説明

電子機器用カバー部材および電池蓋

【課題】
電子機器の落下に対する防護性を高め、かつ電子機器の落下を予防する。
【解決手段】
本発明は、電子機器50の操作面51側を開口して当該電子機器50の外側を覆う電子機器用カバー部材1であって、少なくとも操作面51の方向に開口するトレイ10と、トレイ10よりも低硬度であると共にトレイ10の開口側内面の反対側の面を覆う弾性部材30とを備え、弾性部材30によりトレイ10の開口側内面よりも当該開口側内面と反対側の面を広く覆い、弾性部材30に、トレイ10を覆う底板31または側壁32の外側に、トレイ10と反対方向に突出する突出領域45を備える電子機器用カバー部材1に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用カバー部材および電池蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきており、それに伴い、小型電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。小型電子機器を落下あるいは何かに接触させた際にその破損から防護する方法の一つに、小型電子機器をクッション性の高いカバーあるいはケースにて覆う方法が考えられる。
【0003】
例えば、小型電子機器の操作面のみを開口し、側面から裏面までを覆う形状であって、開口部分の伸縮性を高めて、小型電子機器を着脱容易にした電子機器用カバーが知られている(特許文献1を参照)。また、携帯電話の操作面側を開口した比較的硬質の材料(プラスチックあるいは金属)から構成される携帯電話用の容器および保持具も知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−027076号公報
【特許文献2】特開2000−201210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来から公知のカバーには、次のような欠点がある。特許文献1に開示されるカバーは、布のような柔らかい材料を縫合して形成されるものであるため、破れやすく、かつ落下時の衝撃から電子機器を保護するには十分な強度を有していない。また、特許文献2に開示される容器および保持具(ここでは、「容器」と称する)は、比較的硬質な材料から構成されているため、電子機器を落下させたときに、容器自体が破損しやすく、繰り返しの使用に耐え得ない。また、容器により衝撃を十分に吸収できず、電子機器が破損する危険性が高い。また、電子機器の使用中、当該容器がユーザの手から滑り、容器ごと電子機器を落下させてしまう危険性がある。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器の落下に対する防護性を高め、かつ電子機器の落下を予防できる電子機器用カバー部材および電池蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するため、本発明の一形態は、電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイと、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面の反対側の面を覆う弾性部材とを備え、弾性部材により、トレイの開口側内面よりも当該開口側内面と反対側の面を広く覆い、弾性部材におけるトレイを覆う底板または側壁の外側に、トレイと反対方向に突出する突出領域を備える電子機器用カバー部材である。ここで、硬度は、トレイおよび弾性部材が両方とも樹脂あるいはエラストマーから構成され、あるいはトレイを樹脂で構成して弾性部材をエラストマーから構成する場合には、ショア硬度を意味する。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、突出領域を、弾性部材の四角形状の底板において、その底板の一辺に対し斜め方向に伸びる複数本の突出ラインから構成される網目領域とする電子機器用カバー部材である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材に、突出領域として、その側壁に設けられる1以上の第一線状突出部を備える電子機器用カバー部材である。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材に、突出領域として、その側壁であってトレイの側壁と接する領域に設けられる1以上の第二線状突出部を備える電子機器用カバー部材である。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の側壁を、トレイの側壁の高さ以上に形成し、弾性部材に、弾性部材の側壁から連接して電子機器の操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部を備える電子機器用カバー部材である。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の側壁を、トレイの側壁を超えて形成した電子機器用カバー部材である。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、トレイの側壁の上方に薄肉部を備え、薄肉部の上方に延出する弾性部材の側壁の内面と、薄肉部の内面とを面一に形成して成る電子機器用カバー部材である。
【0014】
本発明の別の形態は、電子機器の外部アクセス部の位置、大きさおよび形状に応じて、当該外部アクセス部の1以上を開口するための貫通孔を備え、弾性部材により、1以上の貫通孔の周囲において、トレイの開口の深さ方向に段差をもって覆っている電子機器用カバー部材である。
【0015】
本発明の一形態は、上記の電子機器用カバー部材が電池収納部の開口面を覆う蓋を兼ねた電池蓋である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子機器を落下させても高い防護性を得ることができ、かつ電子機器の落下を予防できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材の開口面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用カバー部材の開口面と反対側から見た斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイの斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す電子機器用カバー部材をA−A線で切断した際の領域Xの斜視図である。
【図6】図6は、図4に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態のB−B線断面図である。
【図7】図7は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材の図5と同じ方向から見た断面図である。
【図8】図8は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を内側から見た斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す電子機器用カバー部材を外側から見た斜視図である。
【図10】図10は、図8に示す電子機器用カバー部材をC−C線で切断した際の領域Yの断面図である。
【図11】図11は、図9に示す電子機器用カバー部材をD−D線で切断した際の領域Zの断面図である。
【図12】図12は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用カバー部材の開口面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る電子機器用カバー部材および電池蓋の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<第一の実施の形態>
【0020】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材の開口面側から見た斜視図である。図2は、図1に示す電子機器用カバー部材の開口面と反対側から見た斜視図である。図3は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイの斜視図である。図4は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0021】
(1)電子機器用カバー部材の構造
第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、電子機器50の操作面51側を開口して当該電子機器50の外側を覆うことのできる形態を有する。カバー部材1は、少なくとも操作面51の方向に開口するトレイ10と、トレイ10よりも低硬度であると共にトレイ10の開口側内面の反対側の面を覆う弾性部材30とを備える。
【0022】
トレイ10は、図1および図3に示すように、電子機器50の背面側に位置する底板11と、底板11から電子機器50の外側面に向かって延出する側壁12とを連接して構成される部材である。側壁12は、電子機器50の一対の側面、この実施の形態では短辺側の両側面を十分に覆う一方、他方の一対の側面、この実施の形態では長辺側の両側面を大きく切り欠いた形状を有する。トレイ10は、電子機器50の側面および底面に備えられる外部アクセス部の一例であるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板11および側壁12に貫通孔15,16,17,19を備える。ここで、「外部アクセス部」は、カバー部材1の外側と電子機器との間にていずれか一方からアクセス可能な部分をいう。アクセスの手法は、直接的な接触のみならず、光、音等の入出も含まれる。トレイ10は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも特に好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成る。トレイ10の底板11および側壁12の厚さは、電子機器50の大きさ、重量等によって適正な厚さに設計可能である。例えば、電子機器50の厚さが8〜20mm、短辺が50〜200mm、長辺が80〜300mmの範囲にある場合、樹脂製のトレイ10の底板11および側壁12は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0023】
トレイ10は、電子機器50の長辺側の切り欠いた部分を有する2つの側壁12に、電子機器50側に向かって立設される規制板21を1つずつ備える。また、トレイ10は、電子機器50の短辺側の2つの側壁12に、内方に突出する規制凸部22を複数個備える。規制板21および規制凸部22は、カバー部材1の内側にあるトレイ10と電子機器50の外面との固定を確実にし、電子機器50がカバー部材1から容易に脱落しないようにするための部分である。なお、規制板21は、トレイ10の長辺側の側壁12ではなく、底板11の長辺側に形成されていても良い。
【0024】
弾性部材30は、電子機器50の背面側に位置する底板31と、底板31から電子機器50の外側面を覆う側壁32と、側壁32から電子機器50の操作面51の外縁の全部を覆う操作面側外縁部33とを連接して構成されるボート形状を有する部材である。弾性部材30は、トレイ10の開口側内面よりも当該開口側内面と反対側の面を広く覆う。図2に示すように、弾性部材30は、トレイ10を覆う底板31の外側に、トレイ10と反対方向に突出する突出領域として、底板31の一辺に対し斜め方向に伸びる複数本の突出ライン45aから構成される網目領域45を備える。突出領域は、ユーザの手から、カバー部材1にて覆われた状態の電子機器50が滑り落ちるのを有効に防止する機能を有する。特に、網目領域45は、濡れた手でカバー部材1を握っても、水を網目内に存在せしめ、手のひらや指と底板31との隙間に水が存在するのを防ぐ機能を有する。加えて、複数の突出ライン45aは、電子機器50を持つユーザの指の方向に対して斜め方向に長いため、高い滑り止めの機能を持つ。この結果、カバー部材1で覆われた電子機器50を使用中に、電子機器50を落下させる危険性を低減できる。
【0025】
弾性部材30は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどから好適に構成され、例えば、ウレタン系あるいはシリコーン系エラストマーから特に好適に構成される。トレイ10の底板11および側壁12の最も厚い部分が0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲の場合、上記エラストマー製の弾性部材30の底板31および側壁32は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。弾性部材30は、電子機器50の側面および底面に備えられるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板31および側壁32に、凸状被覆部34、貫通孔35,36,37,38,39を備える。凸状被覆部34は、カバー部材1から電子機器50にタッチして操作できるように、好適には他の部分よりも薄肉状に形成されている。貫通孔35,36,37,38,39は、そこを通して電子機器50に接触し、あるいは光を通過可能に形成される部分である。凸状被覆部34および貫通孔35,36,37,38,39の大きさ、形状、位置および個数は、電子機器50の形態に応じて変動する。
【0026】
弾性部材30の側壁32は、トレイ10の側壁12の高さ以上に形成されている。トレイ10の側壁12の内で最も高い位置でも、弾性部材30の操作面側外縁部33の内側に接する位置である。これによって、少なくとも、操作面側外縁部33は、トレイ10と接しない部分となり、電子機器50との脱着の際に自由に変形できる。弾性部材30の貫通孔35,36,37,39は、トレイ10の貫通孔15,16,17,19と同じ位置に、ほぼ同じ形状と大きさにて形成される。弾性部材30は、トレイ10の底板11および側壁12の各外側を完全に覆う一方、それらの内側を完全に覆うことなく、当該内側の大部分を露出させる。すなわち、トレイ10の開口側内面は、その反対側にあたる外側の面よりも弾性部材30に覆われておらず、露出している。このため、トレイ10の内側の面は、広い範囲にて、直接、電子機器50に接触する。なお、弾性部材30は、トレイ10の貫通孔15,16,17,19の少なくともいずれか1つの内周の一部または全部を覆う。
【0027】
図5は、図1に示す電子機器用カバー部材をA−A線で切断した際の領域Xの斜視図である。
【0028】
図5に示すように、弾性部材30は、その側壁32にてトレイ10の側壁12の外側を覆い、当該側壁12の上端面から曲がって操作面側外縁部33に連接する。カバー部材1の側方は、弾性部材30の側壁32の内側にトレイ10の側壁12を接する二重構造となっている。このため、カバー部材1は、電子機器50の側面からの落下に対して、高い防護性を発揮できる。また、操作面側外縁部33は、その内側にトレイ10の延出部分を備えていないため、矢印Pで示す方向に変形自在である。このため、電子機器50とカバー部材1との着脱が極めて容易になる。
【0029】
図6は、図4に示すカバー部材に電子機器を取り付けた状態のB−B線断面図である。
【0030】
この実施の形態に係るカバー部材1は、電子機器50の電池収納部55に電池56を入れた状態にて電子機器50に取り付けることにより電池蓋58として機能するものである。このため、電子機器50に、カバー部材1以外に、電池56の脱落を防止するための別の蓋を必要としない。ただし、カバー部材1が電池蓋58を兼ねることは、必須ではない。電子機器50の電池収納部55に、専用の電池蓋を備え、その上からカバー部材1を取り付けても良い。
【0031】
(2)電子機器用カバー部材の製造方法
トレイ10は、例えば、金型内に溶融樹脂を射出して成形する射出成形法、軟化させた板状の樹脂を金型内で型締めする成形法にて好適に製造できる。また、後者の成形法の場合には、一方の金型側から減圧する方法、一方の金型側から高圧気体を送気する方法、当該減圧と送気とを組み合わせる方法を用いても良い。弾性部材30は、例えば、成形後のトレイ10を金型内にセットして、金型とトレイ10との隙間に弾性部材30を構成可能な組成物を供給して、当該組成物を架橋させる方法などにより成形できる。かかる成形法を用いると、トレイ10と弾性部材30とを容易に一体化することができる。なお、トレイ10と弾性部材30との密着性を高めるため、成形後のトレイ10における弾性部材30との密着領域に、プライマーを塗布してから金型にセットして、弾性部材30を構成する組成物を金型内に供給しても良い。また、トレイ10と弾性部材30とを別々に成形し、両者10,30を貼り合わせても良い。
【0032】
次に、トレイ10の材料としてポリカーボネート系樹脂を、弾性部材30の材料としてシリコーンエラストマーをそれぞれ用い、二色成形法によりカバー部材1を製造する好適な製造方法につき例示する。
【0033】
まず、トレイ10を賦形可能な金型内に、溶融状態のポリカーボネート樹脂を射出する。その後、金型を開くと、図3に示す形状のトレイ10が得られる。次に、カバー部材1の外側の面に、プライマーを塗布し、乾燥させる。次に、プライマーを塗布したトレイ10を、カバー部材1を賦形可能な別の金型内にセットし、当該金型内に溶融状態のシリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、品番:KE−2090−40A/B)を供給する。当該シリコーン組成物が架橋した後に金型を開いて、トレイ10と弾性部材30とから成るカバー部材1を得る。トレイ10に着色または加飾を施す必要がある場合には、弾性部材30との一体成形に先立ち、トレイ10を塗料中にディッピングし、塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。また、弾性部材30の外面に加飾する必要がある場合には、トレイ10との一体成形後に、当該外面に塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。さらには、溶融状態のポリカーボネート樹脂中に顔料を練り込んでおいてから成形し、弾性部材30の加飾を実現しても良い。
【0034】
<第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材について説明する。なお、当該第二の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0035】
図7は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材の図5と同じ方向から見た断面図である。
【0036】
第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(カバー部材)1では、第一の実施の形態と比較して、トレイ10の側壁12の高さが低い。図7に示すように、トレイ10の側壁12の上端部と、操作面側外縁部33の内側との間に、トレイ10の存在しない部分(距離: L)がある。このため、弾性部材30の側壁32は、矢印Qで示すように、トレイ10の側壁12の上端部から先の部分において、第一の実施の形態よりも大きく変形可能である。この結果、電子機器50とカバー部材1との着脱を長期間繰り返しても、カバー部材1は、操作面側外縁部33が裂ける危険性を低くでき、長期間の使用に耐えることができる。
【0037】
<第三の実施の形態>
次に、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材について説明する。なお、当該第三の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0038】
図8は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を内側から見た斜視図である。図9は、図8に示す電子機器用カバー部材を外側から見た斜視図である。
【0039】
第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、「カバー部材」)1は、トレイ10aと弾性部材30とを備える成形体である。図8のカバー部材1において斜線で示すように、トレイ10aは、第一の実施の形態に係るカバー部材1を構成するトレイ10と異なり、長手方向の側壁12の切り欠きを小さくして、貫通孔38の長手方向側面に、追加の側壁12aを有する。図8では明示されていないが、側壁12aは、互いに対向する位置に、一対で形成されている。貫通孔19は、その開口部分をメッシュ61にて塞ぐシート60を、トレイ10aの内側から貼付して備える。このため、貫通孔19の位置が電子機器50のマイクの位置の場合に有効である。また、図9に示すように、弾性部材30は、その底板31の外側に、突出領域の一例である花柄模様領域46を備える。突出領域は、第一の実施の形態にて説明した網目領域45の形態に限定されず、花柄模様領域46のような別の形態で形成しても良い。さらに、図8に示すように、弾性部材30は、その側壁32の外面に、底板31方向に長い第一線状突出部47を、側壁32の長さ方向に向けて複数並べて備える。第一線状突出部47は、花柄模様領域46と同様、突出領域の一形態である。第一線状突出部47は、電子機器50を覆うカバー部材1を手にした際に、滑り止めとして機能する。また、図9に示すように、弾性部材30の側壁32の外側であってトレイ10の側壁12を被覆している領域にのみ、突出領域の一形態として、側壁32の長さ方向に向けて複数の第二線状突出部48を備えることもできる。第二線状突出部48は、トレイ10の側壁12の存在しない箇所に設けていないので、電子機器50とカバー部材1との着脱の際、側壁32の変形に悪影響を及ぼさない。この実施の形態に係るカバー部材1は、突出領域として、花柄模様領域46、第一線状突出部47および第二線状突出部48を備えるが、これらの内の少なくともいずれか1つを備えても良い。また、第一線状突出部47および第二線状突出部48は、複数本ではなく、1本のみでも良い。
【0040】
図10は、図8に示す電子機器用カバー部材をC−C線で切断した際の領域Yの断面図である。
【0041】
トレイ10aの側壁12は、弾性部材30の側壁32よりも低く、操作面側外縁部33の内面に達していない。この点は、第二の実施の形態に係るカバー部材1と同様である。図10に示すように、トレイ10aの側壁12は、底板11側から先端に向かって、厚さt1、t2、t3の順に変化する(t3<t1<t2)。すなわち、側壁12は、底板11側から、位置Rにて一旦厚くなり、位置Sにて大幅に薄くなる。トレイ10aの位置Sから上方部分を、この実施の形態では、薄肉部62と称する。薄肉部62の好適な厚さt3は、厚さt1が0.3〜1.0mmの範囲にある場合、t1より小さいという条件において0.1〜0.6mmの範囲である。側壁12の外側を覆う弾性部材30の側壁32は、トレイ10aの側壁12の外側を滑らかに覆っており、側壁12の厚さt1の部分において厚さt4に、厚さt2およびt3の部分において厚さt5に、側壁12の先端から上方において厚さt6に変化する(t5<t4,t5<t6)。すなわち、側壁32は、底板31側から、位置Rにて一旦薄くなり、位置Tにて再び厚くなる。側壁32の厚さt6は、薄肉部62の厚さt3より厚いという条件において、好適には0.3〜1.2mmの範囲である。
【0042】
また、側壁32の厚さt6をt3+t5に設定して、薄肉部62の内面と、薄肉部62から上方の側壁32の内面とを略面一として、薄肉部62の内面とそれより上方の側壁32の内面とが段差にならないようにしている。このため、電子機器50の側面をカバー部材1の側面の内側に沿うように、カバー部材1を取り付けることができ、カバー部材1が電子機器50から容易に外れる危険性がない。さらに、位置Sから上方をより薄くしているので位置Sから上方の可撓性が大きく、かつ底部から位置Tまでをトレイ10aの側壁12で内張りしているので、電子機器50の側方からの耐衝撃性も高くなる。なお、位置Sより底部の方向の厚さの変化は、上記変化に限定されない。例えば、位置Sと位置Tとの間の構成を、カバー部材1の底部まで延長しても良い。また、位置Sから底部までにおいて、トレイ10aの側壁12を緩やかに厚くしても良い。
【0043】
図11は、図9に示す電子機器用カバー部材をD−D線で切断した際の領域Zの断面図である。
【0044】
弾性部材30は、底板31からトレイ10aの貫通孔17の内周面を覆って貫通孔37を形成している。貫通孔37の内周面は、段差を有している。弾性部材30は、トレイ10aの内側近傍(当該内側から厚さHまで)を厚さWにて覆い、外側近傍を厚さWよりも厚く覆う。この結果、貫通孔37の開口部外側は、開口部内側に比べて狭くなっている。この結果、貫通孔37を通じて、電子機器50側に埃等が入りにくくなる。図11に示す構成は、貫通孔37のみならず、他の貫通孔35,36,39の1以上にも採用することができる。
【0045】
<第四の実施の形態>
次に、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用カバー部材について説明する。なお、当該第四の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0046】
図12は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用カバー部材の開口面側から見た斜視図である。
【0047】
図12に示すように、トレイ10は、その内側の面であって電子機器50の電池収納部55の周囲に相当する位置に、例えば、弾性部材にて形成される閉ループ形状の防水シール部材70を備える。防水シール部材70は、トレイ10と接着剤を介して、あるいは溶着にて接合するのが好ましい。なお、防水シール部材70は、トレイ10の内側の面に形成される閉ループ状の突出部を覆うように、トレイ10の内側の面に備えても良い。
【0048】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0049】
例えば、網目領域45を構成する突出ライン45aを底板31の一辺に平行または垂直に延ばすこともできる。また、電子機器50のボタン、スピーカ、カメラのレンズ等の位置によっては、トレイ10,10aに、貫通孔16等を設けず、電子機器50の操作面51側のみを開口しても良い。弾性部材30がトレイ10,10aの貫通孔15,16,17,19の内周端を覆う場合において、弾性部材30は、当該内周端からトレイ10,10aの内面にまで達するように形成しても良い。これによって、防水効果、防塵効果をより高めることができる。さらには、弾性部材30は、トレイ10,10aの貫通孔15,16,17,19の内周端さえも覆っていなくても良い。弾性部材30は、トレイ10,10aの開口側内面よりもその反対側の面を広く覆う限り、第一の実施の形態と比較して、トレイ10,10aの開口側内面の一部をより広く覆い、あるいはトレイ10,10aの開口側内面と反対側の面をより露出しても良い。弾性部材30は、その側壁32を、必ずしもトレイ10,10aの側壁の高さ以上に形成しなくても良い。また、弾性部材30は、必ずしも、その側壁32から連接して、電子機器50の操作面51の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部33を備えていなくても良い。さらには、トレイ10,10aと弾性部材30とは互いに密着しているのが好ましいが、密着していない領域があっても良い。
【0050】
上記の第一の実施の形態、第二の実施の形態、第三の実施の形態および第四の実施の形態は、互いにそれぞれの特徴を一以上組み合わせても良い。例えば、第一の実施の形態に係るカバー部材1は、電池蓋58を兼用しているが、他の実施の形態において電池蓋58を兼用しても良い。また、第三の実施の形態において存在する図8に示す側壁12aは、第一の実施の形態あるいは第四の実施の形態に係るカバー部材1に備えても良い。第四の実施の形態に係るカバー部材1に備える防水シール部材70は、第一〜第三の実施の形態に係る各カバー部材1に備えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電子機器の保護カバーとして利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 カバー部材(電子機器用カバー部材)
10,10a トレイ
12 側壁(トレイの側壁)
12a 側壁
15,16,17,19 貫通孔
30 弾性部材
31 底板
32 側壁(弾性部材の側壁)
33 操作面側外縁部
35,36,37,38,39 貫通孔
45 網目領域(突出領域の一例)
45a 突出ライン
46 花柄模様領域(突出領域の一例)
47 第一線状突出部(突出領域の一例)
48 第二線状突出部(突出領域の一例)
50 電子機器
51 操作面
55 電池収納部
56 電池
58 電池蓋
62 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、
少なくとも上記操作面の方向に開口するトレイと、
当該トレイよりも低硬度であると共に上記トレイの開口側内面の反対側の面を覆う弾性部材と、
を備え、
上記弾性部材は、上記トレイの開口側内面よりも当該開口側内面と反対側の面を広く覆い、
上記弾性部材は、上記トレイを覆う底板または側壁の外側に、上記トレイと反対方向に突出する突出領域を備えることを特徴とする電子機器用カバー部材。
【請求項2】
前記突出領域は、前記弾性部材の四角形状の前記底板において、前記底板の一辺に対し斜め方向に伸びる複数本の突出ラインから構成される網目領域であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記突出領域として、前記側壁に設けられる1以上の第一線状突出部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記突出領域として、前記側壁であって前記トレイの側壁と接する領域に設けられる1以上の第二線状突出部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項5】
前記弾性部材の側壁は、前記トレイの側壁の高さ以上に形成され、
前記弾性部材は、前記弾性部材の側壁から連接して、前記電子機器の前記操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項6】
前記弾性部材の側壁は、前記トレイの側壁を超えて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項7】
前記トレイの側壁の上方に薄肉部を備え、
当該薄肉部の上方に延出する前記弾性部材の側壁の内面と、上記薄肉部の内面とを面一に形成して成ることを特徴とする請求項6に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項8】
前記電子機器の外部アクセス部の位置、大きさおよび形状に応じて、当該外部アクセス部の1以上を開口するための貫通孔を備え、
前記弾性部材は、1以上の上記貫通孔の周囲において、前記トレイの開口の深さ方向に段差をもって覆っていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材が電池収納部の開口面を覆う蓋を兼ねることを特徴とする電池蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−186595(P2012−186595A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47371(P2011−47371)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】