電子機器用電池カバー
【課題】電子機器の落下に対する高い防護性、電子機器との着脱容易性、および電子機器に対する高い防水性を発揮する電子機器用電池カバーを提供する。
【解決手段】操作面の方向に開口するトレイ10と、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面およびその反対側の面の両面を少なくとも部分的に覆う弾性部材30とを備え、トレイの開口側内面において、電池収納部の開口部の外周囲と対向する位置に、その外周囲と接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部42を備え、防水シール部は、トレイの開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材から、トレイの開口側内面に回り込み、弾性部材と連接形成される弾性シール材43を備える。
【解決手段】操作面の方向に開口するトレイ10と、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面およびその反対側の面の両面を少なくとも部分的に覆う弾性部材30とを備え、トレイの開口側内面において、電池収納部の開口部の外周囲と対向する位置に、その外周囲と接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部42を備え、防水シール部は、トレイの開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材から、トレイの開口側内面に回り込み、弾性部材と連接形成される弾性シール材43を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器における電池を収納する電池収納部を覆う電子機器用電池カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、防水性の高い電子機器の需要が高くなってきている。電子機器の防水性を高めるには、電池の出し入れの度に開閉する電池収納部カバーと電池収納部との隙間の防水性が不可欠である。電池収納部への水の浸入は、即、電気的なショートにつながるからである。電池収納部への防水を図る代表的な構造として、例えば、電池収納部の外周面と電池カバーとの隙間に、弾性材料から成る環状の防水シール材を挟む構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、電子機器の薄型化、小型化および軽量化が進む中、携帯型の電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきている。それに伴い、電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。電子機器を落下あるいは何かに接触させた際にその破損から防護する方法の一つに、電子機器をクッション性の高いカバーあるいはケースにて覆う方法が考えられる。
【0004】
例えば、電子機器の操作面のみを開口し、側面から裏面までを覆う形状であって、開口部分の伸縮性を高めて、電子機器の着脱を容易にした電子機器用カバーが知られている(特許文献2を参照)。また、携帯電話の操作面側を開口した比較的硬質の材料(プラスチックあるいは金属)から構成される携帯電話用の容器および保持具も知られている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−134948号公報
【特許文献2】特開2002−027076号公報
【特許文献3】特開2000−201210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるように、電子機器の電池収納部内への浸水を防止する防水式電池カバーは、電子機器の一部を構成するカバー部材に過ぎず、電子機器の落下時の破損や故障を防ぐことはできない。また、特許文献2,3に開示される各カバーでは、電池収納部内への浸水を防止できない。電子機器の完全なる防水を図るだけであれば、電子機器全体を覆う密封可能な袋に電子機器を入れるのが良い。しかし、それでは、電子機器の取り出しや操作キーを入力しづらい等の煩わしさが増す。
【0007】
また、電子機器の落下時の衝撃を緩和し、かつ電池収納部の防水を図るために、比較的軟質なエラストマーにてカバーを形成し、当該カバーにより電子機器の裏面から側面までを密着して被覆する方法も考えられる。しかし、かかるカバーでは、防水性を高めることはできても、強度が足りず、電子機器への衝撃を十分に緩和できない。加えて、当該カバーは変形容易であるため、雨天時や入浴中に電子機器を使用している際、カバーと電子機器との間にずれが生じ、電子機器の電池収納部内へ浸水をもたらす危険性が高い。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器の落下に対する高い防護性、電子機器との着脱容易性、および電子機器に対する高い防水性を発揮する電子機器用電池カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するため、本発明の一形態は、電子機器の裏面に位置する電池収納部の開口部を覆うと共に、電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用電池カバーであって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイと、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面およびその反対側の面の両面を少なくとも部分的に覆う弾性部材とを備え、トレイの開口側内面において、電池収納部の開口部の外周囲と対向する位置に、当該外周囲に接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部を備え、防水シール部に、トレイの開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材から、トレイの開口側内面に回り込み、弾性部材と連接形成される弾性シール材を備える電子機器用電池カバーである。ここで、硬度は、トレイおよび弾性部材が両方とも樹脂あるいはエラストマーから構成され、あるいはトレイを樹脂で構成して弾性部材をエラストマーから構成する場合には、ショア硬度を意味する。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、トレイに貫通孔を備え、弾性シール材を、トレイの開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材から貫通孔を経由して形成した電子機器用電池カバーである。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、弾性シール材が、トレイの底板の内面よりも電子機器の外周囲側に突出する電子機器用電池カバーである。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、トレイには、電池収納部の開口部の外周囲と対向する位置に、外周囲側に突出する1または2以上の突出部を備え、防水シール部を、弾性シール材によって突出部の一部または全部を被覆する構成とした電子機器用電池カバーである。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の側壁をトレイの側壁の高さ以上に形成し、弾性部材に、弾性部材の側壁から連接して電子機器の操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部を備えた電子機器用電池カバーである。
【0014】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の側壁がトレイの側壁を超えて形成されている電子機器用電池カバーである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子機器の落下に対する高い防護性、電子機器との着脱容易性、および電子機器に対する高い防水性を発揮する電子機器用電池カバーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの開口面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用電池カバーの開口面と反対側から見た斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用電池カバーの構成部材の一つであるトレイの斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す電子機器用電池カバーを電子機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す電子機器用電池カバーのA1−A1線断面図およびその一部の段階的な拡大図である。
【図6】図6は、図5の拡大図に示す構造の変形例を示す図である。
【図7】図7は、図2に示す電子機器用電池カバーをB−B線で切断した際の領域Yの断面図である。
【図8】図8は、図1に示す電子機器用電池カバーをA2−A2線で切断した際の領域Xの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図5の一部と同様の段階的な拡大断面図である。
【図10】図10は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図9と同様の段階的な拡大断面図である。
【図11】図11は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバーを内側から見た斜視図である。
【図12】図12は、図11に示す電子機器用電池カバーの図8と同じ方向から見た断面図である。
【図13】図13は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの変形例をその内側から見た斜視図および電子機器用電池カバーを構成するトレイの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る電子機器用電池カバーの各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第一の実施の形態>
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの開口面側から見た斜視図である。図2は、図1に示す電子機器用電池カバーの開口面と反対側から見た斜視図である。図3は、図1に示す電子機器用電池カバーの構成部材の一つであるトレイの斜視図である。図4は、図1に示す電子機器用電池カバーを電子機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0019】
(1)電子機器用電池カバーの構造
第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(以後、単に、「電池カバー」と称する)1は、電子機器50の裏面に位置する電池収納部55(図5を参照)の開口部を覆うと共に、電子機器50の操作面51側を開口して電子機器50の外側を覆う構成であり、少なくとも操作面51の方向に開口するトレイ10と、トレイ10よりも低硬度であると共にトレイ10の開口側内面およびその反対側の面の両面を覆う弾性部材30とを備える。この実施の形態において、弾性部材30は、トレイ10の開口側内面と反対側の面(外側の面)を完全に覆う一方、トレイ10の開口側内面を部分的に覆う。
【0020】
トレイ10は、図1および図3に示すように、電子機器50の背面側に位置する底板11と、底板11から電子機器50の外側面に向かって延出する側壁12とを連接して構成される部材である。側壁12は、電子機器50の一対の側面、この実施の形態では短辺側の両側面を十分に覆う一方、他方の一対の側面、この実施の形態では長辺側の両側面を大きく切り欠いた形状を有する。トレイ10は、電子機器50の側面および底面に備えられる外部アクセス部の一例であるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板11および側壁12に貫通孔15,16,17,19を備える。ここで、「外部アクセス部」は、電池カバー1の外側と電子機器50との間にていずれか一方からアクセス可能な部分をいう。アクセスの手法は、直接的な接触のみならず、光、音等の入出も含まれる。なお、後述の変形例のように、トレイ10に、上記貫通孔15,16,17,19に限定されず、外部アクセス部と無関係に形成された貫通孔を備えても良い。トレイ10は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも特に好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成る。トレイ10の底板11および側壁12の厚さは、電子機器50の大きさ、重量等によって適正な厚さに設計可能である。例えば、電子機器50の厚さが8〜20mm、短辺が50〜200mm、長辺が80〜300mmの範囲にある場合、樹脂製のトレイ10の底板11および側壁12は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0021】
トレイ10は、電子機器50の長辺側の切り欠いた部分を有する2つの側壁12に、電子機器50側に向かって立設される規制板21を1つずつ備える。また、トレイ10は、電子機器50の短辺側の2つの側壁12に、内方に突出する規制凸部22を複数個備える。規制板21および規制凸部22は、電池カバー1の内側にあるトレイ10と電子機器50の外面との固定を確実にし、電子機器50が電池カバー1から容易に脱落しないようにするための部分である。なお、規制板21は、トレイ10の長辺側の側壁12ではなく、底板11の長辺側に形成されていても良い。
【0022】
トレイ10は、その開口側内面において、電子機器50に形成された電池収納部55の開口部の外周囲と対向する位置に、当該外周囲に接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部42を備える。図3に示すように、トレイ10は、底板11の内面であって電池収納部55の開口部の外周囲と対向する位置に、その外周囲側に突出する1つの閉ループ状の突出部23を備える。また、防水シール部42は、弾性材料から成る弾性シール材43を備える。防水シール部42は、突出部23と弾性シール材43とから構成され、突出部23の表面全体を弾性シール材43にて被覆して成る。
【0023】
弾性部材30は、電子機器50の背面側に位置する底板31と、底板31から電子機器50の外側面を覆う側壁32と、側壁32から電子機器50の操作面51の外縁の全部を覆う操作面側外縁部33とを連接して構成されるボート形状を有する部材である。弾性部材30は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどから好適に構成され、例えば、ウレタン系あるいはシリコーン系エラストマーから特に好適に構成される。トレイ10の底板11および側壁12の最も厚い部分が0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲の場合、上記エラストマー製の弾性部材30の底板31および側壁32は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。弾性部材30は、電子機器50の側面および底面に備えられるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板31および側壁32に、凸状被覆部34、貫通孔35,36,37,38,39を備える。凸状被覆部34は、電池カバー1から電子機器50にタッチして操作できるように、好適には他の部分よりも薄肉状に形成されている。貫通孔35,36,37,38,39は、そこを通して電子機器50に接触し、あるいは光を通過可能に形成される部分である。凸状被覆部34および貫通孔35,36,37,38,39の大きさ、形状、位置および個数は、電子機器50の形態に応じて変動する。
【0024】
弾性部材30の側壁32は、トレイ10の側壁12の高さ以上に形成されている。トレイ10の側壁12の内で最も高い位置でも、弾性部材30の操作面側外縁部33の内側に接する位置である。これによって、少なくとも、操作面側外縁部33は、トレイ10と接しない部分となり、電子機器50との脱着の際に自由に変形できる。弾性部材30の貫通孔35,36,37,39は、トレイ10の貫通孔15,16,17,19と同じ位置に、ほぼ同じ形状と大きさにて形成される。弾性部材30は、トレイ10の底板11および側壁12の各外側を完全に覆う一方、それらの内側を完全に覆うことなく、当該内側の大部分を露出させる。すなわち、トレイ10の開口側内面は、その反対側にあたる外側の面よりも弾性部材30に覆われておらず、露出している。このため、トレイ10の内側の面は、広い範囲にて、直接、電子機器50に接触する。なお、弾性部材30は、トレイ10の貫通孔15,16,17,19の少なくともいずれか1つの内周の一部または全部を覆う。
【0025】
弾性シール材43は、トレイ10の開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材30から、貫通孔37を介してトレイ10の開口側内面に回り込み、弾性ルート41を経由して形成されている。弾性ルート41は、好適には、弾性部材30と同じ材料から成る。弾性シール材43の好適な厚さは、0.05〜0.50mm、より好適には0.1〜0.4mmである。弾性ルート41の好適な厚さも、弾性シール材43の上記好適な厚さと等しい。弾性シール材43は、突出部23の表面を覆うように形成されており、トレイ10の底板11の内面および弾性ルート41の上面よりも電子機器50側に突出した位置にある。また、弾性シール材43は、突出部23の外側の領域に連接する弾性部材貯留部40を備える。弾性部材貯留部40は、好適には、弾性ルート41とほぼ同じ厚さであり、突出部23上の弾性シール材43の上面より下方に位置する。弾性部材貯留部40は、電池カバー1の製造において、トレイ10の内面に、弾性部材30を構成する液状の材料を供給して弾性シール材43を形成する際、トレイ10とそれに接する金型との間に当該液状の材料を過剰に流し、弾性シール材43が突出部23を確実に被覆できるようにするためのバッファー機能部分にて成形される部分である。このため、弾性部材貯留部40は、成形後に切除しても良く、防水シールの邪魔にならなければ残しておいても良い。弾性シール材43は、貫通孔37以外の貫通孔35,36,38,39の1または2以上から、弾性ルート41を介して形成されていても良い。また、弾性ルート41は、必須の構成ではなく、弾性シール材43を貫通孔37から直接、繋げても良い。
【0026】
図5は、図1に示す電子機器用電池カバーのA1−A1線断面図およびその一部の段階的な拡大図であり、A1−A1線断面図中の領域Z1の拡大、その拡大図中の領域Z2のさらなる拡大を、段階的に示す。図6は、図5の拡大図に示す構造の変形例を示す図である。
【0027】
電池カバー1は、電子機器50を防護する機能と、電池収納部55内の電池56を押さえる電池蓋としての機能と、電池収納部55内へ浸水を防ぐための防水機能とを併せ持つ。電池カバー1を電子機器50に取り付けると、防水シール部42は、電池収納部55の外周囲に形成される溝57に押し込まれる。トレイ10の内面に形成される突出部23は、溝57内に挿入可能な形態で形成されている。前述のように、弾性シール材43は、突出部23の表面を覆っているため、電池カバー1を電子機器50に取り付けると、弾性シール材43は、溝57の内面と突出部23の表面との間を充填する。この結果、電子機器50とトレイ10の内側との間に水が入ってきても、電池収納部55の外周囲にて、それ以上の浸水を阻むことができる。
【0028】
図6に示すように、突出部23を被覆する弾性シール材43における突出部23の開口面からみて外側および内側の両側面に、リブ46を形成しても良い。電池カバー1から電子機器50に対して大きな圧接力を有しない場合には、リブ46によって高い防水効果を発揮できる。なお、リブ46は、上記両側面ではなく、いずれか一方側にのみ突出していても良い。
【0029】
図7は、図2に示す電子機器用電池カバーをB−B線で切断した際の領域Yの断面図である。
【0030】
弾性部材30は、底板31からトレイ10の貫通孔17の内周面を覆って貫通孔37を形成している。貫通孔37の内周面は、段差を有している。弾性部材30は、トレイ10の内側近傍(当該内側から厚さHまで)を厚さWにて覆い、外側近傍を厚さWよりも厚く覆う。この結果、貫通孔37の開口部外側は、開口部内側に比べて狭くなっている。この結果、貫通孔37を通じて、電子機器50側に埃等が入りにくくなる。図7に示す構成は、貫通孔37のみならず、他の貫通孔35,36,39の1以上にも採用することができる。
【0031】
図8は、図1に示す電子機器用電池カバーをA2−A2線で切断した際の領域Xの斜視図である。
【0032】
図8に示すように、弾性部材30は、その側壁32にてトレイ10の側壁12の外側を覆い、当該側壁12の上端面から曲がって操作面側外縁部33に連接する。電池カバー1の側方は、弾性部材30の側壁32の内側にトレイ10の側壁12を接する二重構造となっている。このため、電池カバー1は、電子機器50の側面からの落下に対して、高い防護性を発揮できる。また、操作面側外縁部33は、その内側にトレイ10の延出部分を備えていないため、矢印Pで示す方向に変形自在である。このため、電子機器50と電池カバー1との着脱が極めて容易になる。
【0033】
(2)電子機器用電池カバーの製造方法
トレイ10は、例えば、金型内に溶融樹脂を射出して成形する射出成形法、軟化させた板状の樹脂を金型内で型締めする成形法にて好適に製造できる。また、後者の成形法の場合には、一方の金型側から減圧する方法、一方の金型側から高圧気体を送気する方法、当該減圧と送気とを組み合わせる方法を用いても良い。弾性部材30は、例えば、成形後のトレイ10を金型内にセットして、金型とトレイ10との隙間に弾性部材30を構成可能な組成物を供給して、当該組成物を架橋させる方法などにより成形できる。かかる成形法を用いると、トレイ10と弾性部材30とを容易に一体化することができる。このとき、トレイ10の内面側に接する金型に、弾性部材30を構成可能な組成物をトレイ10の内面に流入させるルートを形成しておくことにより、弾性部材貯留部40、弾性ルート41および弾性シール材43を形成することができる。なお、トレイ10と弾性部材30との密着性を高めるため、成形後のトレイ10における弾性部材30との密着領域に、プライマーを塗布してから金型にセットして、弾性部材30を構成する組成物を金型内に供給しても良い。
【0034】
次に、トレイ10の材料としてポリカーボネート系樹脂を、弾性部材30の材料としてシリコーンエラストマーをそれぞれ用い、二色成形法により電池カバー1を製造する好適な製造方法につき例示する。
【0035】
まず、トレイ10を賦形可能な金型内に、溶融状態のポリカーボネート樹脂を射出する。その後、金型を開くと、図3に示す形状のトレイ10が得られる。次に、トレイ10の外側の面に、プライマーを塗布し、乾燥させる。次に、プライマーを塗布したトレイ10を、電池カバー1を賦形可能な別の金型内にセットし、当該金型内に溶融状態のシリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、品番:KE−2090−40A/B)を供給する。当該シリコーン組成物が架橋した後に金型を開いて、トレイ10と弾性部材30とから成り、内側に防水シール部42を有する電池カバー1を得る。トレイ10に着色または加飾を施す必要がある場合には、弾性部材30との一体成形に先立ち、トレイ10を塗料中にディッピングし、塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。また、弾性部材30の外面に加飾する必要がある場合には、トレイ10との一体成形後に、当該外面に塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。さらには、溶融状態のポリカーボネート樹脂中に顔料を予め練り込んでおいてから成形し、弾性部材30の加飾を実現しても良い。
【0036】
<第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバーについて説明する。なお、当該第二の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0037】
図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図5の一部と同様の段階的な拡大断面図であり、領域Z2およびそのさらなる拡大を段階的に示す。
【0038】
第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(電池カバー)1は、第一の実施の形態に係る電池カバー1と異なり、トレイ10に突出部23を備えていない。したがって、防水シール部42aは、弾性シール材43aのみから構成される。弾性シール材43aは、電子機器50側に突出して形成されており、電子機器50の電池収納部55の外周囲に形成される溝57に圧入可能な形態で形成される。このため、トレイ10の底板11の内面に突出部23を形成しなくても、防水機能を発揮できる。なお、弾性部材貯留部40は、第一の実施の形態と同様、弾性シール材43aと連接された状態でトレイ10の底板11の内面に残存していても良く、あるいは切除されても良い。また、弾性シール材43aに、図6に示したリブ46と同様のリブを形成しても良い。
【0039】
<第三の実施の形態>
次に、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバーについて説明する。なお、当該第三の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0040】
図10は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図9と同様の段階的な拡大断面図である。
【0041】
第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(電池カバー)1は、第一の実施の形態に係る電池カバー1と異なり、トレイ10に溝25を備える。溝25は、電池収納部55の外周囲と対向する位置に閉ループ状に形成され、電池収納部55の外周囲に形成される閉ループ状の突出部58を挿入可能に構成される。弾性部材30は、貫通孔37、弾性ルート41を順に経由して、弾性シール材45と連接されている。弾性シール材45は、溝25の少なくとも内面を被覆する。弾性シール材45と溝25は、防水シール部44を構成する。したがって、電子機器50に電池カバー1を取り付けると、電子機器50側に形成されている突出部58がトレイ10側の溝25に圧入される。この結果、溝25の内面を覆う弾性シール材45は、溝25の内面と突出部58の表面との間を充填し、電池収納部55への浸水を阻む機能を発揮する。第一の実施の形態と同様、弾性部材貯留部40を、弾性シール材45と連接された状態でトレイ10の底板11の内面に残存していても良く、あるいは切除されても良い。また、電子機器50側の突出部58にリブを形成しても良い。
【0042】
なお、トレイ10に溝25を形成せず、弾性シール材45のみにて防水シール部44を構成することもできる。かかる場合、弾性シール材45に、電子機器50側の突出部25を圧入可能な溝を形成しても良い。
【0043】
<第四の実施の形態>
次に、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバーについて説明する。なお、当該第四の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0044】
図11は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバーを内側から見た斜視図である。
【0045】
第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(電池カバー)1は、トレイ10aと弾性部材30とを備える成形体である。図11の電池カバー1において斜線で示すように、トレイ10aは、第一の実施の形態に係る電池カバー1を構成するトレイ10と異なり、長手方向の側壁12の切り欠きを小さくして、貫通孔38の長手方向側面に、追加の側壁12aを有する。図10では明示されていないが、側壁12aは、互いに対向する位置に、一対で形成されている。また、貫通孔19は、その開口部分をメッシュ61にて塞ぐシート60を、トレイ10aの内側から貼付して備える。このため、貫通孔19の位置が電子機器50のマイクの位置の場合に有効である。
【0046】
図12は、図11に示す電子機器用電池カバーの図8と同じ方向から見た断面図である。
【0047】
この実施の形態に係る電池カバー1では、第一の実施の形態と比較して、トレイ10aの側壁12の高さが低い。図12に示すように、トレイ10aの側壁12の上端部と、操作面側外縁部33の内側との間に、トレイ10aの存在しない部分(距離: L)がある。このため、弾性部材30の側壁32は、矢印Qで示すように、トレイ10aの側壁12の上端部から先の部分において、第一の実施の形態よりも大きく変形可能である。この結果、電子機器50と電池カバー1との着脱を長期間繰り返しても、電池カバー1は、操作面側外縁部33が裂ける危険性を低くでき、長期間の使用に耐えることができる。
【0048】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0049】
図13は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの変形例をその内側から見た斜視図および電子機器用電池カバーを構成するトレイの斜視図である。
【0050】
図13に示すように、トレイ10は、突出部23の近傍に、外部アクセス部と関係のない貫通孔26を備える。弾性部材30は、トレイ10の外側から貫通孔26を経由して弾性ルート41と、さらには突出部23を被覆する弾性シール材43を形成している。特に、貫通孔26を突出部23の開口外に隣接して備えることにより、弾性部材30を形成するための液状組成物内に気泡が混入しても、防水の信頼性が高くなる。また、突出部23と貫通孔26との距離がより近くなるので、弾性ルート41が短くなる。この結果、製造工程において、弾性シール材43が断線する危険性をより低くでき、歩留まりが高くなる。
【0051】
また、例えば、電子機器50のボタン、スピーカ、カメラのレンズ等の位置によっては、トレイ10,10aに、貫通孔16等を設けず、切り欠き部を設けても良い。弾性シール材43,43a,45は、弾性部材30から当該切り欠き部、弾性ルート41を順に経由して連接形成されても良い。弾性シール材43aは、弾性ルート41と同じ厚さにて形成されても良く、その結果、弾性ルート41よりも電子機器50側に突出していなくても良い。突出部23は、閉ループ状に限定されず、電池収納部55の外周囲と対向する位置に、2以上の断片をもって断続的にループ状に形成されていても良い。また、弾性シール材43は、突出部23の全表面を覆っていなくても良く、突出部23の先端のみ、あるいは先端から周側面の上部までを覆っていても良い。
【0052】
弾性部材30がトレイ10,10aの貫通孔15,16,17,19の内周端を覆う場合において、弾性部材30は、弾性ルート41以外の箇所においても、当該内周端からトレイ10,10aの内面にまで達するように形成しても良い。これによって、防水効果、防塵効果をより高めることができる。さらには、弾性部材30は、弾性ルート41以外の箇所において、トレイ10,10aの貫通孔15,16,17,19の内周端を覆っていなくても良い。弾性部材30は、その側壁32を、必ずしもトレイ10,10aの側壁の高さ以上に形成しなくても良い。また、弾性部材30は、必ずしも、その側壁32から連接して、電子機器50の操作面51の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部33を備えていなくても良い。弾性部材30は、トレイ10,10aの開口側内面よりもその反対側の面を広く覆っていなくとも良い。また、弾性部材30は、第一の実施の形態と比較して、トレイ10,10aの開口側内面の一部をより広く覆い、あるいはトレイ10,10aの開口側内面と反対側の面をより露出しても良い。また、その逆に、弾性部材30は、第一の実施の形態と比較して、トレイ10,10aの開口側内面の一部をより露出し、あるいはトレイ10,10aの開口側内面と反対側の面をより広く覆っても良い。さらには、トレイ10,10aと弾性部材30とは、互いに密着しているのが好ましいが、密着していない領域があっても良い。また、弾性部材30は、トレイ10,10aを完全に覆っていても良い。
【0053】
上記の第一の実施の形態、第二の実施の形態、第三の実施の形態および第四の実施の形態は、特に組み合わせ不能な場合を除き、互いにそれぞれの特徴を一以上組み合わせても良い。例えば、第一の実施の形態と第三の実施の形態との組み合わせは、防水シール部の構造が両立しないので、組み合わせることはできない。このような例示と同様の場合を除けば、各実施の形態同士を任意に組み合わせることができる。例えば、第二の実施の形態に係る電池カバー1において、第四の実施の形態に係る電池カバー1のトレイ10aを用いても良い。また、第一の実施の形態と第四の実施の形態とを組み合わせても良い。また、本発明に係る電子機器用電池カバーは、電子機器50内への水以外の液体の浸入を防止する機能も持つ。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電子機器の防水用の電池カバーとして利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 電池カバー(電子機器用電池カバー)
10,10a トレイ
11 底板
12 側壁(トレイの側壁)
12a 側壁
15,16,17,19 貫通孔
23 突出部
25 溝
30 弾性部材
32 側壁(弾性部材の側壁)
33 操作面側外縁部
35,36,37,38,39 貫通孔
42,42a,44 防水シール部
43,43a,45 弾性シール材
50 電子機器
51 操作面
55 電池収納部
56 電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器における電池を収納する電池収納部を覆う電子機器用電池カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、防水性の高い電子機器の需要が高くなってきている。電子機器の防水性を高めるには、電池の出し入れの度に開閉する電池収納部カバーと電池収納部との隙間の防水性が不可欠である。電池収納部への水の浸入は、即、電気的なショートにつながるからである。電池収納部への防水を図る代表的な構造として、例えば、電池収納部の外周面と電池カバーとの隙間に、弾性材料から成る環状の防水シール材を挟む構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、電子機器の薄型化、小型化および軽量化が進む中、携帯型の電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきている。それに伴い、電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。電子機器を落下あるいは何かに接触させた際にその破損から防護する方法の一つに、電子機器をクッション性の高いカバーあるいはケースにて覆う方法が考えられる。
【0004】
例えば、電子機器の操作面のみを開口し、側面から裏面までを覆う形状であって、開口部分の伸縮性を高めて、電子機器の着脱を容易にした電子機器用カバーが知られている(特許文献2を参照)。また、携帯電話の操作面側を開口した比較的硬質の材料(プラスチックあるいは金属)から構成される携帯電話用の容器および保持具も知られている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−134948号公報
【特許文献2】特開2002−027076号公報
【特許文献3】特開2000−201210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるように、電子機器の電池収納部内への浸水を防止する防水式電池カバーは、電子機器の一部を構成するカバー部材に過ぎず、電子機器の落下時の破損や故障を防ぐことはできない。また、特許文献2,3に開示される各カバーでは、電池収納部内への浸水を防止できない。電子機器の完全なる防水を図るだけであれば、電子機器全体を覆う密封可能な袋に電子機器を入れるのが良い。しかし、それでは、電子機器の取り出しや操作キーを入力しづらい等の煩わしさが増す。
【0007】
また、電子機器の落下時の衝撃を緩和し、かつ電池収納部の防水を図るために、比較的軟質なエラストマーにてカバーを形成し、当該カバーにより電子機器の裏面から側面までを密着して被覆する方法も考えられる。しかし、かかるカバーでは、防水性を高めることはできても、強度が足りず、電子機器への衝撃を十分に緩和できない。加えて、当該カバーは変形容易であるため、雨天時や入浴中に電子機器を使用している際、カバーと電子機器との間にずれが生じ、電子機器の電池収納部内へ浸水をもたらす危険性が高い。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器の落下に対する高い防護性、電子機器との着脱容易性、および電子機器に対する高い防水性を発揮する電子機器用電池カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するため、本発明の一形態は、電子機器の裏面に位置する電池収納部の開口部を覆うと共に、電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用電池カバーであって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイと、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面およびその反対側の面の両面を少なくとも部分的に覆う弾性部材とを備え、トレイの開口側内面において、電池収納部の開口部の外周囲と対向する位置に、当該外周囲に接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部を備え、防水シール部に、トレイの開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材から、トレイの開口側内面に回り込み、弾性部材と連接形成される弾性シール材を備える電子機器用電池カバーである。ここで、硬度は、トレイおよび弾性部材が両方とも樹脂あるいはエラストマーから構成され、あるいはトレイを樹脂で構成して弾性部材をエラストマーから構成する場合には、ショア硬度を意味する。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、トレイに貫通孔を備え、弾性シール材を、トレイの開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材から貫通孔を経由して形成した電子機器用電池カバーである。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、弾性シール材が、トレイの底板の内面よりも電子機器の外周囲側に突出する電子機器用電池カバーである。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、トレイには、電池収納部の開口部の外周囲と対向する位置に、外周囲側に突出する1または2以上の突出部を備え、防水シール部を、弾性シール材によって突出部の一部または全部を被覆する構成とした電子機器用電池カバーである。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の側壁をトレイの側壁の高さ以上に形成し、弾性部材に、弾性部材の側壁から連接して電子機器の操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部を備えた電子機器用電池カバーである。
【0014】
本発明の別の形態は、さらに、弾性部材の側壁がトレイの側壁を超えて形成されている電子機器用電池カバーである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子機器の落下に対する高い防護性、電子機器との着脱容易性、および電子機器に対する高い防水性を発揮する電子機器用電池カバーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの開口面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用電池カバーの開口面と反対側から見た斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用電池カバーの構成部材の一つであるトレイの斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す電子機器用電池カバーを電子機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す電子機器用電池カバーのA1−A1線断面図およびその一部の段階的な拡大図である。
【図6】図6は、図5の拡大図に示す構造の変形例を示す図である。
【図7】図7は、図2に示す電子機器用電池カバーをB−B線で切断した際の領域Yの断面図である。
【図8】図8は、図1に示す電子機器用電池カバーをA2−A2線で切断した際の領域Xの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図5の一部と同様の段階的な拡大断面図である。
【図10】図10は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図9と同様の段階的な拡大断面図である。
【図11】図11は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバーを内側から見た斜視図である。
【図12】図12は、図11に示す電子機器用電池カバーの図8と同じ方向から見た断面図である。
【図13】図13は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの変形例をその内側から見た斜視図および電子機器用電池カバーを構成するトレイの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る電子機器用電池カバーの各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第一の実施の形態>
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの開口面側から見た斜視図である。図2は、図1に示す電子機器用電池カバーの開口面と反対側から見た斜視図である。図3は、図1に示す電子機器用電池カバーの構成部材の一つであるトレイの斜視図である。図4は、図1に示す電子機器用電池カバーを電子機器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0019】
(1)電子機器用電池カバーの構造
第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(以後、単に、「電池カバー」と称する)1は、電子機器50の裏面に位置する電池収納部55(図5を参照)の開口部を覆うと共に、電子機器50の操作面51側を開口して電子機器50の外側を覆う構成であり、少なくとも操作面51の方向に開口するトレイ10と、トレイ10よりも低硬度であると共にトレイ10の開口側内面およびその反対側の面の両面を覆う弾性部材30とを備える。この実施の形態において、弾性部材30は、トレイ10の開口側内面と反対側の面(外側の面)を完全に覆う一方、トレイ10の開口側内面を部分的に覆う。
【0020】
トレイ10は、図1および図3に示すように、電子機器50の背面側に位置する底板11と、底板11から電子機器50の外側面に向かって延出する側壁12とを連接して構成される部材である。側壁12は、電子機器50の一対の側面、この実施の形態では短辺側の両側面を十分に覆う一方、他方の一対の側面、この実施の形態では長辺側の両側面を大きく切り欠いた形状を有する。トレイ10は、電子機器50の側面および底面に備えられる外部アクセス部の一例であるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板11および側壁12に貫通孔15,16,17,19を備える。ここで、「外部アクセス部」は、電池カバー1の外側と電子機器50との間にていずれか一方からアクセス可能な部分をいう。アクセスの手法は、直接的な接触のみならず、光、音等の入出も含まれる。なお、後述の変形例のように、トレイ10に、上記貫通孔15,16,17,19に限定されず、外部アクセス部と無関係に形成された貫通孔を備えても良い。トレイ10は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも特に好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成る。トレイ10の底板11および側壁12の厚さは、電子機器50の大きさ、重量等によって適正な厚さに設計可能である。例えば、電子機器50の厚さが8〜20mm、短辺が50〜200mm、長辺が80〜300mmの範囲にある場合、樹脂製のトレイ10の底板11および側壁12は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0021】
トレイ10は、電子機器50の長辺側の切り欠いた部分を有する2つの側壁12に、電子機器50側に向かって立設される規制板21を1つずつ備える。また、トレイ10は、電子機器50の短辺側の2つの側壁12に、内方に突出する規制凸部22を複数個備える。規制板21および規制凸部22は、電池カバー1の内側にあるトレイ10と電子機器50の外面との固定を確実にし、電子機器50が電池カバー1から容易に脱落しないようにするための部分である。なお、規制板21は、トレイ10の長辺側の側壁12ではなく、底板11の長辺側に形成されていても良い。
【0022】
トレイ10は、その開口側内面において、電子機器50に形成された電池収納部55の開口部の外周囲と対向する位置に、当該外周囲に接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部42を備える。図3に示すように、トレイ10は、底板11の内面であって電池収納部55の開口部の外周囲と対向する位置に、その外周囲側に突出する1つの閉ループ状の突出部23を備える。また、防水シール部42は、弾性材料から成る弾性シール材43を備える。防水シール部42は、突出部23と弾性シール材43とから構成され、突出部23の表面全体を弾性シール材43にて被覆して成る。
【0023】
弾性部材30は、電子機器50の背面側に位置する底板31と、底板31から電子機器50の外側面を覆う側壁32と、側壁32から電子機器50の操作面51の外縁の全部を覆う操作面側外縁部33とを連接して構成されるボート形状を有する部材である。弾性部材30は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどから好適に構成され、例えば、ウレタン系あるいはシリコーン系エラストマーから特に好適に構成される。トレイ10の底板11および側壁12の最も厚い部分が0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲の場合、上記エラストマー製の弾性部材30の底板31および側壁32は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。弾性部材30は、電子機器50の側面および底面に備えられるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板31および側壁32に、凸状被覆部34、貫通孔35,36,37,38,39を備える。凸状被覆部34は、電池カバー1から電子機器50にタッチして操作できるように、好適には他の部分よりも薄肉状に形成されている。貫通孔35,36,37,38,39は、そこを通して電子機器50に接触し、あるいは光を通過可能に形成される部分である。凸状被覆部34および貫通孔35,36,37,38,39の大きさ、形状、位置および個数は、電子機器50の形態に応じて変動する。
【0024】
弾性部材30の側壁32は、トレイ10の側壁12の高さ以上に形成されている。トレイ10の側壁12の内で最も高い位置でも、弾性部材30の操作面側外縁部33の内側に接する位置である。これによって、少なくとも、操作面側外縁部33は、トレイ10と接しない部分となり、電子機器50との脱着の際に自由に変形できる。弾性部材30の貫通孔35,36,37,39は、トレイ10の貫通孔15,16,17,19と同じ位置に、ほぼ同じ形状と大きさにて形成される。弾性部材30は、トレイ10の底板11および側壁12の各外側を完全に覆う一方、それらの内側を完全に覆うことなく、当該内側の大部分を露出させる。すなわち、トレイ10の開口側内面は、その反対側にあたる外側の面よりも弾性部材30に覆われておらず、露出している。このため、トレイ10の内側の面は、広い範囲にて、直接、電子機器50に接触する。なお、弾性部材30は、トレイ10の貫通孔15,16,17,19の少なくともいずれか1つの内周の一部または全部を覆う。
【0025】
弾性シール材43は、トレイ10の開口側内面と反対側の面を覆う弾性部材30から、貫通孔37を介してトレイ10の開口側内面に回り込み、弾性ルート41を経由して形成されている。弾性ルート41は、好適には、弾性部材30と同じ材料から成る。弾性シール材43の好適な厚さは、0.05〜0.50mm、より好適には0.1〜0.4mmである。弾性ルート41の好適な厚さも、弾性シール材43の上記好適な厚さと等しい。弾性シール材43は、突出部23の表面を覆うように形成されており、トレイ10の底板11の内面および弾性ルート41の上面よりも電子機器50側に突出した位置にある。また、弾性シール材43は、突出部23の外側の領域に連接する弾性部材貯留部40を備える。弾性部材貯留部40は、好適には、弾性ルート41とほぼ同じ厚さであり、突出部23上の弾性シール材43の上面より下方に位置する。弾性部材貯留部40は、電池カバー1の製造において、トレイ10の内面に、弾性部材30を構成する液状の材料を供給して弾性シール材43を形成する際、トレイ10とそれに接する金型との間に当該液状の材料を過剰に流し、弾性シール材43が突出部23を確実に被覆できるようにするためのバッファー機能部分にて成形される部分である。このため、弾性部材貯留部40は、成形後に切除しても良く、防水シールの邪魔にならなければ残しておいても良い。弾性シール材43は、貫通孔37以外の貫通孔35,36,38,39の1または2以上から、弾性ルート41を介して形成されていても良い。また、弾性ルート41は、必須の構成ではなく、弾性シール材43を貫通孔37から直接、繋げても良い。
【0026】
図5は、図1に示す電子機器用電池カバーのA1−A1線断面図およびその一部の段階的な拡大図であり、A1−A1線断面図中の領域Z1の拡大、その拡大図中の領域Z2のさらなる拡大を、段階的に示す。図6は、図5の拡大図に示す構造の変形例を示す図である。
【0027】
電池カバー1は、電子機器50を防護する機能と、電池収納部55内の電池56を押さえる電池蓋としての機能と、電池収納部55内へ浸水を防ぐための防水機能とを併せ持つ。電池カバー1を電子機器50に取り付けると、防水シール部42は、電池収納部55の外周囲に形成される溝57に押し込まれる。トレイ10の内面に形成される突出部23は、溝57内に挿入可能な形態で形成されている。前述のように、弾性シール材43は、突出部23の表面を覆っているため、電池カバー1を電子機器50に取り付けると、弾性シール材43は、溝57の内面と突出部23の表面との間を充填する。この結果、電子機器50とトレイ10の内側との間に水が入ってきても、電池収納部55の外周囲にて、それ以上の浸水を阻むことができる。
【0028】
図6に示すように、突出部23を被覆する弾性シール材43における突出部23の開口面からみて外側および内側の両側面に、リブ46を形成しても良い。電池カバー1から電子機器50に対して大きな圧接力を有しない場合には、リブ46によって高い防水効果を発揮できる。なお、リブ46は、上記両側面ではなく、いずれか一方側にのみ突出していても良い。
【0029】
図7は、図2に示す電子機器用電池カバーをB−B線で切断した際の領域Yの断面図である。
【0030】
弾性部材30は、底板31からトレイ10の貫通孔17の内周面を覆って貫通孔37を形成している。貫通孔37の内周面は、段差を有している。弾性部材30は、トレイ10の内側近傍(当該内側から厚さHまで)を厚さWにて覆い、外側近傍を厚さWよりも厚く覆う。この結果、貫通孔37の開口部外側は、開口部内側に比べて狭くなっている。この結果、貫通孔37を通じて、電子機器50側に埃等が入りにくくなる。図7に示す構成は、貫通孔37のみならず、他の貫通孔35,36,39の1以上にも採用することができる。
【0031】
図8は、図1に示す電子機器用電池カバーをA2−A2線で切断した際の領域Xの斜視図である。
【0032】
図8に示すように、弾性部材30は、その側壁32にてトレイ10の側壁12の外側を覆い、当該側壁12の上端面から曲がって操作面側外縁部33に連接する。電池カバー1の側方は、弾性部材30の側壁32の内側にトレイ10の側壁12を接する二重構造となっている。このため、電池カバー1は、電子機器50の側面からの落下に対して、高い防護性を発揮できる。また、操作面側外縁部33は、その内側にトレイ10の延出部分を備えていないため、矢印Pで示す方向に変形自在である。このため、電子機器50と電池カバー1との着脱が極めて容易になる。
【0033】
(2)電子機器用電池カバーの製造方法
トレイ10は、例えば、金型内に溶融樹脂を射出して成形する射出成形法、軟化させた板状の樹脂を金型内で型締めする成形法にて好適に製造できる。また、後者の成形法の場合には、一方の金型側から減圧する方法、一方の金型側から高圧気体を送気する方法、当該減圧と送気とを組み合わせる方法を用いても良い。弾性部材30は、例えば、成形後のトレイ10を金型内にセットして、金型とトレイ10との隙間に弾性部材30を構成可能な組成物を供給して、当該組成物を架橋させる方法などにより成形できる。かかる成形法を用いると、トレイ10と弾性部材30とを容易に一体化することができる。このとき、トレイ10の内面側に接する金型に、弾性部材30を構成可能な組成物をトレイ10の内面に流入させるルートを形成しておくことにより、弾性部材貯留部40、弾性ルート41および弾性シール材43を形成することができる。なお、トレイ10と弾性部材30との密着性を高めるため、成形後のトレイ10における弾性部材30との密着領域に、プライマーを塗布してから金型にセットして、弾性部材30を構成する組成物を金型内に供給しても良い。
【0034】
次に、トレイ10の材料としてポリカーボネート系樹脂を、弾性部材30の材料としてシリコーンエラストマーをそれぞれ用い、二色成形法により電池カバー1を製造する好適な製造方法につき例示する。
【0035】
まず、トレイ10を賦形可能な金型内に、溶融状態のポリカーボネート樹脂を射出する。その後、金型を開くと、図3に示す形状のトレイ10が得られる。次に、トレイ10の外側の面に、プライマーを塗布し、乾燥させる。次に、プライマーを塗布したトレイ10を、電池カバー1を賦形可能な別の金型内にセットし、当該金型内に溶融状態のシリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、品番:KE−2090−40A/B)を供給する。当該シリコーン組成物が架橋した後に金型を開いて、トレイ10と弾性部材30とから成り、内側に防水シール部42を有する電池カバー1を得る。トレイ10に着色または加飾を施す必要がある場合には、弾性部材30との一体成形に先立ち、トレイ10を塗料中にディッピングし、塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。また、弾性部材30の外面に加飾する必要がある場合には、トレイ10との一体成形後に、当該外面に塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。さらには、溶融状態のポリカーボネート樹脂中に顔料を予め練り込んでおいてから成形し、弾性部材30の加飾を実現しても良い。
【0036】
<第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバーについて説明する。なお、当該第二の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0037】
図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図5の一部と同様の段階的な拡大断面図であり、領域Z2およびそのさらなる拡大を段階的に示す。
【0038】
第二の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(電池カバー)1は、第一の実施の形態に係る電池カバー1と異なり、トレイ10に突出部23を備えていない。したがって、防水シール部42aは、弾性シール材43aのみから構成される。弾性シール材43aは、電子機器50側に突出して形成されており、電子機器50の電池収納部55の外周囲に形成される溝57に圧入可能な形態で形成される。このため、トレイ10の底板11の内面に突出部23を形成しなくても、防水機能を発揮できる。なお、弾性部材貯留部40は、第一の実施の形態と同様、弾性シール材43aと連接された状態でトレイ10の底板11の内面に残存していても良く、あるいは切除されても良い。また、弾性シール材43aに、図6に示したリブ46と同様のリブを形成しても良い。
【0039】
<第三の実施の形態>
次に、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバーについて説明する。なお、当該第三の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0040】
図10は、本発明の第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバーにおける、図9と同様の段階的な拡大断面図である。
【0041】
第三の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(電池カバー)1は、第一の実施の形態に係る電池カバー1と異なり、トレイ10に溝25を備える。溝25は、電池収納部55の外周囲と対向する位置に閉ループ状に形成され、電池収納部55の外周囲に形成される閉ループ状の突出部58を挿入可能に構成される。弾性部材30は、貫通孔37、弾性ルート41を順に経由して、弾性シール材45と連接されている。弾性シール材45は、溝25の少なくとも内面を被覆する。弾性シール材45と溝25は、防水シール部44を構成する。したがって、電子機器50に電池カバー1を取り付けると、電子機器50側に形成されている突出部58がトレイ10側の溝25に圧入される。この結果、溝25の内面を覆う弾性シール材45は、溝25の内面と突出部58の表面との間を充填し、電池収納部55への浸水を阻む機能を発揮する。第一の実施の形態と同様、弾性部材貯留部40を、弾性シール材45と連接された状態でトレイ10の底板11の内面に残存していても良く、あるいは切除されても良い。また、電子機器50側の突出部58にリブを形成しても良い。
【0042】
なお、トレイ10に溝25を形成せず、弾性シール材45のみにて防水シール部44を構成することもできる。かかる場合、弾性シール材45に、電子機器50側の突出部25を圧入可能な溝を形成しても良い。
【0043】
<第四の実施の形態>
次に、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバーについて説明する。なお、当該第四の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0044】
図11は、本発明の第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバーを内側から見た斜視図である。
【0045】
第四の実施の形態に係る電子機器用電池カバー(電池カバー)1は、トレイ10aと弾性部材30とを備える成形体である。図11の電池カバー1において斜線で示すように、トレイ10aは、第一の実施の形態に係る電池カバー1を構成するトレイ10と異なり、長手方向の側壁12の切り欠きを小さくして、貫通孔38の長手方向側面に、追加の側壁12aを有する。図10では明示されていないが、側壁12aは、互いに対向する位置に、一対で形成されている。また、貫通孔19は、その開口部分をメッシュ61にて塞ぐシート60を、トレイ10aの内側から貼付して備える。このため、貫通孔19の位置が電子機器50のマイクの位置の場合に有効である。
【0046】
図12は、図11に示す電子機器用電池カバーの図8と同じ方向から見た断面図である。
【0047】
この実施の形態に係る電池カバー1では、第一の実施の形態と比較して、トレイ10aの側壁12の高さが低い。図12に示すように、トレイ10aの側壁12の上端部と、操作面側外縁部33の内側との間に、トレイ10aの存在しない部分(距離: L)がある。このため、弾性部材30の側壁32は、矢印Qで示すように、トレイ10aの側壁12の上端部から先の部分において、第一の実施の形態よりも大きく変形可能である。この結果、電子機器50と電池カバー1との着脱を長期間繰り返しても、電池カバー1は、操作面側外縁部33が裂ける危険性を低くでき、長期間の使用に耐えることができる。
【0048】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0049】
図13は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用電池カバーの変形例をその内側から見た斜視図および電子機器用電池カバーを構成するトレイの斜視図である。
【0050】
図13に示すように、トレイ10は、突出部23の近傍に、外部アクセス部と関係のない貫通孔26を備える。弾性部材30は、トレイ10の外側から貫通孔26を経由して弾性ルート41と、さらには突出部23を被覆する弾性シール材43を形成している。特に、貫通孔26を突出部23の開口外に隣接して備えることにより、弾性部材30を形成するための液状組成物内に気泡が混入しても、防水の信頼性が高くなる。また、突出部23と貫通孔26との距離がより近くなるので、弾性ルート41が短くなる。この結果、製造工程において、弾性シール材43が断線する危険性をより低くでき、歩留まりが高くなる。
【0051】
また、例えば、電子機器50のボタン、スピーカ、カメラのレンズ等の位置によっては、トレイ10,10aに、貫通孔16等を設けず、切り欠き部を設けても良い。弾性シール材43,43a,45は、弾性部材30から当該切り欠き部、弾性ルート41を順に経由して連接形成されても良い。弾性シール材43aは、弾性ルート41と同じ厚さにて形成されても良く、その結果、弾性ルート41よりも電子機器50側に突出していなくても良い。突出部23は、閉ループ状に限定されず、電池収納部55の外周囲と対向する位置に、2以上の断片をもって断続的にループ状に形成されていても良い。また、弾性シール材43は、突出部23の全表面を覆っていなくても良く、突出部23の先端のみ、あるいは先端から周側面の上部までを覆っていても良い。
【0052】
弾性部材30がトレイ10,10aの貫通孔15,16,17,19の内周端を覆う場合において、弾性部材30は、弾性ルート41以外の箇所においても、当該内周端からトレイ10,10aの内面にまで達するように形成しても良い。これによって、防水効果、防塵効果をより高めることができる。さらには、弾性部材30は、弾性ルート41以外の箇所において、トレイ10,10aの貫通孔15,16,17,19の内周端を覆っていなくても良い。弾性部材30は、その側壁32を、必ずしもトレイ10,10aの側壁の高さ以上に形成しなくても良い。また、弾性部材30は、必ずしも、その側壁32から連接して、電子機器50の操作面51の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部33を備えていなくても良い。弾性部材30は、トレイ10,10aの開口側内面よりもその反対側の面を広く覆っていなくとも良い。また、弾性部材30は、第一の実施の形態と比較して、トレイ10,10aの開口側内面の一部をより広く覆い、あるいはトレイ10,10aの開口側内面と反対側の面をより露出しても良い。また、その逆に、弾性部材30は、第一の実施の形態と比較して、トレイ10,10aの開口側内面の一部をより露出し、あるいはトレイ10,10aの開口側内面と反対側の面をより広く覆っても良い。さらには、トレイ10,10aと弾性部材30とは、互いに密着しているのが好ましいが、密着していない領域があっても良い。また、弾性部材30は、トレイ10,10aを完全に覆っていても良い。
【0053】
上記の第一の実施の形態、第二の実施の形態、第三の実施の形態および第四の実施の形態は、特に組み合わせ不能な場合を除き、互いにそれぞれの特徴を一以上組み合わせても良い。例えば、第一の実施の形態と第三の実施の形態との組み合わせは、防水シール部の構造が両立しないので、組み合わせることはできない。このような例示と同様の場合を除けば、各実施の形態同士を任意に組み合わせることができる。例えば、第二の実施の形態に係る電池カバー1において、第四の実施の形態に係る電池カバー1のトレイ10aを用いても良い。また、第一の実施の形態と第四の実施の形態とを組み合わせても良い。また、本発明に係る電子機器用電池カバーは、電子機器50内への水以外の液体の浸入を防止する機能も持つ。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電子機器の防水用の電池カバーとして利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 電池カバー(電子機器用電池カバー)
10,10a トレイ
11 底板
12 側壁(トレイの側壁)
12a 側壁
15,16,17,19 貫通孔
23 突出部
25 溝
30 弾性部材
32 側壁(弾性部材の側壁)
33 操作面側外縁部
35,36,37,38,39 貫通孔
42,42a,44 防水シール部
43,43a,45 弾性シール材
50 電子機器
51 操作面
55 電池収納部
56 電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の裏面に位置する電池収納部の開口部を覆うと共に、上記電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用電池カバーであって、
少なくとも上記操作面の方向に開口するトレイと、
当該トレイよりも低硬度であると共に上記トレイの開口側内面およびその反対側の面の両面を少なくとも部分的に覆う弾性部材と、
を備え、
上記トレイの上記開口側内面において、上記電池収納部の上記開口部の外周囲と対向する位置に、当該外周囲に接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部を備え、
当該防水シール部は、上記トレイの上記開口側内面と反対側の面を覆う上記弾性部材から、上記トレイの上記開口側内面に回り込み、上記弾性部材と連接形成される弾性シール材を備えることを特徴とする電子機器用電池カバー。
【請求項2】
前記トレイに貫通孔を備え、
前記弾性シール材は、前記トレイの前記開口側内面と反対側の面を覆う前記弾性部材から上記貫通孔を経由して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項3】
前記弾性シール材は、前記トレイの底板の内面よりも前記電子機器の前記外周囲側に突出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項4】
前記トレイは、前記電池収納部の前記開口部の前記外周囲と対向する位置に、前記外周囲側に突出する1または2以上の突出部を備え、
前記防水シール部は、前記弾性シール材によって上記突出部の一部または全部を被覆する構成であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項5】
前記弾性部材の側壁は、前記トレイの側壁の高さ以上に形成され、
前記弾性部材は、前記弾性部材の側壁から連接して、前記電子機器の前記操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項6】
前記弾性部材の側壁は、前記トレイの側壁を超えて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項1】
電子機器の裏面に位置する電池収納部の開口部を覆うと共に、上記電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用電池カバーであって、
少なくとも上記操作面の方向に開口するトレイと、
当該トレイよりも低硬度であると共に上記トレイの開口側内面およびその反対側の面の両面を少なくとも部分的に覆う弾性部材と、
を備え、
上記トレイの上記開口側内面において、上記電池収納部の上記開口部の外周囲と対向する位置に、当該外周囲に接すると共に平面視にて閉ループ状の防水シール部を備え、
当該防水シール部は、上記トレイの上記開口側内面と反対側の面を覆う上記弾性部材から、上記トレイの上記開口側内面に回り込み、上記弾性部材と連接形成される弾性シール材を備えることを特徴とする電子機器用電池カバー。
【請求項2】
前記トレイに貫通孔を備え、
前記弾性シール材は、前記トレイの前記開口側内面と反対側の面を覆う前記弾性部材から上記貫通孔を経由して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項3】
前記弾性シール材は、前記トレイの底板の内面よりも前記電子機器の前記外周囲側に突出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項4】
前記トレイは、前記電池収納部の前記開口部の前記外周囲と対向する位置に、前記外周囲側に突出する1または2以上の突出部を備え、
前記防水シール部は、前記弾性シール材によって上記突出部の一部または全部を被覆する構成であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項5】
前記弾性部材の側壁は、前記トレイの側壁の高さ以上に形成され、
前記弾性部材は、前記弾性部材の側壁から連接して、前記電子機器の前記操作面の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器用電池カバー。
【請求項6】
前記弾性部材の側壁は、前記トレイの側壁を超えて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子機器用電池カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−186052(P2012−186052A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48887(P2011−48887)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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