説明

電子機器用カバー部材および電池蓋

【課題】
電子機器の落下に対する防護性を高め、香りを発することのできる電子機器用カバー部材および電池蓋を提供する。
【解決手段】
本発明は、電子機器3の操作面側を開口して当該電子機器3の外側を覆う電子機器用カバー部材1および電池蓋40であって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイ10と、トレイ10よりも低硬度であると共にトレイ10の開口面の反対側の面を覆う弾性部材20と、を備え、トレイ10および弾性部材20の少なくとも一方に、香料16を含む香料部14,15を備える電子機器用カバー部材1および電池蓋40に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用カバー部材および電池蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきており、それに伴い、小型電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。小型電子機器を落下あるいは何かに接触させた際にその破損から防護する方法の一つに、小型電子機器をクッション性の高いカバーあるいはケースにて覆う方法が考えられる。
【0003】
例えば、小型電子機器の操作面のみを開口し、側面から裏面までを覆う形状であって、開口部分の伸縮性を高めて、小型電子機器の着脱を容易にした電子機器用カバーが知られている(特許文献1を参照)。また、携帯電話の操作面側を開口した比較的硬質の材料(プラスチックあるいは金属)から構成される携帯電話用の容器および保持具も知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−027076号公報
【特許文献2】特開2000−201210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来から公知のカバーには、次のような欠点がある。特許文献1に開示されるカバーは、布のような柔らかい材料を縫合して形成されるものであるため、破れやすく、かつ落下時の衝撃から電子機器を保護するには十分な強度を有していない。また、特許文献2に開示される容器および保持具(ここでは、「容器」と称する)は、比較的硬質な材料から構成されているため、電子機器を落下させたときに、容器自体が破損しやすく、繰り返しの使用に耐え得ない。
【0006】
ところで、香料は、ヒトの嗅覚を刺激し、直接的に脳に働きかけ、ストレスの解消、意欲や食欲の活性化をもたらす手段として、例えば、匂い袋、香水、芳香剤などの商品の形で市場に出回っている。しかし、上記従来からの公知のカバーは、その構成材料の特有のにおいを発するのみであり、ユーザの好みに合った香りを発しない。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器の落下に対する防護性を高め、香りを発することのできる電子機器用カバー部材および電池蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイと、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口面の反対側の面を覆う弾性部材とを備え、トレイおよび弾性部材の少なくとも一方に、香料を含む香料部を備える電子機器用カバー部材である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、香料の異なる香料部を複数備え、電子機器の電池または回路基板と対向可能な位置に、複数の香料部をそれぞれ配置した電子機器用カバー部材である。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、香料部を、トレイの一部に香料を分散させて形成した電子機器用カバー部材である。
【0011】
本発明の一形態は、上記の電子機器用カバー部材が電池収納部の開口面を覆う蓋を兼ねた電池蓋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器の落下に対する防護性を高め、電子機器の持ち運びや使用時に香りを楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た図であり、電子機器との取り付け状況を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態のA−A線断面図である。
【図4】図4は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た図であり、電子機器との取り付け状況を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る電子機器用カバー部材および電池蓋の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
<第一の実施の形態>
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た図であり、電子機器との取り付け状況を示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0016】
(1)電子機器用カバー部材の構造
第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、電子機器3の操作面側を開口して当該電子機器3の外側を覆うことのできる形態を有する。カバー部材1は、少なくとも操作面の方向に開口するトレイ10と、トレイ10よりも低硬度であると共にトレイ10の開口面の反対側の面を覆う弾性部材20とを備える。
【0017】
トレイ10は、電子機器3の背面側に位置する底板11と、底板11から電子機器3の外側面に向かって延出する側壁12とを連接して構成される部材である。側壁12は、電子機器3の一対の側面、この実施の形態では短辺側の両側面を十分に覆う一方、他方の一対の側面、この実施の形態では長辺側の両側面を大きく切り欠いた形状を有する。トレイ10は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも特に好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成る。トレイ10の底板11および側壁12の厚さは、電子機器3の大きさ、重量等によって適正な厚さに設計可能である。例えば、電子機器3の厚さが8〜20mm、短辺が50〜200mm、長辺が80〜300mmの範囲にある場合、樹脂製のトレイ10の底板11および側壁12は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0018】
トレイ10は、電子機器3の長辺側の切り欠いた部分を有する2つの側壁12に、電子機器3側に向かって立設される規制板13を1つずつ備える。規制板13は、カバー部材1の内側にあるトレイ10と電子機器3の外面との固定を確実にし、電子機器3がカバー部材1から容易に脱落しないようにするための部分である。なお、規制板13は、トレイ10の長辺側の側壁12ではなく、底板11の長辺側に形成されていても良い。
【0019】
トレイ10は、その内面の両短辺側に、香料部の一例である2枚の芳香シート14,15をそれぞれ分離して備える。芳香シート14は、トレイ10の底板11において、図1に示すように電子機器3をカバー部材1に取り付けた際に、電子機器3内の電池4と対向する位置に固定されている。また、芳香シート15は、トレイ10の底板11において、電子機器3を図1に示す状態から短辺方向をもう一方の短辺方向に向けて180度反転してカバー部材1に取り付けた際に、電子機器3内の電池4と対向する位置に固定されている。電子機器3において、発熱源の一つは電池4である。このため、電池4からの熱を利用して、芳香シート14,15からの香り成分を揮発させることができる。また、芳香シート14,15中の各香料16の種類を変え、芳香シート14,15を上記の位置に配置することにより、ユーザは電子機器3の取り付け方向を変えて、異なる香りを感じることができる。
【0020】
芳香シート14,15は、樹脂、エラストマー等の材料から好適に構成され、例えば、発泡ウレタンエラストマー等に代表される多孔性の材料から特に好適に構成されるシートである。芳香シート14,15の形状、大きさは、カバー部材1の大きさ等の諸条件により適宜変更できる。芳香シート14,15の厚さを例に挙げると、当該厚さは、トレイ10内に電子機器3を取り付けることができ、かつ十分な香料16を含めることのできる大きさに設定でき、一例として0.1〜1.5mmの範囲とすることができる。
【0021】
芳香シート14,15に分散される香料16は、その形態として、図1に示すような粒子状の他、繊維状あるいはフィルム状でも良い。香料16は、香料成分のみから成っていても良いが、香料成分とそれを担持する担体として、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂等の樹脂、あるいは無水ケイ酸等に代表されるセラミックスとを用いた複合体でも良い。香料16に含まれる香料成分としては、天然香料、合成香料、またはこれらを組み合わせた調合香料等を適宜選択して用いることができる。香料成分としては、例えば、シトラス系香料成分、グリーン系香料成分、フルーティ系香料成分、フローラル系香料成分、ムスキー系香料成分、ウッディ系香料成分、スウィート系香料成分等を好適に挙げることができる。シトラス系香料成分としては、例えば、リモネン、レモン油、オレンジ油、ビターオレンジ油、スイートオレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、ライム油、シトラール、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−テルピネオール等が挙げられる。グリーン系香料成分としては、例えば、シス−3−ヘキセノール、ガルバナム油、スターアニス油、セージ油、バイオレットリーフ油、ローズマリー油、バジル油、ラバンジン油、ラベンダー油、ローレル油、カシスベース345、酢酸スチラリル、酢酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、ローズオキサイド等が挙げられる。フルーティ系香料成分としては、例えば、γ−ウンデカラクトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ラズベリーケトン等が挙げられる。フローラル系香料成分としては、例えば、ローズ油、ジャスミンアブソリュート、リナロール、エチルリナロール、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、シクラメンアルデヒド、イランイラン油、カミツレ油、ゼラニウム油、タジェート油、ネロリ油、酢酸ベンジル、イソイースーパー、クマリン、ヘリオトロピン、オリス油、パチュリ油、α−アミルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール等が挙げられる。ムスキー系香料成分としては、例えば、エチレンブラシレート、アンブレットリド、インドール、アンブレットシード油等が挙げられる。ウッディ系香料成分としては、例えば、アンブロキサン、イソカンフィルシクロヘキサノール、カシュメラン、グリサルバ、サンタロール、サンダロール、セドロールメチルエーテル、バンガロール、アンブレットシード油、グアヤックウッド油、サンダルウッド油、セダーウッド油、ヒノキ油、ベチパー油等が挙げられる。スウィート系香料成分としては、例えば、エチルバニリン、エチルマルトール、バニリン、マルトール、ラズベリーケトン、オークモスアブソリュート、トンカビーンズアブソリュート、バルサムトルー、バルサムペルー、ベンゾイン等が挙げられる。
【0022】
香料成分の芳香シート14,15中に占める重量比率は、0.1〜10重量%の範囲が好ましく、特に、1〜4重量%の範囲が好ましい。上記に例示した香料成分は、長期間、香料成分の揮発を持続可能とすることに価値を置く場合には、揮発性の低いものである方が好ましい。逆に、短期間でカバー部材1の交換をすることを前提にする場合には、揮発性の高いものである方が好ましい。
【0023】
弾性部材20は、電子機器3の背面側に位置する底板21と、底板21から電子機器3の外側面を覆う側壁22と、側壁22から電子機器3の操作面の外縁の全部を覆う操作面側外縁部23とを連接して構成されるボート形状を有する部材である。弾性部材20は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどから好適に構成され、例えば、ウレタン系あるいはシリコーン系エラストマーから特に好適に構成される。トレイ10の底板11および側壁12の最も厚い部分が0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲の場合、上記エラストマー製の弾性部材20の底板21および側壁22は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0024】
弾性部材20の側壁22は、トレイ10の側壁12の高さ以上に形成されている。トレイ10の側壁12の内で最も高い位置でも、弾性部材20の操作面側外縁部23の内側に接する位置である。これによって、少なくとも、操作面側外縁部23は、トレイ10と接しない部分となり、電子機器3との脱着の際に自由に変形できる。また、カバー部材1の側方は、弾性部材20の側壁22の内側にトレイ10の側壁12を接する二重構造となっているため、カバー部材1は、電子機器3の側面からの落下に対して、高い防護性を発揮できる。弾性部材20は、トレイ10の底板11および側壁12を完全に覆うが、それらの内側を完全に覆うことなく、当該内側の大部分を露出させる。このため、トレイ10の内側の面は、直接、電子機器3に接触する。なお、弾性部材20は、トレイ10に設けられる1以上の貫通孔からトレイ10の内側に向かって延出しても良い。
【0025】
図3は、図2に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態のA−A線断面図である。
【0026】
この実施の形態に係るカバー部材1は、電子機器3の電池収納部5に電池4を入れた状態にて電子機器3に取り付けることにより電池蓋40として機能するものである。このため、電子機器3に、カバー部材1以外に、電池4の脱落を防止するための別の蓋を必要としない。ただし、カバー部材1が電池蓋40を兼ねることは、必須ではない。電子機器3の電池収納部5に、専用の電池蓋を備え、その上からカバー部材1を取り付けても良い。カバー部材1が電池蓋40を兼ねる構成は、以後の実施の形態でも同様である。
【0027】
(2)電子機器用カバー部材の製造方法
トレイ10は、例えば、金型内に溶融樹脂を射出して成形する射出成形法、軟化させた板状の樹脂を金型内で型締めする成形法にて好適に製造できる。また、後者の成形法の場合には、一方の金型側から減圧する方法、一方の金型側から高圧気体を送気する方法、当該減圧と送気とを組み合わせる方法を用いても良い。弾性部材20は、例えば、成形後のトレイ10を金型内にセットして、金型とトレイ10との隙間に弾性部材20を構成可能な組成物を供給して、当該組成物を架橋させる方法などにより成形できる。かかる成形法を用いると、トレイ10と弾性部材20とを容易に一体化することができる。なお、トレイ10と弾性部材20との密着性を高めるため、成形後のトレイ10における弾性部材20との密着領域に、プライマーを塗布してから金型にセットして、弾性部材20を構成する組成物を金型内に供給しても良い。また、トレイ10と弾性部材20とを別々に成形し、両者10,20を貼り合わせても良い。
【0028】
トレイ10および弾性部材20の製造と併行し、以下の要領にて、芳香シート14,15を製造する。芳香シート14,15を製造するための樹脂若しくはエラストマー製の大判シートを、香料16を含む液体中に漬ける。所定時間経過後に、当該大判シートを液体から引き上げ、自然乾燥させる。この処理によって、香料16を分散した状態の大判シートが出来上がる。次に、大判シートを芳香シート14,15の形態に切断する。次に、芳香シート14,15を、トレイ10の内面に、接着剤若しくは両面テープを介して貼り付ける。なお、芳香シート14,15は、トレイ10の成形後に、その内面に固定し、次に弾性部材20とトレイ10との一体化を行っても良い。
【0029】
芳香シート14,15の別の製造方法として、芳香シート14,15用の樹脂組成物若しくはエラストマー組成物に、固形の香料16を練り込み、大判シートを成形することもできる。その後、当該大判シートを芳香シート14,15の形態に切断する。
【0030】
<第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバーについて説明する。なお、当該第二の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0031】
図4は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た斜視図である。
【0032】
第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(カバー部材)1は、第一の実施の形態と異なり、芳香シート14,15を、トレイ10の外面に固定してその外側を弾性部材20にて被覆する形態を備える。この結果、芳香シート14,15は、トレイ10と弾性部材20との間に存在する。弾性部材20の少なくとも芳香シート14,15の領域に1若しくは複数の貫通孔を設けることにより、芳香シート14,15から外に向けて香りを発散しやすくなる。カバー部材1は、第一の実施の形態と同様の方法にて製造できるが、芳香シート14,15のトレイ10への固定は、弾性部材20とトレイ10との一体化の前に行うのが好ましい。加えて、芳香シート14,15をトレイ10の外側に配置する場合、製造工程中において、弾性部材20の未硬化組成物をその表面に供給し、加熱することになる。芳香シート14,15の熱損傷を防止するためには、芳香シート14,15のシート、香料、芳香シート14,15とトレイ10とを接着する接着剤として耐熱性の高いものを用いるのが好ましい。なお、芳香シート14,15を弾性部材20の外側に貼り付けても良い。その場合には、第一の実施の形態と同様、トレイ10と弾性部材20との一体化後に、芳香シート14,15をカバー部材1に固定することになる。
【0033】
<第三の実施の形態>
次に、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用カバーについて説明する。なお、当該第三の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0034】
図5は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た図であり、電子機器との取り付け状況を示す斜視図である。
【0035】
第三の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(カバー部材)1は、第一の実施の形態と異なり、カバー部材1の平面形状を略正方形とし、4枚の芳香シート60,61,62,63をトレイ10内面の各辺に近接させて配置した形態を備える。芳香シート60,61,62,63は、前記各実施の形態にて説明した芳香シート14,15と同様のシートである。このカバー部材1は、略正方形の平面形状を持つ電子機器50を取り付ける保護カバーとして使用するのに好適である。芳香シート60,61,62,63は、電子機器50内の電池51に対向する領域に配置されており、電子機器50を矢印で示すようにその面内で90度回転させて合計4パターンにてカバー部材1に取り付けても電池51に対向可能な位置に固定されている。芳香シート60,61,62,63は、それぞれ、異なる香料成分を含む方が好ましいが、一部重複する香料成分を含んでも良い。また、芳香シート60,61,62,63は、4つに限定されず、その内の1つ、2つまたは3つを除外しても良い。この結果、電池51が芳香シートの存在しない領域に対向するように、電子機器50をカバー部材1に取り付けることにより、ユーザは、香りを発散させないという選択をすることができる。
【0036】
なお、カバー部材1を、電子機器の形態に合わせて、平面形状にて略正方形とせず、略正三角形、略正五角形あるいは略正六角形等の正多角形の形態としても良い。その場合、芳香シートも、その辺の数あるいはそれ以下の数で、トレイ10若しくは弾性部材20に固定することができる。
【0037】
第三の実施の形態に係るカバー部材1の製造方法は、第一の実施の形態に係るカバー部材1のそれと同様である。
【0038】
<第四の実施の形態>
次に、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用カバーについて説明する。なお、当該第四の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0039】
図6は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用カバー部材を開口面側から見た斜視図である。
【0040】
第四の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(カバー部材)1は、第一の実施の形態と異なり、芳香シートを、トレイ10の内部に挿入可能な形態を備える。トレイ10の厚さは、芳香シート65の厚さよりも大きい。トレイ10は、芳香シート65を挿入および取り出し可能なシート挿入領域を備え、弾性部材20は、当該シート挿入領域に通じる挿入口70を備える。なお、トレイ10にシート挿入領域を備えず、弾性部材20にシート挿入領域を備えても良い。このような構成によれば、ユーザは、自身の好みに合った香料成分を含む芳香シート65を選択して、カバー部材1に装填可能である。
【0041】
第四の実施の形態に係るカバー部材1の製造方法は、第一の実施の形態に係るカバー部材1のそれと同様であるが、トレイ10にシート挿入領域を形成する場合、その形成工程は、トレイ10の成形工程と、トレイ10と弾性部材20との一体化工程との間に行うのが好ましい。また、弾性部材20にシート挿入領域を形成する場合、その形成工程は、トレイ10と弾性部材20との一体化工程の後に行うのが好ましい。
【0042】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0043】
例えば、弾性部材20は、その側壁22を、必ずしもトレイ10の側壁の高さ以上に形成しなくても良い。また、弾性部材20は、必ずしも、その側壁22から連接して、電子機器3,50の操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部23を備えていなくても良い。トレイ10の側壁12の一部を除外して、電子機器3,50の操作面以外の方向に開口しても良い。トレイ10と弾性部材20とは、互いに密着しているのが好ましいが、密着していない領域があっても良い。芳香シート14,15,60,61,62,63は、トレイ10と弾性部材20の両方に備えても良い。香料部は、芳香シート14,15,60,61,62,63以外の形態、例えば、トレイ10若しくは弾性部材20の表面に、香料16を埋め込んで香りを発する領域としても良い。また、樹脂製、エラストマー製、金属箔から成るシートを、香料16を分散させた接着剤を介して、トレイ10若しくは弾性部材20に固定しても良い。この場合、上記シートと接着剤との全体を香料部と称しても良く、また、接着剤の部分のみを香料部と称しても良い。
【0044】
上述の各実施の形態では、芳香シート14,15,60,61,62,63は、トレイ10および/または弾性部材20において、電池4,51と対向する位置に配置されているが、電池4,51以外の発熱源の一例である回路基板と対向する位置に配置されていても良い。
【0045】
上記の第一の実施の形態、第二の実施の形態、第三の実施の形態および第四の実施の形態は、互いにそれぞれの特徴を一以上組み合わせても良い。例えば、第一の実施の形態に係るカバー部材1は、電池蓋40を兼用しているが、他の実施の形態において電池蓋40を兼用しても良い。また、第三の実施の形態において、第二の実施の形態と同様、芳香シート60,61,62,63を、トレイ10の外側に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、電子機器の保護カバーとして利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 カバー部材(電子機器用カバー部材)
3 電子機器
4 電池
5 電池収納部
10 トレイ
14,15 芳香シート(香料部の一例)
16 香料
20 弾性部材
40 電池蓋
50 電子機器
51 電池
60,61,62,63 芳香シート(香料部の一例)
65 芳香シート(香料部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、
少なくとも上記操作面の方向に開口するトレイと、
当該トレイよりも低硬度であると共に上記トレイの開口面の反対側の面を覆う弾性部材と、
を備え、
上記トレイおよび上記弾性部材の少なくとも一方に、香料を含む香料部を備えることを特徴とする電子機器用カバー部材。
【請求項2】
前記香料の異なる前記香料部を複数備え、
前記電子機器の電池または回路基板と対向可能な位置に、複数の前記香料部をそれぞれ配置していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項3】
前記香料部は、前記トレイの一部に前記香料を分散させて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材が電池収納部の開口面を覆う蓋を兼ねることを特徴とする電池蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222748(P2012−222748A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89487(P2011−89487)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】