力を行うこととした。さらに、クロックモジュール32の出力端子32bからの割り込み出力に基づいて電子部品15への給電状態を切り替えるMOSトランジスタFET1を設けることとした。これにより、マイクロコンピュータの不要な構成でありながらも、消費電力を低減することができるため、汎用性を高めることができるようになる。
【0040】
(2)振動センサ31として、機械式接点構造からなるセンサを用いることとした。これにより、振動センサの使用電力を低減することができるため、携帯機1の消費電力を低減することができるようになる。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、本発明にかかる電子機器の電源回路を車両の電子キーシステムの携帯機に適用した第2の実施形態について説明する。
【0042】
先の図3に例示した第1の実施形態の電源回路30のように、振動センサ31として機械式接点構造からなる振動センサを用いた場合、携帯機1が静置された際に、その姿勢によっては振動センサ31の可動部31aが固定電極31bに接触したままの状態となって、すなわちオンされたままの状態となって、無駄な消費電力が発生するおそれがある。また、クロックモジュール32に対して常時給電する構造となっているが、計時動作を行う期間だけクロックモジュール32に給電を行えば十分であり、それ以外の期間にクロックモジュール32に供給している電力は無駄なものとなっている。本実施形態では、こうした振動センサ31及びクロックモジュール32に発生する無駄な電力を削減することで、消費電力の低減を図るようにしている。
【0043】
なお、この第2の実施形態の携帯機もその基本構造は先の図1及び図2に示した構造に準ずるものであり、ここでは先の図3に対応する図として、電源回路30の構成を図5に示す。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なおここでは、バッテリ12の電源電圧を「+B」で示している。
【0044】
図5に示すように、この電源回路30では、振動センサ31の固定電極31bにバッテリ12が電気的に接続されている。これにより、振動センサ31がオン状態となったときに、その出力端子31cからハイレベルの電圧が出力される。
【0045】
ところで、振動センサ31は、前述のように、機械式の接点構造からなるものであるため、可動部31aと固定電極31bとが接触及び離間を非常に短い周期で繰り返す、いわゆるチャタリングが発生すると、出力端子31cから出力される電圧が非常に短い周期で変動する。この場合、クロックモジュール32の入力端子32aに入力フィルタ時間を満たすだけの電圧を印加することができないおそれがあり、クロックモジュール32の計時動作に支障をきたすおそれがある。そこで、本実施形態では、振動センサ31の出力端子31cとクロックモジュール32の入力端子32aとの間にローパスフィルタ34を設けることとしている。これにより、振動センサ31の出力端子31cから出力される電圧がローパスフィルタ34を介して平滑化されてクロックモジュール32の入力端子32aに入力されるため、入力フィルタ時間を満たすだけの電圧をクロックモジュール32の入力端子32aに印加することができる。したがって、仮に振動センサ31にチャタリングが発生したとしても、クロックモジュール32の計時動作を適切に実行することができる。
【0046】
一方、本実施形態のクロックモジュール32は先の第1の実施形態と同様に動作する。
また、この電源回路30には、電子部品15及びクロックモジュール32の共通の給電経路中に設けられて両者への給電を断続させる第1のスイッチング素子としてのPチャンネルMOSトランジスタFET3が設けられている。また、電源回路30には、MOSトランジスタFET3のゲート端子に接続されて、オン/オフ駆動によりMOSトランジスタFET3をオン/オフさせる第2のスイッチング素子としてのNチャンネルMOSトランジスタFET2が設けられている。このMOSトランジスタFET2のゲート端子には、ダイオードD1、及びフィルタ手段としてのハイパスフィルタ33を介して振動センサ31の出力端子31cが電気的に接続されている。これにより、振動センサ31の出力端子31cからハイレベルの電圧が出力されることにより、MOSトランジスタFET2がオンされるようになっている。また、例えば振動センサ31がオン状態に維持されて、その出力端子31cからハイレベルの電圧が連続的に出力されるようになった場合、振動センサ31の出力端子31cから出力される電圧はMOSトランジスタFET2に印加されず、振動センサ31の出力がローレベルからハイレベルになった場合、振動センサ31の出力が一定時間だけMOSトランジスタFET2のゲート端子に印加されるようになっている。一方、MOSトランジスタFET2のゲート端子には、クロックモジュール32の出力端子32bが電気的に接続されるとともに、抵抗R3及びMOSトランジスタFET3を介してバッテリ12も接続されている。なお本実施形態では、MOSトランジスタFET2及びFET3が給電状態切替手段となっている。
【0047】
次に図6を参照して、本実施形態にかかる電源回路30の動作例(作用)を説明する。
例えばユーザが車両2を運転しようとして、静置されていた携帯機1を手に取って歩き始めたとすると、ユーザが携帯機1を手に取った時刻t10で携帯機1が振動し始める。このため、図6(a)に示すように、時刻t10で振動センサ31からハイレベルの電圧が出力される。よって、図6(e)に示すように、MOSトランジスタFET2がオン状態となるため、図6(f)に示すように、MOSトランジスタFET3もオン状態となる。これにより、電子部品15及びクロックモジュール32への給電が開始される。なおこのとき、図6(d)に示すように、クロックモジュール32は出力端子32bからハイインピーダンスの割り込み出力(第1の割り込み出力)を行う。また、先の図5に示すように、MOSトランジスタFET3が一旦オン状態となると、バッテリ12の電圧が抵抗R3を介してMOSトランジスタFET2のゲート端子に印加されるため、MOSトランジスタFET2がオン状態に保持される。よって、クロックモジュール32及び電子部品15への給電が継続される。
【0048】
そして、時刻t10以降、ユーザが歩行動作を行っている間は、図4(a)に示すように、携帯機1の振動に伴って振動センサ31からハイレベルのパルス(ハイパルス)が断続的に出力される。これにより、図4(b)に示すように、クロックモジュール32の入力端子32aには、振動センサ31からハイレベルの電圧が出力されている期間、ハイレベルの電圧が入力されるのに対し、振動センサ31からハイレベルの電圧が出力されていない期間、ローパスフィルタ34を介してローレベルの電圧が印加される。したがって、図4(c)に示すように、クロックモジュール32は、所定時間以上のローパルスが入力端子32aに最初に印加される時刻t11で計時動作を開始する。これにより、携帯機1が振動し始めた時に計時動作を適切に開始することができる。
【0049】
一方、時刻t11以降、時刻t13で乗車したユーザが、時刻t15で携帯機1を所持した状態で降車した後、時刻t17で携帯機1を静置したとすると、この期間、本実施形態の電源回路30は上記第1の実施形態と同様に動作する。すなわち、図6(b)に示すように、クロックモジュール32の入力端子32aに所定時間以上のローパルスが入力される都度(例えば時刻t12,t14,t16,t17)、図6(c)に示すように、クロックモジュール32は、それまでに計時された時間をリセットする。また、図6(e)に示すように、MOSトランジスタFET2及びFET3はオン状態にそれぞれ保持されるため、クロックモジュール32及び電子部品15への給電が継続される。
【0050】
そして、時刻t17で携帯機1が静置されたときに、振動センサ31がオン状態に保持されたとすると、図6(a)に示すように、振動センサ31からハイレベルの電圧が連続的に出力される。このとき、本実施形態では、前述のように、振動センサ31から出力される電圧が一定時間だけMOSトランジスタFET2のゲート端子に印加されるため、時刻t17から一定時間が経過して以降は、振動センサ31の出力電圧がMOSトランジスタFET2のゲート端子に印加されることはない。すなわち、振動センサ31から連続的に出力されるハイレベルの電圧によってMOSトランジスタFET2がオン状態に保持されることはない。したがって、図6(c)に示すように、時刻t17から規定時間Tが経過した時刻t18の時点で、図6(d)に示すように、クロックモジュール32の出力端子32bからローレベルの電圧の割り込み出力(第2の割り込み出力)が行われると、図6(e)に示すようにMOSトランジスタFET2がオフされる。これにより、図6(f)に示すように、MOSトランジスタFET3がオフされるため、電子部品15への給電のみならず、クロックモジュール32への給電が遮断される。よって、クロックモジュール32の消費電力を更に削減することができる分だけ、携帯機1の消費電力を更に低減することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態にかかる電源回路によれば、先の第1の実施形態による上記(1),(2)の効果に加え、さらに以下の効果が得られるようになる。
(3)電子部品15及びクロックモジュール32の共通の給電経路中にMOSトランジスタFET3を設けた上で、同MOSトランジスタFET3をオン/オフさせることで、電子部品15及びクロックモジュール32への給電及び給電の遮断を行うこととした。また、振動センサ31及びクロックモジュール32の出力に基づいてオン/オフされるMOSトランジスタFET2を設けた上で、同MOSトランジスタFET2のオン/オフ駆動を通じてMOSトランジスタFET3をオン/オフさせることとした。これにより、電子部品15への給電のみならず、クロックモジュール32への給電も遮断することができるため、消費電力を更に低減することができるようになる。また、携帯機1が振動し始めたときに電子部品15の駆動及びクロックモジュール32の計時動作を開始することができるため、それらを適切に動作させることもできる。
【0052】
(4)振動センサ31とMOSトランジスタFET2との間には、振動センサ31から出力されるハイレベルの電圧を一定時間だけMOSトランジスタFET2のゲート端子に印加させるためのハイパスフィルタ33を設けることとした。これにより、静置時の振動センサの消費電流を略「0」にすることができる上、仮に振動センサ31からハイレベルの電圧が連続的に出力されるようになった場合であっても、電子部品15及びクロックモジュール32への給電が継続されることはない。このため、振動センサ31として機械式接点構造の振動センサを用いた場合であれ、消費電力の増加を回避することができるようになる。
【0053】
(5)振動センサ31とクロックモジュール32との間にローパスフィルタ34を設けることとした。これにより、振動センサ31にチャタリングが発生したとしても、クロックモジュール32の計時動作を適切に実行することができるようになる。
【0054】
<第3の実施形態>
次に、本発明にかかる電子機器の電源回路を車両の電子キーシステムの携帯機に適用した第3の実施形態について説明する。
【0055】
先の図3に例示した電源回路30のクロックモジュール32では、出力回路としてオープンドレインを採用することが想定される。この場合、出力端子32bからローレベルの電圧を割り込み出力している時間の全体の時間に占める割合を短くすることが、抵抗R2からクロックモジュール32へ流れ込む消費電流を低減する上で有効となる。ここで、電子キーシステムに用いられる携帯機1は通常、未使用時間の方が長い。そこで、本実施形態では、携帯機1の使用時にクロックモジュール32の出力端子32bからローレベルの電圧の割り込み出力を行うことにより、電子部品15及びクロックモジュール32への給電を継続するようにしている。
【0056】
なお、この第3の実施形態の携帯機もその基本構造は先の図1及び図2に示した構造に準ずるものであり、ここでは先の図3に対応する図として、電源回路30の構成を図7に示す。以下、第1の実施形態の電源回路30との相違点を中心に説明する。
【0057】
図7に示すように、この電源回路30では、振動センサ31の固定電極31bとグランドGとの間にハイパスフィルタ35が設けられている。ここで、ハイパスフィルタ35は振動センサ31がオン状態を継続するときは導通せず、オフ状態からオン状態に切り替わった後の一定時間のみ導通するようなものである。また、電源回路30には、電子部品15及びクロックモジュール32の共通の給電経路中に設けられて両者への給電を断続させるPチャンネルMOSトランジスタFET4が設けられている。そして、このMOSトランジスタFET4のゲート端子には、ダイオードD2を介して振動センサ31の出力端子31cが電気的に接続されている。これにより、振動センサ31の出力端子31cからローレベルの電圧が出力されると、MOSトランジスタFET4がオン状態となって、電子部品15及びクロックモジュール32への給電が行われるようになっている。なお本実施形態では、MOSトランジスタFET4が給電状態切替手段となっている。
【0058】
一方、クロックモジュール32の入力端子32aには、ダイオードD3を介して振動センサ31の出力端子31cが電気的に接続されている。また、クロックモジュール32の入力端子32aには、抵抗R4及びMOSトランジスタFET4を介してバッテリ12も電気的に接続されている。さらに、クロックモジュール32の出力端子32bには、MOSトランジスタFET4のゲート端子が電気的に接続されている。ここで、入力端子32aには、MOSトランジスタFET4がオン状態であるとき、バッテリ12からハイレベルの電圧が入力される。一方、振動センサ31の出力端子31cからローレベルの電圧が出力されると、入力端子32aにはローレベルの電圧が入力される。そして、このクロックモジュール32は、入力端子32aに所定時間以上のローパルスが印加されたとき、出力端子32bの出力状態をローレベル出力状態に設定するとともに、計時動作を開始する。また、計時動作中に所定時間以上のローパルスが印加される都度、それまでに計時された時間をリセットする。そして、クロックモジュール32は、計時動作を通じて計時された時間が規定時間Tに達することをもって、出力端子32bの出力状態をローレベル出力状態からハイインピーダンス状態に切り替える。
【0059】
次に図8を参照して、本実施形態にかかる電源回路30の動作例(作用)を説明する。
例えばユーザが車両2を運転しようとして、静置されていた携帯機1を手に取って歩き始めたとすると、ユーザが携帯機1を手に取った時刻t20で携帯機1が振動し始める。このため、図8(a)に示すように、時刻t20で振動センサ31からローレベルの電圧が出力される。よって、図8(e)に示すように、MOSトランジスタFET4がオン状態となるため、電子部品15及びクロックモジュール32への給電が開始される。なおこのとき、図8(d)に示すように、クロックモジュール32は出力端子32bからローレベルの電圧の割り込み出力(第1の割り込み出力)を行うため、図8(e)に示すように、時刻t20以降、MOSトランジスタFET4がオン状態に保持される。すなわち、クロックモジュール32及び電子部品15への給電が継続される。
【0060】
そして、時刻t20以降、ユーザが歩行動作を行っている間は、図8(a)に示すように、携帯機1の振動に伴って振動センサ31からローパルスが断続的に出力される。これにより、図8(b)に示すように、クロックモジュール32の入力端子32aには、振動センサ31からローレベルの電圧が出力されている期間、ローレベルの電圧が入力されるのに対し、振動センサ31からローレベルの電圧が出力されていない期間、バッテリ12からハイレベルの電圧が印加される。したがって、図8(c)に示すように、クロックモジュール32は、所定時間以上のローパルスが入力端子32aに最初に印加される時刻t21で計時動作を開始する。これにより、携帯機1が振動し始めた時に計時動作を適切に開始することができる。
【0061】
一方、時刻t21以降、時刻t23で乗車したユーザが、時刻t24で携帯機1を所持した状態で降車した後、時刻t27で携帯機1を静置したとすると、この期間、本実施形態の電源回路30は、上記第1の実施形態と同様に動作する。すなわち、図8(a)に示すように、携帯機1の振動に伴って振動センサ31から所定時間以上のローパルスが出力される都度(例えば時刻t22,t23,t25,t26,t27)、図8(c)に示すように、クロックモジュール32は、それまでに計時された時間をリセットする。また、図8(e)に示すように、MOSトランジスタFET4はオン状態に保持されるため、クロックモジュール32及び電子部品15への給電が継続される。
【0062】
一方、図8(a)に示すように、携帯機1が静置された時刻t27以降、例えば振動センサ31からローレベルの電圧が出力されなくなったとすると、図8(b)に示すように、クロックモジュール32の入力端子32aはハイレベルの電圧が入力されたままの状態となる。したがって、図8(c)に示すように、時刻t27から規定時間Tが経過した時刻t28の時点で、図8(d)に示すように、クロックモジュール32が出力端子32bからハイインピーダンスの割り込み出力(第2の割り込み出力)を行う。これにより、図8(e)に示すように、時刻t28の時点でMOSトランジスタFET4がオフ状態となって、電子部品15及びクロックモジュール32への給電が遮断される。
【0063】
このような構成によれば、先の第1の実施形態の電源回路30において課題であった振動センサ31及びクロックモジュール32の無駄な消費電力を削減しつつ、先の第2の実施形態の電源回路30と比較して素子数を削減することが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態では、先の図7に示すように、振動センサ31の固定電極31bとグランドGとの間にハイパスフィルタ35が設けられているため、MOSトランジスタFET4がオン状態であるときに仮に振動センサ31がオン状態に保持されたとしても、バッテリ12の電力消費を低減することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態にかかる電源回路によれば、先の第1及び第2の実施形態による上記(1)〜(4)の効果に加え、さらに以下の効果が得られるようになる。
(6)電子部品15及びクロックモジュール32の共通の給電経路中にMOSトランジスタFET4を設けた上で、同MOSトランジスタFET4をオン/オフさせることで、電子部品15及びクロックモジュール32への給電及び給電の遮断を行うこととした。また、クロックモジュール32の割り込み出力に基づいてMOSトランジスタFET4をオン/オフさせることとした。これにより、先の第2の実施形態の電源回路30と比較して素子数を低減することができるため、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0066】
<他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、振動センサ31のチャタリングの影響を抑制すべく、振動センサ31とクロックモジュール32との間にローパスフィルタ34を設けることとしたが、同様の構成を第1及び第3の実施形態において採用してもよい。
【0067】
・上記第2及び第3の実施形態の電源回路30に設けたハイパスフィルタ33,35は、その効果と同様の効果が得られるものに適宜変更してもよい。また、第2の実施形態の電源回路30に設けたローパスフィルタ34、並びに上記第1及び第3の実施形態の変形例として設けるローパスフィルタについても、その効果と同様の効果が得られるものに適宜変更してもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、振動センサとして、機械式接点構造のものを用いることとしたが、これに代えて、例えば振動に基づき発電することで所定の電圧を出力する振動発電デバイスを用いてもよい。振動発電は、一般に、低インピーダンス負荷では取り出せる電力が低下するが、高インピーダンス負荷で電圧として取り出すことは得意である。上記各実施形態では、クロックモジュール32の入力端子32aにパルスを与えるだけでよいため、振動発電を用いることは合理的な選択となる。また、振動センサとして振動発電デバイスを用いることとすれば、振動センサの消費電力を削減することができるため、携帯機1の消費電力を更に低減することができるようになる。なお、振動センサ31としては、振動発電デバイスの他、携帯機1の振動に基づいて所定の電圧を出力することのできる装置であれば、適宜の装置を採用することができる。
【0069】
・上記各実施形態では、規定時間Tを数時間程度に設定することとしたが、同規定時間Tについては適宜変更可能である。
・クロックモジュール32については、規定時間Tを可変設定できる構成としてもよい。さらに、ユーザの車両2の使用パターンを学習して自動的に規定時間Tを最適な時間に設定する構成としてもよい。上記各実施形態では、車室内での乏しい振動検出能力を考慮して規定時間Tを数時間程度に予め設定することとしたが、ユーザによっては、規定時間Tを短くすることにより更に消費電力を低減したいというニーズも想定されるため、これらの構成を採用することは有効である。また、ユーザが規定時間Tを自由に変更することができるため、設計の自由度が向上するようになる。なおこの場合、時間設定については、携帯機制御装置14とのSPI等の通信を利用して行ってもよい。また、上述したクロックモジュール32の規定時間Tのハード設定を携帯機制御装置14を通じて行うようにしてもよい。
【0070】
・クロックモジュール32の入出力仕様については適宜変更可能である。要は、振動センサ31から出力される検出結果に基づいて第1の割り込み出力を行うとともに、計時動作を通じて計時された時間が規定時間Tに達することをもって第2の割り込み出力を行うものであればよい。また、クロックモジュール32のリセットのタイミングやイニシャライズ処理などについても適宜変更してもよい。
【0071】
・上記各実施形態では、バイアス抵抗やパスコンなどの詳細は簡単のため省略されているが、実際の製品ではこれらを適宜変更してもよい。
・上記各実施形態に記載した電源回路30を一体に集積化してチップとしてもよい。これにより、電源回路30の携帯機1への実装が容易となる。
【0072】
・上記各実施形態では、本発明にかかる電子機器の電源回路を、車両の電子キーシステムの携帯機に搭載することとしたが、例えばスマートフォンやポータブルのゲーム機など、バッテリ駆動の適宜の電子機器に搭載してもよい。
【0073】
<付記>
次に、上記各実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項1〜6及び付記イのいずれか一項に記載の電子機器の電源回路において、前記振動センサは、導電性の可動部と、同可動部と所定の間隙を隔てて配置される固定電極とを有して、前記電子機器の振動に基づき前記可動部が動作して前記固定電極に接触することで前記所定の電圧を出力する機械式接点構造からなるものであることを特徴とする電子機器の電源回路。同構成によるように、振動センサとして機械接点式の振動センサを用いることとすれば、振動センサに電源やグランドを電気的に接続するだけで、振動センサから所定の電圧を出力することができる。このため、振動センサの使用電力を低減することができるため、電子機器の消費電力を低減することができるようになる。
【0074】
(ロ)付記イに記載の電子機器の電源回路において、前記振動センサ及び前記クロックモジュールは、ローパスフィルタを介して電気的に接続されていることを特徴とする電子機器の電源回路。電子機器の振動に伴って振動センサの可動部が動作したときに、同可動部と固定電極とが接触及び離間を非常に短い周期で繰り返す、いわゆるチャタリングが発生すると、振動センサから出力される電圧が非常に短い周期で変動することとなる。この場合、クロックモジュールに入力フィルタ時間を満たすだけの電圧を入力することができないおそれがあり、クロックモジュールの計時動作に支障をきたすおそれがある。この点、上記構成によれば、振動センサから出力される電圧はローパスフィルタを介して平滑化されてクロックモジュールに入力されるため、入力フィルタ時間を満たすだけの電圧をクロックモジュールに入力することが可能となる。したがって、仮に振動センサにチャタリングが発生したとしても、クロックモジュールの計時動作を適切に実行することができるようになる。
【0075】
(ハ)請求項1〜6、付記イ、及び付記ロのいずれか一項に記載の電子機器の電源回路において、前記振動センサは、前記電子機器の振動に基づいて発電することにより前記所定の電圧を出力する振動発電デバイスからなることを特徴とする電子機器の電源回路。同構成によれば、振動センサの消費電力を削減することができるため、電子機器の消費電力を更に低減することができるようになる。
【符号の説明】
【0076】
A…車外通信エリア、B…車内通信エリア、D1〜D3…ダイオード、R1〜R4…抵抗、FET1…NチャンネルMOSトランジスタ、FET2…NチャンネルMOSトランジスタ、FET3…PチャンネルMOSトランジスタ、FET4…PチャンネルMOSトランジスタ、1…携帯機、2…車両、10…受信回路、11…送信回路、12…バッテリ、13…電圧センサ、14…携帯機制御装置、15…電子部品、20…車外送信装置、21…車内送信装置、22…受信装置、23…車載制御装置、30…電源回路、31…振動センサ、31a…可動部、31b…固定電極、31c…出力端子、32…クロックモジュール、32a…入力端子、32b…出力端子、33,35…ハイパスフィルタ、34…ローパスフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の振動を検出する振動センサと、
同振動センサから出力される検出結果に基づいて第1の割り込み出力を行うとともに、計時動作を開始して且つ、同計時動作中に前記検出結果が入力される都度、それまでに計時された時間をリセットしつつ、前記計時動作を通じて計時された時間が規定時間に達することをもって第2の割り込み出力を行うクロックモジュールと、
前記電子機器に搭載された負荷の給電経路中に設けられて、前記クロックモジュールが前記第1の割り込み出力を行っているとき、前記負荷への給電を行うとともに、前記クロックモジュールが前記第2の割り込み出力を行っているとき、前記負荷への給電を遮断する給電状態切替手段と
を備えることを特徴とする電子機器の電源回路。
【請求項2】
前記給電状態切替手段は、前記負荷及び前記クロックモジュールの共通の給電経路中に設けられて、前記負荷への給電を行う際に前記クロックモジュールへの給電を行うとともに、前記負荷への給電を遮断する際に前記クロックモジュールへの給電を遮断して且つ、前記振動センサからの前記検出結果に基づいて前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を開始するものである
請求項1に記載の電子機器の電源回路。
【請求項3】
前記給電状態切替手段は、前記負荷及び前記クロックモジュールの共通の給電経路中に設けられて、前記振動センサからの前記検出結果に基づいてオン状態となって前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を行うとともに、前記クロックモジュールが前記第1の割り込み出力を行っている期間はオン状態を維持して前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を継続して且つ、前記クロックモジュールが前記第2の割り込み出力を行っている期間はオフ状態を維持して前記負荷及び前記クロックモジュールの給電経路を遮断するスイッチング素子からなる
請求項2に記載の電子機器の電源回路。
【請求項4】
前記給電状態切替手段は、前記負荷及び前記クロックモジュールの共通の給電経路中に設けられて、オン状態であるときに前記負荷及び前記クロックモジュールへの給電を行うとともに、オフ状態であるときに前記負荷及び前記クロックモジュールの給電経路を遮断する第1のスイッチング素子と、オン/オフ駆動により前記第1のスイッチング素子をオン/オフさせる第2のスイッチング素子からなるものであって、
同第2のスイッチング素子は、前記振動センサからの前記検出結果に基づいてオン状態となって前記第1のスイッチング素子をオンさせるとともに、前記クロックモジュールが前記第1の割り込み出力を行っている期間はオン状態を維持して前記第1のスイッチング素子をオン状態に保持して且つ、前記クロックモジュールが前記第2の割り込み出力を行っている期間はオフ状態を維持して前記第1のスイッチング素子をオフ状態に保持するものである
請求項2に記載の電子機器の電源回路。
【請求項5】
前記振動センサと前記給電状態切替手段との間には、前記振動センサから出力される電圧を一定時間だけ前記給電状態切替手段に入力させるフィルタ手段が設けられてなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子機器の電源回路。
【請求項6】
前記クロックモジュールは、前記規定時間を可変設定できる構成からなる
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子機器の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−37632(P2013−37632A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175244(P2011−175244)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】