説明

電子機器

【課題】環境税の納税に寄与し、合法に使用できる電子機器を提供する。
【解決手段】消費電力測定部70はバッテリパック18の消費電力積算値を計測する。環境情報メモリ72は、素材製造時、組立製造時,輸送時,廃棄時の各既定の環境負荷と、消費電力積算値に基づいて算出される使用時環境負荷とを記憶する。メインCPU56は、課金情報メモリ74を参照して全環境負荷に対する環境税負担額を監視している。全環境負荷が最初の閾値に達するまでは環境税の負担は発生しない。使用が進んで全環境負荷が最初の閾値に達すると、電源ONの直後に環境税負担額をLCD20に表示し、撮影可能だが、メモリカード19の取出し等が不可となる。全環境負荷が次の閾値に達すると、撮影も禁止される。全環境負荷が更に次の閾値に達すると、電源のON/OFFのみが可能で他の全ての機能が使用不可となる。納金処理完了により機能制限が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の電子機器に関し、さらに詳しくは、使用するにつれて増加する環境負荷を演算してその情報を表示する機能を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球資源保護および地球環境保護の観点から、家電製品、OA機器等の機器を製造するメーカ、これらの機器を使用するユーザに対して地球環境負荷の低減が強く求められるようになってきた。このような環境負荷を定量的に評価する手法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)が注目されている。
【0003】
LCAとは、製品およびサービスが、資源の採取から製品の製造、輸送、使用、廃棄、リサイクルなどのライフサイクル全体にわたって、環境に及ぼす影響を客観的に評価する手法の一つである。LCAの原則は、国際標準化機構の規格ISO14040に明文化され、そのまま日本工業規格(JISQ 14040)となっている。LCAは、製品などの全ライフサイクルの環境負荷の評価及び改善のためのツールとして注目されている。
【0004】
ところで、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話などについても、LCAの手法を適用して環境負荷を定量的に評価することが考えられる。デジタルカメラの場合、製造時の環境負荷(製造時環境負荷)については、製造メーカが素材、投入電力量等の環境負荷に影響を与えるファクターを把握し、これらを、例えばCO2の排出量に換算することにより定量的に把握することが可能である。その結果をインターネット上で公開するエコリーフ環境ラベル(http://www.jemai.or.jp/CACHE/ecoleaf_news.cfm)という制度も運用されている。
【0005】
また、複写機等の基本的に一定の場所に固定された状態で使用される機器については、使用中の環境負荷を測定又は算出し、その結果をユーザに対して表示するという技術(例えば特許文献2)、使用中の環境負荷を累積してメモリ等にデータとして蓄えておくという技術(例えば特許文献3)も開示されている。また、環境負荷を抑制する手段として、環境負荷に対して税金(環境税)を徴収することも検討されている(例えば特許文献4)。
【特許文献1】特開2005−332006号公報
【特許文献2】特開2001−356648号公報
【特許文献3】特開2000−24919号公報
【特許文献4】特開2002−230233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デジタルカメラやカメラ付き携帯電話などの電子機器では、使用するにつれて累積的な環境負荷が増加していく。したがって、上記のような環境税が課せられるようになった場合、環境負荷の増加に伴って環境税が増加することになるが、そのような環境税の変化をユーザは知ることができず、納税することもできないという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、上記のような環境税が課せられた場合でも納税することができ、合法に使用できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器は、素材製造からユーザが購入する時点までに発生する環境負荷とユーザが廃棄する際に発生する環境負荷との合計である既定環境負荷を記憶する既定環境負荷記憶部と、ユーザが購入後最初に使用を開始してから廃棄以前の現在に至るまでの使用時に発生する累積した使用時環境負荷を求める使用時環境負荷算出部と、前記既定環境負荷と使用時環境負荷の合計である全環境負荷と、予め決められた1個の閾値または段階的に値が増加していくように予め決められた異なる複数個の閾値とを比較し、前記全環境負荷が前記閾値を超えた際に、その時の全環境負荷に応じて課金金額を算出する課金金額算出部と、前記全環境負荷が前記閾値を超えた際に、前記全環境負荷及び/又は前記全環境負荷を構成する個々の環境負荷を表示するとともに前記課金金額を表示する表示部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、前記課金金額算出部により算出される課金金額に応じて段階的に重くなるように使用可能な機能を制限する機能制限部を有することを特徴とする。また、前記課金金額算出部により算出される課金金額を支払ったか否かを判別する支払い判別部と、前記支払い判別部により前記課金金額の支払いが確認された際に、前記機能制限部による機能の制限を解除する機能制限解除部とを有することを特徴とする。また、前記環境負荷をCO2排出量に換算して出力するCO2換算部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の電子機器によれば、全環境負荷が閾値を超えた際に、全環境負荷に応じて課金金額を算出するとともに、全環境負荷及び/又は個々の環境負荷と課金金額とを表示するので、全環境負荷に対する課金金額が明瞭に分かり、これを支払うことが容易にできるようになり、合法に使用できる。
【0011】
また、前記課金金額に応じて使用可能な機能が制限されるので、課金金額の支払いをより確実に行うことができる。また、前記課金金額の支払いが確認された際に、機能制限の解除がなされるから、課金金額の支払いをより確実に行うことができる。また、環境負荷をCO2排出量に換算することにより、分かりやすく環境負荷を表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る電子機器であるデジタルカメラの外観を示す図1において、デジタルカメラ10の筐体11の前面には、撮影レンズ12とストロボ発光部14とが設けられ、上部には、シャッタボタン15と、操作ダイヤル16とが設けられている。この操作ダイヤル16は、電源スイッチのオン/オフと、撮影モード/再生モード/設定モード/環境負荷表示モードの切り換えとを行う。なお、「環境負荷」は、製品(デジタルカメラ10)のライフサイクル全体で、使用されるエネルギーや天然資源、また、ライフサイクル全体から環境へ排出される水質汚濁物質など、地球環境に負荷を与えて地球温暖化を促進するものであり、一般に温室効果ガスであるCO2排出量に換算して表される。
【0013】
筐体11には、その底面部に開閉蓋17が開閉可能に配置されており、筐体11の内部には、開閉蓋17によって開閉される電源収容部が設けられ、この内部に充電式のバッテリパック18がデジタルカメラ10の電源として着脱可能に装填される。前記バッテリパック18は、電源収容部から取り出して専用のバッテリチャージャで充電される他、電源収容部から取り出すことなくデジタルカメラ10をクレードルに装着することにより充電される。
【0014】
前記シャッタボタン15は、半押し操作と全押し操作の二段階の押下操作が可能である。シャッタボタン15を半押し操作すると、露出調整及びフォーカス調節が行われる。シャッタボタン15を半押し操作した状態から更に押し込む全押し操作を行うと、本番撮影が行われ、フレーム画の画像データが、図2に示すメモリカード19に記憶される。
【0015】
図2において、デジタルカメラ10の背面には、液晶ディスプレイ(以下LCDという)20が設けられている。このLCD20は、撮影モードでは、電子ビューファインダとして機能し、撮像されたスルー画をリアルタイムに表示する。また、後述する環境負荷を表示する。また、再生モードでは、メモリカード19に記憶されている画像データを読み出して静止画を表示する。更に、設定モードでは、各種設定画面を表示する。
【0016】
前記メモリカード19は、デジタルカメラ10の側面に設けられたメモリカードスロット23に着脱自在に装填される。撮影モードで得られた画像データは、このメモリカード19に記憶される。また、カーソルボタン24は、各種の設定の切り換えや、LCD20に表示される各種処理確認画面上の操作に用いられる。決定ボタン25は、カーソルボタン24によって選択された処理を実行する。
【0017】
デジタルカメラ10の電気的構成を示す図3において、撮影レンズ12及び絞り28の背後には、撮像素子であるCCD30が配置されている。このCCD30は、CCD駆動部32によって駆動される。スルー画表示の際にはCCD30からフィールド画(偶数フィールド又は奇数フィールド)の撮像信号が読み出され、アナログ信号処理部34に入力される。また、本番撮影時にはCCD30からフレーム画の撮像信号が読み出され、アナログ信号処理部34に入力される。このアナログ信号処理部34は、CCD58が出力した撮像信号からR,G,Bのアナログ画像信号を生成し、これらを増幅する。
【0018】
アナログ信号処理部34から出力された信号は、A/D変換器36によりデジタル信号(画像データ)に変換された後、デジタル信号処理部38に送られ、輪郭強調処理等が施される。この画像データがスルー画表示用の場合には、SDRAM39に一時的にストアされた後、表示回路48及びドライバ50を介してLCD20に送られ、スルー画が表示される。なお、前記SDRAM39には、連続した2フィールド画分を記憶するスルー画用のメモリエリアがあり、一方から読み出し中に、他方に書き込みをする。
【0019】
また、前記デジタル信号処理部38から出力された画像データが本番撮影によるもの(フレーム画)である場合には、前記SDRAM39に一時的にストアされた後、圧縮伸長処理部52によって所定のフォーマットに圧縮されたのち、インターフェイス回路(I/F)54を介してメモリカード19に記録される。さらに、再生モード時にはメモリカード19から読み出された画像データが圧縮伸長処理部52によって伸長処理された後、LCD20に出力され、LCD20に再生画像が表示される。
【0020】
タイミングジェネレータ(TG)40は、サブCPU42の指令に従ってCCD駆動部32、アナログ信号処理部34及びA/D変換器36に対してタイミング信号を与えており、このタイミング信号によって各回路の同期がとられている。
【0021】
SDRAM39にストアされた画像データは、バス44を介してYC信号処理部46に送られ、輝度信号(Y信号)及び色差信号(Cr,Cb 信号)に変換される。前記輝度信号は、自動露光(AE)制御に用いられる。
【0022】
メインCPU56は、EEPROM58に記憶されている各種のプログラムシーケンスに従い、前記シャッタボタン15からの入力の他、操作ダイヤル16,カーソルボタン24,決定ボタン25等からなる操作部60からの入力に基づいて各回路を統括制御するとともに、サブCPU42とCPU間通信を行う。
【0023】
サブCPU42は、オートフォーカス(AF)、自動露光(AE)等の制御を行うとともに、必要に応じて充電・発光制御部62にストロボ発光のコマンドを送る。充電・発光制御部62は、サブCPU42から入力されたコマンドにしたがってストロボ装置64を駆動する。このストロボ装置64は、前記ストロボ発光部14の他、周知の昇圧回路,メインコンデンサ等からなる。
【0024】
前記オートフォーカス(AF)制御は、G信号の高周波成分が最大になるように撮影レンズ12を移動させるコントラストAFであり、シャッタボタン15の半押し時にG信号の高周波成分が最大になるようにフォーカス駆動部66を介して撮影レンズ12を合焦位置に移動させる。
【0025】
また、自動露光(AE)制御では、サブCPU42がバス44を介してYC信号処理部46から輝度信号を取り込み、これに基づいて撮影時の絞り値とシャッタスピードを決定する。また、この時、自然光のみでは露光不足になると判断された場合には、ストロボ装置64も駆動されるように準備される。そして、シャッタボタン15の全押し時に前記決定した絞り値になるように絞り駆動部68を介して絞り28が駆動され、また、決定したシャッタスピードとなるようにCCD30の電荷蓄積時間が制御される。また、必要に応じてストロボ装置64が駆動され、被写体に向けてストロボ光が発光される。
【0026】
前記バッテリパック18の消費電力積算値を計測する消費電力測定部70がバス44に接続されている。また、バス44には、環境情報メモリ72,課金情報メモリ74が接続されている。前記環境情報メモリ72は、既定の環境負荷である、素材製造時,組立製造時,輸送時,廃棄時の各環境負荷を予め記憶しておくとともに、前記消費電力測定部70から出力される消費電力積算値及びこれに基づいて算出される使用時環境負荷などを記憶する不揮発性メモリである。
【0027】
また、課金情報メモリ74は、デジタルカメラ10のライフサイクル全体に亘る全環境負荷ETと、これに応じて課金される環境税の負担金額との関係を示す課金テーブルを有する。この課金テーブルを表す図4において、環境税負担額は、全環境負荷ETが増加するにつれて段階的に増加する。メインCPU56は、常に課金情報メモリ74の課金テーブルを参照して全環境負荷ETに対する環境税負担額を監視している。また、課金テーブルは、課金情報メモリ74に接続されたI/F75を通じて、税率の変動などに応じて改訂された課金テーブルが外部のパーソナルコンピュータから転送され、随時書き換えられる。
【0028】
メインCPU56は、前記全環境負荷ETを、このデジタルカメラ10が含まれる製造ロット毎に演算する環境負荷算出機能や、環境負荷をCO2排出量として出力するCO2換算機能を有している。
【0029】
ここで、全環境負荷ETは、デジタルカメラ10を製造する際(製造ステージ)に生じる製造時環境負荷EPR、デジタルカメラ10を製造工場からユーザまで輸送する際(輸送ステージ)に生じる輸送時環境負荷EPD及びデジタルカメラ10を使用する際(使用ステージ)に生じる使用時環境負荷EUSに、デジタルカメラ10を廃棄する際(廃棄ステージ)に生じる廃棄時環境負荷ERJを加算して演算される。これら各ステージの環境負荷EPR、EPD、ERJ、使用時環境負荷EUSは、それぞれ地球環境に対する影響を定量的かつ客観的に評価可能とするためCO2の排出量に換算される。
【0030】
上記環境負荷のうち、製造時環境負荷EPR、輸送時環境負荷EPD、廃棄時環境負荷ERJについては、デジタルカメラ10が含まれる製造ロット毎に予め標準的なCO排出量が初期値として製造メーカにより設定されており、これらの環境負荷EPR、EPD、ERJの初期値は、環境情報メモリ72にそれぞれ格納されている。
【0031】
また、前記使用時環境負荷EUSは、前記消費電力測定部70から出力され、環境情報メモリ72に記憶されるバッテリパック18の消費電力積算値に後述する電力原単位を乗算して得られる。メインCPU56は、使用時環境負荷EUSが増加する毎に、増加後の使用時環境負荷EUSを製造時環境負荷EPR、輸送時環境負荷EPD及び廃棄時環境負荷ERJに加算して全環境負荷ETを演算し、これを格納済みの値に代えて環境情報メモリ72に記憶させる。
【0032】
また、ユーザが操作ダイヤル16を操作して環境負荷表示モードを選択すると、メインCPU56は、デジタルカメラ10の動作状態をLCD20により撮影画像が表示可能となっていた画像表示モードからLCD20により環境負荷を表示するための環境負荷表示モードに切り替える。これにより、メインCPU56は表示回路48及び圧縮伸張処理部52にそれぞれ表示命令に対応するコマンドを出力する。
【0033】
表示回路48は、表示モードを画像表示モードから環境負荷表示モードに切り替えた後、数値データとして環境情報メモリ72に格納された全環境負荷ETと、課金情報メモリ74を参照して得られる全環境負荷ETに対する環境税の負担額とを画像信号(YC信号)に変換してドライバ50に出力し、図5(A)に示すように、全環境負荷ET(例えば6.38kg−CO2)と、これに対する環境税の負担額(例えば○○○円)とをLCD20に表示する。
【0034】
LCD20による全環境負荷ETの表示後に、ユーザが操作部60を操作して表示切替信号を入力すると、メインCPU56は、表示回路48及び圧縮伸長処理部52にそれぞれステージ毎の環境負荷を表示するためのコマンドを送る。このコマンドを受けた表示回路48は、数値データとして環境情報メモリ72に格納された製造時環境負荷EPR、輸送時環境負荷EPD、使用時環境負荷EUS、廃棄時環境負荷ERJ及び環境税負担額を1画面に示す画像信号に変換してドライバ50に出力し、ドライバ50により各ステージ毎の環境負荷及び環境税負担額をLCD20に表示させる(図5(B)参照)。
【0035】
LCD20によるステージ毎の環境負荷及び環境税負担額の表示後に、ユーザが操作部60から表示切替信号を再入力すると、メインCPU56は、LCD20により表示される画像をステージ毎の環境負荷及び環境税負担額(図5(B))から全環境負荷ET及び環境税負担額(図5(A))に切り替える。
【0036】
また、メインCPU56は、デジタルカメラ10の電源投入時に、デジタルカメラ10の動作状態を環境負荷表示モードとする。これにより、デジタルカメラ10の電源投入直後の時点では、LCD20には必ず全環境負荷ET及び環境税負担額を示す画像が表示される。
【0037】
(製造時環境負荷の算出方法)
次に、製造時環境負荷EPRの算出方法の一例について説明する。デジタルカメラ10の製造時環境負荷EPRは、デジタルカメラ10を形成する素材を製造し、これらの素材に加工等の処理を施して部品にするために必要となる素材環境負荷と、これらの部品を組み立ててデジタルカメラ10を完成させるために必要となる組立環境負荷とに大別され、これらを合算することにより算出される。
【0038】
ここで、素材環境負荷は、製品(デジタルカメラ10)を構成する全ての部品について、部品質量、材料原単位、加工原単位及び組立原単位を用いて、下記(表1)に示すように算出する。
【0039】
【表1】

【0040】
ここで、原単位とはCO2排出原単位のことで、材料原単位、加工原単位、組立原単位は、それぞれ単位材料あたり、単位加工あたり、単位組立あたりの各CO2排出量を表す。1部品について、材料、質量、加工方法、組立方法が決まれば、それぞれ原単位を乗じた後に加算することにより、その部品を製造するときに排出するCO2が求められる。同じことを全部品について繰り返し、それぞれのCO2排出量を合計すれば、1つの製品(デジタルカメラ10)についての素材製造時の環境負荷が求められる。
【0041】
組立環境負荷は、デジタルカメラ10を製造する製造ラインにおいて使用するエネルギーと排出されるエネルギー(下水道など)のそれぞれ原単位を用いて、下記(表2)に示すように算出する。
【0042】
【表2】

【0043】
なお、素材環境負荷及び組立環境負荷は、製造工場が異なったり、製造工場での基本的な製造単位である製造ロットが異なると、この製造ロット毎に消費エネルギー、原単位等も変化することがあり、製造時環境負荷EPRも異なったものになることがある。
【0044】
(輸送時環境負荷の算出方法)
次に、輸送時環境負荷EPDの算出方法の一例について説明する。デジタルカメラ10の輸送時環境負荷EPDは、重量W(t)の製品(デジタルカメラ10)及び、梱包材等の付帯物をメーカの製造工場から目的地まで搬送する場合には、次の数式(1)及び数式(2)により算出される。なお、例えば10トン(t)トラックの荷台一杯に製品を積んで輸送する場合には、W=10となる。
【0045】
輸送負荷量=輸送距離×W/製品の積載個数・・・(1)
輸送時環境負荷=輸送負荷量×輸送原単位・・・(2)
ここで、輸送距離は、本来的には、製造工場から目的地(小売店へ製品(デジタルカメラ10)を出荷する物流センター、大規模小売店の倉庫、卸売り業者の倉庫等の場所)までの距離である、本実施形態に係るデジタルカメラ10の場合には、デジタルカメラ10の出荷先(国内の輸送拠点、輸出国の輸送拠点等)に応じて、メーカの製造工場からデジタルカメラ10の出荷先までの平均的な距離が予め環境情報メモリ72に初期値として格納されている。なお、輸送原単位は、単位輸送負荷あたりのCO2排出量を表す。
【0046】
(使用時環境負荷の算出方法)
次に、使用時環境負荷EUSの算出方法の一例について説明する。デジタルカメラ10の使用時環境負荷EUSは、下記(表3)に示されるように、前記消費電力測定部70から出力され消費電力積算値(H(kw))に電力原単位(f)を乗算して得られる。なお、電力原単位は、単位電力使用あたりのCO2排出量を表す。
【0047】
【表3】

【0048】
(廃棄時環境負荷の算出方法)
次に、廃棄時環境負荷ERJの算出方法の一例について説明する。デジタルカメラ10の廃棄時環境負荷ERJは、デジタルカメラ10の廃却方法(焼却,埋立,リサイクル)によって異なるものとなり、下記(表4)に示されるように算出される。
【0049】
【表4】

【0050】
ユーザがデジタルカメラ10を廃棄する際には、ユーザは、デジタルカメラ10に対して(表4)に示される何れかの廃却方法を設定可能とされており、廃却方法を設定することにより、メインCPU56は、環境情報メモリ72に格納されている廃棄時環境負荷ERJを廃却方法に対応する値に書き換える。なお、廃棄時環境負荷ERJは、リサイクルを選択した場合に最も小さくなることから、ユーザに対してリサイクルを廃却方法として選択することを強く訴求できる。
【0051】
全環境負荷ETは、使用時環境負荷EUSが増加することにより増加していく。メインCPU56は、常に課金情報メモリ74の課金テーブルを参照して全環境負荷ETに対する環境税負担額を監視しており、図4に示すように、全環境負荷ETが最初の閾値E0に達するまでは、環境税の負担は生ぜず、デジタルカメラ10をなんらの制限もなく使用できる。
【0052】
デジタルカメラ10の使用が進んで、全環境負荷ETが最初の閾値E0に達すると、メインCPU56は、下記(表5)に示される機能制限3にしたがって、デジタルカメラ10の電源をONにした直後に、図5(A)に示すように、環境税負担額をLCD20に表示して課金が発生した旨の警告を出す。また、なんらかの警告音を発生するようにしてもよい。この機能制限3では、撮影は可能であるが、外部への画像送出やメモリカード19の取り出しができなくなる。
【0053】
また、全環境負荷ETが閾値E0よりも大きい次の閾値E1に達すると、機能制限2が適用される。また、全環境負荷ETが閾値E1よりもさらに大きい閾値E2に達すると、機能制限1が適用される。また、後述する納金処理が完了すれば、これらの機能制限が解除され、正常にデジタルカメラ10を使用できる。
【0054】
【表5】

【0055】
前記機能制限1〜3を解除するには、下記(表6)に示される手順により金融機関やコンビニエンスストアで納金処理を行えばよい。なお、予めデジタルカメラ10の標準使用条件が決められている場合には、その条件にしたがって使用した分には、上記のような機能制限が発生しないように、デジタルカメラ10の購入時に環境税を前納してもよい。この場合には、標準使用条件を超えて使用を継続しようとした際に、警告表示とともに機能制限が発生する。
【0056】
【表6】

【0057】
また、ユーザは、デジタルカメラ10の購入後に、パーソナルコンピュータ(PC)にドライバ等のユーティリティソフトをインストールした後、デジタルカメラ10をPCに接続すると、ユーティリティソフトによりデジタルカメラ10の購入地域及び主な使用地域を入力するように求められる。ユーザがPCを介して購入地域及び使用地域をメインCPU56へ入力すると、メインCPU56は、入力された使用地域に応じてバッテリパック18を使用する際の電力原単位Fを変更する。これは、使用地域(日本又は外国の電力会社)が異なると電力原単位Fが変化することによる。
【0058】
また、メインCPU56は、入力された購入地域に応じて輸送時環境負荷EPDを演算する際に使用される輸送距離(数式(1)参照)を初期値から実距離の概算値に変更し、この実距離の概算値に基づいて輸送時環境負荷EPDを再演算し、環境情報メモリ72に格納する。
【0059】
また、デジタルカメラ10では、ユーザがある時点における全環境負荷ET及びステージ毎の環境負荷を記録として残したい場合に、これらの環境負荷を画像情報としてメモリカード19及び環境情報メモリ72の一方又は双方に記録することができる。
【0060】
また、デジタルカメラ10では、その電源投入時に、LCD20により全環境負荷ET及び環境税負担額を表示することにより、デジタルカメラ10の使用開始時にユーザに対して環境負荷に対する低減意識を喚起することができる。
【0061】
また、メインCPU56が外部のPCと接続可能とし、PCにより使用時環境負荷EUSの増加量を演算するための電力原単位fの設定値を変更可能とすることにより、外部環境の変化等により使用時環境負荷の増加量を演算するための電力原単位fの設定値が変化した場合でも、変化した電力原単位fを新たな設定値として設定できるので、使用時環境負荷EUSの演算精度の低下を防止できる。
【0062】
以上説明した実施形態では、環境税負担額が発生した際に、同時に機能制限が発生するようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば最初の段階では、機能制限の実施は行わずに環境税負担額の表示のみを行い、環境税負担額がある金額を超えた以降に機能制限を実施するようにしてもよい。また、上記機能制限の内容は一例であって、本発明はこれに限定されることなく、例えば機能制限3において、表5の内容に加え、撮影画像の再生ができないようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、環境税負担額が発生または増加する全環境負荷の閾値を3個(3段階)設けたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば1個や5個でもよい。また、上記実施形態は、電子機器としてデジタルカメラを用いた例であったが、本発明はこれに限定されることなく、例えばカメラ付き携帯電話やデジタルムービーカメラなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態であるデジタルカメラの外観を前面側から示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラの外観を背面側から示す斜視図である。
【図3】デジタルカメラの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】全環境負荷と環境税負担額との関係を示すグラフである。
【図5】全環境負荷と環境税負担額を示すLCDの表示例(A)と、ステージ毎の環境負荷と環境税負担額を示すLCDの表示例(B)とを示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10 デジタルカメラ
18 バッテリパック
19 メモリカード
20 LCD
56 メインCPU
70 消費電力測定部
72 環境情報メモリ
74 課金情報メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材製造からユーザが購入する時点までに発生する環境負荷とユーザが廃棄する際に発生する環境負荷との合計である既定環境負荷を記憶する既定環境負荷記憶部と、
ユーザが購入後最初に使用を開始してから廃棄以前の現在に至るまでの使用時に発生する累積した使用時環境負荷を求める使用時環境負荷算出部と、
前記既定環境負荷と使用時環境負荷の合計である全環境負荷と、予め決められた1個の閾値または段階的に値が増加していくように予め決められた異なる複数個の閾値とを比較し、前記全環境負荷が前記閾値を超えた際に、その時の全環境負荷に応じて課金金額を算出する課金金額算出部と、
前記全環境負荷が前記閾値を超えた際に、前記全環境負荷及び/又は前記全環境負荷を構成する個々の環境負荷を表示するとともに前記課金金額を表示する表示部と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記課金金額算出部により算出される課金金額に応じて段階的に重くなるように使用可能な機能を制限する機能制限部を有することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記課金金額算出部により算出される課金金額を支払ったか否かを判別する支払い判別部と、
前記支払い判別部により前記課金金額の支払いが確認された際に、前記機能制限部による機能の制限を解除する機能制限解除部と
を有することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記環境負荷をCO2排出量に換算して出力するCO2換算部を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−188172(P2007−188172A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3938(P2006−3938)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】