説明

電子機器用冷却装置及びフィルター目詰まり検出方法

【課題】電子機器用筐体の内部にフィルターを介して外気を吸気すると共に外部へ排気する電子機器用冷却装置において、突発的な外乱の影響を受けることなく、安定かつ正確なフィルター目詰まり検出が可能な電子機器用冷却装置を提供すること。
【解決手段】ハウジング41内に形成した葛折状の通気路41aの一端に小径の通気孔43aを設けると共に他端に風量センサー42を設けてなる風量センサー部4をフィルター22から離間して設け、ファン部3の駆動によって通気孔43aと通気路41aを介して電子機器用筐体1の内部へ流入する外気の流量に基づいてフィルター22の目詰まり状態を風量センサー42で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン及びフィルターを備えた電子機器用冷却装置及びフィルター目詰まり検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパーソナルコンピュータや、増幅器、プロジェクター等の電子機器は、その内部を冷却するために、ファン及びフィルターを実装して、電子機器用筐体内へ外気を通気させる電子機器用冷却装置が取り付けられている。
【0003】
このような電子機器用冷却装置は、従来、フィルターの目詰まり状態を検出する手段を備えたものがあり、例えば、ファンの近傍に風速センサーを設置して、フィルターの目詰まりによって生じるケーシング内の空気流の減少に基づいて検出している(例えば特許文献1参照)
【0004】
また、他の先行例として、空気清浄機の吸入側ダクトを正、副フィルタ流路に区画し、副フィルタに感圧スイッチを設けて、副フィルタ流路の流量分担が増加したとき、その風圧により感圧スイッチが作動することで、正フィルタの目詰まり状態を検出している(例えば特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】実開昭57―042316号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開平07―213840号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した何れの電子機器用冷却装置は、フィルターを通過する空気の流量を直接検出していることから、吸気孔近くを人が通ったときや、吸気孔にエアコン等による風が断続的にあたった場合など、外部からの送風の変化にリニアに反応して誤動作する惧れがあった。
【0007】
また、常時、空気流にセンサーがされされているため、フィルターで濾過されなかった微細な塵埃や、電子機器の操作部や開閉部から侵入してきた塵埃の付着によるセンサーの感度変化もあった。
【0008】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる電子機器用冷却装置及びフィルター目詰まり検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる電子機器用冷却装置及びフィルター目詰まり検出方法は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる電子機器用冷却装置は、電子機器用筐体の内部と外部とを連通させる吸気孔に隣接して設けられ塵埃を除去させるフィルターと、そのフィルターを介して清浄させた外気を前記電子機器用筐体の内部に吸気させると共に前記電子機器用筐体の内部の空気を外部へ排気させるファンと、前記電子機器用筐体の内部に外気を吸気可能に設けられると共に前記フィルターから離間させて設けられた小径の通気孔と、その通気孔を介して前記電子機器用筐体の内部へ流入される外気の流量に基づいて前記フィルターの目詰まり状態を検出させる風量センサーとを備えてなることを特徴とする。
請求項2にかかる電子機器用冷却装置は、請求項1において、前記電子機器用筐体と一体または別体で形成されると共に前記通気孔が形成された略箱状のハウジングが前記電子機器用筐体の壁面に配設されると共に、そのハウジングに前記風量センサーが取着されていることを特徴とする。
請求項3にかかる電子機器用冷却装置は、請求項1または2において、前記通気孔と前記風量センサーとが直列状に配設されないようにずらして配置されていることを特徴とする。
請求項4にかかる電子機器用冷却装置は、請求項2または3において、前記ハウジングは、その内部に葛折状の通気路が形成されるように複数のリブがハウジング内面から立設され、前記通気路の一端側に前記通気孔が形成されると共に、前記通気路の他端側に前記風量センサーが配設されていることを特徴とする。
請求項5にかかる電子機器用冷却装置は、請求項4において、前記リブは、前記壁面と直交方向に立設されていることを特徴とする。
請求項6にかかる電子機器用冷却装置は、請求項2〜5の何れかにおいて、前記ハウジングが配設された壁面に、前記フィルターが配設されていると共に、対向した壁面に前記ファンが配設されていることを特徴とする。
請求項7にかかるフィルター目詰まり検出方法は、電子機器用筐体の内部にフィルターを介して外気を吸気すると共に外部へ排気する電子機器用冷却装置のフィルター目詰まり検出方法であって、前記フィルターと離間した別の通気経路から前記電子機器用筐体の内部へ流入した外気の流量に基づいて前記フィルターの目詰まり状態を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルターから離間して設けた小径の通気孔を介して、電子機器用筐体の内部へ流入する外気の流量に基づいてフィルターの目詰まり状態を風量センサーで検出するから、吸気孔近くを人が通ったときや、吸気孔にエアコン等による風が断続的にあたった場合など、外部からの送風の変化にリニアに反応することなく、したがって誤動作を防止することができる。
【0011】
また、通気孔を小径にすることで、電子機器用筐体の内部における通常時の空気流は、フィルターからの吸気によるものとなり(通気孔における吸気は無視し得るほど少ない)、常時、風量センサーが空気流にされされないから、フィルターで濾過されなかった微細な塵埃や、電子機器の操作部や開閉部から侵入してきた塵埃が風量センサーに付着することなく、長期に亘って初期状態時の感度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明にかかる電子機器用冷却装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施の形態にかかる電子機器用冷却装置は、電子機器用筐体1と、フィルター部2と、ファン部3と、風量センサー部4とを備えて構成される。
【0014】
電子機器用筐体1は、例えばパーソナルコンピュータや、増幅器、プロジェクター等の機能を実現するための回路基板等を内部に実装させるもので、図1に示すように、その外観形状が略箱状に形成され、一壁面に後述するフィルター部2と風量センサー部4とが配設されると共に、対向する他壁面に後述するファン部3が配設されている。
【0015】
フィルター部2は、フィルターカバー21と、フィルター22とを備えてなる。
フィルターカバー21は、複数の吸気孔21aを設けた平面部の周囲に側壁を形成させて縦断面視略コ字状に形成され、電子機器用筐体1の一壁面の下部に形成された略矩形状の第1開口部1aの外側に重畳させるように、かつ、電子機器用筐体1の一壁面に側壁が着脱可能に係合されて取付られている。
【0016】
なお、このフィルターカバー21と電子機器用筐体1の一壁面との取り付けの係合は、ボルト・ナットによる係合や、係止爪と係止孔による係合等、特に限定されない。
フィルター22は、大気中の塵埃を除去可能な乾式タイプであり、フィルターカバー21内に着脱可能に挿嵌されている。
【0017】
ファン部3は、電動モータを備えその電動モータの駆動によって回動されるファン31と、このファン31を内装させたファンケーシング32とを備えて構成され、フィルター部2が配設された一壁面と対向した他壁面の上部に形成された第2開口部1bの外側に重畳させるように他壁面に取付られている。
【0018】
このように構成されたファン部3は、上記したフィルター22を介して清浄させた外気を電子機器用筐体1の内部に吸気させると共に電子機器用筐体1の内部の空気を外部へ排気させて電子機器用筐体1内を冷却させるようになっている。
【0019】
風量センサー部4は、ハウジング41と、風量センサー42とを備えてなる。
ハウジング41は、中空の略箱状に形成され、図2に示すように、その内部に葛折状の通気路41aが形成されるように複数のリブ41bがハウジング41内面から立設されてなる。
【0020】
そして、複数のリブ41bを立設させる対向した一対の壁面のうち、一方の壁面の端部に略矩形状の嵌合孔41cが形成され、その嵌合孔41cに小径の通気孔43aが設けられた略矩形状のキャップ部材43が着脱可能に嵌合されてなる。なお、このキャップ部材43と嵌合孔41cとの係合は、ボルト・ナットによる係合や、係止爪と係止孔による係合等、特に限定されない。
【0021】
なお、通気孔43aを設けたキャップ部材43を、ハウジング41に着脱可能に嵌合しているのは、キャップ部材43をハウジング41から取り外して、ハウジング41内の清掃を容易にするためで、特に必要なものではなく、ハウジング41に直接通気孔43aを設けても良い。
【0022】
また、キャップ部材43が配設された側と反対側の他方の壁面の端部に、後述する風量センサー42を取り付けるための通風孔41dが形成されている。この通風孔41dと上記した通気孔43aとは、図1に示すように、上下方向に位置ずれするように配置されており、通気孔43aからの吸気による空気流を葛折状の通気路41aと相俟って緩衝効果を向上させるようになっている。このようにすることで、外部からの送風の変化に風量センサー42がリニアに反応しないようになっている。
【0023】
風量センサー42は、被検出体である風量に対応したアナログ出力信号を出力する周知の風量センサー42で、電子機器用筐体1内に実装された図示しない制御部に送信されるようになっている。そして、この風量センサー42は、上記した通風孔41dに重畳させるようにハウジング41に接続されている。
【0024】
このように、葛折状の通気路41aが形成されたハウジング41によって、通気孔43aと風量センサー42とが直列状に配設されないようにずらして配置されており、通気孔43a近くを人が通ったときや、通気孔43aにエアコン等による風が断続的にあたった場合など、外部からの送風の変化に風量センサー42がリニアに反応しないようになっている。
【0025】
このように構成された風量センサー部4は、フィルター部2が配設された電子機器用筐体1の一壁面側のそのフィルター部2から離間した位置に形成された第3開口部1cに、電子機器用筐体1内に風量センサー42が配置されるように嵌合されている。
【0026】
このように、フィルター部2から離間した位置に風量センサー部4を配設することによって、フィルター部2の吸気孔21aと風量センサー部4の通気孔43aとが離間して、吸気孔21a近くを人が通ったときや、吸気孔21aにエアコン等による風が断続的にあたった場合など、外部からの送風の変化に風量センサー42がリニアに反応しないようになっている。
【0027】
また、リブ41bを電子機器用筐体1の壁面と直交方向に立設されるようにして葛折状の通気路41aを壁面方向に延設することで、電子機器用筐体1内のスペースを少なくしないようにしている。
【0028】
次に、以上のように構成された本実施の形態にかかる電子機器用冷却装置におけるフィルター22の目詰まり検出の一連動作を説明する。
【0029】
まず、ファン部3を駆動することによって、電子機器用筐体1内の空気は外部へ排気すると同時に、フィルター22を介して清浄した外気が電子機器用筐体1の内部に吸気する。このとき、フィルター22が目詰まりしていない場合は、通気孔43aがフィルター部2に対して小さいことと、通気孔43aがハウジング41内の葛折状の通気路41aを介していることと、通風孔41dと通気孔43aとが上下方向に位置ずれさせて配設させていることと、吸気孔21aから離間していることから、外気の吸気は行われず、(仮に吸気が行われているとしても、その風量は極少である。もっとも、通常時、通気孔43aから外気の吸気が行われないような設定(通気孔43aの径や配置)がされている)フィルター部2を介した外気のみ電子機器用筐体1の内部に入り込む。
【0030】
そして、フィルター22で濾過された塵埃によって徐々にフィルター22が目詰まりして取り込む外気の流量が減少する。その一方、通気孔43aから徐々に外気が電子機器用筐体1の内部に吸気されていく。
【0031】
すると、通気路41aを移動してきた空気によって風量センサー42が働き出し、風量に対応したアナログ出力信号を制御部に送信する。
【0032】
制御部は、予め設定された所定値にアナログ出力信号が達したら、フィルター22が目詰まりを起こしたと判断し、警告灯の点灯や、警告音の鳴音等の報知を行う。なお、フィルター22が目詰まりを起こしてから所定時間経過しても、ユーザーによって当該電子機器に何ら対策をしないと判断した場合に、当該電子機器の異常停止を行うように制御しても良い。この際も、警告灯の点灯や、警告音の鳴音等により報知を行うことが好適である。
【0033】
このように本実施の形態にかかる電子機器用冷却装置は、ハウジング41内に形成した葛折状の通気路41aの一端に小径の通気孔43aを設けると共に他端に風量センサー42を設けてなる風量センサー部4をフィルター22から離間して設け、ファン部3の駆動によって通気孔43aと通気路41aを介して電子機器用筐体1の内部へ流入する外気の流量に基づいてフィルター22の目詰まり状態を、上記した風量センサー42で検出するようになっているから、仮に、吸気孔21a近くを人が通ったり、吸気孔21aにエアコン等による風が断続的にあたったする等、外部からの送風の変化にリニアに反応することなく、常に安定した目詰まり検出ができるようになっている。
【0034】
また、常時、風量センサー42が空気流にされされないから、フィルター22で濾過されなかった微細な塵埃や、当該電子機器の操作部や開閉部から侵入してきた塵埃が風量センサー42に付着することなく、長期に亘って初期状態時の感度を維持することができる。
【0035】
また、ハウジング41が配設された壁面にフィルター22を配設すると共に、対向した壁面にファン31を配設していることから、フィルター22から吸気した外気が電子機器用筐体1の内部を効率よく移動して冷却効果を高めると同時に、ファン31からハウジング41を遠ざけて通気孔43aから外気の吸気が半強制的に行われないようしたから、精度の良い目詰まり検出を可能にすることができる。
【0036】
以上、本実施の形態にかかる電子機器用冷却装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0037】
例えば、本実施の形態においては、ハウジング41を電子機器用筐体1から突出するように設けられているが、ハウジング41を電子機器用筐体1の壁面と面一となるように設けても良い。また、図3に示すように、電子機器用筐体1内に設けても良い。この場合、電子機器用筐体1の壁面に通気孔1dを形成し、一方、ハウジング41‘は、その通気孔1dと重畳される部分を開口して構成することが好適である。なお、その他の構成は上記した実施の形態と同じであるため、図3において同一符号を付しておく。
【0038】
さらに、フィルター22と離間した別の通気経路から電子機器用筐体1の内部へ流入した外気の流量に基づいてフィルター22の目詰まり状態を検出するフィルター目詰まり検出方法でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態にかかる電子機器用冷却装置の模式的な縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿える拡大横断面図である。
【図3】他の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 電子機器用筐体
1a 第1開口部
1b 第2開口部
1c 第3開口部
2 フィルター部
21 フィルターカバー
21a 吸気孔
22 フィルター
3 ファン部
31 ファン
32 ファンケーシング
4 風量センサー部
41 ハウジング
41a 通気路
41b リブ
41c 嵌合孔
41d 通風孔
42 風量センサー
43 キャップ部材
43a 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器用筐体の内部と外部とを連通させる吸気孔に隣接して設けられ塵埃を除去させるフィルターと、
そのフィルターを介して清浄させた外気を前記電子機器用筐体の内部に吸気させると共に前記電子機器用筐体の内部の空気を外部へ排気させるファンと、
前記電子機器用筐体の内部に外気を吸気可能に設けられると共に前記フィルターから離間させて設けられた小径の通気孔と、
その通気孔を介して前記電子機器用筐体の内部へ流入される外気の流量に基づいて前記フィルターの目詰まり状態を検出させる風量センサーと
を備えてなることを特徴とする電子機器用冷却装置。
【請求項2】
前記電子機器用筐体と一体または別体で形成されると共に前記通気孔が形成された略箱状のハウジングが前記電子機器用筐体の壁面に配設されると共に、そのハウジングに前記風量センサーが取着されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器用冷却装置。
【請求項3】
前記通気孔と前記風量センサーとが直列状に配設されないようにずらして配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子機器用冷却装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、その内部に葛折状の通気路が形成されるように複数のリブがハウジング内面から立設され、前記通気路の一端側に前記通気孔が形成されると共に、前記通気路の他端側に前記風量センサーが配設されていることを特徴とする請求項2または3記載の電子機器用冷却装置。
【請求項5】
前記リブは、前記壁面と直交方向に立設されていることを特徴とする請求項4記載の電子機器用冷却装置。
【請求項6】
前記ハウジングが配設された壁面に、前記フィルターが配設されていると共に、対向した壁面に前記ファンが配設されていることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の電子機器用冷却装置。
【請求項7】
電子機器用筐体の内部にフィルターを介して外気を吸気すると共に外部へ排気する電子機器用冷却装置のフィルター目詰まり検出方法であって、
前記フィルターと離間した別の通気経路から前記電子機器用筐体の内部へ流入した外気の流量に基づいて前記フィルターの目詰まり状態を検出することを特徴とするフィルター目詰まり検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−201174(P2007−201174A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17972(P2006−17972)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】