説明

電子機器及び駆動装置

【課題】コンタクト抵抗が大きくなっても良好に動作することが可能な伝送システムを安価に提供できるようにする。
【解決手段】駆動装置側に配設されている第1の接続端子及び第2の接続端子から入力される電気信号から直流電圧を生成して動作する電子機器において、前記第1の接続端子と接触する第1の機器側端子と、前記第2の接続端子と接触する第2の機器側端子とを、所定の面積を有する面状に構成するとともに、電子機器の内部回路に加わる電圧を所定の値に制限するクランプ回路と、前記第1の機器側端子と前記第2の機器側端子に入力される電気信号を直流電圧に変換する整流回路とを設け、前記第1の接続端子と前記第1の機器側端子、及び前記第2の接続端子と前記第2の機器側端子とを、導体接続及び端子間に形成される静電容量を介した容量接続のうち、導体接続か、または両方の並列で接続可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器及び駆動装置に関し、特に、接触端子を介して駆動装置から電子機器に電力及びデータ信号を伝送するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、近距離通信用のデータキャリアの場合は電源をもたず、動作電力はリーダ/ライタ装置から送られる電力を電源として動作している。このようなデータキャリアシステムにおいて、リーダ/ライタ装置との接続は非接触式と接触式とに大別される。
【0003】
接触式データキャリアの従来例として、例えば、特許文献1においては、電力、クロック、データの3つの信号を、2線のインターフェースにて伝送することでリーダライタユニットと通信を行う接触式データキャリアが提案されている。
【0004】
接触式データキャリアとリーダライタ装置との接続部には、接点やコネクタが用いられているが、接続部は簡単に且つ確実にON−OFFできることが要求される。しかしながら、接続状態が長期にわたると接続部の電極が汚れたり、異物に影響されたり、コンタクトの電極が酸化したりするために接触不良を起こしてしまい、確実にON−OFFできなくなる問題があった。
【0005】
このような問題点を解消するために、電極を金メッキしたり、ゴミ等がつかないように接続部を密閉構造にする等の工夫や、接触部にバネ性を持たせたりする等の工夫が行われることがある。しかしながら、このように構成するとデータキャリアのコストがアップしてしまう問題があった。そこで、接続部に工夫を施す代わりに駆動電圧を高くした上で、データキャリアに電圧レギュレータを配設し、内部回路への電源供給を安定化することが考えられる。
【0006】
図4に、データキャリアに電圧レギュレータを配設した接触式伝送システムの一例を示す。
図4において、41はリーダ/ライタ装置、42はデータキャリアであり、リーダ/ライタ装置41とデータキャリア42は、第1接点部P1、第2接点部P2を介して接続され、接触式伝送システムを構成している。
【0007】
第1接点部P1は、第1のリーダ/ライタ接点P11と第1のデータキャリア接点P12とにより構成される。また、第2接点部P2は、第2のリーダ/ライタ接点P21と第2のデータキャリア接点P22とにより構成される。第1のデータキャリア接点P12と第2のデータキャリア接点P22との間に、ダイオードD0を介して内部回路421が接続されている。
【0008】
また、内部回路421の電源端子AとダイオードD0との間に電圧レギュレータ422が配設されている。さらに、内部回路421と並列に第1のコンデンサC41、第2のコンデンサC42が接続されている。第1のコンデンサC41は、一側をダイオードD0と電圧レギュレータ422との間に接続し、他側を第2のデータキャリア接点P22と接続して内部回路421と並列に接続されている。また、第2のコンデンサC42は、一側を電圧レギュレータ422と内部回路421の電源端子Aとの間に接続され、他側を第2のデータキャリア接点P22と接続して内部回路421と並列に接続されている。
【0009】
第1接点部P1を介してリーダ/ライタ装置41から送信されるパルス信号を内部回路421に供給するために、内部回路421の信号入力端子BとダイオードD0のアノード側が接続されている。また、内部回路421の基準電位端子Eと第2のデータキャリア接点P22とが接続されている。
【0010】
リーダ/ライタ装置41においては、内部回路421の動作圧より高い電圧を供給する駆動回路411が第1のリーダ/ライタ端子P11と接続され、基準電位412が第2のリーダ/ライタ端子P21と接続されている。駆動回路411は、第1接点部P1及び第2接点部P2を介してデータキャリア42の内部回路421を駆動する電力を供給する。このように、電圧レギュレータ422を配設すると、第1接点部P1及び第2接点部P2における接触抵抗の許容範囲を広くすることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−208583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のように、第1接点部P1及び第2接点部P2において、大きなコンタクト抵抗を許容できるようにするために、駆動電圧を高くし、電圧レギュレータ422を配設するとデータキャリア42のコストがアップしてしまうので、簡易な構成で低価格が要求されるデータキャリアに適用する場合にはコスト的に大きな問題点があった。
【0013】
例えば、内部回路の動作電圧は3.3V、動作電流を0.3mA、消費電力で1mWの場合には、第1接点部P1及び第2接点部P2での合計の接触抵抗が1000KΩまで許容するためには、駆動電圧は300V以上必要になってしまう。このため、電圧レギュレータ422も許容入力が300V以上のものを使う必要があるので、データキャリアのコストが高くなってしまう。
本発明は前述の問題点に鑑み、コンタクト抵抗が大きくなっても動作することが可能な電子機器及び駆動装置を安価に提供できるようにすることを目的とする。
また、コンタクト抵抗が大きくなって電子機器への駆動力が小さくなっても良好に動作させることが可能な伝送システムを提供できるようにすることを第2の目的とする。
さらに、さらに周囲への信号の飛びつきを抑えることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電子機器は、駆動装置側に配設されている第1の接続端子及び第2の接続端子から入力される電気信号から直流電圧を生成して動作する電子機器であって、前記第1の接続端子と接触する第1の機器側端子と、前記第2の接続端子と接触する第2の機器側端子と、前記第1の機器側端子と前記第2の機器側端子との間に接続された内部回路と、前記内部回路と並列に接続され、前記内部回路に加わる電圧を所定の値に制限するクランプ回路と、前記第1の機器側端子と前記第2の機器側端子に入力される電気信号を直流電圧に変換する整流回路とを有し、前記第1の機器側端子及び前記第2の機器側端子を、所定の面積を有する面状に構成し、前記第1の接続端子と前記第1の機器側端子、及び前記第2の接続端子と前記第2の機器側端子とを、導体接続及び端子間に高抵抗の異物が挟まったり傾いたり、変形したことで隙間が開いて接触抵抗が大きくなったときに形成される静電容量を介した容量接続のうち、導体接続か、または両方の並列で接続可能にしたことを特徴とする。
また、本発明の電子機器の他の特徴とするところは、前記整流回路は、前記第1の接続端子及び第2の接続端子と前記内部回路の電源入力端子との間に配設される第1の整流回路と、前記第1の接続端子及び第2の接続端子と前記内部回路の信号入力端子との間に配設される第2の整流回路と、前記第1の接続端子及び第2の接続端子と前記クランプ回路との間に配設されるとから構成されていることを特徴とする。
また、本発明の電子機器のその他の特徴とするところは、第1の接続端子と第2の接続端子との間に、機器の等価入力容量と合わせて駆動信号の周波数に並列共振させるコイルを接続したことを特徴とする。
【0015】
本発明の駆動装置は、電子機器側に配設されている第1の機器側端子及び第2の機器側端子を介して高周波の電気信号を出力する駆動装置であって、前記第1の機器側端子と接触する第1の接続端子と、前記第2の機器側端子と接触する第2の接続端子と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に接続された信号出力回路と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子から出力する高周波の電気信号を前記信号出力回路に出力する電気信号発生回路と、前記電気信号発生回路と前記信号出力回路との間に配設された整合回路とを有し、前記信号出力回路と前記整合回路とにより並列共振回路を構成し、前記並列共振回路の共振電圧を、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とに接続される負荷インピーダンスに応じて変化させることを特徴とする。
また、本発明の駆動装置の他の特徴とするところは、前記並列共振回路は、前記第1の接続端子と前記第1の機器側端子との間の接触、及び前記第2の接続端子と前記第2の機器側端との間のいずれかの接触が悪くて共振回路に接続される前記負荷インピーダンスが大きい場合には前記並列共振回路の共振電圧を高くし、両方の接触が良好で前記負荷インピーダンスが小さい場合には前記並列共振回路の共振電圧を低くする。
また、本発明のその他の特徴とするところは、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子を、所定の面積を有する面状に構成し、前記第1の機器側端子と前記第1の接続端子、及び前記第2の機器側端子と前記第2の接続端子とを、導体接続及び容量接続のうち、導体接続、または両方の並列で接続可能にしたことを特徴とする。
また、本発明のその他の特徴とするところは、前記信号出力回路は、高周波の電気信号を差動で出力することを特徴とする。
【0016】
本発明の伝送システムは、前記に記載の電子機器と、前記に記載の駆動装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子機器によれば、駆動装置を接続する端子を、所定の面積を有する面状に構成し、駆動装置の端子に対する導体接続及び容量接続のうち、導体接続か、または両方の並列で接続可能にするとともに、接続端子の抵抗値の変動による電圧変動をクランプ回路により所定の範囲に制限するようにしたので、接続端子部分に汚れが付着して導体接続における抵抗値が大きくなった場合には容量接続による接続回路を形成することが可能となる。これにより、コンタクト部における電気接続を確実に確保することが可能な電子機器を提供することができる。
本発明の駆動装置によれば、電子機器側に配設されている第1の機器側端子と接触する第1の接続端子と、電子機器側に配設されている第2の機器側端子と接触する第2の接続端子と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に接続された信号出力回路と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子から出力する高周波の電気信号を前記信号出力回路に出力する電気信号発生回路と、前記電気信号発生回路と前記信号出力回路との間に配設された整合回路とを設け、前記信号出力回路と前記整合回路とにより並列共振回路を構成し、前記並列共振回路の共振電圧を、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とに接続される負荷インピーダンスに応じて変化させるようにしたので、コンタクト部が正常に接触している場合は前記同調回路への負荷インピーダンスが下がることにより、前記並列共振回路の振幅が下がり、前記第1の接続端子と第2の接続端子に過剰な電圧が出力されるのを抑制することができる。また、コンタクト部の接触が不完全で接触抵抗が大きくなって負荷インピーダンスが大きくなった場合には駆動電圧が大きくなるので、コンタクト部の接触抵抗の値が大きくなっても電子機器を良好に駆動することができる。
本発明の伝送システムによれば、電子機器と駆動装置とが接続している状態において、接続端子の抵抗値が変動しても、前記電子機器と駆動装置との電気的な接続状態を良好に確保することができ、前記コンタクト部における接触抵抗の値が大きくなっても大きい接触抵抗と容量の並列回路を介して前記駆動装置が前記電子機器を良好に駆動することができる。
また、駆動を差動の高周波の電気信号で行っているため信号線から容量結合による周囲への飛びつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示し、伝送システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、伝送システムの第1の変形例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、伝送システムの第2の変形例を示す図である。
【図4】従来例を示し、伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態を示す伝送システムの構成例を示す図である。本実施形態の伝送システムは、高周波の電気信号を出力する駆動装置として接触式のリーダ/ライタ装置110と、電子機器として接触式のデータキャリア120とにより構成され、リーダ/ライタ装置110とデータキャリア120とは、第1の接続端子装置T1及び第2の接続端子装置T2(以降、コンタクトT1、T2とする)を介して接続される。
【0020】
第1接続端子装置T1は、リーダ/ライタ装置110側(駆動装置側)に接続される第1の接続端子T11と、電子機器側に配設され、データキャリア120側の内部回路121の電源入力端子Aに、整流回路123を介して接続される第1の機器側端子T12とにより構成されている。第1の接続端子T11及び第1の機器側端子T12は、接続相手に所定の面積を持って対向するために所定の面積を有している。このようにして、面接続することにより、後述するようにリーダ/ライタ装置110とデータキャリア120とを直流的及び交流的に電気接続することが可能となる。
【0021】
第2の接続端子装置T2も第1の接続端子装置T1と同様な構成であり、リーダ/ライタ装置110側に接続される第2の接続端子T21と、整流回路123を介してデータキャリア120側の内部回路121の基準電位端子Eと接続される第2の機器側端子T22とにより構成されている。また、内部回路121と並列にクランプ回路122、及びコンデンサC1が配設されている。クランプ回路122は、内部回路121に加わる電圧を所定の電圧値に制限する。
【0022】
整流回路123は、ダイオードD1〜D2からなる第1の整流回路123aと、ダイオードD3〜D4からなる第2の整流回路123bと、ダイオードD5〜D8からなる第3の整流回路123cとにより構成され、入力される交流の電気信号を直流に変換する。
第3の整流回路123cにおける、タグ内の内部回路121の基準電位端子Eに接続されるダイオードD6、D8は、第1〜第3の整流回路123a〜123c共通に使われている。
【0023】
第1の整流回路123aは、ダイオードD1、D2により第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2から電源入力端子Aに流れる交流電流を整流して直流電圧を生成する。また、ダイオードD3、D4により構成される第2の整流回路123bが、第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2から信号入力端子Bに流れる信号電流を整流する。第3の整流回路123cが、第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2からクランプ回路122に流れる信号電流を整流して直流電圧を生成する。また、信号入力端子Bと基準電位との間にコンデンサC2が配設され、信号入力端子Bに入力されるデータキャリア信号の振幅を安定させている。
【0024】
第1の整流回路123aは、内部回路121の動作電源を安定化して供給するため大容量のC1をリップルフィルターとして接続してから内部回路121に接続している。
第2の整流回路123bは、変調を検波するためのもので高周波信号をバイパスするとめのコンデンサC2を接続してから内部回路121の信号入力端子Bに接続している。
第3の整流回路123cは、クランプ回路122に供給するもので整流電圧が所定の電圧を超えたときだけ電圧を制限するため、動作の遅延を与えるコンデンサは接続していない。
上記の様に、整流回路を3つに分けたことでそれぞれの目的に最適の時定数に成るようなコンデンサ接続できる利点がある。
【0025】
本実施形態においては、整流回路123を設けたことにより、リーダ/ライタ装置110がデータキャリア120を差動の交流信号で駆動させている際に、第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2に接触不良が発生して接触抵抗の値が大きくなった場合、例えば異物が挟まってコンタクト抵抗値が大きくなった場合においても良好に動作させることができる。
【0026】
これは、異物が挟まって抵抗値が大きくなった場合には、第1の接続端子装置T1(第2の接続端子装置T2も同様)において、第1の接続端子T11と第1の機器側端子T12とは異物の高さ分だけ隙間を開けて対向することになり、コンタクト電極間に静電容量ができることになる。この静電容量に変位電流が流れるので、電気的には接続状態を確保することが可能となる。これにより、高抵抗の異物が挟まって接触不良が起きたと場合においても、データキャリア120を安定して動作させることができる。
【0027】
本実施形態において、対向する第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2が所定の面積を有する面状に形成されている。例えば、5mm角で面積25mm2のときに、端子間に30μの異物が挟まり、接触抵抗が1000KΩと大きくなった場合でも、電極間の静電容量は約7.5pFになるので、周波数を10MHzとすると、インピーダンスは2120Ωで済む。したがって、接点に汚れが付着して接触抵抗値が大きくなっても並列に接続されるコンデンサを介して駆動出来る利点が得られる。
【0028】
本実施形態のリーダ/ライタ装置110は、電気信号発生回路111から出力される交流の駆動信号を、等価的に高い出力インピーダンスの信号出力回路112で駆動している。信号出力回路112は、L1及びC11より成る並列共振回路で構成され、並列共振回路の共振電圧を第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2に差動で出力する。また、コンデンサC11と直列にコンデンサC12、C13を設け、これらのコンデンサC11、C12、C13によりインピーダンス整合回路113を構成している。この例では、コンデンサC11は、共振回路のコンデンサと、インピーダンス整合回路113のコンデンサとを兼用している。
【0029】
並列共振電圧は、共振周波数で、かつQが高い場合に、駆動信号のQ倍の大きな電圧が得られる。このため、コンタクトT1、T2の接触が悪くて接触抵抗値が大きいことにより、共振回路に接続される負荷インピーダンスが大きい場合に、大きな駆動信号が得られる。
【0030】
一方、コンタクトT1、T2の接触が良い場合は、共振回路の負荷インピーダンスが小さくなって、共振点の電圧が下がる。したがって、コンタクトT1、T2の接触が良い場合に過剰な駆動をしなくなるので、データキャリア120に過大な電圧を印加してしまう不都合は発生しない。したがって、コンタクトT1、T2に接触不良が発生しても、データキャリア120を駆動する許容範囲を広くすることができる。
【0031】
この例では、並列共振回路は共振時のインピーダンスが高く、駆動信号源に対してQ倍の電圧が得られること。また、並列共振回路に並列に負荷が接続されると共振回路が無負荷の時の高い電圧から低い電圧に下がってしまうことを利用している。したがって、データキャリア120との接続状態が不完全な場合に整合と共振を合わせておくことで、前述したような効果が得られるようになる。
【0032】
すなわち、図1に示したリーダ/ライタ装置110の信号出力回路112は、出力インピーダンスが高いので、負荷インピーダンスが大きいと(コンタクトが接触不良の場合)、駆動出力は大きくなってデータキャリア120が駆動不足になりにくい利点がある。
一方、出力インピーダンスが高いので、負荷インピーダンスが小さいと(コンタクトが正常に接触した場合)、駆動出力は小さくなってデータキャリア120を過剰に駆動することがない利点がある。これにより、本実施形態の伝送システムによれば、第1の接続端子装置T1及び第2の接続端子装置T2において、導体接続及び容量接続のうち、導体接続か、または両方の並列で接続可能となる。
【0033】
図2は、インピーダンス整合回路113の変形例を示し、並列共振回路を構成するコイルL1とコンデンサC11との間にインピーダンス整合用のコンデンサC12,C13を接続している。
【0034】
図3は、データキャリア120の等価入力容量と合わせて、リーダ/ライタ装置110の電気信号発生回路111の信号周波数に共振させる共振コイルL2を設けた例を示している。このように構成することにより、データキャリア120の入力インピーダンスを高くできるので駆動が容易になり、接触抵抗が高くなったり、電極間の容量が小さい場合でも駆動し易くなる利点がある。
リーダ/ライタ装置110の共振回路のコイルL1からの磁束が、共振コイルL2に誘導して電圧が発生すると、第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2を介しての駆動電圧と干渉するので、コイルL1とL2の向きを変えたり、離したりしておくのが望ましい。
【0035】
次に、具体的な計算例を示す。
(計算例−1)
データキャリア120の駆動が9Vpp以上、1mApp以上必要な場合、データキャリア120の消費電力で1.1mWの場合は、接触端子は等価的に接触抵抗1000Kと、電極間容量7.5pFの並列回路となり、これが2個直列になる。このため、駆動回路としてはこの部分での電圧降下分だけ高く駆動する必要があるが、高くする駆動分は13Vpp程度である。この程度の駆動は、本実施形態においては容易である。
【0036】
(計算例−2)
データキャリア120の駆動が9Vpp以上、1mApp以上必要な場合、データキャリア120の消費電力で1.1mWの場合は、接触端子が等価的に接触抵抗1000KΩと電極間容量1pF(インピーダンスは10MHzで15.9KΩ)の並列回路となる。接触端子は2箇所あるので、駆動回路としてはこの部分での電圧降下分を補償するために高く駆動する必要があるが、高くする駆動分は41Vppである。この程度の電圧降下分の補償駆動分は、信号源の振幅が5Vppの場合、駆動回路の同調回路のQが20以上あれば容易に実現できる範囲である。
【0037】
本実施形態においては、リーダ/ライタ装置110とデータキャリア120とは、第1の接続端子装置T1と第2の接続端子装置T2とを介して電気的に接続している。したがって、並列共振回路の出力を受けてデータキャリア120が動作している状態においては、リーダ/ライタ装置110とデータキャリア120とは、外部からみると1つの閉回路となっており、コイルL1で発生した磁束を外部の駆動に用いてはいない。
また、駆動回路は差動出力になっているので第1、第2の接続端子装置T1、T2への信号線は作動信号で逆相の高周波信号のため周囲への飛びつきを抑えられる。
さらには、シールド線や第1、第2の接続端子装置T1、T2の周囲に接地電位に接続したガードリングを設けることで周囲への飛びつきを抑えることができる。
【0038】
さらに、コイルL1からの磁束がより確実に漏れないようにするために、トロイダルコア等の閉磁路型のコアを用いたコイルにしたり、磁気シールド型のコイルを用いたりすることが望ましい。このように構成することにより、駆動信号が弱いときに第1の接続端子装置T1、第2の接続端子装置T2の接触抵抗の値が大きくなっている状態において共振コイルL2との磁界結合による干渉動作を低減することができる。
【0039】
前述した各実施形態において、コンタクトT1、T2の接触抵抗を下げるために、端子の表面にナノカーボンを配設するのも効果がある。
【0040】
なお、駆動信号に対して変調する構成、データキャリア120からリーダ/ライタ装置110が返信を受け取る構成、データキャリア120からの返信を返す構成は公知の技術を用いて構成することが可能であるので、前述した実施形態においては省略している。
【符号の説明】
【0041】
110 リーダ/ライタ装置
111 電気信号発生回路
112 信号出力回路
113 インピーダンス整合回路
T1 第1の接続端子装置
T11 第1のリーダ/ライタ端子
T12 第1のデータキャリア端子
T2 第2の接続端子装置
T21 第2のリーダ/ライタ端子
T22 第2のデータキャリア端子
L1 並列共振コイル
C11 並列共振コンデンサ
C12、C12 整合用コンデンサ
120 データキャリア
121 内部回路
122 クランプ回路
123 整流回路
123a 第1の整流回路
123b 第2の整流回路
123c 第3の整流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置側に配設されている第1の接続端子及び第2の接続端子から入力される電気信号から直流電圧を生成して動作する電子機器であって、
前記第1の接続端子と接触する第1の機器側端子と、
前記第2の接続端子と接触する第2の機器側端子と、
前記第1の機器側端子と前記第2の機器側端子との間に接続された内部回路と、前記内部回路と並列に接続され、前記内部回路に加わる電圧を所定の値に制限するクランプ回路と、
前記第1の機器側端子と前記第2の機器側端子に入力される電気信号を直流電圧に変換する整流回路とを有し、
前記第1の機器側端子及び前記第2の機器側端子を、所定の面積を有する面状に構成し、前記第1の接続端子と前記第1の機器側端子、及び前記第2の接続端子と前記第2の機器側端子とを、導体接続及び端子間に高抵抗の異物が挟まったり傾いたり、変形したことで隙間が開いて接触抵抗が大きくなったときに形成される静電容量を介した容量接続のうち、導体接続か、または両方の並列で接続可能にしたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記整流回路は、前記第1の接続端子及び第2の接続端子と前記内部回路の電源入力端子との間に配設される第1の整流回路と、前記第1の接続端子及び第2の接続端子と前記内部回路の信号入力端子との間に配設される第2の整流回路と、前記第1の接続端子及び第2の接続端子と前記クランプ回路との間に配設されるとから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の接続端子と第2の接続端子との間に、機器の等価入力容量と合わせて駆動信号の周波数に並列共振させるコイルを接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
電子機器側に配設されている第1の機器側端子及び第2の機器側端子を介して高周波の電気信号を出力する駆動装置であって、
前記第1の機器側端子と接触する第1の接続端子と、
前記第2の機器側端子と接触する第2の接続端子と、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に接続された信号出力回路と、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子から出力する高周波の電気信号を前記信号出力回路に出力する電気信号発生回路と、
前記電気信号発生回路と前記信号出力回路との間に配設された整合回路とを有し、
前記信号出力回路と前記整合回路とにより並列共振回路を構成し、前記並列共振回路の共振電圧を、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とに接続される負荷インピーダンスに応じて変化させることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
前記並列共振回路は、前記第1の接続端子と前記第1の機器側端子との間の接触、及び前記第2の接続端子と前記第2の機器側端との間のいずれかの接触が悪くて共振回路に接続される前記負荷インピーダンスが大きい場合には前記並列共振回路の共振電圧を高くし、両方の接触が良好で前記負荷インピーダンスが小さい場合には前記並列共振回路の共振電圧を低くすることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子を、所定の面積を有する面状に構成し、前記第1の機器側端子と前記第1の接続端子、及び前記第2の機器側端子と前記第2の接続端子とを、導体接続及び容量接続のうち、導体接続、または両方の並列で接続可能にしたことを特徴とする請求項4または5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記信号出力回路は、高周波の電気信号を差動で出力することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜3の何れか1項に記載の電子機器と、請求項4〜7の何れか1項に記載の駆動装置とを有することを特徴とする伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−123735(P2011−123735A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281741(P2009−281741)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(599098851)吉川アールエフシステム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】