説明

電子機器及び内部時計のクロック周波数補正方法

【課題】電子機器のクロック周波数の誤差の修正する場合、外部に正しい時刻を提供する装置を必要とせず、修正に手間が掛からないようにする。
【解決手段】内部に備えた時計により時刻管理を行う電子機器1において、第1の内部時計3により、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測し本電子機器1の時刻管理に使用し、複数の第2の内部時計4により、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間をそれぞれ計測し、第1の温度センサ5により、第1の内部時計3の温度を測定し、複数の第2の温度センサ6により、複数の第2の内部時計4の温度をそれぞれ測定し、第1の温度センサ5が測定した温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、複数の第2の温度センサ6が測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応する第2の内部時計4の現在のクロック周波数を、第1の内部時計3に再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び内部時計のクロック周波数補正方法に関し、内部に備えた時計により時刻管理を行う電子機器、及び内部時計のクロック周波数補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置、画像処理装置、複写装置等の内部時計(Real Time Clock(RTC))を内蔵している電子機器は、この内部時計に基づいて、時刻表示や、指定時刻での動作の指定、ログ管理等の時刻管理等を行っている。
【0003】
この内部時計は、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計時している。しかし、周囲の温度によってこの設定されたクロック周波数が変動する。図2は、周囲の温度(°C)に対する内部時計のクロック周波数の変動(PPM(pulse/minutes))状態の一例を示している。周囲の温度が25°Cのときにはクロック周波数には変動がない。20°Cから25°C及び25°Cから30°Cの間ではクロック周波数の変動は小さい。これ以外の温度ではクロック周波数の変動は大きい。したがって、内部時計は、基準温度範囲(この場合は、20°Cから30°Cの間)以外の温度環境で長時間運用していると計時する時刻に誤差が生ずるという特性がある。
【0004】
また、内部時計を備えた電子機器は、この電子機器を冷却する冷却装置と、電子機器全体を制御するマネージメントパッケージ(以後、パッケージをPKGと記載する。)とを備えている。内部時計はマネージメントPKGに搭載されている。この電子機器は、稼働状態のときには冷却装置もマネージメントPKGも共に動作している。一方、この電子機器は、待機状態のときには冷却装置は停止している。しかし、この状態のときにもマネージメントPKGは電子機器全体を制御するために稼働している。このため、マネージメントPKGは、待機状態のときには冷却装置が停止しているので高温になる。このとき、マネージメントPKGに搭載されている内部時計も高温になり、内部時計のクロック周波数に誤差が生じ、表示時刻や時刻管理に使用する時刻に誤差が生じるという問題がある。このため、クロック周波数の誤差を修正する必要がある。そして、内部時計のクロック周波数の誤差の修正は、オペレータが、適時又は電子機器の運用開始時に電子機器の内部時計に適切なクロック周波数を設定することにより行っている。このため、内部時計のクロック周波数の誤差を修正するのに手間が掛かるという問題がある。
【0005】
これに対し、時刻の誤差を検出した場合、外部から正しい時刻を取得して設定するようにした電子機器が特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1が開示している電子機器は、熱の影響を受けやすい場所あるいは熱の影響を受けにくい場所等の動作環境がそれぞれ異なる場所にメインRTCとサブRTCとの2つのRTCを備え、2つのRTCの示す時刻をCPUが読み出して比較し、2つ値の差が所定の基準値より大きい場合に誤差があると判定する。誤差があると判定したときに、外部から(例えば、ネットワークに接続した時刻を提供するサーバやウエブサイトから)正しい時刻を取得し、メインRTCとサブRTCにセットする。
【0007】
しかし、特許文献1に開示された電子機器は、時刻の誤差を検出した場合に、正しい時刻を設定するために外部から正しい時刻を取得しているので、外部に正しい時刻を提供する装置が必要になるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に開示された電子機器は、時刻の誤差を検出するときに2つのRTCの時刻の差を使用しているため、2つのRTCの温度環境が共に悪化した場合には、時刻に誤差がなくなるので、例え、メインRTCが異常な時刻を示していてもこの異常状態を検出できない。このため、正しい時刻を設定することができないという問題がある。
【0009】
更に、特許文献1に開示された電子機器は、時刻の誤差を検出するときに2つのRTCの時刻の差を使用しているため、サブRTCが故障した場合には、時刻の誤差が正常に検出できないので、例え、メインRTCが異常な時刻を示していてもこの異常状態を検出できない。このため、正しい時刻を設定することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−164524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した電子機器は、オペレータが電子機器の内部時計に適切なクロック周波数を設定することにより、内部時計のクロック周波数の誤差を修正している。このため、内部時計のクロック周波数の誤差を修正するために手間が掛かるという問題がある。
【0012】
また、上述した電子機器は、時刻の誤差を検出した場合に、RTCに正しい時刻を設定するために外部から正しい時刻を取得しているので、外部に正しい時刻を提供する装置が必要になるという問題がある。
【0013】
また、上述した電子機器は、時刻の誤差を検出するときに2つのRTCの時刻の差を使用しているため、2つのRTCの温度環境が共に悪化した場合には、時刻に誤差がなくなる。このため、例え、メインRTCが異常な時刻を示していてもこの異常状態を検出できないので、メインRTCに正しい時刻を設定することができないという問題がある。
【0014】
更に、上述した電子機器は、時刻の誤差を検出するときに2つのRTCの時刻の差を使用しているため、サブRTCが故障した場合には、時刻の誤差が正常に検出できない。このため、例え、メインRTCが異常な時刻を示していてもこの異常状態を検出できないので、メインRTCに正しい時刻を設定することができないという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、上記課題を解決する電子機器及び内部時計のクロック周波数補正方法提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の電子機器は、内部に備えた時計により時刻管理を行う電子機器において、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測し本電子機器の時刻管理に使用する第1の内部時計と、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間をそれぞれ計測する複数の第2の内部時計と、前記第1の内部時計の温度を測定する第1の温度センサと、複数の前記第2の内部時計の温度をそれぞれ測定する複数の第2の温度センサと、を有し、前記第1の温度センサが測定した温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、複数の前記第2の温度センサが測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応する前記第2の内部時計の現在のクロック周波数を、前記第1の内部時計に再設定するようにしている。
【0017】
本発明の内部時計のクロック周波数補正方法は、内部に備えた時計により時刻管理を行う電子機器に用いる内部時計のクロック周波数補正方法において、前記電子機器の時刻管理に使用するための第1の内部時計により、この時計に予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測し、複数の第2の内部時計により、これらの時計に予め設定されたクロック周波数に基づいて時間をそれぞれ計測し、第1の温度センサにより、前記第1の内部時計の温度を測定し、複数の第2の温度センサにより、複数の前記第2の内部時計の温度をそれぞれ測定し、前記第1の温度センサから温度データを取得し、この温度データが予め定めた基準温度範囲に入っているか否かを調べ、基準温度範囲に入っていない場合、複数の前記第2の温度センサから温度データをそれぞれ取得し、これらの温度データと前記基準温度とを比較し、この基準温度に最も近い温度データを示す前記第2の温度センサに対応する前記第2の内部時計からこの時計の現在の前記クロック周波数を取得し、このクロック周波数を前記第1の内部時計に再設定するようにしている。
【0018】
本発明の第2の電子機器は、本電子機器の時刻管理に使用するための内部時計を備えた本電子機器全体を制御するマネージメントPKGを有し、本電子機器と同一の構成を備えた複数の他の電子機器と接続された電子機器において、前記マネージメントPKGは、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測する前記内部時計と、この内部時計の温度を測定する温度センサとを有し、前記温度センサが測定した温度データが予め定めた基準温度範囲に入っているか否かを調べ、前記温度データが前記基準温度範囲に入っていない場合、本電子機器と接続された複数の前記他の電子機器から、これらの電子機器のマネージメントPKGに備えられたそれぞれの温度センサが測定したそれぞれの温度データを受け、これら複数の他の電子機器のうちから予め定めた基準温度に最も近い温度データを受けた前記他の電子機器を選択し、この選択した前記他の電子機器からこの他の電子機器のマネージメントPKGに備えられた内部時計の現在のクロック周波数を受け、このクロック周波数を本電子機器の前記内部時計に再設定するようにしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マネージメントPKGに備えられた温度センサの温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、このマネージメントPKGとは異なる複数のPKGにそれぞれ備えられた複数の温度センサが測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応するPKGを選択し、この選択したPKG内の内部時計の現在のクロック周波数をこのマネージメントPKGの内部時計に再設定する。
【0020】
このため、本発明によれば、内部時計のクロック周波数の誤差が自動的に修正されるので、クロック周波数の誤差の修正に手間が掛からない。また、本発明に係る、マネージメントPKGとは異なる複数のPKGに備えられた内部時計の現在のクロック周波数を本発明に係るマネージメントPKGの内部時計に再設定するので、外部に正しい時刻を提供する装置が必要にならない。
【0021】
更に、本発明に係る、マネージメントPKGとは異なる複数のPKGにそれぞれ備えられた複数の温度センサが測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応するPKGに備えられた内部時計の現在のクロック周波数を、本発明に係るマネージメントPKGの内部時計に再設定するので、温度環境が悪化していない、又は故障していない、本発明に係る、マネージメントPKGとは異なるPKGの内部時計が有りさえすれば、本発明に係るマネージメントPKGの内部時計に、変動がない、あるいは変動が小さいクロック周波数を再設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【図2】周囲の温度に対する内部時計のクロック周波数の変動状態の一例を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【0025】
本実施の形態に係る電子機器1は、第1の内部時計3(Real Time Clock(RTC))と、複数の第2の内部時計4と、第1の温度センサ5と、複数の第2の温度センサ6と、制御部2とにより構成する。本電子機器1は、第1の内部時計3の計測した時間に基づいて、時刻表示や、指定時刻での動作の指定、ログ管理等の時刻管理等を行っている。
【0026】
第1の内部時計3と複数の第2の内部時計4とには、予め定めたクロック周波数を予め設定する。第1の内部時計3、及び複数の第2の内部時計4は、クロック周波数に基づいて時間を計測する。また、複数の第2の内部時計4は、電子機器1内の第1の内部時計3の設定場所と異なる場所にそれぞれ設定する。
【0027】
これらの内部時計には、「背景技術」欄で説明したように、次のような特性がある。すなわち、この内部時計は、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計時するが、周囲の温度によってこの設定されたクロック周波数が変動する。図2に示すように、周囲の温度が25°Cのときにはクロック周波数には変動がない。20°Cから25°C及び25°Cから30°Cの間ではクロック周波数の変動は小さい。これ以外の温度ではクロック周波数の変動は大きい。このため、この内部時計は、基準温度範囲(この場合は、20°Cから30°Cの間)以外の温度環境で長時間運用していると計時する時刻に誤差が生じる。
【0028】
第1の温度センサ5は、第1の内部時計3の温度を測定する。
【0029】
複数の第2の温度センサ6は、複数の第2の内部時計4の温度をそれぞれ測定する。
【0030】
制御部2は、第1の温度センサ5及び複数の第2の温度センサ6の温度データに基づいて、第1の内部時計3のクロック周波数を再設定する。
【0031】
次に、本実施の形態に係る電子機器1の動作を説明する。
【0032】
制御部2は、第1の温度センサ5から温度データを取得し、この温度データが予め定めた基準温度範囲(例えば、20°Cから30°Cの間)に入っているか否かを定期的(例えば、1時間に一回、1日一回等)に調べる。基準温度範囲に入っていない場合、図2で示したように、第1の内部時計3のクロック周波数の変動は大きい。このため、この内部時計は、この温度環境で長時間運用していると計時する時刻に誤差が生じるおそれがある。このため、第1の内部時計3のクロック周波数を次のように再設定する。
【0033】
すなわち、制御部2は、複数の第2の温度センサ6から温度データをそれぞれ取得し、これらの温度データと予め定めた基準温度(例えば、25°C)とを比較する。そして、この基準温度に最も近い温度データを抽出する。このとき、この温度データが基準温度範囲に入っていないときには異常として本処理を終了する。この温度データが基準温度範囲に入っているときには、この温度データに対応する第2の内部時計4からこの第2の内部時計4の現在のクロック周波数を取得する。この取得したクロック周波数は、図2で示したように、変動がない、あるいは変動が小さい。この変動がない、あるいは変動が小さいクロック周波数を第1の内部時計3に再設定する。
【0034】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、第1の温度センサ5の温度データが予め定めた基準温度範囲入っていない場合、複数の第2の温度センサ6が測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応する第2の内部時計4の現在のクロック周波数を第1の内部時計3に再設定する。
【0035】
このため、本発明の第1の実施の形態によれば、第1の内部時計3のクロック周波数の誤差が自動的に修正されるので、クロック周波数の誤差の修正に手間が掛からない。また、本発明の第1の実施の形態によれば、第2の内部時計4の現在のクロック周波数が第1の内部時計3に再設定されるので、外部に正しい時刻を提供する装置が必要にならない。
【0036】
更に、本発明の第1の実施の形態によれば、複数の第2の温度センサ6が測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応する第2の内部時計4の現在のクロック周波数を第1の内部時計3に再設定するので、温度環境が悪化していない、又は故障していない第2の内部時計4が有りさえすれば、第1の内部時計3に変動がない、あるいは変動が小さいクロック周波数を再設定することができる。
【0037】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【0038】
本実施の形態に係る電子機器7は、本電子機器7全体を制御するマネージメントPKG8と、このマネージメントPKG8とは異なる複数のPKG9と、を備えている。このマネージメントPKG8以外の複数のPKG9は、マネージメントPKG8の設定場所と異なる場所にそれぞれ設定してある。
【0039】
マネージメントPKG8は、第1の内部時計10(Real Time Clock(RTC))と、第1の温度センサ11と、基準温度比較部12と、周波数補正部13とを備えている。
【0040】
本電子機器7は、第1の内部時計10の計測した時間に基づいて、時刻表示や、指定時刻での動作の指定、ログ管理等の時刻管理等を行っている。
【0041】
マネージメントPKG8以外の複数のPKG9は、複数の第2の内部時計14と複数の第2の温度センサ15をそれぞれ備えている。
【0042】
第1の内部時計10と複数の第2の内部時計14とには、予め定めたクロック周波数を予め設定する。第1の内部時計10、及び複数の第2の内部時計14は、クロック周波数に基づいて時間を計測する。これらの内部時計は、第1の実施の形態で説明したものと同じであり、基準温度範囲以外の温度環境で長時間運用していると計時する時刻に誤差が生じる、といった特性を有する。
【0043】
第1の温度センサ11は、第1の内部時計10の温度を測定する。
【0044】
複数の第2の温度センサ15は、複数の第2の内部時計14の温度をそれぞれ測定する。
【0045】
基準温度比較部12は、第1の温度センサ11から温度データを取得し、この温度データが予め定めた基準温度範囲(例えば、20°Cから30°Cの間)に入っているか否かを定期的(例えば、1時間に一回、1日一回等)に調べる。基準温度範囲に入っていない場合、マネージメントPKG8とは異なる複数のPKG9に備えられた複数の第2の温度センサ15から温度データをそれぞれ取得し、これらの温度データと基準温度(例えば、25°C)とを比較し、この基準温度に最も近い温度データを示す温度センサを備えたPKG9を選択する。
【0046】
周波数補正部13は、基準温度比較部12が選択したPKG9に搭載された第2の内部時計14からこの内部時計の現在のクロック周波数を取得し、このクロック周波数を補正値としてマネージメントPKG8の第1の内部時計10に再設定する。
【0047】
次に、本実施の形態に係る電子機器7の動作を図4を参照して詳細に説明する。
【0048】
図4は、本実施の形態に係る電子機器の動作の一例を示すフローチャートである。
【0049】
図4のステップS1では、マネージメントPKG8に備えられた第1の内部時計10により、この内部時計に予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測する。また、マネージメントPKG8とは異なる複数のPKG9にそれぞれ備えられた複数の第2の内部時計14により、これらの内部時計に予め設定されたクロック周波数に基づいて時間をそれぞれ計測する。
【0050】
図4のステップS2では、マネージメントPKG8に備えられた第1の温度センサ11により、第1の内部時計10の温度を測定し、マネージメントPKG8以外の複数のPKG9にそれぞれ備えられた複数の第2の温度センサ15により、複数の第2の内部時計14の温度をそれぞれ測定する。
【0051】
図4のステップS3では、基準温度比較部12により、第1の温度センサ11から温度データを取得し、この温度データが基準温度範囲に入っているか否かを調べ、基準温度範囲に入っていない場合、ステップS4へ進む。基準温度範囲に入っている場合は、定期的にこのステップを繰り返す。
【0052】
図4のステップS4では、基準温度比較部12により、複数の第2の温度センサ15から温度データをそれぞれ取得し、これらの温度データと基準温度とを比較する。そして、基準温度に最も近い温度データを抽出する。このとき、この温度データが基準温度範囲に入っていないときには異常として本処理を終了する。この温度データが基準温度範囲に入っているときには、マネージメントPKG8以外の複数のPKG9のうちから、この温度データを示す第2の温度センサ15に対応する第2の内部時計14を備えたPKG9を選択する。
【0053】
図4のステップS5では、周波数補正部13により、基準温度比較部12が選択したPKG9に備えられた第2の内部時計14からこの内部時計の現在のクロック周波数を取得する。このとき、基準温度に最も近い温度データは、基準温度範囲に入っているので、この取得したクロック周波数は、図2で示したように、変動がない、あるいは変動が小さい。そして、周波数補正部13は、この変動がない、あるいは変動が小さいクロック周波数を補正値としてマネージメントPKG8の第1の内部時計10に再設定する。
【0054】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、マネージメントPKG8に備えられた第1の温度センサ11の温度データが予め定めた基準温度範囲入っていない場合、マネージメントPKG8以外の複数のPKG9にそれぞれ備えられた複数の第2の温度センサ15が測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応するPKG9内の第2の内部時計14の現在のクロック周波数を第1の内部時計10に再設定する。
【0055】
このため、本発明の第2の実施の形態によれば、第1の内部時計10のクロック周波数の誤差が自動的に修正されるので、クロック周波数の誤差の修正に手間が掛からない。また、本発明の第2の実施の形態によれば、第2の内部時計14の現在のクロック周波数が第1の内部時計10に再設定されるので、外部に正しい時刻を提供する装置が必要にならない。
【0056】
更に、本発明の第2の実施の形態によれば、複数の第2の温度センサ15が測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応する第2の内部時計14の現在のクロック周波数が第1の内部時計10に再設定されるので、温度環境が悪化していない、又は故障していない第2の内部時計14が有りさえすれば、第1の内部時計10に、変動がない、あるいは変動が小さいクロック周波数を再設定することができる。
【0057】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【0058】
本実施の形態に係る電子機器20は、本電子機器20全体を制御するマネージメントPKG21(Package)を備えている。そして、マネージメントPKG21は、内部時計22(Real Time Clock(RTC))と、温度センサ23と、基準温度比較部24と、周波数補正部25とを備えている。
【0059】
本電子機器20は、本電子機器20と同一の構成を備えた複数の他の電子機器26と接続されている。また、本電子機器20は、内部時計22の計測した時間に基づいて、時刻表示や、指定時刻での動作の指定、ログ管理等の時刻管理等を行っている。
【0060】
内部時計22には、予め定めたクロック周波数を予め設定する。内部時計22は、クロック周波数に基づいて時間を計測する。この内部時計22は、第1の実施の形態で説明したものと同じであり、基準温度範囲以外の温度環境で長時間運用していると計時する時刻に誤差が生じる、といった特性を有する。
【0061】
温度センサ23は、内部時計22の温度を測定する。
【0062】
基準温度比較部24は、温度センサ23から温度データを取得し、この温度データが予め定めた基準温度範囲(例えば、20°Cから30°Cの間)に入っているか否かを定期的(例えば、1時間に一回、1日一回等)に調べる。基準温度範囲に入っていない場合、本電子機器20に接続された本電子機器20と同一の構成を備えた複数の他の電子機器26のマネージメントPKG27にそれぞれ備えられた複数の温度センサ29から温度データをそれぞれ取得する。そして、基準温度比較部24は、これらの温度データと基準温度(例えば、25°C)とを比較し、この基準温度に最も近い温度データを示す温度センサ29を備えた他の電子機器26を選択する。
【0063】
周波数補正部25は、基準温度比較部24が選択した他の電子機器26のマネージメントPKG27に搭載された内部時計28からこの内部時計28の現在のクロック周波数を取得する。そして、周波数補正部25は、この取得したクロック周波数を補正値として本電子機器20のマネージメントPKG21に備えられた内部時計22に再設定する。
【0064】
このように、本実施の形態に係る電子機器20は、図3で示した本発明の第2の実施の形態に係る電子機器7のマネージメントPKG8以外の複数のPKG9の替わりに、本電子機器20と接続された本電子機器20と同一の構成を備えた複数の他の電子機器26の備えた複数のマネージメントPKG27を用いている。そして、複数の第2の温度センサ15、及び複数の第2の内部時計14の替わりに、この複数のマネージメントPKG27内の複数の温度センサ29、及び複数の内部時計28を用いている。
【0065】
このように、本発明の各実施の形態によれば、マネージメントPKGに備えられた温度センサの温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、このマネージメントPKGとは異なる複数のPKGにそれぞれ備えられた複数の温度センサが測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応するPKGを選択し、この選択したPKG内の内部時計の現在のクロック周波数をこのマネージメントPKGの内部時計に再設定する。
【0066】
このため、本発明の各実施の形態によれば、内部時計のクロック周波数の誤差が自動的に修正されるので、クロック周波数の誤差の修正に手間が掛からない。また、本発明の各実施の形態に係る電子機器のマネージメントPKG以外の複数のPKGに備えられた内部時計の現在のクロック周波数を、この電子機器のマネージメントPKGの内部時計に再設定するので、外部に正しい時刻を提供する装置が必要にならない。
【0067】
更に、本発明の各実施の形態によれば、本発明の各実施の形態に係る電子機器のマネージメントPKG以外の複数のPKGにそれぞれ備えられた複数の温度センサが測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応するPKGに備えられた内部時計の現在のクロック周波数を取得する。そして、このクロック周波数を本発明の各実施の形態に係る電子機器のマネージメントPKGの内部時計に再設定する。このため、温度環境が悪化していない、又は故障していない、本発明の各実施の形態に係る電子機器のマネージメントPKG以外のPKGの内部時計が有りさえすれば、本発明の各実施の形態に係る電子機器のマネージメントPKGの内部時計に、変動がない、あるいは変動が小さいクロック周波数を再設定することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電子機器
2 制御部
3 第1の内部時計
4 第2の内部時計
5 第1の温度センサ
6 第2の温度センサ
7 電子機器
8 マネージメントPKG
9 PKG
10 第1の内部時計
11 第1の温度センサ
12 基準温度比較部
13 周波数補正部
14 第2の内部時計
15 第2の温度センサ
20 電子機器
21 マネージメントPKG
22 内部時計
23 温度センサ
24 基準温度比較部
25 周波数補正部
26 電子機器
27 マネージメントPKG
28 内部時計
29 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に備えた時計により時刻管理を行う電子機器において、
予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測し本電子機器の時刻管理に使用する第1の内部時計と、
予め設定されたクロック周波数に基づいて時間をそれぞれ計測する複数の第2の内部時計と、
前記第1の内部時計の温度を測定する第1の温度センサと、
複数の前記第2の内部時計の温度をそれぞれ測定する複数の第2の温度センサと、を有し、
前記第1の温度センサが測定した温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、複数の前記第2の温度センサが測定した温度データのうちの予め定めた基準温度に最も近い温度データに対応する前記第2の内部時計の現在のクロック周波数を、前記第1の内部時計に再設定する、ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1の内部時計と前記第1の温度センサとを備えた本電子機器全体を制御するマネージメントパッケージ(以後、パッケージをPKGと記載する)と、
複数の前記第2の内部時計と複数の前記第2の温度センサをそれぞれ備えた、前記マネージメントPKGとは異なる複数のPKGと、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記マネージメントPKGは、
前記第1の温度センサが測定した前記温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、複数の前記第2の温度センサから温度データをそれぞれ取得し、これらの温度データと前記基準温度とを比較し、この基準温度に最も近い温度データを示す前記第2の温度センサを備えた前記PKGを選択する基準温度比較部と、
前記基準温度比較部が選択した前記PKGに搭載された前記第2の内部時計からこの時計の現在の前記クロック周波数を取得し、このクロック周波数を前記マネージメントPKGの前記第1の内部時計に再設定する周波数補正部と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の温度センサが測定した前記温度データが予め定めた前記基準温度範囲に入っていないことの検出、及び、前記基準温度範囲に入っていない場合の、前記クロック周波数の前記第1の内部時計への再設定、を定期的に行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電子機器。
【請求項5】
内部に備えた時計により時刻管理を行う電子機器に用いる内部時計のクロック周波数補正方法において、
前記電子機器の時刻管理に使用するための第1の内部時計により、この時計に予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測し、
複数の第2の内部時計により、これらの時計に予め設定されたクロック周波数に基づいて時間をそれぞれ計測し、
第1の温度センサにより、前記第1の内部時計の温度を測定し、
複数の第2の温度センサにより、複数の前記第2の内部時計の温度をそれぞれ測定し、
前記第1の温度センサから温度データを取得し、この温度データが予め定めた基準温度範囲に入っているか否かを調べ、基準温度範囲に入っていない場合、複数の前記第2の温度センサから温度データをそれぞれ取得し、これらの温度データと前記基準温度とを比較し、
この基準温度に最も近い温度データを示す前記第2の温度センサに対応する前記第2の内部時計からこの時計の現在の前記クロック周波数を取得し、
このクロック周波数を前記第1の内部時計に再設定する、
ことを特徴とする内部時計のクロック周波数補正方法。
【請求項6】
前記第1の内部時計と前記第1の温度センサとは、本電子機器全体を制御するマネージメントPKGに備えられ、
複数の前記第2の内部時計と複数の前記第2の温度センサとは、前記マネージメントPKGとは異なる複数のPKGにそれぞれ備えられることを特徴とする請求項5記載の内部時計のクロック周波数補正方法。
【請求項7】
前記第1の温度センサが測定した前記温度データが予め定めた前記基準温度範囲に入っていないことの検出、及び、前記基準温度範囲に入っていない場合の、前記クロック周波数の前記第1の内部時計への再設定、は定期的に行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の内部時計のクロック周波数補正方法。
【請求項8】
本電子機器の時刻管理に使用する内部時計を備えた本電子機器全体を制御するマネージメントPKGを有し、本電子機器と同一の構成を備えた複数の他の電子機器と接続された電子機器において、
前記マネージメントPKGは、予め設定されたクロック周波数に基づいて時間を計測する前記内部時計と、この内部時計の温度を測定する温度センサとを有し、前記温度センサが測定した温度データが予め定めた基準温度範囲に入っているか否かを調べ、前記温度データが前記基準温度範囲に入っていない場合、本電子機器と接続された複数の前記他の電子機器から、これらの電子機器のマネージメントPKGに備えられたそれぞれの温度センサが測定したそれぞれの温度データを受け、これら複数の他の電子機器のうちから予め定めた基準温度に最も近い温度データを受けた前記他の電子機器を選択し、この選択した前記他の電子機器からこの他の電子機器のマネージメントPKGに備えられた内部時計の現在のクロック周波数を受け、このクロック周波数を本電子機器の前記内部時計に再設定する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
前記マネージメントPKGは、
前記温度データが予め定めた基準温度範囲に入っていない場合、本電子機器と接続された複数の前記他の電子機器から、これらの他の電子機器のマネージメントPKGに備えられたそれぞれの温度センサが測定したそれぞれの温度データを受け、これらの温度データと前記基準温度とを比較し、これら複数の他の電子機器のうちから前記基準温度に最も近い温度データを受けた前記他の電子機器を選択する基準温度比較部と、
前記基準温度比較部が選択した前記他の電子機器から、この他の電子機器のマネージメントPKGに備えられた前記内部時計の現在の前記クロック周波数を受け、このクロック周波数を前記マネージメントPKGの前記内部時計に再設定する周波数補正部と、
を備えたことを特徴とする請求項8記載の電子機器。
【請求項10】
前記温度センサが測定した前記温度データが予め定めた前記基準温度範囲に入っていないことの検出、及び、前記基準温度範囲に入っていない場合の、前記クロック周波数の前記内部時計への再設定、を定期的に行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−83302(P2012−83302A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231541(P2010−231541)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】