説明

電子機器及びファン制御方法

【課題】ファンの回転に起因する騒音を抑制する処理の負荷を軽減させることができる電子機器及びファン制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる電子機器1は、機能を拡張する拡張機器を搭載可能な電子機器であって、回転数情報記憶部11と、ファン制御部12と、ファン13とを備える。回転数情報記憶部11は、拡張機器の搭載構成に応じたファン13の回転数が予め設定された回転数情報を格納する。ファン制御部12は、拡張機器の構成と回転数情報とに基づいて、ファン13の回転を制御する。ファン13は、電子機器1に搭載された拡張機器を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器及びファン制御方法に関し、特に拡張機器を搭載可能な電子機器及びファン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU(Central Processing Unit)やメモリ等のサーバ内発熱部品は、年々消費電力が増加してきている。消費電力の増加に伴い、発熱部品の発熱量も増加しており、この発熱を冷却するためのファンの稼動率が高まっている。そのため、ファンの回転数が上昇し、ファンの回転により発生する騒音が増大している。
【0003】
また、PC(Personal Computer)の中でもサーバは拡張性に優れており、その分、多数の発熱部品を搭載することになる。そのため、サーバの冷却機能は、サーバの拡張性を最大限に発揮した構成とした場合においても、十分な冷却が可能となるファン制御となっている。ところが、あまり拡張されていないサーバに対しては冷却が過剰となってしまう。このような過剰冷却もファンの回転による騒音の原因となっていた。
【0004】
一方、安価で小型のサーバが普及しており、サーバルームだけでなくオフィス内にサーバが設置されることが多くなってきている。しかし、オフィス内にサーバを設置すると、上記のようにサーバから騒音が発生し、サーバ利用者から騒音に対する苦情が多発していた。
【0005】
このような問題に対応するための技術が、特許文献1に開示されている。その技術は、電子回路パッケージを搭載するシェルフの段数の増減や、電子回路パッケージの消費電力に応じて、当該シェルフを冷却するファンの回転数を制御するものである。この技術により、ファンの回転数を不必要に上げることがなくなるので、過剰冷却やそれに伴う騒音が防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−272694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、シェルフに搭載された電子回路パッケージの消費電力を算出し、当該算出結果に応じてファンの回転数を制御している。このため、電子機器内での処理が重くなるという問題が生じていた。また、事前にファンによる冷却効果を評価するため、消費電力の算出に用いる計算式を考える必要もある。さらに、消費電力に関係するパラメータの種類が増えると、計算式が複雑になり、ファン制御の処理に時間がかかってしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ファンの回転に起因する騒音を抑制する処理の負荷を軽減させることができる電子機器及びファン制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる電子機器は、機能を拡張する拡張機器を搭載可能な電子機器であって、搭載された前記拡張機器を冷却するファンと、前記拡張機器の搭載構成に応じた前記ファンの回転数が予め設定された回転数情報を格納する回転数情報記憶手段と、前記拡張機器の構成と前記回転数情報とに基づいて、前記ファンの回転を制御するファン制御手段と、を備えるものである。
【0010】
本発明にかかるファン制御方法は、機能を拡張する拡張機器を搭載可能な電子機器をファンの送風により冷却するファン制御方法であって、前記拡張機器の搭載構成に応じた前記ファンの回転数が予め設定された回転数情報を参照して、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の構成に応じた回転数を決定するステップと、決定された前記回転数に基づいて、前記ファンの回転を制御するステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ファンの回転に起因する騒音を抑制する処理の負荷を軽減させることができる電子機器及びファン制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかる電子機器のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるファン制御方法のフローチャートである。
【図3】実施の形態2にかかるサーバの構成例を示す図である。
【図4】実施の形態2にかかるファン制御方法のフローチャートである。
【図5】実施の形態2にかかる回転数情報のテーブルを示す図である。
【図6】実施の形態2にかかる回転数情報のテーブルを示す図である。
【図7】実施の形態2にかかる回転数情報のテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に示した電子機器1は、回転数情報記憶部11、ファン制御部12、ファン13を備えている。このとき、電子機器1は、例えばサーバ等のPCであり、拡張機器を搭載可能な構成となっている。また、拡張機器とは、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、拡張カード等の電子機器1の機能を拡張するためのものである。
【0014】
回転数情報記憶部11は、ファン13の回転数を決定するための回転数情報を格納するものであり、例えばメモリ等である。回転数情報とは、電子機器1に搭載された拡張機器の構成に対応して、当該構成をとった電子機器1及び拡張機器を冷却するために必要なファンの回転数が予め定められている情報である。
【0015】
ファン制御部12は、電子機器1に搭載された拡張機器の構成と、回転数情報とに基づいて、ファン13の回転を制御する。
【0016】
続いて、図1に示す電子機器1の動作例について、図2のフローチャートを用いて説明する。まず、ファン制御部12は、搭載された拡張機器の構成を認識し、回転数情報記憶部11に格納された回転数情報を参照して、当該拡張機器の構成に応じたファンの回転数を決定する(ステップS101)。このとき、拡張機器の構成の認識は、手動で構成を確認し、ファン制御部12に入力することで認識させてもよいし、電子機器1が搭載された拡張機器の構成を検出し、その搭載構成をファン制御部12に送信することで認識させてもよい。
【0017】
そして、ファン制御部12は、決定した回転数となるように、ファン13の回転を制御する(ステップS102)。これにより、搭載された拡張機器の構成に応じた冷却を行うようにファン13を制御することができる。その結果、過剰な冷却をすることなく、搭載された拡張機器の冷却に必要な回転数でファン13が駆動することになるので、無駄な騒音を抑えることができる。
【0018】
以上のように、本実施の形態においては、ファン13の制御を行う際にファン制御部12が回転数情報を参照することによってファン13の回転数を決定し、回転させる。その結果、拡張機器の数や発熱温度等を用いてファン13の回転数を算出する負担のかかる処理を電子機器1の内部において行うことなく、拡張機器の搭載構成に適した冷却をすることができる。
【0019】
実施の形態2
本発明にかかる実施の形態2について説明する。図3は電子機器としてサーバを用いた場合の構成例を示している。図3のサーバ2は、ファン13、マザーボード21、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)22、カードスロット23、ファンコントローラIC(Integrated Circuit)24、筐体25を備えている。CMOS22、カードスロット23、ファンコントローラIC24は、マザーボード21上に配置されている。また、当該マザーボード21及びファン13は、筐体25内に収容されている。なお、拡張機器が搭載可能であれば電子機器はサーバに限られたものではなく、端末PC等であっても本発明は適用可能である。
【0020】
CMOS22には、サーバ2の起動時に動作し、ファン13等を制御する指令を出すBIOS(Basic Input Output System)及びBIOSの各種設定プログラムが格納されている(図示省略)。つまり、CMOS22は、実施の形態1において説明した回転数情報を有しており、回転数情報記憶部11に対応する。
【0021】
カードスロット23は、メモリ、HDD、拡張カード等の拡張機器を電子機器に搭載するための差込口である。カードスロット23とCMOS22とは接続されており、CMOS22がカードスロット23の搭載構成を検出することができるようになっている。
【0022】
ファンコントローラIC24は、BIOSの指令に応じてファン13の回転を制御する。上記のBIOS及びファンコントローラIC24が、図1に示したファン制御部12に対応している。
【0023】
続いて、図3に示したサーバ2の動作例について、図4に示したフローチャートを用いて説明する。まず、サーバ2が起動すると、BIOSがカードスロット23に拡張機器が挿入されているか否か、及び、挿入されている拡張機器の構成を検出する(ステップS201)。
【0024】
次に、BIOSはCMOS22に格納されている回転数情報を参照し、検出した搭載構成に応じたファンの回転数を決定する(ステップS202)。ここで、回転数情報の一例を図5に示す。図5に示した回転数情報は、拡張機器の構成として、サーバ2に搭載された拡張機器の数を用いており、拡張機器の数とファンの回転数とが対応付けられたテーブル情報である。図5に示したテーブル情報では、サーバ2に搭載された拡張機器の数に応じてファンの回転数が設定されている。例えば、拡張機器が1つ搭載されている場合には、当該拡張機器の冷却に必要なファン13の回転数は1000rpm(回毎分)となる。
【0025】
そして、BIOSは、ファンの回転数が決定した回転数となるように、ファンコントローラIC24に制御指令を出力する(ステップS203)。ファンコントローラIC24は、その指令に基づいてファン13の回転を制御する(ステップS204)。このように、ファン13が回転することによって、筐体25内の空気が外に送出される。これにより、拡張機器で発生した熱を逃がすことができる。なお、ファンコントローラIC24に指示を与えるのはBIOSに限られたものではなく、サーバマネージメントコントローラ等であってもよい。
【0026】
このような構成により、拡張性の高い電子機器であるサーバにおいても本発明を適用することができる。そのため、拡張された構成に応じたファン13の回転制御が可能となり、サーバ2の冷却を満足しつつ、ファン13の回転による騒音を削減することができる。
【0027】
また、回転数情報の構成を多次元化してもよい。電子機器が、メモリ、HDD、拡張カードをそれぞれ4つまで搭載可能な構成である場合を例にして説明する。このとき、回転数情報は図6に示したようなファン13の回転数を決定するためのテーブル情報であるとする。図6のテーブル情報では、拡張機器の種類毎の数に応じてファン13の回転数が設定されている。例えば、電子機器に拡張カードが2枚、メモリが2枚、HDDが4台搭載されている場合には、これらの拡張機器の冷却に必要なファン13の回転数は2000rpmとなる。このような多次元のテーブル情報とすることにより、拡張機器の枚数、台数のみでなく、その種類にも対応したファン13の制御ができ、詳細にファンの回転を制御することが可能となる。
【0028】
さらに、1つの搭載構成に対して1つの回転数ではなく、ファンの回転数に幅を持たせてもよい。例えば、図6に示した例と同様の拡張性を有する電子機器において、図7に示したような回転数情報としてもよい。図7に示したテーブル情報では、搭載構成に対応したファン13の回転数の最大ファン回転数(上限)と最小ファン回転数(下限)が設定されている。例えば、電子機器に拡張カードが1枚、メモリが3枚、HDDが1台搭載されている場合は、ファン設定は3となる。つまり、ファン制御部12は、2000rpm〜2500rpmの間の回転数でファン13を回転させるように制御する。このような回転数情報とすることにより、同様の搭載構成であっても、電子機器及び拡張機器の稼動率等によってファン13の回転数をさらに詳細に調整可能となるので、稼動率が低い場合には更なる騒音削減を図ることができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、回転数の値としては、図5〜図7に示したような回転速度に限られたものではなく、当該ファンの性能における最大回転速度に対する割合(例えば、パーセンテージ)やファンの風量であってもよい。また、図5〜図7に示したテーブルの数値は一例であり、これに限られたものではなく、回転数情報は電子機器及び拡張機器の仕様等に応じて任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電子機器
2 サーバ
11 回転数情報記憶部
12 ファン制御部
13 ファン
21 マザーボード
22 CMOS
23 カードスロット
24 ファンコントローラIC
25 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能を拡張する拡張機器を搭載可能な電子機器であって、
搭載された前記拡張機器を冷却するファンと、
前記拡張機器の搭載構成に応じた前記ファンの回転数が予め設定された回転数情報を格納する回転数情報記憶手段と、
前記拡張機器の構成と前記回転数情報とに基づいて、前記ファンの回転を制御するファン制御手段と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記回転数情報は、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の数と前記ファンの回転数とが対応付けられた情報である請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子機器は、異なる種類の前記拡張機器を搭載可能であり、
前記回転数情報は、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の種類毎の数と前記ファンの回転数とが対応付けられた情報である請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記ファンの回転数は、前記ファンの回転数の上限及び下限の回転数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子機器は、搭載された前記拡張機器の構成を検出する構成検出手段をさらに備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
機能を拡張する拡張機器を搭載可能な電子機器をファンの送風により冷却するファン制御方法であって、
前記拡張機器の搭載構成に応じた前記ファンの回転数が予め設定された回転数情報を参照して、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の構成に応じた回転数を決定するステップと、
決定された前記回転数に基づいて、前記ファンの回転を制御するステップと、
を備えるファン制御方法。
【請求項7】
前記回転数情報は、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の数と前記ファンの回転数とが対応付けられた情報である請求項6に記載のファン制御方法。
【請求項8】
前記電子機器は、異なる種類の前記拡張機器を搭載可能であり、
前記回転数情報は、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の種類毎の数と前記ファンの回転数とが対応付けられた情報である請求項6または7に記載のファン制御方法。
【請求項9】
前記ファンの回転数は、前記ファンの回転数の上限及び下限の回転数である請求項6〜8のいずれか一項に記載のファン制御方法。
【請求項10】
前記ファン制御方法は、前記電子機器に搭載された前記拡張機器の構成を検出するステップをさらに備える請求項6〜9のいずれか一項に記載のファン制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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